説明

軟質ポリウレタンフォーム

【課題】特殊な酸化防止剤等の添加剤、及び特殊なポリオール等の高価な原料を用いることなく、経時にともなう黄変が抑えられる軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール、ポリイソシアネート、水及び触媒を含有するフォーム原料を反応、硬化させてなり、ポリオールを100質量%とした場合に、重量平均分子量1500〜4000のポリエーテルポリオールが80〜97質量%、分子量400以下のポリオール化合物及び/又は重量平均分子量400以下(いずれも135以下が好ましい。)の低分子量ポリオールが3〜20質量%含有され、ポリオールを100質量部とした場合に、ポリイソシアネートは38〜57質量部であり、且つイソシアネート指数が100〜115であって、ポリオールを100質量部とした場合に、水は1.2〜2.8質量部であり、触媒としてアミン系触媒が用いられる(金属系触媒は用いない。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームに関する。更に詳しくは、本発明は、特殊なポリオール等の高価な原料、及び特殊な酸化防止剤等の添加剤などを用いることなく、大気中の酸化窒素(NOx)等の影響により、経時とともに変色する(特に黄色への変色、以下、「黄変」と略記する。)ことが抑えられる軟質ポリウレタンフォーム、特に熱プレスにより成形された成形品であっても、黄変が十分に抑えられる軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは軽量であって、且つ優れたゴム弾性を有し、保温性にも優れるため、ブラカップ及び肩パッド等の衣料用途等の幅広い分野で用いられている。しかし、トルエンジイソシアネート等の安価な芳香族系ポリイソシアネート、及び汎用のポリエーテルポリオール等を原料として用いた場合、大気中の酸化窒素(NOx)等の影響により経時とともに黄変することがある。また、上記の衣料用途の製品では、熱プレスにより成形することが多く、この加熱によって、より黄変し易くなる。
【0003】
上記の酸化窒素等に起因する黄変を抑えるため、添加剤として所定量のテトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイトを配合したフォーム原料を用いてなる難黄変性軟質ポリウレタンフォーム、及びこれを成形してなる衣料用等の成形品が知られている(例えば、特許文献1参照。)。更に、酸化防止剤等の添加剤は用いず、特定の分子構造を有する特殊な2種類のポリオールを組み合わせて使用し、高密度化しても低硬度であり、黄変も生じ難い軟質ポリウレタンフォームを製造する方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−89562号公報
【特許文献2】特開2009−132841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された難黄変性軟質ポリウレタンフォームでは、高価、且つ特殊な添加剤が配合されたフォーム原料が用いられており、黄変が抑えられたとしても、コストの面で不利である。また、特許文献2に記載された軟質ポリウレタンフォームの製造方法では、高価、且つ特殊な2種類のポリオールが併用されており、高密度化しても低硬度であり、黄変も抑えられるかもしれないが、コストの面で不利である。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、特殊なポリオール等の高価な原料、及び特殊な酸化防止剤等の添加剤などを用いることなく、汎用の原料のみを使用し、且つこれらの配合割合等を特定することにより、大気中の酸化窒素等の影響により、経時とともに黄変することが抑えられる軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。また、特に、熱プレスにより成形された衣料用等の成形品であっても、酸化窒素等による黄変が十分に抑えられる軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.ポリオール、ポリイソシアネート、水及び触媒を含有するフォーム原料を反応、硬化させてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
上記ポリオールを100質量%とした場合に、重量平均分子量1500〜4000のポリエーテルポリオールが80〜97質量%、分子量400以下のポリオール化合物及び重量平均分子量400以下の低分子量ポリオールのうちの少なくとも一方が3〜20質量%含有され、
上記ポリオールを100質量部とした場合に、上記ポリイソシアネートは38〜57質量部であり、且つイソシアネート指数が100〜115であって、
上記ポリオールを100質量部とした場合に、上記水は1.2〜2.8質量部であり、
上記触媒としてアミン系触媒が用いられる、ことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
2.上記ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネートである上記1.に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
3.上記ポリオール化合物の分子量及び上記低分子量ポリオールの重量平均分子量が、いずれも135以下である上記1.又は2.に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム(以下、「軟質フォーム」ということもある。)によれば、特殊な原料、及び特殊な添加剤を用いることなく、汎用の原料のみを使用し、且つその配合割合等を特定することにより、衣料用等として適度な密度と硬さとを有し、且つ良好な外観を有する軟質フォームが得られる。また、特に熱プレスにより成形された衣料用等の成形品であっても、酸化窒素等による経時にともなう黄変が十分に抑えられる。
更に、ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネートである場合は、汎用で、安価であり、且つ反応し易いものの、黄変の観点では好ましくないポリイソシアネートであるが、本発明では、ポリオール等の他の原料との組み合わせ、及び配合量等の特定により、黄変を十分に抑えることができる。
また、ポリオール化合物の分子量及び低分子量ポリオールの重量平均分子量が、いずれも135以下である場合は、多くのウレタン結合が生じ、このウレタン結合由来の水素結合による二次架橋が生成され易く、強固で安定なハードセグメントが形成されるため、酸化窒素等の影響が低減され、黄変がより十分に抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート、水及び触媒を含有するフォーム原料を反応、硬化させてなり、
ポリオールを100質量%とした場合に、重量平均分子量1500〜4000のポリエーテルポリオールが80〜97質量%、分子量400以下のポリオール化合物及び/又は重量平均分子量400以下の低分子量ポリオールが3〜20質量%含有され、ポリオールを100質量部とした場合に、ポリイソシアネートは38〜57質量部であり、且つイソシアネート指数が100〜115であって、ポリオールを100質量部とした場合に、水は1.2〜2.8質量部であり、触媒としてアミン系触媒が用いられる。
【0010】
本発明では、上記のフォーム原料を使用し、ワンショット法により反応、硬化させることにより、軟質ポリウレタンスラブフォームが得られる。また、このスラブフォームから所定寸法のフォームを切り出し、熱プレス等により成形することにより、衣料用途等の成形品とすることができる。
【0011】
上記「ポリオール」としては、重量平均分子量1500〜4000のポリエーテルポリオールと、分子量400以下のポリオール化合物及び/又は重量平均分子量400以下の低分子量ポリオールとが用いられる。
上記「ポリエーテルポリオール」は、重量平均分子量が1500〜4000であり、且つポリオールの全量を100質量%とした場合に、80〜97質量%含有されることを除いて特に限定されない。このポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、2000〜3500、特に2500〜3500であることが好ましい。ポリエーテルポリオールの重量平均分子量が1500〜4000、特に2500〜3500であれば、発泡時、ガスが軟質フォームを生成させながら外部に放出され、発泡後、泡体の収縮を生じることがなく、良好な外観を有する軟質フォームとすることができ、且つ十分な架橋構造が形成され、割れを生じたりすることもなく、所要の密度、硬さ等を有する軟質フォームとすることができる。
【0012】
また、ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオールの全量を100質量%とした場合に、80〜97質量%であり、80〜94質量%、特に80〜91質量%であることが好ましい。ポリエーテルポリオールの含有量が80〜97質量%、特に80〜91質量%であれば、発泡時、ガスが軟質フォームを生成させながら外部に放出され、発泡後、泡体の収縮を生じることがなく、良好な外観を有する軟質フォームとすることができ、且つ適正な範囲のイソシアネート指数となるポリイソシアネートを配合することができ、より黄変し難い軟質フォームとすることができる。
【0013】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の開始剤に、アルキレンオキサイドを付加させてなる一般的なポリエーテルポリオールを用いることができる。アルキレンオキサイドも特に限定されず、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等が挙げられ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが用いられることが多い。ポリエーテルポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記「ポリオール化合物」及び上記「低分子量ポリオール」は、分子量又は重量平均分子量が400以下であり、且つポリオールの全量を100質量%とした場合に、3〜20質量%含有されることを除いて特に限定されない。このポリオール化合物の分子量及び低分子量ポリオールの重量平均分子量は、各々、300以下、特に200以下、更に135以下であることが好ましい。ポリオール化合物の分子量及び低分子量ポリオールの重量平均分子量が400以下、特に200以下、更に135以下であれば、強固で安定なハードセグメントが形成され、酸化窒素等の影響が低減されるため、黄変がより十分に抑えられる。
【0015】
また、ポリオール化合物及び/又は低分子量ポリオールの含有量は、ポリオールの全量を100質量%とした場合に、3〜20質量%であり、6〜20質量%、特に9〜20質量%であることが好ましい。ポリオール化合物及び/又は低分子量ポリオールの含有量が3〜20質量%、特に9〜20質量%であれば、発泡時、ガスが軟質フォームを生成させながら外部に放出され、発泡後、泡体の収縮を生じることがなく、良好な外観を有する軟質フォームとすることができる。更に、ポリオール化合物及び低分子量ポリオールの含有量が多いほど、より多くのポリイソシアネートを配合することができ、強固で安定なハードセグメントが形成され、酸化窒素等の影響が低減され、より黄変し難い軟質フォームとすることができる。
【0016】
ポリオール化合物及び低分子量ポリオールは、それぞれ1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、いずれか一方を用いてもよく、併用してもよい。これらのうちでは、少なくともポリオール化合物を用いることが好ましく、全量がポリオール化合物であることがより好ましい。併用する場合は、ポリオール化合物と低分子量ポリオールとの合計を100質量%とした場合に、低分子量ポリオールは50質量%以下、特に30質量%以下であることが好ましい。また、ポリオール化合物及び低分子量ポリオールのそれぞれの官能基数は特に限定されないが、官能基数は2〜4であればよく、官能基数2又は3であることが好ましい。
【0017】
ポリオール化合物としては、より具体的には、エチレングリコール(分子量;62)、ジエチレングリコール(分子量;106)、プロピレングリコール(分子量;76)、ジプロピレングリコール(分子量;134)、1,4−ブタンジオール(分子量;90)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(分子量;118)等の2官能のポリオール化合物、グリセリン(分子量;92)、トリメチロールプロパン(分子量;134)等の3官能のポリオール化合物、及びペンタエリスリトール(分子量;136)等の4官能のポリオール化合物などが挙げられ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が好ましい。
【0018】
更に、低分子量ポリオールとしては、より具体的には、商品名「PEG−200」[重量平均分子量;200、2官能、エチレンオキサイド(EO)付加体]、商品名「PEG−400」(重量平均分子量;400、2官能、EO付加体)、商品名「サンニックス PP−200」[重量平均分子量;200、2官能、プロピレンオキサイド(PO)付加体]、商品名「サンニックス PP−400」(重量平均分子量;400、2官能、PO付加体)、商品名「サンニックス GP−250」(重量平均分子量;250、3官能、PO付加体)、商品名「サンニックス GP−400」(重量平均分子量;400、3官能、PO付加体)、商品名「サンニックス GL−260」(重量平均分子量;260、3官能、EO及びPO付加体)、及び商品名「サンニックス NE−240」(重量平均分子量;231、2官能、エチレンジアミンEO付加体)(以上、三洋化成社製)等が挙げられる。
【0019】
上記「ポリイソシアネート」は、特に限定されず、芳香族系、脂肪族系及び脂環族系の各種のポリイソシアネートを用いることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、粗TDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗MDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、及びm−キシレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、粗HDI、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及び水添MDI等が挙げられる。ポリイソシアネートは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、2種以上を併用する場合、芳香族系、脂肪族系及び脂環族系の各々のポリイソシアネートを組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明では、ポリイソシアネートとして、芳香族系ポリイソシアネート、特にTDIを用いることができる。TDIは最も多く用いられている汎用品であり、安価であってコスト面でも有利である。更に、TDI等の芳香族系ポリイソシアネートは、反応し易いという利点もあるが、従来、得られた軟質フォームが経時とともに黄変するという問題点が知られており、黄変を抑えるという観点では、好ましくないポリイソシアネートである。しかし、本発明では、ポリオール等の他の原料との組み合わせ、及び配合量等の特定により、ポリイソシアネートとしてTDIを用いても黄変を十分に抑えることができる。
【0021】
また、ポリイソシアネートの含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、38〜57質量部であり、43〜57質量部、特に48〜57質量部であることが好ましい。ポリイソシアネートの含有量が38〜57質量部、特に43〜57質量部であれば、発泡時、ガスが軟質フォームを生成させながら外部に放出され、発泡後、泡体の収縮を生じることがなく、良好な外観を有し、且つより黄変し難い軟質フォームとすることができる。
【0022】
更に、フォーム原料に含有されるポリオール等が有する全ての活性水素と反応するポリイソシアネートの化学量論により算出される必要量に対する実際の配合量の百分率として表されるイソシアネート指数は、100〜115、特に105〜115であることが好ましい。イソシアネート指数が100〜115であれば、発泡時、ガスが軟質フォームを生成させながら外部に放出され、発泡後、泡体の収縮を生じることがなく、良好な外観を有し、且つより黄変し難い軟質フォームとすることができる。
【0023】
上記「水」は特に限定されず、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水等の各種の水を用いることができる。軟質フォーム製造時の水の使用量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、1.2〜2.8質量部であり、1.3〜2.0質量部、特に1.3〜1.7質量部であることが好ましい。水が1.2〜2.8質量部、特に1.3〜1.7質量部であれば、発泡時、ガスが軟質フォームを生成させながら外部に放出され、発泡後、泡体の収縮を生じることがなく、良好な外観を有し、且つより黄変し難い軟質フォームとすることができる。
【0024】
上記「触媒」としては、アミン系触媒が用いられる。このアミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’N’−テトラメチルヘキサン−1,6ジアミン等が挙げられる。触媒の全量を100質量%とした場合、アミン系触媒は80質量%以上、特に90質量%以上であることが好ましく、100質量%、即ち、触媒の全量がアミン系触媒であることがより好ましい。
【0025】
上記のように、触媒の多くが、又は全量がアミン系触媒であれば、発泡時、ガスが軟質フォームを生成させながら外部に放出され、発泡後、泡体の収縮を生じることがなく、良好な外観を有し、且つより黄変し難い軟質フォームとすることができる。アミン系触媒の含有量は特に限定されないが、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、0.2〜1.0質量部、特に0.3〜0.8質量部であることが好ましい。また、アミン系触媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
更に、黄変を抑えるという観点では、錫触媒等の金属系触媒は用いないことが好ましいが、黄変が十分に抑えられる範囲で金属系触媒を併用することもできる。この金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸カリウム、ナフテン酸鉛、ネオデカン酸亜鉛等が挙げられる。金属系触媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。金属系触媒を用いる場合、その含有量は、触媒の全量を100質量部とした場合に、20質量部以下、特に10質量部以下とすることが好ましい。
【0027】
フォーム原料には、ポリオール、ポリイソシアネート、水及び触媒の他、整泡剤等が含有される。また、必要に応じてその他の助剤等を含有させることもできる。
整泡剤としては、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体を用いることができる。更に、ポリシロキサンに有機官能基を付加した特殊な整泡剤を用いることもできる。このように、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が用いられることが多い。整泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。整泡剤の含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、0.3〜2.0質量部、特に0.7〜1.5質量部とすることができる。
【0028】
また、必要に応じて用いられる助剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びフォーム原料の粘度を低下させ、攪拌、混合を容易にするための各種の希釈剤などが挙げられる。これらは軟質フォームの黄変が十分に抑えられ、且つ適正な密度、硬さ等となる範囲で適量を含有させることができる。
尚、水、触媒、整泡剤等は、通常、ポリオールに配合され、反応時にポリイソシアネートと混合される。
【0029】
更に、本発明では、JIS K 7222に準拠して測定した密度が30〜65kg/m、特に35〜55kg/mであり、JIS K 6400−2 D法に準拠して測定した硬さが65〜130N、特に80〜120Nである軟質フォームとすることができる。このように、本発明では、軟質フォームとして適度な密度及び硬さを有し、特に衣料用として使用したときに装着性等に優れ、且つ経時にともなう黄変も十分に抑えられる。また、黄変度は、衣料用では、特に熱プレス後の値が重要であるが、後記の実施例における熱プレス成形品のように、熱プレス後の黄変度(ΔYI)は60以下、特に50以下、更に40以下に抑えることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]使用原料
(1)ポリオール
(a)ポリエーテルポリオール
(a−1);三洋化成社製、商品名「サンニックス GP1000」[重量平均分子量;1000、水酸基価;168mgKOH/g、3官能、プロピレンオキサイド(PO)(100質量%)付加体](表4では「GP1000」と表記する。)
(a−2);三洋化成社製、商品名「サンニックス GP1500」[重量平均分子量;1500、水酸基価;112mgKOH/g、3官能、PO(100質量%)付加体](表3では「GP1500」と表記する。)
(a−3);三洋化成社製、商品名「サンニックス GP3000」[重量平均分子量;3000、水酸基価;56mgKOH/g、3官能、PO(100質量%)付加体](表1〜5では「GP3000」と表記する。)
(a−4);三洋化成社製、商品名「サンニックス GP4000」[重量平均分子量;4000、水酸基価;42mgKOH/g、3官能、PO(100質量%)付加体](表3では「GP4000」と表記する。)
(a−5);三洋化成社製、商品名「サンニックス GP5000」[重量平均分子量;5000、水酸基価;34mgKOH/g、3官能、PO(100質量%)付加体](表4では「GP5000」と表記する。)
【0031】
(b)ポリオール化合物
(b−1)ジプロピレングリコール;ADEKA社製、商品名「ジプロピレングリコール」(分子量;134、水酸基価;836mgKOH/g、2官能)(表1〜5では「DPG」と表記する。)
(b−2)グリセリン;ADEKA社製、商品名「DGグリセリン」(分子量;92、水酸基価;1826mgKOH/g、3官能)
(b−3)エチレングリコール;丸善石油化学社製、商品名「エチレングリコール」(分子量;62、水酸基価;1810mgKOH/g、2官能)(表1〜5では「EG」と表記する。)
【0032】
(2)発泡剤

(3)触媒
(a)アミン系触媒
(a−1)三共エアプロダクツ社製、商品名「DABCO 33LV」[トリエチレンジアミンとジプロピレングリコール(DPG)との質量比1:2の混合物、従って、約67質量%のDPGを含有する。表1〜5のイソシアネート指数には、このDPGが有するヒドロキシル基も算入されている。](表1〜5では「33LV」と表記する。)
また、表1〜5で、DPGが配合されていないときも、実際には「33LV」に含有されるDPGが含有されており、ポリオールの全量の数値が極く僅かに大きくなるため、ポリオールの全量を100質量部とした場合の、ポリオールを除く他の成分の含有量は極く僅かに少なくなる。しかし、本発明の範囲内であるか範囲外であるかについては全く影響はない程度である。そのため、表1〜5では、「33LV」は含有されるDPGも含め、触媒として配合されたものとし、ポリオールを除く他の成分は、ポリオールとして配合されたポリオールの合計量を100質量部としたときの配合量として記載する。
(a−2)花王社製、商品名「カオーライザー No.3」(N,N,N’,N’,N"−ペンタメチルジエチレントリアミン)(表1〜5では「No.3」と表記する。)
(b)金属系触媒
(b−1)スタナスオクトエート;城北化学工業社製、商品名「MRH−110」(表4では「SO」と表記する。)
(4)界面活性剤(整泡剤)
シリコーン系整泡剤;東レ・ダウコーニング社製、商品名「SH194」(表1〜5では「SH194」と表記する。)
【0033】
(5)ポリイソシアネート
(c−1);日本ポリウレタン工業社製、商品名「T−80」(2,4−異性体を80質量%含有するトルエンジイソシアネート)(表1〜5では「T−80」と表記する。)
(c−1);日本ポリウレタン工業社製、商品名「T−65」(2,4−異性体を65質量%含有するトルエンジイソシアネート)(表1〜4では「T−65」と表記する。)
【0034】
[2]軟質フォームの製造
実施例1〜17及び比較例1〜11
表1〜3(実施例1〜17)及び表4、5(比較例1〜11)に記載の配合により、先ず、ポリイソシアネートを除くそれぞれの成分を所定の量比でハンドミキサーを用いて攪拌した。その後、所定のイソシアネート指数に従って所定量のポリイソシアネートを配合し、この混合物540gを発泡箱(縦300mm、横400mm、高さ400mm)に投入して反応、硬化させ、軟質フォームを製造した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
[3]軟質フォームの評価
以下の項目について評価した。結果を表6〜8(実施例1〜17)及び表9、10(比較例1〜11)に記載する。
(1)発泡状況及び外観
発泡後の収縮(表9、10では「ガスシュリンク」と表記する。)の有無、硬化不良(表9、10では「硬化せず」と表記する。)の有無、及び軟質フォームが製造されたときの外観(表6〜10では「フォーム状態」と表記する。)を、目視により観察し、評価した。
【0041】
(2)密度及び硬さ
上記[2]で製造した実施例1〜17及び比較例1、2、7、9及び11の軟質フォームの見掛けコア密度をJIS K 7222に準拠して測定した。また、硬さ(25%ILD)をJIS K 6400−2 D法に準拠して測定した。
【0042】
(3)黄色度及び黄変度
上記[2]で製造した実施例1〜17及び比較例1、2、7、9及び11の軟質フォーム、及びこの軟質フォームを熱プレスして成形した成形品、の黄色度を測定し、黄変度を算出して評価した。
(a)軟質フォーム
上記[2]で製造した軟質フォームから、寸法が約30mm×50mm(厚さ10mm)の試験片を切り出し、黄色度を色差計(スガ試験機社製、型式「SMカラーコンピュータSM−T」)により測定した(表6〜10では「未プレス、初期YI値」と表記する。)。その後、試験片を容量5リットルの攪拌器付きのデシケータ中のガラス壁面に同一高さになるようにして取り付け、蓋をして密閉し、次いで、2ミリリットルのNOガスを注入し、均一に攪拌した。この状態で室温(20〜30℃)下に3時間放置し、その後、試験片を取り出し、上記と同様にして黄色度を測定した(表6〜10では「未プレス、NOx暴露後YI値」と表記する。)。その後、NOx暴露後YI値から初期YI値を差し引いて黄変度を算出した(表6〜10では「ΔYI値」と表記する。)。
【0043】
(b)熱プレス成形品
上記[2]で製造した軟質フォームから、寸法が約200mm×200mm(厚さ10mm)の試験片を切り出し、この試験片をブラカップの成型機にセットし、200℃で120秒熱プレスして成形品を作製した。成形品を試験片とし、上記と同様にして黄色度を測定し(表6〜10では「プレス後、初期YI値」と表記する。)、その後、上記と同様にしてNOxに暴露し、同様にして黄色度を測定した(表6〜10では「プレス後、NOx暴露後YI値」と表記する。)。次いで、NOx暴露後YI値から初期YI値を差し引いて黄変度を算出した(表6〜10では「ΔYI値」と表記する。)。
【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

【0047】
【表9】

【0048】
【表10】

【0049】
表6〜8によれば、実施例1〜17では、発泡後、ガスシュリンク及び硬化不良を生じることなく、良好な外観を有する軟質フォームが得られていることが分かる。また、黄色度は、熱プレス成形により極く僅かに大きくなるが全く問題にならない程度である。更に、黄変度は、軟質フォームそのもの、及び熱プレス成形品のいずれも十分に小さく、衣料用等として熱プレスしたときも含め、十分な耐黄変性を有していることが分かる。特に、イソシアネート指数が高い実施例5、9では、より黄変度が小さく、また、実施例12では、水の含有量が上限値に近い(配合された「33LV」に含有されるDPGを考慮した場合、水の含有量は2.79質量部となる。)であるが、イソシアネート指数が高く、且つポリエーテルポリオールを多量に用いているため、黄変度の小さい軟質フォームが生成している。
【0050】
更に、より多くのポリイソシアネートを用いた実施例13,及びより多くのポリイソシアネートを使用し、且つ多量の低分子量ポリオールを用いた実施例16、17、特に、多量のポリイソシアネートとともに、より多くの低分子量ポリオールを用いた実施例17では、特に熱プレス後であっても、より優れた耐黄変性を有する軟質フォームが得られていることが分かる。
また、密度及び硬さは原料組成により変化するが、実施例1〜17のいずれにおいても衣料用等として問題のない範囲内である。
【0051】
一方、表9、10によれば、ポリオールの全量がポリエーテルポリオールであり、ポリオール化合物を用いておらず、金属系触媒を使用した比較例1では、良好な外観を有する軟質フォームが得られているものの、熱プレスにより黄色度が少し高くなり、黄変度は軟質フォームそのもの、及び熱プレス成形品のいずれも極めて大きく、劣っていることが分かる。また、水が下限値未満(「33LV」に含有されるDPGを考慮した場合、水の含有量は1.196質量部となる。)であり、ポリイソシアネートが下限値未満である比較例2、イソシアネート指数が下限値未満である比較例7、ポリイソシアネートの含有量が下限値未満である比較例9、及びポリオール化合物が含有されておらず、且つポリイソシアネートの含有量が下限値を大きく下回っている比較例11でも、良好な外観を有する軟質フォームが得られているものの、いずれも黄変度が大きく、耐黄変性が劣っている。
【0052】
更に、水の含有量が上限値を超えている比較例3、ポリエーテルポリオールの重量平均分子量が下限値未満である比較例4、ポリエーテルポリオールの含有量が下限値未満である比較例6、イソシアネート指数が上限値を超えている比較例8,及びポリイソシアネートの含有量が上限値を超えている比較例10では、発泡後、泡体が収縮し、軟質フォームが得られなかった。また、ポリエーテルポリオールの重量平均分子量が上限値を超えている比較例5では、架橋構造が十分に形成されず、硬化不良で、軟質フォームが得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、軟質フォームの技術分野において幅広く利用することができる。特に、汎用の安価な原料を用いているにもかかわらず、適度な密度及び硬さを有し、且つNOx等の影響による経時にともなう黄変が十分に抑えられるため、衣料用途において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、水及び触媒を含有するフォーム原料を反応、硬化させてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
上記ポリオールを100質量%とした場合に、重量平均分子量1500〜4000のポリエーテルポリオールが80〜97質量%、分子量400以下のポリオール化合物及び重量平均分子量400以下の低分子量ポリオールのうちの少なくとも一方が3〜20質量%含有され、
上記ポリオールを100質量部とした場合に、上記ポリイソシアネートは38〜57質量部であり、且つイソシアネート指数が100〜115であって、
上記ポリオールを100質量部とした場合に、上記水は1.2〜2.8質量部であり、
上記触媒としてアミン系触媒が用いられる、ことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
上記ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネートである請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
上記ポリオール化合物の分子量及び上記低分子量ポリオールの重量平均分子量が、いずれも135以下である請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2011−127076(P2011−127076A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289757(P2009−289757)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】