説明

軟質ポリウレタン発泡体

【課題】
通気性のある軟質ポリウレタン発泡体の製造コストを削減する。
【解決手段】
通気性のある軟質ポリウレタン発泡体を製造するにあたりポリエーテルポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、及び添加剤を含む軟質ポリウレタンの製造原料に加えて、シロキサン化合物を使用する本発明の製造法により、公知の軟質ポリウレタン発泡体の製造において必要とされる後処理工程、すなわち爆発処理によるセル膜の除去工程を省略できることから、通気性のある軟質ポリウレタン発泡体の製造コストを削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形時にセル膜が数多く破られることで高い通気性を有する軟質ポリウレタン発泡体及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルターや洗浄スポンジ等に用いられる通気度の高い軟質ポリウレタン発泡体を得るため、発泡後の軟質ポリウレタン発泡体に除膜処理を行うことによってセル膜を除去して無膜軟質ポリウレタン発泡体とすることが行われている。前記除膜処理としては、軟質ポリウレタン発泡体に酸素等を注入して点火させることによりセル膜を破壊する爆発処理が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−56941号公報
【特許文献2】特開2003−521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の爆発処理によるセル膜の除去を行うと、軟質ポリウレタン発泡体に含まれている化学物質が一部解離してアルデヒド類又は酸などの水溶性不純物が発生し、においの原因となったり、シックハウス症候群の要因となったりすることがある。さらに、前記の除膜処理によって発生するアルデヒド類や酸は、自動車等の分野において問題視されている、浮遊粒子状物質及び光化学オキシダントの原因の一つである揮発性有機化合物(VOC)にもなりうる。また、前記の除膜処理によって発生したアルデヒド類や酸は、そのまま無膜軟質ポリウレタン発泡体に残留し、前記シックハウスやVOCの問題が長期に亘り生じることもある。しかし、現実に爆発処理された軟質ポリウレタン発泡体を使用する際には、用途等に応じた安全基準に合格することが配慮されており、シックハウス等の被害については、厚生労働省によりアセトアルデヒドの室内濃度指針値等を満たしており、何ら問題を生じるものではない。
そこで、より環境等に配慮した素材を提供すべく、前記除膜処理によって発生し、残留しているアルデヒド類や酸を除去又は低減する方法として、爆発処理によりセル膜を除去した軟質ポリウレタン発泡体を水蒸気処理する方法が提案されている。しかしながら、軟質ポリウレタン発泡体を成形した後、爆発処理及び水蒸気処理を実施するためには、当該処理用の設備を整えた上での当該処理工程の実施するため、軟質ポリウレタン発泡体の製造コストを高いものにしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、上記の課題を鑑みて鋭意検討した結果、爆発処理及び水蒸気処理といった、軟質ポリウレタン発泡体の通気性を高める後処理工程を省略でき、且つ通気性に優れた新規な軟質ポリウレタン発泡体を製造できる方法及び通気性の高い軟質ポリウレタン発泡体を見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(7)に関するものである。
(1)ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、及び添加剤を含むポリウレタン原料から形成された軟質ポリウレタン発泡体であって、
前記ポリオールがポリエーテルポリオールであり、さらに前記ポリウレタン原料として、式I:
【化1】


(式中、R、R、R及びRのそれぞれが、低級アルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRが一緒になって共有結合を示し、かつnが3乃至5を示す)で表されるシロキサン化合物を使用した、
軟質ポリウレタン発泡体。
(2)前記シロキサン化合物が、R、R、R及びRがメチル基であり、かつnが3である化合物、
、R、R及びRがメチル基であり、かつnが4である化合物、
、R、R及びRがメチル基であり、かつnが5である化合物、
がエチル基であり、R、R及びRがメチル基であり、かつnが3である化合物、
がエチル基であり、R、R及びRがメチル基であり、かつnが4である化合物、
がエチル基であり、R、R及びRがメチル基であり、かつnが5である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRがメチル基であり、かつnが3である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRがメチル基であり、かつnが4である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRがメチル基であり、かつnが5である化合物、
、R、R及びRがビニル基であり、かつnが3である化合物、R、R、R及びRがビニル基であり、かつnが3である化合物、
、R、R及びRがビニル基であり、かつnが4である化合物、
、R、R及びRがビニル基であり、かつnが5である化合物、
及びRがビニル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが3である化合物、
及びRがビニル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが4である化合物、
及びRがビニル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが5である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが3である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが4である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが5である化合物、
及びRがメチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが3である化合物、
及びRがメチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが4である化合物、並びに
及びRがメチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが5である化合物からなる群から選ばれる、(1)に記載の軟質ポリウレタン発泡体。
(3)前記シロキサン化合物が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選ばれる、(1)の軟質ポリウレタン発泡体
(4)セル数が40〜50個/25mm、通気度が130〜160である、軟質ポリウレタン発泡体。
(5)(1)に記載の軟質ポリウレタン発泡体を含む、フィルター。
(6)軟質ポリウレタン発泡体の製造法であって、
ポリエーテルポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、添加剤及び
式I:
【化2】


(式中、R、R、R及びRが、それぞれ低級アルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRが一緒になって共有結合を示し、かつnが3乃至5を示す)で表されるシロキサン化合物、とイソシアネートを反応させる、軟質ポリウレタン発泡体の製造法。
(7)前記イソシアネートと反応させる工程が、ワンショット法又はプレポリマー法で実施される、(6)に記載の軟質ポリウレタン発泡体の製造法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリウレタン発泡体のセル膜を爆発処理することによって生じる、ごく微量のアルデヒド類又は酸などの水溶性不純物が発生することなく、さらに1工程で成形することができることから、除膜された軟質ポリウレタン発泡体を製造するための製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る軟質ポリウレタン発泡体の製造法について説明する。
本発明に係る軟質ポリウレタン発泡体は、
ポリエーテルポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、添加剤及び
式I:
【化3】


(式中、R、R、R及びRが、それぞれ低級アルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRが一緒になって共有結合を示し、かつnが3乃至5を示す)で表されるシロキサン化合物、とイソシアネートをワンショット法又はプレポリマー法で反応させることにより製造される。
【0008】
本発明に係る軟質ポリウレタン発泡体の製造は、前記のポリエーテルポリオールとイソシアネートとのウレタン化反応を行なう場合には、ワンショット法又はプレポリマー法が採用される。ワンショット法は、ポリエーテルポリオールとイソシアネートとを直接反応させる方法である。プレポリマー法は、ポリエーテルポリオールとイソシアネートとを事前に反応させて末端にイソシアネート基又は水酸基を有するプレポリマーを得、それにポリエーテルポリオール又はイソシアネートを反応させる方法である。ワンショット法はプレポリマー法に比べて製造工程が一工程で済み、製造条件の制約も少ないことから好ましく、製造コストを低減させることができる。
【0009】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体としては、軟質スラブポリウレタン発泡体が好ましい。軟質スラブポリウレタン発泡体は上記ワンショット法により混合攪拌された反応原料(反応混合液)をベルトコンベア上に吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に反応原料が常温、大気圧下で自然発泡し、硬化することで得られる。その後、乾燥炉内で硬化(キュア)し、所定形状に裁断される。その他、モールド成形法、現場施工スプレー成形法等によってポリウレタン発泡体を得ることができる。
【0010】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体の製造に使用される、前記のポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。その他、ポリエーテルポリオール中でエチレン性不飽和化合物を重合させて得られるポリマー粒子が分散したポリマーポリオール(重合体ポリオール)も使用することができる。
【0011】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体の製造に使用される、前記の触媒としては、トリエチルアミンやテトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を用いることができる。前記の触媒の一般的な量は、前記のポリエーテルポリオール100重量部に対して0.01〜2.0重量部である。
【0012】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体の製造に使用される、前記の発泡剤としては、水、あるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、原料組成物の反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤の量は適宜とされるが、水の場合、前記のポリエーテルポリオール100重量部に対して0.5〜7.0重量部程度が好適である。
【0013】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体の製造に使用される、前記の整泡剤としては、軟質ポリウレタン発泡体の製造に用いられる公知の発泡剤であればよく、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。前記の整泡剤の一般的な量は、前記のポリエーテルポリオール100重量部に対して0.1〜3.0重量部である。
【0014】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体の製造に使用される、前記の添加剤としては、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、及び着色剤等を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、公知のものが使用される。例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾオキサジノン系化合物が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、又は2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸などを挙げることができる。難燃剤は、有機リン酸化合物等からなるものを挙げることができる。
【0015】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体の製造に使用される、前記のイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、又はジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、又はポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0016】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体の製造に使用される、前記の式I:
【化4】


(式中、R、R、R及びRのそれぞれが、同一又は異なっていてもよく低級アルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRが一緒になって共有結合を示し、かつnが3乃至5を示す。)で表されるシロキサン化合物としては、例えば、下記の式(a)〜式(w)で表される化合物が挙げられる。なお、低級アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はt−ブチル基等の直鎖又は分岐した炭素数1〜4個のアルキル基を意味する。アルケニル基は、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル−1−イル基又は2−プロペニル−2−イル基等の炭素数1乃至3個のアルケニル基を意味する。
式Iで表されるシロキサン化合物は、前記のポリエーテルポリオール100重量部に対して3〜7重量部程度が好適である。
【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】


【化12】


【化13】


【化14】


【化15】


【化16】


【化17】


【化18】


【化19】


【化20】


【化21】



【化22】


【化23】


【化24】


【化25】


【化26】


【化27】


【化28】


式Iで表されるシロキサン化合物は、市販品、又は公知文献、例えば特開平7−33880号公報、特開平3−234768号公報及び特開2007−23021号公報等に開示された製造法及びそれに準ずる製造法により入手できる。
【実施例】
【0017】
次に実施例及び比較例にて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1(ワンショット法)
以下の配合からなるポリエーテルオール、触媒、発泡剤、整泡剤及びシロキサン化合物を混合した。ついで得られた混合物とイソシアネート(この場合、インデックスは115である。)を500ccビーカに入れ、プロペラミキサーを用いて20℃で撹拌することにより発泡させた。また、混合後の反応混合液を箱体(500×500×500mm)に注入し、雰囲気温度が70℃の加熱炉に静置し加熱反応(硬化)させることにより、軟質ポリウレタン発泡体を形成した。
(原料)
ポリエーテルオール:
三洋化成工業製ポリエーテルオールGP3050F(OHV56) 100重量部
発泡剤:
蒸留水 4重量部
触媒:
花王株式会社製カオライザー(登録商標)No.25
N,Nジメチルアミノヘキサノール 0.1重量部
城北化学製スズ触媒MRH110
スタナスオクトエート 0.21重量部
整泡剤:
エボニック製シリコーン整泡剤TEGOSTAB BF2370 1重量部
イソシアネート:
日本ポリウレタン工業製TDI-80 54.8重量部
シロキサン化合物:
東レダウコーニング製環状シロキサンSH-245(デカメチルシクロペンタシロキサン) 4重量部
【0018】
実施例2
シロキサン化合物として東レダウコーニング製環状シロキサンSH-245(デカメチルシクロペンタシロキサン)を6重量部使用した以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0019】
実施例3
シロキサン化合物としてヘキサメチルシクロトリシロキサン(SIGMA-ALDRICH社より購入。)を4重量部使用した以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0020】
実施例4
シロキサン化合物としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(SIGMA-ALDRICH社より購入。)を4重量部使用した以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0021】
実施例5
シロキサン化合物としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(SIGMA-ALDRICH社より購入。)を4重量部、城北化学製スズ触媒MRH110を0.15重量部使用し、日本ポリウレタン工業製TDI-80(54.8重量部)の代わりに日本ポリウレタン工業製TDI/クルードMDIブレンドイソシアネート コロネート CORONATE 1021を58.8重量部使用した以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。

実施例6
ポリオールとして、ポリマーポリオール(EL941、旭硝子製ポリマーポリオール、エクセノール941、固形分40%、水酸基価34)を100重量部使用した以外は、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を調整した。

【0022】
比較例1
シロキサン化合物を使用しないこと以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
比較例2
シロキサン化合物として東レダウコーニング製環状シロキサンSH-245(オクタメチルシクロテトラシロキサン)を3重量部使用した以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0023】
比較例3
シロキサン化合物を使用せずに、東レダウコーニング製シリコンオイルSH-200を4重量部使用した以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0024】
比較例4
シロキサン化合物の使用しないこと以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造し、ついで得られた軟質ポリウレタン発泡体を公知の爆発処理方法により処理した。
【0025】
比較例5
シロキサン化合物を使用せずに、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0026】
比較例6
シロキサン化合物を使用せずに、城北化学製スズ触媒MRH110を0.15重量部使用し、日本ポリウレタン工業製TDI-80(54.8重量部)の代わりに日本ポリウレタン工業製TDI/クルードMDIブレンドイソシアネート コロネート CORONATE 1021を58.8重量部使用した以外、実施例1と同様に処理して、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0027】
以上の実施例1〜5及び比較例1〜6のそれぞれにおいて製造された軟質ポリウレタンの物性を測定し、その結果を以下の表に纏めた。



なお、各物性は、以下のJIS規格に準拠して評価した。
通気性(L/min):
JIS K 6400−7 B法:2004
セル数:
JIS K 6400−1:2004
密度(kg/m):
JIS K 7222:1999
硬さ(N):
JIS K 6400−2:2004
引張強度(kPa):
JIS K 6400−5:2004
伸び:
JIS K 6400−5:2004
圧縮残留歪(%):
JIS K 6400−4:2004
以上の結果から、本発明のシロキサン化合物を使用する軟質ポリウレタン発泡体の製造法により得られた軟質ポリウレタン発泡体(以下、「本発明の軟質ポリウレタン発泡体」と略。)は、シロキサン化合物を使用することにより通気性に優れていることが明らかある(実施例1、実施例5、比較例1、比較例3及び比較例6を参照)。しかも本発明の軟質ポリウレタン発泡体は、爆発処理をした軟質ポリウレタン発泡体と同等の通気性を備えることが明らかである(実施例1及び比較例4を参照)。すなわち、本発明のシロキサン化合物を使用する軟質ポリウレタン発泡体の製造法により、爆発処理というようなセル膜を除く後処理を省略できることが明らかである。また、シロキサン化合物の使用量としては、3.5重量部〜7重量部が望ましいことが明らかになった(実施例1、実施例2、及び比較例2を参照)。さらにシロキサン化合物として、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンの使用により、優れた通気性を有する軟質ポリウレタン発泡体を製造できることが明らかである(実施例1〜5、比較例1、比較例3、比較例5及び比較例6を参照)。
【産業上の利用可能性】
【0028】
公知の通気性を具備する軟質ポリウレタン発泡体は、例えば排気管及び空気清浄機等の空調機器に搭載する抗菌フィルター及び空気清浄フィルター、自動車や船舶のエンジン用エアーフィルター、工業用水、養殖池の循環水、上水及び下水等における配管用フィルター浄水用フィルター及び流体浄化用フィルター、ガソリンや軽油等の燃料油改質(燃費改良)用フィルター、並びに潤滑油改質用フィルターに使用されている。本発明により、公知の軟質ポリウレタン発泡体に匹敵する通気性を有する、軟質ポリウレタン発泡体が安価に提供されるので、前記のフィルターの製造コストを削減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、及び添加剤を含むポリウレタン原料から形成された軟質ポリウレタン発泡体であって、
前記ポリオールがポリエーテルポリオールであり、さらに前記ポリウレタン原料として、式I:
【化29】


(式中、R、R、R及びRのそれぞれが、低級アルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRが一緒になって共有結合を示し、かつnが3乃至5を示す)で表されるシロキサン化合物を使用した、
軟質ポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記シロキサン化合物が、R、R、R及びRがメチル基であり、かつnが3である化合物、
、R、R及びRがメチル基であり、かつnが4である化合物、
、R、R及びRがメチル基であり、かつnが5である化合物、
がエチル基であり、R、R及びRがメチル基であり、かつnが3である化合物、
がエチル基であり、R、R及びRがメチル基であり、かつnが4である化合物、
がエチル基であり、R、R及びRがメチル基であり、かつnが5である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRがメチル基であり、かつnが3である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRがメチル基であり、かつnが4である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRがメチル基であり、かつnが5である化合物、
、R、R及びRがビニル基であり、かつnが3である化合物、R、R、R及びRがビニル基であり、かつnが3である化合物、
、R、R及びRがビニル基であり、かつnが4である化合物、
、R、R及びRがビニル基であり、かつnが5である化合物、
及びRがビニル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが3である化合物、
及びRがビニル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが4である化合物、
及びRがビニル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが5である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが3である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが4である化合物、
及びRがエチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが5である化合物、
及びRがメチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが3である化合物、
及びRがメチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが4である化合物、並びに
及びRがメチル基であり、R及びRが結合して共有結合を表し、かつnが5である化合物である、請求項1に記載の軟質ポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記シロキサン化合物が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサンである、請求項1に記載の軟質ポリウレタン発泡体。
【請求項4】
セル数が40〜50個/25mm、通気度が130〜160である、軟質ポリウレタン発泡体。
【請求項5】
請求項1に記載の軟質ポリウレタン発泡体を含む、フィルター。
【請求項6】
軟質ポリウレタン発泡体の製造法であって、
ポリエーテルポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤、添加剤及び
式I:
【化30】

(式中、R、R、R及びRが、それぞれ低級アルキル基又はアルケニル基を示し、R及びRが一緒になって共有結合を示し、かつnが3乃至5を示す)で表されるシロキサン化合物、とイソシアネートを反応させる、軟質ポリウレタン発泡体の製造法。
【請求項7】
前記イソシアネートと反応させる工程が、ワンショット法又はプレポリマー法で実施される、請求項6に記載の軟質ポリウレタン発泡体の製造法。

【公開番号】特開2011−37987(P2011−37987A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186691(P2009−186691)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】