説明

軟質組織増強充填剤、生物活性剤および液状又はゲル状の他の生体適合材料を注入するための注入装置

患者の軟質組織内へ物質を自動的に注入することができる注入装置が、ここに記載されている。この装置は、低粘度から高粘度にわたる物質を、ユーザが選択した所定の注入速度で注入することができ、伝統的な注射器よりも、オペレータがより良く制御することができるようにする。装置は、一つよりも多い物質の混合および/または注入用の固形物質の再構成を可能にしている。ここに記載された注入装置は、オペレータが、一つ若しくはそれ以上の低粘度から高粘度にわたる液体,ゲル状の軟質組織の増強充填剤,一つ若しくはそれ以上の薬剤,一つ若しくはそれ以上の生体適合性物質、或いはそれらの組み合わせを、容易に注入できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2008年5月30日に出願された米国仮特許出願第61/057,703号、及び2008年6月20日に出願された米国仮特許出願第61/074,538号の利益を主張するものであり、これらの各々の開示事項は、この特別な引用により、その全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、軟質組織の増強充填剤(soft-tissue augmentation fillers),生物活性剤、及び他の生体適合材料を注入するのに有用な装置に関する。
【背景技術】
【0003】
生物活性剤や組織増強充填剤の注入は、全くもって普通のことである。通常、生物活性剤や組織増強充填剤は、手動のプランジャを備えた伝統的な皮下注射器を用いて、手動で注入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝統的な注射器に伴う一つの重大な問題は、お粗末な人間工学性に起因して、適切に用いることが難しいということである。
【0005】
手動のプランジャを備えた皮下注射器を用いる際に通常よく遭遇する今一つの問題は、注入速度の制御の困難性、特に、注入物質(injectable substance)が非常に粘度が高い場合、注入されるべき組織が高密度である場合、或いはこれら2つが組み合わさっている場合における、注入速度の制御の困難性である。
このような場合、注入物質を患者体内へ押し出すのに要する力が、注入速度の制御および注射器の取り扱いを著しく難しいものにする。通常、注入物質を注射針(ニードル:needle)から患者の組織(tissue)内へ押し出すために注射器のプランジャに十分な押出力を加えようとする努力の一環として、注射器への追加的な軸方向の力に関連した患者の痛みと同様に、信頼性の低い注入速度が遭遇される。
【0006】
注入物質についての今一つの問題は、注入に先立つ再構成(reconstitution)に関連している。或る種の物質は、注入に先立って迅速にもどされる(再構成される)必要がある。注射にまつわる患者の不快感は、注射の予感(anticipation)そのものに在ると言ってもよく、従って、結果として患者を緊張させ、それ故、注射に対してより不快に導くことになる。注入物質(injectable)を注入直前に手動でもどす(再構成する)ことは、患者に対して精神的および肉体的の両方の不快感を起こさせることになり得る。注入直前に装置自体の内部で注入物質を自動的にもどす(再構成する)ことができる装置は、将来有望な技術になることであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、軟質組織用の手持ち操作式(ハンドヘルド:hand-held)の装置が提供される。本発明の或る例示的な実施形態では、概して、注入物質を収容するのに好適で注射針に結合可能なカートリッジと;該カートリッジを収容するように構成された本体つまり殻体(シェル:shell)と;前記針を通じてカートリッジから注入物質を移動させるための、モータ及びピストンを有する駆動機構と;この駆動機構を動作させるための、例えば前記殻体内に収容されたバッテリ等の電源と;前記駆動機構に繋がれ、使用者(ユーザ:user)が定めた注入速度が設定され得る、ユーザがプログラム可能なコントローラと、を備えた注入装置が提供されている。
この例示的な実施形態では、有利なことに、装置は、約50ニュートン(N)までの力で、例えば約100Nまでの力で、例えば約200N若しくはそれ以上までの力で、ユーザが決めた注入速度で、カートリッジから、そして針を通じて、注入物質を注入することができる。カートリッジは、その形状が実質的に円筒形状であってもよく、約0.25インチ(inch)から約1インチの間、或いは、約0.18インチから約0.35インチの間、の内径を有していてもよい。
【0008】
更に、装置は、例えば、皮層充填剤(dermal filler)などの比較的高粘度の物質を、前記ユーザが定めた注入速度で、決められた分量だけ精密に供給つまり注入することができるように構成されている。例えば、装置は、特に、精密な分量の架橋された(cross-linked)ヒアルロン酸ベースの皮層充填剤を実質的に一定速度で軟質組織内に注入する場合に、良く制御された注入を可能にする上で有利である。
【0009】
幾つかの実施形態では、装置は、何らの外部配線,外部電源,電線管(コンジット:conduit)も、或いはその他の作動のための外部の構成要素も必要としない、内蔵型(self-contained)で手持ち操作式の装置として構成されている。便利なことには、装置は、片手のみの操作を要するだけであり、医師により容易に操作できるように十分に軽量である。
【0010】
有利なことには、本装置の多くのものは、従来の技法および手動操作の注射器を用いてでは、物質を注入することが極めて難しいか又は注入することが不可能でさえある、非常に細い針を通して、物質の非常によく制御され精密に定量された注入をもたらすように構成されている。
【0011】
コントローラは、ユーザが、物質の注入速度を、予め設定された、ユーザが選択した、速度に設定することを許容できるように、構成されている。選択に利用可能な注入速度の範囲は、例えば、約0.001mL/秒と約1mL/秒との間で定められる任意の注入速度であってもよい。
更に、注入装置は、最小でも10Gから50Gの大きさまでの口径(ゲージ:gauge)を有する針を通じて、例えば約23Gから約34Gまでの間の針、例えば約27Gから約32Gまでの間の針、を通じて、ユーザが定めた注入速度で、物質を注入することができる。注射針は、約1/4インチから約2インチまでの間の長さ、或いは約1/2インチから約1.5インチまの間の長さ、を有していてもよい。
【0012】
例えば、本発明に従った数多くの装置は、ユーザが、例えば医師が、低粘度から高粘度にわたる液状またはゲル(gel)状の軟質組織増強充填剤,1つ若しくはそれ以上の生物活性剤,1つ若しくはそれ以上の他の生体適合材料、或いはそれらの組み合わせ(以下、適宜、これらを総称して「注入物質(injectable material)」と言う)を、予め選択された注入速度で、精密な分量だけ、容易に注入することができるように設計されている。
【0013】
本発明の別の態様では、例えば皮層充填剤などの粘性物質を患者の軟質組織内へ注入する方法が提供されている。或る実施形態では、軟質組織内に物質を注入する方法であって、針を有する、モータ付きの注入装置を用意するステップと;患者の軟質組織中に注入されるべき皮層充填剤物質を収容するカートリッジを用意するステップと;ユーザが決めた前記物質の注入速度を前記装置内にプログラムするステップと;前記カートリッジを前記装置内に挿入するステップと;前記装置を用いて、前記物質を、前記プログラムされた注入速度で、前記カートリッジから前記針を通って前記患者の軟質組織内へ注入するステップと、を概して備えている方法が提供されている。
装置は、有利なことには、約50ニュートン(N)から約200N若しくはそれ以上までの間の力で、ユーザが決めた注入速度で、注入物質を注入することができるように構成されてもよい。
【0014】
本発明の更に別の態様では、軟質組織内に物質を注入する方法であって、第1物質と、この第1物質とは別の第2物質とを収容する、モータ付きの注入装置を用意するステップと;前記装置内で、前記第1物質を前記第2物質と混合し、患者の軟質組織内へ注入されるべきプロダクト(product)を創り出すステップと、を備えた方法が提供されている。この方法は、更に、ユーザが決めた前記プロダクトの注入速度を前記装置内にプログラムするステップと;前記装置を用いて、前記プログラムされた注入速度で、前記患者の軟質組織内へ前記プロダクトを注入するステップと、を備えている。
或る特定の実施形態では、前記第1物質は、乾燥した物質、例えば粉状または凍結乾燥された物質であり、前記第2物質は、例えば、第1物質を再構成するのに適した、生理食塩水,溶媒または液体である。
【0015】
本発明の一つの態様では、前記注入物質は、皮層充填剤(dermal filler),ヒアルロン酸ベースの皮層充填剤,ヒドロゲル,オルガノゲル,キセロゲル,カプセル化された(encapsulated)及び/又は架橋された(cross-linked)生体材料,シリコーン,グリコサミノグリカン,多糖類,コラーゲン,エラスチン,局部麻酔剤,薬剤(ドラッグ:drug),生物活性剤,抗酸化剤,酵素阻害剤,ビタミン,ミネラル,水,生理食塩水,光治癒性または光活性化物質,pH治癒性あるいはpH活性化物質およびボツリヌス毒素で構成されるグループから選択される。
【0016】
或る実施形態では、前記軟質組織は、皮膚,筋肉,腺,管,腱,小胞およびこれらの組み合わせで構成されるグループから選択される。別の実施形態では、前記皮膚は、顔,首,腕,脇の下,脚部,臀部,腹部,背中,胸部,頭皮,足および手で構成されるグループから選択された領域上に位置している。
【0017】
或る実施形態では、固体の生物活性剤を軟質組織内へ注入する方法であって:内側本体と、外側本体および注射針とを備えた注入装置を用意するステップと;患者に注入されるべき固体(solid)であって前記装置の前記内側本体内に収納された固体を用意するステップと;前記固体を溶媒と混合し、それにより固体を再構成し、注入されるべきプロダクト(product)を形成するステップと;注入前に装置にプログラムされた速度で、軟質組織内へプロダクトを供給するに足る大きさの押出力でもって、前記注射針を通して前記プロダクトを患者内に注入するために前記装置を用いるステップと、を備えた方法が記載されている。
【0018】
或る実施形態では、前記注入物質は、皮層充填剤,ヒアルロン酸ベースの皮層充填剤,ヒドロゲル,オルガノゲル,キセロゲル,カプセル化された及び/又は架橋された生体材料,シリコーン,グリコサミノグリカン,多糖類,コラーゲン,エラスチン,局部麻酔剤,薬剤(drugs),生物活性剤,抗酸化剤,酵素阻害剤,ビタミン,ミネラル,水,生理食塩水,光治癒性または光活性化物質,pH治癒性あるいはpH活性化物質およびボツリヌス毒素で構成されるグループから選択される。
【0019】
<用語の定義>
「指」:ここで用いる「指(ディジット:digit)」は人間の手の指(フィンガー:finger)を指称している。各ディジット(指)つまりフィンガー(人間の手の指)は、別々に若しくは組み合わせて言及されることができる。ディジット(指)1は通常は親指を指称している。ディジット(指)2は通常は人さし指を指称している。ディジット(指)3は通常は中指を指称している。ディジット(指)4は通常は薬指を指称している。ディジット(指)5は通常は小指を指称している。
【0020】
本発明の数多くの利点および特徴は、以下の詳細な説明および添付図面を参照して、より良く評価され、より明瞭に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明に従ったプログラム可能な注入装置の実施形態の斜視図である。
【図1B】前記プログラム可能な注入装置の実施形態の上面図である。
【図1C】前記プログラム可能な注入装置の実施形態の側面図である。
【図2A】本発明の他の実施形態の斜視図である。
【図2B】本発明の他の実施形態の斜視図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態の斜視図である。
【図4】図1Aから図4に示された任意の実施形態の注入装置の表示画面を示す図である。
【図5】図1Aから図1Cに示された装置の内部部品の簡略化した側面図であり、明瞭化のために装置の外側シェルは取り除いて示されている。
【図6】軟質組織内への注入に先立って異なる材料を混合することができるようにした、本発明の実施形態の内部部品の簡略化した斜視図である。
【図7】本発明の更に別の実施形態の内部部品の幾つかの簡略化した斜視図である。
【図8A】本発明の別の実施形態の上面図である。
【図8B】本発明の別の実施形態の側面図である。
【図9】ここの他の箇所で示された任意の実施形態の内部部品の幾つかの論理/ブロック・ダイアグラムを示す図である。
【図10】ここの他の箇所で示された任意の注入装置の可能な表示画面の様々な例を示す図である。
【図11】本発明の装置、例えば図8A及び図8Bに示された装置、の内側本体内に収容された部品の非限定的な組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここに記載されているのは、使用者(ユーザ:user)が、例えば医師が、1つ若しくはそれ以上の低粘度から高粘度にわたる液状またはゲル(gel)状の軟質組織増強充填剤,1つ若しくはそれ以上の生物活性剤,1つ若しくはそれ以上の他の生体適合材料、或いはそれらの組み合わせを、精密に制御されたやり方で注入することができるようにする、新規な注入装置である。幾つかの実施形態では、本装置は、伝統的な手動のハンドヘルド式の注射器では、注入するのが難しいか若しくは不可能な物質の注入をできるようにしている。
【0023】
ここに記載されている装置は、操作者(オペレータ:operator)が、ボタン(button)を押下することにより、任意のサイズの既知の針(needle)を通して、容易に物質を注入できるようにしている。当該装置は、保持するのが容易で、片手で取り扱って操作するのも容易であり、幾つかのケースでは、オペレータの反対側の手で容易に調節できる。この装置は、オペレータが、精密な注入速度つまり注入されるべき物質の押出速度を設定できるようにする。また、この装置は、患者に供給される物質の初期分量(initial volume),注入された分量および残余の分量を表示することができる。
【0024】
或る実施形態では、装置は、外殻体(外側シェル:outer shell)と内側本体(inner body)とで構成されている。内側本体は、1つ若しくはそれ以上のユーザが交換できるカートリッジ(cartridge),1つ若しくはそれ以上の内部駆動機構および以下に記載された任意の他の内部機構を収容している。
【0025】
装置は、考えられる限りでは、患者の身体のあらゆる好適な箇所に注入物質を注入するのに用いることができる。或る実施形態では、ここに記載された装置は、患者の軟質組織に物質を注入するのに用いられる。更なる実施形態では、前記軟質組織は患者の皮膚である。他の実施形態では、軟質組織は、筋肉,腺,管,腱,小胞などであってもよい。本装置は、例えば、顔,首,腕,脇の下,脚部,臀部,腹部,背中,胸部,頭皮,足および/または手に、物質を注入するのに用いることができる。
<外側シェル>
【0026】
ここに記載された装置は、外殻体(外側シェル)を備えている。この外側シェルは、装置の取り扱いを容易にする、人間工学に基づいた形状を有している。更に、本装置は、異なったサイズのオペレータの手に適応することができる。
手のサイズの適応性は、異なる装置サイズ,位置調節可能な装置の把手(ハンドグリップ:handgrip)、或いは交換可能な装置の把手により、達成することができる。例えば、交換可能な装置の把手は、予め定められた様々のサイズとして供給されることができ、或いは、特定のユーザに対して独自のものとすることができる。或る実施形態では、装置の把手は、外側シェルに対しレール(rail)に沿って前方または後方へ摺動することができ、特定の箇所で固定(ロック:lock)されることができる。別の実施形態では、装置の把手は、ロック解除され、取り外されて、外側シェル上の他の位置に再び取り付けることができる。
【0027】
本装置の部品として使用するのに好適な、4つの典型的な外側シェル形状が、図1から3及び8に図示されている。
【0028】
図1A,1B及び1Cは、本発明の実施形態に従った装置100の3つの異なった図を示している。装置100は、ややペン型のデザイン(pen style design)のものである。装置100は、筆記具のそれと同様のやり方でオペレータに保持されるように構成された殻体(シェル:shell)を備えている。
装置100は、オペレータの親指が指置き(フィンガー・グリップ:finger grip)102に位置し、人さし指が注入ボタン102A及び/又は102B並びに注入速度調節ボタン103及び/又は104に係合できる、ように保持される。装置100の重量は、親指と人さし指との間で、中指と手の上にかかっている。
鏡のように配置された(mirrored)指置き102と装置100の両側部上の注入ボタン102A及び102Bがあるので、装置100は、右利き及び左利きの両方のオペレータによって使用されることができる。本発明の範囲内での装置100への適当な変更でもって、装置100が、右利きのオペレータによって限定的に用いられるように設計できることが理解されるべきである。同様に、装置100は、本発明の範囲内で、左利きのオペレータによって限定的に用いられるように変更することができる。
【0029】
装置100は、電源ボタン105を用いて、電源投入(電源オン:power on)及び電源遮断(電源オフ:power off)される。装置は、更に、オペレータによる参照のために、装置に関する情報をもたらすディスプレイ(display)106を備えている。ディスプレイ106上の情報は、メニュー方式のマルチボタン(menu driven multi-button)108を用いて調節することができ、ボタン109を用いて確認することができる。
【0030】
注入されるべき物質を収容したカートリッジ(図1A,1B及び1Cにおいては不図示)は、端末キャップ107を取り外し、カートリッジをシェル101内に挿入し、端末キャップ107を再度取り付けることにより、装置100内に取り付けることができる。カートリッジは、ルアーチップ(luer tip)113を用いて、注射針112に結合可能である。
【0031】
図2A及び2Bは本発明に従った今一つの装置200を図示しており、この装置は、シェル201の形状を除いては、装置100と実質的に同じである。シェル201は、全体として、ユーザ/オペレータの1つの指に適応するように形付けられている。
或る実施形態では、その指は人さし指(指2)である。装置200の上部は、人さし指が装置上にぴったりと納まるように窪み202を有し、その指の端部に位置するように位置が定められた注入ボタン203を備えている。親指(指1)と中指(指3)とは、かかる装置の2つの向かい合った側面に対して、制御に役立つように楽に置かれる。しかしながら、かかる装置は、当該装置を支持するのに用いられる他の指の任意の組み合わせを伴って、オペレータが快適であると感じる任意の指(指1−5)を用いて、操作できることが考えられる。
装置の近位端部は、指が挿入され、その指の付け根で手の上に位置する、「U字」形状の付属体204を備えている。この付属体204は、柔軟性のある(flexible)材料で構成されることができ、特定のオペレータの指の長さ及び指周りに合うように形成することができる。指長さの適応性は、物理的に異なる装置サイズ或いは長さ及び/又は幅が調節可能な装置によって達成することができる。装置は、当該装置200の長さ方向に延びる側面窓部205及び/又は底面窓部206を備えることもできる。
【0032】
図3は本発明の別の実施形態を図示しており、そこでは、例えば、装置300のシェル301は、ピストルグリップ型(pistol-grip style)のデザインを有している。装置300は、指握り(フィンガーグリップ:finger grips)302を用いて、オペレータの手の中にしっかりと保持されるものである。指2−5は、フィンガーグリップ302にぴったり合うことができる。指1は、注入ボタン303に係合するために自由(フリー:free)なままであることがきる。シェル301は、オペレータがカートリッジ内の注入物質の分量を視認することができる窓部または追加的な開口部を備えていてもよい。
【0033】
図8A及び8Bは本発明に従った別の装置800を図示している。装置800は、ハンドル801を含むシェル800aを備えている。注入ボタン802及び/又は803は、オペレータの人さし指により係合されることができ、前記ボタンは、どちらがオペレータにとって最も快適であるかによって、例えば、当該オペレータが右利きであるか左利きであるかによって、何れかが用いられる。
取出ボタン(エジェクトボタン:eject button)804は、右利き又は左利きの何れのユーザによっても、カートリッジ(不図示)を取り出すのに、容易に操作することができる(同様のボタンが、装置の反対側に配置されている)。電源/メニュー・ボタン805は、当該ボタン805を押し下げることによって装置への電力を制御するように設けることができ、或いは、ディスプレイ806上に表示され、選択ボタン(selector button)807によって調節されるメニューを操作することができる。
注射針808は、ルアー(luer)型の結合具を介してカートリッジに結合されており、前記結合具は、或る実施形態では、図1A−1Cに示された装置100のそれと同様に、装置の前部を通って当該装置内に挿入され、装置800内の所定の箇所に嵌め込まれることができる。
【0034】
装置100,200,300及び800のシェル101,201,301及び800aはそれぞれ、限定されるものではないが、例えば、剛性のある熱可塑性物質(rigid thermoplastics),熱可塑性エラストマー(thermoplastics elastomers),シリコーン(silicone),ガラス,金属,複合材料,カーボン充填剤(carbons fillers)、或いはそれらの任意の組み合わせのような、任意の好適な材料で構成されることができる。
【0035】
用途によっては、装置100,200,300,800が、当該分野で一般に知られている手段によって、定期的に消毒されることが望ましいかもしれない。従って、装置の構成部品は、限定されるものではないが、例えば、乾式加熱,蒸気(加圧滅菌器:autoclave),エチレンオキシド(ethylene oxide)処理,ガンマ放射線,紫外線(UV)光、或いはそれらの組み合わせのような、当該分野で知られている他の方法も含めて、消毒技術に耐性がることが知られている材料で構成されてもよい。また、装置は、石鹸および水または殺菌剤(antiseptic)で清浄化され得る材料で構成することもできる。
【0036】
シェル101,201,301,800aは、一つ若しくはそれ以上の、例えば爪部(detent),窪みおよび/または突出部(extrusion)などの、様々の人間工学的な特徴を有していてもよい。これらの特徴は、更に、片手で容易に、装置を、保持でき、取り扱いができ、操作できるようにする。或いは、必要であれば、反対側の手で調節することもできるようにする。本発明の一つの態様では、装置100,200,300及び800の各々は、外部の電源,電線管(コンジット:conduit)若しくは作動のための他の外部の構成部品を何ら必要としない、実質的に完全な内蔵型に構成することができる。
【0037】
既にここに記載したボタン機能に加えて、若しくは、その代わりに、限定されるべきものではないが、(装置を作動および作動停止させるための)電源ボタン,(注入物質を注入するための)注入ボタン,(カートリッジを取り出すための)エジェクトボタン,(注入のスピード(speed)つまり速度(rate)用の)調節ボタン,(電子表示画面用の)メニューボタン,(電子表示画面のメニュー選択用の)調節ボタン,(メニューにおける調節を容認するための)設定(セット:set)/容認(アクセプト:accept)/入力(エンター:enter)・ボタン、並びにここに記載したボタンの組み合わせの、ボタン機能を有していてもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、ユーザが注入ボタンに加える圧力の大きさに基づいて、物質の送給速度(delivery rate)が調節され得るようにするために、感圧スイッチに連結された注入ボタンが供えられている。
【0039】
更に、注入装置の状態を表示するために、装置の外側シェルが一つ若しくはそれ以上の発光装置を備えていてもよいことが、考慮に入れられる。或る実施形態では、発光装置が発光ダイオード(light emitting diode:LED)である。LEDは、装置の状態を表示するのに用いることができ、また、複数のLEDが、異なる準備段階を表示するために異なる色のものであってもよい。幾つかの非限定的な例は、装置が準備できていないことを表示するために赤色であるLED、或いは装置が準備できていることを表示するために緑色であるLED、を有している。これに加えて、カートリッジの残量が少なく交換を要することを表示するために、黄色のLEDを用いることができる。
【0040】
ここに記載した各装置は、流体あるいは残屑(debris)が装置の内側本体に入ることを防止するために封止(シール:seal)された少なくとも一部分を、有していてもよい。このタイプの医療機器を封止する方法は、当該分野において既知であり、限定されるべきものではないが、オーリング(O-ring),ガスケット(gasket),封止剤(シーラント:sealant),シリコーン(silicone),熱可塑性エラストマー(thermoplastics elastomers),ポリマー(polymer),ポリマー・コーティング(polymer coating),覆い(シース:sheath),部分覆い(partial sheath)及びろう(ワックス:wax)を、含むことができる。上述の外部のボタンは、当該ボタン箇所を通って流体あるいは残屑が装置の内側本体に入ることを防止するために、封止されてもよい。
【0041】
装置は、更に、例えば、図1A−11Cの装置100に示されたディスプレイ106及び図8Aの装置800に示されたディスプレイ806などのような、電子式の表示画面(electronic display screen)を備えていてもよい。画面(スクリーン:screen)は、当該分野で一般に知られているものを含むことができ、それらは、限定されるべきものではないが、有機発光ダイオード(OLED),発光ダイオード(LED)或いは液晶ディスプレイ(LCD)を含む、オペレータによって容易に視認できるものである。
表示画面は、装置に関する、カートリッジに関する、注入物質に関する、及び/又は注入自体に関する、情報を表示することができる。画面は、以下の非限定的な例示的な情報:企業の名称および/またはロゴ(logo),装置の名称,注入物質の名称および/またはロゴ,装置の品番(device part number),注入物質(つまり、製品(プロダクト:Product))の品番,プロダクトの参照番号,装置のロット番号(lot number),プロダクトのロット番号,プロダクトの分量,プロダクトの使用期限,カートリッジの容積,初期プロダクト量,プロダクトの残量,患者の特定の生体構造(anatomy)へ注入されたプロダクトの分量,プロダクトの注入速度,注入の深さ,注射針の力(needle force),注射針の口径(needle gauge),注射針の長さ,患者の名前,患者の身分証明書(identification),注入の部位(患者の生体構造),年月日,時間,言語,(バッテリが充電または交換を要するまでの)使用もしくは注入の回数,装置の状態(例えば、準備済み,カートリッジ未装填,カートリッジ空,エラー),ファームウェアのバージョン(firmware version),電源の状態(オン,オフ,待機),電池(バッテリ:battery)の電力,バッテリの電力残量、及び/又はバッテリの充電状態、の幾つか或いは全てを表示することができる。
【0042】
画面上に表示される情報は、基本メニュー画面上に、或いは一つ若しくはそれ以上のユーザが選択可能な又はユーザが設定できるメニュー画面上に、表示されてもよい。オペレータは、容易に画面をカスタマイズ(customize)することができる。電子表示画面および操作システムは、当該分野で知られている任意の手段によってアップグレード可能な(upgradeable)ソフトウェア又はファームウェアであってもよい。
【0043】
図4は、例示的な表示画面を図示している。この表示画面400は、例えば、限定されるべきものではないが、注入物質(例えばプロダクト)の使用期限(EXP)401,プロダクトの残量(REMAINING)402,使用開始時(STRATING)の分量403,注入の速度(INJECTION SPEED)404及びバッテリの電力表示部405などの、情報を表示することができる。幾つかの他の可能な画面設定および画面上に表示可能な情報がある。当業者であれば、他の可能な設定および画面上で役に立つ情報の断片について想いを巡らすことができ、これらの設定および情報の断片は、本明細書の範囲内にあるものと考えることができる。
<内側本体>
【0044】
装置100,200,300,800の内側本体は、カートリッジから注射針を通って患者の軟質組織内へ注入物質を注入するのに用いられる、一つ若しくはそれ以上の次の構成部品:真空ポンプ,空気ポンプ(エアポンプ:air pump),モータ(例えば、ギアモータ若しくはステップモータ),歯車(例えば、ラック・アンド・ピニオンシステム若しくはウォームギア),直動(リニア:linear)アクチュエータ,リニア・スパインシャフト(spine shaft),リニアガイド,エアピストン,スプリング(例えば圧縮スプリング),磁石、及び/又は交換可能な圧縮エア・カートリッジ、を備えていてもよい。
【0045】
前記内側本体は、内部の構成部品を駆動するために、一つ若しくはそれ以上のモータ或いはアクチュエータを備えることができる。モータ及び/又はアクチュエータは、一つ若しくはそれ以上のギアを駆動することができ、適切な電圧で駆動されることができる。
モータは、7500,5000或いは4480グラム−センチメートル[g cm]の最大失速(停動)トルク(ストールトルク:stall torque)を有することができる。ストールトルクは、100g cm,250g cm或いは396g cmの最小値を有することができる。最大有効トルク(efficiency torque)は、1500g cm1000g cm或いは900g cmの最大値を有することができる。最大有効トルクは、50g cm,75g cm或いは88g cmの最小値を有することができる。
更に、モータ及び/又はアクチュエータのギア比(gear ratio)は、約500対1,350対1或いは300対1の最大値を有することができる。モータ及び/又はアクチュエータのギア比は、約10対1,25対1或いは30対1の最小値を有することができる。或る実施形態では、ギア比は約298対1である。また、或る実施形態では、モータは、(カナダBCビクトリアに在るFirgelli Technologies社の)Firgelli GM12-N20VA-08260-298-R ギアモータである。
【0046】
図5は、非限定的ではあるが、図1A−1Cに示された装置100の一部分を形成する様々な構成部品の例示的な形態500であり、明瞭化の目的でハウジング101を取り外した状態で示している。装置100は、例えば、注射針508に結合されたカートリッジ507と、駆動軸に第1歯車502を取り付けたモータ501と、を備えている。第1歯車502は、第2歯車503を駆動する。当業者であれば、様々の直線駆動速度を達成するのに用いることができる幾つかの歯車/モータの組み合わせがあることを、理解することであろう。
或る実施形態では、装置は一つ若しくはそれ以上のウォームギア(worm gear)を備えていてもよい。第2歯車503は、プランジャ505に係合するラック(rack)504を駆動する。プランジャ505は、カートリッジ507を通って、ラック504により駆動される。プランジャ505がカートリッジ507を通って駆動されるに連れて、注入物質506が注射針508から押し出される。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態では、装置100,200,300及び800は、当該装置が、異なる物質,プロダクトおよび薬剤、或いは装置内の薬剤を、注入に先立って混合することができるようにする、特徴を備えることができる。或る実施形態では、注入物質は、固体(solid)若しくは乾燥した成分、例えば凍結乾燥された成分、及び液体成分、例えば、注入に先立って乾燥成分をもどす(再構成する:reconstituting)ための生理食塩水などの溶媒を、含んでいる。
このような場合、装置の追加的な構成部品が備えられていてもよい。これらの構成部品は、限定されるものではないが、真空ポンプ,エアポンプ,ギアモータ及び/又はステップモータ,一つ若しくはそれ以上の歯車,リニア・アクチュエータ,リニア・スパインシャフト,リニアガイド,エアピストン,一つ若しくはそれ以上のスプリング,一つ若しくはそれ以上の磁石、及び交換可能なエア・カートリッジ、を含んでいてもよい。
【0048】
例えば、図6は、軟質組織内への注入に先立って異なる材料を混合することができるようにした、本発明の実施形態の内部部品の簡略化した斜視図である。装置100,200,300若しくは800は、その何れもが、本発明の範囲内で、注入に先立って物質を混合できるようにする内部構成部品600を備えるように、構成することができることが、理解されるべきである。
構成部品600は、例えば、第2歯車603を駆動する第1歯車602を取り付けた駆動軸を有する、小型化されたモータ601を備えている。当業者であれば、様々の直線駆動速度を達成するのに用いることができる幾つかの歯車/モータの組み合わせがあることを、理解することであろう。
或る実施形態では、装置は一つ若しくはそれ以上のウォームギアを備えていてもよい。第2歯車603は、プランジャ605に係合するラック(rack)604を駆動する。プランジャ605は、カートリッジ607を通って、ラック604により駆動される。
第2物質の小瓶(バイアル:vial)がポンプ(不図示)に取り付けられることができ、そこでは、ポンプが、一方弁(one way valve)610を通って第2物質をカートリッジ607内へ指向させる。第1物質と第2物質とはカートリッジ607内で混合される。カートリッジ607は、錘612を取り付けた第2モータ611からの振動によって攪拌されることができる。不均衡な錘が回転するとき、装置が、カートリッジ607内の混合物を攪拌しながら振動する。プランジャ605がカートリッジ607を通って駆動され、プロダクト606が注射針613から押し出される。
【0049】
第2物質は、第1物質を、薄める,溶かす或いは染み込ませる、のに用いられる物質であってもよい。或る実施形態では、この第2物質は生理食塩水である。今一つの実施形態では、第2物質は水である。また、或る実施形態では、第2物質は、固体の,自由乾燥の(free-dried),冷凍乾燥の(freeze-dried),凍結乾燥の(lyophilized),冷凍の(frozen)、或いは吸出された(aspirated)プロダクト、またはそれらの組み合わせ、を溶解させる任意の好適な溶媒である。
【0050】
装置の内側本体は、当該装置の電子式の機能を制御するために、超小型電子技術(マイクロ・エレクトロニクス)、例えば、少なくとも一つの印刷回路基板(printed circuit board:PCB)を収容していてもよい。前記PCBは、表示画面,ポンプ,モータ,リニア・アクチュエータ及び/又は他の作動部品を制御することができる。PCBは、装置の様々な電子部品に供給される電流および/または電圧を調整するのに用いることができる。
【0051】
或る非限定的な実施形態では、内部構成部品は、ラックを駆動するウォームギアに取り付けられる、上述のモータを備えていてもよい。モータ,LCDディスプレイ,マイクロスイッチ,挿入/取り出し機構、及び光学式のエンコーダは全て、PCBによって制御される。PCBは、当該PCBに隣接して位置するバッテリによって電力供給される。
【0052】
或る実施形態では、装置の内側本体内に収容された少なくとも一つのカートリッジは、手動で、自動で、或いは半自動的に、取り出されることができる。自動的な方法は、一つ若しくはそれ以上の次の非限定的な構成部品:モータ(例えば、ギアモータ若しくはステッパモータ),歯車(例えば、ラック・アンド・ピニオン若しくはウォームギア),リニア・アクチュエータ,エアピストン,スプリング(例えば圧縮または引張スプリング)及び/又は磁石、を用いて工夫することができる。
【0053】
ここに記載した装置は、患者の皮膚を通る注射針の穿刺力(puncture force)及び深さを測定するために用いられる、力または歪ゲージ(strain gauge)を備えていてもよい。注入の深さは、或るタイプのプロダクトおよびその吸収速度にとって、重要になる。穿刺力は、皮膚のタイプ及び注射針の口径(ニードルゲージ:needle gauge)に応じて、針を突き刺す力を調節する役割を果たすので、注入の痛みを軽減するのに役立つ。
【0054】
或る実施形態では、ここに記載された装置は、直動(リニア)可変式の差動変圧器(liner variable differential transformer:LVDT)を備えている。このLVDTは、リニアな変位を測定するのに用いることができる。LVDTは、患者の皮膚または組織を通って針の深さを測定するのに用いることができ、或いは、カートリッジ内へのプランジャの深さを測定し、それにより、装置から投与されたプロダクトの分量を測定する、のに用いることができる。
【0055】
ここに記載された装置は、温度制御ユニットを備えていてもよい。このユニットは、カートリッジを包む被覆(ジャケット:jacket)を備えることができ、それにより、オペレータが、注入前に,注入中に、また注入間に、プロダクトを加熱状態または冷却状態の何れにも維持できるようにする。このことは、或る種のプロダクトにとっては、他のプロダクトに比して、より重要であり、例えば、冷蔵状態に維持しなければならないプロダクトは、この技術により恩恵を受けることになる。
<カートリッジ>
【0056】
装置100,200,300,800は、注入物質を収容するために、例えば、図5及び6に示されたカートリッジ507及び607のような、一つ若しくはそれ以上のカートリッジを備えることができる。このカートリッジは、例えば、剛性のある熱可塑性物質,熱可塑性エラストマー,シリコーン,ガラス,金属,複合材料、或いはそれらの任意の組み合わせのような、任意の好適な構造材料で構成されることができる。
カートリッジは、約1/16インチ(inch)から約1インチの外径を有することができる。また、カートリッジは、約1/16インチから約7/8インチの内径を有することができる。カートリッジの長さは、約1/2インチから約6インチであってもよい。
【0057】
カートリッジは、約0.1ミリリットル(mL)から約60mL、より好ましくは、約0.1mLから約10mLの体積の物質を収容することができる。
カートリッジは、特定の或いは予め定められた分量の、患者に供給されるべき物質を収容することができるものである。カートリッジは、ルアーチップ(luer-tip)式またはスリップチップ(slip-tip)式の端末部(共に通常の医療用注射器に普通に見られる)を有することができる。ルアーチップ式端末部の例が、図5に見ることができる。
【0058】
カートリッジは、様々の外側断面デザイン(outer cross section design)を有することができ、内側本体チャンバは、前記デザインのものを収容するように設計されることができる。外側断面デザインは、次の非限定的な例:円形,楕円形,長方形,正方形、或いは多角形、の形状から選ぶことができる。幾つかの実施形態では、カートリッジは実質的に円筒形状であり、約0.25インチから約1インチの間、或いは約0.18インチから約0.35インチの間、の内径を有している。
【0059】
或る実施形態では、かーとは、例えば図7の形状708のような、ここに記載した装置の一つのみと使用されるユニーク(unique)な形状を有している。
【0060】
カートリッジは、それが完全に挿入されたときに、装置の内側本体内に当該カートリッジを固定(ロック:lock)するのに用いられる、突出部または留め金の形状部を有することができる。この形状部は、装置の内側本体上に備えられた突出部または留め金の形状部であってもよい。
【0061】
カートリッジは、注射針を備えるか、或いは注射針に結合可能に構成されることができる。注射針は、一体化されていてもよく、或いは交換可能な針であってもよい。幾つかの実施形態では、装置は、最小でも10Gの、例えば約23Gと約34Gの間の、例えば約27Gと32Gとの間の、注射針を通じて、ユーザが定めた注入速度で物質を注入するように構成されている。使用される注射針の長さは、当該分野で知られている任意の適切な長さであり、注射針は、例えば約1/16インチと約3インチの間、例えば約1/4インチと約2インチの間、例えば約1/2インチと約1.5インチの間、の長さを有していてもよい。
【0062】
カートリッジは、更に、一方弁(one way valve)を備えていてもよい。この一方弁は、注入されるべき物質の速度または力を調整するのに用いられる調節可能なオリフィス(orifice)を備えていてもよい。また、この一方弁は、手動で若しくは電子的に調節可能であり、内側本体内に備えられた印刷回路基板(PCB)によって制御されてもよい。
【0063】
カートリッジは、当該カートリッジの外側に貼付される電子式の識別タグ(electronic identification tag)を備えることができる。或る実施形態では、この電子識別タグは、無線自動識別(radio-frequency identification:RFID)タグである。RFIDタグに納められた情報は、装置の内側本体内に収容された無線自動読み取り装置(radio-frequency reader)によって処理されることができる。RFIDタグは、カートリッジが挿入されたとき、特定の情報を納め装置に伝えることができる。
RFIDタグ上に蓄えることができる例示的な情報としては、限定されるべきものではないが、製品(プロダクト:Product)の名称,プロダクトの参照番号,プロダクトの品番,プロダクトの処方箋(Rx)番号,プロダクトのロット番号,プロダクトの分量,プロダクトの使用期限,プロダクトの効能,プロダクトの濃度および/またはプロダクトの重量などがある。装置によって処理された情報は、電子表示画面上に表示されることができ、及び/又は装置自体に蓄えられることができる。
【0064】
カートリッジは、一つ若しくはそれ以上の、例えば尾根部(ridge),爪部(detent)及び/又は窪み部(depression)などの、外形状の特徴部を備えることができる。これらの外形状の特徴部は、当該カートリッジが、装置の内側本体内に収容された、光学エンコーダ(optical encoder)及び/又はマイクロスイッチ(micro switch)によって、読み取られ識別されることができるようにする。
外形状の特徴部を用いて識別され得る例示的な情報としては、限定されるべきものではないが、プロダクトの名称,プロダクトの参照番号,プロダクトの品番,プロダクトのRx番号,プロダクトのロット番号,プロダクトの分量,プロダクトの使用期限,プロダクトの効能,プロダクトの濃度および/またはプロダクトの重量などがある。装置によって処理された情報は、電子表示画面上に表示されることができ、及び/又は装置自体に蓄えられることができる。
【0065】
2元的な室(デュアル・チャンバ:dual chamber)を持ったカートリッジが、図7に図示されている。当業者であれば、多元的な室(マルチ・チャンバ:multi-chamber)を持ったカートリッジは、2つのチャッンバに限定されるものではなく、3つ若しくはそれ以上のチャンバを有し得ることを理解するであろう。マルチ・チャンバのカートリッジ700は、少なくとも2つのプランジャを備えている。第1チャンバ703は、生物活性剤や溶媒、或いは任意のその他の適切な流体で満たされることができる。
プランジャ701は、チャンバ703を通って前進させられ、それによりチャンバ703の内容物をプランジャ702へ前進させ、そして、それによりプランジャ702をチャンネル(channel)707へ前進させる。プランジャ702がチャンネル707に到達すると、チャンバ703内の内容物は、チャンバ704内へ向けてチャンネル707を通過することが許容される。チャンバ703内の内容物がチャンネル707を通過する速度は、監視(モニタ:monitor)されることができ、プランジャ701に加えられる力は、それを適切な速度で前進させるために、調節されることができる。
チャンバ704は、生物活性剤や溶媒、或いは任意のその他の適切な流体で満たされることができる。
或る実施形態では、チャンバ704は、もどす(再構成する:reconstitute)ことが必要な固形状の生物活性剤705で、少なくとも部分的に満たされることができる。プランジャ701がプランジャ702の方へ進行するとき、チャンバ703の内容物は、チャンバ704へ移送され、或る実施形態では、固形状の生物活性剤705と混合される。プランジャ701がプランジャ702に到達すると、(休止(pause)である必要はないけれども)内容物が混ざることができるようになる。その後、プランジャ701及び702は一緒になって、チャンバ704の前部に向かって前進させられ、それにより混合物を注射針706から押し出す。
【0066】
幾つかの実施形態では、チャンバ703の内容物は、チャンネル707とは別の手段によって、チャンバ704内へ移送されることができる。或る実施形態では、プランジャ702が半透性であってもよく、プランジャ701に圧力が加えられると、内容物は半透性の膜(メンブレイン:membrane)を通って進行することが許容される。
今一つの実施形態では、プランジャ702を刺し貫いて、チャンバ703の内容物がチャンバ704内へ進行できるようにするために、針が設置されてもよい。他の可能なプランジャの形態は、本明細書の範囲内のものである。
<プロダクト>
【0067】
注入物質は、一つ若しくはそれ以上の生体適合性物質で成っている。この物質には、限定されるべきものではないが、皮層充填剤(dermal filler),ヒアルロン酸をベースにした皮層充填剤(例えば、(カリフォルニア州IrvineのAllergan社の)Juvederm Ultra 及びJuvederm Ultra Plus),ヒドロゲル(すなわち、超吸収性の天然または合成のポリマー),オルガノゲル,キセロゲル,カプセル化された(encapsulated)及び/又は架橋された(cross-linked)生体材料,シリコーン,グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸,デルマチン(dermatin)硫酸,デルマチン,ヘパリン硫酸,ヒアルロン酸,オー硫酸化(o-sulfated)ヒアルロン酸),多糖類(例えば、キトサン,澱粉,グリコーゲン,セルロース),コラーゲン,エラスチン,局部麻酔剤(例えば、ベンゾカイン,クロロプカイン,サイクロメジカイン,ジメゾカイン/ラロカイン,プロポキシカイン,プロカイン/ノボカイン,プロパラカイン,テトラカイン/アメゾカイン,アミノアミド,アルチカイン,ブピバカイン,カルチカイン,シンコカイン/ジブカイン,エチドカイン,レボブピバカイン,リドカイン/リグノカイン,メピバカイン,ピペロカイン,プリロカイン,ロピバカイン,トリメカイン),薬剤,生物活性剤,抗酸化剤,酵素阻害剤(例えば、抗ヒアルロニダーゼ),ビタミン,ミネラル,水,生理食塩水,光治癒性または光活性化物質,ワクチン、及びpH治癒性あるいはpH活性化物質がある。以上に記載されていない他の生体適合性材料も、本明細書の範囲内にあることが、考慮されるべきである。
【0068】
注入物質は、本明細書のどこか他の箇所に記載したように、第1物質と、注入に先立って当該第1物質と混合される第2物質とで構成されてもよい。幾つかの実施形態では、第2物質は、第1の注入期間中の送給を容易にする(例えば、押出力を低減する)生物活性剤である。
更なる生物活性剤としては、限定されるべきものではないが、FKBP−12結合化合物を含むマクロライド系抗生物質を含む抗増殖剤,エストロゲン,シャペロン阻害剤,プロティアーゼ阻害剤,タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤,レプトミシンB,ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマリガンド(PPARγ),ヒポゼミシン,酸化窒素,骨吸収抑制剤(ビスフォスフォネート),上皮細胞増殖因子阻害剤,抗体,プロティアソーム阻害剤,抗生物質,抗炎症剤,アンチセンス・ヌクレオチドおよび形質転換核酸がある。
薬剤としては、また、抗増殖性化合物,細胞増殖抑制化合物,毒性化合物,抗炎症化合物,抗真菌性化合物,ステロイド,化学療法剤,鎮痛剤,抗生物質,プロティアーゼ阻害剤,スタチン,核酸,ポリペプチド,組み換え型微生物を含む増殖因子および送給ベクトル,リポソームなどを含む、生物活性化剤を参照することができる。更なる生物活性剤の組み合わせも、本明細書の範囲内にある。
【0069】
他の注入物質としては、例えばボツリヌス毒素などの毒素がある。このボツリヌス毒素としては、ボツリヌス毒素タイプA,B,C,D,E,F及びGで成るグループ、天然または組み換え型のボツリヌス毒素だけでなく、純粋の或いは純化された(つまり、約150kD)ボツリヌス毒素、から選ぶことができる。
物質は、約1個(ユニット:unit)から約20,000ユニットまでの間の、或いは治療上有効な量の、ボツリヌス毒素を含むことができ、その成分は、1月と5年との間にわたって継続する治療上の効果を達成するのに十分な量のボツリヌス毒素を含むことができる。ボツリヌス毒素は、本明細書のどこか他の箇所に記載したように、装置内で、或いはカートリッジが装置内に配置される前に、再構成されることができる。ボツリヌス毒素は、0.9%塩化ナトリウム(生理食塩水)の殺菌剤で再構成することができる。
【0070】
希釈率は、生理食塩水0.1mL当たり1ユニットから100ユニットのボツリヌス毒素にすることができる。より好ましくは、生理食塩水0.1mL当たり1ユニットから500ユニット、或いは生理食塩水0.1mL当たり1ユニットから10ユニットである。或る実施形態では、0.1mL当たり4ユニットの生理食塩水が用いられる。希釈率は、使用されるボツリヌス毒素のタイプ、或いは使用されるボツリヌス毒素の組み合わせ、に大きく依存している。
<更なる特徴>
【0071】
装置への電力は、交流/直流(AC/DC)電源への直接の接続のような手段によって供給することができ、このことは、電気用プラグ(plug)を用いて成し遂げることができる。上述のように、電源への直接の接続を用いることは、装置が電源コード(power cord)によって規制されることを必要とする。或る実施形態では、装置は、実質的にその全体が、当該装置のシェル内に配置された1つ若しくはそれ以上の電池(バッテリ:battery)によって、電力供給がなされる。バッテリは、限定されるべきものではないが、例えばA,AA(単3),AAA(単4),C(単2),D(単1)及び9Vなどの、普通の非充電型のものであってもよい。
使用される一つ若しくはそれ以上のバッテリは、充電可能なバッテリであってもよい。充電可能なバッテリは、AC/DC電源に対し、誘導式のインタフェースを介して、或いは直接接続のインタフェースを介して、充電することができる。或る実施形態では、充電可能なバッテリは、装置内で充電し、オペレータによって取り外されることのない、恒久的な(permanent)バッテリであってもよい。充電可能なバッテリは、装置内で充電されるが、時間と共に、バッテリが使用期限切れになったり故障した場合には、取り換えることができる、半恒久的な(semi-permanent)ものであってもよい。
充電可能なバッテリは、オペレータが取り換えることができるものであれば、標準タイプのものであってもよく、或いは非標準タイプのバッテリであってもよい。オペレータが取り換えることができる充電可能なバッテリは、装置内で充電されてもよく、或いは装置の外部で充電されてもよい。オペレータが取り換えることができる充電可能なバッテリであって装置の外部で充電されるものは、当該装置用に特定され、迅速な交換のために準備された一連の交換用のバッテリを備えることができる。
【0072】
装置は、一つ若しくはそれ以上の電子式の記憶手段を備えることができる。記憶手段は、内部記憶装置(例えば、ランダムアクセスメモリ,フラッシュメモリ,リードオンメモリ,マイクロドライブ)に組み込まれることができる。内部記憶装置は、PCBに直接に組み込まれていてもよい。
記憶装置は、外部源(external source)のものとすることもできる。装置は、外部の記憶装置が接続または挿入される細長い開口(スロット:slot)を備えることができる。かかる外部記憶装置には、限定されるべきものではないが、ユニーバーサル・シリアル・バス・ドライブ(USB drive),ファイアーワイヤ・ドライブ(firewire drive),フラッシュ及びメディア・カード(flush and media card)、並びにマイクロドライブ(microdrive)がある。
【0073】
内部もしくは外部の記憶装置は、装置および/または当該装置に組み合わされるカートリッジ或いはプロダクトに関する情報を納めることができる。この情報としては、限定されるべきものではないが、オペレーティング・ソフトウェア(operating software),ファームウェア(firmware),装置使用統計データ(device usage statistics),患者情報,患者の名前,患者の身分証明書(identification),製品(プロダクト:Product)の名称,プロダクトの品番,プロダクトのRx番号,プロダクトのロット番号,プロダクトの使用期限,注入の年月日,注入の時間,注入の領域,注入量,注入領域当たりの注入量,全注入量、及びオペレータの名前、がある。
【0074】
プロダクトは、更に、(図示しない)台(スタンド:stand)を備えていてもよい。このスタンドは、装置が使用されていないときに、当該装置を保管しておく便利な置き場所として機能することができる。スタンドは、更に、装置を装填(charge)するのに用いられてもよい。一つのスタンドが、複数の装置を備えてもよい。
スタンドは、更に、ポート(port:例えばUSB,ファイアーワイヤ)を備えており、装置の内部もしくは外部の記憶装置またはスタンド内に収容された装置から、又はこれらに対して、前記ポートからデータを移送することができる。そのデータは、独立型もしくはネットワーク型のコンピュータに蓄えられたデータベース・ソフトウェアと、同期することができる。スタンドは、更に、無線(ワイヤレス)でネットワーク全体にわたる検索のために、注入装置およびそのデータ内容をネットワークで結ぶための部品を備えていてもよい。
【0075】
装置には、電源によって駆動されPCBによって制御されるパワースピーカ(power speaker)を取り付けることができる。このスピーカは、装置が注意(attention)を要するときに可聴音を発することができる。このような注意が必要な例としては、限定されるべきではないが、低バッテリ残量,空カートリッジ,セッティングの確認,電源オン及び電源オフがある。
【0076】
装置は、注入の予定部位で患者の皮膚と接触に至ることができる外側チップ(outer chip)を有していてもよい。当該チップは冷却されてもよく、それにより、皮膚を貫通する穿針に伴う痛みを低減する。チップは金属または合金で製作することができる。金属の冷たい接触だけでも、穿針に伴う痛みを低減するのに必要とされるに十分であるかも知れないが、より極端な冷却が必要とされるかも知れない。冷却の方法は当該分野で既知であり、液体窒素および/またはペルティエ素子(Peltier device)を含んでいてもよい。
【0077】
ここに記載した装置は、少なくとも一つの光源を更に備えることができる。光源は、固定であってもよく、或いは調節可能であってもよい。或る実施形態では、光源は、オペレータが注入の部位を視認するのを助けるために、例えばLEDなどの可視光の光源とすることができる。或る実施形態では、光源は、紫外線(UV)である。UV光は、皮膚内に注入されてしまったプロダクトを硬化させ、或いは活性化するのに用いられる。使用されるUV光線の波長は、注入されたプロダクトの吸収スペクトルに応じて、オペレータにより決定されることができる。或る実施形態では、光線は、例えばレーザポインター(laser pointer)など、レーザによって創り出されてもよい。レーザポインター光は、注入の位置をより精密に制御する場合において、オペレータを助けとなることができる。
【0078】
ここに記載した注入装置は、注入するのに大きな押出力が必要であるために、従来の注射器(シリンジ:syringe)及びプランジャを用いて手動で注入することが難しいか又は不可能でさえある物質を、注入することができるものである。
本装置は、様々の範囲の針の口径(needle gauge)にわたって、非常によく制御された精密なやり方で、そのような物質を注入することができる。針の口径は、最小でも10Gから50Gの大きさまでとすることができる。例えば、針の口径は、約23Gと約34Gの間の、例えば約27Gと32Gとの間の、口径であってもよい。
装置は、約0.001から約1mL/秒の速度でプロダクトを送給することができる。より好ましくは、注入速度は、0.004から0.05mL/秒の間とすることができる。供給の速度は、供給されるべきプロダクトの粘度と注入を受けるべき組織の密度とに、大きく依存している。
一般に、粘性が高いプロダクトは、比較的粘性が低いプロダクトに必要とされる押出力に比べて、より大きな押出力を必要とする。ここに記載した装置は、例えば、所望の速度で、少なくとも約50ニュートン(N)から約200Nまでの押出力でもって、物質を注入することができる。
【0079】
図9は、本発明の例示的な実施形態における内部構成部品の論理ダイアグラムを図示している。
【0080】
装置の構成部品としては、充電ドック・コネクタ(charging dock connector)901、及び、装置の主電源であって例えば再充電可能なリチウムイオン電池バッテリであるバッテリ903の充電および放電を管理すると共に、充電状態をプログラム可能なマイクロコントローラ(programmable microcontroller)904に報告する充電用集積回路902がある。3.0ボルト(V)の電源906が、回路に電力を供給する。ブーストコンバータ(boost converter)908は、モータ910を駆動するのに用いられる5Vを与える。Hブリッジ(bridge)909は、カートリッジ内のピストン(図9にはピストン及びカートリッジは図示されていない)を駆動するのに用いられる、例えば直流(DC)モータである、モータ910の速度および方向を制御するものである。バックライト駆動装置(ドライバ:driver)914は、液晶表示画面916のバックライトを作動させる。
ボタン918は、ユーザが、例えば所望の注入速度について、入力することを許容する。プロダクト識別装置(product identifier)920は、本明細書のどこか他の箇所にも記載したように、カートリッジ(不図示)を読み取り、マイクロコントローラ904を通じて、ユーザにカートリッジ内のプロダクトについて通知する。或る例示的な実施形態では、ボタン918としては、感圧スイッチ、例えば、Tekscan社によって製造された、力の範囲が0−25lb(110N)である、FlexiForce 型式番号A201と呼ばれる、市販で入手可能で、薄くて可撓性がある、ピエゾ抵抗(piezoresistive)力センサがある。
【0081】
構成部品は、協働して、装置内に挿入されたカートリッジを感知する。装置は、(以下に説明するように)異なるタイプの注入カートリッジの適正な挿入を検出することができるセンサを備えることができる。カートリッジは、例えば隆起部,付箋(フラグ:flag),明るい及び暗い線(ライン:line)などの特徴、或いは当該分野で知られている他の方法により、標識(マーク:mark)を付けられることができる。
【0082】
装置は、プロダクトの異なる供給速度を容易にするために、可変速度でモータを駆動する機能を有していてもよい。マイクロコントローラは、モータを両方の回転方向で稼働する機能を有することができる。更に、装置は、駆動系(ドライブトレイン:drive train)の運転速度を定量化し所望の供給速度と照合するために、センサを有することができる。センサは、所望の供給速度に合致していない場合には、マイクロコントローラがモータをより速く或いはより遅く稼働することができるように、当該マイクロコントローラにフィードバック(feedback)を与えてもよい。
【0083】
或る実施形態では、注入ボタンが作動されると、マイクロコントローラへ信号が送られ、そこで、ソフトウェアが、所望の注入速度に対して適切な速度で、モータを正方向へ駆動することができる。ソフトウェアは、カートリッジ及び/又は駆動系からの抵抗で変動している間中、注入速度を維持するために、一つ若しくはそれ以上のアルゴリズム(algorithm)を実行することができる。
【0084】
或る実施形態では、注入ボタンが解除されると、ソフトウェア及びマイクロコントローラは、カートリッジに加えられている圧力を解放するために、モータを所定の程度だけ全速で逆方向に駆動する。これは、プロダクトのより精密な供給を可能にし、漏れを防ぐことができる。
【0085】
或る実施形態では、マイクロプロセッサが、カートリッジの内容物が全て放出されてしまったことを検出した場合には、当該マイクロプロセッサは、上述のようにモータを逆回転させ、ディスプレイ上に「カートリッジ空(empty cartridge)」の警告を表示することができる。
【0086】
或る実施形態では、所望の注入速度が達成することができないことを、センサからのフィードバックに基づいて、マイクロプロセッサにより検出されると、まるで注入ボタンが解除されたかのように、モータが逆回転し、警告メッセージが表示されてもよい。この状況は、限定されるものではないが、例えば、不適正に挿入されたカートリッジ,プロダクトの送給を妨げる妨害物,機械的な破損あるいはそれらの組み合わせ、のような状況に起因し得ることであろう。
【0087】
或る実施形態では、ここに説明された装置は、高い精密さを必要とされる組織の領域へプロダクトを供給し注入することができる。そこで、装置は、一つ若しくはそれ以上の、或る場合には二つもしくはそれ以上の、装置の精度をモニタするセンサを有することができる。或る実施形態では、このセンサ或いはシステムは冗長(redundant)であり得る。
【0088】
或る実施形態では、供給されるべきプロダクトは、非ニュートン流体であってもよく、或いはニュートン流体と非ニュートン流体との混合であってもよい。かかる流体は、上述の冗長の特徴を利用できる、つじつまの合わない及び/又は予測不能な力対動作の要求特性(force-to-move requirements)を有することができる。このようなプロダクトは、高い停動トルク(stall torque)要件を必要とする高い降伏点(yield point)を有することができる。非ニュートン流体は、高い降伏点を有してはいるが、降伏点を越えた後は力対動作の要求特性の急激な落ち込みを有しているかも知れない。ここに説明した装置は、押出力要求の急激な変化に対して適応することができる。
【0089】
或る実施形態では、装置は、降伏点の違いを含めて、流体の濃度および/または粘度の変化に拘わらず、物質の安定した供給状態を達成することができる。更に、或る実施形態では、注入期間中の二つもしくはそれ以上の異なる時間に、二つもしくはそれ以上の異なる降伏点を越えるに足る力を必要とする、二つもしくはそれ以上の異なる物質が利用することができる。
装置は、2,3例を挙げると、供給の力,速度およびカートリッジ圧力、を安定してモニタすることができる電子装置を装備することができる。更に、装置は、例えば、投与期間中のプロダクト・カートリッジ内での圧力の蓄積に起因するプロダクトの過剰投与を回避するために、プロダクトの投与終了時にプランジャが後退できるように、設計されてもよい。
【0090】
図10は、ここに説明された装置と共に用いることができる、非限定的な表示画面の変化を示している。或る実施形態では、初期画面(welcome screen)が表示される。いま一つの実施形態では、表示画面は、オペレータに、カートリッジを挿入するように、或いは、正しく挿入されていない場合にはカートリッジを再挿入するように、指示することができる。或る実施形態では、装置が再構成(reconstitution)を要するカートリッジを使用している場合には、表示画面は、オペレータに、プロダクトを再構成するように、或いは、プロダクトの再構成のために装置をそのベース(base)に挿入するように、指示することができる。
或る実施形態では、表示画面は、限定されるものではないが、例えば、プロダクトの名称,注入されたユニット数,電流値,過去および現在の注入速度およびバッテリ寿命などについての情報を示す情報を、注入に先立って,注入中におよび注入後に、表示することができる。或る実施形態では、装置がそのベースに置かれたとき、充電されることができ、また、ディスプレイは、装置が充電されていることを表示することができる。
【0091】
図11は、ここに説明された装置の内側本体内に収容される内部構成部品1100の非限定的な組み合わせを図示している。当業者であれば、内側本体の形態および/または装置の外側本体の形状に応じて、異なるように構成部品が配置されるかも知れないことを理解するであろう。或る実施形態では、図8の装置と協働して図11の内部構成部品が用いられてもよい。
内部構成部品1100の組み合わせは、ウォーム歯車1118を回転させ、それによりラック(rack)1102を駆動するモータ1120を備えている。ラック1102は、カートリッジ1101の後端部にあるプランジャ(不図示)と係合している。PCB1110は、情報を収集して、光学式エンコーダ(optical encoder)1116,マイクロスイッチ1114,カートリッジ・ロック/エジェクト機構(locking/ejection mechanism)1108及び画面1104に送信する。PCB1110及び画面1104は、バッテリ1112によって電力供給される。
或る実施形態では、光学式エンコーダ1116は、モータ軸1119の回転数を計測し回転方向を検出することにより、ラック1102位置,速度および方向を精確に測定することができる。或る実施形態では、マイクロスイッチ1114は、レバーアーム1107が下方へ撓まされて当該マイクロスイッチ1114に接すると、動作させられる。レバーアーム1107は、カートリッジ1101が完全に挿入されてロック/エジェクト機構1108と係合するまでは、当該レバーアーム1107がカートリッジの爪部(ディテント:detent)1106を通り過ぎる度に、下方へ撓まされる。カーリッジ爪部の数は、プロダクトのタイプ及び/又はカートリッジ1101内のプロダクトの分量に応じて、変わることができる。
マイクロスイッチの動作回数はPCB1110へ中継され、PCB1110は、カートリッジが挿入されたことを確認する。カートリッジ1101が確認されると、PCB1110は、この情報を、ラック1102を適切なスタート位置へ駆動するためにモータ1120へ伝達すると共に、プロダクトのタイプ(名称)及び初期(或いは残っている)プロダクトの分量をオペレータに知らせるために、画面上のディスプレイにも伝達する。
或る実施形態では、ユーザがカートリッジのロック/エジェクト機構1108の両方のエジェクトボタン(一方のみが図示されている)を同時に押すと、カートリッジ1101がロック解除され、装置から部分的にエジェクトされる。これは、一般に、ユーザがカートリッジの全内容物を注入してしまった後に起こることである。
【実施例1】
【0092】
Tyco社の30G×1/2インチの針(ニードル:needle)を装備した(ペンシルバニア州LebanonのSCHOTT North America社の)0.8mLのSchott TopPac(登録商標)注射器について、押出実験が行われた。30Gの針を通して非常に粘度の高いヒアルロン酸をベースにした皮層充填剤(dermal filler)を押し出すのに要する力を評価するために、(カリフォルニア州IrvineのAllergan社の)Juvederm Ultraが、針から押し出された。表1の結果が、実験の結果を示している。
【0093】
【表1】

【0094】
例えば、この注射器の全内容物を0.006mL/秒の速度で注入するためには、プランジャは、約2.3分の時間内に約46mm移動しなければならない(約20mm/分のプランジャ速度)。
【0095】
結果は、所望の注入速度に応じて、プランジャを前進させ粘度の高い皮層充填剤を注入するのに要する力が大きくなることを示している。伝統的なプランジャ型の注射器を用いての手動の注入は制御すると同時に注入することが非常に難しいのはなぜであるかを見て取るのは、非常に容易である。ここに説明した装置は、注入におけるオペレータの過ち(エラー:error)及びそれに関連した患者の苦痛を排除する一方で、所期の注入速度に対して適切な力をもたらすことができる。
【実施例2】
【0096】
この実施例は、図1A−1Cに図示した装置100,図4の電子式表示画面400及び図5に図示した内側本体の注入構成部品、を参照するものである。
【0097】
オペレータは、電源ボタン105を押下することによって装置100を起動する。(図4の画面400を備えることができる)電子式ディスプレイ106が電源オンし、「カートリッジが装填されていません(cartridge not loaded)」と、装置の状態を表示する。その後、装置は、「カートリッジが装填されていません」の状態についてオペレータに警告するために、ビープ音を出すように設定される。
オペレータは、次に続けて、カートリッジを装置前部のキャップ107の穴部内へスライドさせる。キャップ107の穴部は、装置の内側本体内のカートリッジ用のチャンバを露呈している。カートリッジは、所定位置でカチッと音がする(クリック(click)する)まで、装置内へスライドさせられる。そして、装置はカートリッジのRFIDを読み取り、適切なデータをディスプレイ106上に表示する。前記RFIDからデータがアップロード(upload)され装置によって処理されると、「準備完了(レディ:ready)」がディスプレイ106上に表示されることになる。
その後、オペレータは、プラス及びマイナスのボタン(+ and - buttons)103及び104の組み合わせを用いて、或いはメニュー駆動マルチボタン(menu driven multi-button)108を介して、注入速度を調節することができる。ボタン103及び104を用いた場合には、注入中であっても注入速度を変えることができる。メニュー駆動マルチボタン108が用いられる場合には、注入の速度は、メニュー内で選ばなければならず、また、マルチボタン108を用いて設定し、ボタン109を用いて確認しなければならない。その後は、注入中に注入速度を変えることはできない。
【0098】
その後、オペレータは、カートリッジの露出した端部のルアーチップ(luer-tip)113に適切な針112を装着する。その後、針の周囲の覆い(シース:sheath)が除去される。注入される領域が、適切に清浄にされる。患者の適切な部位で皮膚を通して針が突き刺され、注入ボタン102A又は102Bが押圧される。装置からプロダクトが分与され、ビープ音が、注入が完了したことをオペレータに知らせる。
針が、患者から取り去られ、適切に廃棄される。針およびカートリッジは、エジェクトボタン110を押すことにより、装置から安全にエジェクトすることができ、その後、装置が下向きに傾けられると、カートリッジと針は、単一のユニットとして、装置から(好ましくは、使用済み医療器具容器(biohazard container)内へ)落下する。オペレータは、電源ボタン105を押下し保持することにより、装置を電源オフすることができる。
【実施例3】
【0099】
この実施例は、図1A−1Cに図示した装置100,図4の電子式表示画面400及び図6に図示した内側本体の構成部品、を参照するものである。
【0100】
オペレータは、電源ボタン105を押下することによって装置100を起動する。赤色のLEDが点灯して、装置が注入の準備完了でないことを表示する。電子式ディスプレイ106が電源オンし、「カートリッジが装填されていません」と、装置の状態を表示する。装置は、「カートリッジが装填されていません」の状態についてオペレータに警告するために、ビープ音を出すように設定されることができる。
オペレータは、次に続けて、乾燥したボツリヌス毒素タイプAのカートリッジを装置前部のキャップ107の穴部内へスライドさせる。キャップ107の穴部は、装置の内側本体内のカートリッジ用のチャンバを露呈している。カートリッジは、所定位置でカチッと音がする(クリックする)まで、装置内へスライドさせられる。そして、装置はカートリッジのRFIDを読み取り、適切なデータをディスプレイ106上に表示する。
前記RFIDからデータがアップロード(upload)され装置によって処理されると、装置は、ディスプレイ106上に「生理食塩水のバイアルを装填(load saline vial)」を表示することにより、生理食塩水が装填される必要があることをオペレータに表示する。オペレータは、生理食塩水のバイアルを、装置の別の開口部を通して、所定位置にパチンと音がするまで装置内へ装填する。
【0101】
その後、ディスプレイ106は、「投与量の設定を調節(adjust dose setting)」を表示する。オペレータは、マルチボタン108を用いて適切な投与量を入力し、設定ボタン109を用いてその投与量に固定(ロック:lock)する。すると、ディスプレイ106は「プロダクトを再構成(reconstitute product)」を表示することになる。オペレータは、装置の設定ボタン109を押し下げる。装置は、ボツリヌス毒素を再構成し、所定の時間だけそれを緩やかに混合する。その後、赤色のLEDが、プロダクトが注入の準備ができていることを示す緑色に変わり、「準備完了(レディ:ready)」がディスプレイ106上に表示されることになる。
その後、オペレータは、ボタン103及び104の組み合わせを用いて、或いはメニュー駆動マルチボタン(menu driven multi-button)108を介して、注入速度を調節することができる。ボタン103及び104を用いた場合には、注入中であっても注入速度を変えることができる。メニュー駆動マルチボタン108が用いられる場合には、注入の速度は、メニュー内で選ばなければならず、また、マルチボタン108を用いて設定し、ボタン109を用いて確認しなければならない。その後は、注入中に注入速度を変えることはできない。
【0102】
その後、オペレータは、カートリッジの露出した端部のルアーチップ(luer-tip)113に適切な針112を装着する。その後、針の周囲の覆い(シース:sheath)が除去される。注入される領域が、適切に清浄にされる。患者の適切な部位で皮膚を通して針が突き刺され、注入ボタン102A又は102Bが押圧される。装置からプロダクトが分与され、ビープ音が、注入が完了したことをオペレータに知らせる。
針が、患者から取り去られ、適切に廃棄される。針およびカートリッジは、エジェクトボタン110を押すことにより、装置から安全にエジェクトすることができ、その後、装置が下向きに傾けられると、カートリッジと針は、単一のユニットとして、装置から(好ましくは、使用済み医療器具容器(biohazard container)内へ)落下する。オペレータは、電源ボタン105を長押し(pressing and holding)することにより、装置を電源オフすることができる。
【実施例4】
【0103】
この実施例は、図8に図示した装置800,図4の電子式表示画面400,図7のカートリッジ及び図5に図示した内側本体の注入構成部品、を参照するものである。
【0104】
オペレータは、電源/選択ボタン805を押し下げることによって装置を起動する。赤色のLEDが点灯して、装置が注入の準備完了でないことを表示する。電子式ディスプレイ806が電源オンし、「カートリッジが装填されていません」と、装置の状態を表示する。装置は、「カートリッジが装填されていません」の状態についてオペレータに警告するために、ビープ音を出すように設定されることができる。
オペレータは、次に続けて、図7に示されたマルチチャンバ・カートリッジを装置前部の穴部内へスライドさせる。この装置前部の穴部は、装置の内側本体内のカートリッジ用のチャンバを露呈している。カートリッジは、所定位置でカチッと音がする(クリックする)まで、装置内へスライドさせられる。そして、装置はカートリッジのRFIDを読み取り、適切なデータをディスプレイ806上に表示する。
前記RFIDからデータがアップロード(upload)され装置によって処理されると、装置は、ディスプレイ806上に「再構成する準備完了(ready to reconstitute)」を表示することにより、凍結乾燥されたボツリヌス毒素タイプA内に生理食塩水が混合される必要があることをオペレータに表示する。オペレータは、その要求(リクエスト:request)を受け容れるために電源/選択ボタン805を押し、生理食塩水は凍結乾燥されたボツリヌス毒素中に緩やかに混合される。混合が完了し適当な時間が経過した後、ディスプレイ806は、「投与量の設定を調節」を読み出す。
【0105】
オペレータは、マルチボタン807を用いて適切な投与量を入力し、電源/選択ボタン805を用いて投与量をロックする。その後、赤色のLEDが、プロダクトが注入の準備ができていることを示す緑色に変わり、「準備完了(ready)」がディスプレイ806上に表示されることになる。その後、オペレータは、マルチボタン807と電源/選択ボタン805との組み合わせを用いて、注入速度を調節することができる。
【0106】
その後、オペレータは、カートリッジ809の露出した端部のルアーチップに適切な針808を装着する。その後、針の周囲の覆い(シース)が除去される。注入される領域が、適切に清浄にされる。患者の適切な部位で皮膚を通して針が突き刺され、注入ボタン802又は803が押圧される。装置からプロダクトが分与され、ビープ音が、注入が完了したことをオペレータに知らせる。
針が、患者から取り去られ、適切に廃棄される。針およびカートリッジは、エジェクトボタン804を押すことにより、装置から安全にエジェクトすることができ、その後、装置が下向きに傾けられると、カートリッジと針は、単一のユニットとして、装置から(好ましくは、使用済み医療器具容器(biohazard container)内へ)落下する。オペレータは、電源/選択ボタン805を押して保持することにより、装置を電源オフすることができる。
【0107】
特に示唆されない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いた、例えば分子量,反応条件などの成分,特性、及びその他諸々のものの量を表現する全ての数値は、全ての場合について、用語「約(about)」によって変更されることが、理解されるべきである。従って、反対のことが示唆されない限り、本明細書および添付した特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明により得られると考えられる所望の特性に応じて変化してもよい近似値である。
最低限でも、そして、クレームに対する均等論について出願に制限を加えることを企図したものではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告された数値の有効桁数(significant digits)に照らして、また、通常の丸め方の技法(rounding technique)を適用することにより、解釈されるべきである。
本発明の広範な範囲を説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるけれども、特定の例に記載された数値は、できるだけ精細に報告されている。しかしながら、どんな数値でも、それぞれの実験測定において認められる標準偏差に起因して、必然的に或る種の誤差を本来的に包含するものである。
【0108】
本発明を説明する文脈において(特に、後で述べる特許請求の範囲の文脈において)用いられる用語「a」,「an」,「the」及び類似の指示対象は、特に示唆されるか或いは文脈から明瞭に否定されない限り、単数および複数の両方を対象に含むと解されるべきである。ここでの数値の範囲の復誦(recitation)は、その範囲に入る別個の各数値を個々に言及することについての省略法としての役割を果たすことを意図しているだけである。ここで特に示唆されない限り、各個別の数値は、恰もここに個別に引用されているかのように、本明細書中に組み込まれる。ここに記載された全ての方法は、ここで特に示唆されない限り、或いは文脈から明瞭に否定されない限り、任意の好適な順序で実行することができる。ここで与えられた任意の及び全ての例もしくは例示的な言葉(例えば、「例えば…など」)は、発明がより良く脚光を浴びるようにすることを意図しただけのものであり、クレームされているもの以外の発明の範囲に限定を加えるものではない。本明細書中に明示されていないことでも、本発明の実施にとって重要なクレームされていない何らかの要素を示唆していると、解釈されるべきである。
【0109】
ここに開示されている代替的な要素あるいは発明の実施形態のグループ分けは、限定と解釈されるべきではない。各グループの構成要素は、個別に、又はグループの他の構成要素もしくはここに見られる他の構成要素との任意の組み合わせで、言及されクレームされてもよい。一つのグループの一つ若しくはそれ以上の要素が、便宜上および/または特許性の理由により、グループに含まれ、或いはグループから外されてもよいことが予期される。このような何らかの包含または排除が生じる場合、本明細書は、変更修正された(modified)ものとしてそのグループを含み、従って、付随したクレームで用いられる全てのマーカッシュ・グループ(Markush group)の明示の記載を満足する、ものと見なされる。
【0110】
本発明を実施するために発明者に知られる最良のモード(ベストモード:best mode)を含めて、本発明の特定の実施形態が、ここに記載されている。勿論、前述の記載を読めば、これらの記載された実施形態の変形例は、当業者にとって明白になることであろう。発明者は、熟練した技術者であれば、かかる変形例を適切に採用することを予期し、また、発明者は、特にここに記載した以外でも、発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法規により許容される限り、本明細書に付随したクレームに記載された要旨の全ての変更修正および均等を含むものである、更に、あらゆる可能な変形例における上述の要素の任意の組み合わせは、ここで特に示唆されない限り、或いは文脈から明瞭に否定されない限り、本発明に包含される。
【0111】
また更に、本明細書全体を通じて、特許および刊行物に対して数多くの引用がなされている。引用された参考文献および刊行物はそれぞれ、引用することにより、その全体がここに組み入れられるものである。
【0112】
最後に、ここに開示された発明の実施形態は、本発明の原理の事例であることが理解されるべきである。採用され得る他の変更修正は、本発明の範囲内である。このように、限定ではなく、例として、本発明の代替的な構成が、本明細書中の教示するところに従って利用することができる。従って、本発明は、精細に示され記載された実施形態に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質組織用の手持ち操作式の注入装置であって、
注入物質を収容するのに好適で針に結合可能なカートリッジと、
前記カートリッジを収容するように構成された殻体と、
モータとピストンとを有し、前記カートリッジから前記針を通して前記注入物質を移動させる駆動機構と、
前記駆動機構を動作させる電源と、
前記駆動機構に結合された、ユーザがプログラム可能なコントローラであって、ユーザが決めた注入物質の注入速度が設定可能なコントローラと、を備え、
前記装置は、約50ニュートンまでの力で、前記注入物質を前記ユーザが決めた注入速度で、注入することができる、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
約100ニュートンまでの力で、前記ユーザが定めた注入速度で、前記注入物質を注入することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
約200ニュートンまでの力で、前記ユーザが定めた注入速度で、前記注入物質を注入することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ユーザが定めた注入速度は、約0.001mL/秒と約1mL/秒の間の速度に設定できる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
約23Gから約34Gまでの間の口径を有する針を通じて、前記カートリッジから前記注入物質を注入することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
約27Gから約32Gまでの間の口径を有する針を通じて前記注入物質を注入することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
約1/4インチから約2インチまでの間の長さを有する針を通じて前記注入物質を注入することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
約1/2インチから約1.5インチまでの間の長さを有する針を通じて前記注入物質を注入することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記カートリッジは、実質的に円筒形状であり、約0.25インチから約1インチまでの間の内径を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記カートリッジは、実質的に円筒形状であり、約0.18インチから約0.35インチまでの間の内径を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
電源は、前記シェル内に収容されたバッテリである、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
作動させるのに何らの外部電源をも必要としない、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
内蔵型である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記カートリッジ内に注入物質を更に備え、この注入物質は皮層充填剤である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記注入物質は、ヒアルロン酸ベースの皮層充填剤である、ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記カートリッジに対して流体的に連結された溶媒容器を更に備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
軟質組織内に皮層充填剤を注入する方法であって、
針を有する、モータ付きの注入装置を用意するステップと、
患者の軟質組織中に注入されるべき皮層充填剤物質を収容するカートリッジを用意するステップと、
ユーザが決めた前記物質の注入速度を前記装置内にプログラムするステップと、
前記カートリッジを前記装置内に挿入するステップと、
前記装置を用いて、前記物質を、前記プログラムされた注入速度で、前記カートリッジから前記針を通って前記患者の軟質組織内へ注入するステップと、
を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記装置は、約50ニュートンから約200ニュートンまでの間の力で、前記ユーザが定めた注入速度で、前記注入物質を注入することができる装置である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
軟質組織内に物質を注入する方法であって、
第1物質と、この第1物質とは別の第2物質とを収容する、モータ付きの注入装置を用意するステップと、
前記装置内で、前記第1物質を前記第2物質と混合し、患者の軟質組織内へ注入されるべきプロダクトを創り出すステップと、
ユーザが決めた前記プロダクトの注入速度を前記装置内にプログラムするステップと、
前記装置を用いて、前記プログラムされた注入速度で、前記患者の軟質組織内へ前記プロダクトを注入するステップと、
を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記第1物質は、凍結乾燥された物質である、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−521744(P2011−521744A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511894(P2011−511894)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/045831
【国際公開番号】WO2009/158145
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】