説明

軟質袋の液注出装置

【課題】 軟質袋の形状を特殊にすることなく、軟質袋の内容液を最後まで全て抜ききること。
【解決手段】 軟質袋100の液注出装置10であって、袋100を載置する受台12と、受台12に回転可能に支持され、受台12に載置された袋100のスパウト101を差し込み保持可能にするスパウトホルダ20を有してなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッグインボックス用軟質袋等の軟質袋の液注出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッグインボックス用軟質袋の液注出装置として、特許文献1〜3に記載のものがある。
特許文献1の液注出装置は、バッグインボックスの外箱をL字状固定治具の底板上に載置し、袋に設けられているスパウトを外箱の側板開口から外方に突出させ、このスパウトをL字状固定治具の側板に設けてある切欠状保持部に差し込み保持し、袋の内容液を開栓されたスパウトから排出可能にするものである。
【0003】
特許文献2の液注出装置は、液体が充填された袋を外箱内に収納し、外箱から突出する袋のスパウトから液体を注出させるバッグインボックスにおいて、外箱の底部内面上にバッグ受板を設け、このバッグ受板の下面に弾発体を設けてなり、袋内に液体が満たされているときは弾発体に抗してバッグ受板が平坦状におかれ、注出による液体の減少に伴って弾発体の弾発力により袋のスパウト側を支点として袋の後部側を上方へ押し上げるようバック受板が前傾姿勢におかれるようにしたものである。
【0004】
特許文献3の液注出装置は、バッグインボックスの袋のシール部より突出させた耳縁部に吊り下げ用孔を設け、吊り下げた袋のスパウトを袋の下部に位置させることにより、袋の内容液を最後まで全て注ぎ出させるものである。
【特許文献1】実開平6-49328
【特許文献2】特開2000-281133
【特許文献3】特開平9-323740
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の液注出装置では、外箱が載置されるL字状固定治具の底板よりも上位にスパウトを位置させる。従って、スパウトより下位の内容液は袋内に残り、袋の内容液を最後まで全て抜ききれない。
【0006】
特許文献2の液注出装置では、バッグ受板の前傾により袋の内容液を最後まで全て抜ききることに困難がある。
【0007】
特許文献3の液注出装置では、袋に吊り下げ用孔を設ける特殊加工を必要とし、コスト高になる。
【0008】
本発明の課題は、軟質袋の形状を特殊にすることなく、軟質袋の内容液を最後まで全て抜ききることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、袋を載置する受台と、受台に回転可能に支持され、受台に載置された袋のスパウトを差し込み保持可能にするスパウトホルダを有してなる軟質袋の液注出装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の液注出装置10は、バッグインボックスの外箱から取出した軟質袋100の内容液を注出するものである。バッグインボックスは、飲料、洗剤等の内容液を充填したプラスチック製の可撓軟質袋100を段ボール箱等の外箱に挿入してなるものである。軟質袋100は、前縁側上面に液注出口としてのスパウト101を備え、スパウト101にキャップ102を着脱可能にする。
【0011】
液注出装置10は、図1に示す如く、架台11の上部にテーブル状受台12を設け、この受台12に軟質袋100を平置き状にて載置可能にする。架台11の脚13はキャスタ14を備える。
【0012】
液注出装置10は、スパウトホルダ20を有する。スパウトホルダ20は、図1に示す如く、受台12の前縁側に回転可能に支持された回転軸21に固定されたL字板22からなり、L字板22の先端板23に半円(U字でも可)切欠状保持部23Aを設ける。受台12に載置された軟質袋100の前縁部を起立状態(図2)にあるL字板22内に差し入れ、該軟質袋100のスパウト101が備える外周環状溝101Aを、L字板22の切欠状保持部23Aに差し込み保持可能にする。
【0013】
スパウトホルダ20は、図2に示す如く、L字板22の先端板23に左右のピン24を立て、両ピン24にスイングアーム25を揺動自在に支持し、両スイングアーム25の先端部に抜け止めローラ26を枢支し、両スイングアーム25に引張りばね27を架け渡し、両抜け止めローラ26を互いに引き寄せてそれら抜け止めローラ26に挟み込み力を付与する。軟質袋100を受台12上にて前方へ滑らし、軟質袋100のスパウト101の外周環状溝101AをL字板22の切欠状保持部23Aに差し込み保持するとき、軟質袋100のスパウト101において外周環状溝101Aの直下部に位置するネック部101Bにより左右の抜け止めローラ26を押し開き、該ネック部101Bを左右の抜け止めローラ26内に押し入れた後、両抜け止めローラ26の挟み込み力によりそれら抜け止めローラ26をネック部101Bの外周に当て、スパウト101をスパウトホルダ20に対し抜け止めする。
【0014】
液注出装置10は、スパウトホルダ20の回転軸21にギヤ列28を介して回転ハンドル29を設ける。回転ハンドル29は、回転軸21に固定したギヤ28Aと、回転ハンドル29に固定したギヤ28Bの噛み合いを介して、スパウトホルダ20を起立状態(図2、図6)から任意の回転角度だけ回転し、軟質袋100のスパウト101を適宜の下向き角度位置(図7)に位置付ける。
【0015】
尚、スパウトホルダ20は、図3に示す如く、L字板22の両端部22A、22Bを左右に延長し、軟質袋100の前縁部の全長をL字板22内に差し入れ可能にするように、軟質袋100の前縁部の全長をL字板22によりカバーしても良い。この場合、軟質袋100の反転時の該軟質袋100の姿勢を制御することができるため、軟質袋100が前のめりになることを防止できる。
【0016】
液注出装置10は、袋保持兼絞り出しローラ30(袋保持手段)を有する。絞り出しローラ30は、図4に示す如く、架台11に支持される駆動シリンダ31のピストンロッド32に設けた支持体33に回転可能に支持されている。絞り出しローラ30は、受台12に載置された軟質袋100の後縁シール部から、該軟質袋100を受台12との間に挟み込み、軟質袋100を受台12に保持可能にする。また、絞り出しローラ30は、駆動シリンダ31により軟質袋100の前縁側に向けて該軟質袋100上を転動し、軟質袋100のスパウト101に対する反対側(後縁シール部の側)からスパウト101の側(前縁部の側)に向けて転圧し、軟質袋100の内容液を絞り出し可能にする(図6〜図8)。
【0017】
液注出装置1は、受台12の上面内に設けられ、絞り出しローラ30が軟質袋100に加える絞り出し力に対して軟質袋100を制止する袋制止板40(袋制止手段)を有する。袋制止板40は、図5に示す如く、受台12の上面内に内蔵される圧縮ばね41によりバックアップされる状態で、受台12の上面内に格納可能にされ、圧縮ばね41の弾発力に基づく上向き傾動習性を付与され、絞り出しローラ30による絞り出し力を付与された軟質袋100を上向き傾斜状態で制止可能にする。尚、絞り出しローラ30が袋制止板40の上を通過するとき、袋制止板40は受台12の上面内に押し込み格納される。
【0018】
従って、液注出装置10による液注出動作は以下の如くになされる。
(1)軟質袋100を受台12に載置し、軟質袋100を受台12上にて前方へ滑らし、軟質袋100の前縁部を起立状態にあるL字板22内に差し入れ、軟質袋100のスパウト101の外周環状溝101AをL字板22の切欠状保持部23Aに差し込み保持するとともに、該スパウト101のネック部101Bを左右の抜け止めローラ26内に挟み込んで抜け止めする(図6)。
【0019】
(2)絞り出しローラ30の駆動シリンダ31を作動し、絞り出しローラ30により上述(1)の軟質袋100の後縁シール部を受台12との間に挟み込み保持する(図6)。袋制止板40は上向き傾斜状態で軟質袋100の前方ずれ移動を制止する。
【0020】
(3)回転ハンドル29によるスパウトホルダ20の回転操作により、スパウトホルダ20を起立状態から任意の回転角度だけ回転し、軟質袋100のスパウト101を最大鉛直下向きまで、任意の下向き角度位置に位置付ける(図7)。スパウト101からキャップ102を外し、軟質袋100の内容液をスパウト101から注出先容器類に注出開始する。尚、キャップ102は回転操作前に外しても良い。
【0021】
このとき、注出先容器類は計量秤の上に載置し、定量注出時に、スパウトホルダ20を起立位置に戻して注出終了とすることもできる。
【0022】
(4)駆動シリンダ31により絞り出しローラ30を前進させ、絞り出しローラ30により軟質袋100を後縁シール部の側から前縁部の側に向けて転圧し、軟質袋100の内容液を絞り出す(図7)。絞り出しローラ30が袋制止板40の上を通過したとき、袋制止板40は受台12の上面内に押し込み格納される。
【0023】
(5)絞り出しローラ30が前進端に達したとき(図8)、絞り出しローラ30で転圧できない軟質袋100の前縁側部分は下向きろうと状をなし、内容液を最後まで自重により注出させて抜き取り可能にする。
【0024】
尚、液注出装置10は、図9に示す如く、受台12に載置された軟質袋100のスパウト101をスパウトホルダ20により前述(1)の如くに保持した状態で、スパウト101に挿入される手動ポンプ等のポンプ50により軟質袋100の内容液を注出先容器類51等に注出させても良い。注出先容器類51は計量秤52の上に載置され、定量注出できる。
【0025】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(請求項1の作用効果)
(a)受台12に設けたスパウトホルダ20に、該受台12に載置した軟質袋100のスパウト101を差し込み保持した後、スパウトホルダ20を回転させることにより、袋100のスパウト101を適宜の下向き角度位置に位置付けることができる。これにより、袋100の形状を特殊にすることなく、袋100の内容液を最後まで全て抜ききることができる。スパウト101の下向き角度の調整により、内容液の注出流量を調整できる。
【0026】
(請求項2の作用効果)
(b)回転ハンドル29によりスパウトホルダ20を安定的に回転操作でき、スパウト101の下向き角度の調整も容易になる。
【0027】
(請求項3の作用効果)
(c)袋保持兼絞り出しローラ30により袋100を受台12に保持し、スパウトホルダ20の回転によって袋100のスパウト101を下向きにさせるときにも、袋100を受台12上でずれ移動させることなく安定維持できる。
【0028】
(請求項4の作用効果)
(d)絞り出しローラ30により袋100の高粘度の内容液もスムースに絞り出しできる。絞り出しローラ30の前進速度(絞り出し速度)の設定により、内容液の注出流量を調整できる。
【0029】
(請求項5の作用効果)
(e)絞り出しローラ30が袋100に加える絞り出し力に対して袋100を制止する袋制止板40を設けたから、袋100を受台12上でずれ移動させることなく安定維持し、絞り出しローラ30により袋100の内容液を安定的に絞り出しできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は液注出装置を示す斜視図である。
【図2】図2はスパウトホルダを示し、(A)は側面図、(B)は要部平面図である。
【図3】図3はスパウトホルダの変形例を示す斜視図である。
【図4】図4は絞り出しローラを示す背面図である。
【図5】図5は袋制止手段を一部破断して示す斜視図である。
【図6】図6は液注出装置への袋セット状態を示す側面図である。
【図7】図7は液注出装置の液注出中間状態を示す側面図である。
【図8】図8は液注出装置の液注出最終状態を示す側面図である。
【図9】図9は液注出装置のポンプによる液注出状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 液注出装置
12 受台
20 スパウトホルダ
29 回転ハンドル
30 袋保持兼絞り出しローラ(袋保持手段)
40 袋制止板(袋制止手段)
100 袋
101 スパウト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋を載置する受台と、
受台に回転可能に支持され、受台に載置された袋のスパウトを差し込み保持可能にするスパウトホルダを有してなる軟質袋の液注出装置。
【請求項2】
前記スパウトホルダを回転操作する回転ハンドルを有してなる請求項1に記載の軟質袋の液注出装置。
【請求項3】
前記袋を受台に保持する袋保持手段を有してなる請求項1又は2に記載の軟質袋の液注出装置。
【請求項4】
前記袋を受台との間に挟み、袋のスパウトに対する反対側からスパウト側に向けて転圧し、袋の内容液を絞り出す絞り出しローラを有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の軟質袋の液注出装置。
【請求項5】
前記受台に設けられ、絞り出しローラが袋に加える絞り出し力に対して袋を制止する袋制止手段を有してなる請求項4に記載の軟質袋の液注出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−91248(P2007−91248A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280823(P2005−280823)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】