説明

軟骨の劣化の治療のための医薬

【課題】軟骨の劣化の治療のための医薬の提供。
【解決手段】軟骨細胞の増殖の刺激を介して軟骨の成長又は修復を刺激することを含む軟骨の劣化の治療のための、Biota orientalisからの抽出物を有効成分として含む医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟骨の劣化の治療のための医薬に関する。また、本発明は一般に、栄養補給組成物、並びに既存の炎症、又は炎症に関連した障害及び特に既存の軟骨損傷の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
知識についての文書、活動又は項目が参照され、議論される本明細書では、この参照又は議論は、知識についての文書、活動又は項目又はそれらの組み合わせが、優先日に、共通する一般的知識の一部であった、又は本明細書が関係する課題を解決する試みに関連すると知られていたという承認ではない。
【0003】
軟骨の劣化はすべての脊椎動物を悩ませる問題である。
【0004】
軟骨は骨の関節表面に位置する滑らかな結合組織であり、骨を支え、保護する。軟骨が損傷を受けると、関節はもはや正常には機能できず、軟骨の表面は薄化し、水を保持する能力を失い、軟骨自体に現れる亀裂によって劣化する。時間をかけて軟骨の弾性は低下し、負傷や損傷にさらに感受性になる。進行性の喪失は結果的に特定の点での骨と骨の接触を生じることができ、それは、極めて痛く、関節を成す関節が正常に機能するのを妨げる。
【0005】
NSAIDは、鎮痛の形態として関節の炎症の治療に長い間使用されている。しかしながら、報告されている合併症及び有害反応のために、多数のNSAIDの連続した使用に対する抵抗がある。
【0006】
今まで、軟骨劣化の治療のための医薬の調製におけるコノテガシワ(BO[Biota orientalis])の種子抽出物の使用は完全には割り出されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は軟骨の劣化の治療のための医薬を提供することである。また、本発明の目的は、既存の炎症又は炎症に関連した障害の治療のための、Biota orientalisからの抽出物の使用を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、既存の炎症又は炎症に関連した障害の治療における軟骨形成の刺激のために栄養補給組成物を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、従来技術の短所及び欠点を克服すること、又は少なくとも実質的に改善することである。
【0010】
本発明のそのほかの目的及び利点は、添付の図面と関連して以下の記載から明らかになるであろうが、その際、説明及び例示の目的で、本発明の実施態様が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、これは決して本発明を限定すると理解されるべきではないが、軟骨の劣化の治療に使用される医薬の製造におけるBiota orientalisからの抽出物の使用であって、前記の治療における使用が前記医薬による軟骨細胞の増殖の刺激を介して軟骨の成長又は修復を刺激することを含むことを特徴とする使用が提供される。
【0012】
好ましくは、前記の軟骨の劣化は、滑液のPGE2(プロスタグランジンE2)のレベルの上昇を特徴とし、それは軟骨劣化の既存の症状と関連する。
【0013】
実施態様の1つでは、前記医薬は、治療上の量のB.orientalisからの抽出物を含み、さらに、たとえば、ペルナイガイ抽出物、アワビ抽出物又は粉末、サメ軟骨粉末、コンドロイチン又はこれらの組み合わせのような追加の抽出物を含むことができる。
【0014】
好ましくは、前記抽出物は、B.orientalisの種子からの抽出物である。
【0015】
好ましくは、前記使用はさらに、前記治療が予防的治療であることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記使用はさらに、前記の軟骨の劣化が滑液のPGE2のレベルの上昇を特徴とすることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記使用はさらに、前記医薬がペルナイガイ抽出物、アワビ抽出物又は粉末又はこれらの組み合わせのような追加の抽出物を含むことを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記使用はさらに、前記医薬がサメ軟骨粉末を含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記使用はさらに、前記医薬がコンドロイチンを含むことを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記使用はさらに、前記コンドロイチンが硫酸コンドロイチンであることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、前記使用はさらに、前記コンドロイチンが海洋性のコンドロイチンであることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、前記使用はさらに、Biota orientalisからの前記抽出物がBiota orientalisの種子からの抽出物であることを特徴とする。
【0023】
さらなる実施態様では、Biota orientalisからの抽出物を含む、滑液のPGE2のレベルの上昇に特徴付けられる既存の軟骨劣化を治療するための薬剤が記載される。
【0024】
好ましくは、前記抽出物は軟骨細胞の増殖を刺激する。
【0025】
好ましくは、前記抽出物は、Biota orientalisの種子からの抽出物である。
【0026】
例証として、添付の図面を参照して、以下で本発明の運用がさらに完全に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、対照(n=5)とSasha’sEQ(SEQ;n=10)のウマにおける滑液PGE2(pg/mL)である。ウマは0日目に手根骨間の及び/又は橈骨手根骨の断片の外科的除去を受け、手術後42日間、割り振られた栄養補助食品を服用した。*はベースラインからの有意な変化を示す。
【図2】図2は、対照(n=5)とSasha’sEQ(SEQ;n=10)のウマにおける滑液GAG(μg/mL)である。ウマは0日目に手根骨間の及び/又は橈骨手根骨の断片の外科的除去を受け、手術後42日間、割り振られた栄養補助食品を服用した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の理解を円滑にするために、種々の用語及び略語を使用し、以下で定義する。
【0029】
「SEQ」は、ニュージーランド緑イガイ又はペルナイガイと、アワビと、サメ軟骨粉末とコノテガシワ油の混合物を意味する。
【0030】
「BO」は、Biota orientalisの種子から抽出されたコノテガシワ油を意味する。
【0031】
「NZGLM」は、ニュージーランド緑イガイ又はペルナイガイを意味する。
【0032】
Biota orientalis(「コノテガシワ」)は、中国西部及び北朝鮮に自生するハーブであり、Thuja orientalis、Platycladus stricta及びPlatycladus orientalisのような多数の別名で知られている。コノテガシワは、50の基本的なハーブの1つとして漢方では非常に価値がある(Duke and Ayensu 1985:Duke JA, Ayensu ES. Medicinal plants of China. Algonac, Mich: Reference Publications Inc, 1985)。従来からそれは、下剤、鎮痛剤及び鎮静剤として使用されている(Duke and Ayensu 1985)。
【0033】
サメ軟骨とNZGLMとアワビの擬似消化物は、PGE2(プロスタグランジンE2)、GAG及び/又は一酸化窒素を低下させることによって関節炎の軟骨外植モデルにて抗炎症効果を有することが以前報告されている(Pearson et al., 2007: Pearson W. in vitro and in vivo methods to evaluate putative anti-inflammatory nutraceuticals. PhD Thesis, Department of Biomedical Science, Ontario Veterinary College, University of Guelph, Guelph, ON Canada, 2007)。
【0034】
方法
AH手順は、グェルフ(Guelph)大学動物管理委員会によって評価され、認可され、カナダ動物管理協議会の指針に従った。
【0035】
包含基準
ウマ所有者のインフォームドコンセント:オス又は非妊娠メス;3〜15歳の間;体重450〜550kgの間;関節鏡視下手術にて判定された手根骨間の、橈骨手根骨の及び/又は中手指節の関節に位置する軽い〜中程度の関節炎;試験に入る前2週間以内に非ステロイド性抗炎症剤又はコルチコステロイド(全身性又は関節内)を日常的に服用していない。
【0036】
除外基準
3を超える歩行困難等級(AAEP尺度);滑液PEG2濃度<200pg/mL;日常的な非ステロイド性抗炎症剤を止めるのに気乗りしないウマ所有者;冒された手根骨間の、橈骨手根骨の及び/又は中手指節の関節における関節炎のX線による又は肉眼での手術の証拠がないこと、又は手術中に確認される破片骨折片がないこと。骨軟骨破片とその後の関節炎病変の発症の間の関係のために、関節炎の外科的又はX線による兆候のない破片骨折片のあるウマは保持された。
【0037】
包含評価
包含基準を満たすウマの所有者のインフォームドコンセントを受け取った際、包含評価を行った。主治医である獣医によって歩行困難等級と屈曲試験が評価された。少なくとも2つの視野から冒された関節のX線写真を撮った。手術中にベースラインの滑液試料を取った。経過観察中の滑液試料は無菌関節穿刺によって得た。簡単に言えば、冒された関節の表面を無菌的に準備し、無菌の21ゲージの1インチの針を冒された関節に挿入し、無菌の3ccの注射筒を針基に取り付け、およそ1.5ccの滑液を吸引した。10μgのインドメタシンを含有する無菌のバキュテナーに滑液試料を直ちに注入し、氷上に置いた。次いで滑液を遠心(1500×g、15分間)し、細胞残渣を除いた。細胞沈殿物を取り除き、PGE2(ELISA)、一酸化窒素(NO;グリース反応)及びグリコサミノグリカン(GAG;ジメチルメチレンブルー分光分析アッセイ)についての分析まで残りの上清を−80℃で保存した。
【0038】
無作為化及びブラインディング
偽薬(6容器)又はSEQ(9容器)を含有する15の同一の容器をA−1、A−2、A−3、B−1、B−2、B−3、C−1、C−2、C−3、D−1、D−2、D−3、E−1、E−2又はE−3と標識した;包含評価を上手く完了しているウマを無作為に割り振って、SEQ(42日間1日当たり21gの仕上げ産物;n=9)又は活性のない偽薬(キイチゴと糖蜜の味をつけた米糠;42日間1日当たり21gの仕上げ産物;n=6)のいずれかを服用させた。
【0039】
同時薬物療法
主治医である獣医の推奨でのみ、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による試験ウマの歩行困難の治療が許可された。ウマに投与された薬剤の詳細をすべて記録した。主治医である獣医の推奨でのみ、試験に関係ない病気又は負傷の治療が許可された。使用した薬剤の抗炎症性はないという条件で、治療持続時間に限定はなかった。
【0040】
プロトコール
141pg/mLのPGE2についての標準偏差を用いた分析試験の検出力を用いて動物の数を計算した。高い測定精度の感度の高いマーカーであることから、他のマーカーを使用する際につきものの測定の変動性を減らすので、測定された炎症マーカーの中からPGE2を選択した。さらに、我々の以前のSEQによる試験管内及び生体内での試験において我々は、PGE2の有意な阻害を経験している。一次従属変数としてのPGE2の使用は、0.8の検出力でp<0.05にて平均値間のs250pg/mLの最小差異の検出を可能にする。この実験には群当たり最低6頭の動物が必要とされる。
【0041】
6頭のウマを偽薬対照群に入れ、9頭のウマをSEQ処理群に入れて合計ウマは15頭であった。
【0042】
包含評価(上記包含評価を参照のこと)を上手く完了している15頭のウマを動員した。9頭は、SEQ(21g/日)(分析は3.3g/100gのω3脂肪酸、2093mg/100gのALA、605mg/100gのEPA、397mg/100gのDHAを示す)を1日1回投与され、6頭は、活性のない偽薬(21g/日)を42日間投与された(上記の無作為化及びブラインディングを参照のこと)。ウマは試験全体を通してその名前で識別された。参加者の機密保持を保護するために報告目的で名前を番号に変換した。
【0043】
ベースラインデータの収集:全米馬臨床獣医協会のプロトコール(AAEP)を利用して早足での歩行困難をスコア化し、屈曲試験を行った。伸縮テープによって関節周囲を測定した。
【0044】
一般麻酔のもとでの破片骨折の外科的除去の間に滑液を無菌的に吸引し、ヘパリンを被覆したバキュテナーに入れ、直ちに冷蔵した(4℃)。その後、前に記載したように滑液を遠心し、分析まで上清を−80℃で凍結した。
【0045】
42日目にコンプライアンスを判定し、少なくとも2つの視野から冒された関節のX線写真を撮った。早足での歩行困難(AAEP)とその後の屈曲試験を等級化し、伸縮テープを用いて関節周囲を測定した。冒された関節の表面を無菌的に準備し、無菌の22ゲージの針を挿入した。無菌の3ccの注射筒を針基に取り付け、およそ1mLの滑液を吸引し、無菌のヘパリン被覆のバキュテナー管に回収した。バキュテナーを氷上に置いた。その後、滑液を遠心し、PGE2、NO及びGAGの分析まで−80℃に保存した。
【0046】
滑液の生体マーカー
PGE2
ELISAキット(カナダ、オンタリオ州、バーリントンのR&Dシステムズ、セデリアンラボラトリーズ)の一部として提供された希釈緩衝液で滑液を1:5に希釈した。次いで、キットのプロトコールに従ってPGE2を定量した。ヒツジ抗マウスPGE2抗体でELISAキットのマイクロタイタープレートを被覆した。アラキドン酸誘導体の構造には種間の差異は知られていないので、ウマ試料にもアッセイを適宜応用することができる。ELX800ユニバーサルマイクロプレートリーダー(バーモント州、ウイヌスキのバイオテックインスツルメンツ社)を用いて450nmに設定した吸収でプレートを読み取った。各プレート(R2”0.99)について最もよく適合する3次多項式曲線を作製し、その方程式を用いて各プレートの試料についてPGE2の濃度を算出した。
【0047】
GAG(グリコサミノグリカン)
1,9−ジメチルメチレンブルー(DMB)分光光度アッセイを用いて滑液のGAG濃度を直接決定した。1,9−DMB(4mg)を100%のエタノール(1.25mL)に溶解し、蟻酸ナトリウム(0.5g)及び蟻酸(0.5mL)と混ぜ合わせ、次いで2回蒸留した水(ddH2O)で250mLにした(pH6.5;DMB試薬)。希釈緩衝液(4.1mgの酢酸ナトリウムと0.5μLのツイーン20/mLddH2O)で試料を1:3に希釈し、96穴マイクロタイタープレートに入れた。各ウエルに塩酸グアニジン(ddH2O中275g/L)を加え、その後直ちに150μLのDMB試薬を加えた。プレートを暗所で10分間インキュベートし、530nmで吸収を読み取った。ウシの硫酸コンドロイチンの標準と試料の吸収を比較した。最も適合する線形の検量線を各プレート(R2>0.99)について生成し、その方程式を用いて各プレートの試料についてGAGの濃度を算出した。
【0048】
NO
NOの安定な酸化生成物である亜硝酸塩(NO2-)をグリース反応によって分析した。未希釈の滑液試料を96穴プレートに加えた。リン酸(0.085g/L)に溶解したスルファニルアミド(0.01g/mL)とN−(1)−ナフチルエチレンジアミン塩酸塩(1mg/mL)を全ウエルに加え、5分以内に530nmで吸収を読み取った。試料の吸収を亜硝酸ナトリウム標準と比較した。
【0049】
統計学
実験単位は冒された関節なので、ウマが複数の関節で関節炎を呈する場合、各関節からの試料を別個の単位として分析し、処理した。データは平均値±SEMで表す。データの統計学的解析は、反復測定二元配置分散分析(ANOVA)(時間と処理に関して)を用いて行い、有意性はp<0.05に設定した。結果は統計学的に検出力を設定して(0.8)、141pg/mLの集団標準偏差を想定して250pg/mLのPGE2の最小差異を検出した。
【0050】
結果
実験コホート
試験は2008年11月から2010年1月にかけて行われた。13頭のウマが試験を完了した(n=7がSEQ;n=6がCON)(「CON」は対照の、活性のない偽薬を意味する)。表1は実験用ウマの説明を提供する。11頭は競技用のアメリカクオーターホース((n=6がSEQ;n=5がCON)であり、2頭は競技用スタンダードブレッドであった(n=1がSEQ;n=1がCON)。経過観察中に失われたウマのデータは分析に含めなかった。分析は、7頭のSEQウマ(関節:n=14)及び6頭の対照ウマ(関節:n=10)で行った。
【0051】
【表1】

【0052】
同時薬物療法
試験中のいかなるときも、又は試験に加わる前2週間でも全身性、又は関節内での薬物療法を受けた試験ウマはいなかった。試験中、又は試験に加わる前2週間に「ほかの薬剤」又は栄養補給/ハーブ補完物は与えなかった。
【0053】
手術前、7頭は、パドックで休憩中であり(n=4がSEQ;n=3がCON)、5頭は通常の訓練スケジュールを維持し(n=3がSEQ;n=2がCON)、1頭は馬小屋で休憩中だった(n=1がCON)。術後、ウマはすべて12日間馬小屋で休み、その後4〜6週間、手綱を持って歩かせた。
【0054】
管理及び食事
試験を完了している13頭のうち10頭は2人の調教師によって提示された。調教師Aは3頭(n=2がSEQ;n=1がCON)を提供し、調教師Bは7頭(n=4がSEQ;n=3がCON)を提供した。これは、ウマが管理される条件を標準化するのに役立った。これらのウマの飼料は、穀物餌なしで調教師Bから干し草のみを与えられた2頭(n=1がSEQ;n=1がCON)を除いて、各訓練場で一貫していた。
【0055】
滑液の生体マーカー
PGE2の濃度はベースラインではCONとSEQの間で差異はなかった(CON:563.2±58.6pg/mL;SEQ:647.7±81.9pg/mL;p=0.4)。42日目では、CONのPGE2は変化しなかった(480.3±66.9pg/mL;p=0.3)が、SEQのウマはPGE2の有意な低下を示した(418.0±31.9pg/mL;p=0.03)(図1)。
【0056】
GAG
滑液GAGは、ベースラインにてCONのウマの方が(26.2±1.4μg/mL)SEQのウマ(22.7±1.0μg/mL)よりも有意に高かった(p=0.05)。2元分析は、42日目までの滑液GAGにおける有意な低下を検出した(p=0.02)が、2つの処理群は互いに差異はなかった(p=0.3)(図2)。
【0057】
臨床的な転帰の測定
動員された15頭のウマはすべて、X線写真又は手術又はその両方によって、橈骨手根骨の、手根骨間の及び/又は中手指節の関節表面での破片骨折片と診断された。ベースライン又は経過観察中の外科的な及びX線写真による知見を表1に提供する。
【0058】
軽い関節炎は11の関節で外科的に診断され(CON:n=5;SEQ:n=6)、中程度の関節炎は2つの関節で外科的に診断された(CON:n=2)。関節炎の外科的知見には5つにすぎない関節のX線での兆候が伴った(CON:n=2;SEQ:n=3)。経過観察で破片骨折片の持続する証拠がないことを除いて、42日の経過観察でCON又はSEQのいずれかでの関節炎のX線による兆候に有意な変化はなかった(表1)。
【0059】
関節周囲の平均値はベースラインでCON(27.7±0.98cm)とSEQ(27.6±0.80cm)の間に差異はなかった。ベースラインに比べて42日では、関節周囲はCON(29.0±0.10cm)及びSEQ(29.9±0.68cm)の双方で有意に増大したが、群は互いに差異はなかった(p=0.9)。
【0060】
歩行困難(すなわち、AAEP歩行困難等級>0)は6つの関節で検出された(CON:n=3;SEQ:n=3)。経過観察でのウマすべてで歩行困難は完全に解消した。3つの関節が経過観察で屈曲試験陽性とスコア化した(CON:n=1;SEQ:n=2)。
【0061】
考察
上記の実験は、今まで認められていない、または知られていない変形性関節症のウマで炎症性の生体マーカーを調節するSEQの能力について新しい情報を提供した。これは、SEQが滑液PGE2の既存の上昇に対して治療効果も有することを明らかにした。この仕事の結果は、全く卓越しているとみなされる。また、BOの種子からの抽出物である既知の化合物の新しい使用を結果的に生じる。
【0062】
関節炎の発症の間に、及び既存の関節炎の進行の間にPGE2が産生されるメカニズムは多角的であるが、高度に保存されている。
【0063】
SEQでのBOの使用は、滑液PGE2の阻害を介して関節炎の発症からの保護を提供し、同じ過程を介して既存の関節炎に対して治療効果を提供するということが、おそらく予測できる。記載したようなこの方法でのBOの使用は、SEQで治療されたウマにおいて骨軟骨破片の外科的除去後42日で、この使用が無ければ期待できなかった滑液PGE2の有意な低下を生じ;低下は、手術のみで治療された対照ウマでは見られなかった。
【0064】
滑液NOは、手術のみによっても、又は手術に次いでSEQによる補完によっても現在の試験では低下しなかった。これは、IL−1(インターロイキン−1)誘導のNO産生に対するSEQの阻害効果を明瞭に明らかにした以前の試験管内の研究とは矛盾する。このことは、試験管内のNOのピーク濃度(約1.3μg/mL)が現在の試験のNOのピーク濃度(約0.6μg/mL)より2倍より多いからかも知れない。SEQは試験管内で、IL−1誘導のNOを現在の試験のNOのピーク濃度に類似する約0.6μg/mLに低下させた。
【0065】
SEQは、主として関節内のPGE2の高いレベルの抑制を介して関節炎に罹ったウマに対して有効な治療活性を提供すると、本試験から結論付けられる。
【0066】
以降の記載において、以下の略称が用いられる。
BLsim :ブランク擬似消化物
BOsim :Biota orientalisの擬似消化物
DNsim :Biota orientalis栄養補助食品の擬似消化物
INDOsim:インドメタシンの擬似消化物
【0067】
研究のため、72時間培養時点で集められたサンプルを予備刺激ベースラインサンプルと考えた。移植片のIL−1での処理を開始し、媒体のサンプルは24時間(培養時間96時間)および48時間(培養時間120時間)に評価のため集めた。これらの時点を、サンプルを10 ng/mLまたは0 ng/mL(すなわち、刺激なし)のいずれで処理したかにかかわらず、刺激後、24時間および48時間と呼んだ。
【0068】
mPGE2 濃度
刺激されていない対照サンプルでの知見と比較して、IL−1(10 ng/mL)での刺激はBLsim で処理された移植片で、24時間後(419.4 ± 68.1 pg/mL vs 844.2 + 102.Tpg/mL;)および48時間後(363.0 ± 43.5 pg/mL vs 600.4 + 36.8 pg/ mL)、mPGE2 濃度を顕著に増加させた。刺激されていない移植片ではBOsim のmPGE2 濃度に対する効果はなかった。IL−1で刺激された移植片では、BOsim (0.06 and 0.18 mg/mL)はmPGE2 濃度を刺激された対照の移植片と比較して、24時間の時点で減少させた(それぞれ398.8 ± 207.8 pg/ mL および427.5 ± 91.5 pg/mL)。
【0069】
移植片をINDOsimで調整すると、全ての時点で刺激された移植片と刺激されていない移植片とにおいて、mPGE2の放出が顕著に阻害された。DNsim (0.06および 0.18 mg/mL)で処理すると、IL−1に誘導されたPGE2の放出は全ての時点で顕著に阻害された;mPGE2 濃度は刺激されていない移植片においてDNsim (0.06および 0.18 mg/mL)で調整された移植片において、顕著に低かった。IL−1で処理された、ベースラインならびに刺激後24時間および48時間の移植片において、DNsimによるPGE2の放出の阻害は、INDOsimに関連する阻害と同程度であった。 0.06 mgのDNsim /mLで調整された刺激されていない移植片のmPGE2 濃度は24時間および48時間の時点でINDOsimで調整した移植片での濃度と異ならなかった。0.18 mgのDNsim /mLで調整された刺激されていない移植片でのmPGE2 濃度は全ての時点で、INDOsimで調整した移植片での濃度と異ならなかった。
【0070】
mGAG 濃度
刺激されていない対照サンプルおよび刺激された対照サンプル(すなわち、BLsim で調整されたサンプル)での予備刺激ベースラインmGAG濃度(培養72時間)は異ならなかった(126.3 ± 9.3 μg/mL vs 142.1 ± 15.8 (μg/mL)。BLsimで処理された刺激されていない移植片における知見と比較して、IL−1(10μg/mL)での刺激は24時間 (75.5 ± 6.5 (μg/mL vs 169.9 + 18.6μg/mL)および48時間(55.65 ± 2.9μg/ mL vs 120.1 ± 9.8μg/mL)において、mGAG濃度を顕著に増加させた。BOsim および DNsim (0.06 mg/mL)で、IL−1で刺激された移植片を調整すると、対応する予備刺激ベースライン値と比較して、mGAG濃度が顕著に増加する結果となった(刺激された対照移植片では見られなかった増加)。しかし、これら2つの処理群におけるmGAG濃度はどの時点においても、刺激された対照移植片における濃度と異ならなかった。BOsim 、INDOsim、または0.18 mgのDNsim /mLでの処理の、IL−1で刺激された移植片からのmGAG 濃度への効果はなかった。
【0071】
刺激されていない移植片のINDOsimでの調整により、刺激されていない対照移植片における知見と比較して、mGAG濃度が、刺激期間の開始後24時間(175.7 + 15.5μg/mL)および48時間(133.1 ± 18.1μg/mL)で顕著に高くなる結果となった。BOsim、またはDNsim(0.06 and 0.18 mg/mL)の、刺激されていない移植片におけるmGAG濃度への効果はなかった。
【0072】
mNO濃度
刺激されていない対照移植片での知見と比較して、mNO濃度は、24時間 (0.28 ± 0.04μg/mL vs 1.26 ± 0.13(μg/mL)および48時間(0.19 ± 0.04μg/mL vs 1.04 ± 0.08μg/mL)の間IL−1(10 ng/mL)で刺激した後の対照移植片において顕著に増加していた。
【0073】
対照移植片での知見と比較して、移植片をINDOsimで調整することにより、刺激条件および無刺激条件の双方で、ベースライン、および、刺激期間の開始後24時間でmNO濃度が顕著に増加する結果となった。刺激された対照移植片と比較して、DNsimはIL−1で刺激された移植片のmNO 濃度を、24時間(0.06 および 0.18 mg のDNsim/mLそれぞれにつ、 0.91 +0.11μg/mL および 0.92 + 0.10μg/mL)および48時間(0.06 および 0.18 mg の DNsim/mLそれぞれにつき、0.61 ± 0.10μg/mL and 0.58 + 0.09μg/mL)で顕著に減少させた。
刺激されていない移植片をDNsimで調整すると24時間刺激時点(0.06 および 0.18 mg の DNsim/mLそれぞれにつき、0.66 ± 0.18μg/mL および0.67 + 0.14μg/mL)においてmNO濃度を刺激されていない対照での知見と比較して、顕著に増加させた。BOBim (0.06 or 0.18 mg/mL)での調整は、IL−1で刺激されたまたは刺激されていない移植片でのNO産生に影を与えなかった。
【0074】
細胞生存
INDOsimの存在下または非存在下で、IL−1刺激(10 ng/mL)の細胞生存に対する刺激として顕著なものはなかった。濃度0.18 mg/mLで、DNsim および BOsim のそれぞれは、刺激された対照移植片での効果と比較して、IL−1で刺激された移植片で細胞生存において顕著な増加という結果をもたらした。濃度0.06 mg/mLで、細胞生存に対するDNsim またはBOsimの効果はなかった。
【0075】
考察
上記の結果はBOsimおよびDNsimが、細胞生存や軟骨細胞の代謝に悪影響を与えることなく、関節軟骨移植片の外因性IL−1への応答を調節していることを示しており、BO種子からの油は軟骨移植片によるIL−1依存性PGE2産生を部分的に阻害する。
DNsim (すなわち、NZGLM, サメ軟骨, アワビ, および BO)の不均一な組成は、同容量での個々の成分のみの効果と比較して、NO−およびPGE2-阻害特性を顕著に改善するという結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨細胞の増殖の刺激を介して軟骨の成長又は修復を刺激することを含む軟骨の劣化の治療のための、Biota orientalisからの抽出物を有効成分として含む医薬。
【請求項2】
前記治療が予防的治療である請求項1の医薬。
【請求項3】
前記の軟骨の劣化が滑液のPGE2のレベルの上昇で特徴づけられる請求項1または2の医薬。
【請求項4】
ペルナイガイ抽出物、アワビ抽出物もしくは粉末、およびこれらの組み合わせから選択される追加の抽出物を含む請求項1〜3のいずれかの医薬。
【請求項5】
サメ軟骨粉末を含む請求項1〜4のいずれかの医薬。
【請求項6】
コンドロイチンを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの医薬。
【請求項7】
前記コンドロイチンが硫酸コンドロイチンである請求項6の医薬。
【請求項8】
前記コンドロイチンが海洋性のコンドロイチンであることを特徴とする請求項7の医薬。
【請求項9】
前記のBiota orientalisからの抽出物がBiota orientalisの種子からの抽出物である請求項1〜8のいずれかの医薬。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−20999(P2012−20999A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153457(P2011−153457)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(511169645)デイシー テック プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】