軟骨用組成物
【課題】本願は、軟骨形成もしくは修復のための組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】本願発明は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤を使用した軟骨形成の促進もしくは修復を誘導する作用剤および方法に関する。組成物には、NELLペプチド、NELL様ペプチド、および任意で少なくとも一つの他の活性剤、細胞、および生体適合材料を軟骨(すなわち、硝子軟骨、弾性軟骨、繊維軟骨)の修復の目的で含んでもよい。
【課題を解決するための手段】本願発明は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤を使用した軟骨形成の促進もしくは修復を誘導する作用剤および方法に関する。組成物には、NELLペプチド、NELL様ペプチド、および任意で少なくとも一つの他の活性剤、細胞、および生体適合材料を軟骨(すなわち、硝子軟骨、弾性軟骨、繊維軟骨)の修復の目的で含んでもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述
本願発明の一部は、NIH/NIDR助成番号DE9400と、CRC/NIH助成番号RR00865と、NIH/NIDCR RO3 DE 014649−01と、NIH/NIDCRK23DE00422と、NIH DE016107−01と、NIH/SBIR R43−DE016781−01との助成により創出された。米国政府は、本願発明に所定の権利を持つことが出来る。
【0002】
関連出願とのクロスレファレンス
本願は、2005年9月28日に提出された米国出願番号10/527,786の一部継続出願であり、これは2003年9月15日に提出された国際出願番号PCT/US2003/29281の米国国内段階であり、これは2002年9月13日に提出された米国仮出願番号60/410,846の優先権を主張している。また、本願は、2005年8月5日に提出された米国出願番号10/544,553の一部継続出願でもあり、これは2004年2月9日に提出されたPCT出願PCT/US2004/003808の米国国内段階であり、これは、2003年7月2日に提出された米国仮出願番号60/445,672と、2003年9月15日に提出されたPCT/US2003/29281の優先権を主張しており、これらの出願の教示内容は、本願において参照として取り入れられている。また、本願は、2006年2月16日に提出された国際出願番号PCT/US2006/005473の一部継続出願であり、これは、2005年2月16日に提出された米国仮出願番号60/653,722の優先権を主張している。本願は、2006年3月28日に提出された米国出願11/392,294の一部継続出願でもあり、これは米国特許7,052,856として発行された、1999年10月5日に提出された米国出願番号09/912,297の継続出願である。継続中の出願の全ての教示内容は、ここに参照によりその全体が記載されている。
【0003】
本願は、概して、軟骨形成および再生のための組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
成長因子とは、ペプチドなどのように、規定された細胞集団の成長および分化に in vivoもしくはin vitroにおいて影響を与える物質をいう。
【0005】
軟骨とは、密度の高い結合組織である。これは、固いゲル状マトリクス内に分散する軟骨細胞から構成されている。軟骨は、無血管(血管が全くない)なため、栄養素は、マトリクスの中を浸潤する。軟骨は、関節、肋骨、耳、鼻、喉、そして脊椎板の間で見つけることが出来る。軟骨には主に3種類あり、硝子軟骨(例えば、肋軟骨、鼻の軟骨、気管および気管支、および関節の軟骨など)と、弾性軟骨(例えば、外耳、外耳道、エウスタキオ管の一部、喉頭蓋、および喉頭軟骨の一部など)と、繊維軟骨(例えば、半月板(例えば三角線維軟骨複合体や膝の半月板)、椎間板、顎関節円板、恥骨結合、および骨に結合する腱や靱帯のいくつか)とである。
【0006】
軟骨の主な役割の一つが、骨形成が開始できる枠組みを提供することである(すなわち、軟骨内骨形成において)。軟骨のもう一つの重要な役割は、関節の骨の動作のために滑らかな表面を提供することである。例えば、膝関節にあることでよく知られる、関節軟骨は、非常に抵抗が少なく、高い耐摩耗性、および修復性の質に乏しいことが一般的な特徴である。関節軟骨は、膝関節の耐圧迫力および耐負荷の性質の多くの役割を担っており、関節軟骨なしで歩くのは、痛みを伴うか、不可能である。
【0007】
軟骨のその他の重要な役割としては、しっかりしていて柔軟なサポートを提供することである(例えば、鼻の軟骨、脊椎円板、気管の軟骨、膝の半月板、気管支軟骨など)。例えば、半月板などの軟骨は、関節の安定性、潤滑、および力の伝達において重要な役割を果たす。重量負荷下において、半月板は、脛骨上の大腿骨の位置を調整し、接触表面を増加させることにより圧迫力を分散する。それにより、平均ストレスを2倍から3倍減少させる。
【0008】
さらには、半月板は、関節液と接触して氷上の氷と比較して5倍も滑らかな摩擦係数を出す。他の例として、椎間板は、隔子、衝撃吸収材、動作に対応する一部などの役割を含むいくつかの重要な機能を有している。椎間板のゼラチン状の中央部分は、髄核と呼ばれており、80−90%水で構成されている。核の固形部分は、タイプIIコラーゲンと非凝集プロテオグリカンである。髄核の外側の靱帯性の輪は、繊維輪と呼ばれ、油圧式に核を密閉することで、円板に負荷がかかると円板内の圧力を上げることができる。繊維輪には、重なり合う半径方向のバンドがあり、これはラジアルタイヤの層のような感じではなく、これにより通常の負荷において破裂することなく繊維輪を介してねじりストレスを分散する。椎間板は、油圧式のシリンダーとして機能する。繊維輪は、核と相互に作用する。核に圧力が加えられるに従って、繊維輪の繊維が保持機能を果たすことで核の突出やヘルニアを防ぐ。
【0009】
軟骨は、摩耗、怪我または病気により損傷をうける。歳をとるとともに、体内の軟骨の水分とタンパク質の含有量が変化する。この変化は、軟骨を、より弱く、より壊れやすくて薄くする。骨関節炎は、よくある軟骨損傷であり、これは、動作範囲の制限、骨損傷、痛みなどを引き起こす。激しいストレスと慢性的な疲労により、骨関節炎は、直接的に関節表面を摩耗させ、極端な場合には、骨が関節に露出される。他の例としては、保護および安定の役割を果たす半月板をなくすと、関節弛緩または関節を不安定にする異常な動きを引き起こす。
【0010】
過度の動作や、接触表面の減少は、早期の関節炎変化を促進する。細胞レベルにおいては、まず関節軟骨の表面層から細胞が失われ、続いて軟骨が割れ、そして薄層化および浸食が起きる。そして最終的に下にある骨が突き出してくる。
【0011】
最も早い関節炎性の変化は、全半月板がなくなってから3週間後に確認されている。他の例としては、脊椎を積層する椎間板および関節(堆間関節)の一部は軟骨を含有するために、この領域は時間が経つにつれ摩耗したり裂けたりする(変性変化)。内部の核が脱水されるにしたがって、円板の空間は減少し、重なり合う環状の靱帯が膨らむ。核の進行性の脱水の場合においては、環状の繊維は割れるか裂けてしまう。通常の軟組織の張力が失われると、脊椎の一部分が亞脱臼を起こし(例えば、部分的な関節の脱臼)、骨棘の形成(骨の突起)、孔の狭窄、機械的な不安定性、および痛みを引き起こす。環状の繊維が伸びたりもしくは破裂すると、圧迫された核の材料が膨らんだり破裂したりし、神経組織を圧迫し痛みを伴い弱めてしまう。
【0012】
これは、神経圧迫や、椎間板脱出、もしくは椎間板ヘルニアと言われる。神経根症とは、脊椎間の椎間板の損傷に由来する神経の炎症を言う。機械的機能障害も、椎間板の損傷と痛みを引き起こすことがある(例えば、退行性椎間板変性症など)。例えば、許容範囲を超えた力が椎間板を通してかかることなどによるトラウマの結果として、椎間板が損傷することもあり、また環状の繊維の内側もしくは外側が裂けることもある。
【0013】
これらの裂けた繊維は、負荷が増加している際には、炎症反応を起こすこともあり、直接痛みを引き起こすか、もしくは奥深くの傍脊椎線による補償的な防御痙攣を介して痛みを引き起こすことがある。
【0014】
軟骨の損傷や機能不全には、いくつかの修復選択肢がある。骨関節炎は、米国において、お年寄りの障害を引き起こす原因の中で二番目に多いものである。一般的に軽症から始まる退行性障害で、時間と摩耗に伴って激しさを増す。軽症から普通程度の症状の患者は、この障害に対して手術によらないいくつかの治療により処理することができる。装具の使用や、薬による処置、例えば抗炎症剤(例えば、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン)、COX−2選択阻害剤、ヒドロコルチゾン、グルコサミン、およびコンドロイチンサルフェートは、軟骨の欠乏による痛みを緩和することがわかっており、退行性の進行を遅らせることができると主張する人もいる。
【0015】
全関節の置換を除く関節軟骨の手術の殆どが、様々な処置グループに分けることができる。炎症および痛みを止めることを目的とした疾患および弱体化した軟骨を除去する処置は、切除(軟骨切除術)およびデブルドマンを含む。他の処置グループは、例えば、ドリリング、微少骨折療法、軟骨形成術、およびスポンジャライゼーションなどの軟骨形成を促進することを目的とした種々の研削処置から構成される。研削、ドリリング、および微少骨折は、20年前に始まった。これらは、骨の軟骨下プレートへの血管損傷の後に起こる軟骨組織の自然な修復現象に依存している。
【0016】
レーザー補助処置は、現在実験段階だが、別のカテゴリーを構成している。これらは、病気の軟骨の除去と軟骨の再形成を組み合わせており、さらに軟骨の増殖を促す。他の処置は、自己由来の軟骨移植を含む(ジェンザイム社のカーティセル)。
【0017】
間葉系軟骨により適用可能な他の処置は、早期の外科的処置、および裂けた構造の縫合処置もしくは深刻な怪我の場合は半月板同種移植を含む。
【0018】
椎間板ヘルニアと座骨神経痛の患者の大半が手術なしで治癒するが、手術が必要になった場合、椎弓切除術を使った椎間板ヘルニアの切除(脊髄を囲む脊椎の骨に小さな孔を開ける)、ラミネクトミー(神経組織に隣接する骨の壁を除去する)、皮膚を介する針による方法(椎間板ヘルニア手術)、椎間板溶解処置(化学的髄格融解術)等を含む。機械的異痛症を患う患者は、無反応から姑息的療法、身体障害から個人の生活などの問題を脊椎固定術、椎間板電熱凝固(繊維輪形成術)、後方動的安定術(Posterior dynamic stabilization)、人工椎間板技術もしくは、まだ実験段階のタンパク質、ペプチド、遺伝子治療もしくは核酸を利用した様々な分子治療を用いた椎間板再生治療などにより解決することができる。軟骨に関する問題の治療に対して数多くの方法が提唱されてきたが、その多くが人工もしくは機械的解決に基づいており、通常の軟骨組織生体を再形成するものではないことは明らかである。したがって、軟骨形成を刺激する方法が必要である。以下に記載する実施形態は、上述の問題と需要を解決するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本願発明は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤を使用した軟骨形成の促進もしくは修復を誘導するための作用剤および方法に関する。組成物には、NELLペプチド、NELL様ペプチド、および任意で少なくとも一つの他の活性剤、細胞、および生体適合材料を軟骨(すなわち、硝子軟骨、弾性軟骨、繊維軟骨)の修復の目的で含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、本願発明は、軟骨に関連する医学的症状を治療、予防、改善するための軟骨形成を直接的もしくは間接的に促進する少なくとも一つの作用剤を効果的な量含む組成物を提供する。軟骨形成の直接的促進用の作用剤の一つとして、軟骨形成細胞には、例えば、これに限定されるわけではないが、軟骨芽細胞、軟骨細胞、もしくは軟骨前駆細胞、成体および胚性幹細胞、骨髄細胞、骨髄ストロマ細胞、間葉系細胞、繊維芽細胞、脂肪由来の細胞などに適用されるNELLペプチドまたはNELLを基礎とした遺伝子治療もしくはNELL−遺伝子産物の促進剤などがある。軟骨形成の間接的促進(例えば、軟骨芽細胞/軟骨細胞分化を通して)のための作用剤としては、例えば、NELLペプチドもしくはNELLペプチドレセプターのアゴニストなどがある。
【0021】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、一以上のNELLペプチドレセプターの阻害剤もしくはアンタゴニスト、大量のNELLペプチド、もしくはそれらの組み合わせを含むことができる。このような組成物は、例えば、ただしこれらに限定されるものではないが、骨芽細胞、骨前駆細胞、幹細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、硬膜細胞、骨膜細胞、周皮細胞、および/または筋肉細胞などの軟骨形成細胞が分化する可能性もしくは分化を阻害することにより軟骨形成分化を阻害するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、NELL1が過剰発現したマウスを同腹仔のワイルドタイプと比較した大腿骨頭における増長された軟骨の成熟と肥大を示す。左の図は、ワイルドタイプの新生大腿骨頭であり、大腿骨頭において小さくてより未熟な軟骨細胞を示している。右の図は、NELL1を過剰発現させたトランスジェニックマウスであり、よく分化し、より成熟し、肥大化した軟骨細胞が大腿骨頭全体において大きな核および液胞と共に存在していることを示す。
【図2】図2A〜2Fは、E18 NELL1を過剰発現させたマウスにおいて同腹仔のワイルドタイプと比較して増長された半月板の発達を示す。図2Aおよび図2Bは、ワイルドタイプ(図2A)およびNELL1を過剰発現させた(図2B)動物における大腿骨頭と脛骨頭の間にある半月板を指し示す矢印を付して示している。図2Cおよび2Dは、図2Aおよび2Bを高倍率にしたものである。図2Eは、図2Cで示すワイルドタイプコントロールを高倍率にしたものであり、より未分化で最小限の肥大化の軟骨細胞を示す。図2Fは、図2Dで示すNELL1を過剰発現させた動物の図を高倍率にしたものであり、軟骨マトリクスにおいて著しくより分化した軟骨細胞を示す。肥大化した軟骨細胞内の液胞は、半月板における軟骨細胞がよく分化していることを示唆する。
【図3A】図3Aは、耳介軟骨から分離されたヤギのプライマリ軟骨細胞へのアデノウィルスの形質導入を示す。図3Aは、βガラクトシダーゼ発現を示す多数の陽性染色細胞のアデノウィルス(Ad)形質導入の効率を示す。
【図3B】図3Bは、耳介軟骨から分離されたヤギのプライマリ軟骨細胞へのアデノウィルスの形質導入を示す。図3Bは、AdNELL1形質導入ヤギ軟骨細胞における著しいNELL1発現(β−アクチンコントロールと比較して)と、AdBMP2もしくはAdLacZ(コントロール)のNELL1タンパクの無発現を示すウェスタンゲルを示す。
【図4A】図4Aは、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の肉眼的形態を示す。NELL1を形質導入したサンプルは、視診(図4A)および重量(図4B)の双方において、コントロールよりも著しく大きかった。加えて、NELL1を形質導入したサンプルはBMP2を形質導入したサンプルに見られた変色は見られなかった。
【図4B】図4Bは、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の肉眼的形態を示す。NELL1を形質導入したサンプルは、視診(図4A)および重量(図4B)の双方において、コントロールよりも著しく大きかった。加えて、NELL1を形質導入したサンプルはBMP2を形質導入したサンプルに見られた変色は見られなかった。
【図5A】図5Aは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Aは、AdBMP2を形質導入した試料において望ましくないミネラル化(赤色)を示したが、AdNELL1およびAdLacZ試料では示さなかった。図5Bは、AdLacZコントロールと比較してNELL1がより多くの軟骨のかたまりを誘発することを示す。図5Cは、試料においてAdBMP2が著しく密度を増やしたことを示す(ミネラル化の他の指標)。
【図5B】図5Bは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Bは、AdLacZコントロールと比較してNELL1がより多くの軟骨のかたまりを誘発することを示す。
【図5C】図5Cは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Cは、試料においてAdBMP2が著しく密度を増やしたことを示す(ミネラル化の他の指標)。
【図6】図6は、ヌードマウスに移植/注入して2週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。ヘマトキシリン・イオジン(H&E)染色(1列目)は、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成が増加した証拠を示す。軟骨を染めるアルシアンブルー染色(2列目)でも、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成の増加を示す。より成長した軟骨細胞を染色するX型コラーゲン(ColX)の免疫染色(3列目)では、AdNELL1およびAdBMP2形質導入した試料において染色の増加を示す。
【図7】図7は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。H&E染色(1列目)は、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められた。少量の軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。アルシアンブルー染色(2列目)も、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められ、最小限の軟骨形成が認められた。少量の未成熟な軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。
【図8】図8は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における骨マーカーとしてのCdfa1/RunX2と、軟骨マーカーとしてのColXおよびテネイシンの免疫染色を示す。テネイシンは、関節軟骨およびその他の恒久軟骨の発達と密接に関連しているが、一方で、テネイシンのマトリクスタンパク質の欠如もしくは減量は、突然変異を起こす一過性の軟骨を特徴とし、骨に取って代わられる(Pacifici, M., M.Iwamoto, et al. Tenescin is associated with articular cartilage development. Dev Dyn 198 (2):123−34,1993)。Cbfa1/Runx2は、軟骨性AdNELL1もしくはAdLacZコンロール形質導入サンプルでは最小限に発現し、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは中程度に発現していた(1列目)。ColXは、軟骨性AdNELL1サンプルの細胞で高く発現し、また非常に局在していたが、骨形成の証拠はなかった。一方で、ColXは、AdBMP2処理したサンプル(2列目)の細胞内よりも、主に細胞外マトリクスと関連している。テネイシンは、AdNELL1サンプルで高く発現し、AdBMP2およびコントロールAdLacZでは最小限に存在する(3列目)。
【図9】図9は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における血管形成成長因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、 骨マーカーオステオカルシン(OCN)と関連する内軟骨性骨化の免疫染色を示す。VEGFおとびOCNの両方とも、軟骨性AdNELL1もしくはコントロールAdLacZ形質導入サンプルでは発現しなかったが、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは、中程度の発現をした。
【図10】図10は、NELL−1を過剰発現させたマウスにおける長骨の軟骨の組織を示す。NELL1は、内軟骨性骨化時において、関節軟骨領域(上段の図)および長骨形成領域(下段の図)の両方を含む脛骨全体で発現している。上段の図は、NELL1が関節軟骨領域で軟骨の分化を調節且つ増加できることを示す。したがって、これらのデータは、増加したNELL1ペプチド活性が、直接的(例えば、NELLペプチドの添加もしくは増加したNELLペプチド発現を通して)もしくは間接的に(例えば、NELL1ペプチド促進剤および/またはNELL1ペプチドレセプターのアゴニストおよび/または活性剤の添加を通して)軟骨形成を促進することを示す。下段では、骨形成が始まった長骨のシャフト領域では、増加したNELL1は軟骨形成を起こし、その後、内軟骨性骨化を通して肥大化および増加した骨形成を引き起こす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本願発明は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤を使用した軟骨形成の促進もしくは修復を誘導するための作用剤および方法に関する。組成物には、NELLペプチド、NELL様ペプチド、および任意で少なくとも一つの他の活性剤、細胞、および生体適合材料を軟骨(すなわち、硝子軟骨、弾性軟骨、繊維軟骨)の修復の目的で含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、本願発明は、軟骨に関連する医学的症状を治療、予防、改善するための軟骨形成を直接的もしくは間接的に促進する少なくとも一つの作用剤を効果的な量含む組成物を提供する。軟骨生成の直接的な促進用の作用剤の一つとしては、軟骨形成細胞には、例えば、これに限定されるわけではないが、軟骨芽細胞、軟骨細胞、もしくは軟骨前駆細胞、幹細胞、骨髄細胞、骨髄ストロマ細胞、繊維芽細胞、脂肪由来の細胞などに適用されるNELLペプチドでもよい。軟骨形成の間接的促進(例えば、軟骨芽細胞/軟骨細胞分化を通して)のための作用剤としては、例えば、NELLペプチドもしくはNELLペプチドレセプターのアゴニストなどがある。
【0025】
いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物を軟骨形成もしくは再生を促進するために哺乳類に対して、全身もしくは局所的に適用することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、一以上のNELLペプチドレセプターの阻害剤もしくはアンタゴニスト、大量のNELLペプチド、もしくはそれらの組み合わせを含むことができる。このような組成物は、例えば、ただしこれらに限定されるものではないが、骨芽細胞、骨前駆細胞、幹細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、硬膜細胞、骨膜細胞、周皮細胞、および/または筋肉細胞などの軟骨形成細胞が分化する可能性もしくは分化を阻害することにより軟骨形成分化を阻害するのに効果的である。
【0027】
軟骨形成もしくは再生に対する本願発明の効果は、図1〜10に示す。
【0028】
図1は、NELL1が過剰発現したマウスを同腹仔のワイルドタイプと比較した大腿骨頭における増長された軟骨の成熟と肥大を示す。左の図は、ワイルドタイプの新生大腿骨頭であり、大腿骨頭において小さくてより未熟な軟骨細胞を示している。右の図は、NELL1を過剰発現させたトランスジェニックマウスであり、よく分化し、より成熟し、肥大化した軟骨細胞が大腿骨頭全体において大きな核および液胞と共に存在していることを示す。肥大化した軟骨では、ミネラル化は起きていない。これらの研究は、NELL1は、軟骨細胞の成熟、肥大化を必ずしもミネラル化を誘導しないでも増長できることを示す。
【0029】
図2A〜2Fは、E18 NELL1を過剰発現させたマウスにおいて同腹仔のワイルドタイプと比較して増長された半月板の発達を示す。図2Aおよび図2Bは、ワイルドタイプ(図2A)およびNELL1を過剰発現させた(図2B)動物における大腿骨頭と脛骨頭の間にある半月板を指し示す矢印を付して示している。図2Cおよび2Dは、図2Aおよび2Bを高倍率にしたものである。図2Eは、図2Cで示すワイルドタイプコントロールを高倍率にしたものであり、より未分化で最小限の肥大化の軟骨細胞を示す。図2Fは、図2Dで示すNELL1を過剰発現させた動物の図を高倍率にしたものであり、軟骨マトリクスにおいて著しくより分化した軟骨細胞を示す。肥大化した軟骨細胞内の液胞は、半月板における軟骨細胞がよく分化していることを示唆する。このデータは、Nell−1が半月板の形成および分化を促進することを示す。
【0030】
図3Aおよび3Bは、耳介軟骨から分離されたヤギのプライマリ軟骨細胞へのアデノウィルスの形質導入を示す。図3Aは、βガラクトシダーゼ発現を示す多数の陽性染色細胞のアデノウィルス(Ad)形質導入の効率を示す。図3Bは、AdNELL1形質導入ヤギ軟骨細胞における著しいNELL1発現(β−アクチンコントロールと比較して)と、AdBMP2もしくはAdLacZ(コントロール)のNELL1タンパクの無発現を示すウェスタンゲルを示す。これらの研究は、アデノウィルスの形質導入が効率的であり、AdNELL−1が、NELL1タンパク質の発現を増加させるが、AdBMP2はしないことを示す。
【0031】
図4Aおよび4Bは、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の肉眼的形態を示す。NELL1を形質導入したサンプルは、視診(図4A)および重量(図4B)の双方において、コントロールよりも著しく大きかった。加えて、NELL1を形質導入したサンプルはBMP2を形質導入したサンプルに見られた変色は見られなかった。これらの研究は、予想に反して、BMP2がより大きい組織の固まりを示したにもかかわらず、誘発された固まりの外観は純粋な軟骨の形質とは一致しないことを示す。
【0032】
図5A〜Cは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Aは、AdBMP2を形質導入した試料において望ましくないミネラル化(赤色)を示したが、AdNELL1およびAdLacZ試料では示さなかった。図5Bは、AdLacZコントロールと比較してNELL1がより多くの軟骨のかたまりを誘発することを示す。図5Cは、試料においてAdBMP2が著しく密度を増やしたことを示す(ミネラル化の他の指標)。これらの研究は、BMP2はより大きい組織の固まりを誘導することを定量的に示すが、誘導された固まりは主にミネラル化されたものであり、純粋な軟骨の表現型とは一致しないことを示す。
【0033】
図6は、ヌードマウスに移植/注入して2週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。ヘマトキシリン・イオジン(H&E)染色(1列目)は、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成が増加した証拠を示す。軟骨を染めるアルシアンブルー染色(2列目)でも、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成の増加を示す。より成長した軟骨細胞を染色するX型コラーゲン(ColX)の免疫染色(3列目)では、AdNELL1およびAdBMP2形質導入した試料において染色の増加を示す。これらのデータをまとめると、AdNELL1およびAdBMP2の両方が、2週間目には同程度の軟骨形成および成熟を誘導したことを示す。
【0034】
図7は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。H&E染色(1列目)は、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められた。少量の軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。アルシアンブルー染色(2列目)も、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められ、最小限の軟骨形成が認められた。少量の未成熟な軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。これらのデータをまとめると、4週間目には、AdNELL1は誘導を継続し、軟骨の形質を維持することができるが、一方で、AdBMP2は骨を形成し、軟骨細胞において軟骨形質を維持することが出来ないことを示す。
【0035】
図8は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における骨マーカーとしてのCdfa1/RunX2と、軟骨マーカーとしてのColXおよびテネイシンの免疫染色を示す。テネイシンは、関節軟骨およびその他の恒久軟骨の発達と密接に関連しているが、一方で、テネイシンのマトリクスタンパク質の欠如もしくは減量は、突然変異を起こす一過性の軟骨を特徴とし、骨に取って代わられる(Pacifici, M., M.Iwamoto, et al. Tenescin is associated with articular cartilage development. Dev Dyn 198 (2):123−34,1993)。Cbfa1/Runx2は、軟骨性AdNELL1もしくはAdLacZコンロール形質導入サンプルでは最小限に発現し、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは中程度に発現していた(1列目)。ColXは、軟骨性AdNELL1サンプルの細胞で高く発現し、また非常に局在していたが、骨形成の証拠はなかった。一方で、ColXは、AdBMP2処理したサンプル(2列目)の細胞内よりも、主に細胞外マトリクスと関連している。テネイシンは、AdNELL1サンプルで高く発現し、AdBMP2およびコントロールAdLacZでは最小限に存在する(3列目)。これらの研究は、NELL1が関節軟骨およびその他の恒久軟骨の発達と関連する分子(例えば、テネイシン)を誘導できることを示す。
【0036】
図9は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における血管形成成長因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨マーカーオステオカルシン(OCN)と関連する内軟骨性骨化の免疫染色を示す。VEGFおよびOCNの両方とも、軟骨性AdNELL1もしくはコントロールAdLacZ形質導入サンプルでは発現しなかったが、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは、中程度の発現をした。これらのデータは、NELL1が血管形成を促進せず、またNELL1は軟骨サンプルにおいて血管形成を阻害している可能性があることを示す。
【0037】
図10は、NELL−1を過剰発現させたマウスにおける長骨の軟骨の組織を示す。NELL1は、内軟骨性骨化時において、関節軟骨領域(上段の図)および長骨形成領域(下段の図)の両方を含む脛骨全体で発現している。上段の図は、NELL1が関節軟骨領域で軟骨の分化を調節且つ増加できることを示す。したがって、これらのデータは、増加したNELL1ペプチド活性が、直接的(例えば、NELLペプチドの添加もしくは増加したNELLペプチド発現を通して)もしくは間接的に(例えば、NELL1ペプチド促進剤および/またはNELL1ペプチドレセプターのアゴニストおよび/または活性剤の添加を通して)軟骨形成を促進することを示す。下段では、骨形成が始まった長骨のシャフト領域では、増加したNELL1は軟骨形成を起こし、その後、内軟骨性骨化を通して肥大化および増加した骨形成を引き起こす。したがって、これらのデータは、NELLペプチドの活性が、直接的もしくは間接的に軟骨形成、軟骨の肥大化および内軟骨性骨化を促進することを示す。NELL1の欠如は、より未分化な関節軟骨芽細胞/軟骨細胞の形質、およびより肥大しないことに関連しており、これは関節軟骨が骨に取って代わられるのを防止するのに重要である。
【0038】
したがって、NELLペプチドの活性阻害は、直接的に(NELLペプチドの添加もしくはNELLペプチド発現の増加を通して)もしくは間接的に(例えば、NELL1ペプチド促進剤および/またはNELL1ペプチドレセプターのアゴニストおよび/または活性剤の添加を通して)、軟骨の肥大化および内軟骨性骨化を防止し、より未分化で肥大化していない軟骨の形質を維持するのを促進する。まとめると、これらのデータはこれに限定されるものではなく、むしろNELLが骨軟骨前駆細胞系に広く影響し、またNELLにより誘導される正確な形質は、NELLの量とNELLを適用するタイミング、正確な細胞のタイプ、細胞の分化段階、および微少環境との複雑な相互作用に依存することを示す。
【0039】
用語「軟骨」とは、硝子、弾性および繊維性軟骨を含包し、さらに哺乳類のいずれの軟骨成分を言及できる。例えば、椎間板および半月板は、軟骨の定義に含まれる繊維性軟骨構造である。
【0040】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」は、ここではアミノ酸残基のポリマーを言及するものとし、相互に交換して使用できる。これらの用語は、一以上のアミノ酸残基が、自然下で存在するアミノ酸、さらに自然下に存在するアミノ酸ポリマーに対応する人工的な化学的アナログであるアミノ酸ポリマーにも適用されてもよい。
【0041】
用語「NELL」は、NELL1およびNELL2ペプチドを言う。NELL1ペプチドは、NELL1遺伝子もしくはcDNAにより発現できるタンパク質であり、SEQ ID NO:2、4、および6を含む。NELL1ペプチドは、軟骨形成のための軟骨形成細胞の分化を誘導する能力を保持するNELL1ペプチドのフラグメントを含むことができる。NELL2ペプチドは、NELL2遺伝子もしくはcDNAにより発現できるタンパク質であり、SEQ ID NO:8、10、12および14を含む。NELL2ペプチドは、全NELL2ペプチドの配列と類似する活性を保持するNELL2ペプチドフラグメントを含むことができる。自然に存在する作用剤の生物学的特性を保持するNell−1、Nell−2等、無処理のタンパク質、完全もしくは部分的に糖化、フラグメント、欠失、追加、アミノ酸の置換、突然変異、修飾。Nell活性ドメインおよびNell結合サイトを有する低分子。
【0042】
いくつかの実施形態においては、用語「NELLペプチド」とは、NELL1もしくはNELL2に関連するポリペプチドのフラグメントを含むことが出来る。
【0043】
いくつかの実施形態においては、用語「NELLペプチド」とは、NELLに関連する作用剤を含むことができる。例えば、NELLペプチドもしくはそのフラグメントとホモロジーが高いNELLペプチドに関連するいずれのペプチドも含むことができる。高いホモロジーとは、NELLペプチドに対してホモロジーが50%よりも高くてもよく、例えば、NELLペプチドに対してホモロジーが約60%よりも高くてもよく、NELLペプチドに対してホモロジーが約70%よりも高くてもよく、NELLペプチドに対してホモロジーが約80%よりも高くてもよい。
【0044】
NELLペプチドは、ワイルドタイプの配列に変異を含まない天然および/または遺伝子組み換えのNELLペプチド、またはワイルドタイプの配列に変異を含むがNELLペプチドに対して高いホモロジーを有する遺伝子組み換えNELLペプチドでもよい。さらには、NELLペプチドは、ヒト細胞、バクテリア、酵母、昆虫もしくは植物細胞由来でもよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態においては、用語「NELLペプチド」とは、NELLペプチドと同等の構造、機能、立体構造を含む。ここで使われるNELLペプチドと同等の構造とは、NELLペプチドと同等の構造もしくは実質的に類似の構造、またはNELLペプチドと同等の機能ドメインを含むタンパク質もしくはペプチドを言う。NELLペプチドと同等の機能とは、NELLペプチドと同等の機能もしくは実質的に類似の機能、またはNELLペプチドと同等の機能ドメインを含むタンパク質もしくはペプチドを言う。NELLペプチドと同等の立体構造とは、NELLペプチドと同等の構造もしくは実質的に類似の立体構造、またはNELLペプチドと同等の機能ドメインを含むタンパク質もしくはペプチドを言う。
【0045】
いくつかの実施形態において、ここに記載するNELLペプチドは、NELLペプチドの誘導体でもよい。ここで使用する用語「誘導体」とは、NELLペプチドに由来する化学的もしくは生物学的化合物もしくは物質、それらと同等の構造、もしくはそれらと同等の立体構造を言う。例えば、そのような誘導体として、プロドラッグの形態、ポリエチレングリコール化の形態、またはNELLペプチドをより安定にし、もしくはNELLペプチドがより親骨性もしくは親油性を有するようにするその他のあらゆるNELLペプチドを含むことができる。いくつかの実施形態において、誘導体は、ポリエチレングリコール、ポリアミノ酸、C1〜C20の炭素を持つヒドロカルビル短鎖、または生体適合ポリマーに結合したNELLペプチドでもよい。いくつかの実施形態において、用語「誘導体」は、NELLペプチドの模倣体を含んでもよい。ペプチドの模倣体の生成は、詳細に文献に記載されている。以下は、ペプチドの模倣体を含むペプチドの生成の基本的な方法を例示として記載する。
【0046】
ペプチドの生成を始める前に、アミノ酸(開始物質)のアミン側端末は、FMOC(9−フルオロメチルカーバメート)、もしくは他の保護グループにより保護されてもよく、Merrifield樹脂(遊離アミン)などの固相支持体を開始剤として使用する。その後ステップ(1)からステップ(3)が行われ、所望のペプチドを得られるまで繰り返される:(1)遊離アミンが、カルボジイミド化学反応によりC端末と反応する、(2)アミノ酸配列が精製される、そして(3)遊離アミンを作るために、中程度の酸性下において例えばFMOC保護グループが除去される。ペプチドを、樹脂から離されて独立のペプチドもしくはペプチドの模倣体が作られる。
【0047】
いくつかの実施形態においては、ここに記載するペプチドの誘導体は、物理的および化学的に修飾させたNELLペプチドを含む。物理的に修飾させたペプチドの修飾とは、例えば、対イオンによるイオンペアーなどのイオン力による修飾、水素結合による変化、pHの変化による修飾、溶媒選択による修飾、または、フォールディング/アンフォールディングの温度、pH、溶媒、および異なる段階のフォールディングとアンフォールディングの所有時間などの選択を含むタンパク質のフォールディング/アンフォールディングの異なる方法の使用による修飾などであってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、ペプチドの誘導体は、化学的に修飾させたNELLペプチドを含んでもよい。ペプチドの化学的および/または物理的特性を変えるためにNELLペプチドの一カ所もしくは多数の場所に選択的に短い炭化水素グループ(例えば、メチルもしくはエチル)を結合できる。一実施形態では、一般的に知られたポリエチレングリコール化方法により、ペプチドの化学的および/または物理的特性を変えるためにNELLペプチドの一カ所もしくは多数の場所に選択的にモノ、オリゴ、もしくはポリエチレングリコール(PEG)グループを結合できる(例えば、Mok, H., et al., Mol. Ther., 11(1):66−79(2005)参照)。
【0049】
用語「NELL1cDNA」とは、SEQ ID NO:1、3および5のことを指し、さらに用語「NELL2cDNA」とはSEQ ID NO:7、9、11、および13を指す。
【0050】
用語「抗体」は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤に特異的に結合する全ての抗体を言う。用語「抗体」は、例えば、未処理の免疫グロブリン、L鎖及びH鎖の可変領域しか含有しないFv断片、ジスルフィド結合で結合したFv断片、可変領域及び定常領域の一部を含有する。Fab又は(Fab)’2断片、単鎖抗体などのような種々の形態の改変抗体又は改造抗体を含んでもよい。抗体は、未処理の分子を含んでもよいのと同様にその断片、例えば、Fab又はF(ab’)2’、および/またはエピトープ決定基に結合できる単鎖抗体(例えば、scFv)を含んでも良い。抗体は、動物(例えば、マウス又はラット)又はヒト由来であってもよく、あるいはキメラ抗体であってもよく、又はヒト化されていてもよい。抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、又はモノクローナル抗体(「mAb」)、例えば、NELL1タンパク質又はNELL2タンパク質によりエンコードされたポリペプチドに特異性を持つモノクローナル抗体であってもよい。
【0051】
用語「捕捉剤」は、他の分子に特異的に結合し、例えば、抗体−抗体、レクチン−炭水化物、核酸−核酸、ビオチン−アビジンなどのような結合複合体を形成する分子を言ってもよい。
【0052】
用語「特異的に結合する」は、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、抗体など)を言ってもよく、異質集団の分子(例えば、タンパク質とその他の生物製剤)において存在する生体分子を同定するような結合反応を言う。従って、指定された条件下(例えば、抗体の場合は免疫アッセイ条件、核酸の場合はストリンジェントなハイブリッド)形成条件など)で、特定のリガンド又は抗体は、その特定の「標的」分子に結合してもよく、試料に存在するその他の分子には有意な量では結合できない。
【0053】
用語「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」は、共に共有結合する少なくとも2つのヌクレオチドを言う。本発明の核酸は、場合によっては、例えば、リンアミド結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、o−メチルリンアミダイト結合、及び/又はペプチド核酸主鎖及び結合を含む代替主鎖を有していてもよい核酸アナログを含んでもよいが、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよく、ホスホジエステル結合を含有してもよい。核酸アナログは正主鎖及びまたは非リボースの主鎖を有していてもよい。核酸はまた、1以上の炭素環式の糖を含んでもよい。リボース−リン酸の主鎖の修飾を行って、例えば標識のような追加部分の負荷を促進してもよいし、または例えば、生理的環境におけるそのような分子の安定性を高め、半減期を延ばしてもよい。
【0054】
用語「特異的ハイブリッド形成」は、プローブがその標的の部分配列に優先的にハイブリッド形成し、他の配列により少ない程度にハイブリッド形成してもよい条件を含むストリンジェントな条件下での特定のヌクレオチド配列への核酸分子の優先的結合、二本鎖形成、又はハイブリッド形成を言う。
【0055】
用語「NELLペプチドの阻害剤」とは、NELLペプチドの活性を阻害する化学的もしくは生物学的化合物を指す。また、この用語は、NELLペプチドの発現を抑制できる化学的もしくは生物学的化合物も含む。NELLペプチドの阻害剤は、NELLペプチド転写もしくは翻訳産物と直接的もしくは間接的に作用できる。例として、相互作用の方法は、NELLペプチドの転写もしくは翻訳の減少と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の安定性の低下と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の活性の低下と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の分解の促進とを含むが、これに限定されるわけではない。用語「NELLペプチドの促進剤」とは、NELLペプチドの活性を促進できる化学的もしくは生物学的化合物を指す。また、この用語は、NELLペプチドの発現を増進できる化学的もしくは生物学的化合物も含む。例として、相互作用の方法は、NELLペプチドの転写もしくは翻訳の促進と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の安定性の増進と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の活性の増進と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の分解の低下とを含むが、これに限定されるわけではない。
【0056】
用語「NELLペプチドレセプターの調節剤」とは、NELLペプチドレセプターの、NELLペプチドとのもしくはNELLペプチドによる結合を促進または阻害できる化学的もしくは生物学的化合物、またはNELLペプチドが存在しているかいないかに関係なくNELLペプチドレセプターの活性を調節できる化学的もしくは生物学的化合物、を指す。NELLペプチドレセプターとNELLペプチドへのもしくはNELLペプチドによる結合および/または活性を促進する調節剤をレセプターの「アゴニスト」言い、NELLペプチドレセプターとNELLペプチドへのもしくはNELLペプチドによる結合および/または活性を阻害する調節剤をレセプターの「アンタゴニスト」と言う。NELLペプチドに関係なくNELLペプチドレセプターの活性を促進する調節剤をレセプターの「活性剤」と言い、NELLペプチドに関係なくNELLペプチドレセプターの活性を阻害する調節剤をレセプターの「阻害剤」と言う。
【0057】
用語「NELLペプチド」、「NELL関連作用剤」、「NELLペプチドの阻害剤」、または「NELLペプチドの調節剤」は明細書において「作用剤」として言及してもよい。
【0058】
用語「移送伝達手段」とは、生化学の分野において使われるあらゆる移送伝達手段を指す。一般的な移送伝達手段の例として、裸DNA型伝達手段、RNA型伝達手段、ウィルス型伝達手段がある。さらなる例として、例えば、ポリマーもしくはペプチド、持続性放出担体、人工足場剤、天然の足場剤、同種移植足場剤、異種移植足場剤などがある。
【0059】
用語「対象哺乳類」もしくは「哺乳類」とは、全ての哺乳類を指し、例えば、ヒトおよび馬などの動物を含む。
【0060】
軟骨形成
軟骨形成は、通常、軟骨化プロセスを経て行われる。
軟骨化は、濃縮された間葉組織から軟骨が形成されるプロセスであり、間葉組織は、間葉組織は軟骨細胞に分化しマトリクスを形成する材料を分泌し始める。軟骨は、ミネラル化を起こすことができる。例えば、成熟した硝子関節軟骨は、軟骨と骨の間で段階的にミネラル化する。ミネラル化前線は、硝子関節軟骨の基底部を通して軟骨の量およびせん断ストレスに依存する早さで進行する。進行速度およびミネラル化前線のミネラル化分泌物密度における変動により、関節のカルシウム化された軟骨は多数の潮標ができる。
【0061】
成熟した関節のカルシム化した軟骨は、血管出芽が通っており、骨端軟骨において内軟骨性骨化に似たプロセスで新しい骨が、血管空間で作られる。関節のカルシウム化された軟骨は、セメントラインにより軟骨下骨と分けられる。軟骨では、二つのタイプの成長が起き得る:付加成長および間質成長である。付加成長は、軟骨の直径と厚みの増加の結果である。新しい細胞は、軟骨膜から発生し、軟骨モデルの表面で起きる。間質成長は、軟骨の固まりの増加の結果であり、軟骨内から起きる。軟骨細胞は、骨小腔において体細胞分裂を起こすが、マトリクスの中に閉じこめられたままであり、これは、同原グループと呼ばれる細胞の集団を作る。
【0062】
軟骨は、内軟骨性骨化を経ることでも形成できる。哺乳類の骨格は、内軟骨性骨化および膜性骨化プロセスを経て発達する。発生学的には、骨格発達中において、ある特定の骨の端部における軟骨層の確立は、内軟骨性骨化のプロセスに密接に関連する。内軟骨性骨形成の軟骨部分は、軟骨芽細胞/軟骨細胞の分化、成熟、および軟骨形成場所によってはミネラル化を伴ったり伴わなかったりする肥大化を含む。非−ミネラル化軟骨形成は、関節軟骨、顎関節、手首、膝、および椎間板繊維軟骨を含むが、これに限定されるわけではない。
【0063】
内軟骨性骨化もしくは長骨の形成は、骨格成長における機能的ストレスに耐えられるような骨形成に関連し、これは長骨の発達によく現れている。このプロセスでは、長骨の小モデルが固い硝子軟骨内にまず形成され、これは、シャフト(骨幹)と軟骨膜で覆われた将来の関節部分(骨端)とで構成され、長く、ダンベル型の軟骨を形成するための付加成長を起こす(例えば、Wheater, P.R. and H.G. Burkitt (1987).Functional histology: a text and colour atlas. Edinburgh; New York, Churchill Livingstone; Beaupre,、G.S., S.S. Stevens, et al., Jrehabil Res Dev 37(2):145−51(2000)参照)。
【0064】
軟骨モデルのシャフト内で、その後、軟骨芽細胞が著しく大きくなり、周囲の軟骨を再吸収することにより、孔の開いたスレンダーな軟骨マトリクスの骨梁だけを残す。この軟骨マトリクスは、その後カルシウム化し、軟骨細胞が変性して、相互に繋がった大きな空間を残す。この時、シャフトの軟骨膜は、軟骨形成能力を発達させ、骨膜の役割を再開する。そして、骨膜は、薄い骨の層をシャフトの表面に置き、そして未熟な間葉系細胞および血管が、軟骨細胞の変性後のシャフトに残された空間に入り込む。未熟な間葉系細胞は、軟骨マトリクスのカルシウム化された残りの空間において、骨芽細胞および血液形成細胞へと分化し、不規則な繊維性骨の形成を開始する(Wheater and Burkitt, 1987, supra参照)。Wheater and Burkitt, 1987, supraに記載された軟骨モデルでは、オリジナルの軟骨モデルの端部は、その後、シャフト内の一次骨化の大きな領域により隔てられた。しかしながら、該モデルの軟骨端部の直径は成長を続けた。
【0065】
その間、シャフトの端部にある軟骨は、退行性の変化を続け、それに続いて骨化し、これにより、この段階で発達中の骨は、半月状の軟骨骨端を各端部に有する長くて骨っぽい骨幹シャフトから構成される。シャフトと各骨端の境界面は、成長線もしくは骨端線を構成する。成長線内では、軟骨は継続的に増殖し、骨の伸長を続ける。各成長線の骨幹の観点では、軟骨細胞は成熟して死に、軟骨の変性領域は骨に取って代わる。そのため、骨っぽい骨幹は、長くなり成長線はどんどん離れていく。体が成熟すると、ホルモンの変化が軟骨の増殖を阻害し、成長線は骨に取って代わられ、骨幹と骨端とが融合する(Wheater and Burkitt,1987, supra参照)。一方、発達中の各骨端の軟骨の固まりの中心では、退行性変化および骨幹軟骨における骨形成に似た骨形成が、骨端の全外表面での軟骨の付加成長と一緒に起こる。骨端軟骨の中心の骨へのこの変化は、二次骨化として知られている。薄い硝子軟骨の領域は、関節軟骨として表面に必ず残る(Wheater and Burkitt,1987, supra参照)。
【0066】
したがって、内軟骨性骨形成および成長は、軟骨細胞のミネラル化があってもなくても、軟骨細胞(軟骨芽細胞および軟骨細胞)の増殖と成熟とから一部達成される。軟骨形成もしくは再形成は、軟骨細胞のミネラル化を調節することにより達成可能である。特定の理論に縛られることなく、軟骨細胞のミネラル化は、例えばa)場所、b)細胞の種類、c)細胞分化の段階、d)微細環境、およびe)生体力学的力などの調節因子により調節できる。例えば、軟骨細胞のミネラル化は、ミネラル化が通常起こる骨端成長線の近く、もしくは、ミネラル化が通常起こらない関節表面の近くに軟骨細胞を配置することで調節できる。この分野において、軟骨細胞の肥大および、上方制御されたマトリクスのカルシウム化は、分離可能な状態であること知られている(例えば、Jhonson, van Etten et al. 2003参照)(例えば、Johnson, K.A,D., et al., J Biol Chem 278(21):18824−32(2003)参照)。例えば、内軟骨の形成は、軟骨芽細胞およびアポトーシス軟骨芽細胞の増加に見られる軟骨芽細胞の肥大で評価でき、TUNEL染色により明確にできる。他の例としては、軟骨の形成は、必要なアポトーシスもしくはミネラル化なしの軟骨芽細胞の肥大によっても評価できる。
【0067】
軟骨再形成
軟骨は、かなりの量の水分を含んでいる。例えば、関節軟骨は、ほとんど水水(60−80質量%)で構成され、残りのECMは、ほとんどタイプIIコラーゲン(50−90%乾燥状態の質量)およびプロテオグリカン(5−10%)で構成される。その他のコラーゲンおよび微量のECM分子が少量同定されている。特徴的な領域へECMをいれること、および種々の領域での水とECMの相互作用が、生体力学的な力を吸収し関節全範囲に伝達するのに必要な強靱性を付与すると同時に、関節の動きに必要な摩擦のない滑らかな表面を提供する。日頃の歩行およびジャンプ時には、それぞれ4および20MPaと高い負荷が掛かっていることが報告されている。関節軟骨は非常に驚異的ではあるが、残念なことに最小限の修復しか発揮しない。2千万人を超える米国人が、骨関節炎および変性関節疾患に苦しめられ、これには、600億ドルを超える年間医療費負担が関連している。軟骨の組織工学用に幅広い範囲の、足場剤、サイトカイン、および成長因子が調べられた(例えば、Frenkel, S.R., et al., Ann. Biomed. Eng.32:26−34(2004); Tuli, R., et al., Arthritis Res. Ther. 5:235−238(2003));および Ashammankhi、N. and Reis, RL. Topics in Tissue Engineering, Vol.2, 2005などを参照)。 軟骨細胞の生物反応および組織再構築に対する静的vs動的圧力、せん断ストレス、静水圧、液体の流れ、流動電位、バイオリアクター、および複合体の役割が詳細に調べられおり、機械的シグナル伝達経路も調べられている(Ashammankhi, N. and Reis, RL. Topics in Tissue Engineering, Vol.2 2005)(その中の図7A−D参照)。
【0068】
したがって、本願発明のさらなる点として、ここで提供される組成物は、軟骨芽細胞および軟骨細胞から軟骨を形成するのを誘導するのに効果的な量の少なくともNELLペプチドもしくはNELLペプチドレセプターのアゴニストを含む。NELLタンパク質、ペプチド、DNA、RNA,およびNELLアゴニスト、およびアンタゴニスト阻害剤は、細胞があってもなくても、それ単独でも足場剤との組み合わせでも、機械的刺激があってもなくても、その他の成長因子が存在してもしなくても、使用することができる。例えば、一実施形態では、該組成物は、椎間板、顎関節円板、膝および手首の繊維軟骨、および関節表面における軟骨を再生、修理、増強するのに効果的な組成物でもよい。他の実施形態では、該組成物は、生体外遺伝子治療および組織工学において足場剤があってもなくてもタンパク質の細胞への注入を経て軟骨を形成するのに効果的な組成物でもよい。
【0069】
移送伝達手段および局所環境によっては、組成物は、軟骨細胞もしくは軟骨芽細胞などの軟骨形成細胞を誘導して分化させ、軟骨のみを形成するのにNELLペプチド(例えばNELL1ペプチド)を使用することができる。例えば、関節軟骨の損傷において、ここに記載する組成物は、軟骨のみを形成するように軟骨細胞/軟骨芽細胞などの軟骨形成細胞を誘導することができる。該組成物は、足場剤/キャリアとして損傷した軟骨の領域に適用できる。いくつかの実施形態では、該組成物は、任意で細胞(幹細胞、軟骨芽細胞など)を含むことができる。いくつかの実施形態では、該組成物は、遺伝子治療として適用できる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ここで使われているように、細胞は、例えば分化した軟骨細胞;移植の後に分化したもしくは移植の前に分化した分化細胞(例えば、骨格筋細胞、繊維細胞);移植の後に分化したもしくは移植の前に分化した成長した幹細胞;移植の後に分化したもしくは移植の前に分化した胚性幹細胞;ヒト細胞;核酸、タンパク質、低分子、siRNA、抗体で変化された細胞でもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、該組成物は、軟骨組織工学に使用できる。例えば、「振幅する」断続的なストレス下で軟骨芽細胞が培養されている場合、NELL1ペプチドは軟骨芽細胞を分化および軟骨形成のために含むことができる。これらの実施形態では、振幅ストレスの所要時間は、重要な役割を果たす。例えば、振幅力が、継続的に適用された場合、NELL1ペプチドを持つ組成物は、内軟骨性骨形成を誘導できる。したがって、振幅ストレスの適用は、軟骨形成細胞(例えば、軟骨細胞/軟骨芽細胞)の分化が軟骨段階でストップでき、それにより細胞が内軟骨性骨形成へと分化するのを防止できるように断続的に行われるべきである。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、該組成物は、例えば、関節軟骨および椎間板の円板修復のためなどの、軟骨を再形成/修復に使うことができる。
【0073】
ここに記載する組成物により治療、予防、向上できる軟骨状態の一例として、ただしこれに限定されるわけではないが、軟骨石灰化症、骨関節炎および/またはその他の病理的軟骨損傷で特徴づけられる病気などを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、内軟骨骨形成を促す方法として、骨形成が望まれる領域でのNELL1遺伝子産物の濃度を上げることを含んでもよく、任意で、骨形成が望まれる領域に第二作用剤を適用して軟骨芽細胞の肥大を骨形成が望まれる領域で誘導することを少なくとも含むことができる。
【0075】
該方法は、骨形成が望まれる領域にNELL1ペプチドを適用することにより、NELL1遺伝子産物の濃度を上げることを含むことができる。また、NELL1ペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、もしくはSEQ ID NO:6、を有する一群から選択でき、または軟骨および骨と関連する内軟骨骨形成を増加するのに効果的なNELLペプチドのあらゆる領域から選択できる。
【0076】
該第二作用剤は、TGF−ベータ、BMP2、BMP4、BMP7、bFGF,インスリン様成長因子(IGF)、Sox9、コラーゲン、軟骨形成細胞、骨、骨マトリクス、腱マトリクス、靱帯マトリクスを含むことができるが、これに限定されるわけではない。第二作用剤は、NELL1と共に内軟骨骨形成を誘導する補間的もしくは相乗効果を持つように選択できる。その他の作用剤は、以下に記載する。
【0077】
血管形成および軟骨形成/再形成の阻害
Shukunami et al.,にも記載されているように、軟骨は、胚発生においてほとんどの骨格の鋳型を形成する(Shukunami C., Y. Oshima, et al., Biochem Biophys Res Commun 333(2):299−307)(2005))。軟骨は、直接、骨に代わるわけではなく、血管の侵入に伴って、軟骨の骨化中心部まで運ばれる破骨細胞と骨芽細胞の活動を通して徐々に骨に変わる(内軟骨骨形成)。したがって、軟骨の血管侵入は、発達の適切な段階においては、骨形成に重要である。軟骨細胞は、血管侵入の前に成熟して肥大化し、カルシウム化されるため、軟骨は、抗血管新生性質を軟骨形成時に獲得し、急速にその性質を失う。これは、軟骨が、抗血管新生形質の大きな切り替えを行うことを示唆している。疑う余地なく、血管新生促進因子が組織内への血管侵入の動力として働いている。VEGF−Aは、内軟骨骨形成における血管新生の重要なレギュレーターである。VEGF−Aは、肥大化した軟骨で発現しているが、増殖中の軟骨では停止している。
【0078】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は、血管侵入時のマトリクス再構築を含む骨の発達に影響を与えることができる(例えば、MMP−9、MMP−13、MMP−14)。MMP−9欠損マウスでは、血管侵入およびそれに続く骨化が遅れ、その結果成長線の伸長が進んだ。MMP−9が欠如した肥大化軟骨細胞は、血管形成を刺激する通常レベルの血管新生活性を放出できず、さらに破骨細胞/軟骨吸収細胞を誘致出来ないため、骨化の遅れは軟骨への血管侵入に続いたものと考えられる。MMP−14(膜型タイプ1MMP:MT1−MMP)の標的不活性化は、マウスの内軟骨骨形成および膜内骨形成に深刻な損傷を与えた。これらの結果は、MMPが軟骨形質の血管新生の切り替えに重要な役割を果たしていることを示唆している。したがって、軟骨形成および再形成の重要な部分は、MMP−9、MMP−13、MMP−14およびVEGFなどの血管新生因子と、コンドロモジュリン−1(ChM−I)、トロンボスポンジン(TSP)−I、TSP−2、メタロプロテアーゼの組織阻害剤(TIMP)−2、TIMP−3などの抗血管新生因子の分化調節を含むことができる。具体的には、血管新生因子は、軟骨が骨化している領域で比較的より顕著であり、抗血管新生因子は、軟骨が骨化を行っていない領域で比較的より顕著である。これらの結果は、転写因子Cbfa−1/Rux2は、軟骨における血管新生の切り替えを制御するのに関与してもいことを示唆している。Cbfa−1/Rux2ノックアウトマウスは、肥大化した軟骨の分化、軟骨跡への血管侵入、およびVEGF発現を欠いており、さらにChM−I遺伝子発現の抑制を維持していた。肥大化していない軟骨細胞でCbfa−1/Rux2導入遺伝子を発現している、Cbfa−1/Rux2ノックアウトマウスでは、VEGFの上方制御および同時にChM−I遺伝子発現の下方制御により血管侵入および軟骨再形成が復活した。
【0079】
特定の理論に縛られることなく、Cbfa−1/Rux2効果の直接的な下流エフェクターであることから、NELL1は、軟骨における血管新生の切り替えの役割を担うことができる。さらに、特定の理論に縛られることなく、NELL1がトロンボスポンジン様モジュールもN末に有することから、軟骨形成におけるNELL1の役割は、NELL1の抗血管新生効果の可能性にも関与できる。
【0080】
他の作用剤
一実施形態では、ここに記載する軟骨形成および再形成のための組成物は、一以上の作用剤を含むことができる。そのような作用剤は、軟骨保護剤、アンチペインおよび/または抗炎症剤、成長因子、抗血管新生作用剤、もしくはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0081】
軟骨保護剤としては、例えば、(1)例えば、IL−1.ベータ、IL−17、IL−18を含むタンパク質のインターロイキン−1ファミリーのレセプターのアンタゴニスト;(2)例えば、TNF−R1を含む腫瘍壊死因子(TNF)レセプターファミリーのアンタゴニスト;(3)インターロイキン4、10、および13のためのアゴニスト;(4)例えば、BMP−2、BMP−4、およびBMP−7を含むTGF−.ベータ.レセプタースーパーファミリーのアゴニスト;(5)COX−2の阻害剤;(6)例えば、P38、MAPキナーゼを含むMAPキナーゼファミリーの阻害剤;(7)例えば、MMP−3、およびMMP−9を含むタンパク質のマトリックスメタロプロティアーゼ(MMP)ファミリーの阻害剤;(8)例えば、I.カッパー.Bとのp50/p65ダイマー複合体を含むタンパク質のNF.カッパー.Bファミリーの阻害剤;(9)例えばiNOSを含む一酸化窒素合成酵素(NOS)ファミリーの阻害剤;(10)例えばαvβ3インテグリンを含むインテグリンレセプターのアゴニストおよびアンタゴニスト;(11)タンパク質キナーゼC(PKC)ファミリーの阻害剤;(12)例えば、srcサブファミリーを含むタンパク質チロシンキナーゼファミリーの阻害剤;(13)タンパク質チロシンホスファターゼの調節剤;および(14)タンパク質srcホモロジー2(SH2)ドメインの阻害剤であってもよい。
【0082】
他の軟骨保護作用剤としては、例えばインスリン様成長因子(例:IGF−1)および繊維芽細胞成長因子(例:bFGF)などの他の成長因子を含むことができる。その他の軟骨保護作用剤としては、米国特許7、067、144に記載されており、その教示は、ここで参考として取り入れられている。軟骨保護作用剤は、単独でもしくは、NELLペプチドもしくは関連作用剤とともに使用できる。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述の軟骨保護作用剤のどれでもを除外できる。
【0083】
アンチペインおよび/または抗炎症剤としては、例えば、(1)セラトニンレセプターのアンタゴニスト;(2)セラトニンレセプターアゴニスト;(3)ヒスタミンレセプターアンタゴニスト;(4)ブラジキニンレセプターアンタゴニスト;(5)カリクレイン阻害剤;(6)ニューロキニンサブ1およびニューロキニン2レセプターサブタイプアンタゴニストを含むタキキニンレセプターアンタゴニスト;(7)カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)レセプターアンタゴニスト;(8)インターロイキンレセプターアンタゴニスト;(9)(a)PLA.サブ.2アイソフォーム阻害剤およびPLCアイソフォーム阻害剤を含むホスフォリパーゼ阻害剤、(b)シクロオキシゲナーゼ阻害剤、(c)リポオキシゲナーゼ阻害剤、を含むアラキドン酸代謝物の合成回路で活性している酵素の阻害剤;(10)エイコサノイドEP−1およびEP−4レセプターサブタイプアンタゴニストおよびトロンボキサンレセプターサブタイプアンタゴニストを含むプロスタノイドレセプターアンタゴニスト;(11)ロイコトリエンB.サブ.4レセプターサブタイプアンタゴニストおよびロイコトリエンD.サブ.4レセプターサブタイプアンタゴニストを含むロイコトリエンレセプターのアンタゴニスト;(12)μ―オピオイド、δ−オピオイド、カッパーオピオイドレセプターサブタイプアゴニストを含むオピオイドレセプターアゴニスト;(13)P2XレセプターアンタゴニストおよびP2Yレセプターアンタゴニストを含むプリノレセプターアンタゴスト;および(14)カルシウムチャンネルアンタゴニストであってもよい。上述の作用剤は、それぞれ抗炎症剤および/または抗侵害受容(アンチペインもしくは鎮痛剤)作用剤のいずれかとして機能する。これらの一群の化合物から選択される作用剤は特定の用途のために調整されている。これらのアンチペインおよび/または抗炎症剤は、単独でも、またはNELLペプチドもしくは関連作用剤と組み合わせて使用してもよい。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述のアンチペインおよび/または抗炎症剤のどれでもを除外できる。
【0084】
成長因子は、FGF−2、FGF−5、IGF−1、TGF−ベータ.、BMP−2、BMP−7、PDGF、VEGF、OP1、OP2、OP3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP9、BMP10、BMP11、BMP12、BNP15、BMP16、DPP、Vgl、60Aタンパク質、GDF−1、GDF3、GDF5、GDF6、GDF7、GDF8、GDF9、GDF10およびGDF11であってもよい。その他の成長因子は、米国特許番号7,067,123、7,041,641に記載されており、その教示は、ここに参考として組み込まれている。これらの成長因子は、単独で使用されてもよく、またはNELLペプチドもしくは関連作用剤と共に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述の成長因子のどれでもを除外できる。
【0085】
抗血管新生作用剤としては、例えば、抗侵入因子、レチオニン酸およびその誘導体、タキソールとその誘導体およびアナログ、スラミン、組織阻害剤メタロプロテアーゼ−1、組織阻害剤メタロプロテアーゼ−2、プラスミノーゲン活性阻害剤−1およびプラスミノーゲン活性阻害剤−2、軽いdグループの遷移金属などを含む、抗血管新生因子であってもよい。同様に、広い範囲のポリマー性キャリアが使われてもよく、代表的な例としては、ポリ(エチレン−ビニルアセテート)(40%架橋)、ポリ(D,L−乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(L−乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(グリコール酸)、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(無水物)、ポリ(カプロラクオン)もしくはポリ(乳酸)とポリエチレングリコールのコポリマー、およびこれらの混合物などを含む。ある好ましい実施形態では、組成物は、例えば、タキソール、エストラムチン、コルヒチン、メトトレキセート、キュラシンA、エポシロン、ビンブラスチン、もしくはtBCEVなどの微小管の機能を崩す化合物を含有する。他の好ましい実施形態では、組成物は、新しい血管の形成を阻害するポリマー性キャリアおよび軽いdグループの遷移金属(例えば、バナジウム類、モリブデン類タングステン類、チタン類、ニオビウム類、タンタル類)(米国特許出願20060240113に記載)、VEGFの阻害剤(米国特許出願20060241084に記載)、血管新生の他の阻害剤(米国特許出願20060235034、および7,122,635に記載)、コンドロモジュリン−Iもしくはテノモジュリン(Shukunami et al., 2005, supra)、または当分野においてよく知られた他の内因もしくは外因性の抗血管新生因子を含有する。
【0086】
配合
ここに記載する組成物は、所望のいかなる配合物に配合できる。該組成物は、所望の配合物に影響を与える物質およびキャリアを含んでもよい。例えば、該組成物は、予め決められた設置時間内に、注入もしくは成形可能な材料を含むことができる。そのような予め決められた時間は、例えば、10分、30分、1時間、2時間などである。
【0087】
いくつかの実施形態では、該組成物は、pH、イオン環境、および溶媒濃度の変化により形成される一次結合を含む化学ゲルを含むことができる。そのようなゲルとしては、例えば、キトサンなどの多糖類、ベータ−グリセロフォスフェートなどのイオン塩+キトサン、アルギネート+Ba2+、Sr2+、Ca2+、Mg2+、コラーゲン、フィブリン、血しょう、またはそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0088】
いくつかの実施形態では、該組成物は、温度変化により形成される二次結合を含む物理ゲルを含むことができる。そのような物理ゲルの例としては、アルギネート、ポリ(エチレン−グリコール)−ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PLGA−PEG)トリブロックコポリマー、アガロース、およびセルロースがあるが、これに限定されるわけではない。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物内で使用される物理ゲルは、高いせんだん力下では液状で、低いせんだん力下では固体である物理ゲルを含むことができる。このような物理ゲルの例としては、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシドがあるが、これに限定されるわけではない。物理ゲルは、予め決められた寸法および形をした予め形成された物質を有していてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、刺激に対する反応として活性作用剤を分解もしくは放出する物質を含む。そのような刺激のいくつかの例として、機械的刺激、光、温度変化、pH変化、イオン強度の変化、もしくは電磁界などがある。このような物質のいくつかの例としては、キトサン、アルギネート、プルオロニックス、メチルセルロース、ヒアルロン酸、およびポリエチレンオキサイドなどがある。その他の例としては、Brandl F, Sommer F, Geopferich A. “Rational design of hydrogels for tissue engineering: Impact of physical factors Oon cell behavior in Biomaterials.” Epub 2006 Sep 29に記載されている。
【0090】
いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、ヒドロキシアパタイト、アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、生体活性ガラス、ヒトの同種移植骨および軟骨、ウシの骨および軟骨、またはそれらの混合物のいずれかを有するゲルを含むことができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、上述のゲルを含むここに記載する組成物は、分解キネティクスおよび調節された放出をさらに調整するための架橋剤をさらに含むことができる。または、いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述のゲルのいずれかを含む相互貫入相複合物もしくは相互貫入網目(IPN)を含むことができる。架橋剤のいくつかの例としては、一般的な架橋剤(ポリアルキレンオキシド、エチレンジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)、エチレンジメタクリレート、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、カルボイミダゾル、スルフォニルクロライド、クロロ炭酸塩、n−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミドエステル、エポキシド、アリルハライド、スルホスクシンイミジルエステル、およびマレイミド);PEGベース架橋剤(例えば、MAL−dPEGx−NHS−エステル、MAL−dPEG酸、Bis−MAL−dPEGxなど)、光活性架橋剤、N−ヒドロキシスクシンイミドベース架橋剤、ジリシン(dilysine)、トリリシン(trilysine)、およびテトラリシン(tetralysine)を含むが、これに限定されるわけではない。
【0092】
ここに記載する組成物は、キャリアを含む。キャリアは、ポリマー性のキャリアでも非ポリマー性のキャリアでもよい。いくつかの実施形態では、キャリアは、例えば、酵素もしくは加水分解により分解できる生分解可能なキャリアである。キャリアの例には、たとえば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(カプロラクトン−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボネート)ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリアリーレート類、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリ無水物、ポリ(無水物−コ−イミド)、プロピレン−コ−フマレート類、ポリラクトン類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアニオン系ポリマー類、ポリ無水物、ポリエステルアミド類、ポリ(アミノ酸)、ホモポリペプチド類、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(グラクサノン)、多糖類、及びポリ(オルソエステル)、ポリグラチン、ポリグラチン酸、ポリアルドン酸、ポリアクリル酸、ポリアルカノエート類のような、しかし、これらに限定されない合成の吸収性ポリマー類、これらのコポリマー及び混合物、並びに任意の誘導体及び修飾体が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第4,563,489号及びPCT国際出願WO/03024316を参照されたい。キャリアのそのほかの例には、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースのようなセルロース系ポリマー類、及びそれらのカチオン系の塩が挙げられるが、これらに限定されない。キャリアのそのほかの例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アパタイト類、生体活性ガラス材料、及びサンゴ由来のアパタイト類のような合成及び天然のバイオセラミックスが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、参照により本出願に組み入れられる、米国特許出願2002187104号、PCT国際出願WO/9731661及びPCT国際出願WO/0071083を参照されたい。
【0093】
実施形態の1つでは、キャリアはさらに、ゾルゲル技法に由来する生体ガラス及び/又はアパタイトを含む組成物、或いは、天然の血清濃度の約1.5〜7倍の範囲内でのカルシウム及びリン酸の濃度を持ち、約15〜65℃の温度で約2.8〜7.8のpH範囲を持つ溶液に種々の手段で調製された人工体液のような、しかし、これに限定されない浸漬技法に由来する生体ガラス及び/又はアパタイトを含む組成物によって被覆されてもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第6,426,114号及び同第6,013,591号、並びにPCT国際出願WO/9117965を参照されたい。
【0094】
キャリアのそのほかの例には、コラーゲン(たとえば、Collostat、Helistatコラーゲンスポンジ)、ヒアルロナン、フィブリン、キトサン、アルギネート及びゼラチンが挙げられる。たとえば、参照により本出願に組み入れられるPCT国際出願WO/9505846、WO/02085422を参照されたい。
【0095】
実施形態の1つでは、キャリアは、ヘパリン様ポリマー、たとえば、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、硫酸ヘパリン、フカン、アルギネート、又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されないヘパリン結合剤;及びアミノ酸修飾を持つペプチド断片を含んでヘパリンへの親和性を高めてもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられるJournal of Biological Chemistry (2003), 278(44), P.43229−43235を参照されたい。
【0096】
一実施形態では、組成物は液体、固体又はゲルの形態であってもよい。一実施形態では、基材は流動性ゲルの形態であるキャリアを含んでもよい。ゲルは、軟骨形成が所望される部位に注射器を介して注入できるように選択してもよい。ゲルは、一次結合により形成され、pH、イオン基及び/又は溶媒濃度により制御される化学作用によるゲルであってもよい。ゲルはまた、二次結合により形成され、温度及び粘度により制御されてもよい物理作用によるゲルであってもよい。ゲルの例には、プルロニック類、ゼラチン、ヒアルロナン、コラーゲン、ポリアクチド−ポリエチレングリコール溶液及び抱合体、キトサン、シトサン&b−グリセロホスフェート(BST−ゲル)、アルギネート類、アガロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン中のポリアクチド/グリコリドが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、参照により本出願に組み入れられるAnatomical Record (2001), 263(4), 342−349を参照されたい。
【0097】
一実施形態では、キャリアは、たとえば、少なくとも約250nmの波長での電磁波照射による光重合が可能であってもよい。光重合が可能なポリマーの例には、ポリエチレン(PEG)アクリレート誘導体、PEGメタクリレート誘導体、プロピレンフマレート−コ−エチレングリコール、ポリビニルアルコール誘導体、PEG−コ−ポリ(ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、並びに、たとえば、ヒアルロン酸誘導体及びデキストランメタクリレートのような修飾多糖類が挙げられる。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第5,410,016号を参照されたい。
【0098】
一実施形態では、基材は、温度感受性であるキャリアを含んでもよい。例には、N−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)、又は低下させた低臨界溶解温度(LCST)で修飾したNiPAM、並びにエチルメタクリレート及びN−アクリルオキシスクシンイミドの取り込みにより向上させたペプチド(たとえば、NELL1)の結合;又はブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート及びドデシルメタクリレートのようなアルキルメタクリレートから作製されたキャリアが挙げられる。参照により本出願に組み入れられるPCT国際出願WO/2001070288;米国特許第5,124,151号。
【0099】
一実施形態における、受容体介在性のメカニズムを介して細胞−マトリクスの結合を促進してもよい細胞接着分子、接着ペプチド及び接着ペプチド類縁体によって装飾される及び/又は固相化される表面を、及び/又はたとえば、ポリカチオン系ポリアミノ酸ペプチド(たとえば、ポリリジン)、ポリアニオン系ポリアミノ酸ペプチド、Mefpクラス接着分子及びそのほかのDOPAリッチペプチド(たとえば、ポリリジンDOPA)、多糖類及びプロテオグリカン類のような、しかし、これらに限定されないものを結合する受容体非介在性のメカニズムを介して接着を促進してもよい分子部分によって装飾される及び/又は固相化される表面を、キャリアが有してもよい場合。たとえば、参照により本出願に組み入れられるPCT国際出願WO/2004005421、WO/2003008376、WO/9734016を参照されたい。
【0100】
一実施形態では、キャリアは、失活させた軟骨マトリクス、脱ミネラル化された骨マトリクス、もしくは同種移植片、異種移植片由来のその他の組成物、もしくは、モネラ、原生生物、菌類、植物、動物由来の自然に存在する物質を含むことができる。
【0101】
一実施形態では、キャリアは、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギネート、ポリ(エチレングリコール)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを含むアルキルセルロース(ヒドロキシアルキルセルロースを含む)、血液、フィブリン、ポリオキシエチレンオキシド、硫酸カルシウム半水化物、アパタイト類、カルボキシビニルポリマー、及びポリ(ビニルアルコール)のような、しかし、これらに限定されない金属イオン封鎖剤を含んでもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第6,620,406号を参照されたい。
【0102】
一実施形態では、キャリアは、たとえば、ポリオキシエステル(たとえば、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はプルロニックF−68)のような、しかし、これらに限定されない、キャリア物質の中におけるNELL1の安定性及び/又は分布を促進するための界面活性剤を含んでもよい。
【0103】
一実施形態では、キャリアは、たとえば、グリシン、グルタミン酸塩酸塩、塩化ナトリウム、グアニジン、ヘパリン、グルタミン酸塩酸塩、酢酸、コハク酸、ポリソルベート、デキストラン硫酸、スクロース及びアミノ酸のような、しかし、これらに限定されない緩衝剤を含んでもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第5,385,887号を参照のこと。実施形態の1つでは、上記で列記したもののような物質の組み合わせを含んでもよい。例示の目的で、キャリアは、PLGA/コラーゲンキャリア膜であってもよい。NELL1ペプチドを含む溶液中に該膜を浸してもよい。
【0104】
一実施形態では、人体に使用するインプラントは、インプラントの近傍で軟骨形成を誘導するのに十分な量のNELL1を含む基材を含んでもよい。
【0105】
一実施形態では、人体に使用するインプラントは、インプラントの近傍で軟骨形成を誘導するのに十分な量のNELL1を含む表面を有する基材を含んでもよい。
【0106】
一実施形態では、人体に使用するインプラントは、軟骨形成細胞、及び軟骨形成を誘導するのに十分な量のNELL1を含む表面を有する基材を含んでもよい。一実施形態では、インプラントは、自己の細胞、軟骨形成細胞又は骨芽細胞、NELL1又はもう1つの軟骨形成分子を発現する細胞を含むが、これらに限定されない細胞と共に播かれてもよい。
【0107】
インプラントは、メッシュ、ピン、プレート又は人工装具の継ぎ目に形成された基材を含んでもよい。例示の目的で、基材は歯科用インプラント又は整形外科用インプラントの形態であってもよく、NELL1は、インプラント近傍の骨における統合を向上させるのに使用されてもよい。インプラントは、たとえば、コラーゲンを含む基材のような吸収可能である基材を含んでもよい。
【0108】
NELL1を許容可能なキャリアと組み合わせて医薬組成物を形成してもよい。許容可能なキャリアは、たとえば、組成物を安定化させるように、又は作用剤の吸収を増減するように作用する生理学的に許容可能な化合物を含有することができる。生理学的に許容可能な化合物には、グルコース、スクロース又はデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸及びグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、細胞分裂防止剤のクリアランス又は加水分解を減らす組成物、又は賦形剤又はそのほかの安定剤及び/又は緩衝液を挙げることができる。
【0109】
そのほかの生理学的に許容可能な化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤、微生物の増殖や作用を妨げるのに特に有用である防腐剤が挙げられる。種々の防腐剤が周知であり、たとえば、フェノール及びアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、生理学的に許容可能な化合物を含むキャリアの選択が、たとえば、投与経路に依存することを十分理解するであろう。
【0110】
投与の方法に依存する種々の単位投与形態で組成物を投与することができる。たとえば、好適な単位投与形態には、散剤、錠剤、丸薬、カプセルが挙げられてもよい。
【0111】
本発明の組成物は、たとえば、水溶性ペプチドのための水性キャリアのような薬学上許容可能なキャリアに溶解されたNELL1ペプチドの溶液を含んでもよい。たとえば、緩衝化した生理食塩水などのような種々のキャリアを使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくないものは含まれていない。従来の、周知の滅菌技法でこれらの組成物を滅菌してもよい。組成物は、たとえば、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤などのような、必要に応じて生理的条件に近似させるための薬学上許容可能な補助的物質を含有してもよい。
【0112】
これらの処方におけるNELL1ペプチドの濃度は、幅広く変化させることができ、選択された投与形式及び患者のニーズに従って、主として液体容積、粘度、体重などに基づいて選択されるであろう。
【0113】
投与計画は、種々の患者の変数(たとえば、体重、年齢、性別)及び臨床提(たとえば、負傷の程度、負傷の部位など)と同様に、対処する臨床適応によって決定されるであろう。
【0114】
しかしながら、本発明において有用なNELL1ペプチド又はNELL1剤の治療上の有効用量は、上述の軟骨形成もしくは修復するための軟骨芽細胞の分化を向上させる作用剤の能力によって測定されるとき、患者において陽性の臨床効果を有する、又は細胞において所望の効果を有するものである。各ペプチド又は作用剤の治療上有効な用量を調節して、負の副作用をできるだけ抑える一方で、所望の臨床効果を達成することができる。ペプチド又は作用剤の投与量は、投与経路、疾患の重症度、患者の年齢及び体重、患者が服用しているそのほかの薬物、並びに通常、主治医により考慮されるそのほかの要因によって、個々の計画及び特定の患者に適した用量レベルを決定する際、個々の患者について選択されてもよい。
【0115】
装置
組成物は、所望の形状で注入/移植可能な装置に配合できる。例として、装置は、椎間板核置換、膝の半月板の置換、手首の三角繊維軟骨の置換、顎関節の置換、関節軟骨の置換のためである。装置は、下にある骨に固定される接着特性を持つ、予め形成された形状で多孔質な足場剤;マニュアル操作により再形成でき、光を利用することにより新しい形状に矯正できる予め形成された粘着性ゲル;in−situで重合できる粘性の低い液体など構成されてもよい。例えば、組成物は、軟骨形成のために、一つの混合物(もしくは単純な混合物)に配合されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、組成物は、組織特異的に特別に設計された層を有する一つの装置に配合されてもよい。例えば、固い組織に固定するには、骨の層を有することが望ましく、そして骨の層のすぐ隣に軟骨層があることが望ましい。
【0117】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、自己組み立てによりマクロ組織構造をとることのできる両性反応基を伴うポリマーおよびモノマーなどの、複数の組織形成および自己組み立てできる一つの混合物に配合されてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、ここに記載する細胞を有する組成物を含む装置では、装置は、移植前に刺激されてもよい。例えば、装置は、制御された刺激(周波数、デューティーサイクル、振幅など)を伴う機械的バイオリアクターに置かれてもよく;周波数は0.01Hzから10,000Hzの範囲内で、デューティーサイクルは10%以上で、振幅は0.1−100%の範囲内の系で、細胞機能を向上することが報告されている。いくつかの実施形態では、ここに記載する装置は、制御されたマイクロ流体フローおよびせん断負荷を伴う機械的バイオリアクターに置かれてもよく、これは、少なくとも一つのフロー経路もしくはチャンネルが1mm以下の一断面を有する時に生じる。いくつかの実施形態では、装置は、細胞培養の直後に直接移植することによりヒトに移植してもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、ここ提供される組成物は、以下の装置の例のいずれをも形成してもよく、これは請求する発明を示すが、これに限定されるものではない。
【0120】
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入もしくは移植可能で、(細胞を有するもしくは有さない)NELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLを含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、(細胞を有するかもしくは有さない)NELLを有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有せず)(細胞を有するかもしくは有さない)NELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有さない)NELL核酸を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有せず)(細胞を有するかもしくは有さない)NELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能なその他の因子を有する(細胞を有するかもしくは有さない)NELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLおよびその他の因子を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、(細胞を有するかもしくは有さない)NELLおよびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接的に注入/移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有さない)(細胞を有するかもしくは有さない)NELL核酸およびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有さない)NELL核酸を含浸させた円板核置換装置;または、
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有せず)(細胞を有するもしくは有さない)NELL核酸を有する注入/移植可能な装置。
【0121】
用量
NELLペプチドおよび他の作用剤は、作用剤、病気、およびその他の因子例えば年齢および性別などを考慮し、当該分野において知られた方法に従い決定されてもよい。
【0122】
一実施形態において、軟骨形成もしくは修復のためのNELLペプチドの用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mm2から1pg/mm2、より好ましくは0.001ng/mm2から1ng/mm2、もしくはより好ましくは0.001μg/mm2から1μg/mm2、もしくはより好ましくは0.001mg/mm2から1mg/mm2、もしくはより好ましくは0.001g/mm2から1g/mm2の範囲内である。他の実施形態では、軟骨形成もしくは修復のためのNELLペプチドの用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mlから1pg/ml、より好ましくは0.001ng/mlから1ng/ml、もしくはより好ましくは0.001μg/mlから1μg/ml、もしくはより好ましくは0.001mg/mlから1mg/ml、もしくはより好ましくは0.001g/mlから100g/mlの範囲内である。さらに別の実施形態では、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/kgから1pg/kg、より好ましくは0.001ng/kgから1ng/kg、もしくはより好ましくは0.001μg/kgから1μg/kg、もしくはより好ましくは0.001mg/kgから1mg/kg、もしくはより好ましくは0.001gm/kgから1gm/kg、さらに好ましくは0.001kg/kgから1kg/kgの範囲内である。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。
【0123】
しかしながら、NELLペプチドは、in vitroでの骨芽細胞のアポトーシスに影響を与えられるため(Zhang, X., et al., J Bone Miner Res, 2003. 18(12):p.2126−34)、最適な範囲を著しく超えたNELLの用量(例えば、NELL1用量)は、軟骨形成もしくは修復を増加することはできない。したがって、NELLペプチドのさらにより好ましい用量は、最適用量を著しく超えてはいけない。NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量の範囲は、対象ほ乳類の種類、年齢、場所、および性別;使われるキャリアもしくは足場剤の材料;異なるNELLペプチドの純度および効力;などの因子によって変わる。一実施形態では、NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量は、1ng/mm2から100ng/mm2、より好ましくは100ng/mm2から1000ng/mm2、もしくはより好ましくは1μg/mm2から100μg/mm2、もしくはより好ましくは100μg/mm2から1000μg/mm2、の範囲内であるが、これに限定されない。他の実施形態では、NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量は、1ng/mlから100ng/ml、より好ましくは100ng/mlから1000ng/ml、もしくはより好ましくは1μg/mlから100μg/ml、もしくはより好ましくは100μg/mlから1000μg/mlの範囲内であるが、これに限定されない。さらに別の実施形態では、特定のキャリアもしくは足場剤を有しても有さなくても、NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量は、1μg/kgから100μg/kg、より好ましくは100μg/kgから1000μg/kg、もしくはより好ましくは1mg/kgから100mg/kgの範囲内であるが、これに限定されない。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。ここで使われている用語「最適範囲を著しく超える」とは、例えば、約1%から約50%、約5%から約50%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、もしくは約40%から約50%、最適範囲を超えることを意味する。
【0124】
NELLペプチドの阻害剤の用量は、阻害剤の種類、治療、予防、向上される骨もしくは軟骨の状態、および阻害剤を含有する組成物を与えられる対象ほ乳類の年齢、場所、および性別により変化する。一般的に、NELLペプチドの阻害剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mm2から1pg/mm2、より好ましくは0.001ng/mm2から1ng/mm2、もしくはより好ましくは0.001μg/mm2から1μg/mm2、もしくはより好ましくは0.001mg/mm2から1mg/mm2、もしくはより好ましくは0.001g/mm2から1g/mm2の範囲内であるが、これに限定されるわけではない。他の実施形態では、NELLペプチドの阻害剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mlから1pg/ml、より好ましくは0.001ng/mlから1ng/ml、もしくはより好ましくは0.001μg/mlから1μg/ml、もしくはより好ましくは0.001mg/mlから1mg/ml、もしくはより好ましくは0.001g/mlから100g/mlの範囲内である。さらに他の実施形態では、NELLペプチドの阻害剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/kgから1pg/kg、より好ましくは0.001ng/kgから1ng/kg、もしくはより好ましくは0.001μg/kgから1μg/kg、もしくはより好ましくは0.001mg/kgから1mg/kg、もしくはより好ましくは0.001gm/kgから1gm/kg、さらに好ましくは0.001kg/kgから1kg/kgの範囲内である。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。
【0125】
NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、阻害剤の種類、レセプターの種類、治療、予防、および向上される骨もしくは軟骨の状態、およびNELLペプチドレセプターの調節剤を有する組成物を与えられる対象ほ乳類の年齢、場所、性別によって変化する。一般的に、NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mm2から1pg/mm2、より好ましくは0.001ng/mm2から1ng/mm2、もしくはより好ましくは0.001μg/mm2から1μg/mm2、もしくはより好ましくは0.001mg/mm2から1mg/mm2、もしくはより好ましくは0.001g/mm2から1g/mm2の範囲内であるが、これに限定されるわけではない。他の実施形態では、NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mlから1pg/ml、より好ましくは0.001ng/mlから1ng/ml、もしくはより好ましくは0.001μg/mlから1μg/ml、もしくはより好ましくは0.001mg/mlから1mg/ml、もしくはより好ましくは0.001g/mlから100g/mlの範囲内である。さらに別の実施形態では、NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/kgから1pg/kg、より好ましくは0.001ng/kgから1ng/kg、もしくはより好ましくは0.001μg/kgから1μg/kg、もしくはより好ましくは0.001mg/kgから1mg/kg、もしくはより好ましくは0.001gm/kgから1gm/kg、さらに好ましくは0.001kg/kgから1kg/kgの範囲内である。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。
【0126】
用量形態
用量形態に含まれる作用剤の治療上効果的な量は、選択される作用剤の種類および投与の経路を考慮して選択してもよい。用量形態は、医薬分野の当業者にとっては知られているように、アジュバントを含む不活性物質および患者への用量を促進するための医薬的に許容可能なキャリアと組み合わせた作用剤の用量形態を含んでもよい。
【0127】
一実施形態において、本願発明は、軟骨形成もしくは修復を向上する方法であって、軟骨形成もしくは修復のために選択させた間隔において、効果的な用量形態で医薬的に効果的な用量のNELL1ペプチドを投与することを含む、軟骨形成を誘導するための患者を治療する方法を含んでもよい。該方法は、軟骨形成もしくは修復が望まれる領域に少なくとも一つの第二作用剤を投与することをさらに含み、TGF−ベータ、BMP2、BMP4、BMP7、bFGF、VEGF、PDGF、コラーゲン、骨、骨マトリクス、靱帯マトリクス、もしくは腱マトリクス、軟骨形成もしくは骨形成細胞を含むが、これに限定されるわけではない。
【0128】
一実施形態において、軟骨形成もしくは修復を誘導するための患者を治療する方法は、ほ乳類の軟骨形成細胞を培養する工程と、軟骨形成細胞と接触しているNELL1ペプチド発現の濃度を上げる工程と、軟骨形成もしくは修復が望まれる領域に軟骨形成細胞を投与する工程と、を含んでもよい。
【実施例】
【0129】
以下は、請求された発明を示すための実施例であるが、本願発明はこれに限定されるわけではない。
【0130】
軟骨形成を促進するために直接椎間板に注入できる(細胞を有するもしくは有さない)NELLを有する注入可能な装置。椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換できるように設計されたNELLを含浸した円板核置換装置。種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能な(細胞を有するもしくは有さない)NELLを有する注入可能な装置。
【0131】
実施例2.必須のミネラル化を伴わない軟骨の分化、成熟、および肥大化。
NELL1過剰発現遺伝子導入マウスは、変異した膜内骨形成もしくは内軟骨骨形成を示すだろうという論理のもとに、NELL1遺伝子導入過剰発現マウスを作った。本願発明は、NELL1遺伝子導入マウスのF2世代に対してテストした。NELL1過剰発現マウスの様々な形態からの組織学的検査は、必須のミネラル化を伴わずに軟骨分化、成熟、および肥大化が硝子軟骨領域(図1)、および繊維軟骨領域(図2A―2F)で増加したことを示した。
【0132】
ヤギ関節軟骨は、1x3mmの断片に刻まれ、30分間室温で0.25%トリプシン/1mMEDTAにより分解され、続いて3mg/mlコラゲナーゼII(Sigma, St Louis, MO, USA)により37Cで6時間振りながら分解した。細胞懸濁液は、70mmストレーナーを通して濾過され、軟骨細胞は遠心分離によりペレット化された。PBSで洗浄した後、細胞はDMEM(Gibco BRL, Grand Island, NY, USA)および10%ウシ胎児血清、100U/mlのペニシリンおよび100mg/lのストレプトマイシンの中で37℃、5%CO2で培養された。その後、細胞は、AdNELL1、AdBMP2もしくはAdLacZで処理/形質導入された。in vitroの形質導入効率を、ベータガラクトシダーゼによる染色で評価した(図3)。細胞は、ヌードマウスの皮下注入/もしくは移植の共通のキャリアとしてプルオロニックF127(Sigma)と混合され、その後、2週目(図6)もしくは4週目(図4、5、7−9)において調べた。
【0133】
マイクロCT40(Scanco Medical, Basserdorf, Switzerland)による9−20μm解析度技術を利用した高解析マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)が4週目のサンプルに対して行われた。マイクロCTデータは、55kVpおよび145μAで集められ、Scanco社によるマイクロCTスキャナーに付随してくるコーンビームアルゴリズムを使って再構築された。データの可視化および再構築は、Scanco Medicalより提供されたμCT Ray T3.3およびμCT Evaluation Program V5.0を利用して行われた。
【0134】
培養されたサンプルは、パラフィンワックスで固定された。マイクロトーム(McBain Instruments, Chatsworth, CA)を使って6ミクロンの厚さの断片に裁断され、ポリ−L−リジンコートした顕微鏡スライド(Erie Scientific Company, Prtsmouth, NH)の上に置き37℃で一晩焼いた。サンプルは、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色した。さらなる分析はアルシアンブルー染色を利用した。断片は、アルシアンブルー溶液で30分染色され、続いて、3%氷酢酸で洗浄され、その後水で洗浄された。そして、断片は、ヌクレファストレッド溶液で対比染色され、精製水で洗い流された。最後に、断片は、アルコールにより脱水され、permountにマウントする前にキシレンで清浄された(図6および7)。
【0135】
6マイクロンの厚さの断片は、キシレンの中でワックスが取り除かれ、エタノール浴の中で再水和された。断面は、抗原を回収するために、20μg/mlプロテアーゼKにより37℃で10分間酵素処理され、そして5%ウマ血清により2時間室温でブロックされた。断面は、一晩4℃において適切な一次抗体で処理され、その後ビオチン化アンチラビットIgG二次抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)で室温において1時間処理された。陽性免疫反応は、Vectastain ABC溶液、およびAEC chromagen(両方ともVector Laboratoriesより)を製造者の指示に従って使うことにより検知した。各抗体のコントロールは、一次抗体を使わずに二次抗体で培養して構成した。断面は、ヘマトキシリンで2時間対比染色し、10分間流水にさらした。カバースリップとともに水溶性封入剤を使用した。
【0136】
本願発明の特定の実施形態を示し記載したが、当業者にとって本願発明の範囲を逸脱することなく変更および改変ができることは当然のことである。従って、本願発明の真の精神内におけるそのような変更および改良の全てを本願発明の範囲内で、添付の特許請求の範囲は、含んでいる。
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述
本願発明の一部は、NIH/NIDR助成番号DE9400と、CRC/NIH助成番号RR00865と、NIH/NIDCR RO3 DE 014649−01と、NIH/NIDCRK23DE00422と、NIH DE016107−01と、NIH/SBIR R43−DE016781−01との助成により創出された。米国政府は、本願発明に所定の権利を持つことが出来る。
【0002】
関連出願とのクロスレファレンス
本願は、2005年9月28日に提出された米国出願番号10/527,786の一部継続出願であり、これは2003年9月15日に提出された国際出願番号PCT/US2003/29281の米国国内段階であり、これは2002年9月13日に提出された米国仮出願番号60/410,846の優先権を主張している。また、本願は、2005年8月5日に提出された米国出願番号10/544,553の一部継続出願でもあり、これは2004年2月9日に提出されたPCT出願PCT/US2004/003808の米国国内段階であり、これは、2003年7月2日に提出された米国仮出願番号60/445,672と、2003年9月15日に提出されたPCT/US2003/29281の優先権を主張しており、これらの出願の教示内容は、本願において参照として取り入れられている。また、本願は、2006年2月16日に提出された国際出願番号PCT/US2006/005473の一部継続出願であり、これは、2005年2月16日に提出された米国仮出願番号60/653,722の優先権を主張している。本願は、2006年3月28日に提出された米国出願11/392,294の一部継続出願でもあり、これは米国特許7,052,856として発行された、1999年10月5日に提出された米国出願番号09/912,297の継続出願である。継続中の出願の全ての教示内容は、ここに参照によりその全体が記載されている。
【0003】
本願は、概して、軟骨形成および再生のための組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
成長因子とは、ペプチドなどのように、規定された細胞集団の成長および分化に in vivoもしくはin vitroにおいて影響を与える物質をいう。
【0005】
軟骨とは、密度の高い結合組織である。これは、固いゲル状マトリクス内に分散する軟骨細胞から構成されている。軟骨は、無血管(血管が全くない)なため、栄養素は、マトリクスの中を浸潤する。軟骨は、関節、肋骨、耳、鼻、喉、そして脊椎板の間で見つけることが出来る。軟骨には主に3種類あり、硝子軟骨(例えば、肋軟骨、鼻の軟骨、気管および気管支、および関節の軟骨など)と、弾性軟骨(例えば、外耳、外耳道、エウスタキオ管の一部、喉頭蓋、および喉頭軟骨の一部など)と、繊維軟骨(例えば、半月板(例えば三角線維軟骨複合体や膝の半月板)、椎間板、顎関節円板、恥骨結合、および骨に結合する腱や靱帯のいくつか)とである。
【0006】
軟骨の主な役割の一つが、骨形成が開始できる枠組みを提供することである(すなわち、軟骨内骨形成において)。軟骨のもう一つの重要な役割は、関節の骨の動作のために滑らかな表面を提供することである。例えば、膝関節にあることでよく知られる、関節軟骨は、非常に抵抗が少なく、高い耐摩耗性、および修復性の質に乏しいことが一般的な特徴である。関節軟骨は、膝関節の耐圧迫力および耐負荷の性質の多くの役割を担っており、関節軟骨なしで歩くのは、痛みを伴うか、不可能である。
【0007】
軟骨のその他の重要な役割としては、しっかりしていて柔軟なサポートを提供することである(例えば、鼻の軟骨、脊椎円板、気管の軟骨、膝の半月板、気管支軟骨など)。例えば、半月板などの軟骨は、関節の安定性、潤滑、および力の伝達において重要な役割を果たす。重量負荷下において、半月板は、脛骨上の大腿骨の位置を調整し、接触表面を増加させることにより圧迫力を分散する。それにより、平均ストレスを2倍から3倍減少させる。
【0008】
さらには、半月板は、関節液と接触して氷上の氷と比較して5倍も滑らかな摩擦係数を出す。他の例として、椎間板は、隔子、衝撃吸収材、動作に対応する一部などの役割を含むいくつかの重要な機能を有している。椎間板のゼラチン状の中央部分は、髄核と呼ばれており、80−90%水で構成されている。核の固形部分は、タイプIIコラーゲンと非凝集プロテオグリカンである。髄核の外側の靱帯性の輪は、繊維輪と呼ばれ、油圧式に核を密閉することで、円板に負荷がかかると円板内の圧力を上げることができる。繊維輪には、重なり合う半径方向のバンドがあり、これはラジアルタイヤの層のような感じではなく、これにより通常の負荷において破裂することなく繊維輪を介してねじりストレスを分散する。椎間板は、油圧式のシリンダーとして機能する。繊維輪は、核と相互に作用する。核に圧力が加えられるに従って、繊維輪の繊維が保持機能を果たすことで核の突出やヘルニアを防ぐ。
【0009】
軟骨は、摩耗、怪我または病気により損傷をうける。歳をとるとともに、体内の軟骨の水分とタンパク質の含有量が変化する。この変化は、軟骨を、より弱く、より壊れやすくて薄くする。骨関節炎は、よくある軟骨損傷であり、これは、動作範囲の制限、骨損傷、痛みなどを引き起こす。激しいストレスと慢性的な疲労により、骨関節炎は、直接的に関節表面を摩耗させ、極端な場合には、骨が関節に露出される。他の例としては、保護および安定の役割を果たす半月板をなくすと、関節弛緩または関節を不安定にする異常な動きを引き起こす。
【0010】
過度の動作や、接触表面の減少は、早期の関節炎変化を促進する。細胞レベルにおいては、まず関節軟骨の表面層から細胞が失われ、続いて軟骨が割れ、そして薄層化および浸食が起きる。そして最終的に下にある骨が突き出してくる。
【0011】
最も早い関節炎性の変化は、全半月板がなくなってから3週間後に確認されている。他の例としては、脊椎を積層する椎間板および関節(堆間関節)の一部は軟骨を含有するために、この領域は時間が経つにつれ摩耗したり裂けたりする(変性変化)。内部の核が脱水されるにしたがって、円板の空間は減少し、重なり合う環状の靱帯が膨らむ。核の進行性の脱水の場合においては、環状の繊維は割れるか裂けてしまう。通常の軟組織の張力が失われると、脊椎の一部分が亞脱臼を起こし(例えば、部分的な関節の脱臼)、骨棘の形成(骨の突起)、孔の狭窄、機械的な不安定性、および痛みを引き起こす。環状の繊維が伸びたりもしくは破裂すると、圧迫された核の材料が膨らんだり破裂したりし、神経組織を圧迫し痛みを伴い弱めてしまう。
【0012】
これは、神経圧迫や、椎間板脱出、もしくは椎間板ヘルニアと言われる。神経根症とは、脊椎間の椎間板の損傷に由来する神経の炎症を言う。機械的機能障害も、椎間板の損傷と痛みを引き起こすことがある(例えば、退行性椎間板変性症など)。例えば、許容範囲を超えた力が椎間板を通してかかることなどによるトラウマの結果として、椎間板が損傷することもあり、また環状の繊維の内側もしくは外側が裂けることもある。
【0013】
これらの裂けた繊維は、負荷が増加している際には、炎症反応を起こすこともあり、直接痛みを引き起こすか、もしくは奥深くの傍脊椎線による補償的な防御痙攣を介して痛みを引き起こすことがある。
【0014】
軟骨の損傷や機能不全には、いくつかの修復選択肢がある。骨関節炎は、米国において、お年寄りの障害を引き起こす原因の中で二番目に多いものである。一般的に軽症から始まる退行性障害で、時間と摩耗に伴って激しさを増す。軽症から普通程度の症状の患者は、この障害に対して手術によらないいくつかの治療により処理することができる。装具の使用や、薬による処置、例えば抗炎症剤(例えば、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン)、COX−2選択阻害剤、ヒドロコルチゾン、グルコサミン、およびコンドロイチンサルフェートは、軟骨の欠乏による痛みを緩和することがわかっており、退行性の進行を遅らせることができると主張する人もいる。
【0015】
全関節の置換を除く関節軟骨の手術の殆どが、様々な処置グループに分けることができる。炎症および痛みを止めることを目的とした疾患および弱体化した軟骨を除去する処置は、切除(軟骨切除術)およびデブルドマンを含む。他の処置グループは、例えば、ドリリング、微少骨折療法、軟骨形成術、およびスポンジャライゼーションなどの軟骨形成を促進することを目的とした種々の研削処置から構成される。研削、ドリリング、および微少骨折は、20年前に始まった。これらは、骨の軟骨下プレートへの血管損傷の後に起こる軟骨組織の自然な修復現象に依存している。
【0016】
レーザー補助処置は、現在実験段階だが、別のカテゴリーを構成している。これらは、病気の軟骨の除去と軟骨の再形成を組み合わせており、さらに軟骨の増殖を促す。他の処置は、自己由来の軟骨移植を含む(ジェンザイム社のカーティセル)。
【0017】
間葉系軟骨により適用可能な他の処置は、早期の外科的処置、および裂けた構造の縫合処置もしくは深刻な怪我の場合は半月板同種移植を含む。
【0018】
椎間板ヘルニアと座骨神経痛の患者の大半が手術なしで治癒するが、手術が必要になった場合、椎弓切除術を使った椎間板ヘルニアの切除(脊髄を囲む脊椎の骨に小さな孔を開ける)、ラミネクトミー(神経組織に隣接する骨の壁を除去する)、皮膚を介する針による方法(椎間板ヘルニア手術)、椎間板溶解処置(化学的髄格融解術)等を含む。機械的異痛症を患う患者は、無反応から姑息的療法、身体障害から個人の生活などの問題を脊椎固定術、椎間板電熱凝固(繊維輪形成術)、後方動的安定術(Posterior dynamic stabilization)、人工椎間板技術もしくは、まだ実験段階のタンパク質、ペプチド、遺伝子治療もしくは核酸を利用した様々な分子治療を用いた椎間板再生治療などにより解決することができる。軟骨に関する問題の治療に対して数多くの方法が提唱されてきたが、その多くが人工もしくは機械的解決に基づいており、通常の軟骨組織生体を再形成するものではないことは明らかである。したがって、軟骨形成を刺激する方法が必要である。以下に記載する実施形態は、上述の問題と需要を解決するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本願発明は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤を使用した軟骨形成の促進もしくは修復を誘導するための作用剤および方法に関する。組成物には、NELLペプチド、NELL様ペプチド、および任意で少なくとも一つの他の活性剤、細胞、および生体適合材料を軟骨(すなわち、硝子軟骨、弾性軟骨、繊維軟骨)の修復の目的で含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、本願発明は、軟骨に関連する医学的症状を治療、予防、改善するための軟骨形成を直接的もしくは間接的に促進する少なくとも一つの作用剤を効果的な量含む組成物を提供する。軟骨形成の直接的促進用の作用剤の一つとして、軟骨形成細胞には、例えば、これに限定されるわけではないが、軟骨芽細胞、軟骨細胞、もしくは軟骨前駆細胞、成体および胚性幹細胞、骨髄細胞、骨髄ストロマ細胞、間葉系細胞、繊維芽細胞、脂肪由来の細胞などに適用されるNELLペプチドまたはNELLを基礎とした遺伝子治療もしくはNELL−遺伝子産物の促進剤などがある。軟骨形成の間接的促進(例えば、軟骨芽細胞/軟骨細胞分化を通して)のための作用剤としては、例えば、NELLペプチドもしくはNELLペプチドレセプターのアゴニストなどがある。
【0021】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、一以上のNELLペプチドレセプターの阻害剤もしくはアンタゴニスト、大量のNELLペプチド、もしくはそれらの組み合わせを含むことができる。このような組成物は、例えば、ただしこれらに限定されるものではないが、骨芽細胞、骨前駆細胞、幹細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、硬膜細胞、骨膜細胞、周皮細胞、および/または筋肉細胞などの軟骨形成細胞が分化する可能性もしくは分化を阻害することにより軟骨形成分化を阻害するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、NELL1が過剰発現したマウスを同腹仔のワイルドタイプと比較した大腿骨頭における増長された軟骨の成熟と肥大を示す。左の図は、ワイルドタイプの新生大腿骨頭であり、大腿骨頭において小さくてより未熟な軟骨細胞を示している。右の図は、NELL1を過剰発現させたトランスジェニックマウスであり、よく分化し、より成熟し、肥大化した軟骨細胞が大腿骨頭全体において大きな核および液胞と共に存在していることを示す。
【図2】図2A〜2Fは、E18 NELL1を過剰発現させたマウスにおいて同腹仔のワイルドタイプと比較して増長された半月板の発達を示す。図2Aおよび図2Bは、ワイルドタイプ(図2A)およびNELL1を過剰発現させた(図2B)動物における大腿骨頭と脛骨頭の間にある半月板を指し示す矢印を付して示している。図2Cおよび2Dは、図2Aおよび2Bを高倍率にしたものである。図2Eは、図2Cで示すワイルドタイプコントロールを高倍率にしたものであり、より未分化で最小限の肥大化の軟骨細胞を示す。図2Fは、図2Dで示すNELL1を過剰発現させた動物の図を高倍率にしたものであり、軟骨マトリクスにおいて著しくより分化した軟骨細胞を示す。肥大化した軟骨細胞内の液胞は、半月板における軟骨細胞がよく分化していることを示唆する。
【図3A】図3Aは、耳介軟骨から分離されたヤギのプライマリ軟骨細胞へのアデノウィルスの形質導入を示す。図3Aは、βガラクトシダーゼ発現を示す多数の陽性染色細胞のアデノウィルス(Ad)形質導入の効率を示す。
【図3B】図3Bは、耳介軟骨から分離されたヤギのプライマリ軟骨細胞へのアデノウィルスの形質導入を示す。図3Bは、AdNELL1形質導入ヤギ軟骨細胞における著しいNELL1発現(β−アクチンコントロールと比較して)と、AdBMP2もしくはAdLacZ(コントロール)のNELL1タンパクの無発現を示すウェスタンゲルを示す。
【図4A】図4Aは、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の肉眼的形態を示す。NELL1を形質導入したサンプルは、視診(図4A)および重量(図4B)の双方において、コントロールよりも著しく大きかった。加えて、NELL1を形質導入したサンプルはBMP2を形質導入したサンプルに見られた変色は見られなかった。
【図4B】図4Bは、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の肉眼的形態を示す。NELL1を形質導入したサンプルは、視診(図4A)および重量(図4B)の双方において、コントロールよりも著しく大きかった。加えて、NELL1を形質導入したサンプルはBMP2を形質導入したサンプルに見られた変色は見られなかった。
【図5A】図5Aは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Aは、AdBMP2を形質導入した試料において望ましくないミネラル化(赤色)を示したが、AdNELL1およびAdLacZ試料では示さなかった。図5Bは、AdLacZコントロールと比較してNELL1がより多くの軟骨のかたまりを誘発することを示す。図5Cは、試料においてAdBMP2が著しく密度を増やしたことを示す(ミネラル化の他の指標)。
【図5B】図5Bは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Bは、AdLacZコントロールと比較してNELL1がより多くの軟骨のかたまりを誘発することを示す。
【図5C】図5Cは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Cは、試料においてAdBMP2が著しく密度を増やしたことを示す(ミネラル化の他の指標)。
【図6】図6は、ヌードマウスに移植/注入して2週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。ヘマトキシリン・イオジン(H&E)染色(1列目)は、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成が増加した証拠を示す。軟骨を染めるアルシアンブルー染色(2列目)でも、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成の増加を示す。より成長した軟骨細胞を染色するX型コラーゲン(ColX)の免疫染色(3列目)では、AdNELL1およびAdBMP2形質導入した試料において染色の増加を示す。
【図7】図7は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。H&E染色(1列目)は、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められた。少量の軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。アルシアンブルー染色(2列目)も、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められ、最小限の軟骨形成が認められた。少量の未成熟な軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。
【図8】図8は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における骨マーカーとしてのCdfa1/RunX2と、軟骨マーカーとしてのColXおよびテネイシンの免疫染色を示す。テネイシンは、関節軟骨およびその他の恒久軟骨の発達と密接に関連しているが、一方で、テネイシンのマトリクスタンパク質の欠如もしくは減量は、突然変異を起こす一過性の軟骨を特徴とし、骨に取って代わられる(Pacifici, M., M.Iwamoto, et al. Tenescin is associated with articular cartilage development. Dev Dyn 198 (2):123−34,1993)。Cbfa1/Runx2は、軟骨性AdNELL1もしくはAdLacZコンロール形質導入サンプルでは最小限に発現し、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは中程度に発現していた(1列目)。ColXは、軟骨性AdNELL1サンプルの細胞で高く発現し、また非常に局在していたが、骨形成の証拠はなかった。一方で、ColXは、AdBMP2処理したサンプル(2列目)の細胞内よりも、主に細胞外マトリクスと関連している。テネイシンは、AdNELL1サンプルで高く発現し、AdBMP2およびコントロールAdLacZでは最小限に存在する(3列目)。
【図9】図9は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における血管形成成長因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、 骨マーカーオステオカルシン(OCN)と関連する内軟骨性骨化の免疫染色を示す。VEGFおとびOCNの両方とも、軟骨性AdNELL1もしくはコントロールAdLacZ形質導入サンプルでは発現しなかったが、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは、中程度の発現をした。
【図10】図10は、NELL−1を過剰発現させたマウスにおける長骨の軟骨の組織を示す。NELL1は、内軟骨性骨化時において、関節軟骨領域(上段の図)および長骨形成領域(下段の図)の両方を含む脛骨全体で発現している。上段の図は、NELL1が関節軟骨領域で軟骨の分化を調節且つ増加できることを示す。したがって、これらのデータは、増加したNELL1ペプチド活性が、直接的(例えば、NELLペプチドの添加もしくは増加したNELLペプチド発現を通して)もしくは間接的に(例えば、NELL1ペプチド促進剤および/またはNELL1ペプチドレセプターのアゴニストおよび/または活性剤の添加を通して)軟骨形成を促進することを示す。下段では、骨形成が始まった長骨のシャフト領域では、増加したNELL1は軟骨形成を起こし、その後、内軟骨性骨化を通して肥大化および増加した骨形成を引き起こす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本願発明は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤を使用した軟骨形成の促進もしくは修復を誘導するための作用剤および方法に関する。組成物には、NELLペプチド、NELL様ペプチド、および任意で少なくとも一つの他の活性剤、細胞、および生体適合材料を軟骨(すなわち、硝子軟骨、弾性軟骨、繊維軟骨)の修復の目的で含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、本願発明は、軟骨に関連する医学的症状を治療、予防、改善するための軟骨形成を直接的もしくは間接的に促進する少なくとも一つの作用剤を効果的な量含む組成物を提供する。軟骨生成の直接的な促進用の作用剤の一つとしては、軟骨形成細胞には、例えば、これに限定されるわけではないが、軟骨芽細胞、軟骨細胞、もしくは軟骨前駆細胞、幹細胞、骨髄細胞、骨髄ストロマ細胞、繊維芽細胞、脂肪由来の細胞などに適用されるNELLペプチドでもよい。軟骨形成の間接的促進(例えば、軟骨芽細胞/軟骨細胞分化を通して)のための作用剤としては、例えば、NELLペプチドもしくはNELLペプチドレセプターのアゴニストなどがある。
【0025】
いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物を軟骨形成もしくは再生を促進するために哺乳類に対して、全身もしくは局所的に適用することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、一以上のNELLペプチドレセプターの阻害剤もしくはアンタゴニスト、大量のNELLペプチド、もしくはそれらの組み合わせを含むことができる。このような組成物は、例えば、ただしこれらに限定されるものではないが、骨芽細胞、骨前駆細胞、幹細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、硬膜細胞、骨膜細胞、周皮細胞、および/または筋肉細胞などの軟骨形成細胞が分化する可能性もしくは分化を阻害することにより軟骨形成分化を阻害するのに効果的である。
【0027】
軟骨形成もしくは再生に対する本願発明の効果は、図1〜10に示す。
【0028】
図1は、NELL1が過剰発現したマウスを同腹仔のワイルドタイプと比較した大腿骨頭における増長された軟骨の成熟と肥大を示す。左の図は、ワイルドタイプの新生大腿骨頭であり、大腿骨頭において小さくてより未熟な軟骨細胞を示している。右の図は、NELL1を過剰発現させたトランスジェニックマウスであり、よく分化し、より成熟し、肥大化した軟骨細胞が大腿骨頭全体において大きな核および液胞と共に存在していることを示す。肥大化した軟骨では、ミネラル化は起きていない。これらの研究は、NELL1は、軟骨細胞の成熟、肥大化を必ずしもミネラル化を誘導しないでも増長できることを示す。
【0029】
図2A〜2Fは、E18 NELL1を過剰発現させたマウスにおいて同腹仔のワイルドタイプと比較して増長された半月板の発達を示す。図2Aおよび図2Bは、ワイルドタイプ(図2A)およびNELL1を過剰発現させた(図2B)動物における大腿骨頭と脛骨頭の間にある半月板を指し示す矢印を付して示している。図2Cおよび2Dは、図2Aおよび2Bを高倍率にしたものである。図2Eは、図2Cで示すワイルドタイプコントロールを高倍率にしたものであり、より未分化で最小限の肥大化の軟骨細胞を示す。図2Fは、図2Dで示すNELL1を過剰発現させた動物の図を高倍率にしたものであり、軟骨マトリクスにおいて著しくより分化した軟骨細胞を示す。肥大化した軟骨細胞内の液胞は、半月板における軟骨細胞がよく分化していることを示唆する。このデータは、Nell−1が半月板の形成および分化を促進することを示す。
【0030】
図3Aおよび3Bは、耳介軟骨から分離されたヤギのプライマリ軟骨細胞へのアデノウィルスの形質導入を示す。図3Aは、βガラクトシダーゼ発現を示す多数の陽性染色細胞のアデノウィルス(Ad)形質導入の効率を示す。図3Bは、AdNELL1形質導入ヤギ軟骨細胞における著しいNELL1発現(β−アクチンコントロールと比較して)と、AdBMP2もしくはAdLacZ(コントロール)のNELL1タンパクの無発現を示すウェスタンゲルを示す。これらの研究は、アデノウィルスの形質導入が効率的であり、AdNELL−1が、NELL1タンパク質の発現を増加させるが、AdBMP2はしないことを示す。
【0031】
図4Aおよび4Bは、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の肉眼的形態を示す。NELL1を形質導入したサンプルは、視診(図4A)および重量(図4B)の双方において、コントロールよりも著しく大きかった。加えて、NELL1を形質導入したサンプルはBMP2を形質導入したサンプルに見られた変色は見られなかった。これらの研究は、予想に反して、BMP2がより大きい組織の固まりを示したにもかかわらず、誘発された固まりの外観は純粋な軟骨の形質とは一致しないことを示す。
【0032】
図5A〜Cは、図4で示すサンプルのマイクロコンピューター断層写真(CT)検査を示す。図5Aは、AdBMP2を形質導入した試料において望ましくないミネラル化(赤色)を示したが、AdNELL1およびAdLacZ試料では示さなかった。図5Bは、AdLacZコントロールと比較してNELL1がより多くの軟骨のかたまりを誘発することを示す。図5Cは、試料においてAdBMP2が著しく密度を増やしたことを示す(ミネラル化の他の指標)。これらの研究は、BMP2はより大きい組織の固まりを誘導することを定量的に示すが、誘導された固まりは主にミネラル化されたものであり、純粋な軟骨の表現型とは一致しないことを示す。
【0033】
図6は、ヌードマウスに移植/注入して2週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。ヘマトキシリン・イオジン(H&E)染色(1列目)は、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成が増加した証拠を示す。軟骨を染めるアルシアンブルー染色(2列目)でも、AdLacZコントロールと比較してAdNELL1およびAdBMP2を形質導入した試料において軟骨形成の増加を示す。より成長した軟骨細胞を染色するX型コラーゲン(ColX)の免疫染色(3列目)では、AdNELL1およびAdBMP2形質導入した試料において染色の増加を示す。これらのデータをまとめると、AdNELL1およびAdBMP2の両方が、2週間目には同程度の軟骨形成および成熟を誘導したことを示す。
【0034】
図7は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経過したAdNELL1、AdBMP2、もしくはAdLacZ(コントロール)を形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞の組織学的外観を示す。H&E染色(1列目)は、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められた。少量の軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。アルシアンブルー染色(2列目)も、AdNELLを形質導入したサンプルでは著しい軟骨形成が認められたが、骨形成の証拠は全くなかった。一方でAdBMP2サンプルは、著しい骨形成が認められ、最小限の軟骨形成が認められた。少量の未成熟な軟骨形成がAdLacZコントロールで認められた。これらのデータをまとめると、4週間目には、AdNELL1は誘導を継続し、軟骨の形質を維持することができるが、一方で、AdBMP2は骨を形成し、軟骨細胞において軟骨形質を維持することが出来ないことを示す。
【0035】
図8は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における骨マーカーとしてのCdfa1/RunX2と、軟骨マーカーとしてのColXおよびテネイシンの免疫染色を示す。テネイシンは、関節軟骨およびその他の恒久軟骨の発達と密接に関連しているが、一方で、テネイシンのマトリクスタンパク質の欠如もしくは減量は、突然変異を起こす一過性の軟骨を特徴とし、骨に取って代わられる(Pacifici, M., M.Iwamoto, et al. Tenescin is associated with articular cartilage development. Dev Dyn 198 (2):123−34,1993)。Cbfa1/Runx2は、軟骨性AdNELL1もしくはAdLacZコンロール形質導入サンプルでは最小限に発現し、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは中程度に発現していた(1列目)。ColXは、軟骨性AdNELL1サンプルの細胞で高く発現し、また非常に局在していたが、骨形成の証拠はなかった。一方で、ColXは、AdBMP2処理したサンプル(2列目)の細胞内よりも、主に細胞外マトリクスと関連している。テネイシンは、AdNELL1サンプルで高く発現し、AdBMP2およびコントロールAdLacZでは最小限に存在する(3列目)。これらの研究は、NELL1が関節軟骨およびその他の恒久軟骨の発達と関連する分子(例えば、テネイシン)を誘導できることを示す。
【0036】
図9は、ヌードマウスに移植/注入して4週間経ったAdNELL1、AdBMP2、またはAdLacZ(コントロール)形質導入したヤギのプライマリ軟骨細胞における血管形成成長因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨マーカーオステオカルシン(OCN)と関連する内軟骨性骨化の免疫染色を示す。VEGFおよびOCNの両方とも、軟骨性AdNELL1もしくはコントロールAdLacZ形質導入サンプルでは発現しなかったが、骨性AdBMP2形質導入サンプルでは、中程度の発現をした。これらのデータは、NELL1が血管形成を促進せず、またNELL1は軟骨サンプルにおいて血管形成を阻害している可能性があることを示す。
【0037】
図10は、NELL−1を過剰発現させたマウスにおける長骨の軟骨の組織を示す。NELL1は、内軟骨性骨化時において、関節軟骨領域(上段の図)および長骨形成領域(下段の図)の両方を含む脛骨全体で発現している。上段の図は、NELL1が関節軟骨領域で軟骨の分化を調節且つ増加できることを示す。したがって、これらのデータは、増加したNELL1ペプチド活性が、直接的(例えば、NELLペプチドの添加もしくは増加したNELLペプチド発現を通して)もしくは間接的に(例えば、NELL1ペプチド促進剤および/またはNELL1ペプチドレセプターのアゴニストおよび/または活性剤の添加を通して)軟骨形成を促進することを示す。下段では、骨形成が始まった長骨のシャフト領域では、増加したNELL1は軟骨形成を起こし、その後、内軟骨性骨化を通して肥大化および増加した骨形成を引き起こす。したがって、これらのデータは、NELLペプチドの活性が、直接的もしくは間接的に軟骨形成、軟骨の肥大化および内軟骨性骨化を促進することを示す。NELL1の欠如は、より未分化な関節軟骨芽細胞/軟骨細胞の形質、およびより肥大しないことに関連しており、これは関節軟骨が骨に取って代わられるのを防止するのに重要である。
【0038】
したがって、NELLペプチドの活性阻害は、直接的に(NELLペプチドの添加もしくはNELLペプチド発現の増加を通して)もしくは間接的に(例えば、NELL1ペプチド促進剤および/またはNELL1ペプチドレセプターのアゴニストおよび/または活性剤の添加を通して)、軟骨の肥大化および内軟骨性骨化を防止し、より未分化で肥大化していない軟骨の形質を維持するのを促進する。まとめると、これらのデータはこれに限定されるものではなく、むしろNELLが骨軟骨前駆細胞系に広く影響し、またNELLにより誘導される正確な形質は、NELLの量とNELLを適用するタイミング、正確な細胞のタイプ、細胞の分化段階、および微少環境との複雑な相互作用に依存することを示す。
【0039】
用語「軟骨」とは、硝子、弾性および繊維性軟骨を含包し、さらに哺乳類のいずれの軟骨成分を言及できる。例えば、椎間板および半月板は、軟骨の定義に含まれる繊維性軟骨構造である。
【0040】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」は、ここではアミノ酸残基のポリマーを言及するものとし、相互に交換して使用できる。これらの用語は、一以上のアミノ酸残基が、自然下で存在するアミノ酸、さらに自然下に存在するアミノ酸ポリマーに対応する人工的な化学的アナログであるアミノ酸ポリマーにも適用されてもよい。
【0041】
用語「NELL」は、NELL1およびNELL2ペプチドを言う。NELL1ペプチドは、NELL1遺伝子もしくはcDNAにより発現できるタンパク質であり、SEQ ID NO:2、4、および6を含む。NELL1ペプチドは、軟骨形成のための軟骨形成細胞の分化を誘導する能力を保持するNELL1ペプチドのフラグメントを含むことができる。NELL2ペプチドは、NELL2遺伝子もしくはcDNAにより発現できるタンパク質であり、SEQ ID NO:8、10、12および14を含む。NELL2ペプチドは、全NELL2ペプチドの配列と類似する活性を保持するNELL2ペプチドフラグメントを含むことができる。自然に存在する作用剤の生物学的特性を保持するNell−1、Nell−2等、無処理のタンパク質、完全もしくは部分的に糖化、フラグメント、欠失、追加、アミノ酸の置換、突然変異、修飾。Nell活性ドメインおよびNell結合サイトを有する低分子。
【0042】
いくつかの実施形態においては、用語「NELLペプチド」とは、NELL1もしくはNELL2に関連するポリペプチドのフラグメントを含むことが出来る。
【0043】
いくつかの実施形態においては、用語「NELLペプチド」とは、NELLに関連する作用剤を含むことができる。例えば、NELLペプチドもしくはそのフラグメントとホモロジーが高いNELLペプチドに関連するいずれのペプチドも含むことができる。高いホモロジーとは、NELLペプチドに対してホモロジーが50%よりも高くてもよく、例えば、NELLペプチドに対してホモロジーが約60%よりも高くてもよく、NELLペプチドに対してホモロジーが約70%よりも高くてもよく、NELLペプチドに対してホモロジーが約80%よりも高くてもよい。
【0044】
NELLペプチドは、ワイルドタイプの配列に変異を含まない天然および/または遺伝子組み換えのNELLペプチド、またはワイルドタイプの配列に変異を含むがNELLペプチドに対して高いホモロジーを有する遺伝子組み換えNELLペプチドでもよい。さらには、NELLペプチドは、ヒト細胞、バクテリア、酵母、昆虫もしくは植物細胞由来でもよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態においては、用語「NELLペプチド」とは、NELLペプチドと同等の構造、機能、立体構造を含む。ここで使われるNELLペプチドと同等の構造とは、NELLペプチドと同等の構造もしくは実質的に類似の構造、またはNELLペプチドと同等の機能ドメインを含むタンパク質もしくはペプチドを言う。NELLペプチドと同等の機能とは、NELLペプチドと同等の機能もしくは実質的に類似の機能、またはNELLペプチドと同等の機能ドメインを含むタンパク質もしくはペプチドを言う。NELLペプチドと同等の立体構造とは、NELLペプチドと同等の構造もしくは実質的に類似の立体構造、またはNELLペプチドと同等の機能ドメインを含むタンパク質もしくはペプチドを言う。
【0045】
いくつかの実施形態において、ここに記載するNELLペプチドは、NELLペプチドの誘導体でもよい。ここで使用する用語「誘導体」とは、NELLペプチドに由来する化学的もしくは生物学的化合物もしくは物質、それらと同等の構造、もしくはそれらと同等の立体構造を言う。例えば、そのような誘導体として、プロドラッグの形態、ポリエチレングリコール化の形態、またはNELLペプチドをより安定にし、もしくはNELLペプチドがより親骨性もしくは親油性を有するようにするその他のあらゆるNELLペプチドを含むことができる。いくつかの実施形態において、誘導体は、ポリエチレングリコール、ポリアミノ酸、C1〜C20の炭素を持つヒドロカルビル短鎖、または生体適合ポリマーに結合したNELLペプチドでもよい。いくつかの実施形態において、用語「誘導体」は、NELLペプチドの模倣体を含んでもよい。ペプチドの模倣体の生成は、詳細に文献に記載されている。以下は、ペプチドの模倣体を含むペプチドの生成の基本的な方法を例示として記載する。
【0046】
ペプチドの生成を始める前に、アミノ酸(開始物質)のアミン側端末は、FMOC(9−フルオロメチルカーバメート)、もしくは他の保護グループにより保護されてもよく、Merrifield樹脂(遊離アミン)などの固相支持体を開始剤として使用する。その後ステップ(1)からステップ(3)が行われ、所望のペプチドを得られるまで繰り返される:(1)遊離アミンが、カルボジイミド化学反応によりC端末と反応する、(2)アミノ酸配列が精製される、そして(3)遊離アミンを作るために、中程度の酸性下において例えばFMOC保護グループが除去される。ペプチドを、樹脂から離されて独立のペプチドもしくはペプチドの模倣体が作られる。
【0047】
いくつかの実施形態においては、ここに記載するペプチドの誘導体は、物理的および化学的に修飾させたNELLペプチドを含む。物理的に修飾させたペプチドの修飾とは、例えば、対イオンによるイオンペアーなどのイオン力による修飾、水素結合による変化、pHの変化による修飾、溶媒選択による修飾、または、フォールディング/アンフォールディングの温度、pH、溶媒、および異なる段階のフォールディングとアンフォールディングの所有時間などの選択を含むタンパク質のフォールディング/アンフォールディングの異なる方法の使用による修飾などであってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、ペプチドの誘導体は、化学的に修飾させたNELLペプチドを含んでもよい。ペプチドの化学的および/または物理的特性を変えるためにNELLペプチドの一カ所もしくは多数の場所に選択的に短い炭化水素グループ(例えば、メチルもしくはエチル)を結合できる。一実施形態では、一般的に知られたポリエチレングリコール化方法により、ペプチドの化学的および/または物理的特性を変えるためにNELLペプチドの一カ所もしくは多数の場所に選択的にモノ、オリゴ、もしくはポリエチレングリコール(PEG)グループを結合できる(例えば、Mok, H., et al., Mol. Ther., 11(1):66−79(2005)参照)。
【0049】
用語「NELL1cDNA」とは、SEQ ID NO:1、3および5のことを指し、さらに用語「NELL2cDNA」とはSEQ ID NO:7、9、11、および13を指す。
【0050】
用語「抗体」は、NELLペプチドもしくは関連する作用剤に特異的に結合する全ての抗体を言う。用語「抗体」は、例えば、未処理の免疫グロブリン、L鎖及びH鎖の可変領域しか含有しないFv断片、ジスルフィド結合で結合したFv断片、可変領域及び定常領域の一部を含有する。Fab又は(Fab)’2断片、単鎖抗体などのような種々の形態の改変抗体又は改造抗体を含んでもよい。抗体は、未処理の分子を含んでもよいのと同様にその断片、例えば、Fab又はF(ab’)2’、および/またはエピトープ決定基に結合できる単鎖抗体(例えば、scFv)を含んでも良い。抗体は、動物(例えば、マウス又はラット)又はヒト由来であってもよく、あるいはキメラ抗体であってもよく、又はヒト化されていてもよい。抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、又はモノクローナル抗体(「mAb」)、例えば、NELL1タンパク質又はNELL2タンパク質によりエンコードされたポリペプチドに特異性を持つモノクローナル抗体であってもよい。
【0051】
用語「捕捉剤」は、他の分子に特異的に結合し、例えば、抗体−抗体、レクチン−炭水化物、核酸−核酸、ビオチン−アビジンなどのような結合複合体を形成する分子を言ってもよい。
【0052】
用語「特異的に結合する」は、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、抗体など)を言ってもよく、異質集団の分子(例えば、タンパク質とその他の生物製剤)において存在する生体分子を同定するような結合反応を言う。従って、指定された条件下(例えば、抗体の場合は免疫アッセイ条件、核酸の場合はストリンジェントなハイブリッド)形成条件など)で、特定のリガンド又は抗体は、その特定の「標的」分子に結合してもよく、試料に存在するその他の分子には有意な量では結合できない。
【0053】
用語「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」は、共に共有結合する少なくとも2つのヌクレオチドを言う。本発明の核酸は、場合によっては、例えば、リンアミド結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、o−メチルリンアミダイト結合、及び/又はペプチド核酸主鎖及び結合を含む代替主鎖を有していてもよい核酸アナログを含んでもよいが、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよく、ホスホジエステル結合を含有してもよい。核酸アナログは正主鎖及びまたは非リボースの主鎖を有していてもよい。核酸はまた、1以上の炭素環式の糖を含んでもよい。リボース−リン酸の主鎖の修飾を行って、例えば標識のような追加部分の負荷を促進してもよいし、または例えば、生理的環境におけるそのような分子の安定性を高め、半減期を延ばしてもよい。
【0054】
用語「特異的ハイブリッド形成」は、プローブがその標的の部分配列に優先的にハイブリッド形成し、他の配列により少ない程度にハイブリッド形成してもよい条件を含むストリンジェントな条件下での特定のヌクレオチド配列への核酸分子の優先的結合、二本鎖形成、又はハイブリッド形成を言う。
【0055】
用語「NELLペプチドの阻害剤」とは、NELLペプチドの活性を阻害する化学的もしくは生物学的化合物を指す。また、この用語は、NELLペプチドの発現を抑制できる化学的もしくは生物学的化合物も含む。NELLペプチドの阻害剤は、NELLペプチド転写もしくは翻訳産物と直接的もしくは間接的に作用できる。例として、相互作用の方法は、NELLペプチドの転写もしくは翻訳の減少と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の安定性の低下と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の活性の低下と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の分解の促進とを含むが、これに限定されるわけではない。用語「NELLペプチドの促進剤」とは、NELLペプチドの活性を促進できる化学的もしくは生物学的化合物を指す。また、この用語は、NELLペプチドの発現を増進できる化学的もしくは生物学的化合物も含む。例として、相互作用の方法は、NELLペプチドの転写もしくは翻訳の促進と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の安定性の増進と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の活性の増進と、NELLペプチド転写物もしくはタンパク質の分解の低下とを含むが、これに限定されるわけではない。
【0056】
用語「NELLペプチドレセプターの調節剤」とは、NELLペプチドレセプターの、NELLペプチドとのもしくはNELLペプチドによる結合を促進または阻害できる化学的もしくは生物学的化合物、またはNELLペプチドが存在しているかいないかに関係なくNELLペプチドレセプターの活性を調節できる化学的もしくは生物学的化合物、を指す。NELLペプチドレセプターとNELLペプチドへのもしくはNELLペプチドによる結合および/または活性を促進する調節剤をレセプターの「アゴニスト」言い、NELLペプチドレセプターとNELLペプチドへのもしくはNELLペプチドによる結合および/または活性を阻害する調節剤をレセプターの「アンタゴニスト」と言う。NELLペプチドに関係なくNELLペプチドレセプターの活性を促進する調節剤をレセプターの「活性剤」と言い、NELLペプチドに関係なくNELLペプチドレセプターの活性を阻害する調節剤をレセプターの「阻害剤」と言う。
【0057】
用語「NELLペプチド」、「NELL関連作用剤」、「NELLペプチドの阻害剤」、または「NELLペプチドの調節剤」は明細書において「作用剤」として言及してもよい。
【0058】
用語「移送伝達手段」とは、生化学の分野において使われるあらゆる移送伝達手段を指す。一般的な移送伝達手段の例として、裸DNA型伝達手段、RNA型伝達手段、ウィルス型伝達手段がある。さらなる例として、例えば、ポリマーもしくはペプチド、持続性放出担体、人工足場剤、天然の足場剤、同種移植足場剤、異種移植足場剤などがある。
【0059】
用語「対象哺乳類」もしくは「哺乳類」とは、全ての哺乳類を指し、例えば、ヒトおよび馬などの動物を含む。
【0060】
軟骨形成
軟骨形成は、通常、軟骨化プロセスを経て行われる。
軟骨化は、濃縮された間葉組織から軟骨が形成されるプロセスであり、間葉組織は、間葉組織は軟骨細胞に分化しマトリクスを形成する材料を分泌し始める。軟骨は、ミネラル化を起こすことができる。例えば、成熟した硝子関節軟骨は、軟骨と骨の間で段階的にミネラル化する。ミネラル化前線は、硝子関節軟骨の基底部を通して軟骨の量およびせん断ストレスに依存する早さで進行する。進行速度およびミネラル化前線のミネラル化分泌物密度における変動により、関節のカルシウム化された軟骨は多数の潮標ができる。
【0061】
成熟した関節のカルシム化した軟骨は、血管出芽が通っており、骨端軟骨において内軟骨性骨化に似たプロセスで新しい骨が、血管空間で作られる。関節のカルシウム化された軟骨は、セメントラインにより軟骨下骨と分けられる。軟骨では、二つのタイプの成長が起き得る:付加成長および間質成長である。付加成長は、軟骨の直径と厚みの増加の結果である。新しい細胞は、軟骨膜から発生し、軟骨モデルの表面で起きる。間質成長は、軟骨の固まりの増加の結果であり、軟骨内から起きる。軟骨細胞は、骨小腔において体細胞分裂を起こすが、マトリクスの中に閉じこめられたままであり、これは、同原グループと呼ばれる細胞の集団を作る。
【0062】
軟骨は、内軟骨性骨化を経ることでも形成できる。哺乳類の骨格は、内軟骨性骨化および膜性骨化プロセスを経て発達する。発生学的には、骨格発達中において、ある特定の骨の端部における軟骨層の確立は、内軟骨性骨化のプロセスに密接に関連する。内軟骨性骨形成の軟骨部分は、軟骨芽細胞/軟骨細胞の分化、成熟、および軟骨形成場所によってはミネラル化を伴ったり伴わなかったりする肥大化を含む。非−ミネラル化軟骨形成は、関節軟骨、顎関節、手首、膝、および椎間板繊維軟骨を含むが、これに限定されるわけではない。
【0063】
内軟骨性骨化もしくは長骨の形成は、骨格成長における機能的ストレスに耐えられるような骨形成に関連し、これは長骨の発達によく現れている。このプロセスでは、長骨の小モデルが固い硝子軟骨内にまず形成され、これは、シャフト(骨幹)と軟骨膜で覆われた将来の関節部分(骨端)とで構成され、長く、ダンベル型の軟骨を形成するための付加成長を起こす(例えば、Wheater, P.R. and H.G. Burkitt (1987).Functional histology: a text and colour atlas. Edinburgh; New York, Churchill Livingstone; Beaupre,、G.S., S.S. Stevens, et al., Jrehabil Res Dev 37(2):145−51(2000)参照)。
【0064】
軟骨モデルのシャフト内で、その後、軟骨芽細胞が著しく大きくなり、周囲の軟骨を再吸収することにより、孔の開いたスレンダーな軟骨マトリクスの骨梁だけを残す。この軟骨マトリクスは、その後カルシウム化し、軟骨細胞が変性して、相互に繋がった大きな空間を残す。この時、シャフトの軟骨膜は、軟骨形成能力を発達させ、骨膜の役割を再開する。そして、骨膜は、薄い骨の層をシャフトの表面に置き、そして未熟な間葉系細胞および血管が、軟骨細胞の変性後のシャフトに残された空間に入り込む。未熟な間葉系細胞は、軟骨マトリクスのカルシウム化された残りの空間において、骨芽細胞および血液形成細胞へと分化し、不規則な繊維性骨の形成を開始する(Wheater and Burkitt, 1987, supra参照)。Wheater and Burkitt, 1987, supraに記載された軟骨モデルでは、オリジナルの軟骨モデルの端部は、その後、シャフト内の一次骨化の大きな領域により隔てられた。しかしながら、該モデルの軟骨端部の直径は成長を続けた。
【0065】
その間、シャフトの端部にある軟骨は、退行性の変化を続け、それに続いて骨化し、これにより、この段階で発達中の骨は、半月状の軟骨骨端を各端部に有する長くて骨っぽい骨幹シャフトから構成される。シャフトと各骨端の境界面は、成長線もしくは骨端線を構成する。成長線内では、軟骨は継続的に増殖し、骨の伸長を続ける。各成長線の骨幹の観点では、軟骨細胞は成熟して死に、軟骨の変性領域は骨に取って代わる。そのため、骨っぽい骨幹は、長くなり成長線はどんどん離れていく。体が成熟すると、ホルモンの変化が軟骨の増殖を阻害し、成長線は骨に取って代わられ、骨幹と骨端とが融合する(Wheater and Burkitt,1987, supra参照)。一方、発達中の各骨端の軟骨の固まりの中心では、退行性変化および骨幹軟骨における骨形成に似た骨形成が、骨端の全外表面での軟骨の付加成長と一緒に起こる。骨端軟骨の中心の骨へのこの変化は、二次骨化として知られている。薄い硝子軟骨の領域は、関節軟骨として表面に必ず残る(Wheater and Burkitt,1987, supra参照)。
【0066】
したがって、内軟骨性骨形成および成長は、軟骨細胞のミネラル化があってもなくても、軟骨細胞(軟骨芽細胞および軟骨細胞)の増殖と成熟とから一部達成される。軟骨形成もしくは再形成は、軟骨細胞のミネラル化を調節することにより達成可能である。特定の理論に縛られることなく、軟骨細胞のミネラル化は、例えばa)場所、b)細胞の種類、c)細胞分化の段階、d)微細環境、およびe)生体力学的力などの調節因子により調節できる。例えば、軟骨細胞のミネラル化は、ミネラル化が通常起こる骨端成長線の近く、もしくは、ミネラル化が通常起こらない関節表面の近くに軟骨細胞を配置することで調節できる。この分野において、軟骨細胞の肥大および、上方制御されたマトリクスのカルシウム化は、分離可能な状態であること知られている(例えば、Jhonson, van Etten et al. 2003参照)(例えば、Johnson, K.A,D., et al., J Biol Chem 278(21):18824−32(2003)参照)。例えば、内軟骨の形成は、軟骨芽細胞およびアポトーシス軟骨芽細胞の増加に見られる軟骨芽細胞の肥大で評価でき、TUNEL染色により明確にできる。他の例としては、軟骨の形成は、必要なアポトーシスもしくはミネラル化なしの軟骨芽細胞の肥大によっても評価できる。
【0067】
軟骨再形成
軟骨は、かなりの量の水分を含んでいる。例えば、関節軟骨は、ほとんど水水(60−80質量%)で構成され、残りのECMは、ほとんどタイプIIコラーゲン(50−90%乾燥状態の質量)およびプロテオグリカン(5−10%)で構成される。その他のコラーゲンおよび微量のECM分子が少量同定されている。特徴的な領域へECMをいれること、および種々の領域での水とECMの相互作用が、生体力学的な力を吸収し関節全範囲に伝達するのに必要な強靱性を付与すると同時に、関節の動きに必要な摩擦のない滑らかな表面を提供する。日頃の歩行およびジャンプ時には、それぞれ4および20MPaと高い負荷が掛かっていることが報告されている。関節軟骨は非常に驚異的ではあるが、残念なことに最小限の修復しか発揮しない。2千万人を超える米国人が、骨関節炎および変性関節疾患に苦しめられ、これには、600億ドルを超える年間医療費負担が関連している。軟骨の組織工学用に幅広い範囲の、足場剤、サイトカイン、および成長因子が調べられた(例えば、Frenkel, S.R., et al., Ann. Biomed. Eng.32:26−34(2004); Tuli, R., et al., Arthritis Res. Ther. 5:235−238(2003));および Ashammankhi、N. and Reis, RL. Topics in Tissue Engineering, Vol.2, 2005などを参照)。 軟骨細胞の生物反応および組織再構築に対する静的vs動的圧力、せん断ストレス、静水圧、液体の流れ、流動電位、バイオリアクター、および複合体の役割が詳細に調べられおり、機械的シグナル伝達経路も調べられている(Ashammankhi, N. and Reis, RL. Topics in Tissue Engineering, Vol.2 2005)(その中の図7A−D参照)。
【0068】
したがって、本願発明のさらなる点として、ここで提供される組成物は、軟骨芽細胞および軟骨細胞から軟骨を形成するのを誘導するのに効果的な量の少なくともNELLペプチドもしくはNELLペプチドレセプターのアゴニストを含む。NELLタンパク質、ペプチド、DNA、RNA,およびNELLアゴニスト、およびアンタゴニスト阻害剤は、細胞があってもなくても、それ単独でも足場剤との組み合わせでも、機械的刺激があってもなくても、その他の成長因子が存在してもしなくても、使用することができる。例えば、一実施形態では、該組成物は、椎間板、顎関節円板、膝および手首の繊維軟骨、および関節表面における軟骨を再生、修理、増強するのに効果的な組成物でもよい。他の実施形態では、該組成物は、生体外遺伝子治療および組織工学において足場剤があってもなくてもタンパク質の細胞への注入を経て軟骨を形成するのに効果的な組成物でもよい。
【0069】
移送伝達手段および局所環境によっては、組成物は、軟骨細胞もしくは軟骨芽細胞などの軟骨形成細胞を誘導して分化させ、軟骨のみを形成するのにNELLペプチド(例えばNELL1ペプチド)を使用することができる。例えば、関節軟骨の損傷において、ここに記載する組成物は、軟骨のみを形成するように軟骨細胞/軟骨芽細胞などの軟骨形成細胞を誘導することができる。該組成物は、足場剤/キャリアとして損傷した軟骨の領域に適用できる。いくつかの実施形態では、該組成物は、任意で細胞(幹細胞、軟骨芽細胞など)を含むことができる。いくつかの実施形態では、該組成物は、遺伝子治療として適用できる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ここで使われているように、細胞は、例えば分化した軟骨細胞;移植の後に分化したもしくは移植の前に分化した分化細胞(例えば、骨格筋細胞、繊維細胞);移植の後に分化したもしくは移植の前に分化した成長した幹細胞;移植の後に分化したもしくは移植の前に分化した胚性幹細胞;ヒト細胞;核酸、タンパク質、低分子、siRNA、抗体で変化された細胞でもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、該組成物は、軟骨組織工学に使用できる。例えば、「振幅する」断続的なストレス下で軟骨芽細胞が培養されている場合、NELL1ペプチドは軟骨芽細胞を分化および軟骨形成のために含むことができる。これらの実施形態では、振幅ストレスの所要時間は、重要な役割を果たす。例えば、振幅力が、継続的に適用された場合、NELL1ペプチドを持つ組成物は、内軟骨性骨形成を誘導できる。したがって、振幅ストレスの適用は、軟骨形成細胞(例えば、軟骨細胞/軟骨芽細胞)の分化が軟骨段階でストップでき、それにより細胞が内軟骨性骨形成へと分化するのを防止できるように断続的に行われるべきである。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、該組成物は、例えば、関節軟骨および椎間板の円板修復のためなどの、軟骨を再形成/修復に使うことができる。
【0073】
ここに記載する組成物により治療、予防、向上できる軟骨状態の一例として、ただしこれに限定されるわけではないが、軟骨石灰化症、骨関節炎および/またはその他の病理的軟骨損傷で特徴づけられる病気などを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、内軟骨骨形成を促す方法として、骨形成が望まれる領域でのNELL1遺伝子産物の濃度を上げることを含んでもよく、任意で、骨形成が望まれる領域に第二作用剤を適用して軟骨芽細胞の肥大を骨形成が望まれる領域で誘導することを少なくとも含むことができる。
【0075】
該方法は、骨形成が望まれる領域にNELL1ペプチドを適用することにより、NELL1遺伝子産物の濃度を上げることを含むことができる。また、NELL1ペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、もしくはSEQ ID NO:6、を有する一群から選択でき、または軟骨および骨と関連する内軟骨骨形成を増加するのに効果的なNELLペプチドのあらゆる領域から選択できる。
【0076】
該第二作用剤は、TGF−ベータ、BMP2、BMP4、BMP7、bFGF,インスリン様成長因子(IGF)、Sox9、コラーゲン、軟骨形成細胞、骨、骨マトリクス、腱マトリクス、靱帯マトリクスを含むことができるが、これに限定されるわけではない。第二作用剤は、NELL1と共に内軟骨骨形成を誘導する補間的もしくは相乗効果を持つように選択できる。その他の作用剤は、以下に記載する。
【0077】
血管形成および軟骨形成/再形成の阻害
Shukunami et al.,にも記載されているように、軟骨は、胚発生においてほとんどの骨格の鋳型を形成する(Shukunami C., Y. Oshima, et al., Biochem Biophys Res Commun 333(2):299−307)(2005))。軟骨は、直接、骨に代わるわけではなく、血管の侵入に伴って、軟骨の骨化中心部まで運ばれる破骨細胞と骨芽細胞の活動を通して徐々に骨に変わる(内軟骨骨形成)。したがって、軟骨の血管侵入は、発達の適切な段階においては、骨形成に重要である。軟骨細胞は、血管侵入の前に成熟して肥大化し、カルシウム化されるため、軟骨は、抗血管新生性質を軟骨形成時に獲得し、急速にその性質を失う。これは、軟骨が、抗血管新生形質の大きな切り替えを行うことを示唆している。疑う余地なく、血管新生促進因子が組織内への血管侵入の動力として働いている。VEGF−Aは、内軟骨骨形成における血管新生の重要なレギュレーターである。VEGF−Aは、肥大化した軟骨で発現しているが、増殖中の軟骨では停止している。
【0078】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は、血管侵入時のマトリクス再構築を含む骨の発達に影響を与えることができる(例えば、MMP−9、MMP−13、MMP−14)。MMP−9欠損マウスでは、血管侵入およびそれに続く骨化が遅れ、その結果成長線の伸長が進んだ。MMP−9が欠如した肥大化軟骨細胞は、血管形成を刺激する通常レベルの血管新生活性を放出できず、さらに破骨細胞/軟骨吸収細胞を誘致出来ないため、骨化の遅れは軟骨への血管侵入に続いたものと考えられる。MMP−14(膜型タイプ1MMP:MT1−MMP)の標的不活性化は、マウスの内軟骨骨形成および膜内骨形成に深刻な損傷を与えた。これらの結果は、MMPが軟骨形質の血管新生の切り替えに重要な役割を果たしていることを示唆している。したがって、軟骨形成および再形成の重要な部分は、MMP−9、MMP−13、MMP−14およびVEGFなどの血管新生因子と、コンドロモジュリン−1(ChM−I)、トロンボスポンジン(TSP)−I、TSP−2、メタロプロテアーゼの組織阻害剤(TIMP)−2、TIMP−3などの抗血管新生因子の分化調節を含むことができる。具体的には、血管新生因子は、軟骨が骨化している領域で比較的より顕著であり、抗血管新生因子は、軟骨が骨化を行っていない領域で比較的より顕著である。これらの結果は、転写因子Cbfa−1/Rux2は、軟骨における血管新生の切り替えを制御するのに関与してもいことを示唆している。Cbfa−1/Rux2ノックアウトマウスは、肥大化した軟骨の分化、軟骨跡への血管侵入、およびVEGF発現を欠いており、さらにChM−I遺伝子発現の抑制を維持していた。肥大化していない軟骨細胞でCbfa−1/Rux2導入遺伝子を発現している、Cbfa−1/Rux2ノックアウトマウスでは、VEGFの上方制御および同時にChM−I遺伝子発現の下方制御により血管侵入および軟骨再形成が復活した。
【0079】
特定の理論に縛られることなく、Cbfa−1/Rux2効果の直接的な下流エフェクターであることから、NELL1は、軟骨における血管新生の切り替えの役割を担うことができる。さらに、特定の理論に縛られることなく、NELL1がトロンボスポンジン様モジュールもN末に有することから、軟骨形成におけるNELL1の役割は、NELL1の抗血管新生効果の可能性にも関与できる。
【0080】
他の作用剤
一実施形態では、ここに記載する軟骨形成および再形成のための組成物は、一以上の作用剤を含むことができる。そのような作用剤は、軟骨保護剤、アンチペインおよび/または抗炎症剤、成長因子、抗血管新生作用剤、もしくはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0081】
軟骨保護剤としては、例えば、(1)例えば、IL−1.ベータ、IL−17、IL−18を含むタンパク質のインターロイキン−1ファミリーのレセプターのアンタゴニスト;(2)例えば、TNF−R1を含む腫瘍壊死因子(TNF)レセプターファミリーのアンタゴニスト;(3)インターロイキン4、10、および13のためのアゴニスト;(4)例えば、BMP−2、BMP−4、およびBMP−7を含むTGF−.ベータ.レセプタースーパーファミリーのアゴニスト;(5)COX−2の阻害剤;(6)例えば、P38、MAPキナーゼを含むMAPキナーゼファミリーの阻害剤;(7)例えば、MMP−3、およびMMP−9を含むタンパク質のマトリックスメタロプロティアーゼ(MMP)ファミリーの阻害剤;(8)例えば、I.カッパー.Bとのp50/p65ダイマー複合体を含むタンパク質のNF.カッパー.Bファミリーの阻害剤;(9)例えばiNOSを含む一酸化窒素合成酵素(NOS)ファミリーの阻害剤;(10)例えばαvβ3インテグリンを含むインテグリンレセプターのアゴニストおよびアンタゴニスト;(11)タンパク質キナーゼC(PKC)ファミリーの阻害剤;(12)例えば、srcサブファミリーを含むタンパク質チロシンキナーゼファミリーの阻害剤;(13)タンパク質チロシンホスファターゼの調節剤;および(14)タンパク質srcホモロジー2(SH2)ドメインの阻害剤であってもよい。
【0082】
他の軟骨保護作用剤としては、例えばインスリン様成長因子(例:IGF−1)および繊維芽細胞成長因子(例:bFGF)などの他の成長因子を含むことができる。その他の軟骨保護作用剤としては、米国特許7、067、144に記載されており、その教示は、ここで参考として取り入れられている。軟骨保護作用剤は、単独でもしくは、NELLペプチドもしくは関連作用剤とともに使用できる。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述の軟骨保護作用剤のどれでもを除外できる。
【0083】
アンチペインおよび/または抗炎症剤としては、例えば、(1)セラトニンレセプターのアンタゴニスト;(2)セラトニンレセプターアゴニスト;(3)ヒスタミンレセプターアンタゴニスト;(4)ブラジキニンレセプターアンタゴニスト;(5)カリクレイン阻害剤;(6)ニューロキニンサブ1およびニューロキニン2レセプターサブタイプアンタゴニストを含むタキキニンレセプターアンタゴニスト;(7)カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)レセプターアンタゴニスト;(8)インターロイキンレセプターアンタゴニスト;(9)(a)PLA.サブ.2アイソフォーム阻害剤およびPLCアイソフォーム阻害剤を含むホスフォリパーゼ阻害剤、(b)シクロオキシゲナーゼ阻害剤、(c)リポオキシゲナーゼ阻害剤、を含むアラキドン酸代謝物の合成回路で活性している酵素の阻害剤;(10)エイコサノイドEP−1およびEP−4レセプターサブタイプアンタゴニストおよびトロンボキサンレセプターサブタイプアンタゴニストを含むプロスタノイドレセプターアンタゴニスト;(11)ロイコトリエンB.サブ.4レセプターサブタイプアンタゴニストおよびロイコトリエンD.サブ.4レセプターサブタイプアンタゴニストを含むロイコトリエンレセプターのアンタゴニスト;(12)μ―オピオイド、δ−オピオイド、カッパーオピオイドレセプターサブタイプアゴニストを含むオピオイドレセプターアゴニスト;(13)P2XレセプターアンタゴニストおよびP2Yレセプターアンタゴニストを含むプリノレセプターアンタゴスト;および(14)カルシウムチャンネルアンタゴニストであってもよい。上述の作用剤は、それぞれ抗炎症剤および/または抗侵害受容(アンチペインもしくは鎮痛剤)作用剤のいずれかとして機能する。これらの一群の化合物から選択される作用剤は特定の用途のために調整されている。これらのアンチペインおよび/または抗炎症剤は、単独でも、またはNELLペプチドもしくは関連作用剤と組み合わせて使用してもよい。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述のアンチペインおよび/または抗炎症剤のどれでもを除外できる。
【0084】
成長因子は、FGF−2、FGF−5、IGF−1、TGF−ベータ.、BMP−2、BMP−7、PDGF、VEGF、OP1、OP2、OP3、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP9、BMP10、BMP11、BMP12、BNP15、BMP16、DPP、Vgl、60Aタンパク質、GDF−1、GDF3、GDF5、GDF6、GDF7、GDF8、GDF9、GDF10およびGDF11であってもよい。その他の成長因子は、米国特許番号7,067,123、7,041,641に記載されており、その教示は、ここに参考として組み込まれている。これらの成長因子は、単独で使用されてもよく、またはNELLペプチドもしくは関連作用剤と共に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述の成長因子のどれでもを除外できる。
【0085】
抗血管新生作用剤としては、例えば、抗侵入因子、レチオニン酸およびその誘導体、タキソールとその誘導体およびアナログ、スラミン、組織阻害剤メタロプロテアーゼ−1、組織阻害剤メタロプロテアーゼ−2、プラスミノーゲン活性阻害剤−1およびプラスミノーゲン活性阻害剤−2、軽いdグループの遷移金属などを含む、抗血管新生因子であってもよい。同様に、広い範囲のポリマー性キャリアが使われてもよく、代表的な例としては、ポリ(エチレン−ビニルアセテート)(40%架橋)、ポリ(D,L−乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(L−乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(グリコール酸)、乳酸およびグリコール酸のコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(無水物)、ポリ(カプロラクオン)もしくはポリ(乳酸)とポリエチレングリコールのコポリマー、およびこれらの混合物などを含む。ある好ましい実施形態では、組成物は、例えば、タキソール、エストラムチン、コルヒチン、メトトレキセート、キュラシンA、エポシロン、ビンブラスチン、もしくはtBCEVなどの微小管の機能を崩す化合物を含有する。他の好ましい実施形態では、組成物は、新しい血管の形成を阻害するポリマー性キャリアおよび軽いdグループの遷移金属(例えば、バナジウム類、モリブデン類タングステン類、チタン類、ニオビウム類、タンタル類)(米国特許出願20060240113に記載)、VEGFの阻害剤(米国特許出願20060241084に記載)、血管新生の他の阻害剤(米国特許出願20060235034、および7,122,635に記載)、コンドロモジュリン−Iもしくはテノモジュリン(Shukunami et al., 2005, supra)、または当分野においてよく知られた他の内因もしくは外因性の抗血管新生因子を含有する。
【0086】
配合
ここに記載する組成物は、所望のいかなる配合物に配合できる。該組成物は、所望の配合物に影響を与える物質およびキャリアを含んでもよい。例えば、該組成物は、予め決められた設置時間内に、注入もしくは成形可能な材料を含むことができる。そのような予め決められた時間は、例えば、10分、30分、1時間、2時間などである。
【0087】
いくつかの実施形態では、該組成物は、pH、イオン環境、および溶媒濃度の変化により形成される一次結合を含む化学ゲルを含むことができる。そのようなゲルとしては、例えば、キトサンなどの多糖類、ベータ−グリセロフォスフェートなどのイオン塩+キトサン、アルギネート+Ba2+、Sr2+、Ca2+、Mg2+、コラーゲン、フィブリン、血しょう、またはそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0088】
いくつかの実施形態では、該組成物は、温度変化により形成される二次結合を含む物理ゲルを含むことができる。そのような物理ゲルの例としては、アルギネート、ポリ(エチレン−グリコール)−ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PLGA−PEG)トリブロックコポリマー、アガロース、およびセルロースがあるが、これに限定されるわけではない。いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物内で使用される物理ゲルは、高いせんだん力下では液状で、低いせんだん力下では固体である物理ゲルを含むことができる。このような物理ゲルの例としては、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシドがあるが、これに限定されるわけではない。物理ゲルは、予め決められた寸法および形をした予め形成された物質を有していてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、刺激に対する反応として活性作用剤を分解もしくは放出する物質を含む。そのような刺激のいくつかの例として、機械的刺激、光、温度変化、pH変化、イオン強度の変化、もしくは電磁界などがある。このような物質のいくつかの例としては、キトサン、アルギネート、プルオロニックス、メチルセルロース、ヒアルロン酸、およびポリエチレンオキサイドなどがある。その他の例としては、Brandl F, Sommer F, Geopferich A. “Rational design of hydrogels for tissue engineering: Impact of physical factors Oon cell behavior in Biomaterials.” Epub 2006 Sep 29に記載されている。
【0090】
いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、ヒドロキシアパタイト、アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム、生体活性ガラス、ヒトの同種移植骨および軟骨、ウシの骨および軟骨、またはそれらの混合物のいずれかを有するゲルを含むことができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、上述のゲルを含むここに記載する組成物は、分解キネティクスおよび調節された放出をさらに調整するための架橋剤をさらに含むことができる。または、いくつかの実施形態では、ここに記載する組成物は、上述のゲルのいずれかを含む相互貫入相複合物もしくは相互貫入網目(IPN)を含むことができる。架橋剤のいくつかの例としては、一般的な架橋剤(ポリアルキレンオキシド、エチレンジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)、エチレンジメタクリレート、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、カルボイミダゾル、スルフォニルクロライド、クロロ炭酸塩、n−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミドエステル、エポキシド、アリルハライド、スルホスクシンイミジルエステル、およびマレイミド);PEGベース架橋剤(例えば、MAL−dPEGx−NHS−エステル、MAL−dPEG酸、Bis−MAL−dPEGxなど)、光活性架橋剤、N−ヒドロキシスクシンイミドベース架橋剤、ジリシン(dilysine)、トリリシン(trilysine)、およびテトラリシン(tetralysine)を含むが、これに限定されるわけではない。
【0092】
ここに記載する組成物は、キャリアを含む。キャリアは、ポリマー性のキャリアでも非ポリマー性のキャリアでもよい。いくつかの実施形態では、キャリアは、例えば、酵素もしくは加水分解により分解できる生分解可能なキャリアである。キャリアの例には、たとえば、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(カプロラクトン−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボネート)ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリアリーレート類、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリ無水物、ポリ(無水物−コ−イミド)、プロピレン−コ−フマレート類、ポリラクトン類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアニオン系ポリマー類、ポリ無水物、ポリエステルアミド類、ポリ(アミノ酸)、ホモポリペプチド類、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(グラクサノン)、多糖類、及びポリ(オルソエステル)、ポリグラチン、ポリグラチン酸、ポリアルドン酸、ポリアクリル酸、ポリアルカノエート類のような、しかし、これらに限定されない合成の吸収性ポリマー類、これらのコポリマー及び混合物、並びに任意の誘導体及び修飾体が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第4,563,489号及びPCT国際出願WO/03024316を参照されたい。キャリアのそのほかの例には、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースのようなセルロース系ポリマー類、及びそれらのカチオン系の塩が挙げられるが、これらに限定されない。キャリアのそのほかの例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、アパタイト類、生体活性ガラス材料、及びサンゴ由来のアパタイト類のような合成及び天然のバイオセラミックスが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、参照により本出願に組み入れられる、米国特許出願2002187104号、PCT国際出願WO/9731661及びPCT国際出願WO/0071083を参照されたい。
【0093】
実施形態の1つでは、キャリアはさらに、ゾルゲル技法に由来する生体ガラス及び/又はアパタイトを含む組成物、或いは、天然の血清濃度の約1.5〜7倍の範囲内でのカルシウム及びリン酸の濃度を持ち、約15〜65℃の温度で約2.8〜7.8のpH範囲を持つ溶液に種々の手段で調製された人工体液のような、しかし、これに限定されない浸漬技法に由来する生体ガラス及び/又はアパタイトを含む組成物によって被覆されてもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第6,426,114号及び同第6,013,591号、並びにPCT国際出願WO/9117965を参照されたい。
【0094】
キャリアのそのほかの例には、コラーゲン(たとえば、Collostat、Helistatコラーゲンスポンジ)、ヒアルロナン、フィブリン、キトサン、アルギネート及びゼラチンが挙げられる。たとえば、参照により本出願に組み入れられるPCT国際出願WO/9505846、WO/02085422を参照されたい。
【0095】
実施形態の1つでは、キャリアは、ヘパリン様ポリマー、たとえば、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、硫酸ヘパリン、フカン、アルギネート、又はそれらの誘導体を含むが、これらに限定されないヘパリン結合剤;及びアミノ酸修飾を持つペプチド断片を含んでヘパリンへの親和性を高めてもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられるJournal of Biological Chemistry (2003), 278(44), P.43229−43235を参照されたい。
【0096】
一実施形態では、組成物は液体、固体又はゲルの形態であってもよい。一実施形態では、基材は流動性ゲルの形態であるキャリアを含んでもよい。ゲルは、軟骨形成が所望される部位に注射器を介して注入できるように選択してもよい。ゲルは、一次結合により形成され、pH、イオン基及び/又は溶媒濃度により制御される化学作用によるゲルであってもよい。ゲルはまた、二次結合により形成され、温度及び粘度により制御されてもよい物理作用によるゲルであってもよい。ゲルの例には、プルロニック類、ゼラチン、ヒアルロナン、コラーゲン、ポリアクチド−ポリエチレングリコール溶液及び抱合体、キトサン、シトサン&b−グリセロホスフェート(BST−ゲル)、アルギネート類、アガロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン中のポリアクチド/グリコリドが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、参照により本出願に組み入れられるAnatomical Record (2001), 263(4), 342−349を参照されたい。
【0097】
一実施形態では、キャリアは、たとえば、少なくとも約250nmの波長での電磁波照射による光重合が可能であってもよい。光重合が可能なポリマーの例には、ポリエチレン(PEG)アクリレート誘導体、PEGメタクリレート誘導体、プロピレンフマレート−コ−エチレングリコール、ポリビニルアルコール誘導体、PEG−コ−ポリ(ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、並びに、たとえば、ヒアルロン酸誘導体及びデキストランメタクリレートのような修飾多糖類が挙げられる。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第5,410,016号を参照されたい。
【0098】
一実施形態では、基材は、温度感受性であるキャリアを含んでもよい。例には、N−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)、又は低下させた低臨界溶解温度(LCST)で修飾したNiPAM、並びにエチルメタクリレート及びN−アクリルオキシスクシンイミドの取り込みにより向上させたペプチド(たとえば、NELL1)の結合;又はブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート及びドデシルメタクリレートのようなアルキルメタクリレートから作製されたキャリアが挙げられる。参照により本出願に組み入れられるPCT国際出願WO/2001070288;米国特許第5,124,151号。
【0099】
一実施形態における、受容体介在性のメカニズムを介して細胞−マトリクスの結合を促進してもよい細胞接着分子、接着ペプチド及び接着ペプチド類縁体によって装飾される及び/又は固相化される表面を、及び/又はたとえば、ポリカチオン系ポリアミノ酸ペプチド(たとえば、ポリリジン)、ポリアニオン系ポリアミノ酸ペプチド、Mefpクラス接着分子及びそのほかのDOPAリッチペプチド(たとえば、ポリリジンDOPA)、多糖類及びプロテオグリカン類のような、しかし、これらに限定されないものを結合する受容体非介在性のメカニズムを介して接着を促進してもよい分子部分によって装飾される及び/又は固相化される表面を、キャリアが有してもよい場合。たとえば、参照により本出願に組み入れられるPCT国際出願WO/2004005421、WO/2003008376、WO/9734016を参照されたい。
【0100】
一実施形態では、キャリアは、失活させた軟骨マトリクス、脱ミネラル化された骨マトリクス、もしくは同種移植片、異種移植片由来のその他の組成物、もしくは、モネラ、原生生物、菌類、植物、動物由来の自然に存在する物質を含むことができる。
【0101】
一実施形態では、キャリアは、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギネート、ポリ(エチレングリコール)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを含むアルキルセルロース(ヒドロキシアルキルセルロースを含む)、血液、フィブリン、ポリオキシエチレンオキシド、硫酸カルシウム半水化物、アパタイト類、カルボキシビニルポリマー、及びポリ(ビニルアルコール)のような、しかし、これらに限定されない金属イオン封鎖剤を含んでもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第6,620,406号を参照されたい。
【0102】
一実施形態では、キャリアは、たとえば、ポリオキシエステル(たとえば、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はプルロニックF−68)のような、しかし、これらに限定されない、キャリア物質の中におけるNELL1の安定性及び/又は分布を促進するための界面活性剤を含んでもよい。
【0103】
一実施形態では、キャリアは、たとえば、グリシン、グルタミン酸塩酸塩、塩化ナトリウム、グアニジン、ヘパリン、グルタミン酸塩酸塩、酢酸、コハク酸、ポリソルベート、デキストラン硫酸、スクロース及びアミノ酸のような、しかし、これらに限定されない緩衝剤を含んでもよい。たとえば、参照により本出願に組み入れられる米国特許第5,385,887号を参照のこと。実施形態の1つでは、上記で列記したもののような物質の組み合わせを含んでもよい。例示の目的で、キャリアは、PLGA/コラーゲンキャリア膜であってもよい。NELL1ペプチドを含む溶液中に該膜を浸してもよい。
【0104】
一実施形態では、人体に使用するインプラントは、インプラントの近傍で軟骨形成を誘導するのに十分な量のNELL1を含む基材を含んでもよい。
【0105】
一実施形態では、人体に使用するインプラントは、インプラントの近傍で軟骨形成を誘導するのに十分な量のNELL1を含む表面を有する基材を含んでもよい。
【0106】
一実施形態では、人体に使用するインプラントは、軟骨形成細胞、及び軟骨形成を誘導するのに十分な量のNELL1を含む表面を有する基材を含んでもよい。一実施形態では、インプラントは、自己の細胞、軟骨形成細胞又は骨芽細胞、NELL1又はもう1つの軟骨形成分子を発現する細胞を含むが、これらに限定されない細胞と共に播かれてもよい。
【0107】
インプラントは、メッシュ、ピン、プレート又は人工装具の継ぎ目に形成された基材を含んでもよい。例示の目的で、基材は歯科用インプラント又は整形外科用インプラントの形態であってもよく、NELL1は、インプラント近傍の骨における統合を向上させるのに使用されてもよい。インプラントは、たとえば、コラーゲンを含む基材のような吸収可能である基材を含んでもよい。
【0108】
NELL1を許容可能なキャリアと組み合わせて医薬組成物を形成してもよい。許容可能なキャリアは、たとえば、組成物を安定化させるように、又は作用剤の吸収を増減するように作用する生理学的に許容可能な化合物を含有することができる。生理学的に許容可能な化合物には、グルコース、スクロース又はデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸及びグルタチオンのような抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、細胞分裂防止剤のクリアランス又は加水分解を減らす組成物、又は賦形剤又はそのほかの安定剤及び/又は緩衝液を挙げることができる。
【0109】
そのほかの生理学的に許容可能な化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤、微生物の増殖や作用を妨げるのに特に有用である防腐剤が挙げられる。種々の防腐剤が周知であり、たとえば、フェノール及びアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、生理学的に許容可能な化合物を含むキャリアの選択が、たとえば、投与経路に依存することを十分理解するであろう。
【0110】
投与の方法に依存する種々の単位投与形態で組成物を投与することができる。たとえば、好適な単位投与形態には、散剤、錠剤、丸薬、カプセルが挙げられてもよい。
【0111】
本発明の組成物は、たとえば、水溶性ペプチドのための水性キャリアのような薬学上許容可能なキャリアに溶解されたNELL1ペプチドの溶液を含んでもよい。たとえば、緩衝化した生理食塩水などのような種々のキャリアを使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくないものは含まれていない。従来の、周知の滅菌技法でこれらの組成物を滅菌してもよい。組成物は、たとえば、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤などのような、必要に応じて生理的条件に近似させるための薬学上許容可能な補助的物質を含有してもよい。
【0112】
これらの処方におけるNELL1ペプチドの濃度は、幅広く変化させることができ、選択された投与形式及び患者のニーズに従って、主として液体容積、粘度、体重などに基づいて選択されるであろう。
【0113】
投与計画は、種々の患者の変数(たとえば、体重、年齢、性別)及び臨床提(たとえば、負傷の程度、負傷の部位など)と同様に、対処する臨床適応によって決定されるであろう。
【0114】
しかしながら、本発明において有用なNELL1ペプチド又はNELL1剤の治療上の有効用量は、上述の軟骨形成もしくは修復するための軟骨芽細胞の分化を向上させる作用剤の能力によって測定されるとき、患者において陽性の臨床効果を有する、又は細胞において所望の効果を有するものである。各ペプチド又は作用剤の治療上有効な用量を調節して、負の副作用をできるだけ抑える一方で、所望の臨床効果を達成することができる。ペプチド又は作用剤の投与量は、投与経路、疾患の重症度、患者の年齢及び体重、患者が服用しているそのほかの薬物、並びに通常、主治医により考慮されるそのほかの要因によって、個々の計画及び特定の患者に適した用量レベルを決定する際、個々の患者について選択されてもよい。
【0115】
装置
組成物は、所望の形状で注入/移植可能な装置に配合できる。例として、装置は、椎間板核置換、膝の半月板の置換、手首の三角繊維軟骨の置換、顎関節の置換、関節軟骨の置換のためである。装置は、下にある骨に固定される接着特性を持つ、予め形成された形状で多孔質な足場剤;マニュアル操作により再形成でき、光を利用することにより新しい形状に矯正できる予め形成された粘着性ゲル;in−situで重合できる粘性の低い液体など構成されてもよい。例えば、組成物は、軟骨形成のために、一つの混合物(もしくは単純な混合物)に配合されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、組成物は、組織特異的に特別に設計された層を有する一つの装置に配合されてもよい。例えば、固い組織に固定するには、骨の層を有することが望ましく、そして骨の層のすぐ隣に軟骨層があることが望ましい。
【0117】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、自己組み立てによりマクロ組織構造をとることのできる両性反応基を伴うポリマーおよびモノマーなどの、複数の組織形成および自己組み立てできる一つの混合物に配合されてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、ここに記載する細胞を有する組成物を含む装置では、装置は、移植前に刺激されてもよい。例えば、装置は、制御された刺激(周波数、デューティーサイクル、振幅など)を伴う機械的バイオリアクターに置かれてもよく;周波数は0.01Hzから10,000Hzの範囲内で、デューティーサイクルは10%以上で、振幅は0.1−100%の範囲内の系で、細胞機能を向上することが報告されている。いくつかの実施形態では、ここに記載する装置は、制御されたマイクロ流体フローおよびせん断負荷を伴う機械的バイオリアクターに置かれてもよく、これは、少なくとも一つのフロー経路もしくはチャンネルが1mm以下の一断面を有する時に生じる。いくつかの実施形態では、装置は、細胞培養の直後に直接移植することによりヒトに移植してもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、ここ提供される組成物は、以下の装置の例のいずれをも形成してもよく、これは請求する発明を示すが、これに限定されるものではない。
【0120】
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入もしくは移植可能で、(細胞を有するもしくは有さない)NELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLを含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、(細胞を有するかもしくは有さない)NELLを有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有せず)(細胞を有するかもしくは有さない)NELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有さない)NELL核酸を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有せず)(細胞を有するかもしくは有さない)NELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能なその他の因子を有する(細胞を有するかもしくは有さない)NELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLおよびその他の因子を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、(細胞を有するかもしくは有さない)NELLおよびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接的に注入/移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有さない)(細胞を有するかもしくは有さない)NELL核酸およびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有さない)NELL核酸を含浸させた円板核置換装置;または、
種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能な(ウィルスなどの移送伝達手段を有するかもしくは有せず)(細胞を有するもしくは有さない)NELL核酸を有する注入/移植可能な装置。
【0121】
用量
NELLペプチドおよび他の作用剤は、作用剤、病気、およびその他の因子例えば年齢および性別などを考慮し、当該分野において知られた方法に従い決定されてもよい。
【0122】
一実施形態において、軟骨形成もしくは修復のためのNELLペプチドの用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mm2から1pg/mm2、より好ましくは0.001ng/mm2から1ng/mm2、もしくはより好ましくは0.001μg/mm2から1μg/mm2、もしくはより好ましくは0.001mg/mm2から1mg/mm2、もしくはより好ましくは0.001g/mm2から1g/mm2の範囲内である。他の実施形態では、軟骨形成もしくは修復のためのNELLペプチドの用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mlから1pg/ml、より好ましくは0.001ng/mlから1ng/ml、もしくはより好ましくは0.001μg/mlから1μg/ml、もしくはより好ましくは0.001mg/mlから1mg/ml、もしくはより好ましくは0.001g/mlから100g/mlの範囲内である。さらに別の実施形態では、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/kgから1pg/kg、より好ましくは0.001ng/kgから1ng/kg、もしくはより好ましくは0.001μg/kgから1μg/kg、もしくはより好ましくは0.001mg/kgから1mg/kg、もしくはより好ましくは0.001gm/kgから1gm/kg、さらに好ましくは0.001kg/kgから1kg/kgの範囲内である。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。
【0123】
しかしながら、NELLペプチドは、in vitroでの骨芽細胞のアポトーシスに影響を与えられるため(Zhang, X., et al., J Bone Miner Res, 2003. 18(12):p.2126−34)、最適な範囲を著しく超えたNELLの用量(例えば、NELL1用量)は、軟骨形成もしくは修復を増加することはできない。したがって、NELLペプチドのさらにより好ましい用量は、最適用量を著しく超えてはいけない。NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量の範囲は、対象ほ乳類の種類、年齢、場所、および性別;使われるキャリアもしくは足場剤の材料;異なるNELLペプチドの純度および効力;などの因子によって変わる。一実施形態では、NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量は、1ng/mm2から100ng/mm2、より好ましくは100ng/mm2から1000ng/mm2、もしくはより好ましくは1μg/mm2から100μg/mm2、もしくはより好ましくは100μg/mm2から1000μg/mm2、の範囲内であるが、これに限定されない。他の実施形態では、NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量は、1ng/mlから100ng/ml、より好ましくは100ng/mlから1000ng/ml、もしくはより好ましくは1μg/mlから100μg/ml、もしくはより好ましくは100μg/mlから1000μg/mlの範囲内であるが、これに限定されない。さらに別の実施形態では、特定のキャリアもしくは足場剤を有しても有さなくても、NELLペプチドのさらにより好ましい最適用量は、1μg/kgから100μg/kg、より好ましくは100μg/kgから1000μg/kg、もしくはより好ましくは1mg/kgから100mg/kgの範囲内であるが、これに限定されない。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。ここで使われている用語「最適範囲を著しく超える」とは、例えば、約1%から約50%、約5%から約50%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、もしくは約40%から約50%、最適範囲を超えることを意味する。
【0124】
NELLペプチドの阻害剤の用量は、阻害剤の種類、治療、予防、向上される骨もしくは軟骨の状態、および阻害剤を含有する組成物を与えられる対象ほ乳類の年齢、場所、および性別により変化する。一般的に、NELLペプチドの阻害剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mm2から1pg/mm2、より好ましくは0.001ng/mm2から1ng/mm2、もしくはより好ましくは0.001μg/mm2から1μg/mm2、もしくはより好ましくは0.001mg/mm2から1mg/mm2、もしくはより好ましくは0.001g/mm2から1g/mm2の範囲内であるが、これに限定されるわけではない。他の実施形態では、NELLペプチドの阻害剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mlから1pg/ml、より好ましくは0.001ng/mlから1ng/ml、もしくはより好ましくは0.001μg/mlから1μg/ml、もしくはより好ましくは0.001mg/mlから1mg/ml、もしくはより好ましくは0.001g/mlから100g/mlの範囲内である。さらに他の実施形態では、NELLペプチドの阻害剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/kgから1pg/kg、より好ましくは0.001ng/kgから1ng/kg、もしくはより好ましくは0.001μg/kgから1μg/kg、もしくはより好ましくは0.001mg/kgから1mg/kg、もしくはより好ましくは0.001gm/kgから1gm/kg、さらに好ましくは0.001kg/kgから1kg/kgの範囲内である。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。
【0125】
NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、阻害剤の種類、レセプターの種類、治療、予防、および向上される骨もしくは軟骨の状態、およびNELLペプチドレセプターの調節剤を有する組成物を与えられる対象ほ乳類の年齢、場所、性別によって変化する。一般的に、NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mm2から1pg/mm2、より好ましくは0.001ng/mm2から1ng/mm2、もしくはより好ましくは0.001μg/mm2から1μg/mm2、もしくはより好ましくは0.001mg/mm2から1mg/mm2、もしくはより好ましくは0.001g/mm2から1g/mm2の範囲内であるが、これに限定されるわけではない。他の実施形態では、NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/mlから1pg/ml、より好ましくは0.001ng/mlから1ng/ml、もしくはより好ましくは0.001μg/mlから1μg/ml、もしくはより好ましくは0.001mg/mlから1mg/ml、もしくはより好ましくは0.001g/mlから100g/mlの範囲内である。さらに別の実施形態では、NELLペプチドレセプターの調節剤の用量は、特定のキャリアもしくは足場材を有しても有さなくても、通常0.001pg/kgから1pg/kg、より好ましくは0.001ng/kgから1ng/kg、もしくはより好ましくは0.001μg/kgから1μg/kg、もしくはより好ましくは0.001mg/kgから1mg/kg、もしくはより好ましくは0.001gm/kgから1gm/kg、さらに好ましくは0.001kg/kgから1kg/kgの範囲内である。さらには、すべての用量は、与えられた時間内につき、連続的にもしくは用量を分割して投与してもよいことを理解されたい。例えば、与えられた時間内とは、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、もしくは72時間ごと、もしくは2週間、4週間ごとに、もしくは2ヶ月、4ヶ月ごとなどを含むが、これに限定されるわけではない。
【0126】
用量形態
用量形態に含まれる作用剤の治療上効果的な量は、選択される作用剤の種類および投与の経路を考慮して選択してもよい。用量形態は、医薬分野の当業者にとっては知られているように、アジュバントを含む不活性物質および患者への用量を促進するための医薬的に許容可能なキャリアと組み合わせた作用剤の用量形態を含んでもよい。
【0127】
一実施形態において、本願発明は、軟骨形成もしくは修復を向上する方法であって、軟骨形成もしくは修復のために選択させた間隔において、効果的な用量形態で医薬的に効果的な用量のNELL1ペプチドを投与することを含む、軟骨形成を誘導するための患者を治療する方法を含んでもよい。該方法は、軟骨形成もしくは修復が望まれる領域に少なくとも一つの第二作用剤を投与することをさらに含み、TGF−ベータ、BMP2、BMP4、BMP7、bFGF、VEGF、PDGF、コラーゲン、骨、骨マトリクス、靱帯マトリクス、もしくは腱マトリクス、軟骨形成もしくは骨形成細胞を含むが、これに限定されるわけではない。
【0128】
一実施形態において、軟骨形成もしくは修復を誘導するための患者を治療する方法は、ほ乳類の軟骨形成細胞を培養する工程と、軟骨形成細胞と接触しているNELL1ペプチド発現の濃度を上げる工程と、軟骨形成もしくは修復が望まれる領域に軟骨形成細胞を投与する工程と、を含んでもよい。
【実施例】
【0129】
以下は、請求された発明を示すための実施例であるが、本願発明はこれに限定されるわけではない。
【0130】
軟骨形成を促進するために直接椎間板に注入できる(細胞を有するもしくは有さない)NELLを有する注入可能な装置。椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換できるように設計されたNELLを含浸した円板核置換装置。種々の関節空間(例えば、膝、顎関節、手首など)に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能な(細胞を有するもしくは有さない)NELLを有する注入可能な装置。
【0131】
実施例2.必須のミネラル化を伴わない軟骨の分化、成熟、および肥大化。
NELL1過剰発現遺伝子導入マウスは、変異した膜内骨形成もしくは内軟骨骨形成を示すだろうという論理のもとに、NELL1遺伝子導入過剰発現マウスを作った。本願発明は、NELL1遺伝子導入マウスのF2世代に対してテストした。NELL1過剰発現マウスの様々な形態からの組織学的検査は、必須のミネラル化を伴わずに軟骨分化、成熟、および肥大化が硝子軟骨領域(図1)、および繊維軟骨領域(図2A―2F)で増加したことを示した。
【0132】
ヤギ関節軟骨は、1x3mmの断片に刻まれ、30分間室温で0.25%トリプシン/1mMEDTAにより分解され、続いて3mg/mlコラゲナーゼII(Sigma, St Louis, MO, USA)により37Cで6時間振りながら分解した。細胞懸濁液は、70mmストレーナーを通して濾過され、軟骨細胞は遠心分離によりペレット化された。PBSで洗浄した後、細胞はDMEM(Gibco BRL, Grand Island, NY, USA)および10%ウシ胎児血清、100U/mlのペニシリンおよび100mg/lのストレプトマイシンの中で37℃、5%CO2で培養された。その後、細胞は、AdNELL1、AdBMP2もしくはAdLacZで処理/形質導入された。in vitroの形質導入効率を、ベータガラクトシダーゼによる染色で評価した(図3)。細胞は、ヌードマウスの皮下注入/もしくは移植の共通のキャリアとしてプルオロニックF127(Sigma)と混合され、その後、2週目(図6)もしくは4週目(図4、5、7−9)において調べた。
【0133】
マイクロCT40(Scanco Medical, Basserdorf, Switzerland)による9−20μm解析度技術を利用した高解析マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)が4週目のサンプルに対して行われた。マイクロCTデータは、55kVpおよび145μAで集められ、Scanco社によるマイクロCTスキャナーに付随してくるコーンビームアルゴリズムを使って再構築された。データの可視化および再構築は、Scanco Medicalより提供されたμCT Ray T3.3およびμCT Evaluation Program V5.0を利用して行われた。
【0134】
培養されたサンプルは、パラフィンワックスで固定された。マイクロトーム(McBain Instruments, Chatsworth, CA)を使って6ミクロンの厚さの断片に裁断され、ポリ−L−リジンコートした顕微鏡スライド(Erie Scientific Company, Prtsmouth, NH)の上に置き37℃で一晩焼いた。サンプルは、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色した。さらなる分析はアルシアンブルー染色を利用した。断片は、アルシアンブルー溶液で30分染色され、続いて、3%氷酢酸で洗浄され、その後水で洗浄された。そして、断片は、ヌクレファストレッド溶液で対比染色され、精製水で洗い流された。最後に、断片は、アルコールにより脱水され、permountにマウントする前にキシレンで清浄された(図6および7)。
【0135】
6マイクロンの厚さの断片は、キシレンの中でワックスが取り除かれ、エタノール浴の中で再水和された。断面は、抗原を回収するために、20μg/mlプロテアーゼKにより37℃で10分間酵素処理され、そして5%ウマ血清により2時間室温でブロックされた。断面は、一晩4℃において適切な一次抗体で処理され、その後ビオチン化アンチラビットIgG二次抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)で室温において1時間処理された。陽性免疫反応は、Vectastain ABC溶液、およびAEC chromagen(両方ともVector Laboratoriesより)を製造者の指示に従って使うことにより検知した。各抗体のコントロールは、一次抗体を使わずに二次抗体で培養して構成した。断面は、ヘマトキシリンで2時間対比染色し、10分間流水にさらした。カバースリップとともに水溶性封入剤を使用した。
【0136】
本願発明の特定の実施形態を示し記載したが、当業者にとって本願発明の範囲を逸脱することなく変更および改変ができることは当然のことである。従って、本願発明の真の精神内におけるそのような変更および改良の全てを本願発明の範囲内で、添付の特許請求の範囲は、含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤を含有する軟骨形成もしくは修復を促進する組成物であって、前記NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤が、軟骨形成もしくは修復に効果的な量である組成物。
【請求項2】
前記NELLペプチドが、NELL1ペプチドである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記NELL関連作用剤が、NELL遺伝子産物である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第二作用剤をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
軟骨保護作用剤、アンチペインおよびまたは抗炎症剤、成長因子、サイトカイン、低分子、抗血管新生因子およびそれらの組み合わせの一群から選択される前記第二作用剤をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
医薬品として許容可能なキャリアをさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
医薬品として許容可能なキャリアをさらに有する請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
化学ゲル、物理ゲル、相互侵入網目、もしくは架橋剤を有する物質をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ヒトの体内の部分に適用されたと同時に注入もしくは成形可能な物質を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
刺激に対する反応として、NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤を分解もしくは放出する材料をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記刺激は、機械的刺激、光、電磁界、温度変化、pH変化、イオン強度の変化から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
骨軟骨前駆細胞をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
間葉細胞、胎生細胞、幹細胞、骨髄細胞、脂肪幹細胞、繊維芽細胞、もしくはそれらの組み合わせから選択される骨軟骨前駆細胞をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
軟骨形成細胞をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
軟骨の形成もしくは修復は、硝子もしくは気管軟骨、弾性軟骨、または繊維軟骨の形成もしくは修復である請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
装置に配合される請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤は、軟骨に関連する障害を治療、予防、向上するのに効果的な量である請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記軟骨に関連する障害は、種々の関節の関節症、種々の関節の関節炎、種々の関節の軟骨関節内障、もしくは脊椎関節および円板関連障害である請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項1に記載の組成物を含む移植片。
【請求項20】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項4に記載の組成物を含む移植片。
【請求項21】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項5に記載の組成物を含む移植片。
【請求項22】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項6に記載の組成物を含む移植片。
【請求項23】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項7に記載の組成物を含む移植片。
【請求項24】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項12に記載の組成物を含む移植片。
【請求項25】
前記基材が再吸収可能である請求項19に記載の移植片。
【請求項26】
前記基材がコラーゲンを有する請求項19に記載の移植片。
【請求項27】
前記基材が再吸収可能である請求項20に記載の移植片。
【請求項28】
前記基材がコラーゲンを有する請求項20に記載の移植片。
【請求項29】
請求項19に記載の移植片は、
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入もしくは移植可能で、細胞を有するもしくは有さないNELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLを含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、細胞を有するかもしくは有さないNELLを有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するかもしくは有さないNELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された移送伝達手段を有するかもしくは有さないNELL核酸を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するかもしくは有さないNELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能で、細胞およびその他の因子を有するかもしくは有さないNELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLおよびその他の因子を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、細胞を有するかもしくは有さないNELLおよびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接的に注入/移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するかもしくは有さないNELL核酸およびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された移送伝達手段を有するかもしくは有さないNELL核酸を含浸させた円板核置換装置;または、
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するもしくは有さないNELL核酸を有する注入/移植可能な装置、から選択される装置である移植片。
【請求項30】
軟骨形成もしくは修復を増進する方法であって、
軟骨形成もしくは修復が望まれる領域でNELL遺伝子産物の濃度を上げる工程と、
軟骨形成もしくは修復は望まれる領域に作用剤を適用する任意の工程と、
軟骨形成もしくは修復が望まれる領域で軟骨芽細胞の肥大化を少なくとも誘導する工程と、を有する方法。
【請求項31】
軟骨形成もしくは修復は、骨治癒もしくは骨再形成を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
NELL1遺伝子産物の濃度を上げる工程は、NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤を軟骨形成もしくは修復が望まれる領域に適用する工程を有する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記作用剤は、軟骨保護作用剤、アンチペインおよび/または抗炎症剤、成長因子、サイトカイン、低分子、抗血管新生因子、もしくはこれらの組み合わせから選択される請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記作用剤は、コラーゲン、骨マトリクス、靱帯マトリクス、腱マトリクス、軟骨形成細胞、もしくは骨軟骨前駆細胞から選択される請求項30に記載の方法。
【請求項35】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項1に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【請求項36】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項4に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【請求項37】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項19に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【請求項38】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項21に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【請求項1】
NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤を含有する軟骨形成もしくは修復を促進する組成物であって、前記NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤が、軟骨形成もしくは修復に効果的な量である組成物。
【請求項2】
前記NELLペプチドが、NELL1ペプチドである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記NELL関連作用剤が、NELL遺伝子産物である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第二作用剤をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
軟骨保護作用剤、アンチペインおよびまたは抗炎症剤、成長因子、サイトカイン、低分子、抗血管新生因子およびそれらの組み合わせの一群から選択される前記第二作用剤をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
医薬品として許容可能なキャリアをさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
医薬品として許容可能なキャリアをさらに有する請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
化学ゲル、物理ゲル、相互侵入網目、もしくは架橋剤を有する物質をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ヒトの体内の部分に適用されたと同時に注入もしくは成形可能な物質を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
刺激に対する反応として、NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤を分解もしくは放出する材料をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記刺激は、機械的刺激、光、電磁界、温度変化、pH変化、イオン強度の変化から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
骨軟骨前駆細胞をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
間葉細胞、胎生細胞、幹細胞、骨髄細胞、脂肪幹細胞、繊維芽細胞、もしくはそれらの組み合わせから選択される骨軟骨前駆細胞をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
軟骨形成細胞をさらに有する請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
軟骨の形成もしくは修復は、硝子もしくは気管軟骨、弾性軟骨、または繊維軟骨の形成もしくは修復である請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
装置に配合される請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤は、軟骨に関連する障害を治療、予防、向上するのに効果的な量である請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記軟骨に関連する障害は、種々の関節の関節症、種々の関節の関節炎、種々の関節の軟骨関節内障、もしくは脊椎関節および円板関連障害である請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項1に記載の組成物を含む移植片。
【請求項20】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項4に記載の組成物を含む移植片。
【請求項21】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項5に記載の組成物を含む移植片。
【請求項22】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項6に記載の組成物を含む移植片。
【請求項23】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項7に記載の組成物を含む移植片。
【請求項24】
表面を持つ基材を有するヒトの体内で使用する移植片であって、前記表面の少なくとも一部分が請求項12に記載の組成物を含む移植片。
【請求項25】
前記基材が再吸収可能である請求項19に記載の移植片。
【請求項26】
前記基材がコラーゲンを有する請求項19に記載の移植片。
【請求項27】
前記基材が再吸収可能である請求項20に記載の移植片。
【請求項28】
前記基材がコラーゲンを有する請求項20に記載の移植片。
【請求項29】
請求項19に記載の移植片は、
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入もしくは移植可能で、細胞を有するもしくは有さないNELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLを含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、細胞を有するかもしくは有さないNELLを有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するかもしくは有さないNELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分(核)もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された移送伝達手段を有するかもしくは有さないNELL核酸を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するかもしくは有さないNELL核酸を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接注入/移植可能で、細胞およびその他の因子を有するかもしくは有さないNELLタンパク質を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計されたNELLおよびその他の因子を含浸させた円板核置換装置;
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、細胞を有するかもしくは有さないNELLおよびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
軟骨形成を促進するために椎間板に直接的に注入/移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するかもしくは有さないNELL核酸およびその他の因子を有する注入/移植可能な装置;
椎間板の内側部分もしくは椎間板の内側部分および外側部分の両方を置換するように設計された移送伝達手段を有するかもしくは有さないNELL核酸を含浸させた円板核置換装置;または、
種々の関節空間に直接注入可能、または関節鏡もしくは切開により種々の関節空間に移植可能で、移送伝達手段を有するかもしくは有せず、細胞を有するもしくは有さないNELL核酸を有する注入/移植可能な装置、から選択される装置である移植片。
【請求項30】
軟骨形成もしくは修復を増進する方法であって、
軟骨形成もしくは修復が望まれる領域でNELL遺伝子産物の濃度を上げる工程と、
軟骨形成もしくは修復は望まれる領域に作用剤を適用する任意の工程と、
軟骨形成もしくは修復が望まれる領域で軟骨芽細胞の肥大化を少なくとも誘導する工程と、を有する方法。
【請求項31】
軟骨形成もしくは修復は、骨治癒もしくは骨再形成を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
NELL1遺伝子産物の濃度を上げる工程は、NELLペプチドもしくはNELL関連作用剤を軟骨形成もしくは修復が望まれる領域に適用する工程を有する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記作用剤は、軟骨保護作用剤、アンチペインおよび/または抗炎症剤、成長因子、サイトカイン、低分子、抗血管新生因子、もしくはこれらの組み合わせから選択される請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記作用剤は、コラーゲン、骨マトリクス、靱帯マトリクス、腱マトリクス、軟骨形成細胞、もしくは骨軟骨前駆細胞から選択される請求項30に記載の方法。
【請求項35】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項1に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【請求項36】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項4に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【請求項37】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項19に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【請求項38】
軟骨に関連する状態を治療、予防、もしくは向上する方法であって、対象の哺乳類に請求項21に記載の組成物を適用する工程を有する方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−509351(P2010−509351A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536424(P2009−536424)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/083655
【国際公開番号】WO2008/073631
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508085729)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, 94607−5200, US
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/083655
【国際公開番号】WO2008/073631
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508085729)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, 94607−5200, US
【Fターム(参考)】
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