説明

軟骨細胞増幅のための無血清培地およびその使用

本発明は線維芽細胞、とりわけ関節軟骨細胞を培養するために有用な、定義された無血清培地を提供し、かかる培地は血清含有培地の使用に付随する問題を回避する。定義された培地は血小板由来成長因子(PDGF)、化学的に定義された脂質、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン6(IL−6)、白血病抑制因子(LIF)、またはこれらの化合物の組み合わせを含む。別の側面において、本発明はまた、定義された無血清培地において軟骨細胞をインキュベートすることを含む、組織培養法を提供する。かかる方法は、低密度で播種された軟骨細胞の再分化能を維持しながら、それらの接着および増殖性増幅を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年6月20日に出願された米国特許出願第60/805,307号に優先権を主張するものであって、この全内容は引用により本明細書の記載とする。
【0002】
本発明は細胞および組織培養の分野に関する。より具体的には、本発明は軟骨欠損の治療または修復を意図した、軟骨組織を形成することができる細胞のex vivo増幅のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
関節軟骨は、軟骨細胞によって産生された複合細胞外マトリクス内に包まれた軟骨細胞からなる。このマトリクス特有の生化学的組成は、関節の関節表面の滑らかで、ほとんど摩擦のない動きを提供する。加齢にしたがって、ヒト関節軟骨の引っ張り特性は生化学的変化の結果として変化する。30歳以降、関節軟骨の引っ張り強度は著しく低下する。外傷または疾患、たとえばリウマチ性および変形性関節炎により生じた軟骨の損傷は、重大な身体的衰弱を引き起こす可能性がある。
【0004】
軟骨が、それ自体を修復することは不可能であるため、軟骨損傷に伴う臨床的症状を緩和するいくつかの外科的方法が開発された。米国だけで、年間に500,000以上の関節形成法および関節交換が行なわれる。自己軟骨細胞移植は関節軟骨欠損の治療に認可されている方法である。その方法は、大腿顆の非荷重部分に由来する軟骨片を採取すること、および単離した軟骨細胞をその後同じ患者に戻して移植するためにex vivoで増殖させることを含む。Brittbergら、New Engl.J.Med.331:889-895(1994)。
【0005】
関節軟骨細胞は関節軟骨−特異的細胞外マトリクス成分を発現する。関節軟骨細胞はいったん採取され、酵素的消化により組織から分離されると、それらを増殖性増幅のために単層培養することができる。しかしながら、組織培養中にこれらの細胞は線維芽細胞的な形態をとり、そしてヒアリン様関節軟骨に特徴的なII型コラーゲンおよびプロテオグリカン産生を中止する。そのような「脱分化」細胞は、速やかに増殖し、線維性組織に特徴的なI型コラーゲンを産生する。それにもかかわらず、in vitroでの懸濁培養培地(Aulthouseら、In Vitro Cell.& Devel.Biology 25:659-668(1989))のような適切な環境中、またはin vivoでの軟骨欠損(Shortkroffら、Biomaterials 17:147-154(1996))環境中に置いた場合、細胞は再分化する、すなわち関節軟骨−特異的マトリクス分子を再び発現する。脱分化可逆性は、培養した自己軟骨細胞を使用して関節軟骨を上手く修復させるのに肝要である。
【0006】
ヒト軟骨細胞は一般に10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)を補足したダルベッコの調整イーグル培地(DMEM)中で培養する。Aulthouseら、In Vitro Cell.&Devel.Biology,25:659-668(1989);Bonaventureら、Exp.Cell Res.,212:97-104(1994)。しかしながら、たとえ血清が哺乳動物細胞培養で広く使用されていても、その使用に関してはいくつかの問題がある:(1)血清には多くの未確認または非定量成分が含まれ、したがって「定義(defined)」されない;(2)血清成分はロット毎に異なり、実験または他の細胞培養への使用のために標準化することを困難にする;(3)血清成分の多くは細胞接着、増殖、および分化に影響を与え、これらのパラメータを制御することを困難にする;(4)血清のいくつかの成分は特定の細胞型の増殖に抑制性であり、ある程度その増殖作用を妨害し、結果として最適以下の増殖となる;(5)血清はウイルスおよび他の病原体を含むかもしれず、培養した細胞をヒトに移植しようとする場合、そのような血清は実験結果に影響を与えるか、または潜在的な健康被害を与えるかもしれない。Freshney(1994)無血清培地:動物細胞培養、John Wiley & Sons,New York,91-99。
【0007】
したがって、定義された無血清培地の使用は軟骨欠損の治療のための軟骨細胞のex vivoでの増殖にとりわけ好都合である。しかしながら、そのような定義された無血清培地は低密度で播かれた成人のヒト関節軟骨細胞の接着には十分であり、集密的な培養が得られるまで増殖を維持させ、そして関節軟骨表現型を再発現するための軟骨細胞の能力を維持するに違いない。
【0008】
細胞培養のための生化学的に定義された培地(DM)を開発する努力が続けられてきた。DMは一般に栄養分、成長因子、ホルモン、接着因子、および脂質を含む。的確な組成は、培地が考案される具体的な細胞型に対して適応しなければならない。線維芽細胞、ケラチン細胞、および上皮細胞を含む、いくつかの細胞型の首尾よい増殖が各種DM中で達成されてきた。Freshney,1994およびButler M.ら、Appl.Microbiol.バイオテクノロジー.68:283−91(2005)。
【0009】
自己軟骨細胞移植に利用可能な出発細胞材料の量は一般に限定されている。したがって、最小の集密下密度で関節軟骨細胞を播くことが好ましい。DMにおける集密下密度での関節軟骨細胞を培養する試みは部分的にのみ成功した。低密度で播かれた軟骨細胞の増殖能力を持続させることができるDMは開発されているが、これらの培地の使用は播種後の組織培養容器への細胞の初期の接着のために依然として血清を必要とする。Adolpheら、Exp.Cell Res.155:527-536(1984)、およびU.S.Patent No.6,150,163。
【0010】
したがって、医学的適用、とりわけヒトにおける使用のために再分化可能な軟膏細胞の接着、増殖、および維持のための条件を最適化し、標準化し、そして制御するための必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Brittbergら、New Engl.J.Med.331:889-895(1994)
【非特許文献2】Aulthouseら、In Vitro Cell.& Devel.Biology 25:659-668(1989)
【非特許文献3】Shortkroffら、Biomaterials 17:147-154(1996)
【非特許文献4】Freshney(1994)無血清培地:動物細胞培養、John Wiley & Sons,New York,91-99
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の概要
この発明は化学的に定義された培養培地(DM)、該培地を作製する方法、および該培地の使用方法、たとえば細胞を培養すること、とりわけ、軟骨欠損の修復のためにヒト関節軟骨細胞を培養することを提供する。本発明のDMの特徴の一つは、1つまたは複数のIL−6ファミリーのうちの実質的に純粋なサイトカイン、たとえばオンコスタチンM(OSM)、インターロイキン6(IL−6)、および白血病抑制因子(LIF)などの存在である。
【0013】
他にも好都合な点はあるが中でも、本発明は軟骨細胞培養において血清の使用を回避し、無血清条件下で細胞接着および増殖を促進し、および/または軟骨特異的表現型を再発現するための軟骨細胞の能力を維持することができる。一つの態様において、本発明は細胞の培養基材への初期接触に十分なDMを提供し、それによって細胞培養の初期段階における血清含有培地の必要性を除去する。本発明の別の態様は、細胞培養中のどの段階においても血清を使用せずに軟骨細胞などの細胞の増殖を促進する、定義された無血清細胞培養培地を提供する。本発明のさらに別の態様は、対象に移植する前に軟骨細胞を準備するために使用されるか、または軟骨欠損への移植を意図してマトリクス内に埋め込まれた軟骨細胞に対する再分化−維持培地として含まれることができる、細胞培養培地を提供する。本発明の別の態様は、軟骨欠損患者を治療するために適した状態の軟骨細胞の培養方法を提供する。本発明のさらなる好都合な点は以下の説明において部分的に示され、そして一部はその記載から明らかであるか、または本発明の実施により知ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のDMは、IL−6ファミリーの1つまたは複数のサイトカイン、たとえばOSM、IL−6、およびLIFなどを含む1つまたは複数の補足物が補足された基礎培地を含む。
【0015】
基礎培地は適当な培地であってよい。好ましい実施態様において、基礎培地はcDRF(表3)またはcDRFm(表4)である。cDRFおよびcDRFmはDMEM、RPMI−1640、およびHam’s F−12を1:1:1の比で混合することによって調製されるか、または予混合培地を適切に合わせて表3および4のそれぞれに明記された基礎培地に達するように成長補足物を加えることによって調製される。
【0016】
さらに好ましい実施態様において、基礎培地はさらに、血小板−由来成長因子(PDGF)および/または1つまたは複数の脂質が補足される。実施態様において、脂質は化学的に定義された脂質混合物(CDLM;表5)であるか、あるいはCDLM(たとえば、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸、コレステロール、およびアルファ−トコフェロール酢酸)から選択される1つまたは複数の脂質である。一実施態様において、本発明のDMは:
(a)実質的に純粋なPDGFおよびCDLMのうちの1つまたは両方;および
(b)実質的に純粋なOSM、実質的に純粋なIL−6、および実質的に純粋なL IF;
が補足された基礎培地(たとえば、cDRFまたはcDRFm)を含んでいてもよい。
たとえば、好ましい実施態様において、本発明のDMは含んでいてもよい:(a)基礎培地;(b)0.1−100ng/ml PDGF;(c)0.05−5% CDLM; (d)0.01−10ng/ml OSM;および/または(e)0.01−10ng/ml IL−6。
【0017】
先の大まかな説明および以下の詳細な説明は共に代表的で説明的なものだけであり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(1)DMEM+10% FBSまたは(2)E93培地(CDLM、PDGF、IL−6、およびOSMが補足された表4に明示するcDRFm)中で3回継代して、培養された初代ヒト軟骨細胞の増殖の比較を表す。
【図2】(1)DMEM+10% FBSまたは(2)E93培地(CDLM、PDGF、IL−6mおよびOSMが補足された表4に明示されたcDRFm)中で3回継代して、培養された初代ヒト軟骨細胞の細胞収率の比較を実証したものを表す。
【図3】E93(2,3,4列)またはDMEM+10%FBS(5,6,7列)中で増殖した軟骨細胞由来の細胞溶解物のRPAを示す。軟骨マーカー、コラーゲン2およびアグリカンはすべての試料において発現される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細な説明
この発明は化学的に定義された培養培地(DM)、該培地を作製する方法、および該培地の使用方法、たとえば細胞を培養すること、とりわけ、軟骨欠損の修復のためにヒト関節軟骨細胞を培養することを提供する。本発明はPDGFおよびCDLMならびにIL−6ファミリーの1つまたは複数のサイトカインが補足されたcDRFmと言われる基礎培地が、培養中で再分化可能な軟骨細胞の接着、増殖および維持に十分であり、細胞培養のすべての段階において、血清含有培地と置き換えることができるという発見に少なくとも部分的に基づく。IL−6ファミリーのサイトカインは、たとえばOSM、IL−6、およびLIFを含む。
【0020】
したがって、一つの態様において、本発明は1つまたは複数の補足物が補足された基礎培地を含み、IL−6ファミリーの1つまたは複数のサイトカイン、たとえば、OSM、IL−6、およびLIFを含む培養培地を提供する。
【0021】
「が補足される」という用語は、補足物が出発物質に加えられることによって最終物質を得ることを意味する。特に明示しない限り、1つまたは複数の補足物は特定の時間または特定の順序で加えられる必要はない。「が補足される」という用語は、現存の補足物で補足される前または後のいかなる時点においても、出発物質が他の補足物で追加的に補足されることを除外することはない。特に明示しない限り、補足物は実質的に「純粋な形態」で培地に追加される。「実質的に純粋な」という用語は、自然に発生する成分が実質的に取り除かれていることを示す。たとえば、実質的に純粋なサイトカインは精製されたサイトカインまたは組み換えによって生成されたサイトカインである。
【0022】
I.基礎培地の作製(cDRF)
本発明の定義された無血清培地(DM)の作製の第一段階は基礎培地を得ることである。基礎培地はいかなる適当な培地であってもよい。実施態様において、基礎培地は表3に明示されたcDRFである。cDRFは以下に記載の市販の出発成分から作製され得る。cDRFは、Adolpheら、(Exp.Cell Res.155:527-536(1984))およびMcPhersonら(米国特許第6,150,163号)によって開発されたDMの改変である。
【0023】
cDRFの3種の出発成分はDMEM、RPMI-1640、およびHam’s F12(Invitrogen;Carlsbad,CA)である。出発成分は1:1:1の比で合わせる。3つすべての培地は一度に合わせることができ、あるいは培地のいずれか2つを予め混合しておき、その後適当な量の3つ目の培地と合わせることができる。出発成分の正確な組成は表1に明示される。得られた培地(表2に明示し、DRFという)は次にITS(10μg/ml インスリン、5.5μg/ml トランスフェリン、7ng/ml セレニウム、および、場合により、2.0μg/ml エタノールアミン;Invitrogen、Carlsbad、CA)、ヒトフィブロネクチン(BD Biosciences;San Jose,CA)、ヒト血清アルブミン(HSA)(Grifols;Los Angeles、CA;またはBaxter;Westlake Village,CA)、リノール酸(Sigma−Aldrich;St.Louis,MO),ヒト塩基性胎児成長因子(bFGF)(R&D Systems,Minneapolis,MN)、ゲンタマイシン(Invitrogen;Carlsbad,CA)、およびハイドロコーチゾン(Sigma−Aldrich;St.Louis,MO)を補足し、cDRFを作製する。すべての材料は取り扱い説明書にしたがって溶かし、希釈し、そして保存する。成分を合わせて最終的な培地を得るための正確な順序は重要ではない。完全な培地は標準的な手技により作製され、使用するまで好ましくは2−8℃で保存することができる。好ましい実施態様において、基礎培地は本質的に以上に記載したとおり、ヒト血清アルブミン、リノール酸、およびハイドロコーチゾンの量を調節して、表4に明示したように改変cDRF(CDRFm)となるよう作製される。
【0024】
実施態様において、基礎培地は表3に挙げられたcDRFのすべての必須成分を含む培地である。表3に記載の成分または成分のサブセットの濃度を下げるか、または成分を除去した場合に軟骨細胞の接着、増殖、および再分化に関連する培地の特性が実質的に同じならば、かかる成分または成分のサブセットは必須ではない。個々の成分について定められた濃度は具体的な細胞培養条件に合わせて調整することができる。当業者は、定法を使用してそのような調整を容易に行なうことができる。
【0025】
付加的な成分が好ましく、軟骨細胞の接着、増殖、および再分化に悪い影響を与えない場合は、そのような成分を培地に添加することができる。そのような成分には、これに限定されないが、成長因子、脂質、血清タンパク質、ビタミン、ミネラル、および炭水化物が含まれる。たとえば、米国特許第6,150,163号に記載の、TGF−β(TGF−β1、−β2、−β3)、IGF、およびインスリンのような軟骨細胞再分化を促進する成長因子またはホルモンを培地に補足することが好都合である。そのような成長因子およびホルモンは市販されている。補足物の別の例として骨形態形成タンパク質(BMP)が含まれ、それらには少なくとも15の構造および機能に関連するタンパク質が存在するが、それらに限定されない。BMPは各種細胞型の成長、分化、老化性、およびアポトーシスに関与することが示されている。たとえば、組換えBMP−4およびBMP−6は、R&D Systems(Minneapolis,MN)から購入することができる。本発明のDM中の各種補足物の濃度は最小限の実験で決定することができる。たとえば、本発明のDM中のBMPの濃度は0.01〜0.1ng/ml、0.1〜1ng/ml、1〜10ng/ml、100ng/ml、10〜50ng/ml、50〜100ng/ml、および0.1−1μg/mlから選択される。
【0026】
当業者は本発明のDMが血清の使用を避けることに加えて好都合な点を有することを認識するであろう。しかしながら、記載されていない成分の使用が許容可能である場合において、本発明のDMを使用することが望ましいこともある。結果として、本発明のDMは血清、たとえばウシ胎仔血清、または他の化学的に不明確な成分、たとえば動物もしくは植物組織抽出物を補足することができる。したがって、ある態様において、本発明のDMは10%またはそれ未満、たとえば8%またはそれ未満、6%またはそれ未満、4%またはそれ未満、2%またはそれ未満、1%またはそれ未満の血清を補足してもよい。
【0027】
当業者はまた、cDRFの等価物がさまざまな公知の培地、たとえば、イーグルの基礎培地(Eagle,Science,122:501(1955))、最小必須培地(Dulbeccoら、Virology,8:396(1959))、Ham’s培地(Ham,Exp.Cell Res.29:515(1963)),L−15培地(Leibvitz,Amer.J.Hyg.78:173(1963)),McCoy 5A培地(McCoyら、Proc.Exp.Biol.Med.100:115(1959))、RPMI培地(Mooreら、J.A.M.A.199:519(1967))、Williams’培地(Williams,Exp.Cell Res.69:106−112(1971)),NCTC 135培地(Evansら、Exp.Cell Res.36:439(1968))、Waymouth’s培地 MB752/1(Waymouth,Nat.Cancer Inst.22:1003(1959))などから作製することができると認識するであろう。これらの培地は単独または適切な割合の混合物として使用して、cDRFに等価な基礎培地を作製することができる。あるいは、cDRFまたはその等価物は個々の化合物または他の培地および増殖補足物から作製することができる。本発明はいずれか具体的な粘稠度の培地に限定されず、液体から半固体までの範囲の培地の使用を包含し、溶解に適した固化培地および固体組成物を含む。
【0028】
【表1−1】

【0029】
【表1−2】

【0030】
【表2−1】

【0031】
【表2−2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
II.基礎培地の補足物
A.血小板−由来成長因子(PDGF)
一実施態様において、基礎培地は実質的に純粋なPDGFが補足される。
【0035】
PDGFは血清には存在するが、血漿には存在しない主要な分裂促進因子である。PDGFはAおよびBと表される2種の構造的に関連した鎖からなる二量体分子である。二量体イソ型のPDGF−AA、ABおよびBBは各種細胞型において異なって発現される。一般にすべてのPDGFイソ型は、皮膚線維芽細胞、グリア細胞、動脈平滑筋細胞、およびいくつかの上皮および内皮細胞を含む、結合組織細胞に対する強力な分裂促進因子である。
【0036】
組換えPDGFは各種供与源から市販されている。以下の実施例で使用されるヒト組換えPDGF−BB(hrPDGF−BB)はR&D Systems(Minneapolis,MN;カタログ番号220−BB)から購入し、溶かし、取り扱い説明書に従って使用した。hrPDGF−BBの大腸菌による発現および109アミノ酸残基の成熟ヒトPDGF−B鎖タンパク質をコードするDNA配列(前駆体配列においてトレオニン残基190を有する末端からC末端へプロセッシングされる)はJohnsonら.(EMBO J.3:921(1984))により記載される。ジスルフィド結合したホモダイマーのrhPDGF−BBは、2つのアミノ酸残基B鎖からなり、約25kDaの分子量を有する。PDGFの活性は、Rainesら(Meth.Enzymol.109:749−773(1985))に記載のように、静止NR6R−3T3線維芽細胞のH−チミジン取り込みを刺激する能力により測定する。このアッセイにおけるPDGFのED50は一般に1−3ng/mlである。
【0037】
PDGFの濃度は、0.1−1ng/ml、1−5ng/ml、5−10ng/ml、10ng/ml、10−15ng/ml、15−50ng/ml、および50−100ng/mlより選択される。ある態様において、cDRFに1−25ng/ml、より好ましくは、5−15ng/ml、そしてもっとも好ましくは10ng/mlのPDGFを補足する。好ましい実施態様において、PDGFはPDGF−BBである。あるいは、PDGFは別の型、たとえば、PDGF−AB、PDGF−BB、またはいずれかのPDGF型の混合物であってもよい。関連した態様において、本発明のDMはさらにまたは別の方法として以下に記載の付加的な補足物をさらに含む。
【0038】
B.脂質
一実施態様において、基礎培地はCDLM(表5)または、別の方法として、CDLMから選択される1つまたは複数の脂質が補足される。
【0039】
脂質は構造成分ならびに生細胞において潜在的なエネルギー源として重要である。インビトロにおいて、多くの細胞は培養培地中に存在するグルコースおよびアミノ酸から脂質を合成することができる。しかしながら、細胞外脂質が利用可能であれば、脂質生合成は阻害され、細胞は培地中の遊離脂肪酸、脂質エステル、およびコレステロールを利用する。血清は脂質に富み、培養細胞にとっての主な細胞外脂質源となってきた。いくつかの系において無血清培地における細胞の増殖促進に、魚油に基づいた化学的に定義されない脂質調製物が有効であることが見出されている。たとえば、Weissら、インビトロ26:30A(1990);Gorfienら、インビトロ26:37A(1990);Fikeら、インビトロ26:54A(1990)を参照のこと。したがって、通常は血清により供給される各種脂質の代わりにそのような脂質を無血清培地に補足することが望ましいかもしれない。
【0040】
本発明のDMに使用する適切な脂質はステアリン酸、マレイン酸、オレイン酸、リノール酸パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸、コレステロール、およびアルファ−トコフェロール酢酸を含む。一実施態様において、基礎培地は表5に示す化学的に定義された脂質混合物(CDLM)が補足される。CDLMはinvitrogenから利用可能である。invitrogenにより供給されるように、脂質成分に加えて、CDLMはエタノール(100g/L)および乳化剤Pluronic F68(登録商標)(100g/L)およびTween80(登録商標)(2.2g/L)を含む。
【0041】
本発明の方法を実施する場合、表5に示すCDLMの個々の脂質成分の濃度は、具体的な細胞培養条件に対して調製することができる。当業者により定法を使用してそのような調製を容易に行なうことができる。さらに、CDLMのすべての成分が必須でなくてもよい。成分の組成または成分のサブセットの濃度を下げるか、または成分を除去した場合に、軟骨細胞の接着、増殖、および再分化に関連する培地の性質が実質的に同じのままであれば、かかる成分または成分のサブセットは必須ではない。
【0042】
一実施態様において、本発明のDMは少なくとも1,2,4,6,8、またはすべてのCDLMの脂質成分を含む。一実施態様において、DMは表5に記載のPDGFおよびCDLMを含む。他の限定的でない実施態様において、DMはPDGFおよび表6に示す脂質の組み合わせを含む。
【0043】
【表5】

【0044】
【表6−1】

【0045】
【表6−2】

【0046】
ある実施態様において、培地の脂質濃度(v/v)は0.05〜0.1%、0.1〜0.5%、0.5%、0.5〜1%、1〜2%、および2〜5%から選択される。ある別の態様において、DMは付加的に1〜25ng・ml、より好ましくは、2〜15ng/ml、そしてもっとも好ましくは、10ng/mlのPDGFが補足される。具体的な態様において、DMは約0.5%(v/v)CDLM、および10ng/ml PDGFを含む。
【0047】
C.IL−6ファミリーサイトカイン
サイトカインの各IL−6は、広範囲の細胞型で見出される、共有シグナル伝達受容体サブユニットを利用することができる。たとえば、Hiranoら、(2001)IL−6リガンドおよび受容体ファミリー:サイトカイン関連、Academic Press,サンディエゴ、523−535。IL−6−ファミリーサイトカインの例は、これに限定されないが、オンコスタチンM(OSM)、インターロイキン6(IL−6)、白血病抑制因子(LIF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン−11(IL−11)、カルジオトロフィン1(CT−1)、およびニューロトロフィン1/B細胞刺激因子3(NNT−1/BSF−3)を含む。IL−6ファミリーのサイトカインは造血発生、神経発生、および骨形成を含むさまざまな生体系における細胞増殖および分化を抑制することがわかっている。Bruceら、Prog.Growth Factor Res.4:157−170(1992)。
【0048】
1.オンコスタチンM(OSM)
ヒトのOSMは、分泌過程で取り除かれるN末端の25残基疎水性シグナル配列を伴った252アミノ酸ポリペプチドとして最初に翻訳される分泌性糖タンパク質である。さらに翻訳後の分裂により31個のC末端残基が取り除かれ、192アミノ酸のジスルフィド結合された成熟タンパク質が残る。Roseら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 88:8641 8645(1991);Robinsonら、Cell 77:1101−1116(1994)。ヒトにおいて、OSMは2つの異なる受容体複合体−LIF受容体(LIFR)/gp130二量体およびOSM受容体(OSMR)/gp130二量体を介して結合し、情報を伝える。各受容体複合体に結合することにより、ヤヌスキナーゼ/シグナル伝達物質および転写活性化因子(JAK/STAT)およびマイトジェン−活性化プロテインキナーゼ(MAPK)情報伝達系の活性を導く。Heinrichら、Biochem.J.374:1−20(2003).
【0049】
OSMは、ヒト腫瘍細胞株のすべてではないが、一部の増殖を阻害することが報告されている。その一方で、OSMは、ヒトの包皮線維芽細胞またはWI−38細胞などの、いくつかの正常な線維芽細胞の増殖を刺激することが報告されている。Zarlingら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA83:9739−9743(1986)。したがって、OSMは、インビトロのある細胞の成長を刺激するのに役立つかもしれない。さらに詳しいOSMの記載は米国特許第5,202,116号および第5,814,307号にある。
【0050】
OSMは、商業的供給源から容易に利用可能である。以下の例において、大腸菌により産生される196−アミノ酸組換えOSMは、R&Dシステム(Minneapolis,MN)(カタログ番号295−OM,Linsleyら、Mol.Cell.Biol.10:1882−1890(1990)も参照)から得られた。OSMの生物活性は、たとえば、Kitamuraら、J.Cell Physiol.140:323−334(1989)に記載されているように、ヒト赤白血病細胞株の増殖アッセイで試験することにより測定されてもよい。好ましい実施態様において、ヒトのOSMは本発明の培地を作製するために用いられる。しかしながら、当業者は、他の種、自然に発生する突然変異体、および工学的な突然変異体から得られるOSMが効果的であることを認識するであろう。
【0051】
2.インターロイキン−6(IL−6)
IL−6は多くの別の名称:インターフェロンベータ2;B細胞分化因子;B細胞刺激因子2;肝細胞刺激因子;ハイブリドーマ増殖因子;およびCTL分化因子を含む:を有する。ヒトIL−6は、186個のアミノ酸の分泌糖タンパク質であり、212−アミノ酸前駆タンパク質として合成される。Matsudaら、(2001)IL−6:サイトカイン関連,Academic Press,サンディエゴ,538−563。ヒトにおいて、IL−6は、IL−6受容体(IL−6R)およびgp130ホモ二量体のフック剛体を介して結合し、情報を伝える。IL−6がIL−6R受容体に結合することによって、ヤヌスキナーゼ/シグナル伝達物質および転写活性化因子(JAK/STAT)およびマイトジェン−活性化プロテインキナーゼ(MAPK)情報伝達系の活性を導く。Heinrichら、Biochem.J.374:1−20(2003)。
【0052】
IL−6が、PC12神経細胞の分化を誘発すること、細胞増殖性の骨髄前駆細胞の成熟を誘発すること、およびT細胞の増殖を誘発することが報告されている。その一方で、IL−6は、骨髄性白血病細胞および乳癌細胞の増殖を阻害することもまた示されている。したがって、IL−6はインビトロにおいて、ある細胞の増殖を刺激するために役立つかもしれない。IL−6のさらに詳細な記載は、米国特許第5,188,828号にある。
【0053】
IL−6は商業的供給源から利用可能である。以下の例において、大腸菌により産生される184−アミノ酸組換えIL−6は、R&Dシステム(Minneapolis,MN)(カタログ番号.206−IL,Hiranoら、Nature324:73−76(1986)も参照)から得られた。IL−6の生物活性は、たとえば、Nordan ら、J.Immunol.139:813(1987)に記載されているように、形質細胞腫増殖アッセイで試験することにより測定される。好ましい実施態様において、ヒトIL−6は本発明の培地を作製するために用いられる。しかしながら、当業者は、他の種、自然発生する突然変異体、および工学的な突然変異体から得られるIL−6が効果を有することを認識するであろう。
【0054】
3.白血病抑制因子(LIF)
LIFはいくつかの別の名称:コリン作動性分化因子;DA細胞におけるヒトインターロイキン;分化刺激因子;MLPLI;およびエンフィラミン(Emfilermin)を有する。ヒトLIFは、糖タンパク質を分泌する180個のアミノ酸である。Kondera−Anaszら、Am.J.Reprod.Immunol.52:97−105(2004)。ヒトにおいて、LIFはLIF受容体(LIFR)/gp130二量体を介して結合し、信号を送る。LIFがLIF受容体に結合することにより、ヤヌスキナーゼ/シグナル伝達物質および転写活性化因子(JAK/STAT)およびマイトジェン−活性化プロテインキナーゼ(MAPK)情報伝達系の活性を引き起こす。Heinrichら、Biochem.J.374:1−20(2003)。
【0055】
LIFはM1骨髄性白血病細胞の増殖を阻害することが報告されている。たとえば、米国特許第5,443,825号参照。対照的に、LIFはニューロンの増殖を刺激し、ならびに副腎髄質表現型からアセチルコリン作動性表現型までニューロンの分化を促進することが報告されている。たとえば、米国特許第5,968,905号を参照。LIFを切断された神経に加えると神経の再分化を増強することができる。米国特許第6,156,729号参照。したがって、LIFはインビトロにおいてある細胞の増殖を促進するために有効であるかもしれない。
【0056】
LIFは商業的供給源から利用可能である。以下の例において、大腸菌で産生される181個のアミノ酸の組換えヒトLIFはSigma−Aldrich(St.Louis,MO)(カタログ番号.L5283,Gearingら、EMBO J.6:3995(1987)も参照)から得られる。LIFの生物活性は、たとえばGearingら、EMBO J.6:3995(1987)に記載のように、M1マウス脊髄性白血病細胞の分化を刺激する能力を試験することによって評価される。好ましい実施態様において、ヒトLIFは本発明の培地を作製するために用いられる。しかしながら、当業者は他の種、自然発生する突然変異体、および工学的な突然変異体から得られるLIFが有効であることを認識するであろう。
【0057】
ある実施態様において、本発明のDMは、PDGFと、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸、コレステロール、およびアルファ−トコフェロール酢酸からなる群より選択される1つまたは複数の脂質と、ならびに1つまたは複数のサイトカインを補足したcDRFである。さらなる実施態様において、本発明のDMは、PDGFと、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸、コレステロール、およびアルファ−トコフェロール酢酸からなる群より選択される1つまたは複数の脂質と、ならびにOSM、IL−6、およびLIFからなる群の1つまたは複数を補足したcDRFである。サイトカインの濃度は、0.01−0.1ng/ml、0.1−1ng/ml、1−5ng/ml、5−10ng/ml、10−15ng/ml、15−50ng/ml、および50−100ng/mlから選択される。ある実施態様において、cDRFは、OSM、IL−6、および/またはLIFが0.01−10ng/ml、より好ましくは、0.1−2ng/mlおよび、もっとも好ましくは、0.5−1ng/ml補足される。より好ましい実施態様において、cDRFは、およそ10ng/ml PDGF、0.5% CDLM、1ng/ml IL−6、および0.5ng/ml OSMにて補足される。関連する実施態様において、本発明のDMはさらに以下に記載のような付加的な補足物を含む。
【0058】
ある実施態様において、本発明のDMはOSM、IL−6、およびLIFを少なくとも1つ、2つ、または3つすべて含む。他の限定されない実施態様において、DMは表7に記載のOSM、IL−6、およびLIFの組み合わせを含む。限定されないがさらに追加的な実施態様において、DMは表7に記載のOSM、IL−6、およびLIFと、PDGFと、表5に示されたCDLMとのいずれの組み合わせを含む。より好ましい実施態様において、DMは表5に示されたOSM、IL−6、PDGFおよびCDLMを含む。さらに好ましい実施態様において、DMは表4に示されたcDRFmである。たとえば、培地はcDRFm、OSM、IL−6、PDGFおよびCDLMを含む。
【0059】
【表7】

【0060】
D.付加的な補足物
本発明のDMは培地中における細胞の増殖を促進するのに必要な付加的な補足物のいずれかが補足されてもよい。そのような補足物は、以下に限定されないが、BMPファミリーのもの、TGF−ベータファミリーのもの、IGF、およびインスリンを含む。
【0061】
本発明の培地は、血清を使用しない培地で、分化可能な軟骨細胞を播種、増殖、維持するために用いることができる。PDGF、脂質、OSM、IL−6、およびLIFの濃度の規定範囲は具体的な細胞培養条件によって調節される必要がある。そのような調節は当業者が通常の技術を用いることによって容易に為され得る。
【0062】
ある実施態様において、本発明の培養培地は実質的に純粋なjagged1(JAG1)および/または実質的に純粋なインターロイキン−13(IL−13)が補足されない。
【0063】
ある実施態様において、本発明の培養培地は米国特許出願公開番号第US2005/0265980号A1(たとえば、59から68段落)および第US2005/0090002号A1(たとえば、10から14段落)に記載の補足物の具体的な組み合わせのどれも補足されていない、ただし、培地がそれらの組み合わせから少なくとも1つまたは複数の補足物を除く限り、それらに記載のいずれの組み合わせの集合を補足してもよい。たとえば、ある実施態様において、本発明の培養培地は、実質的に純粋な上皮細胞増殖因子(EGF)、実質的に純粋な肝細胞因子(SCF)、実質的に純粋なインスリン様増殖因子1(IGF−1)、実質的に純粋な脳由来神経栄養因子(BDNF)、実質的に純粋なエリスロポエチン(EPO)、実質的に純粋なFMS関連チロシンキナーゼ−3(Flt−3/Flk−2)リガンド、および/または実質的に純粋なウィングレス型MMTV組込み部位(WNT)ファミリーのものからなる群より選択される特定の1つ、2つ、3つ4つまたは複数の補足物で補足されない。ある実施態様において、本発明の培地はデキサメタゾンを含有しない。
【0064】
III.軟骨細胞および他の適切な細胞
本発明の方法はいずれの適当な細胞に使用され得る。この方法は軟骨性組織を産生することができる細胞のex vivoでの増殖に特に適している。
【0065】
軟骨細胞は種々の軟骨型、たとえばヒアリン軟骨、弾性軟骨、および線維軟骨に見出される細胞である。軟骨細胞はそれらが産生する細胞外マトリクスに主に基づいた特徴的な表現型を有する間葉系細胞である。前駆体細胞はI型コラーゲンを産生するが、軟骨細胞系譜にコミットされる場合、それらはI型コラーゲン産生を停止し、細胞外マトリクスの実質的な部分を構成するII型コラーゲン産生を始める。さらにコミット軟骨細胞は、高度に硫酸化されたグリコサミノグリカンを有する、アグレカンと呼ばれるプロテオグリカン凝集体を産生する。
【0066】
本明細書に使われるように、「軟骨細胞」という語は、軟骨から得られる分化した細胞をいい、培養中で増殖しながら軟骨細胞に分化する能力を保有する、脱分化した軟骨細胞を含む。「軟骨細胞」という語は、初代の、継代された、自家性、異種性、ゼネロガス(xenologuos)などの如何に関わらない軟骨細胞をいう。
【0067】
本発明で使用する軟骨細胞はいずれか適切な方法により単離することができる。軟骨細胞単離のための各種出発物質および方法は当該技術分野で公知である。Freshney,動物細胞の培養:A Manual of Basic Techniques,第2版.A.R.Liss,Inc.,New York,pp.137−168(1987);Klagsburn,Methods Enzymol.58:560−564(1979);R.TuboおよびL.Brown,関節軟骨:ヒト細胞培養;Volume V,Kollerら.(eds.)(2001);およびKandelら.,Art.Cells,Blood Subs.,およびImmob.Biotech.25(5),565−577(1995)。例としては、関節軟骨はヒトドナーの大腿顆から採取することができ、軟骨細胞は0.1%コラゲナーゼ/DMEM中で一晩消化することにより軟骨から剥離することができる。剥離された細胞は、本発明のDMまたは10%FBSを含むDMEMのような適切な培地中で初代細胞として増殖する。
【0068】
ある状況においては、すでに軟骨細胞に分化している、軟骨生検由来の細胞より、むしろ間葉系肝細胞のような軟骨前駆幹細胞を増殖することが望ましいことがある。軟骨細胞はそのような細胞の軟骨細胞への分化を誘導することによって得ることができる。そのような肝細胞を単離することができる組織の例は、骨液、胎盤、臍帯、骨髄、脂肪、皮膚、筋肉、骨膜、または軟骨膜を含む。
【0069】
軟骨細胞および軟骨前駆細胞の他に、ある状況において、軟骨細胞に分化転換することが可能な間葉系細胞など、軟骨細胞への潜在能力を伴う他の細胞を使用することが好ましいこともある。軟骨細胞はインビトロにおいてそのような細胞の軟骨細胞への分化を誘導することによって得ることができる。軟骨細胞への潜在能力を伴う他の細胞の例は骨芽細胞、筋細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、上皮細胞、ケラチン細胞、および神経細胞を含む。
【0070】
軟骨細胞への潜在能力を伴う軟骨細胞、軟骨前駆細胞、および他の細胞は、軟骨欠損患者の治療に適した状態まで培養されてもよい。そのような治療上有用な軟骨細胞は、いかに限定されないが、II型コラーゲンおよびヒアリン様関節軟骨に特徴的なプロテオグリカンを含む関節軟骨に特異的な細胞外基質成分を発現するはずである。軟骨細胞の分化状況を決定するアッセイは当該分野で公知であり、たとえば、R.TuboおよびL.Brown,関節軟骨:ヒト細胞培養;第5版,Kollerら、eds.(2001)および実施例中に記載されている。
【0071】
本発明のDMのために使われる他の細胞は、DM中で増殖する可能性のある、初代または継代細胞、または培養された組織の一部としての細胞を含む。他の細胞の例は肝細胞、ベータ細胞、および島細胞を含む。
【0072】
軟骨細胞および他の細胞はヒト、オランウータン、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ラット、ウサギ、マウス、ウマ、ウシ、ブタ、ゾウなどを含むが、それらに限定されないどんな哺乳類動物からも単離することができる。本発明のDMに使用可能な細胞は、DM中で増殖することができる初代または継代細胞あるいは培養組織の一部としての細胞を含む。
【0073】
IV.細胞培養法
細胞は特定の細胞型および施用に適したあらゆる細胞培養法を用いて培養することができる。細胞培養法は当該分野において公知であり、たとえばJ.M.Davis,Basic Cell Culture,第2版.Oxford U.Press,2002に記載されている。
【0074】
たとえば、軟骨細胞は0.05% トリプシン−EDTAを使用して80〜90%コンフルエントに継代し、継代培養のために希釈し、2回目およびそれに続く継代のために再播種し、さらに増幅を行なう。トリプシンおよびEDTAの両者ともInvitrogen(Carlsbad,CA)から入手することができる。あるいは、細胞はEDTAなどのキレート剤を含む溶液とともにインキュベートすることによって継代してもよい。非酵素的な細胞分離のためのキレート剤のそのような使用は当該分野で広く知られている。具体的な実施態様において、本発明のDM中で増殖する細胞は0.1mMから1mM EDTAを使用して継代される。好ましい実施態様において、本発明のDM中で増殖する細胞は、0.1mMから1mM EDTA中、0.0025%(または325ユニット/ml)未満、好ましくは0.00025%(または32.5ユニット/ml)組換えトリプシンを使用して継代される。いずれの時点でも細胞は、10%DMSOおよび40%HSAを含むDMSO中、または、たとえば米国特許第6,365,405号に記載のような当該分野で知られる他の組成物中で収集され、凍結することができる。
【0075】
ある実施態様において、細胞は低密度で最初に培養することができる。「低密度」という用語は20,000細胞/cm未満の播種密度を表す。
【0076】
本発明の方法は、単層、多層、固体支持体上、懸濁液中、および3D培養物中を含むがそれらに限定されない、各種条件下の培養物中で増殖する細胞に適切である。
【0077】
V.培地の評価方法
ある実施態様において、本発明の培地は、細胞を寛容な環境に置いた際に、分化−受容状態における細胞を維持する能力について、特に、軟骨細胞に分化する/再分化するかについて試験することができる。プロテオグリカン、アグリカンおよびコラーゲンIIは、インビボにおいて軟骨細胞によって通常分泌される細胞外マトリックスの成分の例であり、軟骨細胞の機能のマーカーとして扱ってもよい。軟骨細胞の分化能力を維持する培地の能力はアガロースおよび/またはアルギン酸アッセイによって決定されてもよい。アガロースアッセイは3Dアガロースマトリックスで増殖する細胞で、プロテオグリカンの形成を確認し、たとえばBenyaら、Cell30:215−224(1982)に記載されている。アルギン酸アッセイはアルギン酸懸濁液中で培養された細胞のアグリカンおよびコラーゲンII遺伝子の発現を測定するもので、たとえばYaegerら、Exp.Cell.Res.237(2):318−25(1997);およびGagneら、J.Orthop Res.18(6):882−890(2000)に記載されている。
【0078】
VI.細胞使用方法
本発明は、さらに本発明の方法および、たとえば治療において、たとえば対象にそのような細胞を投与することによって対象を治療するためのそのような細胞の使用方法を用いて培養された細胞を提供する。たとえば、軟骨欠損(たとえば外傷または変形性関節症による)の、本発明の方法にしたがって培養された軟骨細胞(たとえば、自己軟骨細胞)を投与することによって修復することを含む。
【0079】
実施例
本発明の各種態様は以下に提示された実施例においてさらに詳しく表現され、説明される。
【実施例1】
【0080】
実施例1:IL−6は初代ヒト軟骨細胞の細胞収率および増殖を増加させる
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)表8に示すcDRF/P/L
3)0.2ng/ml IL−6で補足された、表8に示すcDRF/P/L
4)1.0ng/ml IL−6で補足された、表8に示すcDRF/P/L。
【0081】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。細胞収率を決定し、集団倍加率を各継代の最後に計算した。cDRF/P/L+IL−6で増殖した細胞の細胞収率は、試験したすべての継代でもっとも高かった(表9)。cDRF/P/L+IL−6で増殖した細胞の増殖指数は、DMEM+10%FBSで増殖した細胞の増殖指数とほぼ同程度であり、cDRF/P/Lのみで増殖した細胞の増殖指数を上回った(表10)。これらの結果はIL−6を補足したcDRF/P/Lが血清含有培地の有効な代替物となることを示している。
【0082】
【表8】

【0083】
【表9】

【0084】
【表10】


【実施例2】
【0085】
実施例2:OSMは初代ヒト軟骨細胞の細胞収率および増殖を増加させる
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)表8に示すcDRF/P/L8
3)0.1ng/ml OSMを補足した、表8に示すcDRF/P/L
4)0.5ng/ml OSMを補足した、表8に示すcDRF/P/L
5)1.0ng/ml OSMを補足した、表8に示すcDRF/P/L。
【0086】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。細胞収率を決定し、集団倍加率を各継代の最後に計算した。表11のデータは、cDRF/P/L+OSMで増殖した細胞の細胞収率が試験したすべての継代でもっとも高かったことを示している。cDRF/P/L+OSMでの細胞の増殖指数はDMEM+10%FBSでの細胞の増殖指数とほぼ同程度であり、cDRF/P/Lのみでの細胞の増殖指数を上回った(表12)。これらの結果はOSMを補足したcDRF/P/Lが血清含有培地の有効な代替物となることを示している。
【0087】
【表11】

【0088】
【表12】


【実施例3】
【0089】
実施例3:LIFは初代ヒト軟骨細胞の細胞収率および増殖を増加させる
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)表8に示すcDRF/P/L
3)0.1ng/ml LIFを補足した、表8に示すcDRF/P/L
4)0.5ng/ml LIFを補足した、表8に示すcDRF/P/L
5)2.0ng/ml LIFを補足した、表8に示すcDRF/P/L。
【0090】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。細胞収率を決定し、集団倍加率を各継代の最後に計算した。表13のデータは、第1継代の後、cDRF/P/L+LIFで増殖した細胞の細胞収率がもっとも高かったことを示している。cDRF/P/L+LIFでの細胞の増殖指数はcDRF/P/Lのみでの細胞の増殖指数より高かった(表14)。これらの結果は、LIFを補足したcDRF/P/Lが血清含有培地の有効な代替物となることを示している。
【0091】
【表13】

【0092】
【表14】

【実施例4】
【0093】
実施例4:IL−6およびOSMの両者は初代ヒト軟骨細胞の細胞収率を向上する
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)表8に示すcDRF/P/L
3)1.0ng/ml IL−6を補足した、表8に示すcDRF/P/L
4)0.5ng/ml OSMを補足した、表8に示すcDRF/P/L
5)1.0ng/ml IL−6+0.5ng/ml OSMを補足した、表8に示すcDRF/P/L。
【0094】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。細胞収率を決定し、集団倍加率を各継代の最後に計算した。表15のデータは、cDRF/P/L+IL−6、cDRF/P/L+OSM、またはcDRF/P/L+IL−6+OSMで増殖した細胞の細胞収率がもっとも高かったことを示している。これらの結果は、IL−6およびOSMを補足したcDRF/P/Lが血清含有培地の有効な代替物となることを示している。
【0095】
【表15】

【実施例5】
【0096】
実施例5:JAG−1は無血清培地における軟骨細胞の増殖を阻害する
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)表8に示すcDRF/P/L
3)2.0μg/ml JAG−1を補足した、表8に示すcDRF/P/L。
【0097】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。細胞収率を決定し、集団倍加率を各継代の最後に計算した。表16のデータは、cDRF/P/Lにおける細胞収率はDMEM+10%FBSでの細胞収率のおよそ2倍であったことを示している。しかしながら、JAG−1をcDRF/P/Lに加えた場合、細胞収率はcDRF/P/Lのみと比較して16倍減少した。同様に、JAG−1を入れないcDRF/P/Lでの細胞増殖指数が0.24であったのに対して、JAG−1が存在する場合の細胞増殖に関する増殖指数は、わずか0.004であった。これらの結果は、試験された状況下で、JAG−1を補足したcDRF/P/Lが血清含有培地の有効な代替物でないことを示している。
【0098】
【表16】

【実施例6】
【0099】
実施例6:IL−13は無血清培地における軟骨細胞の増殖を阻害する
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)表8に示すcDRF/P/L
3)3.0ng/ml IL−13を補足した、表8に示すcDRF/P/L
4)10.0ng/ml IL−13を補足した、表8に示すcDRF/P/L。
【0100】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。細胞収率を決定し、集団倍加率を各継代の最後に計算した。表17のデータは、cDRF/P/Lにおける細胞収率がDMEM+10%FBSでの細胞収率のおよそ2倍であったことを示している。しかしながら、IL−13をcDRF/P/Lに加えた場合、細胞収率は用量依存的に減少した。IL−13の濃度3ng/mlおよび10ng/mlは、cDRF/P/Lと比較して、細胞収率をそれぞれ32%および46%まで減らした。加えて、50%ないし80%のコンフルエントに達するまでに必要な培養時間は、IL−13の存在で増加し、その結果、増殖指数はわずか0.07または0.06であった。これらの結果は、試験された状況下で、IL−13を補足したcDRF/P/Lが血清含有培地の有効な代替物でないことを示している。
【0101】
【表17】

【実施例7】
【0102】
実施例7:E93倍値は軟骨細胞の細胞収率および増殖を増加させる
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)表5に示される5μl/ml CDLM、10ng/ml PDGF、1ng/ml IL−6および0.5ng/ml OSMを補足した、表4に示すcDRFm(本明細書中、E93として示される)
【0103】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。E93培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。細胞収率を決定し、集団倍加率を各継代の最後に計算した。E93での細胞増殖指数はDMEM+10%FBSでの細胞増殖指数と比較して同等であるかまたは高くなった(表18、図1)。E93で増殖した細胞の細胞収率はDMEM+10%FBSでの細胞増殖にくらべて大きく向上した(表19、図2)。これらの結果は、CDLM、PDGF、IL−6およびOSMを補足したcDRFmが血清含有培地の有効な代替物となることを示している。
【0104】
【表18】

【0105】
【表19】

【実施例8】
【0106】
実施例8:IL−6およびOSMを補足した培地は三次元培養における軟骨細胞の再分化能力を維持する
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種し、無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)実施例7に記載の無血清E93培地。
【0107】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。
【0108】
三代継代後、細胞の再分化能力をアガロース上でのコロニーの形成およびプロテオグリカンの生成を測定することによって評価した(Benyaら、Cell30:215−224(1982))。細胞5万個を2%アガロースに再懸濁し、60mmシャーレに播種した。アガロース上での細胞をDMEM+10%FBSで、37℃にて培養し、播種から24時間、およびそれから2から3日ごとに再供給した。培養して21日後、10%ホルマリンで固定し、すすぎ、0.2%サフラニンで染色し、全体をすすいで、背景染色をジ取り除いた。陽性のプロテオグリカンを染色したコロニーの数、および大きさが50ミクロンと同等またはより大きいコロニーの数を決定した。6.8%以上の細胞がプロテオグリカン陽性コロニーを形成し、最小規模基準を満たすシャーレを「通過」と評価した。すべての株を三重に試験した。6つの生検由来の細胞株を試験した。表17に示すとおり、6つすべての株は、血清含有または無血清培地で増殖するかどうかのアガロースアッセイを通過した。これらの結果は、DLM、PDGF、IL−6およびOSMを補足したcDRFmが血清含有培地の有効な代替物となることをさらに示している。
【0109】
【表20】

【実施例9】
【0110】
実施例9:10株の軟骨細胞の平均細胞収率はIL6およびOSMを補足した培地のほうが血清を補足したDMEMより高い
初代ヒト軟骨細胞を関節軟骨生検から単離し、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種した。無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cm(E93高)または3,000細胞/cm(E93低)の密度でそれぞれ播種した。すべての実験にT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS;
2)実施例7に示すE93培地。
【0111】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。10%FBSを補足したDMEMで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/mlトリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。無血清培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。フラスコあたりの細胞収率を各継代の終わりに決定し、10%FBSを補足したDMEMにおけるP1細胞収率として正規化した。E93での高または低播種密度で増殖した細胞の平均細胞収率は、10%FBSを補足したDMEMで増殖した細胞と比較して、大きく増えた(表21)。これらの結果は、E93が血清含有培地の有効な代替物となることを示している。
【0112】
【表21】

【実施例10】
【0113】
実施例10:IL6およびOSMを補足した培地はアルギン酸懸濁液培養における2型コラーゲンおよびアグリカンを再発現する軟骨細胞の能力を維持する
]初代ヒト軟骨細胞を実施例9に記載のごとく準備した。DMEM+10%FBSまたはE93で増殖した細胞をアルギン酸培養のために第3代の継代で採取した。アルギン酸培養は細胞1×10個を1.2%アルギン酸溶液に播種することによって行なった。アルギン酸培養は、3−5日ごとに、EGHIC(DMEM、20ng/mL rhIGF−1、25μg/mLアスコルビン酸、および1mMピルビン酸ナトリウム)が供給された。培養21日後、軟骨細胞をアルギン酸ビーズから抽出し、I型コラーゲン、II型コラーゲンおよびアグリカンのmRNAをリボヌクレアーゼ・プロテクション・アッセイ(RPA)を用いて検出した。このアッセイにおいて、II型コラーゲンはゲル上310塩基対(bp)バンドとして検出され、I型コラーゲンは260bpバンド、およびアグリカンは210bpバンドであった。図3はE93(2、3および4レーン)またはII型コラーゲンおよびアグリカンのmRNAを含む10%血清を補足したDMEM(5、6および7レーン)で増殖した細胞由来の細胞溶解物の量の増加を示す。これは、E93培地で増殖したヒト軟骨細胞がこれらの重要な軟骨マーカーを再発現させる能力があることを示す。
【実施例11】
【0114】
実施例11:IL6およびOSMを補足した培地で増殖した軟骨細胞の核型および老化
たとえば、細胞がヒトの治療に用いられる場合、細胞が通常の核型を維持し、培養中老化に入ることは重要であるかもしれない。E93で増殖した軟骨細胞は少なくとも第10代継代を通して通常の核型を示し、およそ30集団倍加の後老化した。
【0115】
実施例12:低濃度のサイトカインは軟骨細胞の増殖を刺激する
初代ヒト軟骨細胞は関節軟骨の生検から単離され、その試料を細分し、0.25% XIV型プロテアーゼ(ストレプトマイセス・グリセウス)を用いて1時間酵素的消化を行い、その後0.1%コラゲナーゼで、37℃にて一晩酵素的消化を行なった。細胞を5分間、1,000×gで遠心分離して回収し、適切な試験培地に再懸濁した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞を3,000細胞/cmの密度で播種した。無血清培地で増殖した細胞を5,000細胞/cmの密度で播種した。すべての実験でT75フラスコを使用した。以下の培地を試験した:
1)DMEM+10%FBS
2)実施例7に記載のE93培地
3)0.5ng/ml IL−6および0.25ng/ml OSMを補足したE93培地
4)0.1ng/nl IL6および0.05ng/ml OSMを補足したE93培地。
【0116】
50%ないし80%のコンフルエントに達してから細胞を継代した。DMEM+10%FBSで増殖した細胞をPBSですすぎ、EDTA中325ユニット/ml トリプシンに曝して採取し、数を計測して、再播種した。E93培地で増殖した細胞をPBSですすぎ、0.5mM EDTA中0.00025% Trypzean(登録商標)(0.1×組換えトリプシン;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)に曝して採取し、数を計測して、再播種した。1日あたりの集団倍加率として表される増殖率は各継代の終わりに算出された(表22)。これらの結果は、E93における低濃度IL−6およびOSMが初代ヒト軟骨細胞の増殖を支持することを示す。
【0117】
【表22】

【0118】
本明細書中に引用されるすべての参考文献は、その全体における参考文献によって組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋なオンコスタチンM(OSM)が補足された基礎培地を含む培養培地。
【請求項2】
基礎培地に実質的に純粋なインターロイキン6(IL−6)が追加的に補足された、請求項1に記載の培養培地。
【請求項3】
基礎培地に実質的に純粋な白血病抑制因子(LIF)が追加的に補足された、請求項1に記載の培養培地。
【請求項4】
基礎培地に実質的に純粋なIL−6および実質的に純粋なLIFが追加的に補足された、請求項1に記載の培養培地。
【請求項5】
基礎培地がcDRFである、請求項1に記載の培養培地。
【請求項6】
基礎培地に実質的に純粋な血小板−由来成長因子(PDGF)が追加的に補足された、請求項1に記載の培養培地。
【請求項7】
培養培地にステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸、コレステロール、およびアルファ−トコフェロール酢酸からなる群より選択される1つまたは複数の脂質が追加的に補足された、請求項1に記載の培養培地。
【請求項8】
基礎培地がcDRFであり、PDGFおよび化学的に定義された脂質混合物(CDLM)が追加的に補足された、請求項1に記載の培養培地。
【請求項9】
基礎培地がcDRFmであり、PDGFおよびCDLMが追加的に補足された、請求項1に記載の培養培地。
【請求項10】
基礎培地がcDRFmであり、PDGFおよびCDLMが追加的に補足された、請求項2に記載の培養培地。
【請求項11】
基礎培地に実質的に純粋なjagged1(JAG1)および/または実質的に純粋なインターロイキン−13(IL−13)が補足されていない、請求項1に記載の培養培地。
【請求項12】
培養培地中、OSMが0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項1に記載の培養培地。
【請求項13】
培養培地中、OSMおよびIL−6のそれぞれが、0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項2に記載の培養培地。
【請求項14】
培養培地中、OSMおよびLIFのそれぞれが、0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項3に記載の培養培地。
【請求項15】
培養培地中、OSM、IL−6、およびLIFが、0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項4に記載の培養培地。
【請求項16】
培養培地が無血清である、請求項1に記載の培養培地。
【請求項17】
培養培地が血清をさらに含む、請求項1に記載の培養培地。
【請求項18】
(a)cDRFm;
(b)0.1−100ng/ml PDGF;
(c)0.05−5% CDLM;
(d)0.01−10ng/ml OSM;および
(e)0.01−10ng/ml IL−6
を含む培養培地。
【請求項19】
実質的に純粋なOSMが補足された基礎培地を含む培養培地とともに細胞をインキュベートする工程を含む、細胞培養の方法。
【請求項20】
基礎培地に実質的に純粋なIL−6が追加的に補足されている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
基礎培地に実質的に純粋なLIFが追加的に補足されている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
基礎培地に実質的に純粋なIL−6および実質的に純粋なLIFが追加的に補足されている、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
基礎培地がcDRFである請求項19に記載の方法。
【請求項24】
基礎培地に実質的に純粋なPDGFが追加的に補足されている、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
基礎培地にステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸、コレステロール、およびアルファ−トコフェロール酢酸からなる群より選択される1つまたは複数の脂質が追加的に補足されている、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
基礎培地がcDRFであり、PDGFおよびCDLMが追加的に補足されている、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
基礎培地がcDRFmであり、PDGFおよびCDLMが追加的に補足されている、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
基礎培地がcDRFmであり、PDGFおよびCDLMが追加的に補足されている、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
培養培地が実質的に純粋なJAG1および/または実質的に純粋なIL−13で補足されていない、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
OSMが培養培地中0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
培養培地中、OSMおよびIL−6がそれぞれ0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
培養培地中、OSMおよびLIFがそれぞれ0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
培養培地中、OSM、IL−6、およびLIFがそれぞれ0.01ng/mlから10ng/mlまでの濃度で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
培養培地が無血清である、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
培養培地が血清をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
細胞が軟骨細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
軟骨細胞が脱分化される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
軟骨細胞が間葉系肝細胞に由来する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
軟骨細胞がヒト軟骨細胞である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
軟骨細胞がヒト関節軟骨細胞である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
軟骨細胞が初代である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
細胞を継代する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項43】
キレート剤を含む溶液で細胞をインキュベートすることによって細胞が継代される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
キレート剤がEDTAである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
EDTAが0.1mMから1mMまでの濃度で溶液中に存在する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
325ユニット/ml以下のトリプシンを含む溶液で細胞をインキュベートすることによって細胞が継代される、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
溶液が0.1mMから1mMまでのEDTAを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
細胞が20,000個/cm以下の密度で播種される、請求項19に記載の方法。
【請求項49】
軟骨細胞を培養する方法であって、該軟骨細胞を培養培地でインキュベートする工程を含み、該培養培地が、
(a)cDRFm;
(b)0.1−100ng/ml PDGF;
(c)0.05−5%CDLM;
(d)0.01−10ng/ml OSM;および
(e)0.01−10ng/ml IL−6:
を含む、培養方法。
【請求項50】
請求項1に記載の培養培地を用いて培養される軟骨細胞。
【請求項51】
請求項19に記載の方法を用いて培養される軟骨細胞。
【請求項52】
請求項49に記載の方法を用いて培養される軟骨細胞。
【請求項53】
対象における軟骨欠損を治療する方法であって、その方法が、
(a)請求項1に記載の方法を用いて軟骨細胞を培養すること;および
(b)対象に軟骨細胞を投与すること:
を含む治療方法。
【請求項54】
対象における軟骨欠損を治療する方法であって、その方法が、
(a)請求項19に記載の方法を用いて軟骨細胞を培養すること;および
(b)対象に軟骨細胞を投与すること:
を含む治療方法。
【請求項55】
対象における軟骨欠損を治療する方法であって、その方法が、
(a)請求項49に記載の方法を用いて軟骨細胞を培養すること;および
(b)対象に軟骨細胞を投与すること:
を含む治療方法。
【請求項56】
軟骨細胞および請求項1に記載の培養培地を含む組成物。
【請求項57】
軟骨細胞および
(a)cDRFm;
(b)0.1−100ng/ml PDGF;
(c)0.05−5%CDLM;
(d)0.01−10ng/ml OSM;および
(e)0.01−10ng/ml IL−6
を含む培養培地を含む組成物。
【請求項58】
培養培地であって、
(a)実質的に純粋なPDGFおよびCDLMのいずれか一方または両方;および
(b)実質的に純粋なOSM、実質的に純粋なIL−6、および実質的に純粋なLIFのいずれか一つまたは複数:
が補足された基礎培地を含む、培養培地。
【請求項59】
基礎培地がcDRFである、請求項58に記載の培養培地。
【請求項60】
基礎培地がcDRFmである、請求項58に記載の培養培地。
【請求項61】
基礎培地が実質的に純粋なPDGFおよびCDLMで補足された、請求項58に記載の培養培地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−540826(P2009−540826A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516524(P2009−516524)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/014075
【国際公開番号】WO2007/149328
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】