説明

軟骨細胞治療薬配給システム

【課題】 軟骨細胞を用いて種々の治療薬を生成するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】 上記の遺伝的に工学処理されている軟骨細胞は軟骨細胞に一般的に関連している一定の環境の中、および軟骨細胞に一般的に関連していない一定の環境の中において一定の被験体内において上記の治療薬を発現するために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の治療薬または治療因子を配給するために軟骨細胞を使用する種々の疾患または病気の治療または回復に関連している。
【背景技術】
【0002】
軟骨細胞は一般的に軟骨の修復に関連している。この軟骨は3種類の主な様相で体内において見られる一定の構造的な支持組織である。ヒアリンまたは関節軟骨は種々の関節内における負荷を消散するために役立つ。このような関節軟骨において、その軟骨細胞はII型コラーゲンおよび種々のプロテオグリカンの一定の織り状またはメッシュ状の基質の中に包まれている。弾性の軟骨は外部の種々の構造に対して柔軟な支持を与えて、コラーゲンおよび弾性線維の一定の基質の中に埋め込まれている軟骨細胞により構成されている。線維軟骨は種々の腱および骨の間における負荷の伝達を補助する。この線維軟骨はII型コラーゲンの線維を形成している軟骨細胞の一定の内側の層を支持しているコラーゲンおよび線維芽細胞の一定の外側の層により構成されている。
【0003】
現在までに、種々の軟骨細胞が軟骨の欠損または欠陥を矯正または修復するために用いられている。例えば、種々の軟骨細胞を種々のヒドロゲルの中に入れてこれらの軟骨細胞を一定の軟骨の欠損している領域に注入することにより、これらの軟骨細胞が軟骨の修復のために必要とされている種々の基質タンパク質を発現するために用いられている。種々の軟骨細胞が、軟骨または骨の欠損部分の治療または修復のために、ヒドロゲル等のような種々の基質の中において培養されて配置されているが、これらの軟骨細胞が軟骨組織以外の種々の病理学的状況または傷害の治療のための種々の治療薬または治療因子を発現するために使用できると言う教示は当該技術分野において全く存在していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、体内の種々の組織または器官に対して、特に、通常的に軟骨細胞に関連していない一定の環境に対して種々の治療薬を配給するために種々の軟骨細胞を使用するための一定の必要性が存在している。また、一定の標的の領域または環境の中に種々の治療薬を局所的に発現して放出することのできる遺伝的に変性されている種々の軟骨細胞を含む一定の移植片を使用するための一定の必要性も存在している。また、種々の治療薬または治療因子のための一定の大規模な製造用の供給源として種々の軟骨細胞を使用するためのさらに別の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は種々の治療薬を発現するためのビヒクルとして遺伝的に変性されている種々の軟骨細胞を使用するための方法および組成物を提供している。本発明の方法は特に一般的に軟骨細胞に関連していない局在化した種々の環境の中において治療薬を発現するための種々の軟骨細胞の使用に関連している。具体的に言えば、上記の遺伝的に変性されている軟骨細胞は中枢神経系(例えば、脳または脊髄)等のような種々の局在化した環境の中に、あるいは、種々の充実性の器官(例えば、心臓、肝臓または腎臓)の中に、種々のタンパク質または抗体等のような、治療薬を発現するために使用できる。この種の治療薬の局在化した配給および発現はその治療薬の全身系的な投与により生じる必然的な副作用を伴わずに特定の領域内における一定の局在化した治療薬の集中を生じる。また、上記の遺伝的に変性されている軟骨細胞は、生物学的な種々のゲル(例えば、ヒドロゲル)等のような、適当な基質物質を用いて上記のような種々の環境の中に導入できる。
【0006】
軟骨細胞は他の細胞型に優る種々の治療薬を発現するためのビヒクルとして幾つかの特異的な利点を提供する。例えば、軟骨細胞は脈管の支援を必要とせず、それゆえ、一定の減少された、非存在性の脈管系を有する種々の環境の中において容易に使用できる。さらに、軟骨細胞は虚血性の組織ならびに低pH値および低酸素の環境を含む重症の生体内の種々の環境を生き伸ばすことができる。加えて、正常な軟骨細胞の抗脈管形成性により悪性の可能性が少ない。また、軟骨細胞は同時に移植される同種異系のまたは外因性の組織の免疫拒絶を減少する一定の免疫学的に寛容な特性も有している。さらに、軟骨細胞は他の正常な形質転換していない細胞株に比べて比較的に容易に定量できる。
【0007】
上記の遺伝的に変性された軟骨細胞は治療薬による変性または改質を必要としている一定の環境の中にその治療薬を配給して発現するために使用できる。一例の実施形態において、これらの遺伝的に変性された軟骨細胞は軟骨、腱、関節、および骨等の種々の軟骨細胞に関連する一定の環境の中に一定の治療薬を発現するために使用できる。遺伝工学的に処理されている種々の軟骨細胞を軟骨細胞に関連する種々の環境の中に種々の治療薬を発現するために使用する場合に、これらはその治療薬を発現すると言う目的のために用いられて、その環境の構造的な要素の一部にはならず、これらは一定の損傷した軟骨、腱、関節、または骨を修復または置換するための一定の組織工学的に処理されている構造の一部として用いられない。別の実施形態において、上記の遺伝的に変性された軟骨細胞は一定の異所性の部位、すなわち、脳または種々の充実性の器官(例えば、心臓、腎臓、肝臓)等のような軟骨細胞に一般的に関連していない一定の環境の中において一定の治療薬を生成するために使用されている。さらに、別の非典型的な軟骨細胞性の環境は血液、および血漿等のような一定の水性の環境を含む。
【0008】
上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は天然または合成の材料により作成されている一定のゲル基質物質または別の支持骨格基質等のような一定の生体適合性の基質と共に混合できる。さらに、このような遺伝的に変性した軟骨細胞−ゲルの基質物質または軟骨細胞−支持骨格の基質は一定の標的領域に対して注入できる。あるいは、この遺伝的に変性した軟骨細胞−ゲルの基質物質または軟骨細胞−支持骨格の基質は一定の標的領域に対して移植する前に調製して一定の異所性の部位の中に外科的に移植することも可能である。これらの遺伝的に変性した軟骨細胞は一定の治療薬を発現することにより疾患に関連する細胞を変性して多数の疾患を治療または改善するために使用できる。一定の疾患に関連する細胞は一定の血液障害、心臓血管障害、内分泌性障害、自己免疫性障害、神経学的障害、皮膚障害、骨障害(骨粗しょう症)、受胎能障害、代謝障害または癌等のような無調整状態の増殖障害等の種々の障害に関連している。別の実施形態において、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は、例えば、出産の調整および生殖のための種々のホルモン等のような一定の治療薬を発現するために、一定の疾患に関連する種々の状況に対処するために使用することもできる。
【0009】
従って、一例の態様において、本発明は一定の治療薬を発現するために使用する一定の遺伝的に変性した軟骨細胞に関連している。この遺伝的に変性した軟骨細胞は一定の疾患に関連する一定の細胞に対して配給されて、その細胞の周囲の一定の環境を改質するために一定の治療薬を発現する。しかしながら、この遺伝的に変性した軟骨細胞は上記の細胞の周囲の環境に対して構造的に機能しない。
【0010】
一例の実施形態において、一定の疾患に関連する細胞は脳、心臓、肝臓、腎臓、胃腸管、脾臓、平滑筋、骨格筋、目、神経節、肺、性腺、および膵臓から成る群から選択される一定の器官等のような一定の非典型的な軟骨細胞性の環境の中における一定の細胞とすることができる。種々の器官に対して、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞はその器官の1個以上の領域に対して配給できる。さらに、上記の非典型的な軟骨細胞性の環境は血液、血漿、目の硝子体液、脊髄液等から成る群から選択される一定の水性の環境とすることもできる。すなわち、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は脾臓、骨髄、一定の神経節、腹膜腔または任意の他の血液または血漿中に放出するために十分に血管化されている組織に対して配給できる。別の実施形態において、上記の一定の疾患に関連する細胞は一定の骨、腱および軟骨等のような一定の典型的な軟骨細胞性の環境の中に存在している。
【0011】
上記の遺伝的に変性した軟骨細胞はそれ自体で、あるいは、一定の生体適合性の基質との混合物として配給できる。この生体適合性で生体吸収性の基質は一定の実質的に固体の高分子材料とすることができ、あるいは、一定のゲル基質の形態にすることも可能である。一定の好ましい実施形態において、上記生体適合性の基質はゲル基質物質である。
【0012】
上記の一定の疾患に関連する細胞は一定の血管障害に関連する細胞、一定の心臓血管障害に関連する細胞、一定の内分泌性障害に関連する細胞、一定の自己免疫障害に関連する細胞、一定の神経学的障害に関連する細胞、一定の皮膚障害に関連する細胞、受胎能障害に関連する細胞、および生殖に関連する細胞から成る群から選択される一定の細胞とすることができる。
【0013】
上記の遺伝的に変性した軟骨細胞はまたその遺伝的に変性した軟骨細胞を少なくとも1個の標的領域に(例えば、異所的に)配給することにより一定の疾患に関連する一定の標的領域内において一定の治療薬を発現するために使用できる。この標的領域内において発現される治療薬はその標的領域のみを改質することも可能である(例えば、一定の膝関節等の一定の標的領域に局在化して供給する)。あるいは、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は一定の標的領域内において一定の治療薬を発現するために使用できるが、この治療薬はその標的領域の周囲の環境を改質できる(例えば、膵臓内においてインスリンを発現する種々の軟骨細胞を使用し、この場合に、その発現されるインスリンは全身系的な血液グルコースの濃度に影響を及ぼす)。
【0014】
従って、別の態様において、本発明は一定の疾患に関連する一定の標的領域内において一定の治療薬を発現するために用いられる一定の遺伝的に変性した軟骨細胞に関連しており、この場合に、その遺伝的に変性した軟骨細胞はその標的領域に配給されてその標的領域または当該標的領域の周囲の一定の環境を改質するために一定の治療薬を発現し、この場合に、その遺伝的に変性した軟骨細胞はその標的領域または当該標的領域の周囲の環境内において構造的に機能しない。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は一定の疾患に関連する細胞に対して一定の遺伝的に変性した軟骨細胞を配給することにより、一定の遺伝的に変性した軟骨細胞を用いて一定の疾患に関連する細胞の一定の環境を改質するための方法に関連しており、この場合に、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は一定の治療薬を発現するために変性されており、この場合に、その遺伝的に変性した軟骨細胞は上記細胞の周囲の環境内において構造的に機能しない。その後、上記治療薬は上記細胞の周囲の環境を改質するために十分な一定の量で発現される。この環境は上記の遺伝的に変性した軟骨細胞が上記治療薬を発現することのみのために使用されると言う条件下における一定の軟骨細胞に関連する環境とすることができる。すなわち、この遺伝的に変性した軟骨細胞は上記の環境の構造内において構造的に機能しない。一定の好ましい実施形態において、上記の環境は脳、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、目、腹膜腔、胃腸管、またはこれらの種々の領域等のような軟骨細胞性の非典型的な環境である。さらに別の実施形態において、本発明は一定の遺伝的に変性した軟骨細胞を含む一定の生体適合性の基質を一定の被験体の標的領域内に移植することにより、一定の遺伝的に変性した軟骨細胞を用いて一定の被験体内における一定の疾患を改善するための方法に関連しており、この場合に、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は一定の治療薬を発現するために変性されており、この場合に、その遺伝的に変性した軟骨細胞は上記標的領域または当該標的領域の周囲の環境内において構造的に機能しない。その後、上記治療薬は上記疾患を改善するために十分な一定の量で上記標的領域内において発現される。
【0016】
上記の移植される生体適合性の基質は、一定のアルギネート、多糖類、およびアガロース等のような、一定のゲル基質物質とすることができる。このような遺伝的に変性した軟骨細胞−ゲルの基質物質は一定の標的領域に対して注入できる。あるいは、この遺伝的に変性した軟骨細胞−ゲルの基質物質は一定の標的領域に対して移植する前に凝固できる。この軟骨細胞−ゲルの基質物質が移植の前に凝固可能である場合に、その移植される基質物質の寸法は上記治療薬を発現するために利用可能なゲル基質物質の中における軟骨細胞の濃度を決定する。このゲル基質物質の中における軟骨細胞の濃度は約0.1乃至10mlの範囲内の一定容積を有するゲル基質の1ml当たりに約10,000個乃至数億個の細胞の範囲内である。好ましくは、この軟骨細胞の濃度は基質の1ml当たりに100,000個乃至約百万個の細胞である。また、好ましくは、上記ゲル基質物質の容積は1ミリリットルよりも少ない。なお、特定の病理学的状況を治療するために必要な用量が一定の許容可能な容積に対応する上記細胞の濃度を変更するか、移植する軟骨細胞−ゲルの量を変更することにより容易に最適化できるようになることが理解されると考える。また、上記の改善される傷害は一定の傷、骨の欠損、軟骨の欠損、皮膚の傷、および断裂した靭帯とすることができる。さらに、上記の改善される疾患は一定の血液障害、自己免疫傷害、ホルモン性障害、抗炎症性障害、受胎能障害、および神経変性障害とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
従って、本発明によれば、体内の種々の組織または器官に対して、特に、通常的に軟骨細胞に関連していない一定の環境に対して種々の治療薬を配給するために使用する種々の軟骨細胞が提供できる。また、一定の標的の領域または環境の中に種々の治療薬を局所的に発現して放出することのできる遺伝的に変性されている種々の軟骨細胞を含む一定の移植片を使用する方法が提供できる。また、種々の治療薬のための一定の大規模な製造用の供給源として使用するための種々の軟骨細胞が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施は、特別に示されていない限りにおいて、当該技術分野における熟練者の認識の範囲内におけるウイルス学、微生物学、分子生物学および組換えDNAの種々の技法の従来的な方法を採用している。これらの技法は以下の文献において完全に説明されており(例えば、サムブルック(Sambrook)他、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning):ア・ラボラトリー・マニュアル(A Laboratory Manual)(現在版)、DNAクローニング(DNA Cloning):ア・プラクティカル・アプローチ(A Practical Approach)、第I巻および第II巻(D.グローバー(D. Glover)編集)、オリゴヌクレオチド・シンセシス(Oligonucleotide Synthesis)(N.ゲイト(N. Gait)編集、現在版)、ヌクレイック・アシッド・ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)(B.ハムズおよびS.ヒギンス(B. Hames & S. Higgins)編集、現在版)、トランスクリプション・アンド・トランスレーション(Transcription and Translation)(B.ハムズおよびS.ヒギンス(B. Hames & S. Higgins)編集、現在版)、CRCハンドブック・オブ・パーボウイルスイズ(CRC Handbook of Parvoviruses)、第I巻および第II巻(P.ティジェッセン(P. Tijessen)編集)、ファンダメンタル・ビロロジー(Fundamental Virology)、第2版、第I巻および第II巻(B.N.フィールズ(B. N. Fields)およびD.M.ナイプ(D. M. Knipe)編集)を参照されたい)。
【0019】
本発明をさらに容易に理解するために、特定の用語が先ず定められている。
【0020】
用語の「軟骨細胞(chondrocyte)」は、本明細書において用いられているように、軟骨の形成および修復に関連している一定の細胞型に対応する用語の当該技術分野において認識されている使用を意味する。この軟骨細胞は種々のプロテオグリカンおよびコラーゲンの細胞外基質を生成するように機能する。さらに、軟骨芽細胞および間葉幹細胞等のような軟骨細胞の前駆体細胞もこの用語の「軟骨細胞」の使用において含まれている。
【0021】
用語の「遺伝的に変性されている軟骨細胞(genetically altered chondrocyte)」は、本明細書において用いられているように、その細胞内に一定の治療薬または治療因子をコード化する一定の異種または異形の核酸を導入する一定の様式で、標準的な分子生物学的技法を用いて操作されている一定の軟骨細胞を意味する。
【0022】
用語の「核酸(nucleic acid)」は、本明細書において用いられているように、一定のDNAまたはRNAのシーケンスを意味する。さらに、この用語は4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイド−ウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリンを含むがこれらに限定されない既知のDNAおよびRNAの塩基類似体の任意のものを含む種々のシーケンスを表現している。
【0023】
用語の「治療薬または治療因子(therapeutic agent)」は、本明細書において用いられているように、一定の望まれる治療効果を生じる一定の化合物を意味する。この治療薬は一定のタンパク質、一定の抗体の作用薬(アゴニスト)または拮抗質(アンタゴニスト)、抗原、ホルモン、抗炎症薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、増殖因子、サイトカイン、ホルモン、オンコジーン、腫瘍抑制因子、膜内外レセプタ、タンパク質レセプタ、血清タンパク質、接着分子、神経伝達物質、形態発生タンパク質、分化因子、酵素、基質タンパク質、および細胞外基質タンパク質、iRNA、RNA、またはこれらのフラグメントおよび種々のペプチドから成る群から選択できる。一定の好ましい実施形態において、上記治療薬はエリスロポイエチン(EPO)タンパク質等のようなタンパク質である。さらに、適当なタンパク質の別の例はインスリン・タンパク質、プロ−インスリン・タンパク質、レミケード(Remicade)、骨形態発生タンパク質(BMPs)、トランスホーミング増殖因子−ベータ(TGF−ベータ)、血小板由来増殖因子(PDGF)、軟骨由来形態発生タンパク質(CDMP)、およびMP−52を含むがこれらに限定されない。
【0024】
別の実施形態において、上記治療薬は一定の抗体、抗体のフラグメント、または擬似体(mimetibody)である。一定の有用な擬似体の例はEPO擬似体、レミケード擬似体、BMP擬似体、軟骨由来形態発生タンパク質(CDMP)擬似体およびMP−52を含むがこれらに限定されない。一定の好ましい実施形態において、上記抗体はEPO擬似体である。
【0025】
さらに別の実施形態において、上記治療薬は一定の増殖因子である。好ましい増殖因子は表皮増殖因子、骨形態発生タンパク質、脈管内皮由来増殖因子、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、造血増殖因子、ヘパリン結合増殖因子、ペプチド増殖因子、および塩基性および酸性の線維芽細胞増殖因子を含むがこれらに限定されない。また、一部の実施形態において、神経増殖因子(NGF)または筋肉形態発生因子(MMP)、種々のBMP、CDMP、およびMP−52を含むTGF−ベータ上科等のような因子に対応する遺伝子を組み込むことが望ましいと考えられる。さらに別の実施形態において、上記治療薬は一定のレセプタである。これらのレセプタの例はEPOレセプタ、B細胞レセプタ、ファス(Fas)レセプタ、IL−2レセプタ、T細胞レセプタ、EGFレセプタ、ダブリュー・エヌ・ティー(Wnt)、インスリン・レセプタ、TNFレセプタを含むがこれらに限定されない。
【0026】
上記用語の「変性または改質する(modifies)」または「変性または改質された(modified)」「変性または改質している(modifying)」または「変性または改質(modification)は本明細書において交換可能に用いられており、一定の疾患に関連する一定の細胞、または一定の標的領域における上記治療薬のアップ−レギュレーションまたはダウン−レギュレーションを意味する。例えば、上記の遺伝的に変性されている軟骨細胞はEPOが一定の標的の部位または領域に到達することを可能にするために一定の脈管の供給を伴ってその遺伝的に変性されている軟骨細胞を肝臓または腎臓、または任意の組織または器官に配給することにより、例えば、EPOタンパク質等のような、一定の血液障害に関連する一定の治療薬を発現するために使用できる。このようなEPOタンパク質が発現されると、このタンパク質は循環系の中に入り、EPOレセプタ(EPOR)に結合してその機能を変化することができる。このことはさらに、例えば、上記のEPOレセプタに関連する信号の形質導入カスケードを改質することにより、そのEPOレセプタに関連する環境において一定の変化を生じる。従って、上記用語の「変性または改質する」または「変性または改質された」は上記治療薬(例えば、EPO)に関連する種々の過程または信号の形質導入カスケード、あるいは上記治療薬(例えば、EPOR)に関連する一定のタンパク質の増加、減少、上昇または低下も意味する。
【0027】
上記細胞の変性または改質は、例えば、一定の標的領域内におけるEPOの過剰発現により直接的に発生する可能性がある。あるいは、一定の細胞の変性または改質が、例えば、一定のEPORに関連する下流側の信号形質導入カスケードにおいて一定の変化を引き起こすEPORに対して相互作用する過剰発現したEPOにより間接的に発生する可能性がある。このような変性または改質の非限定的な例は細胞増殖応答、細胞分化、形態発生的および機能的な種々の過程の改質、例えば、一定のホルモン、増殖因子等のような、一定の細胞による一種類以上の物質の不十分なまたは過剰の生成、一定の細胞が通常的に生成する1種類以上の物質をその細胞が生成することにおける能力不全、例えば、種々の神経伝達物質等の種々の物質の生成、および/または種々の電気的なインパルスの伝達を含む。
【0028】
上記の用語はまた一定の細胞、標的領域、または当該細胞または標的領域の周囲の環境における上記の発現された治療薬の効果を説明するために使用されている。この治療薬は一定の細胞、標的領域、または当該細胞または標的領域の周囲の環境を変化することにより一定の望まれる治療効果を生じるために十分な一定の量で発現される。例えば、一定の標的領域(例えば、肝臓)内におけるEPOの発現は増加した量のEPOを生成し、これらのEPOは血液のヘマトクリット値およびヘモグロビンの量を変化する。
【0029】
上記語句の「一定の非典型的な軟骨細胞性の環境(an atypical chondrocyte environment)」、「一定の非軟骨細胞性の典型的な環境(a non-chondrocyte typical environment)」、「通常的に軟骨細胞に関連していない一定の環境(an environment not usually associated with chondrocytes)」、および一定の異所性の部位(an ectopic site)は本明細書において交換可能に用いられており、軟骨細胞が存在していない一定の環境を意味する。このような通常的に軟骨細胞に関連していない一定の環境の例は中枢神経系(CNS)を含む。この脳および脊髄を含むCNSは一般に免疫学的に寛容な状態であると考えられている。さらに、通常的に軟骨細胞に関連していない環境の別の例は種々の充実性の器官を含む。このような充実性の器官の例は心臓、腎臓、肝臓および膵臓を含むがこれらに限定されない。さらに、通常的に軟骨細胞に関連していない環境の別の例は種々の生殖器官である。男性において、このような軟骨細胞に関連していない生殖器官は、例えば、精巣、精管等である。女性においては、このような軟骨細胞に関連していない生殖器官は、例えば、子宮、ファローピウス管、卵巣等である。さらに、軟骨細胞に関連していない環境の別の例は皮膚、皮下嚢、筋肉内および腹膜内の腔を含む。
【0030】
上記用語の「生体適合性の基質(biocompatible substrate)」または「生体適合性の基質物質(biocompatible matrix)」は本明細書において交換可能に用いられており、内部または上部に一定の細胞母集団(例えば、一定の軟骨細胞の母集団)が付着できる一定の物質を意味する。この物質は一定の被験体内における移植に適しており、その被験体内における移植後に毒性または傷害性の作用を引き起こさない。
【0031】
上記用語の「被験体(subject)」は、本明細書において用いられているように、一定の免疫応答を示すことのできるあらゆる生活している生体を意味する。この用語の被験体は人間、チンパンジーおよびその他の類人猿およびサルの種等のような人間以外の霊長類、蓄牛、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ等のような家畜動物、イヌおよびネコ等のような飼育動物、マウス等のような齧歯動物、ラットおよびギニア・ブタを含む実験動物等を含むがこれらに限定されない。また、この用語は特定の年齢または生物を表示していない。従って、成熟または成人のおよび新生の被験体、ならびに胎児、男性またはオスあるいは女性またはメスのいずれも含まれるように考慮されている。
【0032】
用語の「ベクター(vector)」は、本明細書において用いられているように、一定のプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオン等のような任意の遺伝要素を意味し、この遺伝要素は適当な種々の調整要素を伴う場合に複製が可能であり、細胞間において種々の遺伝子シーケンスを伝達できる。従って、この用語はクローニングおよび発現の種々のビヒクルならびにウイルス・ベクターを含む。
【0033】
上記用語の「トランスフェクション(transfection)」は、本明細書において用いられているように、一定の細胞による外部のDNAの取り込みを意味する。一定の細胞は外因性のDNAがその細胞膜の内側に導入されている時に「トランスフェクションされている(transfected)」と言う。このような技法は適当な種々の宿主細胞に、一定のヌクレオチド取り込みベクターおよびその他の種々の核酸分子等のような、1種類以上の外因性のDNA部分を導入するために使用できる。また、この用語は化学的、電気的、およびウイルス媒介型の種々のトランスフェクション処置を表現している。
【0034】
本発明の種々の態様が以下の各小区分においてさらに詳細に説明されている。
【0035】
I.一定の軟骨細胞母集団の培養および遺伝的変性
本発明の一例の態様は遺伝的に変性した軟骨細胞が一定の治療薬を発現するように種々の軟骨細胞を培養して遺伝的に変性することに関連している。一例の実施形態において、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は脳、または充実性の種々の器官(例えば、心臓、腎臓、肝臓)等のような軟骨細胞に一般的に関連していない一定の環境内において一定の治療薬を生じるために用いられている。また、別の実施形態において、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は軟骨、腱、関節、および骨等のような軟骨細胞に関連している一定の環境内において一定の治療薬を発現するために用いられている。このような場合に、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞はその治療薬を製造および発現するためにもっぱら用いられており、一定の損傷した軟骨、腱、関節、または骨を置換または交換するために用いられる一定の組織工学処理した構造の成分として用いられていない。
【0036】
遺伝的に変性した軟骨細胞を用いる多数の理由が存在している。始めに、種々の軟骨は一定の低いpH値、または低い酸素の圧力を伴う環境等のような極めて厳しい状況の中において生き残る能力を有している。これにより、この遺伝的に変性した軟骨細胞の母集団は一定の移植後の、特に発作損傷型の組織等のような病気のまたは傷害を受けた種々の組織の中に導入される場合に、生存の利点を有する。
【0037】
さらに、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は生存のための脈管の支援を全く必要としない。このことは、軟骨細胞が一定のゲル基質等のような生存性の被包処置、ならびに移植処置において一定の比較的に良好な可能性を有していると言う点において重要である。これまでに、細胞を含有している種々のカプセルの大きさおよび形状は大部分の細胞が生存のために脈管分布域に近接していることに依存しているために制限されていた。すなわち、過度に大きな一定の様式内において、または大形のカプセルの中に被包されている細胞はその移植片の中心における細胞が適当な気体および栄養素の交換を有することができなくなると考えられるのでその生存可能性を損なうと考えられる。
【0038】
加えて、種々の軟骨細胞は一定の均一な表現型を有している。種々の細胞が単離される組織は大抵の場合に軟骨細胞を含み、この組織は脈管内皮細胞、間質細胞または軟骨組織を形成する任意の他の細胞を含まない。また、軟骨組織の物理的な外観はその周囲の組織とは極めて異なっていて、切開を極めて容易にしている。これらの特徴は純粋な母集団の正常な軟骨細胞の容易な単離を可能にしている。その後、この単離された軟骨細胞が組織培養に用いられると、これらは線維芽細胞の細胞系と同様に作用する。このような線維芽細胞様の増殖は可逆的であり、これらの細胞はアガロースまたはアルギネートのゲル懸濁液中等のような固定非依存性の状況に置かれる時に種々の軟骨細胞に再分化するように容易に誘導できる。それゆえ、高度に代謝性であることが知られていて、癌性の変異の傾向を結果として伴う、不朽化および形質転換した細胞系は必要とされない。
【0039】
軟骨細胞は一般的に種々の固定非依存性の状況に置かれる場合に一定の広範囲な細胞外基質を分泌する。この基質は血液の供給による直接的な細胞間の接触によりそれぞれの細胞を保護することにより、免疫拒絶を遅らせるか防ぐと考えられている。このことはさらに別の生存性の利点を提供して、一定の同種異系または異種の移植片の手法を可能にすると考えられる。これらの同種異系および異種の細胞はまた一時的であり、それゆえ、一定の永久的な組織移植片よりも一定の装置に対する概念に近い手段として見ることができるので一定の比較的に単純な調節経路を有すると考えられる。
【0040】
さらに、上記の軟骨細胞が固定非依存性の培養において懸濁液中に置かれる場合に、これらは拒絶に対して保護を行なう細胞外基質の分泌をその細胞の水準において生じるので一定の組織化した組織を形成することを必要としない。大規模な軟骨細胞含有性のゲルの調製を行なうことが可能であり、その治療薬の用量は移植片の全体の作用に影響を及ぼすことなく移植されるゲルの量または大きさを変更することにより調節可能になる。換言すれば、一定の小形および大形の移植片は細胞の生物学的な機能に影響を及ぼすことなく被包される細胞の数においてのみ異なる。
【0041】
上記の軟骨細胞は種々の供給源から単離できる。例えば、胎芽軟骨細胞は胸骨(レボイ(Leboy)他、(1989年)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、264巻、p.17281−17286、サリバン(Sullivan)他、(1994年)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、269巻、p.22500−22506、およびボーメ(Bohme)他、(1995年)、エクスペリメンタル・セル・リサーチ(Exp. Cell. Res.)、216巻、p.191−198)から単離することができ、さらに、椎骨(ライアン(Lian)他、(1993年)、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(J. Cellular Biochem.)、52巻、p.206−219)、微量培養における肢芽間葉細胞(ローク(Roark)他、(1994年)、ディベロプメント・オブ・ダイナミクス(Develop. Dynam.)、200巻、p.103−116、およびダウニー(Downie)他、(1994年)、ディベロプメント・オブ・バイオロジー(Dev. Biol.)、162巻、p.195)、単層における増殖プレート状の軟骨細胞(ロセロット(Rosselot)他、(1994年)、ジャーナル・オブ・ボーン・ミネラル・リサーチ(J. Bone Miner. Res.)、9巻、p.431−439、ゲルブ(Gelb)他、(1990年)、エンドクリノロジー(Endocrinology)、127巻、p.1941−1947、およびクラブ(Crabb)他、(1990年)、ジャーナル・オブ・ボーン・ミネラル・リサーチ(J. Bone Mineral Res.)、5巻、p.1105−1112)、または血小板培養物(カトー(Kato)他、(1988年)、プロシーディング・ナチュラル・アカデミック・ソサイエテイ(Proc. Nat. Acad. Sci)、85巻、p.9552−9556)が種々の外因性の因子に対する軟骨細胞の応答を特徴付けるために用いられており、これらの多くは一定のオートクラインの様式で機能する。
【0042】
軟骨細胞は皮下注射した少量のリドカインを伴う局所麻酔により処理した一定の領域からの軟骨性の組織の一定の生検により得ることができる。さらに、この生検処理した組織からの軟骨細胞は培養において増殖できる。この生検体は一定の生検針、すなわち、その処置を速やかに簡単にする一定の高速動作針を用いて得ることができる。一定の好ましい実施形態において、軟骨細胞はドナー組織から単離されて、大形の細胞貯蔵物が慎重に特徴付けられて一定の均一な製品を提供するために最適化される。
【0043】
上記の生検により得られた軟骨細胞は培養して必要に応じて接種できる。例えば、関節軟骨を子ウシの膝関節から無菌処理により得ることができる。この軟骨は一定のメスによりその骨の端部から削ぎ取られる。その後、この組織は塩水溶液中において微細分してその組織が完全に消化されるまで37℃において数時間にわたりコラーゲナーゼおよびトリプシンによる消化を受けることができるようになり、個別の細胞が得られる。さらに、軟骨細胞は上記の軟骨組織から単離された後に、10%ウシ胎児血清を含有しているDMEMと共に酵素により洗浄して1平方センチメートル当たりに約5,000個の細胞乃至約10,000個の細胞を用いて組織培養のプラスチック製の皿の上に接種できるようになる。これらの軟骨細胞は100%の湿度を有する一定の雰囲気中において5%CO2 中で37℃においてL−グルタミン(292μg/cc)、ペニシリン(100U/cc)、ストレプトマイシン(100μg/cc)を伴うDMEMおよび10%ウシ胎児血清中において培養して、数を増やすことができる(図1を参照されたい)。その後、これらの軟骨細胞はトリプシン/EDTAを用いて上記の組織培養容器から取り出して、大形の組織培養容器に接種するかゲル懸濁液の中に被包することができるようになる。さらに、これらの増殖した軟骨細胞は必要とされるまで種々の標準的な処置に従って凍結することも可能である。
【0044】
軟骨細胞を誘導できる別の供給源は脂肪由来細胞、間葉幹細胞、ウシ胎児幹細胞、骨髄由来幹細胞、およびその他の多能性幹細胞を含む。これらの軟骨細胞は自己、同系(例えば、一卵生双生児による)、同種異系、または異種とすることができる。
【0045】
上記の単離された種々の軟骨細胞について多数の研究が行なわれており、これらの軟骨細胞から、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、および副甲状腺ホルモン(PTH)を含む多数の増殖因子に対する重要な役割が示されており、これらの増殖因子は軟骨細胞の増殖および分化を調整する。さらに、これらの因子およびそれぞれの関連するレセプタの発現は成熟依存性であり、高度に調整されている(ボーメ(Bohme)他、(1992年)、プログレス・オブ・グロウス・ファクター・リサーチ(Prog. Growth Factor Res.)、4巻、p.45−68)。また、別の研究はビタミンA、C、およびDもまた軟骨細胞の変異において必要とされることを示している(レボイ(Leboy)他、(1994年)、マイクロスコピー・リサーチ・アンド・テクニック(Microscopy Res. and Technique)、28巻、p.483−491、イワモト(Iwamoto)他、(1993年)、エクスペリメンタル・セル・リサーチ(Exp. Cell Res.)、207巻、p.413−420、イワモト(Iwamoto)他、(1993年)、エクスペリメンタル・セル・リサーチ(Exp. Cell Res.)、205巻、p.213−224、パシフィシ(Pacifici)他、(1991年)、エクスペリメンタル・セル・リサーチ(Exp. Cell Res.)、195巻、p.38−46、シャピロ(Shapiro)他、(1994年)、ジャーナル・オブ・ボーン・ミネラル・リサーチ(J. Bone Min. Res.)、9巻、p.1229−1237、コルボル(Corvol)他、(1980年)、FEBSレター(FEBS Lett.)、116巻、p.273−276、ゲルステンフェルド(Gerstenfeld)他、(1990年)、コネクティブ・ティシュー・リサーチ(Conn. Tiss. Res.)、24巻、p.29−39、シュワルツ(Schwartz)他、(1989年)、ジャーナル・オブ・ボーン・ミネラル・リサーチ(J. Bone Miner. Res.)、4巻、p.199−207、およびスダ(Suda)、(1985年)、カルシフ・テイシュー・イント(Calcif. Tissue Int.)、37巻、p.82−90)。
【0046】
上記軟骨細胞は種々のタンパク質、抗体、調節因子およびサイトカイン等のような一定の治療薬をコード化する一定の核酸を組み込むために工学処理できる。また、細胞増殖、基質生成、または細胞周期等のようなその他の細胞の機能に影響を及ぼす別の種々の分子、遺伝子、または核酸も使用可能である。これらの核酸はDNA、RNA、またはその他の種々のヌクレオチド・ポリマーとすることができる。また、このようなポリマーは天然の種々のヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、化学的に修飾した塩基、生物学的に修飾した塩基、介在塩基、変性した糖類、または変性したリン酸塩基を含むことができる。
【0047】
一例の実施形態において、上記核酸は裸のDNA、ナノカプセル、微小球、ビーズ、およびリポソーム等のような脂質を基材とするシステム、または鍵穴吸着ヘモシアニン(KLH)およびヒト血清アルブミン等のようなキャリアとして上記軟骨細胞の中に組み込むことができる(例えば、本明細書に参考文献として含まれるセルデン(Selden)に発行されている米国特許第6,303,379号を参照されたい)。
【0048】
別の実施形態において、上記軟骨細胞は一定の治療薬をコード化する一定の核酸を担持するために工学処理されている種々のベクターによりトランスフェクションすることができる。さらに、これらの核酸シーケンスは本明細書に参考文献として含まれるマニアティス(Maniatis)他、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)、ア・ラボラトリー・マニュアル(A Laboratory Manual)、コールド・スプリングス・ラボラトリー(Cold Springs Laboratory)、コールド・スプリングス・ハーバー、ニューヨーク州、(1982年)により記載されているような当業界において知られている種々の標準的なクローニング法を用いて上記ベクターにクローン処理できる。適当なベクターはpROEX(ギブコ(Gibco)/BRL)、pBR322、pBR325、pACYC177、pACYC184、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR290、pKC37、pKC101、SV40、pブルースクリプトIISK+ またはKS+ (本明細書に参考文献として含まれるカリホルニア州、ラ・ジョラのストラタジーン(Stratagene)によるストラタジーン・クローニング・システムズ・カタログ(Stratagene Cloning Systems Catalog)を参照されたい)、pQE、pIH821、pGEX、pETシリーズ(本明細書に参考文献として含まれるスツディエル(Studier)他、ユース・オブ・T7RNA・ポリメラーゼ・トゥ・ダイレクト・エクスプレッション・オブ・クローンド・ジーンズ(Use of T7 RNA Polymerase to Direct Expression of Cloned Genes)、ジーン・エクスプレッション・テクノロジー(Gene Expression Technology)、185巻、(1990年)を参照されたい)等のような種々のプラスミド・ベクターおよびこれらの任意の誘導体を含むがこれらに限定されない。好ましい実施形態において、上記プラスミド・ベクターはpCDNA3.1である。さらに別の好ましい実施形態においては、上記プラスミド・ベクターはpCEP4である。
【0049】
上記治療薬(例えば、EPO)をコード化する遺伝子は、一定のプロモータ、エンハンサー・シーケンス、レプレッサ・シーケンス、TATAボックス、転写停止シーケンス、リボソーム結合部位、転写後調節要素等を含むがこれらに限定されない、その遺伝子の発現を調節する別の種々の要素に操作可能に連結できる。なお、当該技術分野における熟練者であれば、このような治療用の遺伝子との組み合わせにおいて使用可能な種々の要素を認識できる。
【0050】
上記のプロモータはそれぞれの「強度(strength)」(すなわち、それぞれの転写を促進する能力)において異なり、構成的になることができる。一定の治療用の遺伝子を発現する目的のために、その治療用の遺伝子の一定の高度な水準の転写および発現を得るために強力なプロモータを使用することが望ましい。一例の実施形態において、このプロモータは種々のCMV、RSVプロモータ等を含むがこれらに限定されない一定の構成的なプロモータである。さらに、別のプロモータはLTRまたはSV40プロモータ、大腸菌lacまたはtrp、T3およびT7の各プロモータ、HSVチミジン・キナーゼ、ならびに原生生物または真核細胞における遺伝子の発現を調整することが知られているその他の種々のプロモータを含むがこれらに限定されない。また、別の実施形態において、上記プロモータは特定の細胞型に対して特異的である。例えば、一定のプロモータは中枢神経系において機能的であり(例えば、グリア特異性プロモータ、神経エロナーゼ・プロモータ等)、肝臓等のような種々の器官において機能的であり(例えば、肝細胞において活性であるアルブミンおよび抗トリプシン・プロモータ等)、膵臓において機能的であり(例えば、インスリン・プロモータ、膵臓アミラーゼ・プロモータ等)、または心臓において機能的である(例えば、心室筋細胞特異性プロモータ、アルファ−MyHCおよびベータ−MyHCプロモータ)。なお、当該技術分野における熟練者は上記の種々のベクターが標準的な種々の分子生物学的な技法により上記治療用の遺伝子の特異的な転写において必要とされる任意の望ましい調節要素を含むように容易に工学処理できることが認識できる。
【0051】
さらに、一定の望ましい効果を生じる上記治療薬の生物学的に活性な種々のフラグメントも本発明の範囲に含まれる。例えば、上記EPOに対応する完全な遺伝子を一定の軟骨細胞にトランスフェクションできる。あるいは、この遺伝子の種々の活性なフラグメントを用いることも可能である。このようにして、トランスフェクション処理された遺伝子は完全な治療薬に対応して、あるいは、一定の生物学的に活性なペプチドに対応してコード化できる。また、上記治療薬に対して少なくとも50%,75%または90%において相同性を有する種々の相同性のタンパク質も本発明の範囲に含まれる。あるいは、一定の機能的なペプチド作用薬を表現している一定のDNAシーケンスも使用可能である。
【0052】
種々の遺伝子トランスフェクションの技法が当業界において知られている。一定の核酸シーケンスが特に形質導入、接合、可動化、またはエレクトロポレーション等の変換を介して種々の細胞に導入できる。例えば、アデノウイルス等のような種々のウイルス性ベクターがDNAを種々の細胞の中に挿入するために一般的に用いられている。また、別のトランスフェクション法はエレクトロポレーション、カルシウム−リン酸塩法、および種々の脂質を基本とする方法を含む(例えば、サムブルック(Sambrook)他、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、1989年、ミラー(Miller)およびカロス(Calos)編集、ジーン・トランスファー・ベクターズ・フォー・ママリアン・セルズ(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells)、1987年、アウスベル(Ausubel)他編集、カレント・プロトコルズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology)、1987年を参照されたく、これらはそれぞれ本明細書に参考文献として含まれる)。なお、上記治療薬の発現の長さに応じて、安定なトランスフェクションおよび一時的な発現の両方の技法を用いることが可能である。
【0053】
上記治療薬をコード化するプラスミドを担持するために遺伝的に変性されている軟骨細胞は当該技術分野における熟練者において利用可能な任意の方法により選択できる。一定の好ましい実施形態において、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は、ネオマイシン等のような、一定の抗生物質のマーカーを用いて選択できる。このことは遺伝的に変性されている軟骨細胞のみの選択を可能にしている。その後、これらの単離または分離された軟骨細胞は一定の治療薬をコード化するプラスミドを担持している細胞の一定の母集団を生成するために増殖される。これらの変性した軟骨細胞は一定の典型的な軟骨細胞の表現型を保持しているが、上記の一定の治療薬を主に発現する。さらに、これらの遺伝的に変性した軟骨細胞の母集団は一定の細胞、標的領域または当該細胞または標的領域の周囲における環境の構造的な部分にはならない。すなわち、この遺伝的に変性された軟骨細胞は一定の治療薬を発現するためにのみ機能する。
【0054】
II.環境および治療薬
本発明は一定の環境に対して一定の治療薬を配給するための種々のビヒクルとして遺伝的に工学処理されている種々の軟骨細胞を使用することに関連している。一例の実施形態において、この環境は中枢神経系または心臓、肝臓または腎臓等のような種々の充実性の器官を含む軟骨細胞に一般的に関連していない環境とすることができる。また、別の実施形態においては、上記環境は軟骨細胞に関連している環境であるが、この軟骨細胞はその軟骨細胞の表現型を保持しており、これらは一定の治療薬を生成するために特別に用いられている。さらに、この軟骨細胞は軟骨組織の機能(摩擦の無い関節動作を可能にする)を行なわず、それゆえ、これらは一定の組織工学処理した構造による組織の修復または構成のためには用いられない。一例の実施形態において、この遺伝的に変性された軟骨細胞は一定の治療薬(例えば、EPO)を発現するために工学処理されている。また、別の実施形態においては、上記の遺伝的に変性された軟骨細胞は、例えば、2種類の治療薬、3種類の治療薬、または4種類以上の治療薬等のような工学処理されている2種類以上の治療薬である。
【0055】
上記の遺伝的に変性された軟骨細胞は種々のベクターを配給するための既知の種々の方法を用いて一定の細胞または標的領域に配給できる。例えば、これらの遺伝的に変性された軟骨細胞は一定の液体のゲルと共に混合して、一定の外科用の注射器により一定の標的領域に注射できる。さらに、この液体のゲルは上記の標的領域において原位置で凝固できる。あるいは、一定の軟骨細胞−ゲル基質の固形物を一定の標的領域内に外科的に移植することも可能である。このゲル基質の固形物は巻くか折りたたんで、一定の外科器具により標的領域内に挿入して、その標的領域において自然に広がることのできる一定の薄いシート材の形態にできる(例えば、眼内レンズ等)。また、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞のみを(一定の基質と共に混合することなく)一定の標的領域に注入することも可能である。
【0056】
上記の軟骨細胞に一般的に関連していない環境の例は以下の環境を含むがこれらに限定されない。
【0057】
(i)中枢神経系
上記本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞は中枢神経系を含む一定の神経変性性のまたは神経学的な障害に関連する細胞の機能を改善または改質するために使用できる。この本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞により標的とすることのできる中枢神経系の領域は脳および脊髄の中における細胞を含む。さらに、この中枢神経系において遺伝的に変性されている軟骨細胞により表現できる治療薬の例は種々のレセプタ(例えば、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)レセプタ、GluRレセプタ(例えば、GluR4、GluR6))、神経伝達物質(例えば、ドパミン、アセチルコリン、およびノレファリン(norepharine))、トランスポータ(例えば、興奮性アミノ酸トランスポータ(EATT)等のような種々のグルタメート・トランスポータ)、増殖因子(例えば、神経栄養因子(GDNF)、線毛由来神経細胞栄養因子(CNTF)、脳由来神経細胞栄養因子(BDNF)、ニューロノトロフィン−3(NT3)、表皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスホーミング増殖因子a(TGF−a)、トランスホーミング増殖因子b(TGF−b)、血小板由来増殖因子(PDGF))を含むがこれらに限定されない。
【0058】
(a)神経変性性疾患の適当なモデル
(i)ハンティングトン病
本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞はハンティングトン病等のような神経変性性の疾患を伴う一定の被験体における神経変性症を改善または改質するために使用できる。ハンティングトン病のモデルは、例えば、ラット(アイザクソン(Isacson)他、(1985年)、ニューロサイエンス(Neuroscience)、16巻、p.799−817)、サル(カナザワ(Kanazawa)他、(1986年)、ニューロサイエンス・レター(Neurosci. Lett.)、71巻、p.241−246)、およびヒヒ(ハントレイ(Hantraye)他、(1992年)、プロシーディング・ナチュラル・アカデミック・ソサイエティ・オブ・USA(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、89巻、p.4187−4191、ハントレイ(Hantraye)他、(1990年)、エクスペリメンタル・ニューロロジー(Exp. Neurol.)、108巻、p.91−014、アイザクソン(Isacson)他、(1989年)、エクスペリメンタル・ブレイン・リサーチ(Exp. Brain Res.)、75(1)巻、p.213−220)等の幾種類かの異なる動物体において開発されている。これらのハンティングトン病のモデルは人間における治療効果の前兆となる種々の有効な治療のモデルを提供する手段として説明されている。
【0059】
ハンティングトン病における神経変性症は一般的に線条または線条体、尾状核および被核を形成している一方または両方の核における変性を含む。これらの領域に対する一定の治療薬を発現する遺伝的に変性した軟骨細胞の投与はこれらの領域の機能を改質する可能性がある。これらの遺伝的に変性した軟骨細胞は当該遺伝的に変性した軟骨細胞を含む一定の液体ポリマーのゲルを用いて上記の領域に配給して、脳における特定の領域に対して標準的で定位的な種々の配給方法を用いて配給することができる。さらに、これらの遺伝的に変性した軟骨細胞を用いて一定の治療薬を発現する治療効果は形態学的および免疫組織化学的な調査により決定できる。また、行動の検査も迷路検査等のような標準的な種々の技法を用いて行なうことができる。
【0060】
(ii)パーキンソン病
人間におけるパーキンソン病は主に皮質下の種々の構造、特に、黒質およびロエルカス・カエルレウス(loerucus caeruleus)に作用する。この病気は黒質内のドパミン神経の欠損により特徴付けられ、これらの神経はそれぞれの主要な標的器官として基本神経節を有している。このパーキンソン病の幾つかの動物モデルがこれまでに開発されており、これらの中において、種々の有効な治療が人間における治療効果を示している。これらの動物体モデルは3種類のラット・モデル(これらのラットは6−ヒドロキシドパミン、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)、または黒質の線条体経路の外科的横断による処理により生じた黒質のドパミン作用性細胞における種々の病巣を有している)(例えば、ブジェルクルンド(Bjorklund)他、(1982年)、ネーチャー(Nature)、298巻、p.652−654を参照されたい)、一定のアガゲザル・モデル(このサルはMPTPによる処理により生じた黒質のドパミン作用性細胞における種々の病巣を有している)(例えば、スミス(Smith)他、(1993年)、ニューロサイエンス(Neuroscience)、52巻、p.7−16、バケイ(Bakay)他、(1985年)、アプライド・ニューロフィジオロジー(Appl. Neurophysiol.)、48巻、p.358−361、ザミア(Zamir)他、(1984年)、ブレイン・リサーチ(Brain Res.)、322巻、p.356−360を参照されたい)、および一定のヒツジ・モデル(このヒツジはMPTPによる処理により生じた黒質のドパミン作用性細胞における種々の病巣を有している)(バスキン(Baskin)他、(1994年)、ライフ・サイエンス(Life Sci.)、54巻、p.471−479)を含む。一例の実施形態において、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞はパーキンソン病に関連する種々の細胞の機能を改善または改質する一定の治療薬(例えば、GABA)を発現するように変性することができる。なお、この治療効果は上記のハンティングトン病について説明されている様式と同様に決定できる。
【0061】
(b)自己免疫疾患
(i)糖尿病
本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞は糖尿病等のような種々の自己免疫疾患を改善または改質するために使用できる。インスリン依存性の種々の糖尿病薬およびその動物体モデルの概要がワング(Wong)他、(1999年)、カレント・オピニオン・オブ・イムノロジー(Curr. Opin. Immunol.)、11巻、p.643−647)により記載されている。幾種類かの自己抗原がI型糖尿病薬、例えば、インスリン(パルマー(Palmer)他、(1983年)、サイエンス(Science)、222巻、p.1337−1339)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)(ベーケスコフ(Baekkeskov)他、(1990年)、ネーチャー(Nature)、347巻、p.151−156)およびカルボキシペプチダーゼH(カスタノ(Castano)他、(1991年)、ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクリン・メタボリズム(J. Clin. Endocr. Metab.)、73巻、p.1197−1201)、および糖脂質GT3(ギリアード(Gilliard)他、(1989年)、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(Journal Immunol. Methods)、142巻、p.3826−3832)およびGM2−1(ドッタ(Dotta)他、(1992年)、エンドクリノロジー(Endocrinology)、130巻、p.37−42)、およびPM−1(米国特許第5,908,627号)に関連している。上記のモデルはその動物体における糖尿病において一定の治療薬(例えば、インスリン)を発現する遺伝的に変性した軟骨細胞の効果を調査するために使用できる。
【0062】
(ii)慢性関節リウマチ
本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞はまた慢性関節リウマチ等のような一定の疾患を治療するために一定の患者に移植できる。このような実施形態においては、種々の軟骨細胞が慢性関節リウマチにより冒されている特定の関節の治療のためにその関節包またはその近くに、あるいは、一定の抗炎症性の治療薬の全ての関節に対する一定の全身系的な配給のための一定の異所性の部位のいずれかにおいて移植される。このような慢性関節リウマチを治療するために上記の遺伝的に変性した軟骨細胞により発現できる有用な抗炎症性の治療薬の例はTNF−アルファ拮抗質およびレミケード(Remicade)を含むがこれらに限定されない。
【0063】
(c)生殖
生殖に関連する種々の物質もまた本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞を用いて改質できる。このような生殖についての適当な動物体モデルはスプラグ−ドーリー(Sprague-Dawley)ラットであり、このラットは容易に入手可能である。例えば、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)の改質、視床下部により調整される一定のホルモンは排卵および子宮の成長の刺激に関連している(フエシュコ(Fueshko)他、(1994年)、デイベロプメント・オブ・バイオロジー(Dev. Biol.)、166巻、p.331−348、ハーン(Hahn)他、(1984年)、エンドクリン・リサーチ(Endocr. Res.)、10巻、p.123−138)。上記の黄体化ホルモン放出ホルモンはまた一定の合成デカペプチドによりこの黄体化ホルモン放出ホルモンの作用を抑制することにより男性の生殖不能において一定の役割を果たす(カレリ(Carelli)、プロシーディング・ナチュラル・アカデミック・ソサイエティ・オブ・USA(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、79巻、p.5392−5395)。
【0064】
あるいは、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は女性における閉経期ホルモン治療後におけるエストロゲンの配給のために使用できる。これらの遺伝的に変性した軟骨細胞はファローピウス管、卵巣および類似の種々の生殖器官に配給できる。さらに、ホルモン等のような拡散性の因子は、一定の全身系的な毒性または望ましくない副作用が存在しない限りにおいて、特定の標的部位に対して配給する必要がないので、代替的な配給の選択肢として、一定の注射器による注入により達成される局所的配給、外科的な移植、または一定のトロカールによる内視鏡による配給が含まれる。上記の遺伝的に変性した軟骨細胞はまた男性における生殖不能を生じる一定の滅菌剤を配給することによる滅菌処理の目的のために使用できる。なお、このような滅菌剤を発現する遺伝的に変性した軟骨細胞は、例えば、精巣に配給できる。さらに、上記の遺伝的に変性した軟骨細胞の標的になり得る別の男性の生殖器官は精巣、尿道、および尿管を含むがこれらに限定されない。
【0065】
(d)血液関連疾患
上記の遺伝的に変性した軟骨細胞はエリスロポイエチン(EPO)等のような種々の治療薬を発現するために使用できる。このEPOは腎臓の周細管性毛細管内皮の細胞により主に生成される一定の糖タンパク質ホルモンであり、赤血球生成の調整に作用している。さらに、二次的な量のこのホルモンが健康な成人の肝細胞において合成されている。また、早産および完全期の幼児において、その肝臓はEPO生成の主要部位である。さらに、腎臓は出産のわずかに後にEPO合成の主要な部位になる。このEPO生成は腎動脈の循環における酸素含有量の低下により刺激される。さらに、循環しているEPOは赤血球の先祖の表面におけるEPOレセプタに結合して、一定の未完全に理解されている機構により赤血球への複製および成熟を生じる。
【0066】
貧血、肺病、またはチアノーゼ性心臓疾患を含む組織低酸素症を生じる種々の臨床的状況は血清EPOの量の増加を生じる。すなわち、低いEPOの量が貧血症を伴う患者、癌ならびに慢性関節リウマチ、HIV感染、潰瘍性結腸炎、および鎌状血球貧血症を伴う患者において観察される。また、炎症性のサイトカイン(例えば、IL−1、TNF−アルファ)によるEPO合成の抑制は特定の慢性疾患または癌において生じると考えられている。
【0067】
上記とは反対に、EPOの量の増加は水腎症または嚢腫等のような腎臓疾患、または赤血球増加症を生じる特定の腫瘍に関連して生じる可能性がある。このような例は腎細胞癌(副腎腫)、肝細胞癌、および副腎腫瘍を含む。また、脊髄形成異常症および再生不良性貧血等のような特定の骨髄疾患もEPOの高い血清量に関連する可能性がある。このような骨髄疾患に罹ると、高い血清EPOの量がEPOレセプタ担持細胞の数が減ることによりその血清量が増加することから推測できる。従って、増量したEPOに対して相互作用するためのEPO抗体を発現してその量を減少するために上記の遺伝的に変性した軟骨細胞を用いることができる。
【0068】
上記の遺伝的に変性した軟骨細胞を試験するために使用できる貧血症の一定の動物体モデルにおいて適当なものが利用可能である(例えば、ハマモリ(Hamamori)他、(1995年)、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベステイゲーション(J. Clinical Investigation)、95巻、p.1808−1813、オズボーン(Osborn)他、(1995年)、プロシーディング・ナチュラル・アカデミック・ソサイエティ・オブ・USA(Proc. Natl. Acad. Sci., USA)、92巻、p.8055−8058を参照されたい)。このようなEPOを発現する遺伝的に変性した軟骨細胞を一定の貧血症の動物体に移植してEPOの量を決定すると共に、その処理した動物体のヘマトクリット値を経時的に測定することができる。
【0069】
(e)アレルギー
本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞はまたこれらの遺伝的に変性した軟骨細胞により種々のアレルゲンの生体内における生成またはこれらの抗体に影響を及ぼすことにより種々のアレルギーを治療するために一定の患者に移植することもできる。このように調整されたアレルゲンの発現またはこれらの抗体により、その患者はIgE抗体を遮断するIgG抗体を発育させ、これにより、長期にわたるアレルギーの軽減が生じる。
【0070】
(f)痛みの管理
痛みの管理は上記の遺伝的に変性した軟骨細胞によると共にこれらの軟骨細胞を種々のアヘン誘導体およびエンドルフィン類を発現するように変性することにより行なうことができる。このような痛みを媒介する物質を発現する遺伝的に変性した軟骨細胞は脳等のような組織の中に移植することが考えられる。加えて、これらの軟骨細胞は侵害受容性の痛みの軽減薬を発現するように変性することができ、このように変性された軟骨細胞は傷害の部位にまたは痛みを生じている疾患部位に局所的に移植できる。
【0071】
(g)癌治療
癌は多くの場合において単一の異常な細胞内における一定の変性されたゲノムの結果としての異常なまたは癌性の細胞の無調整の増殖により特徴付けられる一定の病気である。このようなゲノムにおける変性は1種類以上の遺伝子における一定の変異により生じ、この場合に、この変異の発生の確率は(i)電離線、(ii)発癌物質として知られている種々の化学物質に対する曝露、(iii)一部のウイルス、(iv)身体的な刺激、および(v)遺伝的素因を含む種々の要因により増大する。
【0072】
上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は侵害性の転移に対する一定の患者の免疫応答を改善するか、癌性の細胞増殖を直接的にまたは間接的に抑制するための種々の治療薬を配給するために使用できる。このような治療薬はインターロイキン−2(IL−2)、顆粒球−マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CFS)、インターロイキン−12(IL−12)およびインターフェロン−ガンマ(IFN−ガンマ)等のような種々のサイトカイン、種々の抗脈管形成分子および腫瘍関連抗原を含むがこれらに限定されない(アンダーソン(Anderson)他、(1990年)、キャンサー・リサーチ(Canser Res.)、50巻、p.1853、ストクローサ(Stoklosa)他、(1998年)、アニュアル・オンコロジー(Ann Oncol.)、9巻、p.63、レイブソン(Leibson)他、(1984年)、ネーチャー(Nature)、309巻、p.799、ブック(Book)他、(1998年)、セミナル・オンコロジー(Semin. Oncol.)、25巻、p.381、サルガラー(Salgaller)他、(1998年)、ジャーナル・サージカル・オンコロジー(J. Surg. Oncol.)、68巻、p.122、グリスセリ(Griscelli)他、(1998年)、プロシーディング・ナチュラル・アカデミック・ソサイエティ・オブ・USA(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、95巻、p.6367)。
【0073】
例えば、マウスの腫瘍モデル等のような腫瘍の適当なモデルが利用可能である(例えば、ハーリング(Hearing)他、(1986年)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. Immunol.)、137巻、p.379を参照されたい)。一定の抗腫瘍性分子の治療的用量が上記の遺伝的に変性した軟骨細胞を用いて一定のマウス腫瘍モデルの中に配給できる。さらに、組換え型分子の生体内組織または血清における量が移植後の異なる時間点において測定されて、腫瘍の進展および動物体の生存についての効果が経時的に追跡調査される。このような癌の当該技術分野において容認されている別の動物体モデルがハーリング(Hearing)、(1986年)、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. Immunol.)、137巻、p.379、ストクローサ(Stoklosa)他、(1998年)、アニュアル・オンコロジー(Ann. Oncol.)、9巻、p.63、カールソン(Carson)他、(1998年)、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J. Surg. Res.)、75巻、p.97、モーラー−ゲブハード(Maurer-Gebhard)他、(1998年)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、58巻、p.2661およびタカオリ−コンドー(Takaori-Kondo)他、(1998年)、ブラッド(Blood)、91巻、p.4747)において記載されている。
【0074】
癌治療の治療効果は腫瘍の縮小(例えば、少なくとも5%乃至10%、好ましくは25%乃至100%)および/または延長された動物体の生存時間等のような臨床的な種々のパラメータにおける変化を測定することにより決定できる。
【0075】
(h)充実性器官の治療
上記の遺伝的に変性した軟骨細胞は心臓、腎臓、または肝臓等のような一定の充実性の器官内の一定の領域に対して(直接的にまたはそのすぐ近くに)種々の治療薬を配給するために使用できる。
【0076】
III.生体適合性の基質
本発明の遺伝的に変性した軟骨細胞は種々の生体適合性の基質を用いることにより一定の望まれる環境に対して配給できる。本発明の一例の実施形態において、この基質は一定の生体適合性のポリマーにより形成できる。種々の生体適合性のポリマーが本発明による生体適合性の組織移植片または基質を作成するために使用できる。これらの生体適合性のポリマーは種々の合成ポリマー、天然ポリマーまたはこれらの組み合わせ物とすることができる。本明細書において用いられているように、上記用語の「合成ポリマー(synthetic polymer)」は、これらのポリマーが天然に存在する種々の生体物質により作成されていても、天然には見られないポリマーを意味する。また、上記用語の「天然ポリマー(natural polymer)」は天然に存在しているポリマーを意味する。上記基質が少なくとも1種類の合成ポリマーを含む場合の実施形態において、適当な生体適合性の合成ポリマーは種々の脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレン・オキサレート、ポリアミド、チロシン誘導型ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、種々のアミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、およびこれらの混合物から成る群から選択される種々のポリマーを含むことができる。また、本発明における使用に適している合成ポリマーはコラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレン・フマレート)、ゼラチン、アルギネート、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチドおよびこれらの混合物において見られる種々のシーケンスに基く種々の生合成ポリマーも含むことができる。
【0077】
本発明の目的のために、上記の脂肪族ポリエステルはラクチド(乳酸、D−、L−およびメソ体のラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネートの種々のアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(この二量体の1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、α,αジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オンおよびこれらのポリマー混合物の種々のホモポリマーおよびコポリマーを含むがこれらに限定されない。さらに、本発明において用いられる脂肪族ポリエステルは一定の線形、分枝状または星形の構造を有する種々のホモポリマーまたはコポリマー(ランダム、ブロック、セグメント型、テーパー型ブロック、グラフト、トリブロック等)とすることができる。また、本発明の目的のための、上記のポリ(イミノカーボネート)はドーム(Domb)他により編集されているハンドブック・オブ・バイオディグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)(ハードウッド・アカデミック・プレス(Hardwood Academic Press)、p.251−272、(1997年))においてケムニッツァー(Kemnitzer)およびコーン(Kohn)により記載されているような種々のポリマーを含むことが理解されると考える。また、本発明の目的のための、上記のコポリ(エーテル−エステル)はコーン(Cohn)およびユーネス(Younes)によりジャーナル・オブ・バイオマテリアルス・リサーチ(Journal of Biomaterials Research)、22巻、p.993−1009において、さらにコーン(Cohn)によりポリマー・プレプリンツ(Polymer Preprints)(ポリマー・ケミストリー社(Polymer Chemistry)のACS事業部)、30(1)巻、p.498,1989年において記載されているようなコポリエステル−エーテル(例えば、PEO/PLA)を含むことが考えられる。また、本発明の目的のための、上記のポリアルキレン・オキサレートは米国特許第4,208,511号、同第4,141,087号、同第4,130,639号、同第4,140,678号、同第4,105,034号、および同第4,205,399号において記載されている材料を含む。また、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレン・カーボネート、およびε−カプロラクトンにより作成されている種々のポリホスファゼン、2成分型(co-)、3成分型(ter-)およびさらに高次の混合型のモノマー基材の種々のポリマーはエンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス(Encyclopedia of Polymer Science)、13巻。p.31−41、ワイレイ・インターサイエンスイズ(Wiley Intersciences)、ジョン・ワイレイ・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1988年におけるアルコック(Allcock)により、およびドーム(Domb)他により編集されているハンドブック・オブ・バイオディグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)(ハードウッド・アカデミック・プレス(Hardwood Academic Press)、p.161−182、(1997年))におけるバンドルペ(Vandorpe)他により記載されているような材料である。また、上記のポリ酸無水物はHOOC−C64 −O−(CH2m −O−C64 −COOHの形態の二酸から誘導される材料を含み、この場合に「m」は2乃至8の範囲内の一定の整数であり、さらに上記のポリ酸無水物は上記の材料と12個までの炭素の脂肪族アルファ−オメガ二酸との種々のコポリマーを含む。また、上記のポリオキサエステル、ポリオキサアミドおよび種々のアミン基および/またはアミド基を含有しているポリオキサエステルは以下の米国特許第5,464,929号、同第5,595,751号、同第5,597,579号、同第5,607,687号、同第5,618,552号、同第5,620,698号、同第5,645,850号、同第5,648,088号、同第5,698,213号、同第5,700,583号、および同第5,859,150号の内の1件以上において記載されている。また、上記のポリオルトエステルはドーム(Domb)他により編集されているハンドブック・オブ・バイオディグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)(ハードウッド・アカデミック・プレス(Hardwood Academic Press)、p.99−118、(1997年))におけるヘラー(Heller)により記載されているような材料である。
【0078】
本明細書において用いられているように、上記用語の「グリコリド(glicolide)」はポリグリコール酸を含むと考えられている。さらに、上記用語の「ラクチド(lactide)」はL−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の種々のポリマーおよびコポリマーを含むと考えられている。
【0079】
種々の弾性コポリマーも本発明において特に有用である。適当な弾性のポリマーは、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中における1デシリットル当たりに0.1グラム(g/dL)のポリマー溶液中において25℃で決定した場合に、約1.2dL/g乃至4dL/g、さらに好ましくは約1.2dL/g乃至2dL/g、最も好ましくは約1.4dL/g乃至2dL/gの範囲内の一定の固有粘度を有するポリマーを含む。さらに、適当な弾性体またはエラストマーは一定の高い伸び率および一定の低い弾性率を示すと共に、良好な張力および良好な回復特性を有している。本発明の好ましい実施形態において、上記のエラストマーは約200%よりも高い、好ましくは約500%よりも高い一定の伸び率を示す。これらの伸び率および弾性率に加えて、適当なエラストマーは約500psi(3.45×106 パスカル)よりも高い、好ましくは約1,000psiよりも高い一定の引張強さ、および約50ポンド/インチ(8.9キログラム/センチメートル)よりも高い、好ましくは約80ポンド/インチ454グラム(14.3キログラム/センチメートル)よりも高い一定の引裂強さを有する必要がある。
【0080】
本発明において使用できる例示的な生体適合性のエラストマーは約35:65乃至約65:35、さらに好ましくは45:55乃至35:65のε−カプロラクトンのグリコリドに対する一定のモル比率を有するε−カプロラクトンおよびグリコリド(グリコール酸を含む)の弾性コポリマー、ε−カプロラクトンのラクチドに対するモル比率が約35:65乃至65:35、さらに好ましくは約45:55乃至30:70または約95:5乃至約85:15であるε−カプロラクトンおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の種々のポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、p−ジオキサノンのラクチドに対するモル比率が約40:60乃至約60:40であるp−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)およびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の種々のポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、ε−カプロラクトンのp−ジオキサノンに対するモル比率が約30:70乃至約70:30であるε−カプロラクトンおよびp−ジオキサノンの弾性コポリマー、p−ジオキサノンのトリメチレン・カーボネートに対するモル比率が約30:70乃至約70:30であるp−ジオキサノンおよびトリメチレン・カーボネートの弾性コポリマー、トリメチレン・カーボネートのグリコリドに対するモル比率が約30:70乃至約70:30であるトリメチレン・カーボネートおよびグリコリド(グリコール酸を含む)の弾性コポリマー、トリメチレン・カーボネートのラクチドに対するモル比率が約30:70乃至約70:30であるトリメチレン・カーボネートおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、および乳酸の種々のポリマーおよびコポリマーを含む)の弾性コポリマー、およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。このような適当な生体適合性のエラストマーの例が米国特許第5,468,253号において記載されている。
【0081】
一例の実施形態において、上記エラストマーは一定のジオキサン溶媒中において形成されていて一定のポリジオキサノン・メッシュ材を含む35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドの一定のコポリマーである。また、別の実施形態において、上記エラストマーは一定のポリジオキサノン・メッシュ材を伴う40:60のε−カプロラクトンおよびラクチドの一定のコポリマーである。さらに別の実施形態において、上記エラストマーは35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドのコポリマーおよび40:60のε−カプロラクトンおよびラクチドのコポリマーの一定の50:50の混合物である。また、上記のポリジオキサノン・メッシュ材は1層の厚さの二次元的なメッシュ材または多層の厚さの三次元的なメッシュ材の形態にすることができる。
【0082】
別の実施形態において、上記基質は一定の注入または注射の可能な基質の形態にすることができる。このゲル基質はアルギネート、架橋型アルギネート、ヒアルロン酸、コラーゲン・ゲル、フィブリン接着剤、フィブリン凝固物、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、アガロース、キチン、キトサン、セルロース、多糖類、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレン・オキシド)−ポリ(プロピレン・オキシド)の一定のコポリマー、ポリ(ビニル・アルコール)、ポリアクリレート、高濃度血小板血漿(PRP)凝固物、低濃度血小板血漿(PPP)凝固物、マトリゲル(Matrigel)、またはこれらの混合物を含む一定の生物学的なまたは合成のヒドロゲルとすることができる。
【0083】
上記のゲル基質は一定の治療薬が当該ゲル基質の中において発現されることを可能にすると共に、その発現した治療薬がそのゲル基質からその周囲の環境内に拡散することを可能にする特性を有するように選択される。
【0084】
使用可能なゲル基質の例はコラーゲン・ゲル、フィブリン接着剤、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレン・オキシド・ゲル、アルギネートまたはカルシウム・アルギネート、ポリ−(2−ヒドロキシエチル・メタクリレート)(すなわち、一定のヒドロゲル)、ポリオルトエステル、ヒアルロン酸、ポリ酸無水物、キトサン、ゼラチン、アガロース、および欧州特許公開第EP0705878A2号において記載されている材料等のような別の生体吸収性で生体適合性の種々の材料を含むことができるがこれらに限定されない。軟骨細胞の増殖および機能を高めるために、上記の生物学的なゲルはさらに種々の栄養素(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸、および種々のアミノ酸)および種々の増殖因子(例えば、ソマトメジン、塩基性線維芽細胞増殖因子、トランスホーミング増殖因子−β、軟骨増殖因子、骨由来増殖因子、またはこれらの一定の組み合わせ物)を含むことができる。
【0085】
上記の多糖類は本発明において上記のヒドロゲル基質としても有用である一般式(CH2 O)n の一定の高分子の種類である。また、これらの多糖類は、例えば、アガロース、アルギネートおよびキトサン等の幾種類かの天然に存在する化合物を含む。
【0086】
アガロースは多糖類により作成される一定の透明な熱可逆性のヒドロゲルであり、主に、1,4−連結型および3,6−アンヒドロ型のα−L−ガラクトースおよび1,3−連結型のβ−D−ガラクトースの種々の変性コポリマーである。2種類の市場において利用可能なアガロースはシープレップ(SeaPrep)(商標)およびシープラーク(SeaPlaque)(商標)と言うアガロース(FMC社(FMC Corp.)、ロックランド、メイン州)である。上記のアガロース・ゲルの熱可逆性はこのアガロースが室温において一定の液体であって細胞−ゲル溶液の容易な混合およびその後の4℃への冷却を可能にできる。この方法は一定の比較的に穏やかな方法であり、細胞に対する化学的な毒性を伴わない。
【0087】
上記のアガロースの濃度は約0.50%乃至2%(重量/容量)、最も好ましくは約1.0%である。いずれの場合においても、このアガロースの濃度は約104 個の細胞/ml乃至107 個の細胞/mlの範囲内で、さらに好ましくは約105 個乃至106 個の細胞/mlの範囲内で変化する一定の濃度における軟骨細胞の被包を可能にするために十分である必要がある。
【0088】
上記のアルギネートは海草から単離される一定の炭水化物のポリマーであり、例えば、PCT国際公開第WO94/25080号において記載されているように、カルシウム等のような一定の二価のカチオンに対する曝露により一定のヒドロゲルを形成するように架橋することができ、この文献の開示は本明細書に参考文献として含まれる。このように変性したアルギネートの溶液は移植する細胞と共に混合されて一定の懸濁液が形成される。その後、この懸濁液は細胞を含有するヒドロゲルを形成するために上記ポリマーを架橋する前に一定の患者の体内に直接的に注入される。この懸濁的は、その後、生理学的な濃度のカルシウム・イオンの生体内における存在により短期間の時間において一定のヒドロゲルを形成する(例えば、本明細書に参考文献として含まれるリム(Lim)に発行されている米国特許第4,352,883号を参照されたい)。
【0089】
一般に、上記の生物学的なゲルを作成するポリマーは水、緩衝液化した塩溶液、水性のアルコール溶液等のような種々の水性溶液中に少なくとも部分的に溶ける。なお、上記ポリマーの合成方法は当該技術分野における熟練者において知られている(例えば、コンサイス・エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・ポリメリック・アミンズ・アンド・アンモニウム・ソルツ(Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts)、E.ゲーサルズ(E. Goethals)編集、(ペルガメン・プレス(Pergamen Press)、エルムスフォード、ニューヨーク州、1980年)を参照されたい)。天然および合成の種々のポリマーを、当該技術分野において利用可能であり、例えば、マーチ(March)、「アドバンスド・オーガニック・ケミストリー(Advanced Organic Chemistry)」、第4版、1992年、ワイレイ−インターサイエンス・パブリケーション(Wiley-Interscience Publication)、ニューヨークにおいて記載されている種々の化学反応を用いて変性することができる。
【0090】
荷電した側基を伴う水溶性の種々のポリマーが当該ポリマーを、そのポリマーが酸性の側基を有している場合のカチオンまたはそのポリマーが塩基性の側基を有している場合のアニオンのいずれかである、反対の電荷のイオンを含有している一定の水性溶液と共に反応させることにより架橋できる。このような一定のヒドロゲルを形成するために酸性の側基を伴うポリマーを架橋するためのカチオンの例はナトリウム等のような一価のカチオン、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、およびスズ等のような二価のカチオン、およびアルキルアンモニウムの種々の塩等のような二官能価、三官能価または四官能価の有機性のカチオンである。さらに、これらのカチオンの塩類の水性溶液は上記ポリマーに添加されて、軟質の高度に膨潤性の種々のヒドロゲルおよび膜が形成される。このカチオンの濃度が高いほど、またはその原子価が高いほど、そのポリマーの架橋の程度が高くなる。加えて、上記のポリマーは、例えば、トロンビンを伴うフィブリン等のように、酵素により架橋することも可能である。
【0091】
上記の生物学的なゲルの幾つかの物理的な特性はそのゲルの濃度に依存している。すなわち、このゲル濃度の上昇はそのゲルの気孔の半径、形態、またはその異なる分子量のタンパク質に対する透過性を変化する可能性がある。このゲルの気孔半径の決定は一定の目盛付ウォーター・カラム、透過電子顕微鏡および異なる寒天ゲル濃度を通る既知の半径の篩球による液圧式透過度決定法を含む任意の適当な方法により行なうことができる(例えば、グリエス(Griess)他、(1993年)、バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical J.)、65巻、p.138−48を参照されたい。)
【0092】
種々の別の適当な生物学的なゲルも知られている。このポリマーは体内への移植のために種々の細胞と共に混合することができ、その体内における移植の前または後のいずれにおいても上記細胞を含有している一定のヒドロゲル基質を形成するために架橋できる。一定のヒドロゲルが一定の有機性のポリマー(天然または合成)を共役結合、イオン結合、または水素結合により架橋して一定のゲルを形成するために水の分子を捕捉する一定の三次元の開口状の格子構造を形成する場合に形成される一定の基質として定義されている。
【0093】
当該技術分野における熟練者は軟骨細胞を含む生物学的なゲルの容積および寸法(長さ、幅、および厚さ)がその生物学的なゲル基質を移植する領域または環境に基いて選択可能であることが認識できる。一例の実施形態において、上記の生物学的なゲルは約10cm乃至約30cmの一定の長さ(第1および第2の長い部分の端部により定められる)を有している。さらに、この生物学的なゲルは約15cm乃至約25cmの一定の長さを有することもできる。一定の好ましい実施形態において、上記の生物学的なゲルは約20cmの一定の長さを有している。また、別の実施形態において、上記の生物学的なゲルは約0.5乃至約4.0cmの一定の幅(第1および第2の短い部分の端部により定められる)を有している。さらに、この生物学的なゲルは約1.0cm乃至約3.0cmの一定の幅も有することができる。一定の好ましい実施形態において、上記の生物学的なゲルは約2.0cmの幅を伴う一定の生体適合性の基質を有している。
【0094】
IV.遺伝的に変性した軟骨細胞による治療薬の製造
別の態様において、本発明は種々の治療薬の大規模な生体内における調製のために遺伝的に変性した軟骨細胞を使用することに関連している。例えば、リットル・スケールの製造(例えば、数リットル)が微小キャリア・ビーズにおける軟骨細胞の増殖および維持管理により行なうことが可能になる。種々の軟骨細胞が商業的価値のある一定の治療用の分子を発現するために遺伝的に操作可能であり、その後に、増殖して生体反応因子を含有している微小キャリア−ビーズ上に接種できる。あるいは、種々の軟骨細胞を種々の微小キャリア・ビーズの上に直接的に接種して種々の生体反応因子の中において直接的に増殖することも可能である。
【0095】
以下の実施例は本発明の原理および実施を例示している。すなわち、本発明の範囲および趣旨に含まれる多数の別の実施形態が当該技術分野における熟練者において明らかになる。
【0096】
実施例1軟骨細胞の生体外における単離および培養
この実施例は種々の軟骨細胞を単離して培養する多くの可能な方法の一例を説明している。先ず、関節軟骨を子ウシの膝関節から無菌処理により得た。この軟骨は一定のメスにより上記の骨の端部から削ぎ取られている。その後、この組織を塩水溶液中において微細分して、その組織が完全に消化されて個別の細胞が得られるまで、37℃において数時間にわたりコラーゲナーゼおよびトリプシンによる消化を受ける。このように、軟骨組織から単離された軟骨細胞は、その後、酵素により洗浄されて、約10,000個の細胞/cm2 の一定濃度で組織培養のプラスチック製の皿の上に接種される。さらに、この軟骨細胞は10%FBSを含有しているDMEM培養培地の中において増殖される。この増殖に続いて、上記の軟骨細胞は一定のトリプシン/EDTAの処理により容器から放出可能になり、遠心処理および濃縮するか、一定の所望の濃度に希釈することにより、各培養皿に接種する際に、例えば、約5,000個の細胞乃至約10,000個の細胞/cm2 の一定の接種密度が達成できる。あるいは、上記の増殖した軟骨細胞は必要になるまで種々の標準的な方法に従って凍結できる。
【0097】
実施例2軟骨細胞の生体外におけるトランスフェクションおよび一定の標識タンパク質の発現
この実施例は一定の標識タンパク質の緑色蛍光タンパク質(GFP)による軟骨細胞のトランスフェクションのために用いる技法を説明している。一定のリポーター遺伝子を担持しているDNAベクターが種々の異所性の部位における治療の適用における一定の薬物配給システムとしての正常な関節軟骨細胞の有用性についての概念を立証するために用いられている。一定のモデルとしての、緑色蛍光タンパク質に対応する一定の遺伝子を担持している一定のDNAベクター(pトレーサー−SV40)が種々の軟骨細胞において通常的に存在しておらず一定の治療価値を有している一定のタンパク質のモデルとなる代用物として用いられている。さらに、種々の軟骨細胞がこのモデル・ベクターによりトランスフェクションして異種のタンパク質を発現することが可能であれば、治療用のタンパク質に対応してこのようなシステムを使用する可能性が示されることになる。以下の実施例において、異種のDNAを種々の軟骨細胞の中に導入するためにストラタジーン(Stratagene)(ジーンジャマー(GeneJammer))からの一定の脂質配合物が用いられている。さらに、DNAを細胞の中に導入する任意の他の試薬または物理的な手段も上記と同一の目的において役立つと考えられる。
【0098】
指数関数的に増殖している軟骨細胞が10%FBSを含有しているDMEMの中に1.5乃至3.7×106 個の細胞の一定密度で35mmの皿の上に接種される。その後、別のプラスチック・チューブの中において、無血清培地をトランスフェクション試薬(ストラタジーン(Stratagene)からのジーンジャマー(GeneJammer))と共に混合して、5乃至10分間にわたり上記の軟骨細胞と共に培養した。その後、プラスミドDNA(インビトロゲン(Invitrogen)からのpトレーサー−SV40)を上記軟骨細胞と混合して、この混合物をさらに5乃至10分間にわたり培養した。次に、このトランスフェクション混合物を35mmの皿に添加して、37℃において少なくとも3時間にわたり培養した。その後、新鮮な培地(10%FBSを含有しているDMEM)を加えて、上記の細胞を新鮮な血清を含有している培地と共に2乃至3日ごとに供給した。
【0099】
トランスフェクションした軟骨細胞を確認するために、上記の培養した軟骨細胞を蛍光下において観察した。このことを容易にするために、上記の培養培地を除去して、リン酸塩緩衝液化した塩水溶液に取り替えた。さらに、培養した軟骨細胞を蛍光顕微鏡により調べた。陽性の軟骨細胞は、図2において示されているように、プラスミドを取り込み、GFPを発現していて、上記の顕微鏡下において緑色に蛍光発光している細胞として確認されている。
【0100】
上記の結果は種々の関節軟骨における一定の異種のタンパク質の導入および発現の能力を示している。これらの結果はさらに軟骨細胞が一定の異種のタンパク質の発現のための一定の丈夫で安定な細胞を提供することを示している。
【0101】
実施例3人間およびウシの軟骨細胞の生体外におけるトランスフェクションおよびEPOタンパク質の発現
この実施例は一定の治療薬、すなわち、人間のエリスロポイエチン(EPO)により種々の軟骨細胞をトランスフェクションするために用いる技法を説明している。
【0102】
市場において入手可能なpSG5基質(ストラタジーン社(Stratagene, Inc.))の中に挿入されているEPO遺伝子(ゲンバンク(Genbank)、受入番号:182198)を含む一定のEPOベクターを生成した。このpSG5プラスミドは細菌の一定の選択用の標識としてのアンピシリンおよびケナマイシンを含有している。この構成はまた比較的に良好な発現のためにF1糸状ファージ起点因子およびSV40プロモータも含有している。上記の584個の塩基対のEPOは上記pSG5におけるNCO/Bam・H1部位にクローン化されている。このベクターの大きさは約4.6kbであった。
【0103】
さらに、市場において入手可能なpCDNA3.1基質(インビトロゲン・ライフ・テクノロジー(Invitrogen Life Technologies))の中に挿入されている上記のEPO遺伝子を含む別のEPOベクターを生成した。この特定の構成は種々の哺乳類動物の細胞に対応する一定の選択用の標識としての抗生物質のネオマイシンを含有している。
【0104】
その後、上記のEPOベクターのそれぞれを一定の市場において入手可能な脂質トランスフェクション剤であるFuGENE6(ロッシェ・ダイアグノスティクス・コーポレーション(Roche Diagnostics Corporation)を用いて人間の軟骨細胞の中にトランスフェクションした。先ず、人間の一次軟骨を通過させて、10%FBSを含有しているDMEMの中に250,000個の細胞/プレートの一定密度で35mmのプレート上に接種した。その後、上記のトランスフェクション試薬を1μgのプラスミドに対して3μlのFuGENEの比率で無血清培地中に混合して、室温において15分間にわたり培養した。その後、この結果として得られたトランスフェクション混合物を上記軟骨細胞の各プレートに滴下により添加して、合計で1.0μgのEPOプラスミドを各プレートに添加した。さらに、これらの細胞培養物を37℃において培養した。その後、20時間目、48時間目、72時間目および96時間目においてそれぞれ0.5mlの分量の上澄み液を集めて、4℃において保管した。
【0105】
上記の実験の場合に、2種類の対照サンプルが調製されている。第1の対照物は一定のEPO擬似体をコード化する一定の遺伝子によりトランスフェクションされている軟骨細胞を含む。第2の対照物は試薬が全く添加されていない細胞を含む。上記トランスフェクションの方法は、同様の細胞密度、試薬濃度および調整条件を伴って、人間およびウシのそれぞれの軟骨細胞について繰り返されている。
【0106】
EPOの発現は当該EPO(クオンティライクIVD(Quantilike IVD)、RアンドDシステムズ社(R&D Systems Inc.))に対して特異的である一定の市場において入手可能なELISAキットを用いて上記の軟骨細胞により合成された上澄みのEPO濃度を測定することにより決定されている。また、450nmにおける吸収を測定して上記の各ELISAプレートにおいて結合したタンパク質の量を決定している。
【0107】
図3Aおよび図3Bは、人間およびウシの軟骨細胞の両方において、いずれの対照サンプルも有意義なEPOの発現を示していないが、それぞれのEPOのトランスフェクション構成物は有意義なEPOの発現を生じていることを示している。さらに、これらの人間およびウシの軟骨細胞による人間のEPOの発現は軟骨細胞に基く生体内における治療薬の配給に対する同種異系および異種による方法の実行可能性を示している。
【0108】
実施例4人間の軟骨細胞の生体外におけるトランスフェクションおよびEPO擬似体の発現
この実施例は一定の治療薬であるEPOの擬似体(mEPO)により軟骨細胞をトランスフェクションするために用いる技法を説明している。この製剤はEPOタンパク質の結合領域に似ていてEPOレセプタに対して結合してこれを活性化する際にEPOと同様の治療的機能を行なうように設計されている。
【0109】
上記の市場において入手可能なpCDNA3.1基質(インビトロゲン・ライフ・テクノロジー(Invitrogen Life Technologies))の中に挿入されているmEPO遺伝子を含む一定の構成物が生成されている。この特定の構成物は哺乳類動物の細胞に対応する一定の選択標識としてのネオマイシン、および細菌に対応する一定の選択標識としてのアンピシリンと言う抗生物質を含む。このベクター構成物の大きさは約6kbである。さらに、市場において入手可能なpCEP4基質((インビトロゲン・ライフ・テクノロジー(Invitrogen Life Technologies))の中に挿入されているmEPOを含む一定の構成物が生成されている。この構成物は哺乳類動物に対応する一定の選択標識としてのハイグロマイシンを含み、比較的に良好な発現のためのEBV複製起点物質および核抗原(EBNA−1)を含有している。このベクターの大きさは約11kbである。
【0110】
mEPOをコード化するそれぞれのプラスミドが上記実施例3において概説されている方法を用いて人間の軟骨細胞の中にトランスフェクションされている。それぞれの対照サンプルは人間のEPOによりトランスフェクションされている軟骨細胞ならびに試薬が全く添加されていない細胞を含んでいる。
【0111】
上記mEPOの発現はその擬似体における人間のIgG領域に対して特異的である一定のELISAを用いて測定されている。トランスフェクションの96時間後において、このEPO擬似体の発現は18ng/mlの一定のレベルで検出された。図4において示されているように、上記の発現のレベルは対照サンプルについて測定されている基準線のmEPOのレベルよりも実質的に高い。総じて、これらの結果は軟骨細胞がEPOおよびmEPO等のような一定の治療薬を発現するために使用できることを示している。
【0112】
実施例5軟骨細胞−ゲル基質の形成
この実施例は一定の治療薬を発現する遺伝的に変性した軟骨細胞を含有している生物学的なゲル基質物質を配合する方法を説明している。単一層において増殖する軟骨細胞(図5A)がトリプシン/EDTAを用いている培養皿により放出されている。これらの細胞は計数されて、40℃における低融点のアガロースの中に懸濁されて、最終の細胞濃度が100,000個/mlのアガロース・ゲルになるように無血清培地中において調製されている。このゲルの3mlを一定の30mmの皿の中に分散して、放置して室温に設定した。その後、このゲルを等量の10%FBSを含有している培養培地の上に重ねた。この培地を2乃至3日ごとに補充して、数週間にわたり培養を維持した。数週間後に、分化している軟骨細胞のコロニーが観察された(図5B)。さらに、これらのゲルを最初の懸濁から6週間目にホルマリン中に固定して、アルシアン・ブルーにより染色した。この結果、軟骨細胞が付着した軟骨基質は青色に染色して、軟骨の分化を示している(図5C)。この場合に、治療用のタンパク質の発現のモニターは経時的に培養培地をサンプリングすることにより行なうことができる。また、軟骨細胞を懸濁しているアガロースからの一定の配給用量を確立することは、例えば、一定の生検パンチにより生成した異なる大きさのディスクを採取することにより行なうことができる。
【0113】
実施例6一定の血液疾患に対応する一定の非典型的な軟骨細胞の環境におけるEPOまたはmEPOを発現するための軟骨細胞の使用
この実施例は一定の生体内におけるシステムの中においてEPOまたはmEPOを発現するために遺伝的に変性されている軟骨細胞の使用を説明している。これらの軟骨細胞はEPOまたはmEPOを発現するために上記の実施例3および4において説明されているようにそれぞれ遺伝的に変性されていて、上記実施例5において説明されているように生物学的なゲル基質物質の中にそれぞれ置かれている。このような固形のゲルのスライス、または接触時に凝固する一定の液体のゲルを貧血症の一定の動物体モデルの中に置くことが可能であり(オズボーン(Osborn)他、上記)、その貧血症の改善がその血液におけるヘマトクリット値の測定により観察されている。
【0114】
実施例7一定の自己免疫疾患に対応する一定の非典型的な軟骨細胞の環境において治療薬を発現するための軟骨細胞の使用
この実施例は糖尿病に対して一定の動物体モデルにおいてインスリンを発現する等のような、一定の自己免疫疾患の改善のための一定の治療薬を発現するために遺伝的に変性されている軟骨細胞の使用を説明している。
【0115】
上記の軟骨細胞はインスリンの遺伝子を発現するために上記実施例2において説明されているように遺伝的に変性されており、上記実施例5において説明されているように生物学的なゲル基質物質の中に置かれている。この固形のゲルのスライス、または接触時に凝固する一定の液体のゲルを一定のインスリンの動物体モデルの中に(例えば、膵臓の中に)置いて(例えば、ワング(Wong)他、上記を参照されたい)、その血液グルコースの量の変化を観察することができる。
【0116】
実施例8神経変性性疾患に対応する一定の非典型的な軟骨細胞の環境においてGABAを発現するための軟骨細胞の使用
この実施例はパーキンソン病に対応する一定の動物体においてGABAを発現するために遺伝的に変性されている軟骨細胞の使用を説明している。これらの軟骨細胞はGABAを発現するために上記実施例2において説明されているように遺伝的に変性されていて、上記実施例5において説明されているように生物学的なゲル基質物質の中に置かれている。この固形のゲルのスライス、または接触時に凝固する一定の液体のゲルをパーキンソン病に対応する一定のモデルの脳における一定の領域(例えば、視床下核)の中に置いて(例えば、ブジェルクルンド(Bjorklund)他、上記を参照されたい)、そのパーキンソン病の症状の改善をその動物体の行動の変化をモニターすることにより観察することができる(例えば、一定の迷路検査による)。
【0117】
当該技術分野における熟練者であれば、上記の種々の実施形態に基づいて本発明のさらに別の特徴および利点を認識することが可能になる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲により示されている内容を除いて、上記の特定的に図示および説明されている内容により限定されない。また、本明細書において引用されている全ての刊行物および参考文献はそれぞれの内容の全体において本明細書に特別に含まれている。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は種々の治療薬を発現するためのビヒクルとして遺伝的に変性されている種々の軟骨細胞を使用するための方法および組成物に適用できる。本発明の方法は特に一般的に軟骨細胞に関連していない局在化した種々の環境の中において治療薬を発現するための種々の軟骨細胞の使用に関連している。具体的に言えば、上記の遺伝的に変性されている軟骨細胞は中枢神経系(例えば、脳または脊髄)等のような種々の局在化した環境の中に、あるいは、種々の充実性の器官(例えば、心臓、肝臓または腎臓)の中に、種々のタンパク質または抗体等のような、治療薬を発現するために使用できる。この種の治療薬の局在化した配給および発現はその治療薬の全身系的な投与により生じる必然的な副作用を伴わずに特定の領域内における一定の局在化した治療薬の集中を生じる。また、上記の遺伝的に変性されている軟骨細胞は、生物学的な種々のゲル(例えば、ヒドロゲル)等のような、適当な基質物質を用いて上記のような種々の環境の中に導入できる。
【0119】
本発明の具体的な実施態様は以下のとおりである。
(A)一定の治療薬を発現するために使用する遺伝的に変性されている軟骨細胞において、当該遺伝的に変性されている軟骨細胞が一定の疾患に関連する一定の細胞に配給されてその細胞の周囲の一定の環境を改質するために有効であり、前記遺伝的に変性されている軟骨細胞が前記細胞の周囲の環境の中において構造的に機能的でない遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(B)一定の疾患に関連する一定の標的領域内において一定の治療薬を発現するために使用する遺伝的に変性されている軟骨細胞において、当該遺伝的に変性されている軟骨細胞が前記標的領域に配給されて前記治療薬を発現してその標的領域および当該標的領域の周囲の一定の環境を改質するために有効であり、前記遺伝的に変性されている軟骨細胞が前記標的領域または当該標的領域の周囲の環境の中において構造的に機能的にならない遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(C)一定の遺伝的に変性されている軟骨細胞を用いて一定の疾患に関連する一定の細胞の環境を改質するための方法において、
一定の遺伝的に変性されている軟骨細胞を提供する工程を含み、この場合に、その遺伝的に変性されている軟骨細胞が一定の治療薬を発現するように変性されており、さらに
前記遺伝的に変性されている軟骨細胞が前記細胞の周囲の環境の中において構造的に機能的にならないようにその遺伝的に変性されている軟骨細胞を一定の疾患を伴う一定の細胞の環境に配給する工程、および
前記細胞の周囲の環境を改質するために十分な一定の量に前記治療薬を発現する工程を含む方法。
(D)一定の遺伝的に変性されている軟骨細胞を用いて一定の被験体内における一定の疾患または傷害を改善するための方法において、
一定の遺伝的に変性されている軟骨細胞を供給する工程を含み、この場合に、その遺伝的に変性されている軟骨細胞が一定の治療薬を発現するように変性されており、さらに
前記被験体の一定の標的領域の中に一定の遺伝的に変性されている軟骨細胞を含む生体適合性の基質を移植する工程を含み、この場合に、その遺伝的に変性されている軟骨細胞が前記標的領域または当該標的領域の周囲の一定の環境の中において構造的に機能的ではなく、さらに
前記疾患を改善するために十分な一定の量で前記標的領域内において前記治療薬を発現する工程を含む方法。
(1)前記軟骨細胞が一定のタンパク質、一定の抗体の作用薬または拮抗質、一定の抗原、一定のホルモン、一定の抗炎症薬、一定の抗ウイルス薬、一定の抗菌薬、一定の増殖因子、一定のサイトカイン、一定のオンコジーン、一定の腫瘍抑制因子、一定の膜内外レセプタ、一定の接着分子、一定の神経伝達物質、一定の形態発生タンパク質、一定の分化因子、一定の酵素、および一定の細胞外基質タンパク質から成る群から選択される一定の治療薬を生成する実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(2)前記治療薬が一定のエリスロポイエチンのタンパク質である実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(3)前記治療薬が一定のエリスロポイエチンの擬似体である実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(4)前記一定の疾患に関連する細胞が一定の非典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(5)前記非典型的な軟骨細胞の環境が脳、心臓、肝臓、腎臓、胃腸管、脾臓、平滑筋、骨格筋、目、神経節、肺、生殖腺、および膵臓から成る群から選択される一定の器官の中にある実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
【0120】
(6)前記非典型的な軟骨細胞の環境が血液および血漿から成る群から選択される一定の水性の環境である実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(7)前記一定の疾患に関連する細胞が一定の典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(8)前記典型的な軟骨細胞の環境が骨、腱および軟骨から成る群から選択される実施態様(7)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(9)さらに、前記遺伝的に変性されている軟骨細胞と共に混合されている一定の生体適合性の基質を含む実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(10)前記生体適合性の基質がゲル基質物質である実施態様(9)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
【0121】
(11)前記一定の疾患に関連する細胞が一定の血管障害に関連する一定の細胞、一定の心臓血管障害に関連する一定の細胞、一定の内分泌障害に関連する一定の細胞、一定の自己免疫障害に関連する一定の細胞、一定の神経学的な障害に関連する一定の細胞、一定の皮膚障害に関連する一定の細胞、受胎能障害に関連する一定の細胞、および生殖に関連する一定の細胞から成る群から選択される一定の細胞である実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(12)前記軟骨細胞が一定のタンパク質、一定の抗体の作用薬または拮抗質、一定の抗原、一定のホルモン、一定の抗炎症薬、一定の抗ウイルス薬、一定の抗菌薬、一定の増殖因子、一定のサイトカイン、一定のオンコジーン、一定の腫瘍抑制因子、一定の膜内外レセプタ、一定の接着分子、一定の神経伝達物質、一定の形態発生タンパク質、一定の分化因子、一定の酵素、および一定の細胞外基質タンパク質から成る群から選択される一定の治療薬を生成する実施態様(A)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(13)前記治療薬が一定のエリスロポイエチンのタンパク質である実施態様(B)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(14)前記治療薬が一定のエリスロポイエチンの擬似体である実施態様(B)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(15)前記標的領域が一定の非典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(B)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
【0122】
(16)前記非典型的な軟骨細胞の環境が脳、心臓、肝臓、腎臓、胃腸管、脾臓、平滑筋、骨格筋、目、神経節、肺、生殖腺、および膵臓から成る群から選択される一定の器官の中にある実施態様(15)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(17)前記非典型的な軟骨細胞の環境が血液および血漿から成る群から選択される一定の水性の環境である実施態様(15)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(18)前記標的領域が一定の典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(B)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(19)前記典型的な軟骨細胞の環境が骨、腱および軟骨から成る群から選択される実施態様(18)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(20)さらに、前記遺伝的に変性されている軟骨細胞と共に混合されている一定の生体適合性の基質を含む実施態様(B)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
【0123】
(21)前記生体適合性の基質がゲル基質物質である実施態様(20)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(22)前記疾患が一定の血管障害、一定の心臓血管障害、一定の内分泌障害、一定の自己免疫障害、一定の神経学的な障害、一定の皮膚障害、一定の受胎能障害および生殖から成る群から選択される実施態様(B)に記載の遺伝的に変性されている軟骨細胞。
(23)前記遺伝的に変性されている軟骨細胞が一定のタンパク質、一定の抗体の作用薬または拮抗質、一定の抗原、一定のホルモン、一定の抗炎症薬、一定の抗ウイルス薬、一定の抗菌薬、一定の増殖因子、一定のサイトカイン、一定のオンコジーン、一定の腫瘍抑制因子、一定の膜内外レセプタ、一定の接着分子、一定の神経伝達物質、一定の形態発生タンパク質、一定の分化因子、一定の酵素、および一定の細胞外基質タンパク質から成る群から選択される一定の治療薬を生成するために遺伝的に変性されている実施態様(C)に記載の方法。
(24)前記治療薬が一定のエリスロポイエチンのタンパク質である実施態様(C)に記載の方法。
(25)前記治療薬が一定のエリスロポイエチンの擬似体である実施態様(C)に記載の方法。
【0124】
(26)前記疾患に関連する細胞が一定の非典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(C)に記載の方法。
(27)前記非典型的な軟骨細胞の環境が脳、心臓、肝臓、腎臓、胃腸管、脾臓、平滑筋、骨格筋、目、神経節、肺、生殖腺、および膵臓から成る群から選択される一定の器官の中にある実施態様(26)に記載の方法。
(28)前記非典型的な軟骨細胞の環境が血液および血漿から成る群から選択される一定の水性の環境である実施態様(26)に記載の方法。
(29)前記疾患に関連する細胞が一定の典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(C)に記載の方法。
(30)前記典型的な軟骨細胞の環境が骨、腱および軟骨から成る群から選択される実施態様(29)に記載の方法。
【0125】
(31)さらに、前記遺伝的に変性されている軟骨細胞と共に一定の生体適合性の基質を混合する工程を含む実施態様(C)に記載の方法。
(32)前記生体適合性の基質がゲル基質物質である実施態様(31)に記載の方法。
(33)前記標的領域が一定の非典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(D)に記載の方法。
(34)前記非典型的な軟骨細胞の環境が脳、心臓、肝臓、腎臓、胃腸管、脾臓、平滑筋、骨格筋、目、神経節、肺、生殖腺、および膵臓から成る群から選択される一定の器官の中にある実施態様(33)に記載の方法。
(35)前記非典型的な軟骨細胞の環境が血液および血漿から成る群から選択される一定の水性の環境である実施態様(33)に記載の方法。
【0126】
(36)前記標的領域が一定の典型的な軟骨細胞の環境の中にある実施態様(D)に記載の方法。
(37)前記典型的な軟骨細胞の環境が骨、腱および軟骨から成る群から選択される実施態様(36)に記載の方法。
(38)さらに、前記生体適合性の基質を移植する工程が一定のゲル基質物質を移植する処理を含む実施態様(D)に記載の方法。
(39)前記ゲル基質物質がアルギネート、多糖類、およびアガロースから成る群から選択される実施態様(38)に記載の方法。
(40)前記移植されるゲル基質物質の寸法が前記治療薬を発現するために利用可能な当該ゲル基質物質内における軟骨細胞の濃度を決定する実施態様(38)に記載の方法。
【0127】
(41)前記ゲル基質物質内における軟骨細胞の濃度が0.05ml乃至10mlの一定のゲル基質の容積における1ml当たりに約10,000個乃至10,000,000個の細胞である実施態様(40)に記載の方法。
(42)前記疾患が一定の血液障害、一定の自己免疫障害、一定のホルモン性の障害、一定の抗炎症性の障害、一定の受胎能障害、および一定の神経変性性の障害から成る群から選択される実施態様(D)に記載の方法。
(43)前記傷害が一定の傷、一定の骨の欠損、一定の軟骨の欠損、一定の皮膚の傷、および一定の断裂した靭帯から成る群から選択される実施態様(D)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】培養したウシの軟骨細胞の一定の写真である。
【図2】(A)は、緑色蛍光タンパク質(GFP)によりトランスフェクションした軟骨細胞の一定の相対比写真である。(B)は、緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を示している図2Aによる一定の軟骨細胞の写真である。
【図3】(A)は、人間の軟骨細胞からのEPOの発現を示している一定のグラフ図である。(B)は、 ウシの軟骨細胞からのEPOの発現を示している一定のグラフ図である。
【図4】人間の軟骨細胞からのEPO擬似体の発現を示している一定のグラフ図である。
【図5】(A)は、一定の単一層に増殖している脱分化した軟骨細胞を示している写真である。(B)は、分化した軟骨細胞の一定の相対比写真である。(C)は、 軟骨細胞により沈降した軟骨基質の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝的に変性されている軟骨細胞を用いて疾患または傷害に関連する細胞の環境を改質するための方法において、
遺伝的に変性されている軟骨細胞を提供する工程を含み、この場合に、その遺伝的に変性されている軟骨細胞が治療薬を発現するように変性されており、さらに
前記遺伝的に変性されている軟骨細胞が前記細胞の周囲の環境の中において構造的に機能的にならないようにその遺伝的に変性されている軟骨細胞を疾患を伴う細胞の環境に配給する工程、および
前記細胞の周囲の環境を改質するために十分な量に前記治療薬を発現する工程を含む方法。
【請求項2】
前記疾患に関連する細胞が非典型的な軟骨細胞の環境の中にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝的に変性されている軟骨細胞を用いて被験体内における疾患または傷害を改善するための方法において、
遺伝的に変性されている軟骨細胞を供給する工程を含み、この場合に、その遺伝的に変性されている軟骨細胞が治療薬を発現するように変性されており、さらに
前記被験体の標的領域の中に遺伝的に変性されている軟骨細胞を含む生体適合性の基質を移植する工程を含み、この場合に、その遺伝的に変性されている軟骨細胞が前記標的領域または当該標的領域の周囲の環境の中において構造的に機能的ではなく、さらに
前記疾患を改善するために十分な量で前記標的領域内において前記治療薬を発現する工程を含む方法。
【請求項4】
前記標的領域が非典型的な軟骨細胞の環境の中にある請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非典型的な軟骨細胞の環境が脳、心臓、肝臓、腎臓、胃腸管、脾臓、平滑筋、骨格筋、目、神経節、肺、生殖腺、および膵臓から成る群から選択される器官の中にある請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
前記非典型的な軟骨細胞の環境が血液および血漿から成る群から選択される水性の環境である請求項2または4に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝的に変性されている軟骨細胞がタンパク質、抗体の作用薬または拮抗質、抗原、ホルモン、抗炎症薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、増殖因子、サイトカイン、オンコジーン、腫瘍抑制因子、膜内外レセプタ、接着分子、神経伝達物質、形態発生タンパク質、分化因子、酵素、および細胞外基質タンパク質から成る群から選択される治療薬を生成するために遺伝的に変性されている請求項1または3に記載の方法。
【請求項8】
前記治療薬がエリスロポイエチンのタンパク質である請求項1または3に記載の方法。
【請求項9】
前記治療薬がエリスロポイエチンの擬似体である請求項1または3に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記遺伝的に変性されている軟骨細胞と共に生体適合性の基質を混合する工程を含む請求項1または3に記載の方法。
【請求項11】
前記生体適合性の基質がゲル基質物質である請求項1または3に記載の方法。
【請求項12】
前記生体適合性の基質を移植する工程がゲル基質物質を移植する処理を含む請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル基質物質がアルギネート、多糖類、およびアガロースから成る群から選択される請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記移植されるゲル基質物質の寸法が前記治療薬を発現するために利用可能な当該ゲル基質物質内における軟骨細胞の濃度を決定する請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記ゲル基質物質内における軟骨細胞の濃度が0.05ml乃至10mlのゲル基質の容積における1ml当たりに約10,000個乃至10,000,000個の細胞である請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
前記疾患が血液障害、自己免疫障害、ホルモン性の障害、抗炎症性の障害、受胎能障害、および神経変性性の障害から成る群から選択される請求項1または3に記載の方法。
【請求項17】
前記傷害が傷、骨の欠損、軟骨の欠損、皮膚の傷、および断裂した靭帯から成る群から選択される請求項1または3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77089(P2012−77089A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1248(P2012−1248)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2004−260041(P2004−260041)の分割
【原出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(504202690)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Mitek,Inc.
【住所又は居所原語表記】249 Vanderbilt Avenue,Norwood,MA 02062,U.S.A.
【Fターム(参考)】