説明

軟骨組織欠損の予防または回復における、CXCL6ケモカインの使用

本発明は、安定軟骨組織を形成可能な細胞による、CXCL6の発現を開示している。本発明は、たとえば、軟骨組織または骨軟骨欠損の回復における、軟骨組織(および下の骨)形成を促進するための、これらの細胞、およびCXCL6の使用を記述している。本発明はさらに、始源細胞分化の調節における、ケモカイン類の使用を記述している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロおよびインビボにおける、軟骨および骨の形成に関し、特に、軟骨組織または骨軟骨欠損の回復、または美容外科における骨または軟骨組織の形成に関する。より詳しくは、本発明は、変形性関節炎にて発生するような、関節欠損の回復および予防に関する。本発明はさらに、軟骨形成細胞への始源細胞の分化の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン類は、7回膜貫通G−タンパク質結合レセプターのサブセットとの相互作用を介して、種々の型の白血球の細胞トラフィッキングを調節する、小さな(およそ8〜14kD)、ほとんど塩基性の、構造的に関連した分子の1群である。ケモカイン類は、成長、ホメオスタシスおよび免疫系の機能において、基礎的な役割を果たし、中枢神経系の細胞、ならびに血管新生またはアンジオスタシスに関与する内皮細胞において、効果を有する。ケモカインは、ケモカインタンパク質配列にておこる、4つの保存システイン残基の最初の2つの配列に基づいて、2つの主要なサブファミリー、CXCおよびCCに分かれ、CXCケモカイン類では、2つのシステインが、単一のアミノ酸によって分離され、CCケモカインでは隣接している。CXCケモカインはさらに、CXCモチーフに対して隣接し、N−末端である、glu−leu−arg配列(ELRモチーフ)が存在するか、またはしないかに基づいて、ELRおよび非ELR型に分けられる。異なるケモカインをグループ分けする新規の分類システムが、Zlotnik and Yoshie(2000、Immunity 12,121−127)によって提示され、この分類システムを表1に示す。
【0003】
【表1】

【0004】
ヒトケモカインGCP2は、もともと、刺激ヒトオステオサルコーマ細胞によって、インターロイキン8(IL−8)と共に、わずかな量で発現したタンパク質として発見された(Proost et al.(1993) Biochemistry 32,10170−10177)。GCP−2に関するヒト遺伝子は、114個のアミノ酸のタンパク質をコードしている。
【0005】
最初は「SCYB6」と命名され、もっとも最近の用語法にしたがって「CXCL6」であるGCP−2は、CXCL5に対するコードおよび非コード配列で、もっとも強力な配列類似性を示している(SCYB5/ENA−78(内皮細胞由来白血球誘因物質78(Epithelial cell−derived Neutrophil Attractant 78)。
【0006】
ヒトおよびウシにおいて、CXCL6タンパク質は、標準のインビトロ遊走アッセイにおいて、異なる活性を有しないように思われる、多数のN−末端短化形態で存在する(Proost et al.(1993)前掲)。28個までの、ネズミCXCL6のN−末端および/またはC−末端開裂バージョンが、繊維芽細胞および上皮細胞から単離された(Wuyts et al.(1999)J.Immunol.163,6155−6163、Van Damme et al.(1997)J Leukoc Biol 6,563−569)。これらのネズミCXCL6のN−末端短化バージョンは、インビ
トロおよびインビボにて、ヒトおよびネズミ白血球両方に対する、特定の走化強度において、劇的な差を示す。CXCL6は、単球上で走化性効果を持たない、特定の顆粒球誘因物質であると報告されている(Van Damme et al.(1997)前掲)。
【0007】
その名前が示唆するように、CXCL6はCXCケモカインである。これは、N−末端局在Glu−Leu−Arg配列(ELRモチーフ)によって特徴付けられる、CXCR1を介して作用する、白血球活性化ケモカイン類のサブグループに属する。IL−8と共に、CXCL6は、CXCモチーフの第二サイトカインの後の、第六位置にて、塩基性アミノ酸を有する、唯一のELR−含有サイトカインである。Wolf et al.((1998)Eur.J.immunol.28,164−170)によって、この塩基性アミノ酸が、CXCR1活性化に関する重要な決定基であることが示された。Wuytsら((1997)前掲)によってさらに、CXCL6が、CXCR1およびCXCR2レセプター両方に結合することが示された。
【0008】
一般的に、ケモカイン類は、関節リウマチにて観察される炎症性反応に関連して、骨軟骨分解に結びつけられてきた。Borzi et al.((1999)Febs Lett.455,235−242)およびPulsatelli et al.((1999)J.Rheumatol.26,1992−2001)は、正常な個人、変形関節炎(OA)および関節リウマチ(RA)患者から得た軟骨細胞中でのIL−8、Gro−アルファ、MCP−1、RANTES、MIP−1アルファおよびMIP1ベータの発現を示している。Borzi et al.((2002)Arthritis Rheum.46,3201−3211)は、軟骨組織マトリックス成分の破壊を導く、ケモカインおよびそのレセプターによって開始される、新規の異化経路の存在を示唆している。これらの著者にしたがって、ケモカイン類のアップレギュレーションは、関節疾患の発生および持続に関する。Votta et al.((2000)J Cell Physiol.183,196−207)は、CCケモカインCkベータ8が、骨再吸収の部位への、破骨細胞前駆体の補充において役割を果たすことを示唆している。一方、骨芽細胞は、このケモカインに応答しない。Alaaeddine et al.((2001)Arthritis Rheum.44,1633−1643)は、正常軟骨細胞およびOA軟骨細胞における、ケモカインRANTES(CCファミリーのメンバー)およびそのレセプターの発現を研究し、このケモカインの病因性活性を指定した。Kanbe et al.((2002)Arthritis Rheum.46,130−137)は、RAおよびOAにおける軟骨組織マトリックスの、滑液細胞仲介分解における、CXCケモカインSDF−1に関する役割を示唆した。Wuytsら((2003)Lab Invest.83,23−34)は、その発現レベルがIL−8の場合の約100分の1と少ないけれども、IL−1のような炎症サイトカイン類が、軟骨細胞でのCXCL6発現を誘導することを証明した。
【0009】
Silvestriら((2003)Rheumatology 42,14−18)は、炎症性関節炎および変形関節炎にて、ケモカインレセプターの発現を記述しているが、ケモカインそれ自体の発現は記述していない。ケモカインの活性が、分解の方向に、軟骨組織ホメオスタシスのバランスを傾けることが自明のこととして仮定される。欧州特許第EP08044865号は、炎症性状態に対する医薬品として、CXCL6の使用を示唆しており、一方で、米国特許第6,410,268号は、RAのような炎症性疾患の処置において、GCP2−アンタゴニスト使用の可能性を示唆している。後者はさらに、OAのような繊維化疾患の処置における、傷治癒を刺激するための、GCP−2の使用を示唆している。
【0010】
白血球に関連しない、細胞型の遊走におけるケモカイン類の役割が、最近持ち上がってきた。上掲のとおり、破骨細胞前駆体におけるCkベータ8の走化性効果が記述されてき
た(Votta et al.(2000)J Cell Physiol.183,196−207)。Doitsidouら((2003)Cell 11,647−59)およびWrightら((2002)J Exp Med.195,1145−1154)は、それぞれ、始源生殖細胞および造血幹細胞の遊走における、SDF−1およびそのレセプターCXCR4の役割を証明している。Kingら((2000)Blood 97,1534−1542および(2001)J.Immunol.164,3774−3782)は、CXCL2(GroBeta)のアミノ末端短化における、造血活性での劇的な増加を記述しており、この短化バージョンが、造血幹細胞を集結可能であることを示している。米国特許第6,410,268号では、癌および白血病の処置において適用可能である、特に骨髄幹細胞の、CXCL6を用いる、幹細胞集結における可能性のある役割について推測している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、たとえば美容外科において、骨または軟骨組織のインビトロまたはインビボでの形成における、ケモカインCXCL6の関与に関し、特に、関節欠損の回復および予防に関し、より詳しくは関節表面欠損に関する。さらに詳しくは、たとえば美容手術において、または変形性関節炎などの関節表面欠損の処置において、軟骨組織または骨のインビトロまたはインビボでの形成における、CXCL6、およびケモカインCXCL6を発現する軟骨形成特性を有する細胞集団の使用に関する。
【0012】
本発明は、幹細胞の、軟骨組織−形成細胞への分化が、ケモカインレセプターCXCR1に対する抗体によって、ケモカインレセプターCXCR2に対する抗体によってより小さな程度まで、特にCXCR1およびCXCR2両方のブロッキングによって、ひどく減少するか、阻害するという発見に基づいており、これは、ケモカインおよび1つまたはそれ以上のケモカインシグナル伝達経路が、軟骨組織または骨産出細胞への分化に関与することを示唆している。さらに、陽性マーカーとして、再生可能にケモカインCXCL6を発現している、安定軟骨組織を形成する潜在力を有する、細胞集団が発見された。本発明のさらなる発見は、CXCL6が、骨軟骨欠損の回復に関与することである。したがって、先行技術にて記述されたように、軟骨組織分解におけるケモカイン類の関与とは反対に、本発明は、インビトロまたはインビボでの、軟骨組織または骨の形成における、そして軟骨組織または骨軟骨欠損の回復における、CXCL6およびCXCL6発現細胞の使用に関する。
【0013】
本発明にしたがって、ケモカインCXCL6の使用が、軟骨組織または骨軟骨欠損、関節関連組織の欠損、または椎間板のような線維軟骨性質の他の組織の欠損の処置または予防、ならびにたとえば美容手術のような、他の適応症での、骨または骨軟骨の形成にて記述されている。より詳しくは、本発明は、CXCL6を用いる、軟骨組織または骨軟骨欠損における、ヒアリン軟骨組織(および下の骨)の刺激に関する。
【0014】
本発明の第一の態様は、インビボまたはインビトロでの、骨または軟骨組織形成の促進用の、医薬品の調製のための、CXCL6を記述している。特に、本発明は、軟骨組織または骨軟骨欠損の予防または処置のための、CXC6を記述している。本発明の本態様にしたがって、CXCL6の供給源は、天然物、組換え体または合成物であり得る。したがって、本発明は、インビボまたはインビトロでの、骨または骨軟骨形成の促進用の、CXCL6を含む組成物を記述している。特に、本発明の本態様の特定の実施形態にしたがって、そのようなCXCL6を含む組成物がさらに、軟骨形成細胞、すなわち、安定ヒアリン軟骨組織を産出可能な細胞、および/または軟骨形成細胞の前駆細胞を含みうる。あるいは、CXCL6は、遺伝子治療を介して投与される。
【0015】
本発明の第二の態様にしたがって、CXCL6を発現する細胞、より詳しくは、CXCL6を発現する軟骨形成細胞の使用が、インビボまたはインビトロにて、骨および/または軟骨組織の形成を促進することが記述されている。特に、CXCL6を発現する細胞、より詳しくは、CXCL6を発現する軟骨形成細胞の使用が、軟骨組織または骨軟骨欠損の処置または予防にて記述されている。したがって、本発明は、インビボでの骨または軟骨組織形成の促進用の、医薬品としての使用のための、より詳しくは、軟骨組織または骨軟骨欠損の予防および処置における使用のための、軟骨組織または骨軟骨欠損の予防または処置のための医薬品の調製用の、CXCL6を発現している細胞、より詳しくは軟骨形成細胞を含む組成物を記述している。
【0016】
本発明の特定の実施形態にしたがって、CXCL6発現軟骨形成細胞は、結合組織より、より詳しくは、滑膜より単離される。
【0017】
あるいは、本発明の他の態様にしたがって、CXCL6発現細胞は、好適な細胞、特に結合組織細胞内に、好適なプロモーターの制御下で、CXCL6をコードする外来DNAを導入することによって得られる。
【0018】
本発明の特定の態様にしたがって、CXCL6を発現する細胞を、インビボまたはインビトロでの、骨または軟骨組織形成の促進、または骨軟骨欠損の処置における使用のために、マトリックス内に埋め込む。
【0019】
あるいは、本発明の他の態様にしたがって、軟骨形成細胞による、CXCL6の内因性発現を誘導可能な、1つまたはそれ以上の化合物を含む、医薬組成物を、インビボにて、軟骨組織または骨の形成の促進のため、特に、軟骨組織または骨軟骨欠損の処置または予防において使用する。
【0020】
本発明は、インビトロまたはインビボ、または軟骨組織または骨軟骨欠損の処置または予防にて、骨または軟骨組織形成の促進のため、任意に軟骨形成細胞または軟骨形成前駆細胞の組み合わせでの、CXCL6および/またはCXCL6−発現細胞の使用、または内因性CXCL6発現を誘導する化合物の使用に関する。本発明の特定の態様にしたがって、CXCL6および/またはCXCL6−発現細胞(またはDNA)、または内因性CXCL6発現を誘導する化合物を、軟骨組織または骨形成の促進のため、または軟骨組織または骨軟骨欠損、より詳しくは、関節表面欠損の処置のため、局所に投与する。本発明の他の特定の態様にしたがって、そのような関節表面欠損は、変形関節炎にて観察される関節表面欠損などの炎症に関連しない。
【0021】
本発明のまた他の態様にしたがって、CXCL6の発現を、軟骨細胞表現型安定性に関するマーカーとして、すなわち、インビボにて、安定なヒアリン軟骨組織を産出する、軟骨細胞集団の能力をモニタするために使用する。したがって、本発明の態様にしたがって、CXCL6の発現を、インビボまたはインビトロでの、軟骨組織または骨形成の促進で、または軟骨組織欠損の処置および予防での使用に好適な、軟骨形成細胞集団を同定するためのマーカーとして使用可能である。
【0022】
本発明のまた他の態様にしたがって、1つまたはそれ以上のケモカイン経路を、始源細胞の分化を調節するために使用する。したがって、本発明は、始源細胞の、軟骨組織および骨−産出細胞の分化の調節のための、CXCR1および/またはCXCR2レセプターに対するリガンドまたは阻害因子の使用を記述している。さらに詳しくは、本発明にしたがって、CXCR1−2レセプターのいずれか、または両方のリガンドを、軟骨組織−産出細胞への分化を刺激するために使用し、一方、阻害因子を、軟骨組織産出細胞への分化を阻害するために使用する。
【0023】
特定の実施形態では、CXCR1(および/またはCXCR2)レセプターにケモカイン結合することによって分化を刺激する。さらに詳しくは、CXCL6を、始源細胞の、軟骨組織および/または骨形成細胞への分化を誘導するために使用する。したがって、本発明の本実施形態にしたがって、CXCL6を、インビトロまたはインビボでの、始源細胞の分化を刺激するために使用し、軟骨形成細胞の前駆細胞(「軟骨形成前駆細胞」)との組み合わせで、骨軟骨欠損に対して任意に投与する。
【0024】
本発明はさらに、前駆体細胞集団の軟骨細胞への分化を誘導する、または回復させるインビトロ法に関し、前記方法は、そのような前駆体細胞集団へ、CXCL6を投与するステップを含む。
【0025】
CXCL6の使用は、安定軟骨形成集団、すなわち、安定ヒアリン軟骨組織を産出可能な集団を維持する、または回復することを明らかにする。
【0026】
本発明はまた、インビボでの軟骨組織の促進および骨促進のための、(たとえば、植物抽出物のような)化合物、または化合物の混合物の検出のための方法に関し、前記化合物または化合物の混合物は、CXCL6シグナル伝達を調節し、前記方法が、細胞集団を、候補化合物および化合物の混合物と接触させること、およびCXCL6の調節された発現レベルを決定すること、を含む。細胞集団は、CXCLを発現する、またはCXCL6レベルの発現を測定するために適合する任意の細胞型であり得、より詳しくは、細胞集団は、軟骨細胞、軟骨細胞前駆体および軟骨細胞始源細胞からなる群より選択される。任意に、この方法は、1つまたはそれ以上の、前記軟骨細胞、軟骨細胞前駆体および軟骨細胞始源細胞集団の形態学的、または分子パラメータを決定する、追加方法を含む。
【0027】
本発明は、記述した特定の実施形態に限定されるものではなく、以下の実施例は、参照により本明細書に組み入れられる、添付の図と共に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書で使用されるように、「CXCL6」は、またSCYB6(小誘導可能サイトカインサブファミリーB、メンバー6)、またはGCP−2(顆粒球走化性タンパク質2(Granulocyte Chemotactic Protein2)(GenbankナンバーNP 002984およびP80162)としても呼ばれる、ケモカインに関する。全長タンパク質、および前記タンパク質のN−末端および/またはC−末端短化バージョンのような、修飾バージョンの両方を含み、ただし、前記修飾タンパク質が、軟骨細胞および軟骨細胞前駆体細胞のような、軟骨組織(および接続骨)回復のために有用な細胞に対する、走化活性を維持するという制限がある。短化は、限定はされないが、天然に存在するスプライシングバリアントおよび/または処理形態でありうる。可能なN−および/またはC−末端短化には、Wuyts et al.((1999)J.Immunol.163,61,6155−6163)によって記述されたものを含む。本発明にしたがったCXCL6修飾にはまた、ELRモチーフが、白血球誘引がおこらないレベルまで修飾または欠損されるもの、およびCXCモチーフの第二サイトカインの後ろ、第六位置での塩基性アミノ酸が修飾された、修飾バージョンも含まれる。本明細書で使用するCXCL6は、ケモカインの、(たとえば、天然にCXCL6を発現している細胞の上清から得られたもののような)天然、組換え体および合成バージョンに関する。CXCL6の好ましい実施形態は、Wuyts et al.((1997)前掲)によって記述されたような、75アミノ酸CXCL6である。本発明にて引用されたようなCXCL6にはさらに、CXCL6の融合産物、または任意に開裂部位を持つ、検出または精製のためのタグまたはドメインを持つ、その生物学的に活性な部分が含まれる。
【0029】
CXCL6を得る、または産出する手段が、当該技術分野で記述されている。その実施例を本明細書以下で要約しており、引用された刊行物は、参照によって、本明細書に組み込まれる。哺乳動物GCP−2は、サイトカインを産出するために刺激される、哺乳動物細胞試料を培養し、培地からCXCL6を精製することによって得ることができる。トランスフェクト細胞の条件培地から、他のケモカインCXCL6より精製するための四段階単離手順が、(Wutys et al.(1997)Methods Enzymol
287,13−33)に示されている。原核および真核発現−システム(酵母、バキュロウイルス、哺乳動物細胞)のような、本発明の時点で、当業者に公知の組換え体DNA技術を、CXCL6の産出のために使用可能である。Froyen et al.((1997)Eur J Biochem 243,762−769)は、大腸菌(E.Coli)のペリプラズマへのCXCL6の発現を記述している。COS細胞内、およびバキュロウイルス発現システム内でのCXCL6の発現が、米国特許第6,410,268号で記述されている。生物学的に活性なCXCL6はまた、化学合成、続いて、ジスルフィド結合の導入によって得られた(Wutys et al.(1997)前掲)。CXCL6を得るための方法はさらに、欧州特許第08044876号にて記述されている。
【0030】
本明細書で使用する用語「ケモカイン(Chemokine)」は、(Zlotnik
and Yoshie (2000)前掲、にその総説がある)約8,000〜14,000の分子量を持つ、小ペプチドに関し、白血球のような細胞の移動を指向可能である。
【0031】
「走化性(Chemotaxis)」は、化学化合物(すなわちケモカイン)に対する応答での細胞の移動を意味し、前記化学化合物によって、細胞が引きつけられるか(陽性走化性)、または反発される(陰性走化性)。走化性を測定するための異なる方法が、当該技術分野で記述されてきた。走化性は、たとえば、Nelson((1975)J.Immunol.115,1650−1656)によって記述されたように、アガロース下で測定可能であり、それによって、試験試料(すなわち走化性化合物)が、アガロース中に導入され、潜在的に応答性の細胞が、そこより特定の距離にて導入される。試験試料の走化性効果は、アガロース中の細胞の遊走距離を顕微鏡的に測定することによって決定する。陰性(すなわち化学誘引物質を含まない)および陽性(たとえば、公知の化学誘引物質である、fMLP)コントロールを含めて、それぞれ擬陽性および擬陰性を排除する。あるいは、走化性活性を、(Falk et al.((1980)J Immunol
Methods.33,239−247によって記述されたような)マイクロチャンバーを用いて測定可能である。マイクロチャンバーの下コンパートメントに試験試料をロードし、上コンパートメントを、細胞を含む培地でみたす。下および上コンパートメントを、5μmポア−サイズポリカーボネート膜によって分離する。インキュベーション期間の後、膜を取り除き、固定して染色し、試験試料の走化性効果を、膜を介して遊走した細胞の数をスコア化することによって決定する。再び陽性および陰性コントロールを含める。インビボ注入のような、化合物の走化性活性を測定するための他の方法が、当該技術分野で記述されている。
【0032】
「化学誘引物質(Chemoattractant)」は、前記化学化合物へ向かう細胞の遊走を誘導する、化学化合物を意味する。
【0033】
本明細書では、「応答性細胞(responsive cell)」は、ケモカインによって、誘引されるか、または反発される細胞を意味する。より詳しくは、本発明に関して、応答性細胞は、CXCL6によって誘引されるか、反発される細胞である。
【0034】
本明細書では、「安定ヒアリン軟骨組織(Stable hyaline cartilage)」は、血管浸潤(すなわち脈管化)繊維質組織または軟骨内骨形成の兆候のな
い軟骨組織を意味する。
【0035】
「表現型安定性(Phenotypic stability)」は、インビボにて、特定の組織、細胞をとった本来の組織、または細胞が、特定の条件下で形成されるように強要された異なる組織のいずれかを、組織化する、または再組織化する、細胞の能力の維持を意味する。
【0036】
表現型安定軟骨細胞は、安定ヒアリン軟骨組織を形成するその能力を維持する、軟骨細胞を意味する(また「軟骨細胞安定性(chndrocyte stability)」とも呼ばれる)。表現型安定軟骨細胞懸濁液または集団は、インビボにて、たとえば軟骨組織産出のための動物モデルにて、安定なヒアリン軟骨組織を産出する細胞懸濁液または集団の能力を意味する。好ましくは、モデルには、軟骨組織インプラントの形成の3週間のタイムフレーズでの、免疫−欠損マウスのような、哺乳動物中(インビボ)細胞懸濁液の注射、および評価が含まれ、それによって、軟骨組織インプラントが血管浸潤または軟骨内骨形成の兆候を示していない時に、安定ヒアリン軟骨組織が形成される。そのようなアッセイの例は、参照によって、本明細書に組み込まれている、国際特許第WO01/24833号に記述されている。
【0037】
「軟骨形成性(Chondrogenic)」は、軟骨組織増殖を促進、または刺激する能力を意味する。分子に関連する場合、本明細書で使用される軟骨形成性は、軟骨細胞のような細胞および軟骨細胞にそれ自体を分化する細胞に適用するときの、これらの細胞による軟骨組織形成を直接または間接的に促進または刺激する基質の能力を意味する。
【0038】
「軟骨形成細胞(Chondrogenic cells)」は、安定ヒアリン軟骨組織を産出可能な細胞である。
【0039】
本明細書では、「結合組織(connective tissue)」は、骨、軟骨組織、靱帯、腱、メニスカス、真皮、超真皮、筋肉、脂肪組織、関節カプセルを含む、哺乳動物の体内の、任意の多数の構造組織を意味する。
【0040】
本明細書では、「前駆体細胞(precursor cell)」は、特定の機能を実施するために、分化する能力を持つ細胞を意味する。さらに詳しくは、本発明に関して、軟骨形成細胞の前駆細胞は、安定ヒアリン軟骨組織を産出可能な細胞へ分化する能力がある前駆細胞である(また、「軟骨形成前駆細胞(chondrogenic precursor cell)」とも呼ばれる)。
【0041】
本明細書では、「CXCL6を発現する細胞集団(cell population expressing CXCL6)」は、少なくとも70%、好ましくは80%、特に85%、より具体的には90%、または任意に95%、またはそれ以上の細胞が、CXCL6を発現する細胞集団を意味する。そのような集団内の、CXCL6を発現する細胞は、蛍光活性自動化細胞ソーティング(Fluorescence Automated Cell Sorting (FACS))のような、当該技術分野で公知の方法によって同定可能である。
【0042】
本明細書では、「軟骨細胞表現型安定性に関するマーカー(marker for chondrocyte phenotypic stability)」は、集団内でのその発現が、軟骨細胞表現型安定性、すなわち、(本明細書で詳述したような)前記細胞集団のヒアリン軟骨組織を産出する能力に相関する、mRNAまたはタンパク質を意味する。
【0043】
本明細書では、CXCR1またはCXCR2に関する「リガンド(ligand)」は、CXCR1および/またはCXCR2レセプターを活性化可能な分子を意味する。CXCR1およびCXCR2レセプターに対するリガンドは、当該技術分野で記述されており、ケモカイン類(CXCL1−8)およびその誘導体、ならびに限定はしないが、米国特許第6,515,001号にて示されているもののような、合成分子が含まれる。
【0044】
CXCR1および/またはCXCR2の「阻害因子(inhibitor)」は、CXCR1および、またはCXCR2レセプターの活性化を阻害可能な分子を意味する。そのような阻害因子には、限定はしないが、米国特許第6,300,325号、第6,548,499号、第6,566,387号にて記述されたもののような、(たとえば市販のもの)阻害抗体および合成アンタゴニストが含まれる。
【0045】
本明細書では、「軟骨組織欠損(cartilage defect)」は、(また軟骨組織欠損としても呼ばれる)軟骨組織の破壊を含む欠損に関する。本発明に関して想定される特定の軟骨組織欠損は、関節表面欠損である。関節表面欠損は、1つまたはそれ以上の関節に対する物理的損傷の結果であり得、または遺伝的または環境的因子によって引き起こされうる。もっとも頻度良く、しかし排他的ではなく、そのような軟骨組織欠損は、膝にて起こり、たとえば、外傷、靱帯不安定、四肢不整、膝関節半月板切除、アシまたはモサイシプラスティ手順の失敗、または原発性離断性骨軟骨症によって引き起こされうる。本発明の特定の実施形態にしたがって、関節表面欠損が、変形関節炎(早期変形関節炎またはユニコンパーチメンタル骨軟骨欠損)に関しておこる。軟骨組織欠損は、関節軟骨組織と、その下の(肋軟骨下)骨に対して損傷がある場合に、骨軟骨欠損として意味される。通常、骨軟骨欠損は、大腿骨、頸骨および膝蓋骨の裏の末端にて、特定の体重がかかる部位にておこる。本発明に関する、軟骨組織欠損はまた、軟骨組織および/または骨の回復が、制限はしないが、美容外科(たとえば鼻、耳)のような、手術に関して必要とされる条件が含まれることも理解されるべきである。したがって、軟骨組織欠損は、軟骨組織形成が乱される、または軟骨組織が、遺伝子欠損によって、損傷を受けるか、または存在しない、より詳しくは、軟骨組織が、器官の構造または機能(たとえば、メニスカス、耳、鼻、喉頭、気管、気管支のような構造、心臓弁の構造、肋骨の部分、軟骨結合、エンセセス)のために重要である、体内のどこでも発生しうる。
【0046】
本発明はさらに、限定はしないが、半月板裂傷または半月板劣化、靱帯決裂のような、関節関連組織(たとえば半月板、靱帯)の欠損の処置および予防における、CXCL6の使用に関する。この処置は、治癒工程および回復の質を加速させる、または改善するために、古典的な処置との共処置でありうる。椎間板のような、同様の繊維−軟骨組織構造を持つ他の組織のさらなる欠損が、本明細書の範囲内で考慮される。
【0047】
本明細書で使用する用語「遺伝子(gene)」は、プロモーター、5’非翻訳領域(5’UTR)、(タンパク質をコードしていて良く、していなくても良い)コード領域およびポリアデニル化部位を含む、非翻訳3’領域(3’UTR)のような、いくつかの動作可能に連結したDNA断片を含む、任意のDNA配列を意味する。典型的に植物細胞内で、5’UTR、コード領域および3’UTRが、タンパク質コード遺伝子の場合、コード領域が、タンパク質に翻訳される、RNAに転写される。遺伝子には、たとえばイントロンのような、さらなるDNA断片が含まれうる。本発明に関して、細胞内に存在する遺伝子またはDNA配列に対して「外来(foreign)」は、遺伝子またはDNA配列が、細胞内の遺伝子座にて、天然にみることができないことを示唆するために使用される。
【0048】
本明細書で使用する用語「プロモーター(promoter)」は、その配列が、転写の開始の間に、DNA−依存RNAポリメラーゼによって(直接的または間接的に)認識
される、そして転写開始部位、転写開始因子およびRNAポリメラーゼに対する結合部位を含む、DNA領域を意味する。プロモーターはまた、エンハンサーまたは転写の阻害因子のような、他の調節タンパク質に関する結合部位を含んでも良い。
【0049】
本発明の特定の実施形態にしたがって、CXCL6が、軟骨形成細胞または軟骨形成前駆体細胞との組み合わせで、医薬品として使用される。軟骨形成細胞の前駆体細胞には、骨髄または臍帯を含む、異なる組織から得ることが可能な幹細胞が含まれる。軟骨形成前駆体細胞として特に適応するのは、国際特許第WO01/25402号にて記述されたもののような、軟骨組織産出細胞へ分化可能である、滑膜から得ることが出来るもののような、骨格前駆体細胞である。
【0050】
本発明の他の態様にしたがって、CXCL6を発現する細胞を、軟骨組織または骨軟骨欠損の回復のために使用する。任意に、CXCL6発現細胞は、軟骨形成細胞である。本発明に関する使用のための、軟骨形成細胞は、小軟骨組織生検から得た細胞の拡大によって得ることができる。軟骨または骨軟骨欠損の処置および/または予防での使用のための、CXCL6−発現細胞は、自系(自己)または同種異型であってよく、ファミリーメンバー(関連)から、または1またはそれ以上の未関連ドナーからのいずれかでありうる。そのような細胞は、新鮮に単離、培養または継代可能である。
【0051】
CXCL6の発現は、当該技術分野で記述された技術を用いて、mRNAまたはタンパク質レベル上でモニタ可能である。発現または発現がないことは、任意に、該細胞集団または細胞のCXCL6の発現を、陽性コントロール(たとえばベータ−アクチンのような、構造タンパク質)および陰性コントロールと比較することによって確認可能である。任意に、CXCL6の発現は、(参照によって本明細書に組み込まれた、国際特許第WO01/24833号にて記述されたような)軟骨細胞に関するALK−1のような、軟骨細胞表現系安定性に関する陰性マーカーの発現に対する、CXCL6発現の比として定量可能である。
【0052】
あるいは、好適なプロモーターの制御下、CXCL6をコードする配列の導入によって、CXCL6を発現する細胞を、得ることが出来、またはCXCL6−発現細胞の外来性発現を補足可能である。CXCL6をコードするDNA配列は、限定はしないが、米国特許第6,410,268号にて記述されたDNA配列のように、当該技術分野で記述されている。CXCL6をコードするDNA配列の発現を制御するために好適なプロモーターは、当該技術分野で記述されてきており、構造性および誘導可能プロモーターが含まれる。異なる細胞型を、本発明の本態様にしたがって使用可能である。好ましくは、軟骨組織または骨軟骨欠損の処置または予防のために使用される細胞は、(軟骨細胞のような)軟骨形成性であるか、または軟骨形成細胞(前駆体細胞、幹細胞)へ発展可能な細胞である。外来DNAのこれらの細胞への導入は、(たとえば、Eiges et al.(2001)Curr Biol 11,514−518および米国特許第6,413,511号など)当該技術分野で記述されている。
【0053】
本発明の他の態様にしたがって、CXCL6産出は、CXCL6−産出細胞によるCXCL6産出を誘導可能な化合物の投与によって、関節中で、内因的に刺激される。好ましくは、本化合物は、軟骨細胞のような、軟骨形成細胞中で、CXCL6を誘導可能な化合物である。インビトロにて、軟骨細胞中で、CXCL6産出を誘導可能な化合物が、当該技術分野で記述されており、IL−1ベータ、LPSおよびポリrl:rCが含まれる。骨形成細胞による、CXCL6発現を刺激可能な他の化合物は、古典的誘導実験によって同定可能である。1つまたはそれ以上の候補化合物の存在下でインキュベートした軟骨形成または前駆体細胞は、CXCL6の他の発現(RT−PCR、抗体染色)、および/または形態学的パラメータ類(細胞形態、組織学的染色)に関して、または分子パラメータ
類(前駆体細胞の軟骨形成能力に、陽性に、または陰性に関連した、前駆体細胞によるマーカーの発現、または前駆体細胞の分化、または軟骨形成細胞の成熟後、成熟軟骨細胞の軟骨細胞安定性と陽性に、または陰性に関連したマーカーの発現)に関して、スクリーニング可能である。同様のスクリーニングを実施して、骨形成細胞中のCXCL6発現における、化合物の効果をアッセイ可能である。したがって、本発明は、細胞の軟骨形成および/または骨形成の可能性を調節する化合物に関してスクリーニングするための方法を提供する。
【0054】
あるいは、CXCL6のプロモーターを含む、レポーター構造は、(ルシフェラーゼ、LacZ、Green Fluorescent Protein、クロラムフェニコールトランスフェラーゼのような)レポーター遺伝子に動作可能に連結する。化合物の投与に際して、レポーター遺伝子の発現の変化した(減少した、または増加した)レベルを同定する。これらのレポーターアッセイは、転写/翻訳アッセイにてインビトロにて実施可能であり、任意の細胞株への、しかし好ましくは、結合組織から、または軟骨組織から由来した細胞株または細胞集団内での、レポーター構造のトランスフェクションの後、インビボで実施可能である。
【0055】
インビボおよびインビトロアッセイ両方によって、CXCL6発現、およびそこで関連している軟骨形成および/または骨形成におけるその効果に対する、化合物ライブラリーの大規模スクリーニングが可能になる。
【0056】
発現レベルおよび/またはCXCL6シグナル伝達の活性をダウンレギュレートする化合物の使用は、軟骨細胞の過剰活性または過剰増殖に関連している疾患の処置において、その適用を持つ。これらの化合物は、以上で言及したスクリーニング方法で同定可能である。CXCL6シグナル伝達のダウンレギュレーションに関して好適な他の化合物には、CXL6またはそのレセプターの1つ関するアンチセンスRNAまたは二本鎖RNA(RNAi)、CXCL6に対する、またはそのレセプターの1つに対する抗体または抗体断片が含まれる。あるいは、可溶性レセプターを使用可能であるか、またはリガンドまたはレセプターいずれかに結合し、続いて、リガンドレセプター相互作用を阻害する、CXCL6の部分またはそのレセプターの1つの部分を使用可能である。
【0057】
本発明のまた他の態様にしたがって、CXCL6を、インビトロにて、骨および軟骨組織の形成のために使用する。これは、再生手術のための自己軟骨形成または骨移植片の産出にて使用される。軟骨組織産出細胞および/または軟骨組織−産出細胞の前駆体を、軟骨組織欠損へ続いて移植される、合成軟骨組織−様物質を形成するために、CXCL6の存在下、任意にマトリックス上またはゲル中で、インビトロにて培養する。インビトロでの軟骨組織および骨形成のための方法は、(限定はしないが、国際特許第WO01/68811号、第WO97/18842号、第WO02/070030号、米国特許第5,786,217号、第5,723,331号および国際特許第WO98/32333号にて記述された方法のように)当該技術分野で記述されている。
【0058】
本発明のまた他の態様にしたがって、CXCL6の発現を、拡大軟骨形成細胞または細胞集団の、インビボで、安定なヒアリン軟骨組織を形成するための、そして任意に拡大細胞集団内で、表現型的に安定な軟骨細胞を選別するための能力に関するマーカーとして使用可能である。したがって、本発明にしたがって、軟骨形成細胞または細胞集団、特に軟骨細胞集団を、CXCL6が、前記細胞または細胞集団によって発現されているか、いないかに基づいて、安定なヒアリン軟骨組織を産出可能であると同定可能である。任意に、同定は、CXCL6、および1つまたはそれ以上のマーカー類の存在に基づいて行うことが出来る。さらなるマーカー類は、陽性マーカー類(すなわち、軟骨細胞表現型安定性に陽性に関連したマーカー類)、または陰性マーカー類(国際特許第WO01/24833
号にて開示されたもののような、軟骨細胞表現型安定性に陰性に関連した)陰性マーカー類のいずれかであり得る。任意に、細胞または細胞集団の同定は、(軟骨細胞集団に関するALK−1のような)該細胞集団に関する軟骨細胞表現型安定性に対する陰性マーカーの発現に対する、CXCL6の発現の比に依存して実施可能である。好ましくは、この比は、2:1またはそれ以上、より具体的には5:1またはそれ以上でありうる。軟骨細胞表現型安定性に関するマーカーの使用は、(自己細胞移植(ACT)でのような)骨軟骨欠損の予防または回復での使用のために、細胞集団の品質制御および選別を含む、多数の適用のために、軟骨形成細胞の継代細胞拡大による継代のモニタリングのために、そして軟骨細胞表現型安定性を得るため、または維持するために好適な培養状態を同定するために、興味深い。(たとえば、定期検出のための、DNAアレイまたはDNAチップにて)軟骨細胞表現型安定性に対する陽性マーカーを用いるための、そのような適用および方法が、国際特許第WO01/24833号に記述されている。
【0059】
本発明のまた他の実施形態にしたがって、CXCL6を、軟骨細胞集団の軟骨細胞表現型安定性を維持するため、またはその軟骨細胞表現型安定性を欠いた細胞集団へ、CXCL6を加えることに使用可能であり、およびシグナル伝達経路を回復させることによって、軟骨細胞表現型安定性を回復させるために使用可能である。本発明にしたがって、細胞培養培地へのCXCL6の適用によって、インビボにて細胞が、その安定ヒアリン軟骨組織を産出する能力を維持することが確実となる。
【0060】
同様に、CXCL6シグナル伝達が、軟骨細胞への前駆体細胞の分化に対して必要であることがわかった。細胞培養培地へのCXCL6の投与が、軟骨細胞への前駆体細胞の適切な分化を確実にする。あるいは、CXCL6を、軟骨細胞へ分化させるその能力を欠いている、軟骨細胞前駆体集団のシグナル伝達経路を回復させるために使用する。
【0061】
CXCL6および/またはCXCL6−産出細胞、および/またはCXCL6−誘導化合物を、本発明にしたがって、軟骨組織または骨軟骨欠損の処置において、医薬組成物として適用する。本発明にしたがった医薬組成物は、必要ならば、好適な医薬担体と共に、CXCL6および/またはCXCL6−産出細胞、および/またはCXCL6−誘導化合物を含む組成物に関する。
【0062】
任意に、本発明の医薬組成物は、さらに、軟骨組織の産出を促進する化合物(および必要ならば下の骨)、すなわち、限定はしないが、伝達増殖因子および骨形態タンパク質のような、軟骨形成化合物を含んで良い。
【0063】
本明細書では、好適な医薬担体は、医学的または獣医学的目的に好適であるが、毒性ではなく、許容不可能ではない担体に関する。そのような担体は、当該技術分野で周知であり、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびその組み合わせが含まれる。処方は、投与様式に適合すべきである。
【0064】
本発明の治療適用には、塗布、注射、埋め込みまたは器具として局所的に、CXCL6またはCXCL6−産出細胞を含む組成物を投与することが含まれる。投与したときに、本発明での使用に対する治療組成物は、好ましくは、発熱物質を含まない、生理学的に許容可能な形態である。さらに、組成物は、望ましくは、軟骨組織(および下の骨)損傷の部位への送達のために、粘性形態で、カプセル封入されるか、または注入されうる。他の治療的に有用な試薬はまた、任意に、以上で記述したような組成物中に任意に含まれ得、あるいはまたは追加的に、本明細書の組成物と、同時にまたは連続的に投与しうる。軟骨組織形成のために好ましくは、組成物には、軟骨組織損傷の部位へ、CXCL6タンパク質を送達可能なマトリックスを含みうる。
【0065】
本明細書で使用する用語マトリックスは、軟骨組織または骨軟骨欠損に適用可能な基質を意味する。その機能は、本発明にしたがったCXCL6のような、生物分子の「担体」のものであり得るが、マトリックスはまた、それ自体で、機能回復もしうる。したがって、1つの実施形態にしたがって、その大きさおよび形態は、欠損が回復するように、軟骨組織または骨軟骨欠損に順応する。マトリックスは、シートまたはテープ形態として構成可能である。マトリックスは、合成重合性物質および基質を含む、任意の好適な物質から構成されうる。マトリックスの例は、生物分解性および化学的に確定した硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリグリコール酸および無水物である。他の可能性のある物質は、骨または皮膚コラーゲンのような、生物分解性であり、生物学的によく確定している。さらなるマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリックス成分からなる。他の可能性あるマトリックスは、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミン酸塩または他のセラミックスのような、非生物分解性であり、化学的に定義される。マトリックスは、任意の以上で言及した型の物質の組み合わせからなりうる。マトリックスはまた、定義されていない形態も持ち得、非固体物質またはゲル−様でありうる。好ましくは、マトリックスは、生物再吸収性である。マトリックスは、適用に依存して、架橋されるかまたはされないか、いずれかでありうる。マトリックスの例は、参照によって本明細書に組み込まれた、米国特許第6,514,514号にて記述される。本発明の特定の実施形態にしたがって、マトリックスにより、骨軟骨欠損への、勾配でのCXCL6の投与が可能になる。勾配は、欠損にて必要な回復の可変程度、および/または軟骨組織(低濃度)の骨(高濃度)への変化に比例可能である。CXCL6の勾配を、たとえば、ポアサイズの勾配を持つマトリックスを用いることによって、適用可能である。そのようなマトリックスを、CXCL6を含む重合可能な溶液でみたすことによって、CXCL6の濃度勾配となる。
【0066】
本発明にしたがった化合物を含む、CXCL6またはCXCL5の治療適用はまた、送達システムの方法による適用も含み、制御放出が可能になる。これは、たとえば、ポリエステル類、ポリアミノ−酸類、ポリビニル−ピロリドン、エチレンン−ビニル酢酸コポリマー類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース類、硫酸プロタミンなどのような、適切なポリマー担体を選択することによって達成可能である。薬物放出の速度および活性の期間はまた、当業者に公知の、ハイドロゲル類、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリメチルエタクリレートおよび他のポリマー類のような、重合化基質の粒子、たとえばマイクロカプセルへ活性成分を組み込むことによって制御することができる。そのような方法には、リポソーム類、ミクロスフィア類、ミクロエマルジョン類、ナノ粒子類、ナノカプセル類などのような、コロイド薬物送達系が含まれる。投与の経路に依存して、本発明のCXCL6またはCXCL6誘導化合物を含む医薬組成物は、保護コーティングを必要と。
【0067】
CXCL6の投与を含む治療はまた、インビボでのCXCL6の発現、すなわち遺伝子治療を介して、得ることも可能である。したがって、たとえば、患者からの細胞を、エキソビボによって、CXCL6ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)で遺伝子工学的に改変し、ついで改変された細胞を、ポリペプチドで処置すべき患者に提供してよい。そのような方法は、当該技術分野で周知である。たとえば、細胞を、本発明のポリペプチドをコードしているRNAを含むレトロウイルス粒子の使用によって、当該技術分野で公知の手順によって改変して良い。あるいは、CXCL6をコードしているDNAを含んでいる(リポソームまたはミセルのような、感染性ウイルス粒子または非−ウイルス粒子のような)ベクターを、当該技術分野で記述した方法にしたがって、インビボにて、CXCL6−発現細胞の遺伝子工学的改変のために使用可能である。整形外科における遺伝子治療の適用が記述されており(Evans & Robbins(2000)Orthop Nurs 19,16−22にその総説がある)、CXCL6を用いる遺伝子治療の方法が、米国特許第6,410,268号に記載されている。本
発明の好ましい実施形態にしたがって、CXCL6の発現のために遺伝子工学的に改変した細胞、またはインビボにて、DNAの導入のためのベクターを、処置すべき、軟骨組織または骨軟骨欠損の環境に、局所で投与する。
【0068】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つまたはそれ以上の成分で充填した、1つまたはそれ以上の容器を含む、医薬パックまたはキットも提供する。そのような容器(類)には、ヒト投与のための、薬品または生物学的産物の製造、使用または販売を規制する行政機関によって規定された形式の表示を付すことが可能であり、この表示から該行政機関による認可が示される。さらに、本発明のポリペプチドまたは細胞を、他の治療的化合物と組み合わせで使用しうる。
【0069】
本明細書では、「含む(comprising)」は、1つまたはそれ以上の特徴、整数、段階または成分、またはそれらの群の存在または追加を、意味するが、排除しないような、規定された特徴、整数、段階、試薬または成分の存在を特定することとして解釈されるべきである。したがって、たとえば、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列を含む核酸またはタンパク質が、実際に引用されたものよりも多いヌクレオチドまたはアミノ酸を含んで良く、すなわち、より大きな核酸またはタンパク質を組み込んで良い。機能的または構造的に定義されたDNA配列を含むキメラ遺伝子は、さらなるDNA配列等を含んで良い。
【実施例1】
【0070】
ヒト間充織幹細胞(MSCs)の分化におけるケモカイン類の関与
骨髄に由来するヒトMSCsを、TGFベータによって、軟骨組織産出細胞へ分化するように刺激可能であることが記述された(Mackay et al.(1998)Tissue Eng 4,415−28)。異なる分化工程におけるCXCケモカイン類の関与を査定するために、滑膜から得た間充織幹細胞のミクロマスペレットを、10%熱不活性化血清を含む培地中でプレートした。3時間後、485マイクロリットルのSF培地を加えた。次の日、SF培地をリフレッシュし、抗体および増殖因子、TGFベータ(5ng/ml)、CXCR1またはCXCR2への抗体(最終濃度5g/ml)、または可溶性CXCR1およびCXCR2のいずれかを、100×溶液(5μl/ウェル)中に加えた。これらの細胞による、軟骨組織を産出する能力を、全量マイクロマスのアルシアンブルー染色、およびO.D.での染色の検出によって測定した。結果を図1に示す。
【0071】
図1からわかるように、添加増殖因子が存在しない場合に、幹細胞の、軟骨組織−産出細胞への自発的分化が存在するが、TGFベータの添加によって、大きく増強される。CXCR1に対する抗体の添加、およびより少ない量での、CXCR2に対する抗体が、軟骨形成細胞への自発分化を阻害し、一方で、可溶性CXCR1およびCXCR2レセプターの添加が、TGFベータ−誘導分化を阻害する。さらに、CXCR1またはCXCR2に対する抗体と一緒の、CXCL6(100ng/ml)の添加が分化を回復させ、これは、CXCR6と、レセプターに対する抗体間での競合が存在することを示唆している。これらのデータは、軟骨形成細胞への間充織幹細胞の分化におけるCXC−ケモカイン類の関与を示唆している。
【実施例2】
【0072】
表現型的に安定な細胞集団中の、CXCL6の発現
ヒト関節軟骨細胞の3つのプールを、任意の関節疾患に患っていないヒトドナーからの関節軟骨組織より得た。簡単に記すと、軟骨組織を、完全な厚さに切断して、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアンホテリシンB(ライフ テクノロジーズ(Life Technologies))を含む、(ライフ テクノロジーズから入手した)ハンクスのバランス塩溶液(Hank’s Balanced Salt Solution(「
HBSS」)中に配置した。37℃で5分間、HBSS中で2回洗浄した後、関節組織を細かくミンチし、10%FBS(バイオウィテーカー(Biowittaker))、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアンホテリシンBを含む、高グルコース含有ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium(「DMEM」)(ライフテクノロジーズ)中の、無菌0.2%未精製コラゲナーゼ(ライフテクノロジーズ)中に入れた。37℃にて一晩インキュベートした後、細胞を、10%FBS、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および0.25μg/mlのアンホテリシンBで補充した、DMEM培養培地中で2回洗浄し、生細胞の数に対して調整するために、トリパン−ブルー排除試験で計数した。得られた細胞を、単層にて培養した。第一継代(P0)において、2つの分液(各5×10細胞)を、国際特許第WO01/24833号にて記述したように、軟骨細胞安定性に関して、インビボで注入した。より小さな分液を使用して、RNA抽出物を得、残りを再プレートした。総RNAを、(ライフ テクノロジーズから入手可能な)Thermoscriptを用いて逆転写し、半定量PCR解析のために使用した。継代5後、2つの試料を、脱分化軟骨細胞による、II型コラーゲン発現の助けとなることが知られている系である、低融解−アガロース培養中に入れた。二ヶ月後、コロニー形成が豊富であり、培養をRNA抽出のために回収した。半定量RT−PCR解析を、CXC6の発現のために実施した。
【0073】
マイクロアレイ解析によって、CXCL6が、新鮮に単離された(FI)軟骨細胞およびP0にて培養された軟骨細胞にて発現することが明らかになった。CXCL6は、多数の継代の後、これらの細胞が、ヌードマウスモデルでの、その軟骨組織形成の能力を欠く場合に、ダウンレギュレートされた。したがって、軟骨形成細胞によるCXCL6の発現は、ヒアリン軟骨組織を形成する能力に関連している。
【実施例3】
【0074】
CXCL6−誘導骨軟骨回復の動物モデル
本実験の目的は、大骨軟骨欠損の回復における、CXCL6の効果を実証することであった。
動物:7匹の、乳を分泌しておらず、妊娠していないメスSaanenヤギを使用した(4匹処置−3匹コントロール)。すべてのヤギは、2年齢またはそれ以上であり、CAE(ヤギ関節炎および脳炎ウイルス(Caprine Arthritis and Encephalitis Virus)−陰性認定農園から供給された。
実験デザイン
前麻酔実験、および前投薬(キシラジン 0.2mg/kg+アトロピン 0.02mg/kgIM、抗生物質:アンピシリン10mg/kg、および鎮痛剤:フェンタニル0.1mg/kgIM)の後、ヤギをケタミン(2mg/kg)およびミダゾラム(0.5mg/kg)を用いて、一般麻酔をかけた。一般麻酔を、イソフランおよび酸素での吸入麻酔によって維持した。動物を、ECGおよびMAPによってモニタし、NaCl 0.9%で、静脈注入ラインを与えた。
【0075】
6×6mm骨軟骨欠損を、左内側大腿顆の中心部分で作製した。欠損は以下のように作製した。
−左後外側褥瘡、屈曲左脚ぶら下がり自由
−定期クリッピング、左膝関節領域の消毒およびドレーピング
−膝蓋靱帯の中央に接した、+/−7cmの皮膚切開
−膝、膝蓋靱帯に内側に隣接する小関節切開への、直線中央アプローチ、Hoffa脂肪パッドの部分の除去
−6mm深骨軟骨欠損を、6mmバーを用いて、左内側大腿顆の中心部分で作製する。
−欠損を、ガーゼ綿棒で乾燥させる。
骨欠損を、担体として使用される、吸収ゼラチンスポンジ(Spongostan(商標)−0.6cm×0.6cm×0.6cm−PBSにて飽和)の一部で充填した。全ての欠損を、軟骨繊維上に縫合した、骨膜フラップで密封した。
【0076】
実験群の動物にて、80〜100μlのヒトCXCL6(0.025μg/μl、R&Dシステムズ(R&D Systems)、Europe)を、フラップのもとで注入し、ゼラチンスポンジによって吸収させた。コントロール群では何も注入しなかった。
【0077】
傷を4層で閉じ、脚をシリンジ包帯中に固定した。
【0078】
必要に応じて、手術後、フェンタニル0.1mg/kgIMによる処置を実施した。
【0079】
動物を、3週間シリンジ包帯中に維持し(体重増加の可能性はない)、その後自由に動けるようにした。臨床評価および傷治療を毎日実施した。皮膚縫合を、手術後2週間で除去した。屠殺するまで、動物を、個々に小ケージ(1.1m×1.8m)内で飼育した。
【0080】
動物を、人道的見地より安楽死が必要である合併症が発生しない限り、手術後13週で屠殺した。ヤギを、T61(0.1ml/kg)の静脈注射によって麻酔した。皮膚の除去後、滑液を、無菌方法にて、手術および対側膝関節両方から回収した。左および右膝関節を切り、ホルムアルデヒド中で保存した。滑膜生検を、両方の膝関節で実施し、これもまたホルムアルデヒド中で保存した。
臨床評価、実験室試験およびフォローアップ
手術前および屠殺時、血液および尿試料をとった。血液試料を、多数の因子(Hb、Hct、RBC、MCV、MCH、MCHC、RDW、WBC+ホーミュラ、エオシン、Count、Thromb、Ret.、Fe、フィブリノーゲン+TP/Fibr、Ratio、Na、K、Cl、Ca、PO4、MG、Ureum、TP+電気泳動、AST、GGT、AP、LDH)に関して試験した。尿を、赤血球細胞およびタンパク質の存在に関して試験した。屠殺の際に滑液を、細胞計数、TP、結晶、細菌学によって調査した。
評価の基準
屠殺前に、動物の関節を、筋肉萎縮、歩行の足跡解析に関して評価した。
【0081】
骨軟骨欠損の回復の評価は、滑膜生検の工学的および組織学的解析両方に依存した。滑液の組織学的解析を、H&E−染色によって行い、骨軟骨の解析をH&E−染色、トルイジンブルー染色およびサフラニンO−染色によって実施した。
【0082】
組織学的染色を総合して評価し、スコア化した。以下の基準を使用した。
−組織形態(もしあれば、軟骨線維の型)
−炎症の存在
−構造統合性(円柱構造の存在)
−軟骨細胞クラスタリング
−タイドマークの形成
−軟骨下骨形成
−表面の構造
−側面統合性(移植片の1つまたは両方の末端で結合しているかどうか)
−規定統合性
結果
図2および3は、CXCL6−処置膝において発生している回復において、CXCL6を加えなかった欠損と比較した差違を示している。CXCL6がない状態で、関節欠損ゾーンが血管化し、主に、線維−軟骨組織からなることを見ることができる。CXCL6処置欠損において、ヒアリン軟骨組織と下骨の回復が存在する。CXCL6で処置した関節
欠損、およびCXCL6で処置しない関節欠損に関する評価基準の概説を、表2にて提供している。
【0083】
【表2】

【0084】
CXCL6を加えた関節欠損の生検において、頂点での、新規に形成された軟骨下骨およびヒアリン−様からヒアリン軟骨組織での、ほとんど完全な骨欠損の充填が観察された。軟骨組織層は、骨前の移動のために、周辺の軟骨組織よりも細い。コントロールにおいて、欠損が、コラーゲン担体、軟骨組織、繊維組織、血管およびいくらかの骨からなる、混合組織によって充填された。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】hMSCsの軟骨形成細胞への分化における、CXC−ケモカイン経路の抑制の効果。添加物なし(コントロール)またはTGFベータ、CXCR1またはCXCR2レセプター(αCXCR1、αCXCR2)に対する抗体、可溶性CXCR1およびCXCR2レセプター(CXCR1−2)または可溶性レセプター+TGFベータとの、細胞のインキュベーション。Y−軸は、軟骨組織形成に対する、全量マイクロマス示唆の、アルシアンブルー染色から測定したODを表している。
【図2】コントロール(A)およびCXCL6−処置(B)の、骨軟骨欠損ゾーンの、巨視的切片。
【図3】HE染色後の、骨軟骨欠損ゾーンの、縦切片の概観。(A)コントロール、(B)CXCL6−処置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボでの軟骨組織および/または骨形成の促進用の医薬品の調製のための、CXCL6の使用。
【請求項2】
軟骨組織または骨軟骨欠損の予防または処置における、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
CXCL6の供給源が、CXCL6発現細胞の集団である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記CXCL6が組換え体または合成物である、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記CXCL6が、遺伝子治療を介して投与される、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記CXCL6が、勾配にて、骨軟骨欠損に投与される、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記医薬品がさらに、軟骨形成細胞またはその前駆体細胞を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記前駆体細胞が、滑膜から単離される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
インビボでの軟骨組織または骨の形成の促進用の医薬品の調製のための、CXCL6−発現細胞の使用。
【請求項10】
軟骨組織または骨軟骨欠損の予防または処置のための、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記CXCL6−発現細胞が、軟骨形成細胞である、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記軟骨形成細胞が、結合組織より単離されたものである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記軟骨形成細胞が、プロモーターの制御下で、前記CXCL6をコードする外来DNAを含む、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
前記CXCL6−発現細胞が、マトリックス中に埋め込まれたものである、請求項10から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
細胞集団またはCXCL6を発現する細胞を含む、医薬品としての使用のための組成物。
【請求項16】
前記CXCL6発現細胞または細胞集団が、軟骨形成細胞である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞または細胞集団が、好適な医薬担体中に埋め込まれる、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記骨軟骨欠損が、炎症に関連しない関節表面欠損である、請求項1から14のいずれ
か一項に記載の使用。
【請求項19】
前記関節表面欠損が、変形性関節炎に関連して発生する、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
インビボでの軟骨組織または骨形成の促進用の医薬品の調製のための、CXCL6の発現を誘導する化合物の使用。
【請求項21】
軟骨組織または骨軟骨欠損の処置または予防のための、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記化合物が、軟骨形成細胞中で、CXCL6の発現を誘導する、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
軟骨細胞表現型安定性のためのマーカーとしての、発現されたCXCL6の使用。
【請求項24】
インビトロでの、軟骨組織および/または骨形成の促進のための、CXCL6の使用。
【請求項25】
始源細胞集団の、軟骨組織−産出細胞集団への分化を調節する方法であって、前記方法が、前記始源細胞集団に、CXCR1またはCXCR2レセプターのリガンドまたは阻害因子を投与することを含む方法。
【請求項26】
CXCR1またはCXCR2の阻害因子を用いる、始源細胞集団の、軟骨組織−産出細胞集団への前記分化を阻害することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
始源細胞集団において、軟骨細胞表現型安定性を誘導する、または回復させる方法であって、前記始源細胞集団に、CXCL6を投与するステップを含む方法。
【請求項28】
前駆体細胞集団の、軟骨組織への分化を誘導する、または回復させる方法であって、前記始源細胞集団に、CXCL6を投与するステップを含む方法。
【請求項29】
インビボで、軟骨組織の促進および骨促進のための、化合物または化合物の混合物の検出のための方法であって、前記化合物または化合物の混合物が、CXCL6シグナル伝達を調節し、
−細胞集団を、候補化合物または化合物の混合物と接触させるステップと、
−CXCL6の調節された発現レベルを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項30】
前記細胞集団が、軟骨細胞、軟骨細胞前駆体および軟骨細胞始源細胞からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記軟骨細胞、軟骨細胞前駆体および軟骨細胞始源細胞集団の、1つまたはそれ以上の形態学的または分子パラメータを決定するステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501807(P2007−501807A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522851(P2006−522851)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/BE2004/000117
【国際公開番号】WO2005/014026
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506046414)ティゲニクス・ナムローゼ・フエンノートシャップ (3)
【氏名又は名称原語表記】TIGENIX N.V.
【Fターム(参考)】