説明

転がり案内面の潤滑方法

【課題】高速性という転がり案内面の長所を維持しつつ、位置決め精度を向上させることが可能な転がり案内面の潤滑方法を提供すること。
【解決手段】本発明の転がり案内面の潤滑方法は、転がり軸受に、軸受空間容積を基準として0.5〜5体積%のグリースを充填し、転がり案内面を潤滑することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転がり案内面の潤滑方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の加工テーブル上の案内面方式は、一般的に、すべり案内面方式と転がり案内面方式とに大別される。
【0003】
転がり案内面方式において、転がり案内面はグリースにより潤滑されるのが通例である。また、転がり軸受へのグリースの充填量は、通常、軸受空間容積を基準として30〜40体積%程度であり、高速回転で使用する場合には15〜20体積%である(例えば、下記非特許文献1を参照。)。
【非特許文献1】「潤滑グリースの基礎と応用」、社団法人トライボロジー学会グリース研究会編、養賢堂、第241頁、2007年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の転がり案内面方式は、すべり案内面方式と比較して、高速性に優れているものの、位置決め精度に劣る。
【0005】
そこで、本発明は、高速性という転がり案内面の長所を維持しつつ、位置決め精度を向上させることが可能な転がり案内面の潤滑方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、転がり軸受に、軸受空間容積を基準として0.5〜5体積%のグリースを充填し、転がり案内面を潤滑することを特徴とする転がり案内面の潤滑方法を提供する。
【0007】
本発明でいう「軸受空間容積」とは、当該軸受において、実験条件下で潤滑油・グリース等が充填可能な空間の最大容積を意味する。
【0008】
本発明における転がり軸受へのグリースの充填量は、上述した従来の転がり案内面方式におけるグリースの充填量に比べて極微量といえるものであるが、グリースの充填量が上記条件を満たすことによって、高速性を十分に維持しつつ、転がり案内面における摩擦抵抗を飛躍的に低減することができるという極めて予想外の効果が奏される。したがって、本発明の転がり案内面の潤滑方法によって、高速性と位置決め精度とを高水準で両立することが可能となる。また、本発明においては、グリースの使用量が小量で済むため、環境負荷の低減及び経済性の点でも有用である。
【0009】
なお、転がり案内面における摩擦抵抗を低減する他の方法としてグリースのちょう度を低下させる方法が考えられるが、本発明者らの検討によれば、このような方法では高速性と位置決め精度とを両立することはできない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速性という転がり案内面の長所を維持しつつ、位置決め精度を向上させることが可能な転がり案内面の潤滑方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明において使用されるグリースは特に制限されないが、好ましい態様として、基油及び増ちょう剤を含有し、必要に応じて各種添加剤を更に含有するグリースが挙げられる。
【0013】
グリースの基油は特に制限されず、鉱油、油脂、合成油またはこれらの混合物のいずれでも使用することができる。
【0014】
鉱油としては、例えばパラフィン基系原油または混合基系原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分、あるいは潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)を原料とし、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を1つ又は2つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油が挙げられる。
【0015】
また、合成油としては、具体的には、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、炭素数5〜20のα−オレフィンのオリゴマー、エチレンと炭素数5〜20のα−オレフィンとのコオリゴマー等のポリオレフィンまたはこれらの水素化物;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル等のエステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
また、油脂としては、パーム油、パーム核油、菜種油、大豆油、サンフラワー油、並びに品種改良や遺伝子組換操作などによりグリセリドを構成する脂肪酸におけるオレイン酸の含有量が増加したハイオレイック菜種油、ハイオレイックサンフラワー油などの植物油、ラードなどの動物油などの天然油脂が挙げられる。
【0017】
これらの基油の中でも、鉱油、エステル、ポリオレフィンまたはポリフェニルエーテルが好ましく、鉱油またはエステルがより好ましく、更にエステルが最も好ましい。
【0018】
本発明において好ましく用いられる鉱油に関し、その芳香族分は特に制限されないが、作業環境を重視するのであれば、好ましくは30容量%以下、より好ましくは20容量%以下であることが望ましい。ここで、芳香族分とは、JIS K2536「石油製品−炭化水素タイプ試験」の蛍光指示薬吸着法に準拠して測定された値を意味する。
【0019】
また、鉱油中のナフテン分は特に制限されないが、10容量%以上であることが好ましく、より好ましくは20容量%以上、更に好ましくは30容量%以上である。一方、ナフテン分は90容量%以下であることが好ましく、より好ましくは80容量%以下、更に好ましくは70容量%以下である。
【0020】
また、鉱油中のパラフィン分は5容量%以上であることが好ましく、より好ましくは10容量%以上、更に好ましくは20容量%以上である。一方、パラフィン分は90容量%以下であることが好ましく、より好ましくは80容量%以下、更に好ましくは70容量%以下である。
【0021】
本発明においてナフテン分、パラフィン分とは、FIイオン化(ガラスリザーバ使用)による質量分析法により得られた分子イオン強度をもって、これらの割合を決定するものである。以下にその測定法を具体的に示す。
【0022】
(1)径18mm、長さ980mmの溶出クロマト用吸着管に、約175℃、3時間の乾燥により活性化された呼び径74〜149μmシリカゲル(富士デビソン化学(株)製grade923)120gを充填する。
(2)n−ペンタン75mlを注入し、シリカゲルを予め湿す。n−ペンタン140mlを注入し、吸着管の下端より溶出液を回収する。
(3)試料約2gを精秤し、等容量のn−ペンタンで希釈し、得られた試料溶液を注入する。
(4)試料溶液の液面がシリカゲル上端に達したとき、飽和炭化水素成分を分離するためにn−ペンタン140mlを注入し、吸着管の下端より溶出液を回収する。
(5)溶出液をロータリーエバポレーターにかけて溶媒を留去し、飽和炭化水素成分を得る。
(6)飽和炭化水素成分を質量分析計でタイプ分析を行う。質量分析におけるイオン化方法としては、ガラスリザーバを使用したFIイオン化法が用いられ、質量分析計は日本電子(株)製JMS−AX505Hを使用する。
【0023】
測定条件を以下に示す。
加速電圧:3.0kV、カソード電圧:−5〜−6kV、分解能:約500、エミッター:カーボン、エミッター電流:5mA、測定範囲:質量数35〜700、補助オーブン温度:300℃、セパレータ温度:300℃、主要オーブン温度:350℃、試料注入量:1μl。
【0024】
質量分析法によって得られた分子イオンは、同位体補正後、その質量数からパラフィン類(C2n+2)とナフテン類(C2n、C2n−2、C2n−4・・・)の2タイプに分類・整理し、それぞれのイオン強度の分率を求め、飽和炭化水素成分全体に対する各タイプの含有量を定める。次いで、飽和炭化水素成分の含有量をもとに、試料全体に対するパラフィン分、ナフテン分の各含有量を求める。
【0025】
なお、FI法質量分析のタイプ分析法によるデータ処理の詳細は、「日石レビュー」第33巻第4号135〜142頁の特に「2.2.3データ処理」の項に記載されている。
【0026】
鉱油の動粘度については特に制限はないが、40℃における動粘度は、好ましくは200mm/s以下であり、より好ましくは100mm/s以下であり、更に好ましくは75mm/s以下であり、特に好ましくは50m/s以下である。また、鉱油の動粘度は、好ましくは1mm/s以上であり、より好ましくは3mm/s以上であり、更に好ましくは5mm/s以上である。
【0027】
また、鉱油の初留点は150℃以上であることが好ましく、より好ましくは155℃以上、更に好ましくは160℃以上である。一方、鉱油の終点は350℃以下であることが好ましく、より好ましくは340℃以下、更に好ましくは330℃以下である。ここで、初留点および終点とは、JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法」に準拠して測定された値を意味する。
【0028】
また、本発明において好ましく用いられるエステルは、天然物(通常は動植物などの天然油脂に含まれるもの)であっても合成物であってもよい。得られるグリース組成物の安定性やエステル成分の均一性などの点からは、合成エステルを用いることが好ましい。
【0029】
エステルを構成するアルコールとしては1価アルコールでも多価アルコールでもよく、また、エステル油を構成する酸としては一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
【0030】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。
【0031】
炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分枝状のプロパノール、直鎖状または分枝状のブタノール、直鎖状または分枝状のペンタノール、直鎖状または分枝状のヘキサノール、直鎖状または分枝状のヘプタノール、直鎖状または分枝状のオクタノール、直鎖状または分枝状のノナノール、直鎖状または分枝状のデカノール、直鎖状または分枝状のウンデカノール、直鎖状または分枝状のドデカノール、直鎖状または分枝状のトリデカノール、直鎖状または分枝状のテトラデカノール、直鎖状または分枝状のペンタデカノール、直鎖状または分枝状のヘキサデカノール、直鎖状または分枝状のヘプタデカノール、直鎖状または分枝状のオクタデカノール、直鎖状または分枝状のノナデカノール、直鎖状または分枝状のイコサノール、直鎖状または分枝状のヘンイコサノール、直鎖状または分枝状のトリコサノール、直鎖状または分枝状のテトラコサノールおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0032】
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等が好ましい。さらにより好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い熱・酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびこれらの混合物等が最も好ましい。
【0034】
本発明にかかるエステルを構成するアルコールは、上述したように1価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、より優れた潤滑性が達成可能となる点、並びに流動点の低いものがより得やすく、冬季および寒冷地での取り扱い性がより向上する等の点から、多価アルコールであることが好ましい。また、多価アルコールのエステルを用いると、位置決め精度がより向上する。
【0035】
また、本発明にかかるエステルを構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状または分枝状のブタン酸、直鎖状または分枝状のペンタン酸、直鎖状または分枝状のヘキサン酸、直鎖状または分枝状のヘプタン酸、直鎖状または分枝状のオクタン酸、直鎖状または分枝状のノナン酸、直鎖状または分枝状のデカン酸、直鎖状または分枝状のウンデカン酸、直鎖状または分枝状のドデカン酸、直鎖状または分枝状のトリデカン酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン酸、直鎖状または分枝状のペンタデカン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン酸、直鎖状または分枝状のオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のノナデカン酸、直鎖状または分枝状のイコサン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコサン酸、直鎖状または分枝状のドコサン酸、直鎖状または分枝状のトリコサン酸、直鎖状または分枝状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状または分枝状のブテン酸、直鎖状または分枝状のペンテン酸、直鎖状または分枝状のヘキセン酸、直鎖状または分枝状のヘプテン酸、直鎖状または分枝状のオクテン酸、直鎖状または分枝状のノネン酸、直鎖状または分枝状のデセン酸、直鎖状または分枝状のウンデセン酸、直鎖状または分枝状のドデセン酸、直鎖状または分枝状のトリデセン酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン酸、直鎖状または分枝状のペンタデセン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン酸、直鎖状または分枝状のオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のノナデセン酸、直鎖状または分枝状のイコセン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコセン酸、直鎖状または分枝状のドコセン酸、直鎖状または分枝状のトリコセン酸、直鎖状または分枝状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、潤滑性および取扱性がより高められる点から、特に炭素数3〜20の飽和脂肪酸、炭素数3〜22の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物が好ましく、炭素数4〜18の飽和脂肪酸、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物がより好ましく、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸がさらに好ましく、安定性の点からは炭素数4〜18の飽和脂肪酸がさらに好ましい。
【0036】
多塩基酸としては炭素数2〜16の二塩基酸およびトリメリット酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸としては、直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状または分枝状のブタン二酸、直鎖状または分枝状のペンタン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタン二酸、直鎖状または分枝状のオクタン二酸、直鎖状または分枝状のノナン二酸、直鎖状または分枝状のデカン二酸、直鎖状または分枝状のウンデカン二酸、直鎖状または分枝状のドデカン二酸、直鎖状または分枝状のトリデカン二酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘキセン二酸、直鎖状または分枝状のヘプテン二酸、直鎖状または分枝状のオクテン二酸、直鎖状または分枝状のノネン二酸、直鎖状または分枝状のデセン二酸、直鎖状または分枝状のウンデセン二酸、直鎖状または分枝状のドデセン二酸、直鎖状または分枝状のトリデセン二酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン二酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
エステルを構成する酸としては、上述したように一塩基酸であっても多塩基酸であってもよいが、一塩基酸を用いると、粘度指数の向上、安定性の向上に寄与するエステルが得られやすくなるので好ましい。
【0038】
エステルを構成するアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されないが、本発明で使用可能なエステル油としては、例えば下記のエステルを挙げることができる。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
【0039】
これらの中でも、より優れた位置決め精度が得られる、流動点の低いものがより得やすい、粘度指数の高いものがより得やすく冬季および寒冷地での取り扱い性が向上する、等の点から(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステルであることが好ましい。
【0040】
また、本発明において用いられる天然物由来のエステルとしては、パーム油、パーム核油、菜種油、大豆油、サンフラワー油、並びに品種改良や遺伝子組換操作などによりグリセリドを構成する脂肪酸におけるオレイン酸の含有量が増加したハイオレイック菜種油、ハイオレイックサンフラワー油などの植物油、ラードなどの動物油などの天然油脂が挙げられる。
【0041】
これらの天然物由来のエステルの中でも、グリースの安定性の点から、オレイン酸の含有量が増加したハイオレイックな天然油脂が好ましく、脂肪酸とグリセリンとのトリエステル(以下、単に「トリエステル」という)であって、該脂肪酸中の40〜98質量%がオレイン酸のものが特に好ましい。かかるトリエステルを用いることによって、潤滑性と熱・酸化安定性との双方を高水準でバランスよく達成することができる。また、当該トリエステルを構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量は、潤滑性と熱・酸化安定性との双方を高水準でバランスよく達成できる点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、同様の点から好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0042】
なお、上記のトリエステルを構成する脂肪酸(以下、「構成脂肪酸」という)中のオレイン酸の割合や、後述するリノール酸等の割合は、日本油化学会制定の基準油脂分析法2.4.2項「脂肪酸組成」に準拠して測定されるものである。
【0043】
また、トリエステルの構成脂肪酸のうち、オレイン酸以外の脂肪酸としては、潤滑性および熱・酸化安定性を損なわない限り特に制限されないが、好ましくは炭素数6〜24の脂肪酸である。炭素数6〜24の脂肪酸としては、飽和脂肪酸でもよく、不飽和結合を1〜5個有する不飽和脂肪酸でもよい。また、当該脂肪酸は直鎖状、分枝鎖状のいずれであってもよい。さらに、分子内にカルボキシル基(−COOH)以外に水酸基(−OH)を1〜3個有していてもよい。このような脂肪酸としては、具体的には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ガドレイン酸、エルシン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リカン酸、アラキドン酸、クルバドン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸の中でも、潤滑性と熱・酸化安定性との両立の点で、リノール酸が好ましく、トリエステルを構成する脂肪酸の1〜60質量%(より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは4〜40質量%)がリノール酸であることがより好ましい。
【0044】
更に、上記のトリエステルにおいては、潤滑性と熱・酸化安定性との両立の点で、構成脂肪酸中の0.1〜30質量%(より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%)が炭素数6〜16の脂肪酸であることが好ましい。炭素数6〜16の脂肪酸の割合が0.1質量%未満であると熱・酸化安定性が低下する傾向にあり、他方、30質量%を超えると潤滑性が低下する傾向にある。
【0045】
また、上記のトリエステルの総不飽和度は0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。トリエステルの総不飽和度が0.3より大きくなると、本発明のグリースの熱・酸化安定性が悪くなる傾向にある。なお、本発明でいう総不飽和度とは、ポリウレタン用ポリエーテルの代わりにトリエステルを用いる以外はJISK1557−1970「ポリウレタン用ポリエーテル試験方法」に準じて、同様の装置・操作法により測定される総不飽和度をいう。
【0046】
本発明にかかるトリエステルとしては、構成脂肪酸中のオレイン酸の割合等が上記の条件を満たすものであれば、合成により得られるものを用いてもよく、或いは当該トリエステルを含有する植物油等の天然油を用いてもよいが、人体に対する安全性の点から、植物油等の天然油を用いることが好ましい。かかる植物油としては、菜種油、ひまわり油、大豆油、トウモロコシ油、キャノーラ油が好ましく、中でもひまわり油、菜種油および大豆油が特に好ましい。
【0047】
ここで、天然の植物油の多くは総不飽和度が0.3を超えるものであるが、その精製工程で水素化等の処理により総不飽和度を小さくすることが可能である。また、遺伝子組み替え技術により総不飽和度の低い植物油を容易に製造することができる。例えば総不飽和度が0.3以下でありかつオレイン酸が70質量%以上のものとして高オレイン酸キャノーラ油等、80質量%以上のものとして高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ひまわり油、高オレイン酸菜種油などを例示することができる。
【0048】
本発明において、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合に得られるエステルは、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、水酸基の一部がエステル化されず水酸基のまま残存する部分エステルでもよい。また、酸成分として多塩基酸を用いた場合に得られる有機酸エステルは、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。
【0049】
エステルの沃素価は、好ましくは0〜80、より好ましくは0〜60、更に好ましくは0〜40、更により好ましくは0〜20、最も好ましくは0〜10である。また、本発明にかかるエステルの臭素価は、好ましくは0〜50gBr/100g、より好ましくは0〜30gBr/100g、更に好ましくは0〜20gBr/100g、最も好ましくは0〜10gBr/100gである。エステルの沃素価や臭素価がそれぞれ前記の範囲内であると、グリースの安定性が向上する傾向にある。なお、ここでいう沃素価とは、JISK 0070「化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、沃素価、水酸基価および不ケン化価物の測定方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。また臭素価とは、JISK 2605「化学製品―臭素価試験方法−電気滴定法」により測定した値をいう。
【0050】
また本発明においては、グリースに更に良好な潤滑性能を付与する観点から、エステルの水酸基価が0.01〜300mgKOH/gであることが好ましく、また、ケン価が100〜500mgKOH/gであることが好ましい。さらに、一層高水準の潤滑性を得る観点から、エステルの水酸基価は、より好ましくは200mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以下であり、また、より好ましくは0.1mgKOH/g以上、更に好ましくは0.5mgKOH/g以上、一層好ましくは1mgKOH/g以上、特に好ましくは3mgKOH/g以上であり、最も好ましくは5mgKOH/g以上である。また、エステルのケン化価は、より好ましくは200〜400mgKOH/g以下である。なお、ここでいう水酸基価とは、JISK 0070「化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、沃素価、水酸基価および不ケン化価物の測定方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。またケン化価とは、JISK 2503「航空潤滑油試験方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。
【0051】
エステルの動粘度については特に制限はないが、40℃における動粘度は、好ましくは200mm/s以下であり、より好ましくは100mm/s以下であり、更に好ましくは75mm/s以下であり、特に好ましくは50m/s以下である。また、エステルの動粘度は、好ましくは1mm/s以上であり、より好ましくは3mm/s以上であり、更に好ましくは5mm/s以上である。
【0052】
エステルの流動点および粘度指数には特に制限はないが、流動点は−10℃以下であることが好ましく、更に好ましくは−20℃以下である。粘度指数は100以上200以下であることが好ましい。
【0053】
グリース中の潤滑油基油の含有量は、グリース全量基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。潤滑油基油の含有量が60質量%未満であると、良好な潤滑性を得ることが困難となる恐れがある。また、潤滑油基油の含有量はグリース全体基準で、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。潤滑油基油の含有量が95質量%を超えると、グリースを十分にグリース状にすることが困難となる恐れがある。
【0054】
本発明において使用されるグリースに用いる増ちょう剤としては、金属石けん、複合金属石けん等の石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア系等の非石けん系増ちょう剤等のあらゆる増ちょう剤が使用可能である。これらの中でも、石けん系増ちょう剤およびウレア系増ちょう剤が好ましく用いられる。
【0055】
石けん系増ちょう剤としては、例えば、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けん等が挙げられるが、これらの中でも、耐水性や熱安定性の点から、リチウム石けんが好ましい。リチウム石けんとしては、例えば、リチウムステアレートやリチウム−12−ヒドロキシステアレート等が挙げられる。
【0056】
ウレア系増ちょう剤としては、例えば、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0057】
ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物およびウレタン化合物としては、例えば、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物(ジウレア化合物、トリウレア化合物およびテトラウレア化合物は除く)、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物等が挙げられる。好ましくはジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物が挙げられる。更に具体的には、例えば、式(1)で表される化合物単独もしくはこれらの混合系が好ましい。
A−CONH−R−NHCO−B (1)
【0058】
一般式(1)中、R1は2価の有機基を表し、好ましくは2価の炭化水素基を表す。かかる2価の炭化水素基としては、例えば、直鎖または分枝状のアルキレン基、直鎖または分枝状のアルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基等が挙げられる。R1で表される2価の有機基の炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。
【0059】
1で表される2価の有機基の好ましい例としては、エチレン基、2,2−ジメチル−
4−メチルヘキシレン基、並びに式(2)〜(11)で表される基が挙げられ、中でも式(3)、(5)で表される基が好ましい。
【化1】


【化2】

【0060】
一般式(1)中、AおよびBは同一でも異なっていてもよく、それぞれ−NHR、−NRまたはORで表される基を表す。ここで、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の有機基であり、好ましくは炭素数6〜20の1価の炭化水素基を表す。
【0061】
〜Rで表される炭素数6〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、直鎖または分枝状のアルキル基、直鎖または分枝状のアルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基等が挙げられる。より具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の直鎖または分枝状のアルキル基;ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基等の直鎖または分枝状のアルケニル基;シクロヘキシル基;メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、1−メチル−3−プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アミルシクロヘキシル基、アミルメチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基、オクチルシクロヘキシル基、ノニルシクロヘキシル基、デシルシクロヘキシル基、ウンデシルシクロヘキシル基、ドデシルシクロヘキシル基、トリデシルシクロヘキシル基、テトラデシルシクロヘキシル基等のアルキルシクロヘキシル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;トルイル基、エチルフェニル基、キシリル基、プロピルフェニル基、クメニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、ジメチルナフチル基、プロピルナフチル基等のアルカリール基;ベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基等のアラルキル基が挙げられる、これらの中でも、耐熱性および音響防止性の点から、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基およびアルカリール基が好ましい。
【0062】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、OCN−R−NCOで表されるジイソシアネートと、RNH、RNHまたはROHで表される化合物もしくはこれらの混合物とを、基油中、10〜200℃で反応させることにより得られる。なお、原料化合物を表す式中のR〜Rは、それぞれ一般式(1)で表される化合物に係るR〜Rと同義である。
【0063】
増ちょう剤の含有量は、グリース全量基準で、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。増ちょう剤の含有量が3質量%未満であると、増ちょう剤の添加効果が不十分となり、グリースを十分にグリース状にすることが困難となる恐れがある。また、増ちょう剤の含有量は、グリース全量基準で、好ましくは35質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。増ちょう剤の含有量が35質量%を超えると、グリースが過剰に硬くなって十分な潤滑性能を得ることが困難となる恐れがある。
【0064】
また本発明において使用されるグリースは、極圧剤を含有することが好ましい。極圧剤としては、硫黄化合物およびリン化合物が挙げられる。
【0065】
硫黄化合物としては、グリース組成物の特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、ジヒドロカルビルポリサルファイド、硫化エステル、硫化鉱油、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸モリブデンおよびチアゾール化合物が好ましく用いられる。
【0066】
ジヒドロカルビルポリサルファイドとは、一般的にポリサルファイドまたは硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(12)で表される化合物を意味する。
−S−R (12)
[式(12)中、RおよびRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルカリール基あるいは炭素数6〜20のアラルキル基を表し、aは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す。]
【0067】
上記一般式(12)中のRおよびRとしては、具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝ペンチル基、直鎖または分枝ヘキシル基、直鎖または分枝ヘプチル基、直鎖または分枝オクチル基、直鎖または分枝ノニル基、直鎖または分枝デシル基、直鎖または分枝ウンデシル基、直鎖または分枝ドデシル基、直鎖または分枝トリデシル基、直鎖または分枝テトラデシル基、直鎖または分枝ペンタデシル基、直鎖または分枝ヘキサデシル基、直鎖または分枝ヘプタデシル基、直鎖または分枝オクタデシル基、直鎖または分枝ノナデシル基、直鎖または分枝イコシル基などの直鎖状または分枝状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝オクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝デシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、メチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)などのアルカリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)、フェニルプロピル基(全ての異性体を含む)などのアラルキル基;などを挙げることができる。これらの中でも、一般式(5)中のRおよびRとしては、プロピレン、1−ブテンまたはイソブチレンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、または炭素数6〜8のアリール基、アルカリール基あるいはアラルキル基であることが好ましく、これらの基としては例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分枝状ヘキシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン3量体から誘導される分枝状ノニル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン4量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン5量体から誘導される分枝状ペンタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン6量体から誘導される分枝状オクタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ブテン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)などのアルキル基;フェニル基、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)などのアルカリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)などのアラルキル基が挙げられる。
【0068】
さらに、上記一般式(12)中のRおよびRとしては、高い位置決め精度が得られる点から、別個に、エチレンまたはプロピレンから誘導された炭素数3〜18の分枝状アルキル基であることがより好ましく、エチレンまたはプロピレンから誘導された炭素数6〜15の分枝状アルキル基であることが特に好ましい。
【0069】
硫化エステルとしては、具体的には例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸または上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;およびこれらの混合物などを任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。
【0070】
硫化鉱油とは、鉱油に単体硫黄を溶解させたものをいう。ここで、本発明にかかる硫化鉱油に用いられる鉱油としては特に制限されないが、具体的には、具体的には、原油に常圧蒸留および減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などが挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状または溶融液体状の単体硫黄を用いると基油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄は液体同士を混合するので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備などの特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴うなど取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解に要する時間が十分に短いので特に好ましい。また、本発明にかかる硫化鉱油における硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化鉱油全量を基準として好ましくは0.05〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0071】
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物およびジチオカルバミン酸モリブデン化合物とは、それぞれ下記一般式(13)〜(16)で表される化合物を意味する。
【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


[式(13)〜(16)中、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表し、XおよびXはそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表す。]
【0072】
ここで、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22およびR23で表される炭化水素基の具体例を例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての分枝異性体を含む)、ブチル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンチル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプチル基(すべての分枝異性体を含む)、オクチル基(すべての分枝異性体を含む)、ノニル基(すべての分枝異性体を含む)、デシル基(すべての分枝異性対を含む)、ウンデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ドデシル基(すべての分枝異性対を含む)、トリデシル基(すべての分枝異性対を含む)、テトラデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ペンタデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ヘキサデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ヘプタデシル基(すべての分枝異性対を含む)、オクタデシル基(すべての分枝異性対を含む)、ノナデシル基(すべての分枝異性対を含む)、イコシル基(すべての分枝異性対を含む)、ヘンイコシル基(すべての分枝異性対を含む)、ドコシル基(すべての分枝異性対を含む)、トリコシル基(すべての分枝異性対を含む)、テトラコシル基(すべての分枝異性対を含む)などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)などのアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(すべての置換異性体を含む)、キシリル基(すべての置換異性体を含む)、エチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ペンチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ノニルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、デシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ウンデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ドデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、トリデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、テトラデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ペンタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキサデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)などのアルカリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基(すべての分枝異性体を含む)、フェニルブチル基(すべての分枝異性体を含む)などのアラルキル基などが挙げられる。
【0073】
チアゾール化合物としては、下記一般式(17)、(18)で表される化合物が好ましく、特に、下記一般式(18)で表されるベンゾチアゾール化合物が好ましく用いられる。
【化7】


【化8】

【0074】
一般式(14)、(15)中、R24およびR25はそれぞれ水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基またはアミノ基を表し、水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基が好ましく、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基がより好ましい。R26は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基がより好ましい。dおよびeはそれぞれ0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。
【0075】
このようなベンゾチアゾール化合物としては、例えば、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(ヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(オクチルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(デシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(ドデシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ベンゾチアゾールが挙げられる。
【0076】
チアジアゾール化合物としては、例えば、下記一般式(19)で表される1,3,4−チアジアゾール化合物、下記一般式(20)で表される1,2,4−チアジアゾール化合物、並びに下記一般式(21)で表される1,4,5−チアジアゾール化合物が好ましく挙げられる。
【化9】


【化10】


【化11】

【0077】
一般式(19)〜(21)中、R27〜R32は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、水素原子または炭素数1〜18の炭化水素が好ましく、水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基がより好ましい。f〜kは同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜3の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0078】
このようなチアジアゾール化合物としては、例えば、2,5−ビス(n−ヘキシルジチ
オ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−
チアジアゾール、2,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−
オクチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1
,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(1,1,3,
3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾールが挙げられる。
【0079】
本発明においては、上記硫黄化合物の中でも、ジヒドロカルビルポリサルファイドおよび硫化エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、高い位置決め精度が得られる点で好ましい。
【0080】
また、リン化合物としては、具体的には例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびホスホロチオネート、下記一般式(22)または(23)で表されるリン化合物の金属塩等が挙げられる。これらのリン化合物は、リン酸、亜リン酸またはチオリン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体が挙げられる。
【化12】


[式(22)中、X、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、X、XまたはXの少なくとも2つは酸素原子であり、R33、R34、およびR35は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
【化13】


[式(11)中、X、X、XおよびXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、X、X、XまたはXの少なくとも3つは酸素原子であり、R36、R37およびR38は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
【0081】
より具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等;
ホスホロチオネートとしては、トリブチルホスホロチオネート、トリペンチルホスホロチオネート、トリヘキシルホスホロチオネート、トリヘプチルホスホロチオネート、トリオクチルホスホロチオネート、トリノニルホスホロチオネート、トリデシルホスホロチオネート、トリウンデシルホスホロチオネート、トリドデシルホスホロチオネート、トリトリデシルホスホロチオネート、トリテトラデシルホスホロチオネート、トリペンタデシルホスホロチオネート、トリヘキサデシルホスホロチオネート、トリヘプタデシルホスホロチオネート、トリオクタデシルホスホロチオネート、トリオレイルホスホロチオネート、トリフェニルホスホロチオネート、トリクレジルホスホロチオネート、トリキシレニルホスホロチオネート、クレジルジフェニルホスホロチオネート、キシレニルジフェニルホスホロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスホロチオネート等が挙げられる。
また、上記一般式(22)または(23)で表されるリン化合物の金属塩に関し、式中のR26〜R31で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0082】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0083】
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0084】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
【0085】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルカリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルカリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0086】
上記アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアラルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
【0087】
33〜R38で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18のアルキル基、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
【0088】
33、R34およびR35は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または上記炭化水素基を表すが、R33、R34およびR35のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0089】
また、R36、R37およびR38は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または上記炭化水素基を表すが、R36、R37およびR38のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0090】
一般式(22)で表されるリン化合物において、X〜Xのうちの少なくとも2つは酸素原子であることが必要であるが、X〜Xの全てが酸素原子であることが好ましい。
【0091】
また、一般式(23)で表されるリン化合物において、X〜Xのうちの少なくとも3つは酸素原子であることが必要であるが、X〜Xの全てが酸素原子であることが好ましい。
【0092】
一般式(22)で表されるリン化合物としては、例えば、亜リン酸、モノチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステルが好ましく、亜リン酸ジエステルがより好ましい。
【0093】
また、一般式(23)で表されるリン化合物としては、例えば、リン酸、モノチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルが好ましく、リン酸ジエステルがより好ましい。
【0094】
一般式(22)または(23)で表されるリン化合物の金属塩としては、当該リン化合物の酸性水素の一部または全部を金属塩基で中和した塩が挙げられる。かかる金属塩基としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等が挙げられ、その金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属および亜鉛が好ましい。
【0095】
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2molを反応させた場合、下記式(24)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる(式中のRは炭素数1〜30の炭化水素基を表す)。
【化14】

【0096】
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1molとを反応させた場合、下記式(25)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる(式中のRは炭素数1〜30の炭化水素基を表す)。
【化15】

【0097】
本発明では、上記リン化合物のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記リン化合物の中でも、高い位置決め精度が得られる点から、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、および酸性リン酸エステルのアミン塩が好ましい。
【0098】
また、本発明で使用されるグリースは、硫黄化合物またはリン化合物の一方のみを含有するものであってもよく、双方を含有するものであってもよい。高い位置決め精度が得られる点からは、リン化合物、あるいは硫黄化合物とリン化合物との双方を含有することが好ましく、硫黄化合物とリン化合物との双方を含有することがより好ましい。
【0099】
極圧剤の含有量は任意であるが、高い位置決め精度が得られる点から、グリース全量基準で、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらにより好ましい。また、腐食性防止の点から、極圧剤の含有量は、グリース全量基準で、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0100】
また、本発明で使用されるグリースは、摩擦抵抗低減の見地から、摩擦調整剤を含有することが好ましい。摩擦調整剤としては、アルコール、カルボン酸、不飽和カルボン酸の硫化物、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、ポリオキシアルキレン化合物、エステル、多価アルコールのヒドロカルビルエーテル、アミンなどを挙げることができる。
【0101】
【化16】


[式(26)中、R39は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、pは1〜6の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。]
【0102】
【化17】


[式(27)中、R40は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、rは1〜6の整数を表し、sは0〜5の整数を表す。]
【0103】
アルコールは、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。より高い位置決め精度が得られる点から、炭素数1〜40の1価アルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜25のアルコールであり、最も好ましくは炭素数8〜18のアルコールである。具体的には、上記基油のエステルを構成するアルコールの例を挙げることができる。これらのアルコールは直鎖状でも分枝を有していてもよく、また飽和でも不飽和でもよいが、安定性の点から飽和であることが好ましい。
【0104】
カルボン酸は1塩基酸でも多塩基酸でもよい。より高い位置決め精度が得られる点から、炭素数1〜40の1価のカルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数5〜25のカルボン酸であり、最も好ましくは炭素数5〜20のカルボン酸である。具体的には、上記基油としてのエステルを構成するカルボン酸の例を挙げることできる。これらのカルボン酸は、直鎖状でも分枝を有していてもよく、飽和でも不飽和でもよいが、安定性の点から飽和カルボン酸であることが好ましい。
【0105】
不飽和カルボン酸の硫化物としては、例えばオレイン酸の硫化物を挙げることができる。
【0106】
上記一般式(26)で表される化合物において、R39で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、例えば炭素数1〜30の直鎖または分枝アルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアルキルシクロアルキル基、炭素数2〜30の直鎖または分枝アルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜30のアルカリール基、および炭素数7〜30のアラルキル基を挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜30の直鎖または分枝アルキル基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜20の直鎖または分枝アルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基であり、最も好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分枝アルキル基である。炭素数1〜4の直鎖または分枝アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、直鎖または分枝のプロピル基および直鎖または分枝のブチル基を挙げることができる。
【0107】
水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。pは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。qは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1または2である。一般式(26)で表される化合物の例としては、p−tert−ブチルカテコールを挙げることができる。
【0108】
上記一般式(27)で表される化合物において、R40で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、前記一般式(26)中のR39で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。rは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。sは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1または2である。一般式(27)で表される化合物の例としては、2,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンを挙げることができる。
【0109】
ポリオキシアルキレン化合物としては、例えば下記一般式(28)または(29)で表される化合物を挙げることができる。
41O−(R42O)−R43 (28)
[式(28)中、R41およびR43は各々独立に水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、R42は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、tは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表す。]
A−[(R44O)−R45] (29)
[式(29)中、Aは、水酸基を3〜10個有する多価アルコールの水酸基の水素原子の一部または全てを取り除いた残基を表し、R44は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R45は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、uは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表し、vはAの水酸基から取り除かれた水素原子の個数と同じ数を表す。]
【0110】
上記一般式(28)中、R41およびR43の少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。R41およびR43で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば上記一般式(26)中のR39で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。R42で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、ブチレン基(エチルエチレン基)を挙げることができる。tは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更に好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
【0111】
また、上記一般式(29)中、Aを構成する3〜10の水酸基を有する多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜4量体、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロ−ル、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトールなどの多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マントース、イソマントース、トレハロース、およびシュクロースなどの糖類を挙げることができる。これらの中でもグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールアルカン、およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、またはソルビタンが好ましい。
【0112】
44で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例としては、上記一般式(28)中のR44で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例と同じものを挙げることができる。またR45で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、前記一般式(26)中のR39で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。v個のR45のうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましく、全て水素原子であることが更に好ましい。uは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更に好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
【0113】
エステルとしては、これを構成するアルコールが1価アルコールでも多価アルコールでもよく、またカルボン酸は一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
【0114】
エステル摩擦調整剤を構成する1価アルコールおよび多価アルコールとしては、基油としての説明で述べたエステルと同様のものを用いることができる。
【0115】
エステル摩擦調整剤を構成するアルコールは、上述したように1価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、より優れた位置決め精度の達成可能となる点、並びに流動点の低いものがより得やすく、冬季および寒冷地での取り扱い性がより向上する等の点から、多価アルコールであることが好ましい。
【0116】
また、エステル摩擦調整剤を構成する一塩基酸および多塩基酸としては、基油としてのエステルの場合と同様のものを用いることができる。
【0117】
エステル摩擦調整剤におけるアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されないが、本発明で使用可能なエステル摩擦調整剤としては、例えば下記のエステルを挙げることができる。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
【0118】
なお、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいは水酸基の一部がエステル化されず水酸基のままで残っている部分エステルでもよい。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。
【0119】
エステル摩擦調整剤の合計炭素数には特に制限はないが、潤滑性の点から、合計炭素数が7以上のエステルが好ましく、9以上のエステルが更に好ましく、11以上のエステルが最も好ましい。また、有機材料との適合性の点から、合計炭素数が60以下のエステルが好ましく、45以下のエステルがより好ましく、26以下のエステルが更に好ましく、24以下のエステルが一層好ましく、22以下のエステルが最も好ましい。
【0120】
多価アルコールのヒドロカルビルエーテルを構成する多価アルコールの例としては、基油としての説明において例示した多価アルコールと同じものを挙げることができ、更に好ましい例についても基油としての説明において例示した多価アルコールと同じものを挙げることができる。更に多価アルコールとしては、高い位置決め精度が得られる点から、グリセリンが最も好ましい。
【0121】
多価アルコールのヒドロカルビルエーテルとしては、上記多価アルコールの水酸基の一部または全部をヒドロカルビルエーテル化したものが使用できる。高い位置決め精度が得られる点からは、多価アルコールの水酸基の一部をヒドロカルビルエーテル化したもの(部分エーテル化物)が好ましい。ここでいうヒドロカルビル基とは、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜18のアルカリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等の炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
【0122】
炭素数1〜24のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝のペンチル基、直鎖または分枝のヘキシル基、直鎖または分枝のヘプチル基、直鎖または分枝のオクチル基、直鎖または分枝のノニル基、直鎖または分枝のデシル基、直鎖または分枝のウンデシル基、直鎖または分枝のドデシル基、直鎖または分枝のトリデシル基、直鎖または分枝のテトラデシル基、直鎖または分枝のペンタデシル基、直鎖または分枝のヘキサデシル基、直鎖または分枝のヘプタデシル基、直鎖または分枝のオクタデシル基、直鎖または分枝のノナデシル基、直鎖または分枝のイコシル基、直鎖または分枝のヘンイコシル基、直鎖または分枝のドコシル基、直鎖または分枝のトリコシル基、直鎖または分枝のテトラコシル基等が挙げられる。
【0123】
炭素数2〜24のアルケニル基としては、ビニル基、直鎖または分枝のプロペニル基、直鎖または分枝のブテニル基、直鎖または分枝のペンテニル基、直鎖または分枝のへキセニル基、直鎖または分枝のヘプテニル基、直鎖または分枝のオクテニル基、直鎖または分枝のノネニル基、直鎖または分枝のデセニル基、直鎖または分枝のウンデセニル基、直鎖または分枝のドデセニル基、直鎖または分枝のトリデセニル基、直鎖または分枝のテトラデセニル基、直鎖または分枝のペンタデセニル基、直鎖または分枝のヘキサデセニル基、直鎖または分枝のヘプタデセニル基、直鎖または分枝のオクタデセニル基、直鎖または分枝のノナデセニル基、直鎖または分枝のイコセニル基、直鎖または分枝のヘンイコセニル基、直鎖または分枝のドコセニル基、直鎖または分枝のトリコセニル基、直鎖または分枝のテトラコセニル基等が挙げられる。
【0124】
炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基としては、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)等が挙げられる。
【0125】
炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜18のアルカリール基としては、トリル基(全ての構造異性体を含む。)、キシリル基(全ての構造異性体を含む。)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)等が挙げられる。
【0126】
炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む。)フェニルブチル基(ブチル基の異性体を含む。)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体を含む。)、フェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体を含む。)等が挙げられる。
【0127】
これらの中では、高い位置決め精度を達成できる点から、炭素数2〜18の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖または分枝のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖または分枝のアルキル基、オレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
【0128】
アミンとしては、モノアミンが好ましく使用される。モノアミンの炭素数は、好ましくは6〜24であり、より好ましくは12〜24である。ここでいう炭素数とはモノアミンに含まれる総炭素数の意味であり、モノアミンが2個以上の炭化水素基を有する場合にはその合計炭素数を表す。
【0129】
本発明で用いられるモノアミンとしては、第1級モノアミン、第2級モノアミン、第3級モノアミンの何れもが使用可能であるが、高い位置決め精度が得られる点から、第1級モノアミンが好ましい。
【0130】
モノアミンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基等の何れもが使用可能であるが、高い位置決め精度が得られる点から、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。アルキル基、アルケニル基としては、直鎖状のものであっても分枝鎖状のものであっても良いが、高い位置決め精度が得られる点から、直鎖状のものが好ましい。
【0131】
本発明で用いられるモノアミンの好ましいものとしては、具体的には例えば、ヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、オクチルアミン(全ての異性体を含む)、ノニルアミン(全ての異性体を含む)、デシルアミン(全ての異性体を含む)、ウンデシルアミン(全ての異性体を含む)、ドデシルアミン(全ての異性体を含む)、トリデシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、ペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプタデシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ノナデシルアミン(全ての異性体を含む)、イコシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘンイコシルアミン(全ての異性体を含む)、ドコシルアミン(全ての異性体を含む)、トリコシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラコシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデセニルアミン(全ての異性体を含む)(オレイルアミン等を含む)およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、溶着と加工抵抗の増加とを防止して優れた加工効率および工具寿命を達成できる点から、炭素数12〜24の第1級モノアミンが好ましく、炭素数14〜20の第1級モノアミンがより好ましく、炭素数16〜18の第1級モノアミンがさらに好ましい。
【0132】
本発明においては、上記摩擦調整剤の中から選ばれる1種のみを用いてもよく、また2種以上の混合物を用いてもよい。これらの中でも、高い位置決め精度が得られる点から、カルボン酸摩擦調整剤およびアミン摩擦調整剤から選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
【0133】
摩擦調整剤の含有量は特に制限はないが、高い位置決め精度が得られる点から、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、安定性の点から、摩擦調整剤の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0134】
特に、極圧剤を上記した摩擦調整剤と併用すると、これらの相乗作用により、一層高い位置決め精度が得られる。本発明においては、上述の摩擦調整剤または極圧剤の一方だけを用いてもよいが、高い位置決め精度が得られる点から、摩擦調整剤と極圧剤とを併用することが好ましい。
【0135】
また本発明の極微量グリース封入式転がり案内面に用いるグリースは、高い位置決め精度が得られる点から、有機酸塩を含有することが好ましい。有機酸塩としては、スルホネート、フェネート、サリシレート、並びにこれらの混合物が好ましく用いられる。これらの有機酸塩の陽性成分としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;アンモニア、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミンなど)、炭素数1〜3のアルカノール基を有するアルカノールアミン(モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなど)などのアミン、亜鉛などが挙げられるが、これらの中でもアルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましく、カルシウムが特に好ましい。有機酸塩の陽性成分がアルカリ金属またはアルカリ土類金属であると、より高い潤滑性が得られる傾向にある。
【0136】
スルホネートは、任意の方法によって製造されたものが使用可能である。例えば、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩およびこれらの混合物などが使用できる。ここでいうアルキル芳香族スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸などの石油スルホン酸や、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレンなどのアルキルナフタレンをスルホン化したものなどの合成スルホン酸などが挙げられる。また、上記のアルキル芳香族スルホン酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)または上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させて得られるいわゆる中性(正塩)スルホネート;中性(正塩)スルホネートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性スルホネート;炭酸ガスの存在下で中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート;中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンならびにホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、または炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネートとホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート;およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0137】
また、フェネートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下または不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルフェノールと、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)または上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させることにより得られる中性フェネート;中性フェネートと過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンを水の存在下で加熱することにより得られる、いわゆる塩基性フェネート;炭酸ガスの存在下で中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンと反応させることにより得られる、いわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンならびにホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、または炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネートとホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造される、いわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0138】
さらに、サリシレートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下または不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルサリチル酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)または上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させることにより得られる中性サリシレート;中性サリシレートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性サリシレート;炭酸ガスの存在下で中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンならびにホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、または炭酸塩過塩基性(超塩基性)金属サリシレートとホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0139】
有機酸塩の塩基価は、好ましくは50〜500mgKOH/gであり、より好ましくは100〜450mgKOH/gである。有機酸塩の塩基価が100mgKOH/g未満の場合は有機酸塩の添加による潤滑性向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、塩基価が500mgKOH/gを超える有機酸塩は、通常、製造が非常に難しく入手が困難であるため、それぞれ好ましくない。なお、ここでいう塩基価とは、JISK 2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価[mgKOH/g]をいう。
【0140】
また、有機酸塩の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜25質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。有機酸塩の含有量が前記下限値未満の場合、その添加による位置決め精度向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えるとグリース組成物の安定性が低下して析出物が生じやすくなる傾向にある。
【0141】
本発明においては、有機酸塩を単独で用いてもよく、あるいは有機酸塩と他の添加剤とを組み合わせて用いてもよい。高い位置決め精度が得られる点からは、有機酸塩を上記の極圧剤と組み合わせて用いることが好ましく、硫黄化合物、リン化合物および有機酸塩の3種を組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0142】
また、本発明で使用されるグリースは、酸化防止剤を更に含有することが好ましい。酸化防止剤の添加により組成物の熱・酸化安定性を向上させることができる。
【0143】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤、その他食品添加剤として使用されているものなどが挙げられる。
【0144】
フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のフェノール系化合物が使用可能であり、特に制限されるものでないが、例えば下記の一般式(30)および一般式(31)で表される化合物の中から選ばれる1種または2種以上のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0145】
【化18】


[式中、R46は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R47は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R48は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記一般式(30−i)で表される基又は下記一般式(30−ii)で表される基を示す。
【化19】


(式中、R49は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R50は炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化20】


(式中、R51は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R52は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R53は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)]
【0146】
【化21】


[一般式(15)中、R54およびR58は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、R55およびR59は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R56およびR57は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Wは炭素数1〜18のアルキレン基または下記の一般式(31−i):
−R60−S−R61− (31−i)
(一般式(31−i)中、R60およびR61は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す)
で表される基を示す。]
【0147】
本発明に使用されるアミン系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアミン系化合物が使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、下記の一般式(16)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンまたはN−p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、並びに下記一般式(17)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンの中から選ばれる1種または2種以上の芳香族アミンが好ましいものとして挙げられる。
【0148】
【化22】


[式中、R62は水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜16のアルキル基)を示す。]
【0149】
【化23】


[式中、R63およびR64は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基を示す。]
【0150】
アミン系酸化防止剤の具体例としては、4−ブチル−4’−オクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ドデシルフェニル−α−ナフチルアミンおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0151】
また、本発明に使用されるジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤としては、具体的には、前記一般式(13)で表されるジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0152】
また、食品添加剤として使用されている酸化防止剤も使用可能であり、上述したフェノール系酸化防止剤と一部重複するが、例えば、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)を挙げることができる。
【0153】
これらの酸化防止剤の中でも、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、並びに上記食品添加剤として使用されている酸化防止剤が好ましい。さらに、生分解性を重視する場合には、上記食品添加剤として使用されているものがより好ましく、中でもアスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、または2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)が好ましく、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、または3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールがより好ましい。
【0154】
酸化防止剤の含有量は特に制限はないが、良好な熱・酸化安定性を維持させるためにその含有量は、グリース全量基準で0.01質量%以上が好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。一方それ以上添加しても効果の向上が期待できないことからその含有量は10質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは3質量%以下である。
【0155】
また本発明で使用されるグリースは、上記した以外の従来公知の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、上記したリン化合物、硫黄化合物以外の極圧剤(塩素系極圧剤を含む);ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、モンタンワックス、カルナウバワックス、ポリオレフィンワックス等のワックス類;ポリテトラフルオロエチレン、メラミンシアヌレート、硫化アンチモン、アルカリ(土類)金属ホウ酸塩、グラファイト、フッ化黒鉛、固体状モリブデン化合物、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、ポリエチレン粉末等の固体潤滑剤;アミン、アミド、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、多価アルコールの部分エステル等の腐食防止剤;ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等の金属不活性化剤;アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミン、アミノアミド等の無灰分散剤;牛脂、豚脂、なたね油、大豆油、ヤシ油、パーム油、ヌカ油及びこれらの水素添加物等の油脂類;脂肪族アミド、芳香族カルボン酸等の防錆剤;チアゾール系、イソチアゾール系、フェノール系、ハロゲン系等の防腐剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等の増粘剤;等が挙げられる。これらの公知の添加剤を併用する場合の含有量は特に制限されないが、これらの公知の添加剤の合計含有量がグリース全量基準で0.1〜10質量%となるような量で添加するのが好ましい。
【0156】
本発明で使用されるグリースを調製するには、例えば、潤滑油基油に、増ちょう剤、その他の添加剤を混合して撹拌し、ロールミル等を通すことにより得ることができる。また、潤滑油基油に予め増ちょう剤の原料成分を添加して溶融し、撹拌混合することにより、潤滑油基油中で増ちょう剤を調製した後に、その他の添加剤を混合撹拌し、ロールミル等を通すことにより製造することもできる。
【0157】
本発明の転がり案内面の潤滑方法においては、転がり軸受に、軸受空間容積を基準として0.5〜5体積%のグリースを充填し、転がり案内面を潤滑する。グリースの充填量は、好ましくは1.0〜4.0体積%、より好ましくは1.5〜3.5体積である。グリースの充填量が前記下限値未満であると、潤滑不良となり摩擦抵抗が上昇するだけでなく、軸受寿命が低下するおそれがある。また、グリースの充填量が前記上限値を超えると、摩擦抵抗が増加し、位置決め精度が悪化する。
【0158】
転がり軸受へのグリースの充填方法は特に制限されないが、転がり案内面を潤滑する前に、転がり軸受を分解し、ボールと保持体との摺動面(転走面)に、軸受空間容積を基準として0.5〜5体積%のグリースを塗布することが好ましい。
【0159】
本発明の転がり案内面の潤滑方法は、マシニングセンタのテーブル案内機構、更にはその他の工作機械又は産業機械における各部の転がり案内面に適用することができる。また、転がり案内機構は、直線案内機構、旋回用転がり軸受を用いた旋回体の案内機構のいずれであってもよい。
【実施例】
【0160】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0161】
[実施例1〜9、比較例1〜10]
実施例1〜9及び比較例1〜9においては、それぞれ以下の基油及び増ちょう剤を用いてグリースを調製し、後述する潤滑性試験に供した。また、比較例10として、グリースを使用せず、ドライ状態で潤滑性試験を行った。
(基油)
鉱油A:VG480パラフィン系溶剤精製油(40℃における動粘度:480mm/s)
鉱油B:VG95パラフィン系溶剤精製油(40℃における動粘度:95mm/s)
鉱油C:VG85パラフィン系溶剤精製油(40℃における動粘度:85mm/s)
エステルA:ジイソデシルアジペート(40℃における動粘度:14mm/s)
エステルB:トリメチロールプロパントリオレエートとネオペンチルグリコールジオレエート混合物(40℃における動粘度:32mm/s)
エステルC:ペンタエリスリトールテトラオレエート(40℃における動粘度:68mm/s)
エステルD:コンプレックスエステル(40℃における動粘度:220mm/s)
(増ちょう剤)
ジウレアA:ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナートとシクロヘキシルアミンとのジウレア
リチウムA:12−ヒドロキシステアリン酸のリチウム石けん。
【0162】
[潤滑性試験]
本試験では、転がり軸受として、直径5/16インチのボール(材質JIS SUJ2)の15個を、2つの保持体(それぞれ外径52mm、内径30mm)で保持するスラストボールベアリングを用いた。まず、スラストボールベアリングを分解して各部材を洗浄した後、ボールと保持体との摺動面(転送面)に、表1〜4に示す量のグリースを塗布した。次いで、スラストボールベアリングを組み立て、保持体が水平になるように保持した。そして、上側保持体の側から荷重7.05Nを加えると共に、下側保持体を周速0.07m/s又は1.0m/sの条件で回転させ、このときの上側保持体に発生する回転モーメント(摩擦モーメント)をトルクメータで測定した。得られた結果を表1〜4に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【0165】
【表3】

【0166】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受に、軸受空間容積を基準として0.5〜5体積%のグリースを充填し、転がり案内面を潤滑することを特徴とする転がり案内面の潤滑方法。



【公開番号】特開2008−248991(P2008−248991A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89483(P2007−89483)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】