説明

転がり軸受けの破損を自動的に検出するための方法およびシステム

【課題】回転機械における転がり軸受けの破損を自動的に検出することができるシステムを提供する。
【解決手段】システム100は、少なくとも1つの周波数を含むセンサ信号を少なくとも1つのセンサ110から受信し、センサ信号をデジタル振動信号に変換する。システム100は、振動信号を修正してエンベロープ信号を生成し、エンベロープ信号に変換をかけてエンベロープスペクトルを生成する。システム100は、エンベロープスペクトル線の振幅と、それらの高調波との間の特定の関係を用いて軸受け106の破損を検出する。したがって、システム100は、所定の破損周波数を参照することなく、軸受けの破損を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して回転機械に関し、より詳細には、回転機械における転がり軸受けの破損を検出する際に用いるための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンなど、少なくとも一部の知られている発電システムは、電気グリッドまたは別の配電システムに電力を供給する発電機を含む。このような発電機は、軸受けによって支持される回転する駆動シャフトによって駆動される。軸受けおよび/または他の回転要素を監視するために、軸受け監視システムが用いられる場合がある。
【0003】
少なくとも一部の知られている軸受け監視システムは、振動信号など入力信号に対してエンベロープをとるアルゴリズムを実行する。より具体的には、このようなアルゴリズムは、軸受けの破損を示唆する可能性がある、入力信号における特定の周波数の識別を可能にする。軸受けの破損を示唆する特定の周波数は、軸受け、発電システム、および他の要因に応じて様々である。したがって、少なくとも一部の知られている軸受け監視システムは、一般に、予想された周波数をもたらす軸受けの破損を検出することができるに過ぎない。したがって、軸受け監視システムは、軸受けの破損を示す可能性のあるいくつかの周波数を調べるように構成されていないためにこのような周波数を見逃している恐れがある。したがって、既知の軸受け欠陥の周波数を参照することなく、軸受けの破損を自動的に検出するシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態によれば、監視システムが提供される。この監視システムは、監視されている少なくとも1つの回転コンポーネントの周波数を検出するように構成された少なくとも1つのセンサを含む。また、この監視システムは、所定の状態を示す少なくとも1つの周波数を含むセンサ信号を少なくとも1つのセンサから受信し、センサ信号をデジタル振動信号に変換し、デジタル振動信号からエンベロープスペクトルを生成し、エンベロープスペクトルの基本周波数、および、第1の検出しきい値に基づいて軸受けの破損を検出するようにプログラムされたプロセッサを含む。
【0005】
別の実施形態によれば、軸受け監視システムが提供される。この軸受け監視システムは、所定の状態を示す少なくとも1つの周波数を含むセンサ信号を少なくとも1つのセンサから受信し、センサ信号をデジタル振動信号に変換し、デジタル振動信号からエンベロープスペクトルを生成し、エンベロープスペクトルの基本周波数、および、第1の検出しきい値に基づいて軸受けの破損を検出するようにプログラムされたプロセッサを含む。
【0006】
別の実施形態によれば、回転機械を監視する方法が提供される。この方法は、所定の状態を示す少なくとも1つの周波数を含むセンサ信号を少なくとも1つの、機械を監視するセンサから受信することと、センサ信号をデジタル振動信号に変換することと、デジタル振動信号からエンベロープスペクトルを生成することと、エンベロープスペクトルの基本周波数、および、第1の検出しきい値に基づいて、機械における軸受けの破損を検出することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示的軸受け監視システムのブロック図である。
【図2】図1に示されている監視システムと共に用いることができる例示的軸受け解析システムのブロック図である。
【図3】図2に示されている軸受け解析システムを用いて軸受けの破損を自動的に検出するために用いることができる例示的方法の流れ図である。
【図4】図2に示されている軸受け解析システムを用いて生成することができる例示的エンベロープスペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、回転機械101を監視するために用いることができる例示的軸受け監視システム100を示す。例示的実施形態では、機械101は、風力タービン、水力発電機、および/または、様々な速度で動作する任意の他の回転機械などの可変速度の機械である。あるいは、機械101は、同期速度の機械(synchronous speed machine)でもよい。例示的実施形態では、機械101は、負荷104に結合している駆動シャフト102を駆動する。駆動シャフト102は、ギアボックスなどの支持構造体108の中に入っている1つまたは複数の軸受け106によって少なくとも部分的に支えられている。あるいは、軸受け106は、負荷104の中に入っていてもよく、かつ/または、軸受け106が駆動シャフト102を支持することを可能にする任意の好適な構造体の中に入っていてもよい。
【0009】
例示的実施形態では、軸受け106は、駆動シャフト102および支持構造体108と回転接触する状態に保たれる。1つまたは複数の軸受け106が亀裂、剥離、または任意の他の欠陥を生む場合、軸受け106のそれぞれは、駆動シャフト102の回転中に軸受け106の欠陥部分が駆動シャフト102および/または支持構造体108と接触する際に、支持構造体108の固有周波数で振動する、または、「リンギングする」(以降では「リングイベント」と呼ばれる)場合がある。一般に、1つまたは複数のリングイベントは、機械101の回転速度に比例した周波数で発生する。
【0010】
リングイベントは、一般に、支持構造体108および/または軸受け106に振動を誘発する。加速度計などの1つまたは複数の振動センサ110は、リングイベントの振動を検出および測定し、振動の測定量を表す信号を処理および/または解析のために信号処理システム114に送信する。例示的実施形態では、信号処理システム114は軸受け解析システムであり、より具体的には、それぞれの振動センサ110は、振動信号などの信号を信号処理システム114に送信する。振動信号は、限定しないが、シャフトの振動周波数、および/または、1つもしくは複数のノイズ周波数などの複数の周波数成分を含む。さらに、振動信号は、1つまたは複数の軸受け欠陥周波数(bearing defect frequency)などの、1つまたは複数の周波数を含み得る。速度センサ112は、駆動シャフト102の回転速度を測定し、速度の測定量を示す1つまたは複数の信号を処理および/または解析のために軸受け解析システム114に送信する。例示的実施形態では、速度センサ112は、駆動シャフト102における各回転の間、複数の異なる時間において駆動シャフト102の回転速度を計測することができる。より具体的には、速度センサ112は、例示的実施形態では、角度によって実質的に等しく間隔のとられた駆動シャフト102の位置においてイベント信号またはエンコーダ信号を生み出す角度エンコーダである。あるいは、速度センサ112は、駆動シャフト102における1回転マーク(once−per−turn mark)を検出する光センサでもよい。このようなイベントまたはマークは、駆動シャフト102の回転速度を求めるために用いることができる。さらに、例示的実施形態では、振動センサ110、および/または、任意の他の好適なセンサからの測定量は、イベントに同期して収集またはサンプリングされる。
【0011】
図2は、(図1に示されている)機械101の動作を解析するために用いることができる例示的軸受け解析システム114のブロック図である。例示的実施形態では、システム114は、プロセッサ202、ディスプレイ204、メモリ206、ヒューマンインタフェースデバイス207、および、通信インタフェース208を含む。ディスプレイ204、メモリ206、および、通信インタフェース208は、プロセッサ202にそれぞれ接続されており、またプロセッサ202とデータ通信する。一実施形態では、プロセッサ202、ディスプレイ204、メモリ206、および/または、通信インタフェース208の少なくとも1つは、システム114に通信によって接続されたリモートシステム(図示せず)の中に配置されている。
【0012】
プロセッサ202は、1つまたは複数のシステムを含む任意の好適なプログラマブルシステムと、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジック回路(PLC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または、本明細書で説明される機能を実行することができる任意の他の回路とを含む。上記の例は、例示に過ぎず、したがって、「プロセッサ」という用語の定義および/または意味を決して限定しないものとする。
【0013】
ディスプレイ204は、限定しないが、液晶ディスプレイ(LCD)、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ、ならびに/または、グラフィックデータおよび/もしくはテキストをユーザに対して表示することができる任意の好適な画像出力デバイスを含む。
【0014】
メモリ206は、限定しないが、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、ディスケット、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ならびに/または、プロセッサ202が命令および/もしくはデータを記憶し、取り出し、かつ/もしくは、実行することを可能にする任意の好適な記憶デバイスなどのコンピュータ可読媒体を含む。メモリ206は、1つもしくは複数のローカル記憶デバイスおよび/またはリモート記憶デバイスを含むことができる。一実施形態では、メモリ206は、振動信号および/または速度信号における1つまたは複数の値などの、(共に図1に示されている)振動センサ110および/または速度センサ112からのデータを記憶する。
【0015】
ヒューマンインタフェースデバイス207は、プロセッサ202に接続されており、ユーザからの入力を受信する。ヒューマンインタフェースデバイス207は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、マウス、タッチペン、(タッチパッドまたはタッチスクリーンなどの)タッチ感応パネル、ジャイロスコープ、加速度計、位置検出器、および/または、(例えばマイクを含む)オーディオ入力インタフェースを含むことができる。
【0016】
通信インタフェース208は、限定しないが、ネットワークインタフェースコントローラ(NIC)、ネットワークアダプタ、トランシーバ、および/または、本明細書で説明されるようにシステム114が動作することを可能にする任意の好適な通信デバイスを含むことができる。通信インタフェース208は、有線のイーサネット(登録商標)プロトコルまたは無線のイーサネット(登録商標)プロトコルなどの、任意の好適な通信プロトコルを用いて、ネットワーク(図示せず)、および/または、1つもしくは複数のデータ通信システムに接続することができる。
【0017】
例示的実施形態では、プロセッサ202は、(共に図1に示されている)1つもしくは複数の振動センサ110および/または速度センサ112からの測定量および/または信号を解析および/または処理するために命令を実行し、かつ/または、メモリ206に記憶されたデータにアクセスする。プロセッサ202は、以下でより詳細に説明されるように、感知された測定量を示す信号を受信し、軸受けの破損を検出する。
【0018】
図3は、振動信号を解析することによって軸受けの破損を検出する例示的方法300の流れ図である。例示的実施形態では、方法300は、(図2に示されている)システム114、および/または、本明細書で説明されるように周波数が特定されることを可能にする任意の他の好適なシステムによって実行される。方法300のための命令および/またはデータは、(図2に示されている)メモリ206などのコンピュータ可読媒体に記憶され、それらの命令は、方法300を実施するために(図2に示されている)プロセッサ202によって実行される。
【0019】
例示的実施形態では、システム114および/またはプロセッサ202は、少なくとも1つのセンサから少なくとも1つの周波数を有するセンサ信号を受信(301)する。例えば、(図1に示されている)振動センサ110からのアナログ振動信号が受信(301)され得る。あるいは、システム114および/またはプロセッサ202は、振動センサ110から任意の好適な信号を受信(301)することができる。次に、受信(301)されたそれぞれの信号は、デジタル振動信号に変換(302)され、(図1に示されている)機械101における少なくとも1回の回転の間のデジタル振動信号、すなわち、(図1に示されている)駆動シャフト102が1回の完全な回転を通じて回転し終えるまでのデジタル振動信号は、メモリ206に記憶(304)され得る。次に、振動信号は、エンベロープをとる好適なアルゴリズムを用いて振動信号のエンベロープをとる、または振動信号を復調することによって修正(306)される。一実施形態では、振動信号は、その振動信号が修正(306)される前に、復調プロセス中にハイパスフィルタにかけられ、バンドパスフィルタにかけられ、ローパスフィルタにかけられ、整流され、かつ/または、平滑化されてもよい。例示的実施形態では、フィルタにかけられた振動信号は、エンベロープをとる(306)前に、符号付きの振幅を符号なしまたは直接振幅(direct amplitude)に置き換えることによって修正される。代替的または付加的には、振動信号は、既知の任意の技術を用いて信号が修正(306)される前に、歪みを検出するために解析(307)されてもよい。歪み、または、歪みの絶対値が所定のしきい値を上まわる場合には、方法300の実施が中止されてもよい。例えば、1を上まわる絶対値を有する歪みによって、振動信号の中に電気ノイズがあることが示されてもよい。歪みに起因して方法300の実施が中止される場合、プロセッサ202は、中止の理由を示すメッセージを表示する、または伝えることができる。
【0020】
振動信号が修正(306)されると、元の振動信号における1つまたは複数の高周波成分が除去され、元の振動信号の周波数より低い周波数を有するエンベロープ信号が生成される。振動信号が1つまたは複数の軸受け欠陥周波数を含む場合、エンベロープ信号は、軸受け欠陥繰り返し周波数(bearing defect repetition frequency)で繰り返し得る1つまたは複数の振幅ピークを含む。例示的実施形態では、軸受け欠陥繰り返し周波数は、駆動シャフト102の回転周波数に比例するか、または、その回転周波数とほぼ等しい。駆動シャフト102は、様々な速度で回転し得るため、軸受け欠陥繰り返し周波数は、駆動シャフト102におけるそれぞれの回転、および/または、振動信号を通じて変わり得る。
【0021】
振動信号がエンベロープをとられる(306)と、システム114および/またはプロセッサ202は、エンベロープのとられた信号に対して変換(316)を行なって、エンベロープスペクトルを生成する。例示的実施形態では、変換(316)は、高速フーリエ変換である。あるいは、変換(316)は、どのようなデジタルフーリエ変換でもよく、または、本明細書で説明されるように方法300が実施され、また機能することを可能にする任意の他の変換でもよい。
【0022】
また、システム114および/またはプロセッサ202は、(図1に示されている)速度センサ112から速度の測定量を示す1つまたは複数の信号を受信(312)する。一実施形態では、速度信号は、システム114の中でデジタルデータ(すなわち、速度データ)に変換される。あるいは、速度データは、理論によって示唆されるか、または、設計によって決められる、駆動シャフト102の回転速度に基づく所定の値である。例示的実施形態では、システム114および/またはプロセッサ202は、速度データを用いて、エンベロープスペクトルを速度データの次数に変換する。例えば、図4に示されているグラフ400などのグラフにエンベロープスペクトルが表示されている場合、Y軸は、エンベロープスペクトルの振幅でもよく、X軸は、速度データ、すなわち、駆動シャフト102の回転速度の、高くなっていく次数における周波数でもよい。
【0023】
図3および図4を参照すると、システム114および/またはプロセッサ202は、中央値402またはノイズフロアと、振動信号の破損周波数範囲(fault frequency range)405における周波数の標準偏差を計算する。破損周波数範囲405は、振動信号の範囲全体、または、範囲全体より小さい所定の範囲を含むことができる。例示的実施形態では、破損周波数範囲405は、約2.75×回転速度から、約15×回転速度までの間などの、転がり軸受けの破損周波数を含む可能性が最も高い周波数範囲になるように選ばれる。
【0024】
システム114および/またはプロセッサ202は、中央値または標準偏差を用いて、少なくとも1つの検出しきい値を計算(317)する。検出しきい値は、次の式、すなわち、中央値+所定の検出係数×標準偏差に従って計算(317)される。所定の検出係数は、1、2、または4などの整数であることが好ましい。例示的実施形態では、所定の検出係数4、2、および1を用いて、第1のしきい値または基本しきい値410、第2のしきい値415、および、第3のしきい値420である、3つの検出しきい値がそれぞれ計算(317)される。あるいは、中央値の代わりに平均値が用いられてもよい。
【0025】
システム114および/またはプロセッサ202は、破損周波数範囲において基本しきい値を超えるあらゆるピークを特定(318)する。ピークは、ピークまたは極大点を識別し、かつ/または、見つけるための既知の任意の技術を用いて特定(318)されてもよい。基本しきい値を超える任意のピークの周波数は、メモリ206に保存され、以降では「基本周波数」425と呼ばれる。2つ以上の基本周波数425が破損周波数範囲において特定(318)されてもよく、またメモリ206に保存されてもよい。
【0026】
いくつかのフォールスポジティブは、電気機械におけるロータバー(rotor bar)によって引き起こされる振動を検出(319)し、その振動を無視することによって低減され得る。例えば、任意の基本周波数425が、電線周波数のほぼ(すなわち、±5%、±10%、±25%)2倍の基本周波数である場合、その基本周波数425は、軸受けではなくロータバーに関わる問題を示す可能性がある。電線周波数は、少なくとも1つのセンサ(図示せず)、または、メモリ206に記憶することができる所定値によって測定された、機械101によって生成される電流の周波数である。可能性のあるロータバーの問題が検出される場合、システム114および/またはプロセッサ202は、ディスプレイ204または通信インタフェース208を用いて、可能性のあるロータバーの問題をレポートすることができる。
【0027】
システム114および/またはプロセッサ202は、それぞれの基本周波数425に対して、基本周波数425が軸受けの破損を示唆しているかどうかを解析(320)する。解析における第1のフェーズは、基本周波数の第1の高調波430、および、第2の高調波435を特定すること(321)を含む。第1の高調波430、および、第2の高調波435は、2倍の基本周波数および3倍の基本周波数にそれぞれ最も近い局所スペクトル線を見つけることによって特定(321)される。
【0028】
解析(320)における次のフェーズは、振動信号が軸受けの破損を示唆しているかどうかを判断するために、試験セットを用いて、第1の高調波430および第2の高調波435を、第2のしきい値415および第3のしきい値420と比較することを含む。より具体的には、試験セットは、(a)第1の高調波430における振幅が、第2のしきい値415より大きいかどうか、(b)第1の高調波430における振幅が、所定のピーク比に基本周波数425の振幅を乗算したものより大きいかどうか、(c)第1の高調波430における振幅が、基本周波数425の振幅より小さいかどうか、(d)第2の高調波435における振幅が、第3のしきい値420より大きいかどうか、かつ/または、(e)第2の高調波435における振幅が、第1の高調波430における振幅より小さいかどうかを判定することを含むことができる。例示的実施形態では、所定のピーク比は0.5である。
【0029】
例示的実施形態では、軸受けの破損は、ロータバーの問題が検出されず、試験セットにおけるすべての試験が真であると判定された場合に検出される。ロータバーの試験が行なわれ、それぞれの基本周波数425について軸受けの破損が検出される。基本周波数425のいずれかのうちで可能性のある軸受けの破損が検出されると、システム114および/またはプロセッサ202は、ディスプレイ204を用いてメッセージを表示し、かつ/または、通信インタフェース208を用いて可能性のある軸受けの破損を示す信号を送信することによって、軸受けの破損をレポート(322)することができる。メッセージは、それぞれの軸受けの破損に関わる基本周波数425、および/または、振動信号における直接振幅、もしくはフィルタにかけられた振動信号を含むことができる。
【0030】
限定されないが、速度データ、電線周波数、バンドバスフィルタのためのコーナ(corner)、歪みの所定のしきい値、破損周波数範囲、所定の検出係数、および、所定のピーク比などの、方法300を実施する際に用いられる任意の所定値、および/または、任意のパラメータは、方法300の調整を容易にするように構成可能であることを理解されたい。より具体的には、このような所定値およびパラメータは、ヒューマンインタフェースデバイス207もしくは通信インタフェース208を用いて入力されてもよく、または、プロセッサ202による使用のためにメモリ206に記憶されていてもよい。
【0031】
システム114は、回転機械から軸受け破損周波数を自動的に検出することを容易にする。既知の破損周波数だけを検出することに限定され得る公知のシステムに比べると、システム114は、既知の破損周波数を参照することなく、破損周波数を検出することができる。公知の検出システムは、軸受けの破損を示すために、既知の所定の組の周波数を探す。対照的に、システム114は、振動センサ110からの測定量を収集し、軸受けの破損を示唆するパターンを検出する。したがって、方法300は、使用中の特定の軸受け、および/または、軸受けの破損が予想される周波数に関するいかなる知識も有することなく動作する。さらに、公知のシステムとは対照的に、システム114は、振動信号、回転シャフトの速度、および電線周波数の入力に加え、バンドパスフィルタのコーナ、歪みのしきい値、回転シャフトの速度の倍数として表される破損周波数範囲、少なくとも1つの検出係数、およびピーク比を必要とする場合があるだけである。
【0032】
上記の実施形態は、回転機械における軸受けの破損を自動的に検出する際に用いるための、効率的で対費用効果の高いシステムおよび方法を提供する。本明細書で説明された方法は、振動信号のエンベロープをとり、回転シャフトの速度の次数における、エンベロープのとられたデータに変換する。本方法は、軸受けの破損を検出するために、エンベロープのスペクトル線の振幅と、それらの高調波との間の特定の関係を用いる。したがって、本方法は、所定の破損周波数を参照することなく、軸受けの破損を検出する。さらに、本方法は、特に誘導モータのロータバーの影響を排除し、実際の軸受けの破損に固有であるスペクトルの高調波における複雑なパターンを特定することによって、誘導モータのロータバーの通過、発電機の電気ノイズ、発電機軸受けの溝彫り(EDM)、および/または、ギアボックスメッシュの高調波(gearbox mesh harmonics)などのフォールスポジティブ発生源を無視するように設計される。
【0033】
回転機械における軸受けの破損を自動的に検出するための方法およびシステムに関する例示的実施形態が、上記に詳細に説明されている。本方法および本システムは、本明細書で説明された特定の実施形態に限定されず、むしろ、本システムの構成要素、および/または、本方法のステップは、本明細書で説明されている他の構成要素および/または他のステップから切り離されて独立に利用されてもよい。例えば、本方法は、他の測定システムおよび他の測定方法と組み合わせて用いられてもよく、本明細書で説明された回転機械のみと共に実施することに限定されない。むしろ、例示的実施形態は、他の多くの電力システムの用途に関連して実施されてもよく、また利用されてもよい。
【0034】
本発明の様々な実施形態における具体的な特徴は、一部の図面に示され、他の図面には示されていない場合があるが、これは便宜上に過ぎない。本発明の原理によれば、図面における任意の特徴は、任意の他の図面における任意の特徴と組み合わせて参照され、かつ/または、特許請求され得る。
【0035】
本書は、最良の形態を含めて本発明を開示するために、さらに、任意のデバイスまたはシステムの製造および使用、ならびに、取り入れられた任意の方法の実施を含めて本発明を当業者が実施することを可能にするために例を用いている。本発明における特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者には思い浮かぶ他の例を含むことができる。そのような他の例は、それらが本特許請求の範囲における文字通りの言葉と異なることのない構造的要素を有する場合、または、本特許請求の範囲における文字通りの言葉と実質的に差のない等価な構造的要素を含む場合には、本特許請求の範囲内であることが意図されている。
【符号の説明】
【0036】
100 監視システム
101 機械
102 駆動シャフト
104 負荷
106 軸受け
108 支持構造体
110 センサ
112 速度センサ
114 システム
202 プロセッサ
204 ディスプレイ
206 メモリ
207 ヒューマンインタフェースデバイス
208 通信インタフェース
300 方法
301 少なくとも1つのセンサから、少なくとも1つの周波数を有するセンサ信号を受信
302 センサ信号をデジタル振動信号に変換
304 振動信号をメモリに記憶
306 振動信号のエンベロープをとる
307 歪みを解析
312 速度センサから信号を受信
316 エンベロープ信号の変換を実行
317 検出しきい値を計算
318 基本周波数を特定
319 ロータバーの問題を特定
320 基本周波数および高調波を解析
321 少なくとも1つの高調波を特定
322 軸受けの破損をレポート
400 グラフ
402 中央値
405 破損周波数範囲
410 しきい値
415 しきい値
420 しきい値
425 基本周波数
430 第1の高調波
435 第2の高調波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視されている少なくとも1つの回転コンポーネントの周波数を検出するように構成された少なくとも1つのセンサ(110)と、
所定の状態を示す少なくとも1つの周波数を含むセンサ信号を前記少なくとも1つのセンサ(110)から受信し、
前記センサ信号をデジタル振動信号に変換し、
前記デジタル振動信号からエンベロープスペクトルを生成し、
前記エンベロープスペクトルの基本周波数、および、第1の検出しきい値に基づいて軸受けの破損を検出する
ようにプログラムされたプロセッサ(202)と
を備える監視システム(100)。
【請求項2】
前記プロセッサ(202)が、前記デジタル振動信号の歪みを検出するようにさらにプログラムされている、請求項1記載の監視システム(100)。
【請求項3】
前記プロセッサ(202)が、前記デジタル振動信号にフィルタをかけるようにさらにプログラムされている、請求項1記載の監視システム(100)。
【請求項4】
前記プロセッサ(202)が、前記デジタル振動信号における直接振幅を生成するようにさらにプログラムされている、請求項1記載の監視システム(100)。
【請求項5】
前記プロセッサ(202)が、
前記基本周波数における第1の高調波の周波数と、第2の検出しきい値との関係を解析し、
前記基本周波数における第2の高調波の周波数と、第3の検出しきい値との関係を解析する
ようにさらにプログラムされている、請求項1記載の監視システム(100)。
【請求項6】
ディスプレイ(204)をさらに含み、前記プロセッサ(202)が、軸受け(106)の破損を前記ディスプレイ上でレポートするようにさらにプログラムされている、請求項1記載の監視システム(100)。
【請求項7】
所定の状態を示す少なくとも1つの周波数を含むセンサ信号を少なくとも1つのセンサ(110)から受信し、
前記センサ信号をデジタル振動信号に変換し、
前記デジタル振動信号からエンベロープスペクトルを生成し、
前記エンベロープスペクトルの基本周波数、および、第1の検出しきい値に基づいて軸受けの破損を検出する
ようにプログラムされたプロセッサ(202)を含む、軸受け監視システム(100)。
【請求項8】
前記プロセッサ(202)が、前記デジタル振動信号の歪みを検出するようにさらにプログラムされている、請求項7記載の軸受け監視システム(100)。
【請求項9】
前記プロセッサ(202)が、前記デジタル振動信号にフィルタをかけるようにさらにプログラムされている、請求項7記載の軸受け監視システム(100)。
【請求項10】
前記プロセッサ(202)が、前記デジタル振動信号における直接振幅を生成するようにさらにプログラムされている、請求項7記載の軸受け監視システム(100)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate