説明

転がり軸受の異常診断装置、風力発電装置および異常診断システム

【課題】より正確な異常診断を実現する転がり軸受の異常診断装置を提供する。
【解決手段】実効値演算部120は、振動センサ70を用いて測定された軸受の振動波形の実効値を算出する。エンベロープ処理部140は、振動センサ70を用いて測定された振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって振動波形のエンベロープ波形を生成する。実効値演算部160は、エンベロープ処理部140によって生成されたエンベロープ波形の交流成分の実効値を算出する。診断部190は、実効値演算部120によって算出された振動波形の実効値および実効値演算部160によって算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて軸受の異常を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受の異常診断装置、風力発電装置および異常診断システムに関し、特に、風力発電装置の主軸や増速機、発電機等に設けられる転がり軸受の異常診断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置においては、風力を受けるブレードに接続される主軸を回転させ、増速機により主軸の回転を増速した上で発電機のロータを回転させることによって発電が行なわれる。主軸ならびに増速機および発電機の回転軸の各々は、転がり軸受によって回転自在に支持されており、そのような軸受の異常を診断する異常診断装置が知られている。
【0003】
特開2006−105956号公報(特許文献1)は、軸受装置等の回転部品の異常を診断する異常診断装置を開示する。この異常診断装置は、軸受箱に対して相対的に回転する鉄道車両用転がり軸受装置に組み込まれた複列円すいころ軸受の異常を診断する異常診断装置であって、複列円すいころ軸受を回転駆動する駆動モータと、軸受箱に取り付けられる振動センサとを備える。そして、駆動モータの非通電時における複列円すいころ軸受の所定の回転速度領域内での慣性回転時に、振動センサによる検出信号に基づいて複列円すいころ軸受の異常が診断される。
【0004】
この異常診断装置によれば、回転部品が組み込まれた装置を分解することなく回転部品の異常を診断することができるとともに、回転駆動手段から発生する電気的な外乱ノイズの影響による誤診断を防止して信頼性の高い異常診断を行なうことができるとされる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−105956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特開2006−105956号公報に開示される異常診断装置では、軸受箱に取り付けられた振動センサを用いて測定される振動波形を周波数分析した結果に基づいて、回転部品の異常判定が行なわれる。より詳しくは、転がり軸受では、軸受の損傷により発生する異常振動の発生周期が損傷の発生箇所に応じて変化するので、振動センサを用いて測定される振動波形を周波数分析してそのピーク周波数を解析することによって、軸受の異常の有無および異常部位の特定が行なわれる。
【0007】
しかしながら、このような周波数分析による手法では、たとえば、上記の風力発電装置のように増速機が設けられる場合には増速機のギヤの噛合い振動周波数が混入したり、様々な周辺部品の固有振動周波数が混入したりすることによって、正確な異常診断ができない場合がある。
【0008】
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より正確な異常診断を実現する、転がり軸受の異常診断装置、風力発電装置および異常診断システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、転がり軸受の異常診断装置は、転がり軸受の振動波形を測定するための振動センサと、転がり軸受の異常を診断するための処理部とを備える。処理部は、第1および第2の演算部と、エンベロープ処理部と、診断部とを含む。第1の演算部は、振動センサを用いて測定された振動波形の実効値を算出する。エンベロープ処理部は、振動センサを用いて測定された振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって振動波形のエンベロープ波形を生成する。第2の演算部は、エンベロープ処理部によって生成されたエンベロープ波形の交流成分の実効値を算出する。診断部は、第1の演算部によって算出された振動波形の実効値および第2の演算部によって算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて転がり軸受の異常を診断する。
【0010】
好ましくは、転がり軸受の異常診断装置は、転がり軸受によって支持される軸または転がり軸受の回転速度を検出するための回転センサをさらに備える。処理部は、修正振動度算出部と、修正変調度算出部とをさらに含む。修正振動度算出部は、第1の演算部によって算出された振動波形の実効値を回転速度で正規化した修正振動度を算出する。修正変調度算出部は、第2の演算部によって算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値を回転速度で正規化した修正変調度を算出する。そして、診断部は、修正振動度および修正変調度に基づいて転がり軸受の異常を診断する。
【0011】
さらに好ましくは、診断部は、修正振動度および修正変調度の時間的変化の推移に基づいて転がり軸受の異常を診断する。
【0012】
好ましくは、処理部は、周波数分析部をさらに含む。周波数分析部は、振動波形およびエンベロープ波形の少なくとも一方を周波数分析する。診断部は、周波数分析部の分析結果に基づいて転がり軸受の異常部位をさらに推定する。
【0013】
好ましくは、振動センサは、加速度センサを含む。
好ましくは、転がり軸受の異常診断装置は、転がり軸受の内外輪間の相対変位を検出するための変位センサをさらに備える。そして、診断部は、変位センサの検出値をさらに用いて転がり軸受の異常を診断する。
【0014】
また、好ましくは、転がり軸受の異常診断装置は、転がり軸受から発生するアコースティックエミッション波を検出するためのAEセンサをさらに備える。そして、診断部は、AEセンサの検出値をさらに用いて転がり軸受の異常を診断する。
【0015】
また、好ましくは、転がり軸受の異常診断装置は、転がり軸受の温度を測定するための温度センサをさらに備える。そして、診断部は、温度センサの測定値をさらに用いて転がり軸受の異常を診断する。
【0016】
また、好ましくは、転がり軸受の異常診断装置は、転がり軸受の潤滑剤に含まれる不純物の量を測定するためのセンサをさらに備える。そして、診断部は、センサの測定値をさらに用いて転がり軸受の異常を診断する。
【0017】
好ましくは、転がり軸受の異常診断装置は、転がり軸受によって支持される軸または転がり軸受の回転速度を検出するための回転センサをさらに備える。エンベロープ処理部は、絶対値検波部と、包絡線検波部とを含む。絶対値検波部は、振動波形の絶対値を出力する。包絡線検波部は、絶対値検波部の出力信号に所定の時定数の減衰処理を施すことによってエンベロープ波形を生成する。ここで、時定数は、回転速度に基づいて設定される。
【0018】
さらに好ましくは、時定数は、転がり軸受における転動体の自転の半周期以下に設定される。
【0019】
さらに好ましくは、時定数は、転動体の自転の半周期の0.5倍以上に設定される。
また、好ましくは、時定数は、転がり軸受の静止輪に対する転動体の通過周期以下に設定される。
【0020】
さらに好ましくは、時定数は、転動体の通過周期の0.5倍以上に設定される。
また、この発明によれば、風力発電装置は、ブレードと、主軸と、増速機と、発電機と、複数の転がり軸受と、異常診断装置とを備える。ブレードは、風力を受ける。主軸は、ブレードに接続される。増速機は、主軸の回転を増速する。発電機は、増速機の出力軸に接続される。複数の転がり軸受は、主軸、増速機および発電機に設けられる。異常診断装置は、複数の転がり軸受の少なくとも一つの異常を診断する。異常診断装置は、診断対象の転がり軸受の振動波形を測定するための振動センサと、診断対象の転がり軸受の異常を診断するための処理部とを含む。処理部は、第1および第2の演算部と、エンベロープ処理部と、診断部とを含む。第1の演算部は、振動センサを用いて測定された振動波形の実効値を算出する。エンベロープ処理部は、振動センサを用いて測定された振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって振動波形のエンベロープ波形を生成する。第2の演算部は、エンベロープ処理部によって生成されたエンベロープ波形の交流成分の実効値を算出する。診断部は、第1の演算部によって算出された振動波形の実効値および第2の演算部によって算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて転がり軸受の異常を診断する。
【0021】
また、この発明によれば、異常診断システムは、風力発電装置と、異常診断装置と、通信装置とを備える。異常診断装置は、風力発電装置とは異なる位置に配設される。通信装置は、風力発電装置と異常診断装置との間で通信を行なう。風力発電装置は、ブレードと、主軸と、増速機と、発電機と、複数の転がり軸受と、振動センサと、データ処理部とを含む。ブレードは、風力を受ける。主軸は、ブレードに接続される。増速機は、主軸の回転を増速する。発電機は、増速機の出力軸に接続される。複数の転がり軸受は、主軸、増速機および発電機に設けられる。振動センサは、複数の転がり軸受の少なくとも一つの振動波形を測定する。データ処理部は、振動センサを用いて測定された振動波形に対して一次処理を行なう。データ処理部は、第1および第2の演算部と、エンベロープ処理部とを含む。第1の演算部は、振動センサを用いて測定された振動波形の実効値を算出する。エンベロープ処理部は、振動センサを用いて測定された振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって振動波形のエンベロープ波形を生成する。第2の演算部は、エンベロープ処理部によって生成されたエンベロープ波形の交流成分の実効値を算出する。異常診断装置は、通信装置によって風力発電装置のデータ処理部から受ける振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて、診断対象の転がり軸受の異常を診断する。
【0022】
好ましくは、異常診断装置および通信装置は、風力発電装置の発電量を遠隔監視するシステムとは切離して設けられる。
【0023】
好ましくは、通信装置は、通信経路の一部に無線通信を含む。
さらに好ましくは、異常診断装置は、インターネットに接続される。通信装置は、無線通信部と、通信サーバとを含む。無線通信部は、風力発電装置内に設けられる。通信サーバは、インターネットに接続され、無線通信部と無線通信可能に構成される。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、振動センサを用いて測定された振動波形の実効値、および振動センサを用いて測定された振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって生成されるエンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて、転がり軸受の異常を診断するので、従来の周波数分析による手法に比べてより正確な異常診断を実現することができる。また、不必要なメンテナンスをなくすことができ、メンテナンスに要するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1による転がり軸受の異常診断装置が適用された風力発電装置の構成を概略的に示した図である。
【図2】図1に示すデータ処理装置の構成を機能的に示す機能ブロック図である。
【図3】軸受に異常が発生していないときの軸受の振動波形を示した図である。
【図4】軸受の軌道輪の面荒れや潤滑不良が発生したときに見られる軸受の振動波形を示した図である。
【図5】軸受の軌道輪に剥離が発生したときの初期段階における軸受の振動波形を示した図である。
【図6】剥離異常の末期段階に見られる軸受の振動波形を示した図である。
【図7】軸受の軌道輪の一部に剥離が生じ、その後、軌道輪全域に剥離が転移していったときの軸受の振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値の時間的変化を示した図である。
【図8】軸受の軌道輪の面荒れや潤滑不良が発生したときの軸受の振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値の時間的変化を示した図である。
【図9】実施の形態2におけるデータ処理装置の構成を機能的に示す機能ブロック図である。
【図10】実施の形態3におけるデータ処理装置の構成を機能的に示す機能ブロック図である。
【図11】実施の形態4におけるデータ処理装置の構成を機能的に示す機能ブロック図である。
【図12】実施の形態5による異常診断システムの全体構成を概略的に示した図である。
【図13】図12に示す風力発電装置に含まれるデータ処理装置の構成を機能的に示す機能ブロック図である。
【図14】実施の形態6におけるエンベロープ処理部の機能ブロック図である。
【図15】エンベロープ処理の時定数を変化させたときのエンベロープ波形の変化を示した図である。
【図16】変調度を振動度で除算した値とエンベロープ処理の時定数との関係を示した図である。
【図17】正常品の変調比に対する異常品(剥離)の変調比の比率とエンベロープ処理の時定数との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0027】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による転がり軸受の異常診断装置が適用された風力発電装置の構成を概略的に示した図である。図1を参照して、風力発電装置10は、主軸20と、ブレード30と、増速機40と、発電機50と、主軸用軸受(以下、単に「軸受」と称する。)60と、振動センサ70と、データ処理装置80とを備える。増速機40、発電機50、軸受60、振動センサ70およびデータ処理装置80は、ナセル90に格納され、ナセル90は、タワー100によって支持される。
【0028】
主軸20は、ナセル90内に進入して増速機40の入力軸に接続され、軸受60によって回転自在に支持される。そして、主軸20は、風力を受けたブレード30により発生する回転トルクを増速機40の入力軸へ伝達する。ブレード30は、主軸20の先端に設けられ、風力を回転トルクに変換して主軸20に伝達する。
【0029】
軸受60は、ナセル90内において固設され、主軸20を回転自在に支持する。軸受60は、転がり軸受によって構成され、たとえば、自動調芯ころ軸受や円すいころ軸受、円筒ころ軸受、玉軸受等によって構成される。なお、これらの軸受は、単列のものでも複列のものでもよい。振動センサ70は、軸受60に固設される。そして、振動センサ70は、軸受60の振動を検出し、その検出値をデータ処理装置80へ出力する。振動センサ70は、たとえば、圧電素子を用いた加速度センサによって構成される。
【0030】
増速機40は、主軸20と発電機50との間に設けられ、主軸20の回転速度を増速して発電機50へ出力する。一例として、増速機40は、遊星ギヤや中間軸、高速軸等を含む歯車増速機構によって構成される。なお、特に図示しないが、この増速機40内にも、複数の軸を回転自在に支持する複数の軸受が設けられている。発電機50は、増速機40の出力軸に接続され、増速機40から受ける回転トルクによって発電する。発電機50は、たとえば、誘導発電機によって構成される。なお、この発電機50内にも、ロータを回転自在に支持する軸受が設けられている。
【0031】
データ処理装置80は、ナセル90内に設けられ、軸受60の振動の検出値を振動センサ70から受ける。そして、データ処理装置80は、予め設定されたプログラムに従って、後述の方法により、軸受60の振動波形を用いて軸受60の異常を診断する。
【0032】
図2は、図1に示したデータ処理装置80の構成を機能的に示す機能ブロック図である。図2を参照して、データ処理装置80は、ハイパスフィルタ(以下、「HPF(High Pass Filter)」と称する。)110,150と、実効値演算部120,160と、エンベロープ処理部140と、記憶部180と、診断部190とを含む。
【0033】
HPF110は、軸受60の振動の検出値を振動センサ70から受ける。そして、HPF110は、その受けた検出信号につき、予め定められた周波数よりも高い信号成分を通過させ、低周波成分を遮断する。このHPF110は、軸受60の振動波形に含まれる直流成分を除去するために設けられたものである。なお、振動センサ70からの出力が直流成分を含まないものであれば、HPF110を省略してもよい。
【0034】
実効値演算部120は、直流成分が除去された軸受60の振動波形をHPF110から受ける。そして、実効値演算部120は、軸受60の振動波形の実効値(「RMS(Root Mean Square)値」とも称される。)を算出し、その算出された振動波形の実効値を記憶部180へ出力する。
【0035】
エンベロープ処理部140は、軸受60の振動の検出値を振動センサ70から受ける。そして、エンベロープ処理部140は、その受けた検出信号にエンベロープ処理を行なうことによって、軸受60の振動波形のエンベロープ波形を生成する。なお、エンベロープ処理部140において演算されるエンベロープ処理には、種々の公知の手法を適用可能であり、一例として、振動センサ70を用いて測定される軸受60の振動波形を絶対値に整流し、ローパスフィルタ(LPF(Low Pass Filter))に通すことによって、軸受60の振動波形のエンベロープ波形が生成される。
【0036】
HPF150は、軸受60の振動波形のエンベロープ波形をエンベロープ処理部140から受ける。そして、HPF150は、その受けたエンベロープ波形につき、予め定められた周波数よりも高い信号成分を通過させ、低周波成分を遮断する。このHPF150は、エンベロープ波形に含まれる直流成分を除去し、エンベロープ波形の交流成分を抽出するために設けられたものである。
【0037】
実効値演算部160は、直流成分が除去されたエンベロープ波形、すなわちエンベロープ波形の交流成分をHPF150から受ける。そして、実効値演算部160は、その受けたエンベロープ波形の交流成分の実効値(RMS値)を算出し、その算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値を記憶部180へ出力する。
【0038】
記憶部180は、実効値演算部120により算出された軸受60の振動波形の実効値と、実効値演算部160により算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値とを同期させて時々刻々記憶する。この記憶部180は、たとえば、読み書き可能な不揮発性のメモリ等によって構成される。
【0039】
診断部190は、記憶部180に時々刻々記憶された、軸受60の振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値を記憶部180から読出し、その読出された2つの実効値に基づいて軸受60の異常を診断する。詳しくは、診断部190は、軸受60の振動波形の実効値とエンベロープ波形の交流成分の実効値との時間的変化の推移に基づいて、軸受60の異常を診断する。
【0040】
すなわち、実効値演算部120により算出される軸受60の振動波形の実効値は、エンベロープ処理を行なっていない生の振動波形の実効値であるので、たとえば、軌道輪の一部に剥離が発生し、その剥離箇所を転動体が通過するときのみ振幅が増加するインパルス的な振動に対しては値の増加が小さいけれども、軌道輪と転動体との接触部の面荒れや潤滑不良時に発生する持続的な振動に対しては値の増加が大きくなる。
【0041】
一方、実効値演算部160により算出されるエンベロープ波形の交流成分の実効値は、軌道輪の面荒れや潤滑不良時に発生する持続的な振動に対しては値の増加が小さく、場合によっては増加しないけれども、インパルス的な振動に対しては値の増加が大きくなる。そこで、この実施の形態1では、軸受60の振動波形の実効値とエンベロープ波形の交流成分の実効値とを用いることによって、一方の実効値だけでは検出できない異常を検出可能とし、より正確な異常診断を実現可能としたものである。
【0042】
図3〜図6は、振動センサ70を用いて測定される軸受60の振動波形を示した図である。なお、この図3〜図6では、主軸20(図1)の回転速度が一定のときの振動波形が示されている。
【0043】
図3は、軸受60に異常が発生していないときの軸受60の振動波形を示した図である。図3を参照して、横軸は時間を示し、縦軸は、振動の大きさを表わす振動度を示す。
【0044】
図4は、軸受60の軌道輪の面荒れや潤滑不良が発生したときに見られる軸受60の振動波形を示した図である。図4を参照して、軌道輪の面荒れや潤滑不良が発生すると、振動度が増加し、かつ、振動度の増加した状態が持続的に生じる。振動波形に目立ったピークは発生していない。したがって、このような振動波形について、軸受60に異常が発生していないときの振動波形の実効値(実効値演算部120(図2)の出力)およびエンベロープ波形の交流成分の実効値(実効値演算部160(図2)の出力)と比較すると、エンベロープ処理を行なっていない生の振動波形の実効値が増加し、エンベロープ波形の交流成分の実効値はそれ程増加しない。
【0045】
図5は、軸受60の軌道輪に剥離が発生したときの初期段階における軸受60の振動波形を示した図である。図5を参照して、剥離異常の初期段階は、軌道輪の一部に剥離が発生している状態であり、その剥離箇所を転動体が通過するときに大きな振動が発生するので、パルス的な振動が軸の回転に応じて周期的に発生する。剥離箇所以外を転動体が通過しているときは、振動度の増加は小さい。したがって、このような振動波形について、軸受60に異常が発生していないときの振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値と比較すると、エンベロープ波形の交流成分の実効値が増加し、生の振動波形の実効値はそれ程増加しない。
【0046】
図6は、剥離異常の末期段階に見られる軸受60の振動波形を示した図である。図6を参照して、剥離異常の末期段階は、軌道輪の全域に剥離が転移している状態であり、異常の初期段階に比べて、振動度が全体的に増加し、パルス的な振動の傾向は弱まる。したがって、このような振動波形について、剥離異常の初期段階における振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値と比較すると、生の振動波形の実効値が増加し、エンベロープ波形の交流成分の実効値は低下する。
【0047】
図7は、軸受60の軌道輪の一部に剥離が生じ、その後、軌道輪全域に剥離が転移していったときの軸受60の振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値の時間的変化を示した図である。なお、この図7および以下に説明する図8では、主軸20の回転速度が一定のときの各実効値の時間的変化が示されている。
【0048】
図7を参照して、曲線k1は、エンベロープ処理を行なっていない振動波形の実効値の時間的変化を示し、曲線k2は、エンベロープ波形の交流成分の実効値の時間的変化を示す。剥離が発生する前の時刻t1では、振動波形の実効値(k1)およびエンベロープ波形の交流成分の実効値(k2)のいずれも小さい。なお、時刻t1における振動波形は、上述の図3に示した波形のようになる。
【0049】
軸受60の軌道輪の一部に剥離が発生すると、図5で説明したように、エンベロープ波形の交流成分の実効値(k2)が大きく増加し、一方、エンベロープ処理を行なっていない振動波形の実効値(k1)はそれ程増加しない(時刻t2近傍)。
【0050】
さらにその後、軌道輪の全域に剥離が転移すると、図6で説明したように、エンベロープ処理を行なっていない振動波形の実効値(k1)が大きく増加し、一方、エンベロープ波形の交流成分の実効値(k2)は低下する(時刻t3近傍)。
【0051】
また、図8は、軸受60の軌道輪の面荒れや潤滑不良が発生したときの軸受60の振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値の時間的変化を示した図である。図8を参照して、図7と同様に、曲線k1は、エンベロープ処理を行なっていない振動波形の実効値の時間的変化を示し、曲線k2は、エンベロープ波形の交流成分の実効値の時間的変化を示す。
【0052】
軌道輪の面荒れや潤滑不良が発生する前の時刻t11では、振動波形の実効値(k1)およびエンベロープ波形の交流成分の実効値(k2)のいずれも小さい。なお、時刻t11における振動波形は、上述の図3に示した波形のようになる。
【0053】
軸受60の軌道輪の面荒れや潤滑不良が発生すると、図4で説明したように、エンベロープ処理を行なっていない振動波形の実効値(k1)が増加し、一方、エンベロープ波形の交流成分の実効値(k2)の増加は見られない(時刻t12近傍)。
【0054】
このように、エンベロープ処理を行なっていない生の振動波形の実効値(k1)とエンベロープ波形の交流成分の実効値(k2)との時間的変化の推移に基づいて、軸受60の異常診断をより正確に行なうことが可能である。
【0055】
以上のように、この実施の形態1によれば、振動センサ70を用いて測定された軸受60の振動波形の実効値、および振動センサ70を用いて測定された振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって生成されるエンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて、軸受60の異常を診断するので、従来の周波数分析による手法に比べてより正確な異常診断を実現することができる。また、不必要なメンテナンスをなくすことができ、メンテナンスに要するコストを低減することができる。
【0056】
[実施の形態2]
主軸20(図1)の回転速度が変化すると、軸受60の振動の大きさが変化する。一般的には、主軸20の回転速度の増加に伴ない軸受60の振動度は増加する。そこで、この実施の形態2では、軸受60の振動波形の実効値およびエンベロープ波形の交流成分の実効値の各々を主軸20の回転速度で正規化し、その正規化された各実効値を用いて軸受60の異常診断が実行される。
【0057】
この実施の形態2における風力発電装置の全体構成は、図1に示した実施の形態1の構成と同じである。
【0058】
図9は、実施の形態2におけるデータ処理装置80Aの構成を機能的に示す機能ブロック図である。図9を参照して、データ処理装置80Aは、図2に示した実施の形態1におけるデータ処理装置80の構成において、修正振動度算出部130と、修正変調度算出部170と、速度関数生成部200とをさらに含む。
【0059】
速度関数生成部200は、回転センサ210(図1において図示せず)による主軸20の回転速度の検出値を受ける。なお、回転センサ210は主軸20の回転位置の検出値を出力し、速度関数生成部200において主軸20の回転速度を算出するものとしてもよい。そして、速度関数生成部200は、実効値演算部120により算出される軸受60の振動波形の実効値を主軸20の回転速度Nで正規化するための速度関数A(N)、および実効値演算部160により算出されるエンベロープ波形の交流成分の実効値を主軸20の回転速度Nで正規化するための速度関数B(N)を生成する。一例として、速度関数A(N),B(N)は、次式によって表わされる。
【0060】
A(N)=a×N-0.5 …(1)
B(N)=b×N-0.5 …(2)
ここで、a,bは、実験等によって予め定められる定数であり、異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。
【0061】
修正振動度算出部130は、軸受60の振動波形の実効値を実効値演算部120から受け、速度関数A(N)を速度関数生成部200から受ける。そして、修正振動度算出部130は、速度関数A(N)を用いて、実効値演算部120によって算出された振動波形の実効値を主軸20の回転速度で正規化した値(以下「修正振動度」と称する。)を算出する。具体的には、実効値演算部120によって算出された振動波形の実効値Vrと速度関数A(N)とを用いて、修正振動度Vr*は、次式によって算出される。
【0062】
【数1】

【0063】
ここで、Vraは、時間0〜TにおけるVrの平均値を示す。
そして、修正振動度算出部130は、式(3)により算出された修正振動度Vr*を記憶部180へ出力する。
【0064】
修正変調度算出部170は、エンベロープ波形の交流成分の実効値を実効値演算部160から受け、速度関数B(N)を速度関数生成部200から受ける。そして、修正変調度算出部170は、速度関数B(N)を用いて、実効値演算部160によって算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値を主軸20の回転速度で正規化した値(以下「修正変調度」と称する。)を算出する。具体的には、実効値演算部160によって算出されたエンベロープ波形の交流成分の実効値Veおよび速度関数B(N)を用いて、修正変調度Ve*は、次式によって算出される。
【0065】
【数2】

【0066】
ここで、Veaは、時間0〜TにおけるVeの平均値を示す。修正変調度算出部170は、式(4)により算出された修正変調度Ve*を記憶部180へ出力する。
【0067】
そして、時々刻々と記憶部180に記憶された修正振動度Vr*および修正変調度Ve*が診断部190によって読出され、その読出された修正振動度Vr*および修正変調度Ve*の時間的変化の推移に基づいて、診断部190により軸受60の異常診断が行なわれる。
【0068】
なお、上記において、回転センサ210は、主軸20に取り付けられてもよいし、軸受60に回転センサ210が組み込まれた回転センサ付軸受を軸受60に用いてもよい。
【0069】
以上のように、この実施の形態2によれば、軸受60の振動波形の実効値を回転速度で正規化した修正振動度Vr*と、エンベロープ波形の交流成分の実効値を回転速度で正規化した修正変調度Ve*とに基づいて異常を診断するので、回転速度の変動による外乱を除去してより正確な異常診断を実現することができる。
【0070】
[実施の形態3]
この実施の形態3では、さらに正確な異常診断を行なうために、上記の実施の形態1または2に加えて周波数分析による異常診断が併用される。
【0071】
この実施の形態3における風力発電装置の全体構成は、図1に示した風力発電装置10と同じである。
【0072】
図10は、実施の形態3におけるデータ処理装置80Bの構成を機能的に示す機能ブロック図である。図10を参照して、データ処理装置80Bは、図9に示したデータ処理装置80Aの構成において、周波数分析部220,230をさらに含む。
【0073】
周波数分析部220は、直流成分が除去された軸受60の振動波形をHPF110から受ける。そして、周波数分析部220は、その受けた軸受60の振動波形に対して周波数分析を行ない、その周波数分析結果を記憶部180へ出力する。一例として、周波数分析部220は、HPF110から受ける軸受60の振動波形に対して高速フーリエ変換(FFT)処理を行ない、予め設定されたしきい値を超えるピーク周波数を記憶部180へ出力する。
【0074】
また、周波数分析部230は、直流成分が除去されたエンベロープ波形の交流成分をHPF150から受ける。そして、周波数分析部230は、その受けたエンベロープ波形の交流成分に対して周波数分析を行ない、その周波数分析結果を記憶部180へ出力する。一例として、周波数分析部230は、HPF110から受けるエンベロープ波形の交流成分に対してFFT処理を行ない、予め設定されたしきい値を超えるピーク周波数を記憶部180へ出力する。
【0075】
そして、診断部190は、修正振動度Vr*および修正変調度Ve*とともに周波数分析部220,230による周波数分析結果を記憶部180から読出し、修正振動度Vr*および修正変調度Ve*の時間的変化の推移とともに周波数分析結果を併用することによって、より信頼性の高い異常診断を行なう。
【0076】
たとえば、周波数分析部220,230による周波数分析結果は、修正振動度Vr*および修正変調度Ve*に基づく異常診断によって異常が検知されたときに異常の発生部位を推定するのに用いることができる。すなわち、軸受内部において損傷が発生すると、損傷部位(内輪、外輪、転動体)に応じて、軸受内部の幾何学的構造および回転速度から理論的に決定される特定の周波数に振動のピークが発生する。そこで、上述した修正振動度Vr*および修正変調度Ve*による異常診断に、周波数分析部220,230による周波数分析結果を併用することによって、異常発生部位をより正確に診断することが可能になる。
【0077】
なお、上記においては、実施の形態2において周波数分析部220,230を追加するものとしたが、図2に示した実施の形態1におけるデータ処理装置80に周波数分析部220,230を追加したものであってもよい。
【0078】
以上のように、この実施の形態3によれば、周波数分析による異常診断が併用されるので、異常診断の信頼性をさらに高めることができるとともに異常発生部位をより正確に診断することができる。
【0079】
[実施の形態4]
実施の形態4では、軸受60の異常診断の信頼性をさらに高めるために、種々のセンサの検出値が併用される。
【0080】
図11は、実施の形態4におけるデータ処理装置80Cの構成を機能的に示す機能ブロック図である。図11を参照して、データ処理装置80Cは、図10に示したデータ処理装置80Bの構成において、診断部190に代えて診断部190Aを含む。
【0081】
この実施の形態4における風力発電装置には、振動センサ70および回転センサ210に加えて、変位センサ240、AE(Acoustic Emission)センサ250、温度センサ260および磁気式鉄粉センサ270の少なくとも一つがさらに備えられる。そして、診断部190Aは、その備えられた変位センサ240、AEセンサ250、温度センサ260および磁気式鉄粉センサ270の少なくとも一つから検出値を受ける。また、診断部190Aは、修正振動度Vr*、修正変調度Ve*および周波数分析部220,230による周波数分析結果を記憶部180から読出す。
【0082】
そして、診断部190Aは、修正振動度Vr*、修正変調度Ve*および周波数分析部220,230による周波数分析結果とともに、変位センサ240、AEセンサ250、温度センサ260および磁気式鉄粉センサ270の少なくとも一つから受ける検出値を併用することによって、軸受60の異常診断を行なう。
【0083】
変位センサ240は、軸受60に取り付けられ、軸受60の外輪に対する内輪の相対変位を検出して診断部190Aへ出力する。振動センサ70の検出値を用いた上記の修正振動度Vr*および修正変調度Ve*ならびに周波数分析手法では、転動面の全体的な磨耗に対する異常の検出が難しいところ、外輪に対する内輪の相対変位を変位センサ240により検出することによって、軸受内部の磨耗を検出することができる。そして、診断部190Aは、変位センサ240からの検出値が予め設定された値を超えると、軸受60に異常が発生したものと判定する。なお、変位センサ240は外輪および内輪間の相対変位を検出することから、非測定面の精度を高品質に保つ必要がある。
【0084】
AEセンサ250は、軸受60に取り付けられ、軸受60から発生するアコースティックエミッション波(AE信号)を検出して診断部190Aへ出力する。このAEセンサ250は、軸受60を構成する部材の内部クラックの検出に優れており、AEセンサ250を併用することによって、振動センサ70では検出しにくい内部クラックが要因となって発生する剥離異常を早期に検出することが可能となる。そして、診断部190Aは、AEセンサ250により検出されるAE信号の振幅が設定値を超えた回数がしきい値を超えたり、検出されたAE信号またはAE信号をエンベロープ処理した信号がしきい値を超えたりすると、軸受60に異常が発生したものと判定する。
【0085】
温度センサ260は、軸受60に取り付けられ、軸受60の温度を検出して診断部190Aへ出力する。一般的に、軸受は、潤滑不良や軸受内部の隙間の過少などによって発熱し、転動面の変色や軟化溶着を経て焼き付き状態になると回転不能になる。そこで、軸受60の温度を温度センサ260により検出することによって、潤滑不良等の異常を早期に検出し得る。
【0086】
そして、診断部190Aは、修正振動度Vr*および修正変調度Ve*が図8に示したような挙動を示した場合、温度センサ260の検出値をさらに参照することによって潤滑不良等の異常診断を行なう。なお、診断部190Aは、温度センサ260からの検出値が予め設定された値を超えた場合に、それのみをもって軸受60に異常が発生したものと判定してもよい。
【0087】
なお、温度センサ260は、たとえば、サーミスタや白金抵抗体、熱電対等によって構成される。
【0088】
磁気式鉄粉センサ270は、軸受60の潤滑剤に含まれる鉄粉量を検出し、その検出値を診断部190Aへ出力する。磁気式鉄粉センサ270は、たとえば、磁石を内蔵した電極と棒状電極とによって構成され、軸受60の潤滑剤の循環経路に設けられる。そして、磁気式鉄粉センサ270は、潤滑剤中に含まれる鉄粉を磁石によって捕獲し、鉄粉の付着により電極間の電気抵抗が設定値以下になると信号を出力する。すなわち、軸受が磨耗すると、磨耗により生じた鉄粉が潤滑剤に混ざるので、軸受60の潤滑剤に含まれる鉄粉量を磁気式鉄粉センサ270により検出することによって軸受60の磨耗を検出することができる。そして、診断部190Aは、磁気式鉄粉センサ270から信号を受けると、軸受60に異常が発生したものと判定する。
【0089】
なお、特に図示しないが、磁気式鉄粉センサ270に代えて、光の透過率により潤滑剤の汚れを検出する光学式センサを用いてもよい。たとえば、光学式センサは、発光素子の光をグリースに照射し、受光素子に到達する光の強度の変化によってグリース中の軸受磨耗粉の量を検出する。なお、グリース中に異物混入がない状態の受光素子の出力値と酸化鉄を混入させたときの受光素子の出力値との比によって光の透過率が定義され、診断部190Aは、その透過率が設定値を超えると、軸受60に異常が発生したものと判定する。
【0090】
なお、図11では、変位センサ240、AEセンサ250、温度センサ260および磁気式鉄粉センサ270が示されているが、必ずしも全てを備える必要はなく、少なくとも一つのセンサを備えることによって異常診断の信頼性を高めることができる。
【0091】
以上のように、この実施の形態4によれば、種々のセンサの検出値を異常診断に併用するので、異常診断の信頼性をさらに高めることができる。特に、変位センサ240を併用することによって軸受内部の磨耗についても診断可能となり、AEセンサ250を併用することによって、内部クラックが要因となって発生する剥離異常を早期に診断可能となる。また、温度センサ260を併用することによって潤滑不良等の異常について早期に診断可能となり、磁気式鉄粉センサ270や光の透過率により潤滑剤の汚れを検出する光学式センサ等を併用することによって軸受60の磨耗異常を診断可能となる。
【0092】
[実施の形態5]
ナセル90(図1)は、高所に設置されるので、上述した異常診断装置は、その装置自体のメンテナンス性を考慮すると、本来的にはナセル90から離れた場所に設置するのが望ましい。しかしながら、振動センサ70を用いて測定される軸受60の振動波形そのものを遠隔地へ転送することは、転送速度の高い送信手段が必要であり、コスト増を招く。また、上述のようにナセル90が高所に設置されていることを考慮すると、ナセル90から外部への通信手段には、無線通信を用いることが望ましい。
【0093】
そこで、この実施の形態5では、修正振動度Vr*および修正変調度Ve*の算出ならびに周波数分析処理(周波数分析を併用する場合)については、ナセル90内に設けられるデータ処理装置において実行され、算出された修正振動度Vr*および修正変調度Ve*ならびに周波数分析結果(ピーク周波数)の各データが無線によってナセル90から外部へ送信される。そして、ナセル90から無線送信されたデータは、インターネットに接続された通信サーバによって受信され、インターネットを介して診断サーバに送信されて軸受60の異常診断が実施される。
【0094】
図12は、実施の形態5による異常診断システムの全体構成を概略的に示した図である。図12を参照して、異常診断システムは、風力発電装置10と、通信サーバ310と、インターネット320と、軸受状態診断サーバ330とを備える。
【0095】
風力発電装置10の構成は、図1で説明したとおりである。なお、後述のように、この実施の形態5における風力発電装置10のデータ処理装置においては、診断部に代えて無線通信部が設けられる。そして、風力発電装置10は、振動センサ70(図1)の検出値を用いて上述した修正振動度Vr*および修正変調度Ve*ならびに周波数分析結果(周波数分析を併用する場合)を算出し、その算出結果を無線により通信サーバ310へ出力する。
【0096】
通信サーバ310は、インターネット320に接続される。そして、通信サーバ310は、風力発電装置10から無線により送信されたデータを受信し、その受信したデータをインターネット320を介して軸受状態診断サーバ330へ出力する。軸受状態診断サーバ330は、インターネット320に接続される。そして、軸受状態診断サーバ330は、通信サーバ310からインターネット320を介してデータを受信し、風力発電装置10において算出された修正振動度Vr*および修正変調度Ve*ならびに周波数分析結果(周波数分析を併用する場合)に基づいて、風力発電装置10に設けられる軸受60(図1)の異常診断を行なう。
【0097】
図13は、図12に示した風力発電装置10に含まれるデータ処理装置80Dの構成を機能的に示す機能ブロック図である。図13を参照して、データ処理装置80Dは、図10に示したデータ処理装置80Bの構成において、診断部190に代えて無線通信部280を含む。無線通信部280は、修正振動度Vr*および修正変調度Ve*ならびに周波数分析部220,230による周波数分析結果を記憶部180から読出し、その読出されたデータを無線により通信サーバ310(図12)へ送信する。
【0098】
なお、データ処理装置80Dのその他の構成は、図10に示したデータ処理装置80Bと同じである。
【0099】
なお、上記においては、ナセル90と通信サーバ310との間は無線通信が行なわれるものとしたが、ナセル90と通信サーバ310との間を有線で接続することも可能である。この場合は、配線が必要となるものの、無線通信装置を別途設ける必要がなくなり、かつ、一般的には有線の方が多くの情報を伝達可能であるので、ナセル90内においてメイン基板上に処理を集約することができる。
【0100】
また、上述した異常診断システムは、既存の発電監視システムとは独立して構成することが望ましい。このように構成することによって、既存のシステムに変更を加えることなく、異常診断システムの導入コストを抑制することができる。
【0101】
以上のように、この実施の形態5によれば、風力発電装置10に設けられる軸受の異常診断を、遠隔地に設けられる軸受状態診断サーバ330において実施するので、メンテナンス負荷およびコストを低減することができる。
【0102】
また、ナセル90は高所に設置されるので作業環境が劣悪であるところ、無線通信部280および通信サーバ310を設けることによりナセル90からの信号出力を無線化したので、ナセル90における配線工事を最小限に抑えることができ、ナセル90を支持するタワー100内の配線工事も不要となる。
【0103】
[実施の形態6]
この実施の形態6では、より検出感度の高い異常診断を行なうために、上記の各実施の形態において、エンベロープ処理部140におけるエンベロープ処理の最適化が図られる。
【0104】
図14は、この実施の形態6におけるエンベロープ処理部の機能ブロック図である。図14を参照して、エンベロープ処理部140Aは、絶対値検波部410と、包絡線検波部420とを含む。
【0105】
絶対値検波部410は、軸受60の振動の検出値を振動センサ70から受け、その受けた検出信号の絶対値を出力する。包絡線検波部420は、絶対値検波部410の出力信号に所定の時定数の減衰処理を施すことによって、軸受60の振動波形のエンベロープ波形を生成する。具体的には、包絡線検波部420は、次式を用いてエンベロープ波形を生成する。
【0106】
【数3】

【0107】
ここで、nは時間に対する連続信号を離散化した数値の番号、E[n]はエンベロープ処理後のn番目の信号、Max(a,b)はaとbとのうち大きい方を返す関数、|S[n]|は絶対値検波部410の出力のn番目の離散化信号、|S[n−1]|はn−1番目の離散化信号、Δtは離散化周期、τは時定数を示す。この式(5)は、信号が入力されると、ピーク値から時定数τで出力を減衰させ、出力を超える信号が入力された場合には、新たなピーク値から出力を減衰させるというものである。この式(5)によれば、簡便な処理でエンベロープ波形を生成できるとともに、剥離異常等により瞬間的に生じる大きなピークの信号を確実に残すことができる。
【0108】
さらにここで、包絡線検波部420は、主軸20または軸受60の回転速度Nに基づいて時定数τを設定する。エンベロープ波形を決める時定数τは、その値が大きすぎると入力信号(振動波形)の特徴が捨象されてしまうので好ましくない。一方、時定数τが小さすぎると入力信号(振動波形)と同等の信号が出力されエンベロープ波形とならない。したがって、時定数τは、適切な値に設定する必要がある。
【0109】
図15は、エンベロープ処理の時定数τを変化させたときのエンベロープ波形の変化を示した図である。但し、この波形は、直流成分を除いた交流成分のみの信号である。図15を参照して、ここでは、同じ入力信号(振動波形)に対して時定数τをτ1,τ2,τ3(τ1<τ2<τ3)としたときのエンベロープ波形が示される。横軸は、時間を示す。時定数τを大きくするとエンベロープ波形の減衰速度が低下することが図15から分かる。
【0110】
図16は、エンベロープ波形の交流成分の実効値(以下、「変調度」とも称する。)を振動波形の実効値(以下、「振動度」とも称する。)で除算した値とエンベロープ処理の時定数との関係を示した図である。図16を参照して、縦軸は、変調度/振動度(以下、「変調比」とも称する。)を示す。横軸は、軸受60の静止輪(たとえば外輪)に対する転動体の通過周期τ0で時定数τを除算することによって得られる無次元時定数(τ/τ0)を示す。なお、このτ0は、たとえば、図5に示した振動波形におけるパルス的な振動の周期に相当する。
【0111】
曲線k11は、軸受60において異常が発生していない正常品の変調比を示したものであり、曲線k12は、軸受60の静止輪に剥離が発生している異常品の変調比を示したものである。このように、剥離が発生すると、図5で説明したように、変調度が増加し振動度はそれ程増加しないので、変調比は大きくなる。そして、剥離の検出感度を高めるためには、正常品の変調比に対する異常品の変調比の比率が大きければよい。
【0112】
図17は、正常品の変調比に対する異常品(剥離)の変調比の比率とエンベロープ処理の時定数との関係を示した図である。図17を参照して、横軸は、無次元時定数を示す。正常品の変調比に対する異常品の変調比の比率は、無次元時定数が0から増加するに従って増加し、無次元時定数が0.5を超えると単調に減少する。
【0113】
この結果は、以下のように考えられる。すなわち、正常品の振動波形は、図3に示したように、短い周期で同等の振動が続く波形であるので、エンベロープ処理の時定数を変化させても変調度はそれ程変化しない。したがって、正常品については、時定数を変化させても変調比はそれ程変化しない(図16の曲線k11参照)。
【0114】
一方、異常品(剥離)については、図16に示したように、無次元時定数が0から増加するに従って変調比が増加し、無次元時定数が0.5を超えると単調に減少する。これは、図15に示した、時定数τの変化に伴なうエンベロープ波形の変化からも推察されるように、エンベロープ波形の交流成分の実効値(変調度)は、時定数が0から増加していくに従って大きくなるけれども、無次元時定数が0.5を超えると、エンベロープ波形の減衰が鈍くなることによりエンベロープ波形の交流成分の実効値(変調度)は小さくなっていくからである。
【0115】
なお、無次元時定数が1以上になると、入力信号(振動波形)の情報は大きく損なわれる。すなわち、エンベロープ波形は周波数が低いので、離散化周期を長くしても波形品質を維持することができる。そして、エンベロープ波形は、保存容量を低減できるので、データの保存に適している。しかしながら、時定数を大きくしすぎると、エンベロープ波形から元の振動波形の特徴を推定することができなくなる。そこで、無次元時定数は、0.5以上1以下の値に設定するのが好ましい。すなわち、時定数τは、軸受60の静止輪に対する転動体の通過周期τ0の0.5倍以上通過周期τ0以下に設定するのが好ましい。
【0116】
再び図14を参照して、包絡線検波部420は、主軸20または軸受60の回転速度Nに基づいて時定数τを設定する。すなわち、通過周期τ0は、主軸20または軸受60の回転速度Nおよび軸受60の仕様により算出することができる。そこで、包絡線検波部420は、回転速度Nおよび軸受60の仕様に基づいて通過周期τ0を算出し、その算出された通過周期τ0の0.5倍以上1以下の範囲で(たとえばτ0の0.5倍の値)時定数τを設定する。なお、回転速度Nは、図9に示した回転センサ210等によって検出可能である。
【0117】
なお、上記においては、軸受60において剥離が最初に発生するのは静止輪であることが多いことから、静止輪に対する転動体の通過周期τ0を基準として時定数τを設定することとしている。静止輪よりも転動体の方が剥離が生じ易い場合には、転動体の自転の半周期を基準にして時定数τを設定するようにしてもよい。すなわち、包絡線検波部420は、回転速度Nおよび軸受60の仕様に基づいて転動体の自転の半周期を算出し、その半周期の0.5倍以上1以下の範囲で(たとえば自転半周期の0.5倍)時定数τを設定するようにしてもよい。なお、転動体の自転の半周期を基準とするのは、転動体が1回自転するごとに転動体が軌道輪に2回接触するからである。
【0118】
以上のように、この実施の形態6によれば、主軸20または軸受60の回転速度Nに基づいてエンベロープ処理における時定数τを設定するようにしたので、回転速度Nが変化しても検出感度の高い異常診断を実現することができる。
【0119】
なお、再び図1を参照して、上記の各実施の形態においては、振動センサ70は、軸受60に取り付けられ、軸受60の異常診断を行なうものとしたが、軸受60とともに、または軸受60に代えて、増速機40内や発電機50内に設けられる軸受に振動センサを設置し、上記の各実施の形態と同様の手法によって、増速機40内や発電機50内に設けられる軸受の異常診断を行なうことができる。
【0120】
なお、上記において、データ処理装置80,80A〜80Cは、この発明における「処理部」の一実施例に対応し、実効値演算部120,160は、それぞれこの発明における「第1の演算部」および「第2の演算部」の一実施例に対応する。また、データ処理装置80Dは、この発明における「データ処理部」の一実施例に対応し、軸受状態診断サーバ330は、この発明における「軸受異常診断装置」の一実施例に対応する。
【0121】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
10 風力発電装置、20 主軸、30 ブレード、40 増速機、50 発電機、60 軸受、70 振動センサ、80,80A〜80D データ処理装置、90 ナセル、100 タワー、110,150 HPF、120,160 実効値演算部、130 修正振動度算出部、140,140A エンベロープ処理部、170 修正変調度算出部、180 記憶部、190,190A 診断部、200 速度関数生成部、210 回転センサ、220,230 周波数分析部、240 変位センサ、250 AEセンサ、260 温度センサ、270 磁気式鉄粉センサ、280 無線通信部、310 通信サーバ、320 インターネット、330 軸受状態診断サーバ、410 絶対値検波部、420 包絡線検波部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受の振動波形を測定するための振動センサと、
前記転がり軸受の異常を診断するための処理部とを備え、
前記処理部は、
前記振動センサを用いて測定された前記振動波形の実効値を算出する第1の演算部と、
前記振動センサを用いて測定された前記振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって前記振動波形のエンベロープ波形を生成するエンベロープ処理部と、
前記エンベロープ処理部によって生成された前記エンベロープ波形の交流成分の実効値を算出する第2の演算部と、
前記第1の演算部によって算出された前記振動波形の実効値および前記第2の演算部によって算出された前記エンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて前記転がり軸受の異常を診断する診断部とを含む、転がり軸受の異常診断装置。
【請求項2】
前記転がり軸受によって支持される軸または前記転がり軸受の回転速度を検出するための回転センサをさらに備え、
前記処理部は、
前記第1の演算部によって算出された前記振動波形の実効値を前記回転速度で正規化した修正振動度を算出する修正振動度算出部と、
前記第2の演算部によって算出された前記エンベロープ波形の交流成分の実効値を前記回転速度で正規化した修正変調度を算出する修正変調度算出部とをさらに含み、
前記診断部は、前記修正振動度および前記修正変調度に基づいて前記転がり軸受の異常を診断する、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記修正振動度および前記修正変調度の時間的変化の推移に基づいて前記転がり軸受の異常を診断する、請求項2に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記振動波形および前記エンベロープ波形の少なくとも一方を周波数分析する周波数分析部をさらに含み、
前記診断部は、前記周波数分析部の分析結果に基づいて前記転がり軸受の異常部位をさらに推定する、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項5】
前記振動センサは、加速度センサを含む、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項6】
前記転がり軸受の内外輪間の相対変位を検出するための変位センサをさらに備え、
前記診断部は、前記変位センサの検出値をさらに用いて前記転がり軸受の異常を診断する、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項7】
前記転がり軸受から発生するアコースティックエミッション波を検出するためのAEセンサをさらに備え、
前記診断部は、前記AEセンサの検出値をさらに用いて前記転がり軸受の異常を診断する、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項8】
前記転がり軸受の温度を測定するための温度センサをさらに備え、
前記診断部は、前記温度センサの測定値をさらに用いて前記転がり軸受の異常を診断する、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項9】
前記転がり軸受の潤滑剤に含まれる不純物の量を測定するためのセンサをさらに備え、
前記診断部は、前記センサの測定値をさらに用いて前記転がり軸受の異常を診断する、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項10】
前記転がり軸受によって支持される軸または前記転がり軸受の回転速度を検出するための回転センサをさらに備え、
前記エンベロープ処理部は、
前記振動波形の絶対値を出力する絶対値検波部と、
前記絶対値検波部の出力信号に所定の時定数の減衰処理を施すことによって前記エンベロープ波形を生成する包絡線検波部とを含み、
前記時定数は、前記回転速度に基づいて設定される、請求項1に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項11】
前記時定数は、前記転がり軸受における転動体の自転の半周期以下に設定される、請求項10に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項12】
前記時定数は、前記半周期の0.5倍以上に設定される、請求項11に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項13】
前記時定数は、前記転がり軸受の静止輪に対する転動体の通過周期以下に設定される、請求項10に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項14】
前記時定数は、前記通過周期の0.5倍以上に設定される、請求項13に記載の転がり軸受の異常診断装置。
【請求項15】
風力を受けるブレードと、
前記ブレードに接続される主軸と、
前記主軸または前記主軸の回転を増速するための増速機に接続される発電機と、
前記主軸、前記増速機および前記発電機に設けられる複数の転がり軸受と、
前記複数の転がり軸受の少なくとも一つの異常を診断する異常診断装置とを備え、
前記異常診断装置は、
診断対象の転がり軸受の振動波形を測定するための振動センサと、
前記診断対象の転がり軸受の異常を診断するための処理部とを含み、
前記処理部は、
前記振動センサを用いて測定された前記振動波形の実効値を算出する第1の演算部と、
前記振動センサを用いて測定された前記振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって前記振動波形のエンベロープ波形を生成するエンベロープ処理部と、
前記エンベロープ処理部によって生成された前記エンベロープ波形の交流成分の実効値を算出する第2の演算部と、
前記第1の演算部によって算出された前記振動波形の実効値および前記第2の演算部によって算出された前記エンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて前記転がり軸受の異常を診断する診断部とを含む、風力発電装置。
【請求項16】
風力発電装置と、
前記風力発電装置とは異なる位置に配設される異常診断装置と、
前記風力発電装置と前記異常診断装置との間で通信を行なうための通信装置とを備え、
前記風力発電装置は、
風力を受けるブレードと、
前記ブレードに接続される主軸と、
前記主軸または前記主軸の回転を増速するための増速機に接続される発電機と、
前記主軸、前記増速機および前記発電機に設けられる複数の転がり軸受と、
前記複数の転がり軸受の少なくとも一つの振動波形を測定するための振動センサと、
前記振動センサを用いて測定された振動波形に対して一次処理を行なうデータ処理部とを含み、
前記データ処理部は、
前記振動センサを用いて測定された前記振動波形の実効値を算出する第1の演算部と、
前記振動センサを用いて測定された前記振動波形にエンベロープ処理を行なうことによって前記振動波形のエンベロープ波形を生成するエンベロープ処理部と、
前記エンベロープ処理部によって生成された前記エンベロープ波形の交流成分の実効値を算出する第2の演算部とを含み、
前記異常診断装置は、前記通信装置によって前記風力発電装置の前記データ処理部から受ける前記振動波形の実効値および前記エンベロープ波形の交流成分の実効値に基づいて、診断対象の転がり軸受の異常を診断する、異常診断システム。
【請求項17】
前記異常診断装置および前記通信装置は、前記風力発電装置の発電量を遠隔監視するシステムとは切離して設けられる、請求項16に記載の異常診断システム。
【請求項18】
前記通信装置は、通信経路の一部に無線通信を含む、請求項16に記載の異常診断システム。
【請求項19】
前記異常診断装置は、インターネットに接続され、
前記通信装置は、
前記風力発電装置内に設けられる無線通信部と、
前記インターネットに接続され、前記無線通信部と無線通信可能に構成された通信サーバとを含む、請求項18に記載の異常診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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