説明

転がり軸受ユニットの変位測定装置及び荷重測定装置

【課題】比較的簡単な構成で、互いに異なる2方向の変位又は荷重を測定できる変位測定装置及び荷重測定装置を実現する。
【解決手段】外輪3に支持したセンサユニット22に保持した1対のセンサ24a、24bを、ハブ4に外嵌固定したエンコーダ12eの被検出面に対向させる。これら両センサ24a、24bの検出信号の位相差から、上記外輪3と上記ハブ4との間のアキシアル方向の変位又は荷重を求める。又、上記両センサ24a、24bの検出信号の振幅から、上記外輪3と上記ハブ4との間のラジアル方向の変位又は荷重を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る転がり軸受ユニットの変位測定装置及び荷重測定装置は、複数個の転動体を介して相対回転自在に組み合わされた静止側軌道輪と回転側軌道輪との間の、互いに異なる2方向の変位、例えばラジアル方向の変位(方向及び量)とアキシアル方向の変位とを測定するものである。そして、測定した各方向の変位に基づいて、或いは変位を求める事なく直接、これら各方向に作用する荷重を求め、この荷重を表す信号を、自動車等の車両の走行安定性確保を図る為に利用する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車輪は懸架装置に対し、複列アンギュラ型の玉軸受ユニット等の転がり軸受ユニットにより回転自在に支持する。又、自動車の走行安定性を確保する為に、例えば非特許文献1に記載されている様な、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)、更には、ビークルスタビリティコントロールシステム(VSC)等の車両用走行安定化装置が使用されている。この様な各種車両用走行安定化装置を制御する為には、車輪の回転速度、車体に加わる各方向の加速度等の信号が必要になる。そして、より高度の制御を行なう為には、車輪を介して上記転がり軸受ユニットに加わる荷重(ラジアル荷重とアキシアル荷重との一方又は双方)の大きさを知る事が好ましい場合がある。
【0003】
この様な事情に鑑みて、特許文献1には、ラジアル荷重を測定自在な、荷重測定装置付転がり軸受ユニットが記載されている。この従来構造の第1例の場合には、非接触式の変位センサで、回転しない外輪と、この外輪の内径側で回転するハブとの径方向に関する変位を測定する事により、これら外輪とハブとの間に加わるラジアル荷重を求める様にしている。求めたラジアル荷重は、ABSを適正に制御する他、積載状態の不良を運転者に知らせる為に利用する。
【0004】
又、特許文献2には、転がり軸受ユニットに加わるアキシアル荷重を測定する構造が記載されている。この特許文献2に記載された従来構造の第2例の場合、外輪の外周面に設けた固定側フランジの内側面複数個所で、この固定側フランジをナックルに結合する為のボルトを螺合する為のねじ孔を囲む部分に、それぞれ荷重センサを添設している。上記外輪を上記ナックルに支持固定した状態でこれら各荷重センサは、このナックルの外側面と上記固定側フランジの内側面との間で挟持される。この様な従来構造の第2例の転がり軸受ユニットの荷重測定装置の場合、車輪と上記ナックルとの間に加わるアキシアル荷重は、上記各荷重センサにより測定される。更に、特許文献3には、一部の剛性を低くした外輪相当部材に動的歪みを検出する為のストレンゲージを設け、このストレンゲージが検出する転動体の通過周波数から転動体の公転速度を求め、更に、転がり軸受に加わるアキシアル荷重を測定する方法が記載されている。
【0005】
前述の特許文献1に記載された従来構造の第1例の場合、変位センサにより、外輪とハブとの径方向に関する変位を測定する事で、転がり軸受ユニットに加わる荷重を測定する。但し、この径方向に関する変位量は僅かである為、この荷重を精度良く求める為には、上記変位センサとして、高精度のものを使用する必要がある。高精度の非接触式センサは高価である為、荷重測定装置付転がり軸受ユニット全体としてコストが嵩む事が避けられない。
【0006】
又、特許文献2に記載された従来構造の第2例の場合、ナックルに対し外輪を支持固定する為のボルトと同数だけ、荷重センサを設ける必要がある。この為、荷重センサ自体が高価である事と相まって、転がり軸受ユニットの荷重測定装置全体としてのコストが相当に嵩む事が避けられない。又、特許文献3に記載された方法は、外輪相当部材の一部の剛性を低くする必要があり、この外輪相当部材の耐久性確保が難しくなる可能性がある他、十分な測定精度を得る事が難しいと考えられる。
【0007】
この様な事情に鑑みて本発明者等は先に、複列アンギュラ型の玉軸受ユニットを構成する回転側軌道輪にエンコーダを、この回転側軌道輪と同心に支持固定し、このエンコーダの被検出面の変位を検出する事で、この回転側軌道輪と静止側軌道輪との相対変位量を測定し、更にこの相対変位量に基づいてこれら両軌道輪同士の間に加わる荷重を求める発明(先発明)を行なった(特願2005−147642号)。この先発明に係る構造の場合、上記エンコーダの被検出面の特性が円周方向に関して変化するパターン(位相と、ピッチと、検出信号のデューティ比に結び付く各特性の割合とのうちから選択される1乃至複数)は、検出すべき変位の方向に見合う(一般的には一致する)、上記被検出面の幅方向に関して連続的に変化している。そして、上記静止側軌道輪等の固定部分に支持したセンサの検出部を、上記エンコーダの被検出面に近接対向させて、このセンサの出力信号が、上記相対変位量に応じて変化する様にしている。
【0008】
図5〜6は、この様な先発明に係る構造の第1例を示している。この先発明の第1例の転がり軸受ユニットの変位測定装置は、車輪支持用転がり軸受ユニット1と、回転速度検出装置としての機能を兼ね備えた、変位測定装置2とを備える。
このうちの車輪支持用転がり軸受ユニット1は、図5に示す様に、外輪3と、ハブ4と、転動体5、5とを備える。このうちの外輪3は、使用状態で懸架装置に支持固定される静止側軌道輪であって、内周面に複列の外輪軌道6、6を、外周面にこの懸架装置に結合する為の外向フランジ状の取付部7を、それぞれ有する。又、上記ハブ4は、使用状態で車輪を支持固定してこの車輪と共に回転する回転側軌道輪であって、ハブ本体8と内輪9とを組み合わせ固定して成る。この様なハブ4は、外周面の軸方向外端部(懸架装置への組み付け状態で車体の幅方向外側となる端部)に車輪を支持固定する為のフランジ10を、軸方向中間部及び内輪9の外周面に複列の内輪軌道11、11を、それぞれ設けている。上記各転動体5、5は、これら各内輪軌道11、11と上記各外輪軌道6、6との間にそれぞれ複数個ずつ、互いに逆方向の(背面組み合わせ型の)接触角を付与した状態で、転動自在に設けて、上記外輪3の内径側に上記ハブ4を、この外輪3と同心に回転自在に支持している。
【0009】
一方、上記変位測定装置2は、図5に示す様に、エンコーダ12と、センサ13と、図示しない演算器とを備える。
このうちのエンコーダ12は、軟鋼板等の磁性材製で、図6に示す様に、それぞれがスリット状である複数の透孔14a、14bを、交互に形成している。これら各透孔14a、14bは、上記エンコーダ12の中心軸の方向に対し傾斜している。又、円周方向に隣り合う透孔14a、14b同士の間で、傾斜方向は互いに逆になっている。又、円周方向に隣り合う透孔14a、14b同士のピッチは、交互に大小を繰り返している。この様なエンコーダ12は、上記ハブ4の中間部に外嵌固定している。一方、上記センサ13は、永久磁石と、ホール素子或いは磁気抵抗素子等の磁気検出素子とを組み込んだ、アクティブ型の磁気センサで、上記外輪3の中間部に形成した取付孔15に、径方向外方から内方に挿通する状態で設けている。そして、上記センサ13の先端部を上記外輪3の内周面から径方向内方に突出させて、この先端部に設けた検出部を、被検出面である、上記エンコーダ12の外周面に近接対向させている。
【0010】
上述の様に構成する先発明の変位測定装置の第1例の場合、アキシアル荷重に基づいて上記ハブ4と上記外輪3とが軸方向に相対変位すると、上記センサ13の検出信号が変化するパターン(ピッチ及び位相)が変化する。そこで、このパターンの変化に基づいて、上記相対変位の大きさ、更には上記アキシアル荷重の大きさを求められる。尚、同方向に傾斜した透孔14a、14a(14b、14b)に基づいて上記検出信号が変化する周期は、上記相対変位に拘らず変化しない。従って、この周期に基づいて、上記ハブ4の回転速度を求める事もできる。
【0011】
次に、図7〜8は、先発明に係る構造の第2例を示している。本例の場合には、重量の嵩む自動車の駆動輪を支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットを対象としている為に、転動体5a、5aとして円すいころを使用している。又、回転側軌道輪であるハブ4aの中心部に、等速ジョイントに付属のスプライン軸を挿通する為のスプライン孔16を形成している。そして、上記ハブ4aの中間部に、磁性金属材製で円環状のエンコーダ12aを外嵌固定している。このエンコーダ12aの外周面には、凹部17、17と凸部18、18とを、円周方向に関して交互に配置している。これら各凹部17、17と凸部18、18との円周方向に関する幅寸法は、軸方向に関して漸次変化している。
【0012】
一方、静止側軌道輪である外輪3の中間部に形成した取付孔15に、上述した第1例の場合と同様の、磁気検知式のセンサ13を挿通し、このセンサ13の先端部に設けた検出部を、上記エンコーダ12aの外周面に近接対向させている。このセンサ13の検出信号は、上記検出部の近傍を上記各凹部17、17と上記各凸部18、18とが交互に通過する事に伴って変化するが、この変化のパターン(検出信号のデューティ比=高電位継続時間/1周期)は、上記検出部が対向する、上記エンコーダ12aの外周面の軸方向位置によって変化する。そこで、上記変化のパターンに基づいて、上記外輪3と上記ハブ4aとの間に作用するアキシアル荷重を求められる。
【0013】
次に、図9〜10は、先発明に係る構造の第3例を示している。本例の場合には、静止側軌道輪である外輪3の一部に1対のセンサ13a、13bを、回転側軌道輪であるハブ4の回転方向に関する位相を一致させ、且つ、このハブ4の軸方向にずらせた状態で配置している。そして、上記両センサ13a、13bの検出部を、上記ハブ4の中間部に外嵌固定したエンコーダ12bの外周面に近接対向させている。このエンコーダ12bは、磁性金属板により円筒状に形成されたもので、幅方向片半部と他半部とに、それぞれスリット状の透孔14c、14dを、それぞれ上記エンコーダ12bの中心軸の方向に対し傾斜させた状態で、円周方向に関して等間隔に形成している。幅方向片半部の透孔14c、14cの傾斜方向と、他半部の透孔14d、14dの傾斜方向とは互いに逆で、傾斜角度は互いに等しい。又、上記外輪3と上記ハブ4との間にアキシアル荷重が作用していない状態(中立状態)で、上記両列の透孔14c、14dの間に存在するリム部19が、上記両センサ13a、13bの検出部の丁度中央位置に存在する。
【0014】
上述の様なエンコーダ12bを含んで構成する、先発明の変位測定装置の第3例の場合、上記中立状態では、上記両センサ13a、13bの検出信号の位相が互いに一致する。これに対して、上記外輪3と上記ハブ4との間にアキシアル荷重が作用すると、これら外輪3とハブ4とが軸方向に相対変位する結果、上記1対のセンサ13a、13bの検出信号の位相がずれる。そこで、このずれの方向及び大きさ(実際の場合には、上記両センサ13a、13bの検出信号の1周期に対するずれの大きさの比)に基づいて、上記アキシアル荷重の方向及び大きさを求められる。尚、上記ハブ4の回転速度は、何れかのセンサ13a(13b)の検出信号の周期或いは周波数に基づいて求められる。又、一方の列の透孔14c、14c(或は14d、14d)を傾斜させない(軸方向に平行にする)事もできる。この場合には、傾斜させない透孔に基づく出力信号を基準として、傾斜させた透孔に基づく出力信号の位相変化を求める。
【0015】
次に、図11〜12は、先発明に係る構造の第4例を示している。この先発明の第4例の場合には、ハブ4の内端部に外嵌固定した内輪9の内端部に、図12に示す様なエンコーダ12cの基端部を外嵌して、このエンコーダ12cを上記ハブ4に対し、このハブ4と同心に支持固定している。このエンコーダ12cは、磁性金属板製で、先半部に設けた円筒状部に、それぞれが「く」字形でスリット状の透孔14e、14eを、円周方向に関して等間隔に形成している。又、外輪3の内端部に嵌合固定したカバー20に支持したセンサホルダ21内に1対のセンサを、軸方向に離隔した状態で保持している。そして、これら両センサの検出部を、上記エンコーダ12cの内周面に近接対向させている。
【0016】
上述の様な先発明の転がり軸受ユニットの変位測定装置の第4例の場合も、アキシアル荷重に基づいてハブ4と外輪3とが軸方向に相対変位すると、上記1対のセンサの検出信号の位相がずれる。そこで、このずれの大きさに基づいて、上記相対変位の大きさ、更には上記アキシアル荷重の大きさを求められる。尚、上記ハブ4の回転速度は、何れかのセンサの検出信号に基づいて求められる。
【0017】
次に、図13は、先発明に係る構造の第5例に組み込むエンコーダ12dを示している。このエンコーダ12dは、磁性金属板により円輪状に形成されたもので、それぞれが径方向外側程円周方向に関する幅が大きくなる、台形の透孔14f、14fを、円周方向に関して等間隔に形成している。この様なエンコーダ12dの軸方向片側面にはセンサの検出部を、近接対向させる。
【0018】
上述の様なエンコーダ12dを含んで構成する、先発明の転がり軸受ユニットの変位測定装置の第5例の場合、ラジアル荷重に基づいてハブと外輪とが径方向に相対変位すると、上記センサの検出信号のデューティ比(高電位継続時間/1周期)が変化する。そこで、このデューティ比に基づいて、上記相対変位の大きさ、更には上記ラジアル荷重の大きさを求められる。尚、上記ハブの回転速度は、上記センサの検出信号の周期に基づいて求められる。
【0019】
尚、上述の先発明の転がり軸受ユニットの変位測定装置の第1〜5例は何れも、エンコーダ12〜12dとして単なる磁性材製のものを使用し、センサの側に永久磁石を組み込む事を意図している。これに対して、前記特願2005−147642号には、永久磁石製のエンコーダを使用し、センサの側の永久磁石を省略する構造に就いても記載されている。何れの場合でも、エンコーダの被検出面が円周方向に関して変化するパターンは、検出すべき荷重の作用方向に一致する、この被検出面の幅方向に関して連続的に変化している。
【0020】
何れにしても、上述の様な先発明に係る転がり軸受ユニットの変位測定装置により求めた、外輪3とハブ4、4aとの相対変位は、これら外輪3とハブ4、4aとの間に作用する荷重に応じたものとなる。従って、この相対変位に基づいて、この荷重を求める事ができる。又、この荷重(ラジアル荷重とアキシアル荷重との一方又は双方)は、路面と車輪(タイヤ)との接触面で生じている荷重と等価である。従って、上記求めた荷重に基づいて車両の走行状態を安定化させる為の制御を行なえば、車両の姿勢が不安定になる事を予防する為のフィードフォワード制御が可能になる等、車両の走行安定性確保の為の高度な制御が可能になる。
【0021】
ところで、上記車輪を支持する為の転がり軸受ユニットに加わる荷重は一方向のみではない。例えば、旋回走行時にこの転がり軸受ユニットには、ラジアル荷重とアキシアル荷重との両方の荷重が同時に加わる。上記走行安定性確保の為の制御を、より高精度に行なう為には、これら両方の荷重を求める事が好ましい事は勿論である。前述した先発明の構造でも、例えば図5〜12に示した第1〜4例の構造の何れかと、図13に示した第5例の構造とを組み合わせれば、上記両方の荷重を求められる。但し、この場合には、アキシアル方向の変位(荷重)を求める為の変位測定装置と、ラジアル方向の変位(荷重)を求める為の変位測定装置とを、互いに独立して設ける事になり、構造が複雑になる他、コスト並びに重量も嵩む事が避けられない。
【0022】
【特許文献1】特開2001−21577号公報
【特許文献2】特開平3−209016号公報
【特許文献3】特公昭62−3365号公報
【非特許文献1】青山元男著、「レッドバッジスーパー図解シリーズ/クルマの最新メカがわかる本」、p.138−139、p.146−149、株式会社三推社/株式会社講談社、平成13年12月20日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、比較的簡単な構成で、互いに異なる2方向の変位又は荷重を測定できる変位測定装置及び荷重測定装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の転がり軸受ユニットの変位測定装置及び荷重測定装置は、転がり軸受ユニットと変位測定装置又は荷重測定装置とを備える。
このうちの転がり軸受ユニットは、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、使用状態で回転する回転側軌道輪と、これら静止側軌道輪と回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に接触角を付与された状態で設けられた複数個の転動体とを備えたものである。
又、上記変位測定装置又は荷重測定装置は、上記回転側軌道輪の一部にこの回転側軌道輪と同心に支持された、被検出面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させたエンコーダと、その検出部をこの被検出面に対向させた状態で回転しない部分に支持され、この被検出面の特性変化に対応して連続的に変化する信号を出力する、アナログ式の磁気センサと、このセンサの出力信号に基づいて、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間の、互いに異なる2方向の変位又は荷重を求める演算器とを備えたものである。
又、上記被検出面の特性が円周方向に関して変化するパターンは、検出すべき第一の変位の方向、又は、第一の荷重に基づく変位の方向に対応して、上記被検出面の幅方向に関して連続的に変化している。
そして、上記演算器は、上記センサの出力信号のパターンの変化に基づいて、上記エンコーダの被検出面の幅方向に関する、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間の、上記第一の変位又は第一の荷重を求める。又、上記センサの出力信号の振幅の変化に基づいて、このセンサの検出部と上記被検出面とが対向する方向の第二の変位、又は、この方向の変位に結び付く第二の荷重を求める。
【発明の効果】
【0025】
上述の様に構成する本発明の転がり軸受ユニットの変位測定装置及び荷重測定装置は、比較的簡単な構成で、互いに異なる2方向の変位又は荷重を測定できる。
先ず、エンコーダの被検出面の幅方向に関する第一の変位又は第一の荷重に就いては、前述した先発明に係る転がり軸受ユニットの変位測定装置と同様に、エンコーダの被検出面の特性が変化するパターンを検出する事により測定できる。
更に、センサの検出部と上記被検出面とが対向する方向の第二の変位、又は、この方向の変位に結び付く第二の荷重に就いては、上記センサの出力信号の振幅の変化に基づいて求められる。即ち、この出力信号の振幅は、このセンサの検出部と上記被検出面との距離が縮まる程大きく、逆に、この距離が広がる程小さくなる。そこで、この距離と上記振幅との関係を予め求めておき、実験式或いはマップ等として演算器にインストールするソフトウェア中に組み込んでおけば、上記振幅に基づいて上記第二の変位又は上記第二の荷重を求められる。
尚、上記第一、第二の荷重を求める為には、必ずしも上記第一、第二の変位を求める必要はない。即ち、請求項5に記載した様に、演算器に、上記センサの出力信号に基づいて、上記第一、第二の荷重を直接(上記変位を求める過程を経る事なく)算出する機能を持たせる事もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
請求項1、5に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項2、6に記載した様に、エンコーダの被検出面に第一、第二の被検出部を、第一の変位の方向、又は、第一の荷重に基づく変位の方向に互いにずらせた状態で設ける。このうちの第一の被検出部は、特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化の位相を、上記第一の変位の方向、又は、第一の荷重に基づく変位の方向に対応して漸次変化させる。又、上記第二の被検出部は、特性を円周方向に関して交互に、上記第一の被検出部と同じピッチで変化させると共に、上記第一の荷重に基づく変位の方向に対応する位相の変化状態を、上記第一の被検出部と異ならせる。一方、センサは第一、第二のセンサから構成し、このうちの第一のセンサの検出部を上記第一の被検出部に対向させ、上記第二のセンサの検出部を上記第二の被検出部に対向させる。そして、演算器は、この第二のセンサの出力信号と上記第一のセンサの出力信号との間に存在する位相差に基づいて、上記第一の変位、又は、上記第一の荷重を求める。
この様な構造は、この第一の方向の変位、又は、第一の荷重の測定に関しては、前述の図9〜12に示した、先発明の第3〜4例に対応するものである。
【0027】
或いは、請求項1、5に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3、7に記載した様に、エンコーダの被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化のピッチを、測定すべき第一の変位の方向、又は、第一の荷重に基づく変位の方向に対応して漸次変化させる。又、演算器は、センサの出力信号のデューティ比に基づいて、上記第一の変位、又は、上記第一の荷重を求める。
この様な構造は、この第一の方向の変位、又は、上記第一の荷重の測定に関しては、前述の図7〜8に示した、先発明の第2例に対応するものである。
【0028】
或いは、請求項1、5に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4、8に記載した様に、エンコーダの被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化の位相及びピッチを、測定すべき第一の変位の方向、又は、測定すべき第一の荷重に基づく変位の方向に対応して、漸次変化させる。又、演算器は、センサの出力信号の変化の位相及びピッチに基づいて、上記第一の変位、又は、上記第一の荷重を求める。
この様な構造は、この第一の方向の変位、又は、上記第一の荷重の測定に関しては、前述の図5〜6に示した、先発明の第1例に対応するものである。
【実施例】
【0029】
図1〜3は、本発明の実施例として、アキシアル方向(図1、3の左右方向)の変位と、上下方向に関するラジアル方向(図1、3の上下方向)の変位とを、1組だけの、エンコーダ12eとセンサユニット22との組により、測定可能にする構造を示している。回転側軌道輪であるハブ4の中間部に、磁性金属製で円筒状のエンコーダ12eを、このハブ4と同心に外嵌固定している。このエンコーダ12eの幅方向中間部に、それぞれが「く」字形でスリット状の透孔14e、14eを、円周方向に関して等間隔に形成している。又、静止側軌道輪である外輪3の軸方向中間部に形成した取付孔15aに、上記センサユニット22を、下方から上方に向けて、水密を保持した状態で挿通している。尚、以下の説明は、上記ハブ4と上記外輪3との間に発生する、2方向の変位を測定する場合を例にして説明する。実際に自動車の走行安定性確保の為の制御を行なう為には、求めた変位から各方向の荷重を求める。変位自体を表す信号を何らかの制御に使用する事はない。従って、各方向の変位を求める事なく、上記ハブ4と上記外輪3との間に加わる各方向の荷重を直接求めても良い事は、前述した通りである。
【0030】
上記センサユニット22は、合成樹脂等の非金属製のセンサホルダ21aの先端面(上端面)に、1個の永久磁石23と1対のセンサ24a、24bとを包埋支持して成る。このうちの永久磁石23は、これら両センサ24a、24bと上記エンコーダ12eの被検出面である外周面とが対向している方向(上下方向)に着磁している。又、上記両センサ24a、24bは、上記ハブ4の軸方向(図1の左右方向)に離隔した状態で、それぞれの片側面を上記永久磁石23の着磁方向一端面である上端面に当接若しくは近接対向させ、それぞれの他側面を上記エンコーダ12eの被検出面である外周面に対向させている。上記センサ24a、24bは、ホール素子、磁気抵抗素子等の磁気検出素子を組み込んで成る。この様な両センサ24a、24bは、それぞれの他側面が対向した、上記エンコーダ12eの被検出面の性状(上記各透孔14e、14e部分であるか、隣り合う透孔14e、14e同士の間に存在する柱部分であるか、両部分の間であるか)により、出力信号を、図2の(A)に示す様に、正弦波的に変化させる。
【0031】
上述の様なエンコーダ12eとセンサユニット22との組は、前述の図11〜12に示した先発明に係る構造の第4例の場合と同様の作用により、上記ハブ4と上記外輪3との間のアキシアル方向の変位を求められる。即ち、アキシアル荷重に基づくこれらハブ4と外輪3とが軸方向に相対変位すると、上記1対のセンサ24a、24bの検出信号の位相がずれる。そこで、このずれの大きさに基づいて、上記相対変位の大きさ、更には上記アキシアル荷重の大きさを求められる。尚、本実施例の場合には、上記両センサ24a、24bの出力信号が正弦波的に変化するアナログ信号(リニア出力)であるが、これら両センサ24a、24bの出力信号を、コンパレータにより2値信号に変換すれば、デジタル信号と同様にして、これら両出力信号同士の位相差を求める処理が可能になる。この様な処理を行なう場合に、ヒステリシスを持たせたシュミットトリガ回路を使用すれば、誤作動を減らす事ができる為、好ましい。又、上記何れかのセンサ24a、24bの検出信号に基づいて、上記ハブ4の回転速度を求められる。
【0032】
アキシアル方向の変位検出に就いては、処理する信号がアナログ信号である点を除き、前述した先発明に係る構造の第4例の場合と同様である為、以下に、上記ハブ4と上記外輪3との間のラジアル方向(上下方向)の変位を求める方法に就いて説明する。このラジアル方向の変位は、上記両センサ24a、24bのうちの一方又は双方の出力信号の振幅から求める。図2は、何れかのセンサの出力信号の波形を示している。上記両センサ24a、24bの出力信号の振幅は、これら両センサ24a、24bの他側面と前記エンコーダ12eの被検出面との距離が短い程大きく、同じく遠い程小さくなる。例えば、上記ハブ4が上記外輪3に対し下側に変位する結果、上記距離が短くなると、上記両センサ24a、24bの出力信号は、図2の(A)に実線で示す様に、振幅が大きくなる。反対に、上記ハブ4が上記外輪3に対し上側に変位する結果、上記距離が長くなると、上記両センサ24a、24bの出力信号は、図2の(A)に破線で示す様に、振幅が小さくなる。
【0033】
従って、上記両センサ24a、24bのうちの一方又は双方の出力信号の振幅を求め、予め測定又は計算しておいた、この振幅と上記ラジアル方向の変位との関係に、その都度求めた振幅を当て嵌めれば、このラジアル方向の変位を求められる。この振幅を求める方法は、特に限定しないが、上記両センサ24a、24bの双方の出力信号を利用する方法として、次の様な方法が考えられる。これら両センサ24a、24bの出力信号の振幅は、上記ハブ4と上記外輪3との間にモーメントが作用していない場合には、互いに等しい。従って、上記両センサ24a、24bの出力信号の0−Peakから、これら両センサ24a、24bの出力信号の振幅が分かる。尚、この0−Peakは、例えば上記両センサ24a、24bの出力信号を全波整流して、図2の(B)に実線及び破線で示す様に平滑化する(或はLPFを通過させる)事により得られる。又、上記振幅は、上記両センサ24a、24bの出力信号のpeak−peakを用いても得られる。
【0034】
上記ハブ4と上記外輪3との間に純ラジアル荷重のみが加わる場合、及び、アキシアル荷重が加わる場合でもこのアキシアル荷重が純アキシアル荷重である場合には、上述の様に、上記両センサ24a、24bの出力信号の振幅は互いに等しく、上述の様にして、振幅を求められる。但し、自動車の車輪支持用の転がり軸受ユニットの場合には、図3に示す様に、車輪25と路面26との当接部(接地面)から入力されるアキシアル荷重に基づいて、モーメントが加わる。このモーメントにより、上記ハブ4は上記外輪3に対し傾斜し、これらハブ4と外輪3とがラジアル方向に変位していないにも拘らず、変位しているが如き状態となり得る。但し、図示の様に、上記両センサ24a、24bを、複列に配置した転動体5、5の中間位置に配置した構造の場合には、上述の様なモーメントに基づく誤差は僅少である。更に、この誤差は、上記接地面から加わるアキシアル荷重が上記ラジアル方向の変位に及ぼす影響の程度を表す影響係数を、このラジアル方向の変位を求める為のソフトウェア中に組み込んでおく事で、より低減する事も可能である。
【0035】
又、上記両センサ24a、24bが、複列に配置した転動体5、5の丁度中央位置を挟んでこの中央位置からアキシアル方向に同じ距離だけ離れた位置に設置されている場合には、単純な平均計算により、上記ラジアル方向の変位を正確に求められる。即ち、上記モーメントが加わった場合にも、上記ラジアル方向の変位に関しては、上記両センサ24a、24bのそれぞれの出力信号の振幅から求められる変位の平均{(センサ24aの出力信号の振幅から求めたラジアル方向変位+センサ24bの出力信号の振幅から求めたラジアル方向変位)/2}を求める事により、上記モーメントによる傾斜分を補正できる。上記両センサ24a、24bのそれぞれの出力信号の振幅を求める方法は、周知の各種方法を採用できる。
【0036】
上述の説明は、上下方向のラジアル変位(荷重)を求める場合に就いて説明したが、前後方向のラジアル変位(荷重)を求める場合には、上記両センサ24a、24bの設置位置を上下方向から前後方向(水平方向)に変えれば良い。又、上下方向と前後方向との両方のラジアル方向変位を求める場合には、上記両センサ24a、24bを、上下方向と前後方向とに2組設置する。この場合には、車両の前後方向、左右方向、上下方向の変位(荷重)を検出可能になる。
【0037】
更に、図1に示した構造は、位相情報からアキシアル変位を、振幅からラジアル変位を、それぞれ求める様に構成しているが、これとは逆に、位相情報からラジアル変位を、振幅からアキシアル変位を、それぞれ求める事も可能である。この場合は、図4に示す様に、被検出面である軸方向片側面に、それぞれが「く」字形である多数の透孔14g、14gを、円周方向に関して互いに等間隔に形成したエンコーダ12fを使用する。そして、このエンコーダ12fの被検出面に1対のセンサの検出部を、径方向にずらせて対向させる。この様なエンコーダ12fを使用して、アキシアル変位及びラジアル変位を求める方法に就いては、ラジアルとアキシアルとが入れ替わるだけで、基本的には図1に示した構造の場合と同様であるから、詳しい説明は省略する。上述の様なエンコーダ12fを使用する場合も、前後方向のラジアル変位(荷重)を検出する場合は、センサの取付位置を上下方向ではなく前後方向にする。又、ラジアル方向変位を上下方向と前後方向との2方向検出する場合は、センサを上下方向と前後方向とに2組設置する。
【0038】
又、本発明は、位相情報に代えて、前述の図5〜6に示した構造の様に出力信号の変化のパターン、或いは図7〜8、13に示した構造の様にデューティ比を用いる構造で実施する事もできる。そして、この場合には、1個のセンサにより、両方向の変位(荷重)を測定できる。これらの場合、振幅が分かる様に、例えば上記デューティ比を得る為の処理を施す前の正弦波信号を取り出す。
【0039】
又、使用するエンコーダは、磁性金属板に透孔を形成したものに限らず、被検出面に凹凸を形成したものでも良いし、プラスチック磁石、ゴム磁石等で被検出面にS極とN極とを交互に配置した多極磁石でも良い。或いは、被検出面が総て同極の永久磁石の被検出面に凹凸を形成したエンコーダを使用する事もできる。永久磁石製エンコーダを使用する場合には、センサ側の永久磁石は不要である。又、磁性材製のエンコーダを使用する場合、センサ側に設けた永久磁石を磁気検出素子に当接若しくは近接配置するが、磁気検出素子を1対設ける場合でも、この永久磁石は、各磁気検出素子毎に独立して設けても、或いは、図1に示す様に、共通化して1個だけ設けても良い。尚、上記磁気検出素子としては、ホールIC、ホール素子、MR素子等が使用可能である。更に、変位検出の対象となる転がり軸受ユニットは、図1に示す様な複列アンギュラ玉軸受に限らず、単列玉軸受や、前述の図7に示す様な、複列円すいころ軸受でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1を示す断面図。
【図2】実施例1で、2方向の変位を求める為に1対のセンサの出力信号を処理する状態を示す線図。
【図3】車輪支持用の転がり軸受ユニットに、同時に2方向の荷重が加わる状態を説明する為の略断面図。
【図4】本発明の実施例2に組み込むエンコーダを軸方向から見た側面図。
【図5】先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットの第1例の断面図。
【図6】この第1例に組み込むエンコーダの斜視図。
【図7】先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットの第2例の断面図。
【図8】この第2例に組み込むエンコーダの部分斜視図。
【図9】先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットの第3例を示す断面図。
【図10】この第3例に組み込むエンコーダの斜視図。
【図11】先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットの第4例の断面図。
【図12】この第4例に組み込むエンコーダの断面図。
【図13】先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットの第5例に組み込むエンコーダを軸方向から見た側面図。
【符号の説明】
【0041】
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 変位測定装置(荷重測定装置)
3 外輪
4、4a ハブ
5、5a 転動体
6 外輪軌道
7 取付部
8 ハブ本体
9 内輪
10 フランジ
11 内輪軌道
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f エンコーダ
13、13a、13b センサ
14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g 透孔
15、15a 取付孔
16 スプライン孔
17 凹部
18 凸部
19 リム部
20 カバー
21、21a センサホルダ
22 センサユニット
23 永久磁石
24a、24b センサ
25 車輪
26 路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受ユニットと変位測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、使用状態で回転する回転側軌道輪と、これら静止側軌道輪と回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に接触角を付与された状態で設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
上記変位測定装置は、上記回転側軌道輪の一部にこの回転側軌道輪と同心に支持された、被検出面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させたエンコーダと、その検出部をこの被検出面に対向させた状態で回転しない部分に支持され、この被検出面の特性変化に対応してその出力信号を変化させる、磁気検知式のセンサと、このセンサの出力信号に基づいて、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間の、互いに異なる2方向の変位を求める演算器とを備えたものであり、
上記被検出面の特性が円周方向に関して変化するパターンは、検出すべき第一の変位の方向に対応して、上記被検出面の幅方向に関して連続的に変化しており、
上記演算器は、上記センサの出力信号のパターンの変化に基づいて、上記エンコーダの被検出面の幅方向に関する、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間の、上記第一の変位を求め、上記センサの出力信号の振幅の変化に基づいて、このセンサの検出部と上記被検出面とが対向する方向の第二の変位を求める機能を有する
転がり軸受ユニットの変位測定装置。
【請求項2】
エンコーダの被検出面に第一、第二の被検出部が、第一の変位の方向に互いにずらせた状態で設けられており、このうちの第一の被検出部は、特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化の位相を、上記第一の変位の方向に対応して漸次変化させており、上記第二の被検出部は、特性を円周方向に関して交互に、上記第一の被検出部と同じピッチで変化させると共に、上記第一の変位の方向に対応する位相の変化状態をこの第一の被検出部と異ならせており、センサは第一、第二のセンサから成り、このうちの第一のセンサは、検出部を上記第一の被検出部に対向させており、上記第二のセンサは、検出部を上記第二の被検出部に対向させており、演算器は、この第二のセンサの出力信号と上記第一のセンサの出力信号との間に存在する位相差に基づいて上記第一の変位を求める、請求項1に記載した転がり軸受ユニットの変位測定装置。
【請求項3】
エンコーダの被検出面は、特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化のピッチを、測定すべき第一の変位の方向に対応して漸次変化させており、演算器は、センサの出力信号のデューティ比に基づいて上記第一の変位を求める、請求項1に記載した転がり軸受ユニットの変位測定装置。
【請求項4】
エンコーダの被検出面は、特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化の位相及びピッチを、測定すべき第一の変位の方向に対応して漸次変化させており、演算器は、センサの出力信号の変化の位相及びピッチに基づいて上記第一の変位を求める、請求項1に記載した転がり軸受ユニットの変位測定装置。
【請求項5】
転がり軸受ユニットと荷重測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、使用状態で回転する回転側軌道輪と、これら静止側軌道輪と回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に接触角を付与された状態で設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
上記荷重測定装置は、上記回転側軌道輪の一部にこの回転側軌道輪と同心に支持された、被検出面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させたエンコーダと、その検出部をこの被検出面に対向させた状態で回転しない部分に支持され、この被検出面の特性変化に対応してその出力信号を変化させる、磁気検知式のセンサと、このセンサの出力信号に基づいて、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間の、互いに異なる2方向の荷重を求める演算器とを備えたものであり、
上記被検出面の特性が円周方向に関して変化するパターンは、検出すべき第一の荷重の方向に対応して、上記被検出面の幅方向に関して連続的に変化しており、
上記演算器は、上記センサの出力信号のパターンの変化に基づいて、上記エンコーダの被検出面の幅方向の変位に結び付く、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間に作用する上記第一の荷重を求め、上記センサの出力信号の振幅の変化に基づいて、このセンサの検出部と上記被検出面とが対向する方向の変位に結び付く第二の荷重を求める機能を有する
転がり軸受ユニットの荷重測定装置。
【請求項6】
エンコーダの被検出面に第一、第二の被検出部が、第一の荷重に基づく変位の方向に互いにずらせた状態で設けられており、このうちの第一の被検出部は、特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化の位相を、上記第一の荷重に基づく変位の方向に対応して漸次変化させており、上記第二の被検出部は、特性を円周方向に関して交互に、上記第一の被検出部と同じピッチで変化させると共に、上記第一の荷重に基づく変位の方向に対応する位相の変化状態をこの第一の被検出部と異ならせており、センサは第一、第二のセンサから成り、このうちの第一のセンサは、検出部を上記第一の被検出部に対向させており、上記第二のセンサは、検出部を上記第二の被検出部に対向させており、演算器は、この第二のセンサの出力信号と上記第一のセンサの出力信号との間に存在する位相差に基づいて上記第一の荷重を求める、請求項5に記載した転がり軸受ユニットの荷重測定装置。
【請求項7】
エンコーダの被検出面は、特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化のピッチを、測定すべき第一の荷重に基づく変位の方向に対応して漸次変化させており、演算器は、センサの出力信号のデューティ比に基づいて上記第一の荷重を求める、請求項5に記載した転がり軸受ユニットの荷重測定装置。
【請求項8】
エンコーダの被検出面は、特性を円周方向に関して交互に変化させると共に、この変化の位相及びピッチを、測定すべき第一の荷重に基づく変位の方向に対応して漸次変化させており、演算器は、センサの出力信号の変化の位相及びピッチに基づいて上記第一の荷重を求める、請求項5に記載した転がり軸受ユニットの荷重測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−317434(P2006−317434A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108646(P2006−108646)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】