説明

転がり軸受用の又は滑り軸受用の軸受部品

本発明は、転がり軸受(13、14、16)用又は滑り軸受(19)用の軸受部品(1a、1b、1、7、9)であって、内輪(1a、1)、外輪(1b、7)、転動体(9)、保持器、又は案内輪の中の1つである軸受部品(1a、1b、1、7、9)に関する。この軸受部品(1a、1b、1、7、9)は、第1の構成部品(2)、及び第1の構成部品(2)に結合された第2の構成部品(3)を備え、第2の構成部品(3)及び第1の構成部品(2)は、半凝固金属プロセスによって結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本発明は、転がり軸受用の又は滑り軸受用の軸受部品に関する。
【0002】
第2の態様によれば、本発明は、転がり軸受に関する。
【0003】
第3の態様によれば、本発明は、滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0004】
より高い軸受性能、より低い製造コスト、及びより低い材料コストに対する要求は、常に高まりつつある。良好な性能特性、例えば耐久性、強度、耐荷能力、耐摩耗性、軽量性を示す軸受材料は、かなり高価である、又はニアネットシェイプ成形において効率的に使用するのが困難である場合がしばしばある。その一方で、より安価な軸受材料は、軸受の高い性能要求を満たさない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6579012号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、1つ又は複数の特定の性能特性を示す一方で、依然として低コストであり、製造が比較的容易となり得る、軸受部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、転がり軸受用又は滑り軸受用の軸受部品であって、内輪、外輪、転動体、保持器若しくは保持具、又は案内輪の中のいずれかである軸受部品によって、達成される。この軸受部品は、第1の構成部品、及び第1の構成部品に結合された第2の構成部品を備える。第2の構成部品及び第1の構成部品は、半凝固金属プロセスによって結合されている。すなわち、第1の構成部品は、その平衡液相温度と平衡固相温度との間の温度まで加熱されて、第2の構成部品に直面した状態において固体の状態を呈することが可能となり、このようにして第2の構成部品と第1の構成部品との間の固定が達成される。第2の構成部品は、接触面を有しており、この接触面により、接触面と第2の軸受部品との間における相対運動が可能となる。
【0008】
半凝固金属プロセス(SSM:semi-solid metal process)は、金属合金を、その平衡液相温度と平衡固相温度との間の温度にて形成するためのプロセスを指す。SSMにより、キャスティング、鍛造、及び押出成形の原理及び利点が組み合わされる。さらに、SSMプロセスにより、低空隙率、高い亀裂抵抗、少ない欠陥、良好かつ一層均質な顕微鏡組織、向上した機械特性、等々を有する構成部品が、作製される。他の利点は、複雑な構成部品の形成の容易化、無駄の低減による材料の節減、及びコスト低下であり得る。さらに、SSMにより、特注製造製品への対応を容易にする様々な材料を組み合わせることが可能となる。
【0009】
一の実施例においては、第1の構成部品は、平衡液相温度と平衡固相温度との間の温度まで加熱されるものである。
【0010】
一の実施例においては、半凝固金属プロセスは、チクソモールディングプロセス、チクソキャスティングプロセス、チクソ鍛造プロセス、チクソ結合プロセス、レオモールディングプロセス、レオキャスティングプロセス、レオ鍛造プロセス、又はレオ結合プロセスである。
【0011】
一の実施例では、第1の構成部品が軽量材料から作られているので、軸受部品の重量を低減することができる。一の実施例では、第1の構成部品が軽金属材料から作られているので、軸受部品の重量を低減することができる。一の実施例では、第1の構成部品がアルミニウム又はアルミニウム合金から作られているので、軸受部品の重量を低減することができる。一の実施例では、第1の構成部品がチタン又はチタン合金から作られているので、軸受部品の重量を低減することができる。
【0012】
一の実施例では、第1の構成部品が衝撃吸収材料、弾性材料、又は緩衝材料から作られている。これにより軸受、又は軸受若しくは軸受部品に接続されているアプリケーション若しくは装置において、望ましくない振動又は騒音を低減することができる。
【0013】
一の実施例では、第1の構成部品が、軸受部品の緩衝機能を有している鋳鉄から作られている。
【0014】
一の実施例では、第1の構成部品が低炭素鋼から作られているので、軸受部品のコストを低減することができる。
【0015】
一の実施例では、第1の構成部品が電気絶縁材料から作られている。幾つかの用途では、軸受又は軸受部品自体を電流又は電撃から保護することが求められている。幾つかの用途では、軸受若しくは軸受部品に接続されている他の構成部品又はデバイスを電流又は電撃から保護することが求められている。
【0016】
一の実施例では、第1の構成部品は、断熱材料から作られている。幾つかの用途では、軸受又は軸受部品自体を冷熱から保護することが望まれている。幾つかの用途では、軸受若しくは軸受部品に接続されている他の構成部品又はデバイスを冷熱から保護することが求められている。
【0017】
一の実施例では、第2の構成部品は、例えば軸受鋼又はステンレス鋼のような鋼から作られている。鋼を用いる利点は、良好な耐摩耗性、良好な転動特性又は滑動特性、高耐久性、良好な疲労特性、高速性、及び他の実現可能な高い性能特性にある。
【0018】
一の実施例では、第2の構成部品は、軸受部品に高い耐摩耗性を付与する硬質金属から作られている。
【0019】
一の実施例では、第2の構成部品は、軸受部品に高い耐摩耗性を付与する超硬合金から作られている。
【0020】
一の実施例では、第2の構成部品は、軸受部品に高い耐摩耗性を付与する金属炭化物金属炭化物(carbide metal)から作られている。
【0021】
一の実施例では、第2の構成部品は、軸受部品に高い耐摩耗性を付与するセラミック材料から作られている。他の利点は、電気絶縁性、断熱性、電気抵抗性、熱抵抗性、軽量性等である。
【0022】
一の実施例では、第2の構成部品は、軸受部品に良好な滑動特性、低摩擦性、及び低コスト性を付与する青銅から作られている。
【0023】
一の実施例では、第2の構成部品は、軸受部品に良好な滑動特性、低摩擦性、及び低コスト性を付与する真鍮から作られている。
【0024】
一の実施例では、第2の構成部品は、電気絶縁材料から作られている。幾つかの用途では、軸受又は軸受部品自体を電流又は電撃から保護することが求められている。幾つかの用途では、軸受若しくは軸受部品に接続されている他の構成部品又はデバイスを電流又は電撃から保護することが求められている。
【0025】
一の実施例では、第2の構成部品は、断熱材料から作られている。幾つかの用途では、軸受又は軸受部品自体を冷熱から保護することが求められている。幾つかの用途では、軸受若しくは軸受部品に接続されている他の構成部品又はデバイスを冷熱から保護することが求められている。
【0026】
異なる第1の構成部品及び第2の構成部品を選択することによって、軸受部品又は軸受の異なる性質が実現可能とされる。例えば、第1の構成部品として軽量材料を使用し、且つ、第2の構成部品として軸受鋼を使用することによって、軸受部品又は軸受の重量が軽減されると共に、軸受部品又は軸受は、例えば耐荷重性能や長寿命のような良好な性能特性を依然として有していることが可能になる。
【0027】
一の実施例では、第2の構成部品は、接触面と第2の軸受部品との間における相対運動を可能とする当該接触面を有している。
【0028】
一の実施例では、軸受部品は輪体であり、第2の構成部品は接触面を有している。この接触面は、軌道、滑動面、内輪の案内フランジ又はこれらに類するものの少なくとも一部分を構成している場合がある。
【0029】
一の実施例では、輪体は内輪又は外輪のうち一方である。
【0030】
一の実施例においては、軸受部品は、例えばころのような転動体である。ころは、円筒ころ、たる形ころ、球面ころ、トロイダルころ、針状ころ、テーパころ、円錐ころ、又は任意の他の形状とされる場合がある。一の実施例では、第2の構成部品が、相対運動を介して他の軸受部品と接触状態になる転動体の領域を少なくとも覆っている接触面を有している。他の軸受部品は、軸受の内輪、軸受の外輪、軸受の内輪若しくは外輪の案内フランジ又はこれに類するもの、転動体、保持器、又は案内輪とされる場合がある。
【0031】
本発明の第2の態様には、転がり軸受が開示されている。この転がり軸受は、内輪と外輪と複数の転動体とを少なくとも備え、本発明の第1の態様における軸受部品をさらに備えている。本発明の第1の態様におけるすべての特徴及び実施例が、本発明の第2の態様に適用可能であり、その逆も可能である。
【0032】
当該態様における一の実施例では、接触面が軌道である。
【0033】
一の実施例では、軸受部品を備えている転がり軸受が、転動体として玉を有している。
【0034】
一の実施例では、軸受部品の第2の構成部品が、玉の直径の少なくとも5パーセントの厚さを有している。
【0035】
一の実施例では、この軸受部品の第2の構成部品は、この玉の直径の少なくとも10パーセント、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、45パーセント、50パーセント、55パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、又は95パーセントの厚さを有している。
【0036】
一の実施例では、軸受部品を備えている転がり軸受は、転動体としてころを有している。
【0037】
一の実施例では、第2の構成部品は、ころの直径の少なくとも5パーセントの厚さを有している。
【0038】
一の実施例では、軸受部品の第2の構成部品は、ころの直径の少なくとも10パーセント、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、45パーセント、50パーセント、55パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、又は95パーセントの厚さを有している。
【0039】
一の実施例では、軸受部品を備えている転がり軸受は、玉軸受、円筒ころ軸受、球面ころ軸受、トロイダルころ軸受、テーパころ軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト軸受、車輪用軸受、車輪ハブ軸受、ピニオン軸受、又はフランジ付き軸受である。
【0040】
本発明の第3の態様には、滑り軸受が開示されている。この滑り軸受は、本発明の第1の態様における軸受部品を備えている。本発明の第1の態様におけるすべての特徴及び実施例が、本発明の第3の態様におけるすべての特徴及び実施例に適用可能であり、その逆も可能である。第2の態様の特徴及び実施例は、当業者であれば第3の態様に適用可能であり、その逆も可能である。
【0041】
この態様における一の実施例では、接触面は滑動面である。
【0042】
一の実施例では、滑り軸受は軸受部品を備え、第2の構成部品は少なくとも1ミリメートルの厚さを有している。
【0043】
一の実施例においては、この軸受部品の第2の構成部品は、少なくとも2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートル、5ミリメートル、6ミリメートル、7ミリメートル、8ミリメートル、9ミリメートル、10ミリメートル、15ミリメートル、20ミリメートル、30ミリメートル、40ミリメートル、50ミリメートル、60ミリメートル、70ミリメートル、80ミリメートル、90ミリメートル、100ミリメートル、110ミリメートル、120ミリメートル、130ミリメートル、140ミリメートル、150ミリメートル、160ミリメートル、170ミリメートル、180ミリメートル、190ミリメートル、又は200ミリメートルの厚さを有している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1a】本発明の一の実施例による内方軸受輪の断面図である。
【図1b】本発明の一の実施例による内方軸受輪の一部分の断面図である。
【図2】本発明の一の実施例による内方軸受輪の一部の断面図である。
【図3】本発明の一の実施例によるフランジ付き外方軸受輪の断面図である。
【図4】本発明の一の実施例による車輪ハブ外輪の断面図である。
【図5】本発明の一の実施例による球面ころの断面図である。
【図6】本発明の一の実施例による玉軸受の断面図である。
【図7】本発明の一の実施例による円筒ころ軸受の断面図である。
【図8】本発明の一の実施例による車輪ハブの断面図である。
【図9】本発明の一の実施例による球面滑り軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1aは、本発明の一の実施例におけるベアリングの内輪の断面図である。内輪1は、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。第2の構成部品3は、接触面4と第2の軸受部品(図示せず)との間における相対運動を可能とする接触面4を有している。接触面4は、少なくとも内輪の軌道5に対応している。一の実施例では、第2の軸受部品は、外輪、転動体、保持器、又は案内輪である場合がある。第2の構成部品3の接触面4は、軌道5の外側に延在しており、例えば内輪の案内フランジ又は外周部のような内輪1の他の部分を覆っている場合がある。
【0046】
図1bは、本発明の一の実施例における軸受の内輪の一部分の断面図である。内輪1は、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。
【0047】
第2の構成部品3は、接触面4a、4bと第2の軸受部品(図示せず)との間における相対運動を可能とする接触面4a、4bを有している。接触面4aは、少なくとも内輪の軌道5に対応している。一の実施例では、第2の軸受部品が、外輪、転動体、保持器、又は案内輪である場合がある。一の実施例では、内輪1が、内輪1の各アキシアル方向端部にフランジ6を有している。さらに、フランジ6が、アキシアル方向内側端部面6aとラジアル方向外側端部面6bとを有している。第2の構成部品3は、案内フランジのアキシアル方向内側端部面6aに実質的に対応していると共にさらに第2の接触面4bと第2の軸受部品(図示せず)との間における相対運動を可能とする第2の接触面4bを有している。また、第2の構成部品3は、フランジ6のラジアル方向外側端部面6bに対応する第3の接触面を有している場合がある。
【0048】
図2は、本発明における軸受の内輪の一部分の断面図である。内輪1aの前記一部分は、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。
【0049】
一の実施例では、第1の構成部品2は電気絶縁材料から作られ、第2の構成部品3は軸受鋼から作られている。軌道5の一部が、第2の構成部品3内且つ内輪1aの外周部上に形成されている。軌道5は、接触面4と第2の軸受部品(図示せず)との間における相対運動を可能とする接触面4を有している。一の実施例では、第2の軸受部品は、外輪、転動体、保持器、又は案内輪である場合がある。
【0050】
図3は、本発明の一の実施例におけるフランジ付き軸受の外輪の断面図である。外輪7が、例えば外輪7を機械要素、ハウジング、又はこれらに類するもの(図示せず)に固定するために使用可能なフランジ8を有している。外輪7は、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。
【0051】
第2の構成部品3は、接触面4と第2の軸受部品(図示せず)との間における相対運動を可能とする接触面4を有している。接触面4は、外輪7の内周部に形成されている軌道5に少なくとも対応している。一の実施例では、第2の軸受部品は、内輪、転動体、保持器、又は案内輪である場合がある。また、第2の構成部品3の接触面4は、軌道5の外側に延在しており、例えば外輪7の案内フランジや外周部のような外輪7の他の部分を覆っている場合がある。
【0052】
図4は、本発明の一の実施例における車輪ハブの外輪の断面図である。外輪7は、例えば外輪7を車体側部の取付部に固定するために、又は車輪を取り付けるために使用可能なフランジ8を有している。外輪7は、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。
【0053】
第2の構成部品3は、接触面4と第2の軸受部品(図示せず)との間における相対運動を可能とする接触面4を有している。接触面4は、外輪7の内周部に形成されている軌道5に少なくとも対応している。一の実施例では、外輪7が2つの軌道を有しており、第2の軸受部品は、転動体、保持器、又は案内輪である場合がある。また、第2の構成部品3の接触面4は、軌道5の外側に延在しており、例えば外輪7の案内フランジ又は外周部のような外輪7の他の部分を覆っている場合がある。
【0054】
図5は、本発明の一の実施例における球面ころの断面図である。球面ころ9は、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。第2の構成部品3は、接触面4と第2の軸受部品(図示せず)との間における相対運動を可能とする接触面4を有している。一の実施例では、第2の軸受部品が、内輪、外輪、保持器、転動体、又は案内輪である場合がある。一の実施例では、球面ころ9のアキシアル方向端部面10の少なくとも一部分が、第1の構成部品2の表面11を有している。
【0055】
図6は、本発明の一の実施例における転がり軸受の断面図である。転がり軸受13は、外周部に軌道5が形成されている内輪1aと、内周部に軌道5が形成されている外輪1bと、内輪1aと外輪1bと間に配設されている複数の玉12とを少なくとも備えている。また、転がり軸受が、例えば保持器、シール、センサ、エンコーダや潤滑剤等のような、さらなる軸受部品を備えている場合がある。
【0056】
一の実施例では、転がり軸受13は、本発明における2つの軸受部品1a,1bを有している。内輪1a及び外輪1bの両方が、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。第2の構成部品3は、内輪1a及び外輪1bに形成されている軌道5に実質的に対応していると共に接触面4と玉12との間における相対運動を可能とする接触面4を有している。この相対運動は、例えば転動、滑動、又は両方の組合せとされる。
【0057】
一の実施例では、第2の構成部品3の厚さは、玉12の直径Dの少なくとも5パーセントであることが望ましい。
【0058】
一の実施例における転がり軸受が本発明における2つの軸受部品を有していることを説明しているが、内輪及び外輪のうち一方の輪体のみが本発明における軸受部品である転がり軸受とすることもできる。さらに、本発明における軸受部品が、軸受輪の形態ではなく、保持器又は案内輪とされる場合がある。また、転がり軸受は、本発明における相違する軸受部品の組合せを備えている場合がある。
【0059】
本発明が、図6に表わす深溝玉軸受に限定される訳ではなく、他の形式の転がり軸受にも適用可能であることに留意すべきである。非限定的な例としては、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受、スラスト玉軸受や4点接触玉軸受が挙げられる。
【0060】
図7は、本発明の一の実施例における円筒ころ軸受の断面図である。円筒ころ軸受14は、外周部に軌道5が形成されている内輪1aと、内周部に軌道5が形成されている外輪1bと、内輪1aと外輪1bとの間に配設されている複数の円筒ころ15とを少なくとも備えている。内輪1aは、内輪1aの各アキシアル方向端部にフランジ6を有している。各フランジ6は、円筒ころ15の端部面15bに面しているアキシアル方向内側面6aと、外方ラジアル方向面6bとを有している。また、円筒ころ軸受は、例えば保持器、シール、センサ、エンコーダ、潤滑剤等のような、さらなる軸受部品を備えている場合がある。
【0061】
一の実施例では、円筒ころ軸受14は、本発明における2つの軸受部品1a,1bを有している。外輪1bは、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。第2の構成部品3は、外輪1a上に形成されている軌道5に実質的に対応していると共に接触面4aと円筒ころ15との間における相対運動を可能とする第1の接触面4aを少なくとも有している。この相対運動は、例えば転動、滑動、又は両方の組合せとされる。
【0062】
内輪1aは、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。
【0063】
第2の構成部品3は、内輪1aに形成されている軌道5に実質的に対応していると共に接触面4aと円筒ころ15との間における相対運動を可能とする第1の接触面4aを少なくとも有している。この相対運動は、例えば転動、滑動、又は両方の組合せとされる。第2の構成部品は、案内フランジ6のアキシアル方向内側面6aに実質的に対応している第2の接触面4bをさらに有している。当該第2の接触面4bによって、接触面4bと円筒ころ15の端部面15bとの間における相対運動が可能となる。当該実施例では、この相対運動は滑動である。
【0064】
一の実施例では、第2の構成部品3の厚さは、円筒ころ15の直径Dの少なくとも5パーセントであることが望ましい。
【0065】
一の実施例におけるころ軸受が本発明における2つの軸受部品を有していることを説明しているが、内輪及び外輪のうち一方の輪体のみが本発明における軸受部品である円筒ころ軸受とすることもできる。さらに、本発明における軸受部品が、軸受輪の形態ではなく、保持器、案内輪、又はころとされる場合がある。また、転がり軸受は、本発明における相違する軸受部品の組合せを備えている場合がある。
【0066】
本発明は、図7に表わす円筒ころ軸受に限定されず、他の形式のころ軸受にも適用可能であることに留意すべきである。これらの非限定的な例としては、球面ころ軸受、自動調心ころ軸受、テーパころ軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、トロイダルころ軸受、スラスト球面ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラストテーパころ軸受が挙げられる。
【0067】
図8は、本発明の一の実施例における車輪ハブの断面図である。車輪ハブ16は、内輪1と、外輪7と、内輪1と外輪7との間に挿置されている複数の転動体12とを備えている。当該実施例では、転動体12は玉であるが、テーパころ又は円筒ころとされる場合がある。車輪ハブは、例えば保持器、シール、センサ、エンコーダや潤滑剤等のような、さらなる軸受部品を備えている場合がある。
【0068】
一の実施例では、車輪ハブ16は、本発明における2つの軸受部品1,7を有している。内輪1は、当該実施例では、車輪を車輪ハブに嵌め込むように構成されているフランジ17を有している。内輪1は、その外周部に第1の軌道5bと第2の軌道5cとをさらに有している。一の実施例では、第2の軌道5cは、車輪ハブの内輪1に圧入された別の内輪18に形成されている。外輪7は、外輪7の外周部に形成されているフランジ8を有している。当該実施例では、フランジ8は、例えばナックルのような車体側部の取付部に車輪ハブを固定するように構成されている。外輪7は、内輪1の第1の軌道5b及び第2の軌道5cに対向していると共に内周部に形成されている複列の軌道5aを有している。
【0069】
内輪1及び外輪7は、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。
【0070】
第2の構成部品3は、内輪1及び外輪7の上に、接触面4a、4b、4cと玉12との間における相対運動を可能とする少なくとも3つの接触面4a、4b、4cを有している。接触面4a、4b、4cは、内輪1及び外輪7に形成されている軌道5a、5b、5cに少なくとも対応している。この相対運動は、例えば転動、滑動、又は両方の組合せとされる。第2の構成部品3の接触面4a、4b、4cは、軌道5a、5b、5cの外側に延在しており、内輪1及び外輪7の他の部分を覆っている場合がある。
【0071】
一の実施例では、第2の構成部品3の厚さは、玉12の直径の少なくとも5パーセントであることが望ましい。
【0072】
一の実施例における車輪ハブが本発明における2つの軸受部品を有していることを説明しているが、内輪及び外輪のうち一方の輪体のみが本発明における軸受部品である車輪ハブとすることもできる。さらに、本発明における軸受部品が、軸受輪の形態ではなく、保持器、案内輪、又はころとされる場合がある。また、車輪ハブは、本発明における相違する軸受部品の組合せを備えている場合がある。
【0073】
本発明は、図8に表わす車輪ハブに限定される訳ではなく、他の車輪ハブの設計及び車輪用軸受の設計にも適用可能であることに留意すべきである。
【0074】
図9は、本発明の一の実施例における球面滑り軸受の断面図である。球面滑り軸受19は、外周部に軌道5aが形成されている内輪1aと、内周部に軌道5bが形成されている外輪1bとを少なくとも備えている。一の実施例では、球面滑り軸受19は、本発明における2つの軸受部品1a及び1bを有している。内輪1a及び外輪1bは、第1の構成部品2及び第2の構成部品3を備えている。第2の構成部品3は、第1の構成部品2に結合されている。第2の構成部品3及び第1の構成部品2は、上述のように半凝固金属プロセスによって結合されている。
【0075】
第2の構成部品3は、内輪1a及び外輪1bの上に、軌道5a及び5bに実質的に対応していると共に接触面4a、4b間における相対運動を可能とする2つの接触面4a、4bを少なくとも有している。この実施例では、この相対運動は滑動である。
【0076】
一の実施例では、第2の構成部品3の厚さは、少なくとも1ミリメートルであることが望ましい。
【0077】
当該実施例における滑り軸受が本発明における2つの軸受部品を有していることを説明しているが、内輪及び外輪のうち一方の輪体のみが本発明における軸受部品である転がり軸受とすることもできる。
【0078】
本発明は、図9に表わす滑り軸受に限定される訳ではなく、当業者が想到可能な他の形式の滑り軸受、平軸受(plain bearing)、又はスリーブ軸受にも適用可能であることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0079】
1 内輪
1a 内輪
1b 外輪
2 第1の構成部品
3 第2の構成部品
4 接触面
4a 接触面
4b 接触面
4c 接触面
5 軌道
5a 複列の軌道
5b 第1の軌道
5c 第2の軌道
6 フランジ
6a アキシアル方向内側端部面(アキシアル方向内側面)
6b ラジアル方向外側端部面(ラジアル方向外側面)
7 外輪
8 フランジ
9 球面ころ
10 端部面
11 表面
12 玉(転動体)
13 転がり軸受
14 円筒ころ軸受
15 円筒ころ
15b 端部面
16 車輪ハブ
17 フランジ
18 内輪
19 球面滑り軸受
D 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受(13,14,16)のための又は滑り軸受(19)のための軸受部品(1a,1b,1,7,9)であって、内輪(1a,1)、外輪(1b,7)、転動体(9)、保持器、又は案内輪である前記軸受部品(1a,1b,1,7,9)において、
前記軸受部品(1a,1b,1,7,9)が、第1の構成部品(2)と、前記第1の構成部品(2)に結合されている第2の構成部品(3)とを備え、
前記第2の構成部品(3)と前記第1の構成部品(2)とが、半凝固金属プロセスによって結合されていることを特徴とする軸受部品(1a,1b,1,7,9)。
【請求項2】
前記半凝固金属プロセスが、チクソモールディングプロセス、チクソキャスティングプロセス、チクソ鍛造プロセス、チクソ結合プロセス、レオモールディングプロセス、レオキャスティングプロセス、レオ鍛造プロセス、又はレオ結合プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の軸受部品(1a,1b,1,7,9)。
【請求項3】
前記第1の構成部品(2)が、軽量材料、軽金属材料、アルミニウム、チタン、鋳鉄、低炭素鋼、電気絶縁材料、断熱材料、衝撃吸収材料、弾性材料、又は緩衝材料のうち少なくとも1つの材料からなることを特徴とする請求項1に記載の軸受部品(1a,1b,1,7,9)。
【請求項4】
前記第2の構成部品(3)が、鋼、軸受鋼、ステンレス鋼、硬質金属、超硬合金、金属炭化物、セラミック材料、真鍮、青銅、電気絶縁材料、又は断熱材料のうち少なくとも1つの材料からなることを特徴とする請求項1に記載の軸受部品(1a、1b、1、7、9)。
【請求項5】
前記軸受部品(1a,1b,1,7,9)が、輪体(1a,1b,1,7)であり、
前記第2の構成部品(3)が、接触面(4a,4b,4c,4)を有していることを特徴とする請求項1に記載の軸受部品(1a,1b,1,7,9)。
【請求項6】
前記輪体(1a,1b,1,7)が、前記内輪(1a,1)又は前記外輪(1b,7)であることを特徴とする請求項5記載の軸受部品(1a,1b,1,7,9)。
【請求項7】
前記内輪(1a,1)と前記外輪(1b,7)と複数の転動体(12,15)を少なくとも備え、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の前記軸受部品(1a,1b,1,7,9)をさらに備えていることを特徴とする転がり軸受(13,14,16)。
【請求項8】
前記転がり軸受(13,14,16)が、玉軸受(13)、円筒ころ軸受(14)、球面ころ軸受、トロイダルころ軸受、テーパころ軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト軸受、車輪用軸受(16)、ピニオン軸受、又はフランジ付き軸受であることを特徴とする請求項7に記載の転がり軸受(13,14,16)。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の前記軸受部品(1a,1b)を備えていることを特徴とする滑り軸受(19)。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−529371(P2010−529371A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510259(P2010−510259)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000353
【国際公開番号】WO2008/147284
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508282993)アクティエボラゲット・エスコーエッフ (42)
【Fターム(参考)】