説明

転がり軸受診断方法

包絡線復調(HKD)信号により軸受損傷を検査する方法であって、軸受損傷の発生に特有な包絡線復調信号の少なくとも1つの確率論的特性量が求められる。本発明により特有な特性量が複数の所定の時間間隔で反復して求められ、これらの時間間隔が外部障害の時間的隔たりより短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受損傷特に転がり軸受の軸受損傷を検査する方法に関する。本発明による方法は、玉軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受及び自動調心ころ軸受に適用可能である。検査すべき転がり軸受は例えば電動機、鉄道車輪、変速機、製紙機試験台等において使用可能である。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受には、消耗のため種々の損傷を生じる可能性がある。このような損傷の例はいわゆる“孔食”であり、即ち内レース又は外レース又は転動体の刻み目である。更に平面の損傷も生じることがある。このような孔食又は損傷は、引続く使用の結果、転がり軸受の急速な悪化を非常に速くひき起こすことがあるので、このような損傷を適当な測定方法で検査する必要がある。
【0003】
従来技術から、転がり軸受の状態を検査する種々の方法が公知である。
【0004】
このような診断方法は、例えばいわゆる包絡線分析である。ここでは軸受状態を判断するため、前記の包絡線復調信号(HKD信号)が評価される。このような信号の記録は、例えば軸受ハウジングにねじ止め、接着又は磁石保持体を介して保持される圧電センサ装置により可能である。
【0005】
包絡線分析により、例えば転がり軸受に孔食により発生されるような周期的衝撃反覆が、既に早い段階で検出され、それにより損傷を逆推論することができる。
【0006】
従来技術から、更に機械診断のため、尖度のような第4の観点の統計的特性量の形成又は評価に頼ることも公知である。
【0007】
尖度は、転がり軸受診断のために通常使用される多数の統計的パラメータの1つである。尖度は個々の障害の影響の発生に非常に強く関係している。もっと精確には、ばらばらな障害の発生は、多数の障害のような一層高い尖度を生じる。なぜならば、ただ1つのピークを持つ信号の尖度は非常に高いからである。しかし転がり軸受の作動の際、例えば打撃等のような外部の障害も生じ、それにより特に特性量としての尖度が著しく誤りを持つ。
【0008】
従って尖度は、転がり軸受診断において、今まで使用不可能であるか又は限られた範囲でのみ使用可能な特性量とみなされていた。
【0009】
周波数分析のため、回転数を正確に知ることが必要である。
【0010】
従来技術から公知の他の診断方法では、非常に大きい計算能力が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】 4秒の大きさの時間間隔における尖度の推移を示す。
【図2】 0.2秒の大きさの時間間隔における尖度の推移を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、50秒の時間間隔にわたって包絡線復調(KHD)信号から求められた尖度Kを示す。図1及び2は同じ測定データ又は生データに基いている。
【0033】
図1の場合それぞれ4秒の時間間隔が、また図2では0.2秒の時間間隔が基礎とされた。両方の図において、1秒毎に測定値が出力され、それぞれ(浮動)算術平均値が形成された。
【0034】
符号3a,3b,3cは、それぞれ外部障害が生じるような個所における尖度を示す。図1の場合、この範囲に37の尖度の最大値が生じることがわかる。図2即ち4秒の一層大きい時間間隔の使用を示す図において、140の範囲に尖度の値が生じる。図1及び2における非常に高いピーク値は、非常に少ない転がり軸受回転において生じる可能性のある測定方式事実に帰せられる。この非常に低速の回転では、まともな値を出力することはもはやできない。
【0035】
外部の障害又は衝撃によって生じるピークの間の時間的隔たりは、最初に述べたように、約4秒の範囲にある。時間間隔として図2に示す4秒の選択により、このようなピークは納得のいくように抑制されず、従って尖度に対して140までの非常に高い値を与える。これに反し0.2秒の短い時間間隔を選択することによって、多数のこのような値についての平均により(以下の場合それぞれ50の値について平均される)、尖度の値を減少することができる。しかし同時に軸受の損傷によって生じる尖度の変化が検出される。なぜならば、その時間間隔は0.2秒より著しく下にあるからである。70Hzの乗り越え周波数の場合、損傷により生じる衝撃の間に0.014秒の時間間隔が生じる。従って0.2秒の時間間隔により、時間間隔毎に14の衝撃が記録される。
【0036】
従って時間間隔の大きさに対して0.2秒の値は、1つの損傷上における個々の転動体の多数の乗り越えを記録できるまだ充分の大きさである。
【0037】
それにより図1及び2から非常に明らかなように、本発明による短い時間間隔の選択と適当な平均値形成とにより、測定される信号を尖度に関して特に有利に評価することができる。
【0038】
この出願書類に開示されたすべての特徴は、個々に又は組合わせで従来技術に対して新規である限り、本発明にとって重要であるとして権利を請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包絡線復調(HKD)信号により軸受損傷を検査する方法であって、軸受損傷の発生に特有な包絡線復調信号の少なくとも1つの確率論的特性量が求められるものにおいて、特有な特性量が複数の所定の時間間隔で反復して求められ、これらの時間間隔が外部障害の時間的隔たりより短いことを特徴とする方法。
【請求項2】
別の方法段階において、異なる時間間隔で求められる多数の特性量について平均が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
時間間隔が個々の転動体の乗り越え時間より長いことを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項4】
時間間隔が、個々の転動体の乗り越え時間を3倍より大きくなるべく4倍より大きく上回っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項5】
時間間隔が、100倍の乗り越え時間より短く、なるべく40倍の乗り越え時間より短く、特になるべく30倍の乗り越え時間より短いことを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項6】
平均が、算術平均、幾何平均、積分及びこれらの組合わせを含む平均の群から選ばれていることを特徴とする、請求項2〜5の1つに記載の方法。
【請求項7】
特性量が尖度であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの間隔が異なる重み付けをされることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項9】
時間間隔の長さが可変であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−539119(P2009−539119A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515695(P2009−515695)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000976
【国際公開番号】WO2007/137570
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】