説明

転がり軸受

【課題】耐熱音響長寿命を有する転がり軸受を提供すること。
【解決手段】内輪と、外輪と、前記内輪と外輪との間の空間部に配設された複数の転動体とを備えた転がり軸受であって、前記空間部に、(A)リチウム石けん系増ちょう剤、(B)トリメチロールプロパンと脂肪酸とのエステル化反応によって得られるエステル系合成油である基油、及び(C)(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤及び(c-2)ジフェニルアミン系酸化防止剤を含有し、(c-1)と(c-2)との合計量が組成物全量に対し、1.0〜10質量%であり、(c-1)と(c-2)との配合比率が、質量比にして30:70〜70:30であるグリース組成物が封入されていることを特徴とする転がり軸受が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関し、詳細には、小型モータに適した転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器や情報機器で使用されるブラシレスモータ、ファンモータ等の小型モータには省電力、高耐久性が求められ、これら小型モータで用いられる転がり軸受に対しては、低騒音性、音響長寿命等が要求される。
【0003】
転がり軸受に低騒音性、音響長寿命を達成させるグリース組成物として、グリース中に清浄分散剤を含有させ、なじみ摩耗による摩耗粉が転走面に凝着するのを防止して低騒音性及び音響長寿命化を図ったグリース組成物が知られている(特許文献1)。
また、特定組成のウレア化合物からなる増ちょう剤と、特定の有機スルホン酸塩との組み合わせにより、初期音響特性を良好にするとともに、音響特性の経時的な低下や温度上昇による低下を抑えたグリース組成物も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4117445号
【特許文献2】特開2008−143979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、低騒音性等の音響特性が要求される用途にはリチウム石けん系グリースが用いられ、耐熱性が要求される用途にはウレア系グリースが用いられているが、リチウム系グリース及びウレア系グリースは、どちらも耐熱性と音響長寿命とを両立させることができないため、これらが封入された軸受けには、高温下で使用されると、初期の音響特性を維持できる期間が短くなるという問題があった。
【0006】
このため、小型モータ等で生じやすい高温度領域で使用した場合においても、長い音響寿命を達成することができる転がり軸受に対する強い要望がある。
【0007】
本発明は、このような要望に応じてなされたものであり、耐熱音響長寿命を有する転がり軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
内輪と、外輪と、前記内輪と外輪との間の空間部に配設された複数の転動体とを備えた転がり軸受であって、
前記空間部に、
(A)リチウム石けん系増ちょう剤、
(B)トリメチロールプロパンと脂肪酸とのエステル化反応によって得られるエステル系合成油である基油、及び
(C)(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤及び(c-2)ジフェニルアミン系酸化防止剤を含有し、(c-1)と(c-2)との合計量が組成物全量に対し、1.0〜10質量%であり、(c-1)と(c-2)との配合比率が、質量比にして30:70〜70:30であるグリース組成物が封入されている、
ことを特徴とする転がり軸受が提供される。
【0009】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤が、下記式(I)で表される化合物である。
【化1】

(式中、R1及びR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基である。)
【0010】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記(c-2)ジフェニルアミン系酸化防止剤が、下記式(II)で表される化合物である。
【化2】

(式中、R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基である。)
【0011】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記(B)エステル系合成油が、トリメチロールプロパンと、炭素数6〜20の直鎖及び分岐脂肪酸の混合物とのエステル化反応によって得られるエステル油である。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記(A)リチウム石けん系増ちょう剤が、12-ヒドロキシステアリン酸リチウムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱音響長寿命を有する転がり軸受が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい実施形態の玉軸受の概略的な構成を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明の転がり軸受の好ましい実施形態である玉軸受の構成について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施形態の玉軸受1の径方向断面図である。玉軸受1は、従来技術の玉軸受と同一の基本構造を有し、環状の内輪2および外輪4を備えている。外輪4は、内輪2より大径であり、内輪2との間に環状空間6を形成するように内輪2と同心状態に配置されている
【0017】
環状空間6内には、玉8を保持する環状の保持器10が配置されている。保持器10は、一定の周方向間隔をおいて配置された複数の凹部を備え、各凹部内に玉8が収容されている。各玉8は、凹部内で、一端側が内輪2に、他端側が外輪4に接触するように配置されている。
【0018】
さらに、環状空間6の軸線方向両端には、それぞれ、環状シール部材12、12が設けられ、環状空間を軸線方向に密封している。
【0019】
この結果、環状空間6は、径方向内方が内輪2によって、径方向外方が外輪4によって、軸線方向両端が環状シール部材12、12によって規定される密閉空間とされている。環状シール部材12、12は、鋼板製の環状部材であり、外縁部が外輪4に取付けられている。
【0020】
本実施形態の玉軸受1では、この環状空間6に、後述する組成を有するグリース組成物14が封入されている。封入量は、環状空間6の容積の25〜35%程度の量が好ましい。
【0021】
次に、本実施形態の玉軸受1の環状空間6に封入されているグリース組成物について説明する。
【0022】
本実施形態の玉軸受1に使用されるグリース組成物は、以下のような(A)リチウム石けん系増ちょう剤と、(B)基油と、(C)酸化防止剤とを含有している。
【0023】
<グリース組成物>
〔(A)リチウム石けん系増ちょう剤〕
本実施形態の玉軸受1で使用されるグリース組成物に使用されるリチウム石けん系増ちょう剤は、欠点が少なく、高価でないため、実用性のある増ちょう剤である。好ましくは、ラウリン酸リチウム、ステリン酸リチウム又は12−ヒドロキシステアリン酸リチウムであり、より好ましくはラウリン酸リチウム又は12−ヒドロキシステアリン酸リチウムであり、特に好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸リチウムである。これらリチウム石けん系増ちょう剤を含有するグリース組成物を封入した転がり軸受は低騒音性に優れる。
【0024】
本実施形態の玉軸受1で使用されるグリース組成物のちょう度は、200〜400が好しく、増ちょう剤の含有量はこのちょう度を得るのに必要な量となる。グリース組成物全体に対して、好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%、最も好ましくは7〜15質量%である。
【0025】
〔(B)基油〕
本実施形態の玉軸受1で使用されるグリース組成物に使用される基油は、トリメチロールプロパンをアルコールとして得られるエステル系合成油である。該エステル系合成基油を構成する脂肪酸としては、炭素数6〜20、好ましくは6〜18の直鎖又は分岐脂肪酸があげられる。脂肪酸は、単独でも2種以上の混合物でもよいが、混合物が好ましい。直鎖脂肪酸と分岐脂肪酸との混合物がより好ましい。これは、直鎖脂肪酸を単独で構成するよりも、分岐脂肪酸との混合物のほうが低温での流動性に優れるためである。脂肪酸は、飽和でも不飽和でもよいが、飽和脂肪酸が好ましい。
【0026】
特に好ましくは、トリメチロールプロパンと、炭素数6〜12の直鎖飽和脂肪酸と炭素数16〜18の分岐飽和脂肪酸との混合物とから得られるエステル系合成油である。最も好ましくは、トリメチロールプロパンと、n-オクタン酸、n-デカン酸及びi-ステアリン酸の混合物とのエステル油である。
40℃における基油の動粘度は、10〜50mm2/sであるのが好ましく、15〜35mm2/sであるのがより好ましい。
【0027】
〔(C)酸化防止剤〕
本実施形態の玉軸受1で使用されるグリース組成物は、(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤と(c-2)ジフェニルアミン系酸化防止剤を必須成分として含有する。
(c-1)と(c-2)との合計量は、グリース組成物全質量に対し、1.0〜10質量%、好ましくは2.0〜6.0質量%である。(c-1)と(c-2)との合計量がこの範囲にあると、このようなグリース組成物を封入した転がり軸受は、耐熱音響寿命性能に優れる。
(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤と(c-2)ジフェニルアミン系酸化防止剤の配合比率は、質量比にして、30:70〜70:30である。(c-1)と(c-2)との配合比率がこの範囲にあると、少ない添加量で耐熱音響寿命性能に優れる。
(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤としては、下記式(I)で表されるものが好ましい。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、R1及びR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基である。
1及びR2の直鎖又は分岐アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2− メチルヘキシル、n−オクチル、i−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、n−ノニル、i−ノニル、1−メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル等が挙げられる。
【0030】
1は、水素原子であるのが好ましい。R2は、炭素数1〜12の分岐アルキル基であるのが好ましい。炭素数3〜10の分岐アルキル基がより好ましい。1,1,3,3-テトラメチルブチル基が特に好ましい。R1が水素原子であり、R2が1,1,3,3-テトラメチルブチル基であるのが更に特に好ましい。
1の結合位置はフェニル基の4位であるのが好ましい。R2の結合位置はナフチル基の6位であるのが好ましい。
式(I)の化合物としては、N-フェニル-1,1,3,3-テトラメチルブチルナフタレン-1-アミンが好ましい。
本発明のグリース組成物において、1−ナフチルアミン系酸化防止剤は単独で使用しても良いし、2種以上を適宜組み合わせて使用しても良い。
(c-2)上記ジフェニルアミン系酸化防止剤としては、下記式(II)で表されるものが好ましい。
【0031】
【化4】

【0032】
式中、R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基である。
3及びR4の直鎖又は分岐アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2− メチルヘキシル、n−オクチル、i−オクチル、2−エチルヘキシル、3−メチルヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、n−ノニル、i−ノニル、1−メチルオクチル、エチルヘプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル等が挙げられる。
【0033】
3及びR4で示されるアルキル基は、それぞれフェニル基の任意の位置に結合可能であるが、アミノ基に対してp−位であることが好ましく、さらに好ましくは、R3及びR4がi−オクチル基である、p,p’−ジオクチルジフェニルアミンであることが好ましい。
本実施形態の玉軸受1で使用されるグリース組成物において、ジフェニルアミン系酸化防止剤は単独で使用しても良いし、2種以上を適宜組み合わせて使用しても良い。
【0034】
本実施形態の玉軸受1で使用されるグリース組成物は、上記必須成分に加えて、必要に応じてグリース組成物に通常使用される添加剤を含むことが出来る。このような添加剤の例としては、錆止め剤、金属不活性化剤、清浄分散剤、極圧添加剤、消泡剤、抗乳化剤、油性向上剤、耐摩耗剤、固体潤滑剤などが挙げられる。これらの添加量は通常0.01〜10質量%である。
【0035】
本実施形態の玉軸受1は、特に、家電機器や情報機器の小型モータ(例えば、ブラシレスモータ、ファンモータ)の転がり軸受として使用されるのが好ましい。
【0036】
本発明は、本明細書に記載された実施形態や具体的な実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、転がり軸受として玉軸受が使用されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の転がり軸受、コロ軸受けにも適用可能である。
【実施例】
【0037】
<実施例の玉軸受に使用した試験グリース>
実施例1〜5並びに比較例1〜7
下記に示す基油中で、12-ヒドロキシステアリン酸リチウムを混合加熱溶解し、冷却してベースグリースとした。酸化防止剤の所定量を基油と混合し、ベースグリースに加えてよく混ぜ、3本ロールミルで混練して、混和ちょう度250(JIS K2220)のグリース組成物を製造した。
【0038】
比較例8
基油中で、ジフェニルメタンジイソシアネートに、シクロヘキシルアミン及びステアリルアミンを反応させ、ベースグリースを調製した。酸化防止剤の所定量を基油と混合し、ベースグリースに加えてよく混ぜ、3本ロールミルで混練して、混和ちょう度250(JIS K2220)のグリース組成物を製造した。
【0039】
<試験方法>
1.初期音響性能及び耐熱音響寿命性能の試験方法
鋼シールド付き玉軸受(内径8mm、外径22mm、幅7mm)に、試験グリースを、軸受容積の25%〜35%で封入した。この玉軸受を2個ずつハウジングにセットして約40Nの予圧をかけた後、軸受内径にシャフトを挿入して、試験用モータの回転軸にシャフトを結合し、玉軸受が内輪回転するようにした。
ついで、前記玉軸受を恒温槽に入れ、試験温度110℃、回転速度3000rpmで1500時間回転させて評価試験を行った。玉軸受は、各実施例および比較例につき10個ずつ試験を行い、平均値を求めた。
【0040】
軸受回転前後の音響性能は、アンデロンメータを用いて、Mバンド(300〜1800Hz)のアンデロン値を測定することにより評価した。軸受回転前のアンデロン値により初期音響性能を評価し、玉軸受を1500時間回転させた後のアンデロン値により耐熱音響寿命性能を評価した。尚、Mバンドの周波数300〜1800Hzは、人にとって耳障りな音と言われている。
【0041】
2.初期音響性能の評価基準
○:平均アンデロン値が0.3未満
×:平均アンデロン値が0.3以上
【0042】
3.耐熱音響寿命性能の評価基準
○:平均アンデロン値が5未満
×:平均アンデロン値が5以上
結果を表1に示す。なお、表中の質量%は組成物の全質量に対する値である。
【0043】
【表1】

【0044】
基油
エステル油A:トリメチロールプロパンと、n-オクタン酸、n-デカン酸及びi-ステアリン酸の混合物とのエステル油(40℃動粘度;25mm2/s)
エステル油B:ペンタエリスリトールエステル油+ジエステル(40℃動粘度;25mm2/s)
尚、40℃における動粘度はJIS K 2220 23.に準拠して測定した。
【0045】
酸化防止剤
酸化防止剤A:アルキル化N−フェニル−1−ナフチルアミン
(Cas No.68259−36−9)
酸化防止剤B:アルキル化ジフェニルアミン
(Cas No.68411−46−1)
酸化防止剤C:ヒンダードフェノール系
(Cas No.2082−79−3)
【0046】
・リチウム石けん系増ちょう剤とトリメチロールプロパンと脂肪酸のエステル化反応によって得られたエステル系合成油基油(エステル油A)と、1−ナフチルアミン(酸化防止剤A)とジフェニルアミン(酸化防止剤B)とを、所定量、所定比率で組み合わせたグリース組成物を封入した実施例1〜5は、いずれも初期音響性能が良好で、耐熱音響寿命性能も良好であった。
・実施例3における酸化防止剤Bの代わりに酸化防止剤Cを同量配合したグリース組成物を封入した比較例1は、耐熱音響寿命性能に劣る結果となった。
・実施例1と異なる基油を配合したグリース組成物を封入した比較例2(エステル油B配合)は、耐熱音響寿命性能に劣る結果となった。
・酸化防止剤A,Bを、本発明で規定する範囲よりも少量配合したグリース組成物を封入した比較例3(酸化防止剤Aと酸化防止剤Bの合計0.6質量%配合)は、耐熱音響寿命性能に劣る結果となった。
【0047】
・酸化防止剤A,Bを、本発明で規定する範囲よりも多量に配合したグリース組成物を封入した比較例4(酸化防止剤Aと酸化防止剤Bの合計14質量%配合)は、初期音響性能に劣る結果となった。
・実施例1における酸化防止剤A,Bを、合計量は同じであるが本発明で規定する範囲外の割合で配合したグリース組成物を封入した比較例5(酸化防止剤A0.4質量%、酸化防止剤B1.6質量%配合)、比較例6(酸化防止剤A1.6質量%、酸化防止剤B0.4質量%配合)はいずれも耐熱音響寿命性能に劣る結果となった。
・実施例4と酸化防止剤として同量配合したが、酸化防止剤Bを含まないグリース組成物を封入した比較例7(酸化防止剤A配合)は、耐熱音響寿命性能に劣る結果となった。
・実施例4と異なる増ちょう剤を配合したグリース組成物を封入した比較例8(ウレア)は、耐熱音響寿命性能に劣る結果となった。
【0048】
以上の結果により、本発明のグリース組成物を封入した転がり軸受は優れた初期音響性能と耐熱音響寿命性能を併せ持つことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と外輪との間の空間部に配設された複数の転動体とを備えた転がり軸受であって、
前記空間部に、
(A)リチウム石けん系増ちょう剤、
(B)トリメチロールプロパンと脂肪酸とのエステル化反応によって得られるエステル系合成油である基油、及び
(C)(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤及び(c-2)ジフェニルアミン系酸化防止剤を含有し、(c-1)と(c-2)との合計量が組成物全量に対し、1.0〜10質量%であり、(c-1)と(c-2)との配合比率が、質量比にして30:70〜70:30であるグリース組成物が封入されている、
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記(c-1)1−ナフチルアミン系酸化防止剤が、下記式(I)で表される化合物である、請求項1記載の転がり軸受。
【化1】

(式中、R1及びR2は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基である。)
【請求項3】
前記(c-2)ジフェニルアミン系酸化防止剤が、下記式(II)で表される化合物である、請求項1又は2記載の転がり軸受。
【化2】


(式中、R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基である。)
【請求項4】
前記(B)エステル系合成油が、トリメチロールプロパンと、炭素数6〜20の直鎖及び分岐脂肪酸の混合物とのエステル化反応によって得られるエステル油である、
請求項1〜3のいずれか1項記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記(A)リチウム石けん系増ちょう剤が、12-ヒドロキシステアリン酸リチウムである、請求項1〜4のいずれか1項記載の転がり軸受。

【図1】
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【公開番号】特開2012−233492(P2012−233492A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100431(P2011−100431)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】