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転がり軸受
説明

転がり軸受

【課題】低トルクで、潤滑性能及び耐熱性能に優れるグリース組成物、並びに低温での作動性に優れ、かつ高温での潤滑性にも優れ、焼付きのない高性能の転がり軸受を提供する。
【解決手段】40℃における動粘度が20〜100mm/sの基油に、第一増ちょう剤成分としてジウレア化合物及び第二増ちょう剤成分としてフッ素樹脂を配合してなるグリース組成物、並びに内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪との間に配された保持器と、前記保持器により保持された複数の転動体とを備え、かつ、前記内輪または前記外輪の幅方向の一方の端面に設けた非接触シールと、他方の端面に設けた接触シールとを用いて前記グリース組成物を封入した自動車モータ用転がり軸受。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物及び転がり軸受に関し、より詳細には、自動車のブロワーモータ、スタータモータ、電動パワーステアリングモータ、ステアリング調製用チルトモータ、ワイパーモータ、パワーウインドウモータ、デュアルクラッチトランスミッションモータ等の自動車モータの回転軸を支持するための転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した自動車モータ用転がり軸受は、低温時においても作動するように、低温時の潤滑不良による異音の発生、また運転席に近い場所に配置されることが多いことから音響特性(特に静粛性)に対して厳しい要求がある。例えば、ブロワーモータでは、従来130〜150℃の軸受温度で使用されてきたが、近年では180〜200℃の高温下でも耐え得るような軸受が必要とされてきている。150℃の温度に耐え得る転がり軸受としては、特許文献1に記載しているような合成油系潤滑油にLi系石けん及びウレア系化合物を配合したグリース組成物を封入して対応している。しかし、160℃を超える高温では早期に焼付きを生じるため、十分とはいえない。
【0003】
また、耐熱性向上のために、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を増ちょう剤とし、パーフルオロエーテル油等のフッ素油を基油としたフッ素系グリースが、160℃以上の高温でも使用可能な軸受となることが知られている。しかし、フッ素系グリースは、一般的なグリースに配合される添加剤を添加することが難しく、潤滑性や防錆性、耐摩耗性に劣る傾向がある。特許文献2では、ウレア系グリースにフッ素油を配合して耐熱性を向上させているが、基油である鉱油や合成油系潤滑油と、フッ素油との親和性が乏しく、離油度が大きく、高速で回転する自動車モータのように高速で回転する転がり軸受には不適であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2977624号公報
【特許文献2】特開平11−181465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車モータ用転がり軸受では、今後もより高速回転され、より高温に晒されることが想定される。そこで、本発明は、低トルクで、潤滑性能及び耐熱性能に優れるグリース組成物、並びに低温での作動性に優れ、かつ高温での潤滑性にも優れ、焼付きのない高性能の転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は下記のグリース組成物及び転がり軸受を提供する。
(1)40℃における動粘度が20〜100mm/sの基油に、第一増ちょう剤成分としてジウレア化合物及び第二増ちょう剤成分としてフッ素樹脂を配合してなることを特徴とするグリース組成物。
(2)基油がジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油及びポリαオレフィン油から選ばれる少なくとも1種と、パーフルオロポリエーテル油との混合油であることを特徴とする上記(1)記載のグリース組成物。
(3)増ちょう剤全量に対しジウレア化合物が5〜50質量%、フッ素樹脂が95〜50質量%であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のグリース組成物。
(4)増ちょう剤量が5〜40質量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載のグリース組成物。
(5)混和ちょう度が220〜385であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載のグリース組成物。
(6)内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪との間に配された保持器と、前記保持器により保持された複数の転動体とを備え、かつ、前記内輪または前記外輪の幅方向の一方の端面に設けた非接触シールと、他方の端面に設けた接触シールとを用いて、上記(1)〜
(5)の何れか1項に記載のグリース組成物を封入したことを特徴とする自動車モータ用転がり軸受。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグリース組成物は、低温でのトルクが低く、耐熱性に優れたものとなる。また、フッ素系グリース単独に比べて安価でもある。
【0008】
また、本発明の転がり軸受は、上記のグリース組成物を封入したため、低温での起動性に優れ、高温においても耐焼付き性に優れて耐久性が高く、信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る転がり軸受の一実施形態である玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図2】試験グリースの潤滑寿命を評価する軸受寿命試験機の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<グリース組成物>
〔基油〕
本発明のグリース組成物において、基油には、40℃における動粘度が20〜100mm/sの潤滑油を用いる。基油の動粘度が100mm/s(40℃)を超えると、転がり軸受のトルクが高くなり好ましくない。また、低温での流動性が低くなり、転がり軸受を低温で起動する際に異音が発生しやすくなる。但し、基油の動粘度が20mm/s(40℃)未満では、蒸発損失が大きくなり、高温での潤滑油膜の形成が不十分となりやすくなる。このような不具合をより抑えるには、基油の動粘度は20〜90mm/s(40℃)とすることが好ましい。
【0011】
基油の種類は、後述する第一、第二の増ちょう剤成分によりゲル構造を形成するものであればよいが、第1の増ちょう剤成分であるジウレア化合物に対してはジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油及びポリαオレフィン油から選ばれる少なくとも1種を用い、第2の増ちょう剤成分であるフッ素樹脂に対してはパーフルオロポリエーテル油を用いることが好ましく、基油はこれらの混合油であることが好ましい。混合油におけるジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油及びポリαオレフィン油から選ばれる少なくとも1種を5〜50質量%、パーフルオロポリエーテル油を95〜50質量%とすることが好ましい。ジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油及びポリαオレフィン油から選ばれる少なくとも1種が5質量%未満では、添加剤を添加した場合に、添加剤の効果が十分に得られない。但し、50質量%超になると、相対的にパーフルオロポリエーテル油が少なくなり、グリース組成物の耐熱性が不十分になる。
【0012】
ジアルキルジフェニルエーテル油は、下記一般式(I)で表される。尚、式中、R1、R2,R3は同一または異なる官能基であり、これらのうち一つは水素元素であり、他の2つはアルキル基である。また、アルキル基は好ましくは炭素数が8〜20であり、より好ましくは炭素数12〜14の直鎖アルキル基である。
【0013】
【化1】

【0014】
エステル系合成油としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート等のポリオールエステル;トリメリット酸エステル、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油等が挙げられる。
【0015】
ポリα−オレフィン油は、下記一般式(II)で表される。尚、式中のR4はアルキル基であり、同一分子中に2種以上の異なったアルキル基は混在していてもよいが、好ましくはn-オクチル基である。また、nは3〜8の整数が好ましい。
【0016】
【化2】

【0017】
パーフルオロポリエーテル油としては、例えば、(CFCFO)、(CFO)、(CFCF(CF)O)、(CF(CF)O)、(CFCFCFO)、(CFCF(OX1)O)及び(CF(OX1)O)から選択される少なくとも1種のフルオロオキシアルキレン構造単位を含むものが好ましい。尚、X1は−(CF(mは0〜4の整数)である。
【0018】
パーフルオロポリエーテル油が、上記フルオロオキシアルキレン構造単位のうち2種以上から構成される場合は、各構造単位は連鎖に沿って統計的に分布している。また、その末端基は、−CF、−C、−C、ClCFCF(CF)−、CFCFClCF−、ClCFCF−、ClCF−、−CFH、−CF(CF)H等のような、1個のH及び/またはClを任意に有するフルオロアルキル基である。
【0019】
また、パーフルオロポリエーテル油は、一般式(III)に示すような直鎖構造、一般式(IV)に示すような分岐構造であってもよい。尚、式中のp、qは5〜50の整数が好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
〔増ちょう剤〕
本発明のグリース組成物には、第一増ちょう剤成分としてジウレア化合物、第二増ちょう剤成分としてフッ素樹脂が配合される。ジウレア化合物は、下記一般式(V)で表されるものが好ましい。
【0022】
【化4】

【0023】
式中、R6は炭素数6〜15の芳香族系炭化水素基である。R5及びR7は炭化水素基または縮合環炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。また、R5及びR7において炭化水素基は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れであってもよく、縮合環炭化水素基の炭素数は好ましくは9〜19、より好ましくは9〜13である。
【0024】
この一般式(V)で表されるジウレア化合物は、例えば、基油中で、R6を骨格中に含むジイソシアネート1モルに対して、R5及びR7を骨格中に含むモノアミンを合計で約2モルの割合で反応させることにより得られる。
【0025】
R6を骨格中に含むジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジメチルジフェニレンジイソシアネート、またはこれらのアルキル置換体等が好適に用いられる。
【0026】
R5またはR7として炭化水素基を骨格中に含むモノアミンとしては、例えば、アニリン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、トルイジン、ドデシルアミリン、オクタデシルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、エチルエキシルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコデシルアミン、オレイルアミン、リノレイルアミン、リノレニルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、エチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、ブチルシクロヘキシルアミン、プロピルシクロヘキシルアミン、アミルシクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、ベンジルアミン、ベンズヒドリルアミン、フェネチルアミン、メチルベンジルアミン、ビフェニルアミン、フェニルイソプロピルアミン、フェニルヘキシルアミン等を好適に使用できる。
【0027】
また、R5またはR7として縮合環炭化水素基を骨格中に含むモノアミンとしては、例えば、アミノインデン、アミノインダン、アミノ−1−メチレンインデン等のインデン系アミン化合物;アミノナフタレン(ナフチルアミン)、アミノメチルナフタレン、アミノエチルナフタレン、アミノジメチルナフタレン、アミノカダレン、アミノビニルナフタレン、アミノフェニルナフタレン、アミノベンジルナフタレン、アミノジナフチルアミン、アミノビナフチル、アミノ−1,2−ジヒドロナフタレン、アミノ−1,4−ジヒドロナフタレン、アミノテトラヒドロナフタレン、アミノオクタリン等のナフタレン系アミノ化合物;アミノペンタレン、アミノアズレン、アミノヘプタレン等の縮合二環系アミン化合物;アミノフルオレン、アミノ−9−フェニルフルオレン等のアミノフルオレン系アミン化合物;アミノアントラレン、アミノメチルアントラセン、アミノジメチルアントラセン、アミノフェニルアントラセン、アミノ−9,10−ジヒドロアントラセン等のアントラセン系アミン化合物;アミノフェナントレン、アミノ−1,7−ジメチルフェナントレン、アミノレテン等のフェナントレンアミン化合物;アミノビフェニレン、アミノ−s−インダセン、アミノ−as−インダセン、アミノアセナフチレン、アミノアセナナフテン、アミノフェナレン等の縮合三環系アミン化合物;アミノナフタセン、アミノクリセン、アミノピレン、アミノトリフェニレン、アミノベンゾアントラセン、アミノアセアントリレン、アミノアセアントレン、アミノアセフェナントリレン、アミノアセフェナントレン、アミノフルオランテン、アミノプレイアデン等の縮合四環系アミン化合物;アミノペンタセン、アミノペンタフェン、アミノピセン、アミノペリレン、アミノジベンゾアントラセン、アミノベンゾピレン、アミノコラントレン等の縮合五環系アミン化合物;アミノコロネン、アミノピラントレン、アミノビオラントレン、アミノイソビオラントレン、アミノオバレン等の縮合多環系(六環以上)アミン化合物等を好適に使用できる。
【0028】
第二増ちょう剤成分として使用されるフッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンと全体またはその一部がフッ素化された他のエチレン系不飽和炭化水素モノマーとの共重合体(以下「テトラフルオロエチレン共重合体」と記す)等が好ましい。
【0029】
テトラフルオロエチレン共重合体としては、例えば、以下の(1)〜(4)に示すものが挙げられる。
(1)フッ化ビニリデン;ヘキサフルオロイソブテン;クロロトリフルオロエチレン;パーフルオロプロペン等のパーフルオロアルキルエチレン類のうちの1種以上のコモノマーを、PTFEに0.01〜3モル%、好ましくは0.05〜0.5モル%共重合させた変性ポリテトラフルオロエチレン。
(2)少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテル(パーフルオロアルキル基の炭素数は1〜6個)を、テトラフルオロエチレン(TFE)に0.5〜8モル%共重合させたTFE熱可塑性共重合体。具体的には、パーフルオロプロピルビニルエーテルとTFEとの共重合体、パーフルオロメチルビニルエーテルとTFEとの共重合体、パーフルオロエチルビニルエーテルとTFEとの共重合体等が挙げられる。
(3)炭素数3〜8のパーフルオロオレフィンを、TFEに2〜20モル%共重合させたTFE熱可塑性共重合体。具体的には、ヘキサフルオロプロペンとTFEとの共重合体等が挙げられる。尚、この共重合体には、5モル%未満であれば、パーフルオロビニルエーテル構造を有する他のコモノマーを共重合させてもよい。
(4)パーフルオロメチルビニルエーテル0.5〜13モル%と、下記式(VI)〜(VIII)のフッ素化モノマーのうち1種以上(0.05〜5モル%)とを共重合させたTFE熱可塑性共重合体。
【0030】
【化5】

【0031】
尚、式(VIII)中のR9は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、CFが好ましい。また、X2、X3は相互に独立して炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基またはFであり、CFが好ましい。
【0032】
また、式(VI)及び式(VII)中、R8は下記(i)〜(iii)の何れか一つである。
(i)2〜12個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキル基。
(ii)下記式(IX)に示す化学構造を有する基であり、式(IX)中のrは1〜4の整数であり、r´は0〜3の整数である。
【0033】
【化6】

【0034】
(iii)下記式(X)に示す化学構造を有する基。但し、式(X)中の構造単位(OCFX4)と(OCF2−CFY)は連鎖に沿って統計的に分布している。また、Tは、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、任意に1個のHまたはClを有する。X4及びYは、F基またはCF3基である。Zは、−(CFX)−または(CF2CFY)−であり、sとs´は0〜10の整数で相互に同じかまたは異なる数値であってもよい。
【0035】
【化7】

【0036】
尚、式(VI)及び式(VII)で示されるフッ素化合物モノマーの数平均分子量は、200〜2000である。
【0037】
また、上記(1)〜(4)には、分子式中の数値、共重合化及び平均分子量について好適な数値範囲が限定されているが、これらの数値が前記範囲の下限値未満であると、グリース状とするのに十分な増ちょう性がテトラフルオロエチレン共重合体に付与されない。また、前記範囲の上限値を超えると、グリース組成物が硬化して十分な潤滑性を発揮することが困難である。
【0038】
増ちょう剤全量に対しジウレア化合物を5〜50質量%、フッ素樹脂を95〜50質量%の割合とすることが好ましい。これは、好ましい基油組成に従うものである。ジウレア化合物が50質量%超で、フッ素樹脂が50質量%未満では、グリース組成物の耐熱性が不十分になる。
【0039】
また、グリース組成物における増ちょう剤の含有量、即ちジウレア化合物及びフッ素樹脂の合計量は、グリース組成物全体の5〜40質量%であることが好ましい。増ちょう剤の含有量が5重量%未満であるとグリース状態を維持することが困難となり、40重量%を超えるとグリース組成物が硬化しすぎて十分な潤滑性を発揮することが困難となる。但し、グリース組成物の混和ちょう度、及び、転がり軸受への適用の観点からは、増ちょう剤の含有量がグリース組成物全体の10〜30質量%であることが好ましい。
【0040】
〔添加物〕
グリース組成物には、各種性能を更に向上させるために種々の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤や防錆剤、極圧剤、油性剤、金属不活性化剤等を添加することができる。
【0041】
酸化防止剤としては、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等のその他の酸化防止剤を使用することができる。
【0042】
防錆剤としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属等の有機スルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルこはく酸エステル等のアルキルまたはアルケニルこはく酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル等を使用することができる。
【0043】
極圧剤としては、例えば、リン系の極圧剤、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン等を使用することができる。
【0044】
油性剤としては、例えば、脂肪酸、動植物油等の油性向上剤を使用することができる。
【0045】
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等を使用することができる。
【0046】
これらの添加剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば、特に限定されるものではない。
【0047】
〔混和ちょう度〕
グリース組成物の混和ちょう度は、220〜385であることが好ましい。混和ちょう度が220未満であると、グリース組成物が硬すぎるため、軸受のトルク性能が低下する傾向にある。また、385を超えると軸受からの漏れ量が多くなる。
【0048】
〔製造方法〕
グリース組成物の製造方法は、例えば、基油にジウレア化合物とフッ素樹脂とを加え、必要に応じて加熱しながら、撹拌してゲル化させればよい。また、基油として、ジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油及びポリαオレフィン油から選ばれる少なくとも1種と、パーフルオロポリエーテル油との混合油を用いる場合は、ジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油及びポリαオレフィン油から選ばれる少なくとも1種にジウレア化合物を配合して第一のグリース組成物を調製し、パーフルオロポリエーテル油にフッ素樹脂を配合して第二のグリース組成物を調製し、第一のグリース組成物と第二のグリース組成物とを混合してもよい。尚、添加物は、第一のグリース組成物に添加することが好ましい。
【0049】
上記した本発明のグリース組成物は、基油粘度を特定したため、低温でのトルクが低くなり、また高温での油膜の形成が良好になる。また、フッ素樹脂を増ちょう剤成分として含むため、耐熱性に優れたものとなる。
【0050】
<転がり軸受>
本発明では、上記のグリース組成物を封入し、かつ自動車のモータ用に使用される転がり軸受であれば、その構造には制限はない。例えば図1に示す玉軸受を挙げることができる。図示される玉軸受1は、内輪10と外輪11との間に転動自在に配設された複数の玉13と、複数の玉を保持する保持器12と、外輪11に取り付けられた接触形のシール14とで構成される。また、内輪10と外輪11とシール14,14とで囲まれた軸受空間には、上記本発明のグリース組成物Gが充填され、シール14,14により玉軸受1内に密封されている。そして、上記のグリース組成物Gにより、両輪10、11の軌道面と玉13との接触面が潤滑される。
【0051】
その他にも、図示は省略するが、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受、スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受を挙げることができる。
【0052】
本発明の転がり軸受は、前述したグリース組成物により、低トルクで、低温での起動性に優れ、また高温下においても焼き付きが無く耐久性に優れたものとなる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について実施例に基づき更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。
【0054】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1に実施例の試験グリースの組成、表2に比較例の試験グリースの組成を示すが、増ちょう剤及び基油を形成する各成分については、基油と増ちょう剤との全量に占める割合(質量%)を示している。また、各試験グリースとも、その他に、グリース全量に対し1.0質量%のアミン系酸化防止剤と、0.5質量%のカルシウムスルホネート系防錆剤と、0.05質量%のベンゾトリアゾール系金属不活性化剤とを含有している。
【0055】
各試験グリースについて、下記に示す(1)焼付性試験、(2)低温トルク試験及び(3)耐摩耗性試験を行った。また、各試験グリースの混和ちょう度をJIS K2220に従い測定した。それぞれの結果を同表に併記する。
【0056】
(1)焼付性試験
内径8mm、外径22mm、幅7mmの鉄シールド付き深溝玉軸受(図1参照)に、各試験グリースを軸受空間の50%を占めるように充填した。そして、この玉軸受を、図2に示すようなASTM D1741の軸受寿命試験機に類似の試験機に装着し、軸受温度180℃、アキシアル荷重59Nの条件下で、3000min−1の回転速度で回転させ、焼付が生じて外輪の温度が190℃以上に上昇するまでの時間を寿命とした。尚、その他の条件については、ASTM D1741に準拠した。試験は、一種類の軸受について4回行い、その平均値を試験結果とし、4500時間以上を合格とした。
【0057】
(2)低温トルク試験
内径8mm、外径22mm、幅7mmの鉄シールド付き深溝玉軸受(図1参照)に、各試験グリースを軸受空間の30%を占めるように充填した。そして、この玉軸受を、−40℃の恒温槽に4時間放置し、その後に内輪回転速度100min−1で10分間回転させた時の動トルク値を測定した。動トルク値が2000N・cm以下の場合を「◎」、2000N・cm超で2500N・cm以下の場合を「〇」、2500N・cmを超える場合を「×」とした。
【0058】
(3)耐摩耗性試験
ASM D2266に準拠し、四球試験を行った。試験条件は、回転数1200min−1、荷重392N、温度25℃とし、60分後の摩耗痕径を測定した。試験は各試験グリースについて3回行い、その平均値を試験結果とし、0.5mm以下を合格とした。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1及び表2に示されるように、本発明に従う実施例の各試験グリースは、焼付きが抑えられ、低温トルクが低く、更に摩耗が少なく耐久性に優れることがわかる。これに対し、比較例2、4、5の試験グリースは、フッ素樹脂とパーフルオロポリエーテル油とを含まないため、耐焼付き性に劣っている。また、比較例1、3の試験グリースは、基油がパーフルオロポリエーテル油のみであるため、耐摩耗性に劣っている。
【符号の説明】
【0062】
1 玉軸受
10 内輪
11 外輪
12 保持器
13 玉
14 シール
G グリース組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃における動粘度が20〜100mm/sの基油に、第一増ちょう剤成分としてジウレア化合物及び第二増ちょう剤成分としてフッ素樹脂を配合してなることを特徴とするグリース組成物。
【請求項2】
基油がジアルキルジフェニルエーテル油、エステル系合成油及びポリαオレフィン油から選ばれる少なくとも1種と、パーフルオロポリエーテル油との混合油であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【請求項3】
増ちょう剤全量に対しジウレア化合物が5〜50質量%、フッ素樹脂が95〜50質量%であることを特徴とする請求項1または2記載のグリース組成物。
【請求項4】
増ちょう剤量が5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のグリース組成物。
【請求項5】
混和ちょう度が220〜385であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のグリース組成物。
【請求項6】
内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪との間に配された保持器と、前記保持器により保持された複数の転動体とを備え、かつ、前記内輪または前記外輪の幅方向の一方の端面に設けた非接触シールと、他方の端面に設けた接触シールとを用いて、請求項1〜5の何れか1項に記載のグリース組成物を封入したことを特徴とする自動車モータ用転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236935(P2012−236935A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107494(P2011−107494)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】