説明

転てつ表示入力回路

【課題】閾値電圧設定回路の抵抗器の開放故障に対するフェールセーフ性を確保し、且つ、検査信号がオフ制御されたときの消費電力を低減することのできる転てつ表示入力回路の実現。
【解決手段】転てつ表示入力回路10Aは、転てつ機の転換状態(定位転換状態/反位転換状態)に応じた極性の電圧が印加される正入力端子11と負入力端子12との間に、第1抵抗器R1、第3抵抗器R3、及び、第4抵抗器R4が直列接続され、第4抵抗器R4に対して、第1回路部21が並列接続され、直列接続された第3抵抗器R3及び第4抵抗器R4に対して、直列接続された第2抵抗器R2、及び、第2回路部22が並列接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転てつ機の転換状態を示す入力信号に応じた信号を出力する転てつ表示入力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
駅構内などで列車運行の安全を確保する電子連動装置は、転てつ機や信号機などの遠隔の現場機器からその動作状態(現場機器が有するリレー接点の開閉状態)を示す入力信号を受信し、該入力信号が示す現場機器の動作状態に基づいて安全確保のための論理処理を行っている。かかる電子連動装置では、故障が発生しても該故障によって乗客が危険な状態に陥らないようにするフェールセーフ対策が施されており、現場機器の動作状態を入力する入力回路においても、フェールセーフな入力が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたフェールセーフ入力回路では、ノイズの影響を受け難くするために、閾値電圧以下を不感知とする閾値電圧設定回路を介して現場機器からの入力信号を取り込むとともに、閾値電圧設定回路が正常に動作しているか否かを検査する機能を備えている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された回路では、フェールセーフ検査信号がパルス的にオン制御されたとき以外には入力接点に電流が流れない。そのため、入力接点が閉成時には、連続して電流を流して接点表面の酸化膜を破壊して接点接触抵抗を増大させないようにする接点ウェッティング効果が期待できず、接触不良の可能性を低減して信頼性を高める観点からは問題があった。
【0005】
そこで、特許文献2に開示された、転てつ機の転換状態を示す信号を入力する接点入力回路(転てつ表示入力回路の一種)のように、閾値電圧設定回路の抵抗器の開放故障に対するフェールセーフ性を確保しつつ、接点の接触信頼性の向上を図った構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−080851号公報
【特許文献2】特開2008−126801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された接点入力回路では、検査信号がパルス的にオン制御されたときに流れる制御用電流と、検査信号がオフ制御されたときに流れる接点ウェッティング電流とがほぼ等しい。通常、制御用電流は大きな値が設定される。制御用電流と接点ウェッティング電流とがほぼ等しいため、検査信号がオフ制御されたときの消費電力が大きく、発熱量も大きいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、閾値電圧設定回路の抵抗器の開放故障に対するフェールセーフ性を確保し、且つ、検査信号がオフ制御されたときの消費電力を低減することのできる転てつ表示入力回路を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の形態は、
正入力端子と負入力端子との間に入力されている極性によって転てつ機の転換状態を示す入力信号に応じた出力信号を、検査信号が入力された際に出力する転てつ表示入力回路であって、
前記正入力端子と前記負入力端子との間に直列接続された第1抵抗器、第3抵抗器及び第4抵抗器と、
前記第4抵抗器に対して並列接続され、前記検査信号が入力された場合に前記第4抵抗器の通流をバイパスさせる第1回路部と、
前記第1回路部によるバイパス電流の有無に応じて、前記直列接続された第3抵抗器及び第4抵抗器に対して第2抵抗器を並列投入する第2回路部と、
を備え、
前記第2抵抗器を通じた電流の有無及び当該電流の極性に応じて、前記出力信号を出力する転てつ表示入力回路である。
【0010】
この第1の形態によれば、転てつ表示入力回路では、検査信号が入力されない場合には、正入力端子及び負入力端子間に直列接続された第1抵抗器、第3抵抗器及び第4抵抗器を経由する経路に、入力信号の極性に応じた向きの電流が流れる。一方、検査信号が入力された場合には、第4抵抗器の通流がバイパスされて、直列接続された第3抵抗器及び第4抵抗器に対して、第2抵抗器が並列投入される。この結果、検査信号が入力された場合、第2抵抗器には、入力信号の極性に応じた向きの電流が流れる。この第2抵抗器を通じた電流の有無及び当該電流の極性に応じた出力信号、つまり入力信号の極性に応じた出力信号を出力する。
【0011】
以上の回路動作により、検査信号の入力有無にかかわらず、常時、正入力端子と負入力端子との間に電流が流れて、接点の信頼性を維持するための接点ウェッティングがなされる。またこのとき、例えば、第4抵抗器の抵抗値を充分大きくすることで、検査信号が入力されていないときの電流(ウェッティング電流)を小さくすることができ、消費電力の低減を図ることができる。また、例えば、第3抵抗器が開放故障したときには、入力端子間に電流が流れない。つまり、入力信号が入力されない場合と同じ出力信号となるため、フェールセーフが実現される。
【0012】
より具体的な回路構成の例として、第2の形態として、第1の形態の転てつ表示入力回路であって
前記検査信号には、定位検査信号と反位検査信号とがあり、
前記第1回路部は、
第2フォトカプラの第2フォトダイオードと、前記定位検査信号によってオン/オフされる第3フォトカプラの第3フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して順方向に直列接続して有するとともに、直列接続された前記第2フォトダイオード及び前記第3フォトトランジスタに対して、第1ダイオードを逆並列に接続して有する第5回路部と、
前記反位検査信号によってオン/オフされる第4フォトカプラの第4フォトトランジスタと、第5フォトカプラの第5フォトダイオードとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して逆方向に直列接続して有するとともに、直列接続された前記第4フォトトランジスタ及び前記第5フォトダイオードに対して、第2ダイオードを逆並列に接続して有する第6回路部と、
を直列接続して有し、
前記第2回路部は、
第1フォトカプラの第1フォトダイオードと、前記第2フォトカプラの第2フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して順方向に直列接続して有し、前記入力信号が定位状態を示す極性の場合に前記第2抵抗器を並列投入する第3回路部と、
前記第5フォトカプラの第5フォトトランジスタと、第6フォトカプラの第6フォトダイオードとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して逆方向に直列接続して有し、前記入力信号が反位状態を示す極性の場合に前記第2抵抗器を並列投入する第4回路部と、
を並列接続して有し、
前記第1フォトカプラの第1フォトトランジスタがオン/オフされることで定位状態であることを示す出力信号を出力し、前記第6フォトカプラの第6フォトトランジスタがオン/オフされることで反位状態であることを示す出力信号を出力する、
転てつ表示入力回路を構成しても良い。
【0013】
また、他の具体的な回路構成の例として、第3の形態として、第1の形態の転てつ表示入力回路であって、
前記第1回路部は、第2フォトカプラの第2双方向ダイオードと、前記検査信号によってオン/オフされるフォトMOSリレーの双方向MOSFETと、第4フォトカプラの第4双方向ダイオードとを直接接続して有し、
前記第2回路部は、
第1フォトカプラの第1フォトダイオードと、前記第2フォトカプラの第2フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して順方向に直列接続して有し、前記入力信号が定位状態を示す極性の場合に前記第2抵抗器を並列投入する第3回路部と、
前記第4フォトカプラの第4フォトトランジスタと、第6フォトカプラの第6フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して逆方向に直列接続して有し、前記入力信号が反位状態を示す極性の場合に前記第2抵抗器を並列投入する第4回路部と、
を並列接続して有し、
前記第1フォトカプラの第1フォトトランジスタがオン/オフされることで定位状態であることを示す出力信号を出力し、前記第6フォトカプラの第6フォトトランジスタがオン/オフされることで反位状態であることを示す出力信号を出力する、
転てつ表示入力回路を構成しても良い。
【0014】
また、第4の形態として、第2又は第3の形態の転てつ表示入力回路であって、
前記第1〜第6フォトカプラそれぞれを、フォトモスリレーなどの光半導体素子に代えて構成した転てつ表示入力回路を構成しても良い。
【0015】
また、第5の形態として、第1〜第4の何れかの形態の転てつ表示入力回路であって、
前記第2抵抗器及び前記第3抵抗器は略同一の抵抗値を有してなる、
転てつ表示入力回路を構成しても良い。
【0016】
この第5の形態によれば、第2抵抗器と第3抵抗器とは略同一の抵抗値を有してなるため、検査信号が入力された場合には、第1抵抗器に流れる電流が、第3抵抗器及び第2抵抗器それぞれに均等に分流される。
これにより、第1回路部及び第2回路部の動作を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態における転てつ表示入力回路の接続状態を示すブロック図。
【図2】転てつ表示入力回路の回路図。
【図3】転てつ表示入力回路の動作説明図。
【図4】転てつ表示入力回路の動作説明図。
【図5】転てつ表示入力回路の動作説明図。
【図6】転てつ表示入力回路の動作説明図。
【図7】第2実施形態における転てつ表示入力回路の回路図。
【図8】転てつ表示入力回路の動作説明図。
【図9】転てつ表示入力回路の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0019】
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態を説明する。
【0020】
<接続構成>
図1は、第1実施形態の転てつ表示入力回路10Aの接続状態を示すブロック図である。図1によれば、転てつ表示入力回路10Aは、正入力端子11と、負入力端子12と、定位出力端子13と、反位出力端子14と、定位検査信号入力端子15と、反位検査信号入力端子16とを有している。
【0021】
正入力端子11及び負入力端子12は、入力回線を介して、転てつ機20が有するリレー接点で構成される転てつ表示接点に接続され、転てつ機20の転換状態に応じた極性の電圧が印加される。具体的には、定位転換状態では、規定電圧以上の大きさの順方向電圧(正極性)が印加され、反位転換状態では、規定電圧以上の大きさの逆方向電圧(負極性)が印加される。
【0022】
定位出力端子13及び反位出力端子14は、電子連動装置30に接続され、定位出力端子13から定位出力信号を出力し、反位出力端子14から反位出力信号を出力する。
【0023】
定位検査信号入力端子15及び反位検査信号入力端子16は、電子連動装置30に接続されており、定位検査信号入力端子15には定位検査信号が入力され、反位検査信号入力端子16には反位検査信号が入力される。
【0024】
この転てつ表示入力回路10Aは、定位検査信号が入力(オン)されているときには、転てつ機20が定位転換状態であるか否かを示す定位出力信号を定位出力端子13から出力し、反位検査信号が入力(オン)されているときには、転てつ機20が反位転換状態であるか否かを示す反位出力信号を反位出力端子14から出力する。
【0025】
<回路構成>
図2は、第1実施形態における転てつ表示入力回路10Aの回路図である。図2によれば、転てつ表示入力回路10Aは、第1抵抗器R1と、第2抵抗器R2と、第3抵抗器R3と、第4抵抗器R4と、第1回路部21と、第2回路部22とを備えて構成される。具体的には、正入力端子11と負入力端子12との間に、第1抵抗器R1、第3抵抗器R3、及び、第4抵抗器R4が直列接続され、第4抵抗器R4に対して、第1回路部21が並列接続され、直列接続された第3抵抗器R3及び第4抵抗器R4に対して、直列接続された第2抵抗器R2及び第2回路部22が並列接続されている。
【0026】
第1回路部21は、第5回路部25及び第6回路部26が直列接続されて構成されている。第5回路部25は、第2フォトカプラP2の第2フォトダイオードPd2と第3フォトカプラP3の第3フォトトランジスタPt3とが、正入力端子11及び負入力端子12間の極性に対して順方向に直列接続されているとともに、直列接続された第2フォトダイオードPd2及び第3フォトトランジスタPt3に対して、逆電圧保護用の第1ダイオードD1が逆並列に接続されて構成されている。
【0027】
第6回路部26は、第4フォトカプラP4の第4フォトトランジスタPt4と第5フォトカプラP5の第5フォトダイオードPd5とが、正入力端子11及び負入力端子12間の極性に対して逆方向に直列接続されているとともに、直列接続された第4フォトトランジスタPt4及び第5フォトダイオードPd5に対して、逆電圧保護用の第2ダイオードD2が逆並列に接続されて構成されている。
【0028】
第2回路部22は、第3回路部23と、第4回路部24とが並列接続されて構成されている。第3回路部23は、第1フォトカプラP1の第1フォトダイオードPd1と第2フォトカプラP2の第2フォトトランジスタPt2とが、正入力端子11及び負入力端子12間の極性に対して順方向に直列接続されて構成されている。第4回路部24は、第5フォトカプラP5の第5フォトトランジスタPt5と第6フォトカプラP6の第6フォトダイオードPd6とが、正入力端子11及び負入力端子12間の極性に対して逆方向に直列接続されて構成されている。
【0029】
定位出力回路部31は、第1フォトカプラP1の第1フォトトランジスタPt1のコレクタが、定位出力端子13、及び、第5抵抗器R5を介して電源(プルアップ電圧)に接続され、エミッタが接地されて構成されている。反位出力回路部32は、第6フォトカプラP6の第6フォトトランジスタPt6のコレクタが、反位出力端子14、及び、第8抵抗器R8を介して電源(プルアップ電圧)に接続され、エミッタが接地されている。
【0030】
定位入力回路部33は、第3フォトカプラP3の第3フォトダイオードPd3のアノードが第6抵抗器R6を介して電源(プルアップ電圧)に接続され、カソードが定位検査信号入力端子15に接続されて構成されている。反位入力回路部34は、第4フォトカプラP4の第4フォトダイオードPd4のアノードが第7抵抗器R7を介して電源(プルアップ電圧)に接続され、カソードが反位検査信号入力端子16に接続されて構成されている。
【0031】
このように構成される転てつ表示入力回路10Aにおいて、第1抵抗器R1、及び、第3抵抗器R3は、検査信号が入力(オン)されたときの閾値電圧設定回路を形成している。すなわち、後述するとおり、定位検査信号或いは反位検査信号が入力された場合には、第1回路部21が作動して第4抵抗器R4の通流がバイパスされる。また、第2抵抗器R2は、第3抵抗器R3とほぼ同じ抵抗値の抵抗器で構成される。この結果、正入力端子11及び負入力端子12間に入力された入力信号は、概略、第1抵抗器R1及び第3抵抗器R3間で分圧するように作用するため、第1抵抗器R1及び第3抵抗器R3は、閾値電圧設定回路として機能するのである。
【0032】
また、この第1抵抗器R1、及び、第3抵抗器R3によって、入力回線に誘起されるノイズにより正入力端子11及び負入力端子12の間に発生するノイズ電圧を分圧し、このノイズ電圧に起因する第3回路部23、或いは、第4回路部24の誤動作を防止している。
【0033】
また、第2抵抗器R2と第3抵抗器R3との抵抗値はほぼ同じである(「ほぼ同じ」とするのは、抵抗値が完全に同じ抵抗器は物理的に作成困難であるからである)。これにより、第1抵抗器R1に流れる電流が、第3抵抗器R3及び第2抵抗器R2それぞれにほぼ均等に分流される。
【0034】
<動作>
次に、転てつ表示入力回路10Aの動作を説明する。
【0035】
(A)転てつ機20が定位転換状態の場合
転てつ機が定位となって転てつ表示出力接点が定位側に構成されると、正入力端子11と負入力端子12との間に順方向電圧が印加される。
【0036】
(A−1)定位検査信号がオフ(ハイレベル)
この状態で、図3に示すように、定位検査信号がオフ(ハイレベル)の場合には、第3フォトダイオードPd3に電流が流れず、第3フォトトランジスタPt3はオフとなる。このため、第2フォトダイオードPd2に電流が流れず、第2フォトトランジスタPt2はオフとなる。そして、第1フォトダイオードPd1に電流が流れず、第1フォトトランジスタPt1はオフとなる。その結果、定位出力端子13から出力される定位出力信号は「ハイレベル」となる。またこのとき、第1抵抗器R1、第3抵抗器R3及び第4抵抗器R4の経路に、正入力端子11及び負入力端子12の間の印加電圧に応じた電流が流れ、接点の信頼性を維持するための接点ウェッティングがなされる。
【0037】
(A−2)定位検査信号がオン(ローレベル)
また、図4に示すように、定位検査信号がオン(ローレベル)の場合には、第3フォトダイオードPd3に電流が流れ、第3フォトトランジスタPt3がオンとなる。このため、第4抵抗器R4の通流がバイパスされて、第1抵抗器R1、第3抵抗器R3、第2フォトダイオードPd2、第3フォトトランジスタPt3、及び、第2ダイオードD2の経路に電流が流れ、第2フォトトランジスタPt2がオンとなる。第2フォトトランジスタPt2がオンとなってことにより、第2抵抗器R2が第3抵抗器R3に対して並列投入される。そして、第1抵抗器R1、第2抵抗器R2、第1フォトダイオードPd1、及び、第2フォトトランジスタPt2の経路に電流が流れ、第1フォトトランジスタPt1がオンとなる。その結果、定位出力端子13から出力される定位出力信号は「ローレベル」となる。
【0038】
(A−3)
一方、順方向電圧が印加されない、或いは、第3抵抗器R3が開放故障している場合には、第2フォトダイオードPd2に電流が流れないため、第2フォトトランジスタPt2はオフとなる。このため、定位検査信号のオン/オフ制御に関わらず、第1フォトダイオードPd1には電流が流れず、第1フォトトランジスタPt1はオフとなり、定位出力信号は「ハイレベル」となる。
【0039】
(B)転てつ機20が反位転換状態
転てつ機が反位となって転てつ表示出力接点が反位側に構成されると、正入力端子11と負入力端子12との間に逆方向電圧が印加される。
【0040】
(B−1)反位検査信号がオフ(ハイレベル)の場合
この状態で、図5に示すように、反位検査信号がオフ(ハイレベル)の場合には、第4フォトダイオードPd4に電流が流れず、第4フォトトランジスタPt4はオフとなる。このため、第5フォトダイオードPd5に電流が流れず、第5フォトトランジスタPt5はオフとなる。そして、第6フォトダイオードPd6に電流が流れず、第6フォトトランジスタPt6はオフとなる。その結果、反位出力端子14から出力される反位出力信号は「ハイレベル」となる。またこのとき、第4抵抗器R4、第3抵抗器R3、第1抵抗器R1の経路に、正入力端子11及び負入力端子12の間の印加電圧に応じた電流が流れ、接点の信頼性を維持するための接点ウェッティングがなされる。
【0041】
(B−2)反位検査信号がオン(ローレベル)
また、図6に示すように、反位検査信号がオン(ローレベル)の場合には、第4フォトダイオードPd4に電流が流れ、第4フォトトランジスタPt4がオンとなる。このため、第4抵抗器R4の通流がバイパスされて、第5フォトダイオードPd5、第4フォトトランジスタPt4、第1ダイオードD1、第3抵抗器R3、及び、第1抵抗器R1の経路に電流が流れ、第5フォトトランジスタPt5がオンとなる。第5フォトトランジスタPt5がオンとなったことにより、第2抵抗器R2が第3抵抗器R3に対して並列投入される。そして、第6フォトダイオードPd6、第5フォトトランジスタPt5、第2抵抗器R2、及び、第1抵抗器R1の経路に電流が流れ、第6フォトトランジスタPt6がオンとなる。その結果、反位出力端子14から出力される反位出力信号は「ローレベル」となる。
【0042】
(B−3)
一方、逆方向電圧が印加されない、或いは、第3抵抗器R3が開放故障している場合には、第5フォトダイオードPd5に電流が流れないため、第5フォトトランジスタPt5はオフとなる。このため、反位検査信号のオン/オフ制御に関わらず、第6フォトダイオードPd6には電流が流れず、第6フォトトランジスタPt6はオフとなり、反位出力信号は「ハイレベル」となる。
【0043】
<作用・効果>
このように、転てつ表示入力回路10Aによれば、定位検査信号をオン/オフ制御したとき、これに対応して定位出力信号がローレベル/ハイレベルに変化するならば、第3抵抗器R3の開放故障が無く、且つ、転てつ機20が転換状態にあることを示す転てつ表示情報が正しく伝達されていると判断することができる。また、定位検査信号をオン/オフ制御しても、定位出力信号がハイレベルに固定されているならば、第3抵抗器R3が開放故障している可能性があると判断できる。
【0044】
一方、反位検査信号についても同様に、反位検査信号をオン/オフ制御したとき、これに対応して反位出力信号がローレベル/ハイレベルに変化するならば、第3抵抗器R3の開放故障が無く、且つ、転てつ機20が反位転換状態にあることを示す転てつ表示情報が正しく伝達されていると判断することができる。また、反位検査信号をオン/オフ制御しても、反位出力信号がハイレベルに固定されているならば、第3抵抗器R3が開放故障している可能性があると判断できる。
【0045】
また、定位転換状態/反位転換状態の何れの場合でも、転てつ機20のリレー接点が構成されているときには、定位検査信号/反位検査信号のオン/オフ制御に関わらず、正入力端子11及び負入力端子12の間には常に電流が流れて接点ウェッティングがなされる。
【0046】
またこのとき、定位検査信号/反位検査信号がオフ制御のときに正入力端子11及び負入力端子12の間に流れる電流(ウェッティング電流)の大きさは、第4抵抗器R4の抵抗値によって決まる。このため、第4抵抗器R4の抵抗値を大きくすることで、定位検査信号/反位検査信号がオフ制御時に流れる電流(ウェッティング電流)を小さくし、消費電力の低減を図ることができる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、上述の第1実施形態の転てつ表示入力回路10Aにおいて、定位検査信号入力端子15及び反位検査信号入力端子16を共通化し、定位検査信号及び反位検査信号を1つの検査信号として実現した実施形態である。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同一の要素については同符号を付し、詳細な説明を省略或いは簡略する。
【0048】
<構成>
図7は、第2実施形態における転てつ表示入力回路10Bの回路図である。図7によれば、転てつ表示入力回路10Bは、正入力端子11と、負入力端子12と、定位出力端子13と、反位出力端子14と、共通検査信号入力端子17とを有している。
【0049】
共通検査信号入力端子17は、電子連動装置30に接続され、共通検査信号が入力される。そして、転てつ表示入力回路10Bは、検査信号が入力(オン)されているときには、転てつ機20が定位転換状態であるか否かを示す定位出力信号を定位出力端子13から出力するとともに、転てつ機20が反位転換状態であるか否かを示す反位出力信号を反位出力端子14から出力する。
【0050】
転てつ表示入力回路10Bは、第1抵抗器R1と、第2抵抗器R2と、第3抵抗器R3と、第4抵抗器R4と、第1回路部41と、第2回路部42と、定位出力回路部31と、反位出力回路部32と、共通入力回路部35とを備えて構成される。具体的には、正入力端子11と負入力端子12との間に、第1抵抗器R1、第3抵抗器R3、及び、第4抵抗器R4が直列接続され、第4抵抗器R4に対して第1回路部41が並列接続され、直列接続された第3抵抗器R3及び第4抵抗器R4に対して、直列接続された第2抵抗器R2及び第2回路部42が並列接続されている。
【0051】
第1回路部41は、第7フォトカプラP7の第7双方向ダイオードPd7と、フォトMOSリレーP8の双方向MOSFETPt8と、第9フォトカプラP9の第9双方向ダイオードPd9とが直列接続されて構成されている。
【0052】
第2回路部42は、第3回路部43及び第4回路部44が並列接続されて構成されている。第3回路部43は、第1フォトダイオードPd1と第7フォトカプラP7の第7フォトトランジスタPt7とが、正入力端子11及び負入力端子12の極性に対して順方向に直列接続されて構成されている。第4回路部44は、第9フォトカプラP9の第9フォトトランジスタPt9と第6フォトダイオードPd6とが、正入力端子11及び負入力端子12の極性に対して逆方向に直列接続されて構成されている。
【0053】
共通入力回路部35は、フォトMOSリレーP8のフォトダイオードPd8のアノードが第6抵抗器R6を介して電源(プルアップ電圧)に接続され、カソードが共通検査信号入力端子17に接続されて構成されている。
【0054】
<動作>
次に、転てつ表示入力回路10Bの動作を説明する。
【0055】
(A)転てつ機20が定位転換状態の場合
転てつ機20が定位となって転てつ表示出力接点が定位側に構成されると、正入力端子11と負入力端子12との間に順方向電圧が印加される。
【0056】
(A−1)共通検査信号がオフ(ハイレベル)
この状態で、図8に示すように、共通検査信号がオフ(ハイレベル)の場合には、第8フォトダイオードPd8に電流が流れず、双方向MOSFETPt8はオフとなる。このため、第7双方向ダイオードPd7、及び、第9双方向ダイオードPd9にともに電流が流れず、第7フォトトランジスタPt7、及び、第9フォトトランジスタPt9は、ともにオフとなる。そして、第1フォトダイオードPd1、及び、第6フォトダイオードPd6にともに電流が流れず、第1フォトトランジスタPt1、及び、第6フォトトランジスタPt6は、ともにオフとなる。その結果、定位出力端子13から出力される定位出力信号、及び、反位出力端子14から出力される反位出力信号は、ともに「ハイレベル」となる。
【0057】
(A−2)検査信号がオン(ローレベル)
また、図9に示すように、共通検査信号がオン(ローレベル)の場合には、第8フォトダイオードPd8に電流が流れ、双方向MOSFETPt8がオンとなる。このため、第4抵抗器R4の通流がバイパスされて、第1抵抗器R1、第3抵抗器、第7双方向ダイオードPd7、双方向MOSFETPTt8、及び、第9双方向ダイオードPd9の経路に電流が流れる。このとき、第7双方向ダイオードPd7、及び、第9双方向ダイオードPd9には、順方向に電流が流れる。第7双方向ダイオードPd7及び第9双方向ダイオードPd9に通流するため、第7フォトトランジスタPt7及び第9フォトトランジスタPt9がともにオンとなり、第2抵抗器R2が並列投入されるが、順方向の電流であるために、第9フォトトランジスタPt9には電流が流れず、第7フォトトランジスタPt7のみに電流が流れることになる。このため、定位出力信号が「ローレベル」となるとともに、反位出力信号が「ハイレベル」となる。
【0058】
(B)転てつ機20が反位転換状態の場合
一方、転てつ機20が反位となって転てつ表示出力接点が反位側に構成されると、正入力端子11と負入力端子12との間に逆方向電圧が印加される。
【0059】
(B−1)共通検査信号がオフ(ハイレベル)
不図示であるが、この状態で、共通検査信号がオフ(ハイレベル)の場合には、定位転換状態の場合(図8参照)とほぼ同様に、双方向MOSFETPt8がオフとなるため、定位出力端子13から出力される定位出力信号、及び、反位出力端子14から出力される反位出力信号は、ともに「ハイレベル」となる。定位転換状態の場合と異なるのは、正入力端子11及び負入力端子12の間に、第4抵抗器R4、第3抵抗器R3、及び、第1抵抗器R1の経路で電流が流れる点である。
【0060】
(B−2)共通検査信号がオン(ローレベル)
一方、共通検査信号がオン(ローレベル)の場合には、双方向MOSFETPt8がオンとなり、定位転換状態の場合(図9参照)とは逆方向に、第9双方向ダイオードPd9、双方向MOSFETPt8、第7双方向ダイオードPd7、第3抵抗器R3、及び、第1抵抗器R1の順に電流が流れる。つまり、第7双方向ダイオードPd7、及び、第9双方向ダイオードPd9には、逆方向の電流が流れるため、第7フォトトランジスタPt7には電流が流れず、第9フォトトランジスタPt9にのみ電流が流れることになる。この結果、定位出力信号が「ハイレベル」となるとともに、反位出力信号が「ローレベル」となる。
【0061】
<作用・効果>
このように、転てつ表示入力回路10Bによれば、共通検査信号をオン/オフ制御したとき、これに対応して、定位出力信号及び反位出力信号の一方がローレベル/ハイレベルに変化するならば、第3抵抗器R3の開放故障が無く、且つ、転てつ機20が反位転換状態にあることを示す転てつ表示情報が正しく伝達されていると判断することができる。また、共通検査信号をオン/オフ制御しても、定位出力信号及び反位出力信号がともにハイレベルに固定されているならば、第3抵抗器R3が開放故障している可能性があると判断することができる。
【0062】
また、転てつ機20のリレー接点が構成されているときには、共通検査信号のオン/オフ制御に関わらず、正入力端子11及び負入力端子12の間に常に電流が流れて接点ウェッティングがなされる。またこのときに流れる電流(ウェッティング電流)の大きさは、第4抵抗器R4の抵抗値によって決まるため、第4抵抗器R4の抵抗値を大きくすることで、共通検査信号がオフ制御時に流れる電流(ウェッティング電流)を小さくし、消費電力の低減を図ることができる。
【0063】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の二つの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0064】
(1)
例えば、第1フォトトランジスタPt1で構成した定位出力回路31、又は、第6フォトトランジスタPt6で構成した反位出力回路32は、何れもコレクタ負荷型としたが、エミッタ負荷型としても良い。
【0065】
(2)
また、第1フォトカプラP1〜第6フォトカプラP6のうちの何れか1つ以上のフォトカプラに代えて、フォトモスリレーなどの他の種類の光半導体素子を使用しても良い。
【0066】
(3)
また、入力信号は転てつ機20からの転てつ表示入力に限らず、極性によって異なる値を表す信号であれば何れでも良い。
【符号の説明】
【0067】
10A、10B 転てつ表示入力回路
11 正入力端子、12 負入力端子、13 定位出力端子、14 反位出力端子
15 定位検査信号入力端子、16 反位検査信号入力端子、
17 検査信号入力端子
R1〜R8 抵抗器
P1〜P7,P9 フォトカプラ、P8 フォトMOSリレー
Pd1〜Pd6,Pd8 フォトダイオード、Pd7,Pd9 双方向ダイオード
Pt1〜Pt7,Pt9 フォトトランジスタ、Pt8 双方向MOSFET
D1,D2 ダイオード
20 転てつ機
30 電子連動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正入力端子と負入力端子との間に入力されている極性によって転てつ機の転換状態を示す入力信号に応じた出力信号を、検査信号が入力された際に出力する転てつ表示入力回路であって、
前記正入力端子と前記負入力端子との間に直列接続された第1抵抗器、第3抵抗器及び第4抵抗器と、
前記第4抵抗器に対して並列接続され、前記検査信号が入力された場合に前記第4抵抗器の通流をバイパスさせる第1回路部と、
前記第1回路部によるバイパス電流の有無に応じて、前記直列接続された第3抵抗器及び第4抵抗器に対して第2抵抗器を並列投入する第2回路部と、
を備え、
前記第2抵抗器を通じた電流の有無及び当該電流の極性に応じて、前記出力信号を出力する転てつ表示入力回路。
【請求項2】
前記検査信号には、定位検査信号と反位検査信号とがあり、
前記第1回路部は、
第2フォトカプラの第2フォトダイオードと、前記定位検査信号によってオン/オフされる第3フォトカプラの第3フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して順方向に直列接続して有するとともに、直列接続された前記第2フォトダイオード及び前記第3フォトトランジスタに対して、第1ダイオードを逆並列に接続して有する第5回路部と、
前記反位検査信号によってオン/オフされる第4フォトカプラの第4フォトトランジスタと、第5フォトカプラの第5フォトダイオードとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して逆方向に直列接続して有するとともに、直列接続された前記第4フォトトランジスタ及び前記第5フォトダイオードに対して、第2ダイオードを逆並列に接続して有する第6回路部と、
を直列接続して有し、
前記第2回路部は、
第1フォトカプラの第1フォトダイオードと、前記第2フォトカプラの第2フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して順方向に直列接続して有し、前記入力信号が定位状態を示す極性の場合に前記第2抵抗器を並列投入する第3回路部と、
前記第5フォトカプラの第5フォトトランジスタと、第6フォトカプラの第6フォトダイオードとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して逆方向に直列接続して有し、前記入力信号が反位状態を示す極性の場合に前記第2抵抗器を並列投入する第4回路部と、
を並列接続して有し、
前記第1フォトカプラの第1フォトトランジスタがオン/オフされることで定位状態であることを示す出力信号を出力し、前記第6フォトカプラの第6フォトトランジスタがオン/オフされることで反位状態であることを示す出力信号を出力する、
請求項1に記載の転てつ表示入力回路。
【請求項3】
前記第1回路部は、第2フォトカプラの第2双方向ダイオードと、前記検査信号によってオン/オフされるフォトMOSリレーの双方向MOSFETと、第4フォトカプラの第4双方向ダイオードとを直接接続して有し、
前記第2回路部は、
第1フォトカプラの第1フォトダイオードと、前記第2フォトカプラの第2フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して順方向に直列接続して有し、前記入力信号が定位状態を示す極性の場合に前記第2抵抗器を並列投入する第3回路部と、
前記第4フォトカプラの第4フォトトランジスタと、第6フォトカプラの第6フォトトランジスタとを、前記正入力端子及び前記負入力端子の極性に対して逆方向に直列接続して有し、前記入力信号が反位状態を示す極性の場合に前記だ2抵抗器を並列投入する第4回路部と、
を並列接続して有し、
前記第1フォトカプラの第1フォトトランジスタがオン/オフされることで定位状態であることを示す出力信号を出力し、前記第6フォトカプラの第6フォトトランジスタがオン/オフされることで反位状態であることを示す出力信号を出力する、
請求項1に記載の転てつ表示入力回路。
【請求項4】
前記第1〜第6フォトカプラそれぞれを、フォトモスリレーなどの光半導体素子に代えて構成した請求項2又は3に記載の転てつ表示入力回路。
【請求項5】
前記第2抵抗器及び前記第3抵抗器は略同一の抵抗値を有してなる、
請求項1〜4の何れか一項に記載の転てつ表示入力回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95288(P2013−95288A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240279(P2011−240279)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)