説明

転写ベルト及び画像形成装置

【課題】記録媒体の搬送方向における濃度変動の発生が抑制される転写ベルトを提供する。
【解決手段】弾性体を含んで構成された無端のベルト基材31と、前記ベルト基材の外周面上に配置されており、樹脂の量が相対的に少ない部分33が周方向及び幅方向に散在している樹脂被覆層32と、を有する転写ベルト21。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルト及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクロ専用の画像形成装置として、電子写真感光体(以下、単に感光体という場合がある)上にトナー像を形成し、感光体上のトナー像を転写ベルト上に配置された紙等の記録媒体上に転写した後、定着を行う画像形成装置が知られている。かかる転写ベルトを用いて転写を行う画像形成装置では、簡易的に蛇行を防止する手段として、弾性体の転写ベルトを使用する方式が知られている。弾性体からなる転写ベルトを適切な伸張率に架け渡すことでベルトの張力により蛇行が補正される。
【0003】
一方、転写ベルトの表面は、紙詰まり等の発生時にトナーにより汚れる懸念があるため、クリーニングする必要がある。一般的に、転写ベルトの表面は、ゴム製のブレードでクリーニングするため、弾性体からなるベルト基材の表面を樹脂等で被覆して表面の摩擦抵抗を減らしたり、硬度を上げることで対応している。
【0004】
特許文献1では、経時で転写ベルトの速度が低下することを予測し、速度を調整する方法が提案されている。
特許文献2では、転写ベルトに両端部に規則的に設けた穴と、転写ベルトの端部の穴に対応するように駆動ロールに設けた突起によりキャタピラ状に形成し、駆動ロールで転写ベルトがスリップを起こさないように制御することが提案されている。
特許文献3では、表面の耐摩耗層の厚みが1.0〜15.0μmであり、且つベルト本体の耐摩耗層が積層される面の表面粗度が1.8〜15.0μmであり、耐摩耗層の表面粗度が1.8〜9.3μmである転写搬送ベルトが提案されている。
特許文献4では、基材弾性層及び表面層を少なくとも有し、前記表面層が、2種以上の離型性バインダーと、2種以上の離型性フィラーと、を含有する弾性ベルトが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−337721号公報
【特許文献2】特開平6−124026号公報
【特許文献3】特開平11−352802号公報
【特許文献4】特開2006−78800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、記録媒体の搬送方向における画像濃度の変動が抑制される転写ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1に係る発明は、弾性体を含んで構成された無端のベルト基材と、前記ベルト基材の外周面上に配置されており、樹脂の量が相対的に少ない部分がベルトの周方向及び幅方向に散在している樹脂被覆層と、を有する転写ベルトである。
請求項2に係る発明は、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、ベルトの周方向及び幅方向にそれぞれ予め定めた間隔で規則的に散在している請求項1に記載の転写ベルトである。
請求項3に係る発明は、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、ベルトの周方向よりも幅方向に長い間隔で存在している請求項2に記載の転写ベルトである。
請求項4に係る発明は、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、千鳥状に存在している請求項2又は請求項3に記載の転写ベルトである。
請求項5に係る発明は、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、前記樹脂被覆層に設けた穴によって形成されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の転写ベルトである。
請求項6に係る発明は、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、前記ベルト基材の外周面に設けた凸部によって形成されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の転写ベルトである。
請求項7に係る発明は、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、前記樹脂被覆層に配置した粒子によって形成されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の転写ベルトである。
請求項8に係る発明は、電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤によって現像してトナー像を形成する現像手段と、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の転写ベルトにより記録媒体を搬送し、前記電子写真感光体上に形成された前記トナー像を前記転写ベルトにより搬送された前記記録媒体上に転写させる転写手段と、前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着させる定着手段と、を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、樹脂被覆層に、樹脂の量が相対的に少ない部分がベルトの周方向及び幅方向に散在していない場合に比べ、記録媒体の搬送方向における画像濃度の変動が抑制される転写ベルトが提供される。
請求項2に係る発明によれば、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、ベルトの周方向及び幅方向に不規則に存在している場合に比べ、記録媒体の搬送方向における画像濃度の変動が抑制される転写ベルトが提供される。
請求項3に係る発明によれば、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、ベルトの幅方向と周方向で同じ間隔又は周方向よりも幅方向に短い間隔で存在している場合に比べ、記録媒体の搬送方向における画像濃度の変動が抑制される転写ベルトが提供される。
請求項4に係る発明によれば、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、格子状に配置されている場合に比べ、記録媒体の搬送方向における画像濃度の変動が抑制される転写ベルトが提供される。
請求項5、6、7に係る発明によれば、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が上記以外の手段によって形成されている場合に比べ、前記樹脂の量が相対的に少ない部分が容易に形成される転写ベルトが提供される。
請求項8に係る発明によれば、前記転写ベルトを備えていない場合に比べ、記録媒体の搬送方向における画像濃度の変動が抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る転写ベルトを備えた画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る転写ベルトの一例を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る転写ベルトの一例について断面の一部を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る転写ベルトの他の例について断面の一部を示す概略図である。
【図5】本実施形態に係る転写ベルトの他の例について断面の一部を示す概略図である。
【図6】樹脂被覆層において樹脂の量が相対的に少ない部分の配置パターンの一例を示す概略図である。
【図7】樹脂被覆層において樹脂の量が相対的に少ない部分の配置パターンの他の例を示す概略図である。
【図8】記録媒体の搬送方向に発生する画像濃度の変動の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本実施形態に係る転写ベルト及び画像形成装置について説明する。
ゴム等の弾性体により構成されたベルト基材と樹脂被覆層との複層構造を持った転写ベルトでは、ベルト基材の伸張に表層の樹脂被覆層が追従できず、樹脂被覆層に亀裂(ひび割れ)が発生し易い。このような亀裂が発生すると、ベルト全体の剛性が下がり、プリント時にベルトが転写部で微小振動し、例えば図8に示されるように記録紙Pにトナー画像Qを形成したときに、スミアと呼ばれる画像の滲み(濃度変動)が生じることがある。
このような濃度変動を防止するためには、例えば、検知用画像をベルト上に形成し、それをセンサ等で読み取ってフィードバック制御する方法等が知られているが、装置コストが大きく上昇してしまう。
【0011】
本発明者らは、樹脂被覆層の種類や厚み等を変えた実験の結果、樹脂被覆層に微小な亀裂が生じれば必ず用紙の搬送方向に濃度変動が発生するのではなく、濃度変動が発生しやすい亀裂の形態があることに気が付いた。
濃度変動が発生する原因の1つは亀裂の密度である。転写部内で搬送方向の密度が密に発生しているほど、濃度変動レベルが悪い。
更にもう1つは、ベルトの幅方向(軸方向)の亀裂の長さである。樹脂被覆層における亀裂がベルトの幅方向に長いほど濃度変動レベルが悪い。
【0012】
画像における濃度変動は、転写部内での転写ベルトの移動方向(すなわち、記録媒体の搬送方向)への微小振動により発生すると推測される。
一方、転写ベルトに亀裂が発生している部分は、亀裂が発生していない部分に対して剛性が低下しているため伸縮しやすい状態にある。
これらの検討から、樹脂被覆層の亀裂の密度が密な部分では、転写部内で転写ベルトの伸縮が生じ易く、亀裂がベルトの幅方向に長いほど伸縮量が増大することより濃度変動が生じ易いと考えられる。
しかし、転写ベルトの樹脂被覆層における亀裂は、製造上の様々なバラツキにより生じる剛性ムラ(例えば、厚さムラ等)の部分に発生するため、亀裂の形態を制御することは難しい。
【0013】
そこで、本発明者らは、樹脂被覆層の剛性が弱い部分として、樹脂の量が相対的に少ない部分を予め設けて応力を集中させることで、樹脂被覆層を形成する際に生じる気泡や異物による微小な亀裂同士が繋がることが抑制されることを見出した。
すなわち、本実施形態に係る転写ベルトは、弾性体を含んで構成された無端のベルト基材と、前記ベルト基材の外周面上に配置されており、樹脂の量が相対的に少ない部分(適宜「樹脂少量部」という)がベルトの周方向及び幅方向に散在している樹脂被覆層と、を有する。このような樹脂少量部を樹脂被覆層の面内に予め散在させておけば、樹脂少量部は剛性の弱い部分となって応力が集中し、気泡等による微小な亀裂に対する応力が緩和される。そのため、この転写ベルトを備えた画像形成装置によって画像形成を繰り返すことで樹脂被覆層に生じる亀裂形態をある程度制御することができる。
【0014】
[画像形成装置]
まず、本実施形態に係る転写ベルトが適用される画像形成装置について説明する。
図1は、本実施形態の転写ベルトを備えた画像形成装置の構成を概略的に示している。図1に示す画像形成装置100は、矢印A方向に回転する電子写真感光体10の周囲に、電子写真感光体10の表面を帯電する帯電器11、帯電した電子写真感光体10の表面に露光ビームBmを照射して静電潜像を形成するレーザ露光器12、トナーを収容し、電子写真感光体10上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像器13、転写部15における静電転写に先立ち電子写真感光体10上のトナー像を帯電する転写前帯電器14、電子写真感光体10上に形成されたトナー像を転写部15において記録媒体である記録紙(用紙)Pに転写する転写ユニット20、電子写真感光体10上の残留トナーを除去するクリーニングブレード17a、潤滑材14を電子写真感光体10の表面に供給する繊維状部材16(ロール状)を備えたクリーニング手段17等が配置されている。さらには、用紙Pに転写された未定着トナー像を定着する定着器60、各装置(各部)の動作を制御する制御部(不図示)を備えている。
【0015】
転写ユニット20は、駆動ロール22と従動ロール23とによって張力を持って架け渡された転写ベルト21と、転写ベルト21の内側に配設され、転写ベルト21を介して電子写真感光体10に押圧される転写ロール24とを備えている。転写ユニット20は、矢印B方向に回転する転写ベルト21により転写部15に搬送されてくる用紙Pに電子写真感光体10上のトナー像を転写する機能と、転写部15においてトナー像が転写された用紙Pを定着器60まで搬送する機能とを有している。また、駆動ロール22を通過した後に転写ベルト21の表面上の付着物を掻き取るクリーニングブレード25が設けられている。
【0016】
また、本実施形態の画像形成装置は、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを予め定めたタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送された用紙Pを予め定めたのタイミングで転写部15に送り込むレジストロール54、レジストロール54から送り出された用紙Pを転写部15に導くガイド55、転写ユニット20によりトナー像が転写されて搬送されてくる用紙Pを定着器60へ導く定着入口ガイド56等を備えている。
【0017】
[転写ベルト]
ここで、本実施形態に係る転写ベルトについて説明する。図2は、本実施形態に係る転写ベルトの一例を示している。本実施形態に係る転写ベルト21は、弾性体を含んで構成された無端のベルト基材31と、ベルト基材31の外周面上に配置されており、樹脂の量が相対的に少ない部分33がベルトの周方向R及び幅方向Wに散在している樹脂被覆層32と、を有する。
【0018】
<ベルト基材>
本実施形態に係る転写ベルト21のベルト基材31は主に弾性体によって構成される。ベルト基材31を構成する弾性体としては、加硫ゴム、熱可塑性エラストマーが挙げられる。
原料ゴムとしては、一般的なジエン系ゴム、例えばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IIR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM,ANM)、クロロプレン(CR)、ヒドリンゴム(ECO)、NBR―EPDMブレンド物等が挙げられるが、比較的剛性が高く、それ自体が半導電性に近い体積抵抗率を有し、成型型内での流動性が良好であるという観点から、ニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、ポリウレタンゴム(PUR)などが望ましい。
一方、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン−ブタジエントリブロック系、ポリオレフィン系などが用いられる。このような熱可塑性エラストマーを使用するとリサイクルにも対応し、環境上望ましい。
ベルト基材31の材料としては、一種類である必要はなく、二種以上の材料をブレンドしてもよい。例えば、難燃性クロロプレンゴム(CR)と耐オゾン劣化の高いEPDMとをブレンドした材料を用いてもよい。
【0019】
ベルト基材31には、導電性フィラーや絶縁性フィラーを添加してベルト基材31の体積抵抗率を調整してもよい。
各フィラーの形状としては、粒子状、長繊維状など任意の形状のものが使用される。
導電性フィラーとしては、カーボンブラックのほか、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ、グラファイト、LiClO、LiAsFなどの金属塩、各種4級アンモニウム塩などが挙げられる。絶縁性フィラーとしてはシリカ、酸化亜鉛(亜鉛華)などが挙げられる。
【0020】
更に、ベルト基材31には上記の成分以外に以下のようなゴム用配合原料を使用してもよい。
例えば充填剤として、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等、クレー、タルク、シリカ等、また、ゴム用薬品として、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、プロセスオイル等、着色剤として、各種顔料等が挙げられる。
【0021】
ベルト基材31の製法については特に限定されないが、例えば以下のように製造される。
クロロプレンゴム(CR)とEPDMとをブレンドした材料を例に挙げると、ベルト基材31を製造するには、クロロプレンゴム、EPDMに対し例えば導電性フィラーを混入分散させた後これらのクロロプレンゴムとEPDMとをバンバリミキサーで混練させ、加硫剤,加硫促進剤、発泡剤を加えて押し出し成形を行う。
上記混練したベルト基材31を押出成形する場合には、加硫マンドレルと呼ばれる、ベルト内径と同サイズの外径を持つ金属製のシリンダに混練したベルト基材31を覆い被せた状態で予め定めた条件(例えば150℃で約1時間)にて加硫させる。次いで、必要とするモジュラスに応じて時間を変更しながら予め定めた条件(例えば110℃で約15時間)にて二次加硫を行う。その後、研磨用マンドレルにベルト基材31を被せてベルト基材31の内周面と外周面とを研磨し、表面の平滑性を得るようにすればよい。
ベルト基材31の厚みは、転写ベルトとしての強度を保持するとともに張架時ベルト剛性保持、永久伸び変化抑制、ベルト研磨時の破損・破れ・表面平滑性保持の観点から、100μm以上1000μm以下、より好ましくは300μmから600μmとすることが望ましい。
【0022】
<樹脂被覆層>
樹脂被覆層32は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアクリル樹脂などを結着樹脂とし、望ましくはフィラー、代表的には潤滑性フィラー及び導電性フィラーを分散させて構成される。樹脂被覆層32には、樹脂の量が相対的に少ない部分(樹脂少量部)33がベルトの周方向R及び幅方向Wに散在している。なお、本明細書において、樹脂少量部33が「散在している」とは、樹脂被覆層32において樹脂少量部33同士が繋がることなく規則的に又は不規則に存在していることを意味する。具体的には樹脂少量部33が100μm以上500μm以下の平均間隔で存在していることが望ましく、また、10個/m以上10個/m以下の密度で存在していることが望ましい。
また、平面視における樹脂少量部33の1箇所当たりの大きさは、剛性が低下し過ぎず、亀裂の成長を効果的に抑制する観点から、最大長が100μm以上500μm以下となることが望ましい。
【0023】
樹脂被覆層に含まれる潤滑性フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ化化合物の樹脂粉体などが用いられ、必要に応じて界面活性剤を分散させた形で用いられる。
一方、導電性フィラーとしては、例えばカーボンブラック、ホワイトカーボン、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ケイ素アンチモン、酸化アルミニウムのような金属酸化物などが挙げられる。
【0024】
導電性フィラーの充填量としては適宜選定して差し替えないが、次の要件を満たすことが望ましい。
(1)樹脂被覆層32の体積抵抗率は1014Ω・cm未満であること。
(2)転写ベルト21の樹脂被覆層未形成時の抵抗値をR、樹脂被覆層形成後の抵抗値をRとした場合に、R≧Rを満たし、かつ、10Ω≦R≦1011Ωを満たすこと。
【0025】
樹脂被覆層32の製造方法も特に限定されないが、例えば、樹脂中にフィラーを混入して分散させ、ディップコート、スプレーコート、静電塗装、ロールコート等により、ベルト基材31上に塗布して乾燥させればよい。
樹脂被覆層32の表面粗さの調整については、必要に応じて研磨工程(研磨用マンドレルに転写ベルト21を被せて当該ベルト表面を研磨)にて樹脂被覆層32の表面を研磨するようにすればよい。
【0026】
樹脂被覆層32の膜厚は、望ましくは3μm以上20μm以下、より望ましくは4μm以上10μm以下に設定される。樹脂被覆層32の膜厚が3μm以上であれば、機械的強度に必要な耐久性が得られ、クリーニング装置による機械的摩耗により樹脂被覆層32が剥がれることが抑制される。一方、樹脂被覆層32の膜厚が20μm以下であれば、被覆材料の塗布工程におけるコスト上昇が抑制され、剪断力により樹脂被覆層32が剥がれ難く、抵抗環境変動の影響が大きくなることが抑制される。
【0027】
樹脂被覆層32における樹脂少量部33を形成する手段は特に限定されないが、例えば、以下のような手段が挙げられる。
【0028】
(1)樹脂被覆層に穴を設ける。
例えば、ベルト基材31の外周面にスプレー照射等で樹脂被覆層32を形成したのち、例えば図3に示すように、任意のパターンで形成した針束にて樹脂被覆層32のみに穴32Aを設ける。あるいは、表面に針状突起を形成した金属ロールにより押圧したり、スパッタエッチング処理されたPTFEを、樹脂被覆層32の表面に圧力を加えながら接触させること等により、樹脂被覆層32のみに針状の穴32Aを形成する。
【0029】
平面視における穴32Aの形状は、円形でもよいし切り込みのような縦長でもよい。なお、切り込みのような縦長の穴を設ける場合は、穴がベルトの幅方向に拡大して濃度変動が発生することを抑制する観点から、穴の長手方向がベルトの周方向となるように形成することが望ましい。
また、ベルト基材31まで穴32Aが達すると転写ベルトの強度が低下するため、穴32Aは樹脂被覆層32のみにに設ける。穴32Aの深さは特に限定されないが、樹脂被覆層32の厚さの50%以内とすることが望ましい。
【0030】
樹脂被覆層32に穴32Aを設けることで、それらの部分を基点として亀裂が形成されることになるが、樹脂被覆層32を形成する際の微小な気泡や異物に起因する微小な亀裂が大きく成長することが抑制され、転写ベルトの樹脂被覆層全体における亀裂の形態が制御される。
【0031】
(2)ベルト基材の外周面に凸部を設ける。
ベルト基材31の外周面に凸部を設けておき、かかるベルト基材31の外周面に樹脂被覆層32を形成する。例えば図4に示すように、ベルト基材31を形成する際に外周面に凸部31Aを設けて、その上に樹脂被覆層32を形成すれば、ベルト基材31の凸部31Aに相当する位置に樹脂少量部33が形成される。
【0032】
ベルト基材31の外周面に凸部31Aを形成する方法は特に限定されず、例えばベルト基材31を形成するための型に凹部を設けておけば、ベルト基材31が形成されるとともに、型の凹部に応じてベルト基材31の外周面に凸部31Aが形成される。あるいは、平坦な外周面を有するベルト基材31を形成した後に凸部31Aを形成してもよい。
ベルト基材31の凸部31Aは樹脂被覆層32を貫通してもよいし、図4に示すように凸部31Aの上端が樹脂被覆層32内に位置していてもよい。
【0033】
(3)樹脂被覆層に粒子を配置する。
ベルト基材31の外周面に樹脂被覆層32を形成する際、例えば、図5に示すように、樹脂被覆層32に樹脂少量部を形成するための粒子34を散在させることで、樹脂少量部33が形成される。前記したように、樹脂被覆層32には潤滑性フィラーや導電性フィラーを分散させてもよいが、これらのフィラーは樹脂被覆層32において面方向に均等に分散される。一方、これらのフィラーとは別に、樹脂被覆層32内にシリカ、アルミナなどの粒子34を特定のパターンで散在させることで樹脂少量部33が形成される。例えば、ベルト基材31の外周面に樹脂形成用の塗布液を塗布した後、乾燥させる前に、樹脂少量部33を形成するための粒子34を任意のパターンに付与すればよい。
樹脂少量部33を形成するための粒子34の粒径は特に限定されないが、相対的に剛性が弱い樹脂少量部33を形成する観点から、乾燥後の樹脂被覆層32の厚みに対して0.1%以上5%以下とすることが望ましい。これ以下では基材の表面粗さに影響して塗布ムラが発生し、これ以上ではゴム基材の物性が損なわれる可能性がある。
【0034】
(4)その他の手段
例えば、ベルト基材31の外周面に、樹脂被覆層形成用塗布液をはじく材料(撥液材料)を任意のパターンに設けておき、これに樹脂被覆層形成用塗布液を塗布して樹脂被覆層32を形成する。撥液材料が付与されている箇所には樹脂被覆層が形成されにくいため、樹脂少量部33となる。
【0035】
<樹脂少量部の配置パターン>
樹脂被覆層32における樹脂少量部33の配置パターンは特に限定されず、不規則な配置でも構わないが、樹脂少量部33は転写ベルト21の周方向R及び幅方向Wに予め定めた間隔で規則的に存在していることが望ましい。例えば、図6に示すように、樹脂少量部33が転写ベルト21の周方向R及び幅方向Wに規則的に存在していれば、一部の樹脂少量部33に応力が集中して亀裂が局所的に成長することが効果的に抑制される。例えば、図7に示すように、樹脂少量部33が千鳥状に配置されていれば、応力集中により局所的に亀裂が成長することがより効果的に抑制される。
【0036】
また、図6、図7に示すように、樹脂少量部33を転写ベルトの周方向R及び幅方向Wに規則的に存在させる場合、樹脂少量部33はベルトの周方向Rよりも幅方向Wに長い間隔で存在していることが望ましい。トナー像を記録媒体に転写したときに生じる濃度変動は、樹脂被覆層32の亀裂がベルトの周方向Rよりも幅方向Wに成長することで発生し易い。そこで、樹脂少量部33の間隔が周方向Rよりも幅方向Wで長くなるように樹脂少量部33を存在させておくことで樹脂被覆層32の亀裂が幅方向Wに成長することが抑制され、濃度変動の発生が効果的に抑制される。
【0037】
樹脂少量部33の間隔は樹脂被覆層32の材質にもよるが、樹脂少量部33同士が繋がって大きな亀裂が発生することを抑制するとともに、気泡や異物に起因する微小な亀裂の成長を抑制する観点から、ベルトの周方向Rのピッチは50μm以上200μm以下が望ましく、幅方向Wのピッチは100μm以上500μm以下が望ましい。
【0038】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な画像形成プロセスについて説明する。図1に示す画像形成装置100では、図示しない画像読取装置やパーソナルコンピュータ等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、レーザ露光器12に出力される。
【0039】
レーザ露光器12では、入力された画像データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを電子写真感光体10に照射する。電子写真感光体10では、帯電器11によって表面が帯電された後、このレーザ露光器12によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。
電子写真感光体の表面に形成された静電潜像は、現像器13によってトナー像として現像される。例えばトナーとキャリアからなる現像剤を保持した現像剤保持体13aに、図示しない電源から直流電圧からなる現像バイアス、または交流電圧に直流電圧が重畳された現像バイアスが印加されて、電子写真感光体10との間に現像電界が形成される。それによって、現像剤保持体13a上のトナーが静電潜像の画像部に転移し、静電潜像がトナー像として可視像化される。
【0040】
電子写真感光体10上に形成されたトナー像は、電子写真感光体10と転写ユニット20とが接触する転写部15に搬送される。トナー像が転写部15に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が転写部15に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により矢印C方向に搬送されてレジストロール54に到達する。このレジストロール54においては、用紙Pは一旦停止され、トナー像が形成された電子写真感光体10の移動タイミングに合わせてレジストロール54が回転する。それによって、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされ、用紙Pは搬送ガイド55から転写部15に送り出される。
【0041】
転写部15では、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、転写ユニット20の転写ベルト21を介して、電子写真感光体10と転写ロール24との間に挟み込まれる。その際に、転写ロール24にはトナーの帯電極性(ここでは、マイナス極性とする。)と反対極性の電圧(転写バイアス)が印加されることで、転写ロール24から転写ベルト21に電子写真感光体10上のトナー帯電極性とは反対極性の電荷が付与される。それにより、電子写真感光体10上に保持された未定着トナー像は、電子写真感光体10と転写ロール24とによって押圧される転写部15において、用紙P上に静電転写される。
【0042】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、転写ユニット20の転写ベルト21に静電吸着された状態で電子写真感光体10から剥離されて搬送され、転写ユニット20の用紙P搬送方向下流側に設けられた定着器60まで送られる。なお、用紙Pが電子写真感光体10から剥離されず、電子写真感光体10に吸着されたままの状態となった場合には、転写部15の下流側の電子写真感光体10表面近傍に配設された分離爪(不図示)によって、用紙Pは電子写真感光体10から分離され、転写ベルト21に静電吸着されるように構成されている。
【0043】
転写ベルト21の定着器60側の後端部では、転写ベルト21が駆動ロール22に巻き付く際の曲率、および用紙Pのコシによって、用紙Pは転写ベルト21から剥離される。そして、用紙Pは、定着入口ガイド56に導かれて定着器60に搬送される。
定着器60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器60において熱および圧力による定着処理を受けることによって用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙部に搬送され、一連の画像形成動作が完了する。
上記のように本実施形態に係る転写ベルト21を備えた画像形成装置100を用いて画像形成を行うことで、用紙Pに転写及び定着された画像は、搬送方向における濃度変動の発生が抑制される。
【0044】
なお、本実施形態に係る転写ベルトの用途は、記録媒体の搬送を兼ねた転写ベルトに限定されない。例えば、複数のトナー像を重ね合わせた後、記録媒体に転写させるための、いわゆる中間転写ベルトとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 電子写真感光体、11 帯電器(帯電手段の一例)、12 レーザ露光器(静電潜像形成手段の一例)、13 現像器(現像手段の一例)、13a 現像剤保持体、14 転写前帯電器、15 転写部、17 クリーニング手段、20 転写ユニット(転写手段の一例)、21 転写ベルト、22 駆動ロール、23 従動ロール、24 転写ロール、31 ベルト基材、31A 凸部、32A 穴、32 樹脂被覆層、33 樹脂少量部、34 粒子、50 用紙トレイ、51 ピックアップロール、52 搬送ロール、54 レジストロール、55 搬送ガイド、56 定着入口ガイド、60 定着器(定着手段の一例)、100 画像形成装置、Bm 露光ビーム、R 周方向、W 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体を含んで構成された無端のベルト基材と、
前記ベルト基材の外周面上に配置されており、樹脂の量が相対的に少ない部分がベルトの周方向及び幅方向に散在している樹脂被覆層と、
を有する転写ベルト。
【請求項2】
前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、ベルトの周方向及び幅方向にそれぞれ予め定めた間隔で規則的に存在している請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項3】
前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、ベルトの周方向よりも幅方向に長い間隔で存在している請求項2に記載の転写ベルト。
【請求項4】
前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、千鳥状に存在している請求項2又は請求項3に記載の転写ベルト。
【請求項5】
前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、前記樹脂被覆層に設けた穴によって形成されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の転写ベルト。
【請求項6】
前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、前記ベルト基材の外周面に設けた凸部によって形成されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の転写ベルト。
【請求項7】
前記樹脂の量が相対的に少ない部分が、前記樹脂被覆層に配置した粒子によって形成されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の転写ベルト。
【請求項8】
電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤によって現像してトナー像を形成する現像手段と、
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の転写ベルトにより記録媒体を搬送し、前記電子写真感光体上に形成された前記トナー像を前記転写ベルトにより搬送された前記記録媒体上に転写させる転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着させる定着手段と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41164(P2013−41164A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178583(P2011−178583)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】