説明

転写ベルト装置及び画像形成装置

【課題】転写ベルトの内側のデッドスペースに付勢部材を効率良く配設することができ、設計の自由度を向上させ得る転写ベルト装置を提供する。
【解決手段】平行状に配設されてテンションローラ11を含む複数のローラと、前記複数のローラの両端を回転可能に支持する一対の支持部材23a,23bと、前記複数のローラに張架されて回転駆動する転写ベルト12と、前記テンションローラ11を所定方向に付勢して前記転写ベルト12に張力を付与するための付勢部材26a,26bを備えた転写ベルト装置において、前記付勢部材26a,26bは、前記転写ベルト12の平面部と略平行の直線方向(前記転写ベルトにおける前記複数のローラと対向する展張方向の面に平行する方向)に前記転写ベルトに張力を付与し、かつ、前記一対の支持部材23a,23bと転写ベルト12で囲まれた領域内であって前記一方の支持部材23a(23b)から他方の支持部材23b(23a)へ横断する方向に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルト装置、及びその組立方法、並びに前記転写ベルト装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像形成装置における代表的な画像の転写方式として、複数の感光体上にそれぞれ形成した色の異なるトナー画像を、転写ベルト(転写搬送ベルト)等により搬送される用紙上に直接順次重ね合わせて転写してカラー画像を形成する直接転写方式が知られている。また、別の転写方式として、上記と同様に形成した色の異なるトナー画像を、一旦転写ベルト(中間転写ベルト)上に順次重ね合わせて転写してカラー画像を形成し、そのカラー画像を一括して用紙に転写する間接転写方式がある。
【0003】
上記直接転写方式や間接転写方式に用いる転写ベルトは、テンションローラを含む複数のローラに架け渡されており、ばね等の付勢部材によってテンションローラを付勢して転写ベルトに所定の張力を付与している。
【0004】
近年では、画像形成装置の小型化が進められ、これに伴って転写ベルト装置の小型化も求められている。従来の転写ベルト装置として、小型化を図るために、デッドスペースとなっている転写ベルトの内側にばね等の付勢部材を配設したものがある(例えば、特許文献1又は2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テンションローラの付勢部材としてばね等を用いる場合、ばね定数の高いばねを適用すると、その付勢力は構成部品の寸法公差のばらつきや組み付け精度の誤差などの影響を受けて変動しやすい。例えば、テンションローラの両端を付勢する一対のばねの付勢力が、上記理由によって変動し互いのバランスが崩れると、転写ベルトの走行安定性が低下する虞がある。そして、これにより、転写ベルトの劣化や、用紙に形成される画質の悪化などの不具合が発生する。
【0006】
上記不具合を解消するために、テンションローラの付勢部材には、ばね定数のなるべく低いばねを適用することが好ましいが、ばね定数の低いばねで所定の付勢力を得るには、ある程度長いばねを用いる必要がある。
【0007】
上記特許文献1又は2に示すように、ばねがローラに対して直交する方向に配設された構造において、長いばねを採用した場合、ばねとローラとの干渉を避けるために、ばねをローラに対して交差するように上下方向にずらして配設しなければならない。従って、このようなばねの配設の仕方では、転写ベルト相互間に形成された扁平状空間をさらに薄くして小型化するなどの設計変更は困難であった。
さらに特許文献3に示されているように、テンションローラの軸と平行な軸回りに回動可能に支持されたL字形のレバー部材の一端にテンションローラを連結し、転写ベルトの内部に設けられた引張りバネによりレバー部材を回動させてテンションローラを転写ベルトに押し付けると、上下方向にスペースがとられるので、転写ベルト相互間に形成された扁平状空間をさらに薄くして小型化することが困難となる虞がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、転写ベルトの内側のデッドスペースに付勢部材を効率良く配設することができ、設計の自由度を向上させ得る転写ベルト装置及びその組立方法、並びに前記転写ベルト装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、平行状に配設されたテンションローラを含む複数のローラと、前記複数のローラの両端を回転可能に支持する一対の支持部材と、前記複数のローラに張架されて回転駆動する転写ベルトと、前記テンションローラを所定方向に付勢して前記転写ベルトに張力を付与するための付勢部材を備えた転写ベルト装置において、前記テンションローラは、直線方向に移動可能に支持され、前記付勢部材は、前記一対の支持部材と転写ベルトで囲まれた領域内であって前記一方の支持部材から他方の支持部材へ横断する方向に配設されているものである。
【0010】
付勢部材を一方の支持部材から他方の支持部材へ横断する方向に配設したので、長い付勢部材を、ローラ間にローラ等との干渉を避けて配置することが可能である。言い換えれば、既存の転写ベルトの相互間隔を広げることなく、構成部品の寸法公差のばらつきや組み付け精度の誤差などの影響を受けにくい付勢部材を採用することができる。また、転写ベルト相互間を狭く設定して転写ベルト装置の小型化を図ることも可能である。このように、本発明の構成によれば、転写ベルト装置の設計変更の自由度が向上する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の転写ベルト装置において、前記付勢部材がリンク手段を介して前記テンションローラの両端を所定方向に付勢するように構成したものである。
【0012】
リンク手段によって、付勢部材の付勢力の向きを変えてテンションローラに伝達することができる。また、テンションローラの両端を付勢することにより、テンションローラを所定の方向に安定して付勢することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の転写ベルト装置において、前記リンク手段は、前記テンションローラの両端を回転可能に支持した状態で前記支持部材に摺動可能に配設された一対の保持部材と、前記支持部材に揺動可能に配設されると共に前記付勢部材と保持部材に係合されて付勢部材の付勢力を転写ベルトの張力方向に方向転換する一対の回転部材とを有するものである。
【0014】
リンク手段が一対の保持部材と一対の回転部材を有することにより、付勢部材の付勢力の向きを変えてテンションローラに伝達することができる。また、テンションローラを所定の方向に安定して付勢することができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載の転写ベルト装置において、前記回転部材を前記転写ベルトの平面状部分と略平行な板材で形成すると共に、回転部材を転写ベルトの平面状部分と略平行に揺動可能に構成したものである。
【0016】
これにより、転写ベルト相互間をその平面状部分に直交する方向に狭く形成することが可能となる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の転写ベルト装置において、前記一対の支持部材を連結部材で連結すると共に、支持部材の内側に取付部を設け、前記回転部材を前記連結部材と前記取付部との間に配設し、回転部材の回転軸の先端を前記取付部に形成した挿入孔に挿入すると共に、前記回転軸が挿入孔から離脱するまでに回転軸の基端と前記連結部材が干渉するように連結部材を配設したものである。
【0018】
連結部材が回転軸の抜け止め部材として機能することができる。これにより、回転軸の抜け止め部材を別途設ける必要がないので、部品点数を削減して製造コストを低減することができる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項3から5のいずれか1項に記載の転写ベルト装置において、前記回転部材の回転軸に直交する両面にそれぞれ接触する姿勢維持部材を備えたものである。
【0020】
回転部材が揺動する際、姿勢維持部材が回転部材の両面に摺接しつつ支持するので、回転部材の揺動姿勢が維持される。これにより、回転部材が回転軸に対して傾斜するのを防止することができ、付勢部材の付勢力が不要なベクトルに分散してテンションローラへの付勢力にばらつきが生じる不具合を解消することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項6に記載の転写ベルト装置において、前記姿勢維持部材を前記連結部材と前記取付部にそれぞれ配設したものである。
【0022】
姿勢維持部材を付設する部材を別途配設する必要がなく、部品点数を削減して製造コストの低減を図ることができる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の転写ベルト装置において、前記付勢部材の付勢力に対抗して前記テンションローラを直接的又は間接的に所定の位置に保持する位置保持手段を備えたものである。
【0024】
本発明のように転写ベルトの内側に付勢部材を配設した構造においては、複数のローラに転写ベルトを装着する前に、付勢部材を取り付ける必要がある。付勢部材を取り付けることにより、テンションローラは付勢された状態となるが、位置保持手段によってテンションローラを一時的に位置保持した状態にすることができる。このようにリンク手段を位置保持することで、テンションローラの付設や転写ベルトのローラへの装着を容易に行うことができる。また、転写ベルトの装着後、リンク手段の位置保持を解除すれば、テンションローラが付勢され、転写ベルトに張力が付与される。
【0025】
請求項9は、請求項3から7のいずれか1項に記載の転写ベルト装置において、前記付勢部材の付勢力に対抗して前記テンションローラを間接的に所定の位置に保持する位置保持手段を備え、当該位置保持手段は、前記回転部材に形成した孔部と、前記孔部に挿脱可能な軸部材と、前記支持部材の前記転写ベルトの外側の部分に形成すると共に前記軸部材を保持可能な軸保持部を有するものである。
【0026】
回転部材の孔部に挿入した挿入軸を、付勢部材の付勢力に対抗して軸保持部が保持することにより、回転部材を一時的に位置保持することができる。これにより、保持部材を回転部材に対して係合可能に容易に配設することができる。そして、転写ベルトの装着後、軸部材を抜き取って回転部材の位置保持を解除すれば、転写ベルトに張力が付与される。
また、軸保持部を支持部材の転写ベルトの外側の部分に形成しているので、装着済みの転写ベルトが軸部材の抜き取り作業の妨げとならず、軸部材を抜き取る際に転写ベルトを傷付ける虞もない。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項3に記載の転写ベルト装置において、前記一対の回転部材に共通の付勢部材を連結したものである。
【0028】
これにより、テンションローラの両端へ付与される付勢力のばらつきを抑制することができる。
【0029】
請求項11の発明は、請求項10に記載の転写ベルト装置において、前記共通の付勢部材が、付勢力発生部と、前記付勢力発生部からその長手方向に延伸した連結部とを有するものである。
【0030】
これにより、テンションローラの両端へ付与される付勢力のばらつきを抑制することができると共に、付勢部材を低コストなものとすることができる。
【0031】
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれか1項に記載の転写ベルト装置を備えた画像形成装置である。
【0032】
請求項1から11のいずれか1項に記載の転写ベルト装置を画像形成装置に適用することができる。
【0033】
請求項13の発明は、一対の支持部材に回転可能に平行状に配設したテンションローラを含む複数のローラに、転写ベルトを張架する転写ベルト装置の組立方法において、前記一対の支持部材と前記転写ベルトの配設予定位置で囲まれた領域内であって一方の支持部材から他方の支持部材へ横断する方向に配設した付勢部材と、リンク手段とを連結すると共に、位置保持手段によって当該リンク手段を前記付勢部材の付勢力に対抗して所定の位置に保持する工程と、前記リンク手段を所定の位置に保持した状態で、リンク手段にテンションローラを連結すると共にテンションローラを含む複数のローラの外周に転写ベルトを配設する工程と、前記複数のローラの外周に転写ベルトを配設した後に、前記リンク手段の位置保持を解除する工程と、前記リンク手段の位置保持を解除することによって、前記付勢部材の付勢力がリンク手段を介してテンションローラに伝達されて前記転写ベルトに張力が付与される工程とを有する方法である。
【0034】
このように、リンク手段を一時的に位置保持して付勢されない状態にすることで、テンションローラや転写ベルト等を容易に装着することができる。
【0035】
請求項14の発明は、請求項13に記載の転写ベルト装置の組立方法において、前記転写ベルトを複数のローラの外周に装着した後、前記位置保持手段を前記転写ベルトの外側で操作して前記リンク手段の位置保持を解除する。
【0036】
転写ベルトの装着後、転写ベルトの外側から位置保持手段を簡単に操作してリンク手段の位置保持を解除することができる。装着済みの転写ベルトが軸部材の抜き取り作業の妨げとならず、軸部材を抜き取る際に転写ベルトを傷付ける虞もない。
【発明の効果】
【0037】
本発明の転写ベルト装置によれば、転写ベルトの内側のデッドスペースに付勢部材を効率良く配設することができる。これにより、転写ベルト装置の設計変更の自由度が向上する。例えば、転写ベルトの走行安定性を向上するために長い付勢部材を採用したり、転写ベルト相互間を狭くして小型化するなどの設計が容易となる。
【0038】
また、本発明の転写ベルト装置を備えた画像形成装置においても、前記転写ベルト装置と同様の効果を発揮できる。
【0039】
本発明の転写ベルト装置の組立方法によれば、付勢力が作用するリンク手段を所定の位置に保持することにより、テンションローラや転写ベルト等の組み付け作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の転写ベルト装置を備えた画像形成装置の全体構成図である。
【図2】前記転写ベルト装置の斜視図である。
【図3】図2の転写ベルト装置から転写ベルト等を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図4の要部を示す平面図である。
【図6】保持部材の取付構造を示す簡略図である。
【図7】前記転写ベルト装置の簡略図である。
【図8】図5のA−A矢視断面図である。
【図9】図5の変形例を示す断面図である。
【図10】前記転写ベルト装置の位置保持手段を示す斜視図である。
【図11】図10の要部を示す平面図である。
【図12】本発明の転写ベルト装置の他の実施形態を示す平面図である。
【図13】本発明の転写ベルト装置の別の実施形態を示す平面図である。
【図14】付勢部材の他の配設の仕方を示す簡略図である。
【図15】転写ベルトの装着方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明の転写ベルト装置を備えた画像形成装置の概略を示す全体構成図である。以下、同図に基づいてこの画像形成装置の主要部を説明する。画像形成装置は、カラー画像の色分解成分に対応するブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色の現像剤によって画像を形成するための4つのプロセスユニット1K,1C,1M,1Yを備えている。
【0042】
各プロセスユニット1K,1C,1M,1Yは、互いに異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成になっている。1つのプロセスユニット1Kを例にその構成を説明すると、プロセスユニット1Kは、像担持体2と、クリーニング手段3と、帯電手段4、現像手段5等を有している。プロセスユニット1Kは画像形成装置の本体に対して着脱可能に装着されている。
【0043】
各プロセスユニット1K,1C,1M,1Yの上方には、露光器7が配設されている。この露光器7は、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光(L1〜L4)を発するように構成されている。
【0044】
また、各プロセスユニット1K,1C,1M,1Yの下方には、転写ベルト装置8が配設されている。この転写ベルト装置8は、図1,図2のように上記像担持体2で形成したトナー画像を転写するための転写ベルト12を備えている(間接転写方式)。転写ベルト12は、各像担持体2に対向する4つの一次転写ローラ91,92,93,94、駆動ローラ10、テンションローラ11、クリーニングバックアップローラ15に架け渡され回転駆動するように構成されている。駆動ローラ10に二次転写ローラ13が対向して配置され、ベルトクリーニング装置14が、クリーニングバックアップローラ15に対向して配設されている。
【0045】
画像形成装置の下部には、シート状記録媒体としての用紙を多数枚収容可能な給紙カセット16と、給紙カセット16から用紙を送り出す給紙ローラ17が設けてある。給紙ローラ17から二次転写ローラ13と駆動ローラ10のニップに至る途中には、用紙を一旦停止させるレジストローラ対18が配設されている。
【0046】
二次転写ローラ13と駆動ローラ10のニップの上方には、定着装置19が設けてある。定着装置19は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ19aと、これに対し所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ19bを備えている。
【0047】
定着装置19の上方には、用紙を外部へ排出するための排紙ローラ対20が配設してある。排紙ローラ対20によって排出される用紙は、上部カバーを内方へ凹ませて形成した排紙トレイ21上に積載されるように構成されている。
【0048】
転写ベルト装置8と給紙カセット16の間には、廃トナーを収容する廃トナー収容器22が配設されている。廃トナー収容器22の入り口部にはベルトクリーニング装置14から伸びた図示しない廃トナー移送ホースが接続されている。
【0049】
以下、この画像形成装置の基本的動作について説明する。
図1において、図示しない画像形成装置の制御部からの給紙信号によって給紙ローラ17が回転すると、給紙カセット16に積載した用紙の最上位の用紙のみが分離されてレジストローラ対18側へ送り出される。用紙の先端がレジストローラ対18のニップに到達すると、転写ベルト12上に形成されるトナー画像とタイミング(同期)をとるために用紙を待機させる。
【0050】
次に、作像動作について説明する。
1つのプロセスユニット1Kを例にして説明すると、まず、帯電手段4にて像担持体2の表面を均一な高電位に帯電させる。画像データに基づいて露光器7から像担持体2の表面にレーザビームL1が照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。静電潜像が形成された像担持体2の表面部分に現像手段5によってトナーを転移させ、ブラックのトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2上に形成したトナー画像を転写ベルト12に転写する。その他の各色のプロセスユニット1C,1M,1Yにおいても、同様にして像担持体2上にトナー画像が形成され、4色のトナー画像が重なり合うように転写ベルト12に転写される。
【0051】
また、各クリーニング手段3は、中間転写行程を経た後の像担持体2表面に付着している残留トナーを除去する。その後、図示しない除電装置が、クリーニング後の像担持体2の残留電荷を除電する。
【0052】
レジストローラ対18と給紙ローラ17が駆動を再開し、転写ベルト12に重畳転写したトナー画像とタイミング(同期)をとって用紙を二次転写ローラ13へ送る。そして、二次転写ローラ13によって、送られてきた用紙に重畳転写したトナー画像を転写する。
【0053】
トナー画像を転写された用紙は定着装置19へと搬送される。定着装置19に送り込まれた用紙は、定着ローラ19aと加圧ローラ19b間に挟まれ、その未定着トナー画像が加熱・加圧されて用紙に定着される。トナー画像が定着された用紙は、定着装置19から排紙ローラ対20へ送り出され、排紙ローラ対20によって排紙トレイ21へ排出される。
【0054】
また、転写ベルト12上のトナー画像を用紙に転写した後、転写ベルト12上には残留トナーが付着しており、この残留トナーは、ベルトクリーニング装置14によって転写ベルト12から除去される。転写ベルト12から除去されたトナーは、図示しない廃トナー搬送手段によって、粉体収容器22へと搬送され回収される。
【0055】
以下、本発明の特徴部分である転写ベルト装置について説明する。
図2は本発明の転写ベルト装置8の斜視図、図3は図2の転写ベルト装置8から転写ベルト12とベルトクリーニング装置14を取り外した状態を示す斜視図である。図2に示すように、転写ベルト装置8は、その寸法比が矢印Xで示す長さ方向と矢印Yで示す幅方向に大きく、矢印Zで示す厚さ方向に小さく設定され、全体として扁平状に形成されている。
【0056】
図3において、転写ベルト装置8は、一対の樹脂製の支持部材23a,23bを有している。この一対の支持部材23a,23bは矩形断面のチャンネル構造を有し、それぞれの両端近傍において2つの金属製の連結部材24,25によって連結されている。各支持部材23a,23bの図の手前側の端部には、テンションローラ11の両端が回転可能に支持され、図の奥側の端部には、駆動ローラ10の両端が回転可能に支持されている。さらに、テンションローラ11と駆動ローラ10との間には、4つの一次転写ローラ91,92,93,94及びクリーニングバックアップローラ15が回転可能に支持されている。転写ベルト装置8を画像形成装置本体に装着した状態では、支持部材23a,23b及びテンションローラ11等の上記複数のローラは水平方向に配設される(図1参照)。
【0057】
図4は、図3の転写ベルト装置8を上方から見た平面図である。図4に示すように、転写ベルト装置8は、テンションローラ11の両端をそれぞれ図の下方(転写ベルトの平面部と略平行の直線方向)へ付勢するための一対の付勢部材26a,26b及び一対のリンク手段27a,27bを備えている。なお、この場合にいう転写ベルトの平面部とは、図2における転写ベルト12が複数の像担持体に対向する展張面に相当する部位を指す。
付勢部材26a,26bは、一方の支持部材23a(23b)から他方の支持部材23b(23a)へ横断する方向に配設されている。この実施形態では、付勢部材26a,26bはコイルばねであり、支持部材23a,23bに対して直角に配設されている。コイルばねは、その付勢力が構成部品の寸法公差のばらつきや組み付け精度の誤差などの影響を受けにくい、ばね定数の低いものを採用している。
【0058】
リンク手段27a,27bは、それぞれ平面視で略C字状に湾曲した回転部材28a,28bと、長手状の保持部材29a,29bを有する。図4に示すように、転写ベルト装置8を平面視した状態で、付勢部材26a,26b及び回転部材28a,28bは、テンションローラ11から数えて1番目と2番目の一次転写ローラ94,93の間に配置されている。
【0059】
以下、付勢部材26a,26b、回転部材28a,28b及び保持部材29a,29b等の構造について詳しく説明する。また、これらの構造は、転写ベルト装置の幅方向の中心を挟んで対称な構造となっているので、片側のみの構造について説明する。
【0060】
図5は、図4における左側の支持部材23a、付勢部材26a、回転部材28a、保持部材29a等を示している。なお、図5において、支持部材23aの右側を内側、左側を外側と呼ぶことにする。回転部材28aは、支持部材23aに対し回転軸31を中心に回転可能に配設されている。回転部材28aの内側の一端部にはフック状の掛止部32が形成され、その掛止部32に付勢部材26aのリング状に形成した一端55が掛け止めしてある。また、付勢部材26aのリング状に形成した他端56は、連結部材24の中間部に設けたフック状の掛止部30に掛け止めしている。なお、付勢部材26aの両端と、回転部材28a及び連結部材24のそれぞれの掛止構造は、リングとフックの掛止構造以外に、フック同士の係止構造、又はそれら以外の公知の掛止構造を採用可能である。
【0061】
一方、回転部材28aの他端部は、支持部材23aの内側の側面に形成した内窓部35から内部に侵入して配設されている。回転部材28aは、その他端部の端縁を弧状等に形成したカム部36を有している。
【0062】
保持部材29aは、金属製の長手部材であり、図の下側の端部にテンションローラ11の一端を回転可能に付設している。保持部材29aは、支持部材23aの外側の側面に付設され、支持部材23aの長手方向に摺動可能に構成されている。このため、テンションローラ11は、保持部材29aの摺動に連動して直線方向に移動することができる。詳しくは、図6に示すように、保持部材29aは、その長手方向に形成された2つの長孔38,38を有し、各長孔38に外側からネジ等の止め具39を挿通して止め具39の先端を支持部材23aに固着している。また、図6において、符号40は、保持部材29aを外側から押さえる押さえ部材であり、押さえ部材40は上記止め具39によって保持部材29a側へ押圧されている。
【0063】
図5に戻って、保持部材29aは、支持部材23a側に突出したカム受け部34を有し、カム受け部34は、支持部材23aの外側の側面に形成した外窓部37から内部に侵入して配設されている。このカム受け部34が外窓部37内を図の上下方向に移動可能な範囲内で、保持部材29aは摺動可能に構成されている。そして、このカム受け部34に、回転部材28のカム部36が接触可能に配設されている。
【0064】
図7の簡略図に示すように、テンションローラ11や一次転写ローラ94,93等に転写ベルト12を装着した状態では、回転部材28aは、一次転写ローラ94,93間に張架された転写ベルト12の平面状部分(展張部分)の内面に対向すると共に、その内面に対して略平行な板状に形成されている。また、回転部材28aは、上記平面状部分に対して略平行に揺動するように構成されている。この実施形態では、回転部材28aを、転写ベルト12の上側及び下側の平面状部分に対し略平行に配置しているが、どちらか一方、あるいは回転部材28aに近い方の転写ベルト12の平面状部分に対して略平行に配置してもよい。
【0065】
また、図7において、付勢部材26aは、転写ベルト12相互間に形成された扁平状空間内に配設されると共に、付勢部材26aも回転部材28aと同様に転写ベルト12の平面状部分に対して略平行となるように配設されている。
【0066】
図8は図5のA−A矢視断面図である。同図に示すように、支持部材23aの内側に取付部41が一体に突設されている。取付部41の図の上方に連結部材24が横断して配設され、取付部41と連結部材24の間に回転部材28aが配置されている。回転部材28aに形成した貫通孔43と、取付部41に形成した挿入孔42に、回転軸31を挿入し、回転部材28aを回転可能に付設している。回転軸31の図の上端には、径方向に拡大したヘッド部33を有し、ヘッド部33と回転部材28aの図の上面との干渉により、回転軸31が下方に抜け落ちるのを防止している。また、回転軸31のヘッド部33に対向して連結部材24が配設してあり、回転軸31が挿入孔42から図の上方へ離脱するまでに連結部材24とヘッド部33が干渉するように構成されている。なお、図ではヘッド部33と連結部材24は当接していないが、連結部材24をヘッド部33に当接させて配設することも可能である。
【0067】
回転軸31の素材としては、金属等の耐摩耗性の高い素材を適用することが好ましい。これにより、回転軸31が回転部材28aとの摺動で摩耗することによる回転軸31の変形及び摺動抵抗の増加に伴う付勢力の変動を防止することができる。また、回転部材28aと回転軸31との摺動による摩耗を防止するために、回転軸31を回転部材28aにプレス等により一体に形成してもよい。
【0068】
図8において、取付部41の上方には、取着部44が支持部材23aの内側に一体に突設されている。この取着部44にネジ孔46が形成してあり、そのネジ孔46にネジ45を螺着して連結部材24を固定している。
【0069】
また、取着部44と取付部41にそれぞれ姿勢維持部材47,48が付設されている。取着部44に付設した姿勢維持部材47は、回転部材28aの図の上面に接触するように配設され、取着部44と姿勢維持部材47は、互いに嵌合可能な突起部と凹部により取り付けられている(図5参照)。
【0070】
一方、取付部41に付設した姿勢維持部材48は、2つの小突起から成り、これら小突起の先端が回転部材28aの図の下面に接触している。上記小突起の個数は、3つ以上設けてもよい。また、図の上側の姿勢維持部材47を、複数の小突起としてもよい。
【0071】
また、上記姿勢維持部材47を、図9に示すように、連結部材24に一体に形成してもよい。この実施形態では、金属製の連結部材24の一部をプレス加工して突出させて姿勢維持部材47を形成している。
【0072】
図10に示すように、本発明の転写ベルト装置8は、付勢部材26aの付勢力に対抗してテンションローラ11を間接的に所定の位置に保持する位置保持手段49を備える。位置保持手段49は、回転部材に形成した孔部50と、孔部50に挿脱可能な軸部材51と、支持部材23aに形成した軸保持部52を有している。孔部50の位置は、回転部材28aの端部であって支持部材23a内に侵入した部分である。軸保持部52は、軸部材51の外周形状に対応した形状の溝であり、孔部50と軸保持部52は同軸の直線上となるように配設されている。図10において、二点鎖線は転写ベルト12を張架した場合のその端縁を示す。そして、軸保持部52はこの転写ベルト12の端縁よりも外側に配設されている。
【0073】
図11に示すように、カム受け部34が回転部材28aのカム部36から押圧力を受けた場合、カム受け部34は外窓部37の図の下方の縁に当接するまで移動可能である。つまり、同図における二点鎖線は、回転部材28aが付勢力の作用する方向に最大限に揺動(回転)した状態を示す。上記軸保持部52は、回転部材28aを上記最大限に揺動した状態から図の矢印に示す付勢力の方向と反対方向(時計回り)に幾分か移動させた状態において、その状態の回転部材28aの孔部50と同軸の直線上に設けてある。言い換えれば、孔部50を軸保持部52と同軸の直線上に配置した状態で、回転部材28a(のカム部36)とカム受け部34との間に、隙間Sが生じ得るように構成されている。このように構成することにより、付勢部材26aを休止状態に置けるので組立性が向上する。
【0074】
図12は、本発明の転写ベルト装置8の他の実施形態を示す。同図において、一対の回転部材28a,28bは1つ(共通)の付勢部材26cによって連結されている。図12の実施形態の場合は、図4の実施形態の場合に比べて、テンションローラ11の両端へ付与される付勢力のばらつきを抑制することができる。また、図12のように、付勢部材26cとしてのばねを長く配設することで、よりばね定数の低いものを採用することができ、寸法公差のばらつき等による影響を一層受けにくい構造となる。
【0075】
また、図13は、本発明の転写ベルト装置8のさらに別の実施形態を示す。この実施形態の付勢部材26dは、付勢力発生部53と、付勢力発生部53からその長手方向に延伸した連結部54とを有している。例えば、付勢力発生部53はコイル状のばね部分であり、連結部54はコイル状の部分から伸びた直線状の針金部分である。そして、この付勢力発生部53側の端部と連結部54側の端部を、一対の回転部材28a,28bに連結している。図13の実施形態の場合も、共通の付勢部材26dによりテンションローラ11の両端が付勢されるので、テンションローラ11の両端へ付与される付勢力のばらつきを抑制することができる。また、図13の実施形態は、図12の実施形態に比べ、コイル状のばね部分が短いので、コストの低減を図ることもできる。なお、付勢力発生部53の両端側に連結部54,54が配設されてもよい。
【0076】
また、付勢部材は、図14に示すように配設されることも可能である。図14は、本発明の転写ベルト装置8を正面から見た簡略図である。つまり、同図において、矢印Y方向と矢印Z方向は図2と同じ幅方向と厚さ方向を示し、上下の二点鎖線は転写ベルト12の横断面を示している。図14に示すように、一対の付勢部材26e,26fは、それぞれ転写ベルト12の横断面に対して傾斜して配設されている。連結部材24には2つの掛止部30a,30bが設けてあり、各掛止部30a,30bは互いに厚さ方向Z(高さ方向)に異なる位置に配設されている。そして、一方の掛止部30aからそれと離間した回転部材28aへ付勢部材26eを架け渡し、他方の掛止部30bからそれと離間した回転部材28bへ別の付勢部材26fを架け渡している。なお、付勢部材26e,26f同士は、互いに平行に配設されている。このように、付勢部材26e,26fの配設方向を斜めにすることにより、付勢部材26e,26fを長く配設することができる。従って、ばね定数のより低いものを採用することができ、寸法公差のばらつき等による影響を一層受けにくくなる。また、付勢部材26e,26fの両端を支持部材23a,23bの長手方向にずらして(支持部材23a,23bに対して)斜めに配置してもよい(図示省略)。
【0077】
上述のように、本発明の構成は、付勢部材26aを横断方向に配設したので、転写ベルト12内の扁平状空間に、付勢部材26aを長く配設することができる。これにより、付勢部材26aとして、ばね定数の低いものを適用することができ、付勢部材26aが構成部品の寸法公差のばらつきや組み付け精度の誤差などの影響を受けにくくなる。また、図7に示すように、回転部材28aを転写ベルト12の平面状部分に対して略平行に回転するように構成したことで、転写ベルト12相互間の扁平状空間を厚さ方向Zに小さく設計することが可能である。さらに、図7において、付勢部材26aと回転部材28aを、一次転写ローラ93,94間に配置すれば、上記扁平状空間をさらに厚さ方向Zに小型化することも可能である。このように、本発明の転写ベルト装置の構成を採用することにより、設計の自由度が向上する。
【0078】
以下、テンションローラ11の付勢作用について説明する。なお、テンションローラ11の両端への付勢作用はそれぞれ同様であるので、図5を参照してテンションローラ11の片端への付勢作用を例に説明する。
【0079】
図5において、付勢部材26aは常時収縮力が作用する状態に取り付けられている。付勢部材26aに連結された回転部材28aの端部が、付勢部材26aによって図の右側へ引っ張られることにより、回転部材28aは回転軸31を中心に反時計回りに揺動する。
【0080】
回転部材28aが反時計回りに揺動すると、回転部材28aのカム部36が、保持部材29aのカム受け部34を押圧し、保持部材29aは支持部材23aに沿って図の下方へ摺動する。これによって、保持部材29aに付設したテンションローラ11も図の下方へ移動する。このように、テンションローラ11を付勢して図の下方へ移動させることにより、(図示しない)張架した転写ベルト12をその内側から押圧して張力が付与される。
【0081】
回転部材28aが(回転軸方向に薄い)板状に形成されている場合、回転部材28aは回転軸31に対して傾斜しやすい。そして、回転部材28aが回転軸31に対して傾斜すると、付勢部材26aの付勢力が不要なベクトルに分散されることにより、テンションローラ11への付勢力にばらつきが生じたり、回転部材28aと回転軸31相互間の摩擦が増加するといった不具合が生じる。そこで、本発明では、回転部材28aが回転する際、姿勢維持部材47,48が回転部材28aの両面に摺接しつつ支持するので(図8参照)、回転部材28aの揺動姿勢が維持される。これにより、上記不具合の発生を防止している。また、図8において、回転部材28aの下面を支持する姿勢維持部材48を、2つの小突起とすることで、これら小突起と回転部材28aとの接触抵抗を低減することができ、円滑な揺動運動を維持できる。
【0082】
次に、本発明の転写ベルト装置の組立方法について説明する。
まず、一対の支持部材23a,23bの間に、テンションローラ11を除く、駆動ローラ10、一次転写ローラ91〜94等の各ローラを付設する。図8に示すように、支持部材23aの取付部41に回転部材28aを回転可能に取り付ける。そして、取着部44に、姿勢維持部材47、連結部材24を順次取り付ける。
【0083】
回転部材28aを回転軸31を中心に揺動させて、図10に示すように、回転部材28aの孔部50を、支持部材23aの軸保持部52とほぼ同軸の直線上に配置する。そして、軸部材51を、軸保持部52側から回転部材28aの孔部50に挿通する。挿通した軸部材51の先端は支持部材23aに当接し、軸部材51の基端が軸保持部52から少し突出した状態で止まる(図示省略)。
【0084】
回転部材28aの掛止部32と連結部材24の掛止部30に、付勢部材26aの両端を掛け止めする(図5参照)。この状態で付勢部材26aには、収縮する方向に付勢力が生じており、この付勢力は回転部材28aに作用する。しかし、回転部材28aに挿通した軸部材51が、軸保持部52によって付勢力に対抗して保持されるので、回転部材28aは所定の位置に保持される。
【0085】
また、他方の支持部材23b側も同様に各部材を組み付けし、回転部材を付勢部材の付勢力に対抗して位置保持した状態にする。
【0086】
図15に示すように、無端状の転写ベルト12を図の矢印に示す幅方向に移動させて駆動ローラ10、一次転写ローラ91,92,93,94等の各ローラの外周に装着する。その後、テンションローラ11を転写ベルト12の内側の所定位置に挿入し、テンションローラ11の両端に保持部材29a,29bを付設する。
【0087】
図5に示すように、各保持部材29a,29bのカム受け部34を、対応する支持部材23a,23bの外窓部37に挿入する。カム受け部34を外窓部37に挿入する際、回転部材28a(28b)は位置保持されているので、カム受け部34はカム部36から押圧されることがなく、カム受け部34をカム部36に対向させて容易に配置することができる。
【0088】
そして、保持部材29a,29bを押さえ部材40で押さえつつ止め具39を固着し、保持部材29a,29bを支持部材23a,23bに対して摺動可能に取り付ける(図6参照)。
【0089】
その後、軸部材51を抜き取って回転部材28a,28bの位置保持を解除する。位置保持が解除された回転部材28a,28bは、付勢部材26a,26bの付勢力を受けて揺動可能となる。そして、上述した付勢作用により、付勢部材26a,26bの付勢力が、回転部材28a,28bと保持部材29a,29bを介してテンションローラ11の両端に伝達されて転写ベルト12に張力が付与される。
【0090】
本発明の転写ベルト装置のように、転写ベルトの内側に付勢部材や回転部材を有する場合は、転写ベルトをローラに装着する前に、付勢部材と回転部材を取り付けなければならない。しかし、回転部材に付勢部材の付勢力が作用した状態では、保持部材やテンションローラ、又は転写ベルト等の取り付けが困難となる。そこで、上述の組立方法のように、回転部材を軸部材等によって一時的に位置保持することで、保持部材やテンションローラ、転写ベルト等の取り付けが容易となる。また、軸部材は転写ベルトの外側に配置されているので、転写ベルトの装着後に軸部材を簡単に抜き取って(操作して)回転部材の固定を解除することが可能である。
【0091】
なお、上述の組立方法は、本発明に係る転写ベルト装置の組立方法の一例を示したものであり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で組立手順を変更することは可能である。例えば、回転部材28a,28bに軸部材51を挿通して所定の位置に保持した後、先に支持部材23a,23bに保持部材29a,29bとテンションローラ11を付設し、次いで、転写ベルト12を装着してもよい。
【0092】
また、転写ベルト12を各ローラの外周に装着する際に、転写ベルト12が軸部材51に引っ掛からないように、軸部材51の支持部材23a,23bからの突出量を小さくすることが好ましい。さらに、万が一、転写ベルト12が軸部材51に引っ掛かっても、転写ベルト12が傷付かないように、軸部材51の支持部材23a,23bから突出する端部を球面などに形成することが望ましい。また、テンションローラ11を直接的に固定する位置保持手段を設けてもよい。
【0093】
以上、本発明の転写ベルト装置を、間接転写方式の画像形成装置に適用した場合の実施の形態について説明したが、本発明の構成を、画像を転写するための用紙をベルト面に吸着させて搬送する転写ベルトを備えた直接転写方式の画像形成装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
8 転写ベルト装置
10 駆動ローラ
11 テンションローラ
12 転写ベルト
23a,23b 支持部材
24 連結部材
26a,26b 付勢部材
27a,27b リンク手段
28a,28b 回転部材
29a,29b 保持部材
31 回転軸
41 取付部
42 挿入孔
47 姿勢維持部材
48 姿勢維持部材
49 位置保持手段
50 孔部
51 軸部材
52 軸保持部
53 付勢力発生部
54 連結部
91〜94 一次転写ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2002−258629号公報
【特許文献2】特開2007−72337号公報
【特許文献3】特開2000−259053号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行状に配設されたテンションローラを含む複数のローラと、前記複数のローラの両端を回転可能に支持する一対の支持部材と、前記複数のローラに張架されて回転駆動する転写ベルトと、前記テンションローラを所定方向に付勢して前記転写ベルトに張力を付与するための付勢部材を備えた転写ベルト装置において、
前記テンションローラは、直線方向に移動可能に支持され、
前記付勢部材は、前記一対の支持部材と転写ベルトで囲まれた領域内であって前記一方の支持部材から他方の支持部材へ横断する方向に配設されていることを特徴とする転写ベルト装置。
【請求項2】
前記付勢部材がリンク手段を介して前記テンションローラの両端を所定方向に付勢するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の転写ベルト装置。
【請求項3】
前記リンク手段は、前記テンションローラの両端を回転可能に支持した状態で前記支持部材に摺動可能に配設された一対の保持部材と、前記支持部材に揺動可能に配設されると共に前記付勢部材と保持部材に係合されて付勢部材の付勢力を転写ベルトの張力方向に方向転換する一対の回転部材とを有することを特徴とする請求項2に記載の転写ベルト装置。
【請求項4】
前記回転部材を前記転写ベルトの平面状部分と略平行な板材で形成すると共に、回転部材を転写ベルトの平面状部分と略平行に揺動可能に構成したことを特徴とする請求項3に記載の転写ベルト装置。
【請求項5】
前記一対の支持部材を連結部材で連結すると共に、支持部材の内側に取付部を設け、前記回転部材を前記連結部材と前記取付部との間に配設し、回転部材の回転軸の先端を前記取付部に形成した挿入孔に挿入すると共に、前記回転軸が挿入孔から離脱するまでに回転軸の基端と前記連結部材が干渉するように連結部材を配設したことを特徴とする請求項3又は4に記載の転写ベルト装置。
【請求項6】
前記回転部材の回転軸に直交する両面にそれぞれ接触する姿勢維持部材を備えたことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の転写ベルト装置。
【請求項7】
前記姿勢維持部材を前記連結部材と前記取付部にそれぞれ配設したことを特徴とする請求項6に記載の転写ベルト装置。
【請求項8】
前記付勢部材の付勢力に対抗して前記テンションローラを直接的又は間接的に所定の位置に保持する位置保持手段を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の転写ベルト装置。
【請求項9】
前記付勢部材の付勢力に対抗して前記テンションローラを間接的に所定の位置に保持する位置保持手段を備え、当該位置保持手段は、前記回転部材に形成した孔部と、前記孔部に挿脱可能な軸部材と、前記支持部材の前記転写ベルトの外側の部分に形成すると共に前記軸部材を保持可能な軸保持部を有することを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の転写ベルト装置。
【請求項10】
前記一対の回転部材に共通の付勢部材を連結したことを特徴とする請求項3に記載の転写ベルト装置。
【請求項11】
前記共通の付勢部材が、付勢力発生部と、前記付勢力発生部からその長手方向に延伸した連結部とを有することを特徴とする請求項10に記載の転写ベルト装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の転写ベルト装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
一対の支持部材に回転可能に平行状に配設したテンションローラを含む複数のローラに、転写ベルトを張架する転写ベルト装置の組立方法において、
前記一対の支持部材と前記転写ベルトの配設予定位置で囲まれた領域内であって一方の支持部材から他方の支持部材へ横断する方向に配設した付勢部材と、リンク手段とを連結すると共に、位置保持手段によって当該リンク手段を前記付勢部材の付勢力に対抗して所定の位置に保持する工程と、
前記リンク手段を所定の位置に保持した状態で、リンク手段にテンションローラを連結すると共にテンションローラを含む複数のローラの外周に転写ベルトを配設する工程と、
前記複数のローラの外周に転写ベルトを配設した後に、前記リンク手段の位置保持を解除する工程と、
前記リンク手段の位置保持を解除することによって、前記付勢部材の付勢力がリンク手段を介してテンションローラに伝達されて前記転写ベルトに張力が付与される工程とを有することを特徴とする転写ベルト装置の組立方法。
【請求項14】
前記転写ベルトを複数のローラの外周に装着した後、前記位置保持手段を前記転写ベルトの外側で操作して前記リンク手段の位置保持を解除することを特徴とする請求項13に記載の転写ベルト装置の組立方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−8068(P2013−8068A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225627(P2012−225627)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2007−341292(P2007−341292)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】