説明

転写ローラ

【課題】連続通電時における軸と弾性発泡体層との間のすべりの発生を抑制できる転写ローラを提供する。
【解決手段】軸と、その外周に担持された弾性発泡体層とを備える、正帯電トナー用の転写ローラである。弾性発泡体層が、アニオン成分の荷電制御剤を含有する。荷電制御剤としては、ボロビスカリウム塩を好適に用いることができる。本発明は、特に、軸と弾性発泡体層とが、圧入により一体化されてなる転写ローラにおいて、有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写ローラ(以下、単に「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における電子写真プロセスに使用される転写ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、特にはレーザビームプリンタ(LBP)等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、帯電、現像、転写等の画像形成の各プロセスにおいて、導電性を付与したローラ部材が用いられている。このうち転写ローラは、一般に軸の外周に弾性発泡体層が担持された構造を有し、感光ドラム上に形成されたトナー画像を紙に転写する機能を有している。
【0003】
転写ローラに要求される性能は、電気抵抗、硬度、圧縮永久歪みなど種々あるが、特に、電気抵抗はトナーの引っ張り性に重要な因子である。ローラ性能の改良に係る技術としては、例えば、特許文献1に、圧縮永久歪み等の物性を悪化することなく、かつ、導電性部材としての硬度も適切なものとしつつ、電気抵抗のばらつきを抑えながら、従来にない低抵抗値を実現することを目的として、イオン導電性エラストマー成分を含むと共に、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が添加され、所定条件下での体積抵抗率、圧縮永久歪みおよび硬度が特定された導電性エラストマー組成物を用いてなる導電性部材が開示されている。また、特許文献2には、ブリードアウトを起こさない可塑剤を用い、低コストで導電性,柔軟性を良好にすることを目的として、金属製軸体の外周面に導電性発泡層を形成し、その導電性発泡層の外周面に導電性非発泡層を形成して成る半導電性ローラにおいて、導電性非発泡層に炭酸エステルを含有させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−176056号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2005−284295号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、転写ローラには、トナーを引き寄せるために、感光ドラムとの間で電流を流す必要がある。このとき、電流を流し続けると、ローラの弾性発泡体層に導電性能を付与させる用途で配合しているイオン導電剤が、電気泳動によってブリードする場合がある。これにより、軸側にブリードした成分がすべり成分となって、軸と弾性発泡体層との間ですべりが生じ、このすべりに起因して、画像にムラなどの不具合が発生するという問題があった。
【0005】
通常は、軸と弾性発泡体層とを接着することで、この軸と弾性発泡体層との間のすべりを防止している。しかしながら、この場合、転写ローラの電気抵抗に接着層部位の抵抗が上乗せされることによる性能変化や、軸と弾性発泡体層という異種材料を接着すること自体の技術的困難さ、接着剤使用に伴うコスト増、接着剤を塗布、乾燥させる工程が増えることによる煩雑さおよびコスト増等の新たな問題が生ずることになる。したがって、接着剤を使用することなく、軸と弾性発泡体層との間のすべりを防止しうる技術の確立が求められていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、連続通電時における軸と弾性発泡体層との間のすべりの発生を抑制できる転写ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記イオン導電剤に起因するすべりの発生メカニズムについて検討した結果、以下のようなことを見出した。すなわち、弾性発泡体層に導電性を付与するために、従来は4級アンモニウム塩等の公知のイオン導電剤が用いられていた。この4級アンモニウム塩は電解質であるため、アニオンとカチオンとに電離し、通電による導電性の劣化を抑制する効果がある(通電耐久性能向上)。
【0008】
しかし、このうち高分子量のカチオン成分がすべり成分となる。そのため、この転写ローラを負帯電トナー用として使用している際には問題が生じないが、正帯電トナー用として使用する際には、このカチオン成分が電気泳動により軸側にブリードして、すべりが発生することになる。したがって、弾性発泡体層に上記すべり成分を有しない導電剤、換言すれば、弾性発泡体層中で電離せず、電気泳動の方向が軸からローラ表面に向かう方向である導電剤、特に下記に示すような荷電制御剤を用いれば、このすべりの発生を防止することが可能となるものと考えられる。
【0009】
上記観点から、本発明者はさらに検討した結果、下記構成とすることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の転写ローラは、軸と、該軸の外周に担持された弾性発泡体層とを備える、正帯電トナー用の転写ローラにおいて、
前記弾性発泡体層がアニオン成分の荷電制御剤を含有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記荷電制御剤としては、ボロビスカリウム塩を好適に用いることができる。また、前記弾性発泡体層が発泡ゴムからなる場合には、前記荷電制御剤は、ゴム成分100質量部に対し0.05〜2質量部配合することが好ましい。前記弾性発泡体層がポリウレタンフォームからなる場合には、前記荷電制御剤は、ポリウレタン原料100質量部に対し0.05〜2質量部配合することが好ましい。本発明は、前記軸と前記弾性発泡体層とが、圧入により一体化されてなる場合において特に有用である。
【0012】
なお、前記特許文献1,2中には、フォームからの配合成分のブリードによる感光体の汚染防止に関する開示があるが、特許文献1,2にはいずれも、本発明に係る、軸側に発生するブリードに起因した軸と弾性発泡体層との間のすべり防止に関する開示はなされていない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弾性発泡体層中にアニオン成分の荷電制御剤を配合してブリードの方向を制御したことにより、導電性を損なうことなく、連続通電時における軸と弾性発泡体層との間のすべりの発生を抑制することができる転写ローラを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適実施形態について詳細に説明する。
本発明の転写ローラは、複写機やプリンタ等の画像形成装置において正帯電トナー用として用いられ、軸と、その外周に担持された弾性発泡体層とを備えるものである。
【0015】
本発明のローラにおいては、弾性発泡体層が、アニオン成分の荷電制御剤を含有する点が重要である。従来の、アニオン成分およびカチオン成分を含む4級アンモニウム塩等のイオン導電剤ではなく、アニオン成分の荷電制御剤を用いてローラの抵抗を調整するものとしたことで、軸と弾性発泡体層との間のすべりの問題を解消するとともに、従来と同等の導電性能を担保した転写ローラとすることが可能となった。
【0016】
かかるアニオン成分の荷電制御剤としては、弾性発泡体層中で電離せず、電気泳動の方向が軸からローラ表面に向かう方向であるものであればいかなるものを用いてもよく、具体的には例えば、ボロビスカリウム塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができ、好適にはボロビスカリウム塩を用いる。
【0017】
本発明においては、弾性発泡層中に上記荷電制御剤を配合する点のみが重要であり、それ以外のローラ構成の詳細については常法に従い適宜選定することができ、特に制限されるものではない。
【0018】
例えば、軸としては、良好な導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフト、良導電性のプラスチック製シャフト等を用いることができる。
【0019】
また、弾性発泡体層は、発泡ゴムまたはポリウレタンフォームからなるものとすることができる。
【0020】
弾性発泡体層が発泡ゴムからなる場合のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、塩素化ブチルゴム(CL−IIR)、エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、イソプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。好適には、NBR等のブチル系ゴムとECOとを組合せて用いる。
【0021】
また、発泡ゴム中には、ゴム成分として、液状ゴムを配合することもできる。配合可能な液状ゴムとしては、例えば、液状NBR、液状イソプレンゴム(IR)、液状BR、液状クロロプレンゴム(CR)等が挙げられ、中でも好適には、液状NBRを用いる。発泡ゴム中に液状ゴムを配合することで、練りや成形時の加工性を向上するというメリットが得られる。液状ゴムの配合量は、液状ゴム以外のゴム成分の総量100質量部に対して、3〜15質量部の範囲内である。
【0022】
この場合の荷電制御剤の添加量は、好適には、ゴム成分100質量部に対し0.05〜2質量部の範囲内とする。荷電制御剤の添加量がこの範囲よりも少ないと、導電性付与の効果が発現しないおそれがあり、この範囲よりも多いと分散不良が生ずるおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0023】
発泡ゴムの原料としては、上記ゴム成分および荷電制御剤の他、発泡剤、加硫剤、加硫促進剤、オイル、可塑剤、亜鉛華、ステアリン酸等の通常用いられるゴム薬品を、所望に応じ適宜選択して用いることができる。
【0024】
発泡剤としては、特に制限はなく、公知の無機発泡剤および有機発泡剤のうちから適宜選択して用いることができる。ここで、無機発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水素化ホウ酸ナトリウムなどが挙げられ、有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)などが挙げられる。これらの化学発泡剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも特に、ADCAおよびOBSHが、緻密で均一な発泡セルが得られることから好適である。これら発泡剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対し、通常0.5〜20質量部、好ましくは1〜15質量部の範囲である。
【0025】
加硫剤としては、ゴム材料の種類に応じて、公知の加硫剤、例えば、硫黄や過酸化物などの中から適宜選択して用いることができる。その使用量は、通常、ゴム成分100質量部に対し、1〜10質量部の割合で配合される。また、加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)等のチアゾール系、あるいはジフェニルグアニジン(DPG)等のグアジニン系の加硫促進剤等を挙げることができる。
【0026】
また、発泡ゴム中には、加工性等を向上させるために、カーボンブラックを配合することもできる。かかるカーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト等を挙げることができる。かかるカーボンブラックの配合量としては、例えば、基材100質量部に対して5〜50質量部とすることができる。
【0027】
また、弾性発泡体層がウレタンフォームからなる場合のポリウレタン原料としては、樹脂中にウレタン結合を含むものであれば、特に制限はないが、例えば、下記に挙げるポリイソシアネート成分およびポリオール成分を用いることができる。
【0028】
ポリオール成分としては、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0029】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が好ましくは2〜95質量%、より好ましくは5〜90質量%であり、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましい。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの配列は、ランダムであることが好ましい。
【0030】
なお、かかるポリエーテルポリオールの分子量としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300〜6000の範囲のものが好ましく、400〜3000の範囲のものがより好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900〜9000の範囲のものが好ましく、1500〜6000の範囲のものがより好ましい。更に、2官能のポリオールと3官能のポリオールとを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0031】
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得ることができ、重量平均分子量が400〜4000の範囲、特には、650〜3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。さらに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。
【0032】
さらに、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとをブレンドして用いることも好ましい。この場合、これらのブレンド比率が、重量比で95:5〜20:80の範囲、特には90:10〜50:50の範囲となるよう用いることが好適である。
【0033】
また、上記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やこれらの誘導体を併用することもできる。
【0034】
ポリイソシアネート成分としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートおよびこれらの誘導体等を用いることができる。これらの中でも、芳香族イソシアネートおよびその誘導体、特には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびこれらの誘導体が好適に用いられる。
【0035】
トリレンジイソシアネートおよびその誘導体としては、例えば、粗製トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が用いられる。
【0036】
また、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンおよびその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体などがあり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05〜4.00、より好ましくは2.50〜3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物なども用いることができる。更に、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体等をブレンドして用いてもよい。
【0037】
また、イソシアネートをポリオールによりあらかじめプレポリマー化してもよく、その方法としては、ポリオールとイソシアネートを適当な容器に入れ、充分に攪拌し、30〜90℃、より好ましくは40〜70℃に、6〜240時間、より好ましくは24〜72時間保温する方法が挙げられる。この場合、ポリオールとイソシアネートとの分量の比率は、得られるプレポリマーのイソシアネート含有率が4〜30質量%となるように調節することが好ましく、より好ましくは6〜15質量%である。イソシアネートの含有率が4質量%未満であると、プレポリマーの安定性が損なわれ、貯蔵中にプレポリマーが硬化してしまい、使用に供することができなくなるおそれがある。また、イソシアネートの含有率が30質量%を超えると、プレポリマー化されていないイソシアネートの含有量が増加し、このポリイソシアネートは、後のポリウレタン硬化反応において用いるポリオール成分と、プレポリマー化反応を経ないワンショット製法に類似の反応機構により硬化するため、プレポリマー法を用いる効果が薄れる。イソシアネートをあらかじめポリオールによりプレポリマー化したイソシアネート成分を用いる場合のポリオール成分としては、上記ポリオール成分に加えて、エチレングリコールやブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンやソルビトール等のポリオール類やそれらの誘導体を用いることもできる。
【0038】
ポリウレタン原料の硬化反応に用いる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコール(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0039】
この場合の荷電制御剤の添加量は、好適には、ウレタン原料100質量部に対し0.05〜2質量部の範囲内とする。荷電制御剤の添加量がこの範囲よりも少ないと、導電性付与の効果が発現しないおそれがあり、この範囲よりも多いと分散不良が生ずるおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0040】
また、ポリウレタンフォームには、上記ポリウレタン原料および荷電制御剤に加えて、所望に応じて発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、架橋剤、シリコーン整泡剤や各種界面活性剤等の整泡剤、フェノールやフェニルアミン等の酸化防止剤などを適宜添加することができ、これにより所望に応じた層構造とすることができる。また、難焼剤や、無機炭酸塩等の充填材等を適宜使用することも可能である。
【0041】
このうちシリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物等が好適に用いられ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分とからなるものが特に好ましい。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。また、界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性等のイオン系界面活性剤や各種ポリエーテル、各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリウレタン原料100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.5〜5質量部とすることが更に好ましい。
【0042】
本発明におけるポリウレタンフォームの発泡方法としては、従来から用いられているメカニカルフロス法(不活性ガスを混入しながら機械的攪拌により発泡させる方法)、水発泡法、発泡剤フロス法等の方法を用いることができる。ここで、メカニカルフロス法において用いる不活性ガスは、ポリウレタン反応において不活性なガスであればよく、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ラドン、クリプトン等の狭義の不活性ガスの他、窒素、二酸化炭素、乾燥空気等のウレタンフォーム原料と反応しない気体が挙げられる。
【0043】
本発明の転写ローラは、上記配合からなる発泡ゴム原料またはポリウレタンフォーム原料を用いて、常法に従い製造することができ、その製造方法については、特に制限されるものではない。本発明は、特に、軸と弾性発泡体層とを、接着剤を用いずに圧入により一体化する転写ローラにおいて有用である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
弾性発泡体層に用いる発泡ゴム配合を下記表1中に示すようにそれぞれ変えて、各実施例および比較例の転写ローラを作製した。軸としては、ステンレス製の芯金(φ6mm)を用いた。ローラは、弾性発泡体層にあけた孔に軸を圧入することにより製造した。
【0045】
得られた各供試ローラに対し、N/N環境(22℃55%RH)において、±10μAの条件で、100時間、連続通電耐久試験を行い、その前後におけるL/L環境(15℃15%RH)、N/N環境(22℃55%RH)、H/H環境(28℃85%RH)での電気抵抗値を、それぞれ測定した。また、L/L環境での抵抗値とH/H環境での抵抗値との差を、環境変動の値として求めた。ローラ抵抗の測定は、各環境条件下で、各供試ローラの両端にそれぞれ4.9Nの荷重をかけて、各供試ローラを金属ドラムに圧接させ、各供試ローラと金属ドラムとを所定速度で回転させた状態で、両者間に1000Vの電圧を印加して測定を行い、その平均値をローラ抵抗とした。また、通電耐久後における軸と弾性発泡体層との間のすべりの有無を確認した。これらの結果を、下記の表2中に併せて示す。
【0046】
【表1】

*1)エレガン264wax、日本油脂(株)製
*2)LR−147、日本カーリット製
【0047】
【表2】

【0048】
上記表中に示すように、結果として、弾性発泡体層に、4級アンモニウム塩に代えて荷電制御剤ボロビスカリウム塩を用いた実施例のローラでは、4級アンモニウム塩を用いた比較例のローラと同等の通電耐久性能を有しつつ、軸と弾性発泡層との間の接着なしで、軸と弾性発泡層との間のすべりを防止できることが確かめられた。
【0049】
また、上記比較例1の配合を基準として、イオン導電剤としての4級アンモニウム塩およびボロビスカリウム塩の添加量をそれぞれ下記表中に示すように変えた供試ローラを準備して、各ローラに正負それぞれの電流を流し、軸と弾性発泡体層との間のすべりの有無を確認した。具体的には、ローラ回転試験機を使用して、N/N環境(22℃55%RH)で、各ローラに−10μA(負バイアス印加)および+10μA(正バイアス印加)を100時間、連続通電した。その後の軸と弾性発泡体層との間のすべりの有無を確認した結果を、下記表3(−10μAの場合)および表4(+10μAの場合)中に、それぞれ示す。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
上記表3に示すように、−10μA通電(負バイアス印加)時には、ボロビスカリウム塩のみの添加ではすべりの発生がなかったのに対し、4級アンモニウム塩を添加した場合には全てすべりが発生した。負バイアス時には、電気泳動により分離したイオンのうち4級アンモニウム塩に含まれるカチオン成分が軸に付着するため、このカチオン成分の付着によりすべりが生じていることがわかる。このことから、4級アンモニウム塩中のカチオン成分がすべりの原因となっていることが確認された。
【0053】
これに対し、上記表4に示すように、10μA通電(正バイアス印加)時には、イオン導電剤を相当量配合してもすべりは発生しない。正バイアス時には、電気泳動により分離したイオンのうちアニオン成分が軸に付着するため、このアニオン成分が付着してもすべりは生じないことがわかる。このことからも、4級アンモニウム塩中のカチオン成分がすべりの原因となっていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸の外周に担持された弾性発泡体層とを備える、正帯電トナー用の転写ローラにおいて、
前記弾性発泡体層がアニオン成分の荷電制御剤を含有することを特徴とする転写ローラ。
【請求項2】
前記荷電制御剤がボロビスカリウム塩である請求項1記載の転写ローラ。
【請求項3】
前記弾性発泡体層が発泡ゴムからなり、前記荷電制御剤が、ゴム成分100質量部に対し0.05〜2質量部配合されてなる請求項1または2記載の転写ローラ。
【請求項4】
前記弾性発泡体層がポリウレタンフォームからなり、前記荷電制御剤が、ポリウレタン原料100質量部に対し0.05〜2質量部配合されてなる請求項1または2記載の転写ローラ。
【請求項5】
前記軸と前記弾性発泡体層とが、圧入により一体化されてなる請求項1〜4のうちいずれか一項記載の転写ローラ。

【公開番号】特開2009−157099(P2009−157099A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335110(P2007−335110)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】