説明

転写ロールおよび画像形成装置

【課題】トナーを転写させる際の該トナーの飛び散りを抑制する。
【解決手段】円筒状の導電性支持体112と、導電剤を含有し、アスカーC硬度が5度以上20度以下の内側弾性層113と、導電剤を含有し、アスカーC硬度が30度以上45度以下の外側弾性層114と、をこの順に有し、荷重を掛けない状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、印加電圧1000Vを印加して測定される内側弾性層113の体積抵抗率[ρ(in)]および外側弾性層114の体積抵抗率[ρ(out)]が下記式(1)を満たす転写ロール。
式(1) ρ(in)>ρ(out)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ロールおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた中間転写方式の画像形成装置においては、感光体等の像保持体表面に帯電装置を用いて電荷を形成し、画像信号を変調したレーザ光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像が形成される。そして、該トナー像を中間転写体を介して記録紙等の記録媒体に静電的に転写し、記録媒体に定着することにより画像が得られる。
【0003】
従来、画像形成装置の帯電ロールにおける内層の導電性弾性体層を相対的に低硬度化し、外層の抵抗調整層を相対的に高硬度化して、両層の硬度の度数間に所定値の差を設ける方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、導電性基体の上に、絶縁性ポリウレタン発泡体層が形成され、該絶縁性ポリウレタン発泡体層の上に半導性ゴム層が形成され電子写真用帯電部材が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−275930号公報
【特許文献2】特開2006−350075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、内側弾性層のアスカーC硬度が下記範囲外の場合、外側弾性層のアスカーC硬度が下記範囲外の場合、および下記式(1)の要件を満たさない場合に比べ、トナーを転写させる際の該トナーの飛び散りを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
円筒状の導電性支持体と、
導電剤を含有し、アスカーC硬度が5度以上20度以下の内側弾性層と、
導電剤を含有し、アスカーC硬度が30度以上45度以下の外側弾性層と、
をこの順に有し、荷重を掛けない状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、印加電圧1000Vを印加して測定される前記内側弾性層の体積抵抗率[ρ(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρ(out)]が下記式(1)を満たす転写ロールである。
式(1) ρ(in)>ρ(out)
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記内側弾性層の厚さが、荷重を掛けないときの厚さの20%以上30%以下の少なくとも何れかの厚さとなるよう前記外側弾性層上から荷重を掛けた状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、印加電圧1000Vを印加して測定される前記内側弾性層の体積抵抗率[ρα(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρα(out)]が下記式(2)を満たす請求項1に記載の転写ロールである。
式(2) ρα(in)<ρα(out)
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記内側弾性層に含有される導電剤が電子導電性の導電剤であり、且つ前記外側弾性層に含有される導電剤がイオン導電性の導電剤である請求項1または請求項2に記載の転写ロールである。
【0010】
請求項4に係る発明は、
像保持体と、
該像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
中間転写ベルトと、
該中間転写ベルトを介して前記像保持体と対向し且つ該像保持体から掛けられる荷重によりニップを形成するように配置され、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルト表面に転写するための電圧を印加する、請求項1に記載の転写ロールを用いた一次転写ロールと、
前記中間転写ベルトに転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記一次転写ロールとして内側弾性層および外側弾性層を有する請求項2に記載の転写ロールを用い、
前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(out)]が下記式(3−1)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記一次転写ロールに掛ける請求項4に記載の画像形成装置である。
式(3−1) ρβ−1(in)<ρβ−1(out)
【0012】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
該像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
中間転写ベルトと、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルト表面に転写する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面側に接し該中間転写ベルトとの間に記録媒体が挿入される二次転写ロール、および、前記中間転写ベルトを介して該二次転写ロールと対向し且つ該二次転写ロールから掛けられる荷重によりニップを形成するように配置され、請求項1に記載の転写ロールを用いた対向ロールを備え、前記中間転写ベルト上の前記トナー像を記録媒体に転写するための電圧を印加する二次転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0013】
請求項7に係る発明は、
前記対向ロールとして内側弾性層および外側弾性層を有する請求項2に記載の転写ロールを用い、
前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(out)]が下記式(3−2)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記対向ロールに掛ける請求項6に記載の画像形成装置である。
式(3−2) ρβ−2(in)<ρβ−2(out)
【0014】
請求項8に係る発明は、
像保持体と、
該像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
中間転写ベルトと、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルト表面に転写する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面側に接し該中間転写ベルトとの間に記録媒体が挿入され、請求項1に記載の転写ロールを用いた二次転写ロール、および、前記中間転写ベルトを介して該二次転写ロールと対向し且つ前記二次転写ロールに荷重を掛けて該二次転写ロールにニップを形成させるように配置される対向ロールを備え、前記中間転写ベルト上の前記トナー像を記録媒体に転写するための電圧を印加する二次転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0015】
請求項9に係る発明は、
前記二次転写ロールとして内側弾性層および外側弾性層を有する請求項2に記載の転写ロールを用い、
前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(out)]が下記式(3−3)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記二次転写ロールに掛ける請求項8に記載の画像形成装置である。
式(3−3) ρβ−3(in)<ρβ−3(out)
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、内側弾性層のアスカーC硬度が前記範囲外の場合、外側弾性層のアスカーC硬度が前記範囲外の場合、および前記式(1)の要件を満たさない場合に比べ、トナーを転写させる際の該トナーの飛び散りが抑制される。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、前記式(2)の要件を満たさない場合に比べ、トナーを転写させる際の該トナーの飛び散りが抑制される。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、内側弾性層に電子導電性の導電剤を含有し且つ外側弾性層にイオン導電性の導電剤を含有するとの要件を満たさない場合に比べ、抵抗のムラや抵抗変動が効率的に抑制される。
【0019】
請求項4、6、8に係る発明によれば、一次転写ロール、対向ロール、または二次転写ロールとして、内側弾性層および外側弾性層のアスカーC硬度が前記範囲であり且つ前記式(1)の要件を満たす転写ロールを用いない場合に比べ、画像における像乱れ(トナーの飛び散り、ブラー)が抑制される。
【0020】
請求項5、7、9に係る発明によれば、一次転写ロール、対向ロール、または二次転写ロールとして前記式(2)の要件を満たす転写ロールを用いない場合、および、前記式(3−1)、式(3−2)、または式(3−3)を満たすような荷重および印加電圧が掛けられない場合に比べ、画像における像乱れ(トナーの飛び散り、ブラー)が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る転写ロールを示す概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係る転写ロールの概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る転写ロールが他のロールとニップを形成した状態を示す概略断面図である。
【図4】体積抵抗率の測定方法を説明するための概略図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の転写ロールおよび画像形成装置の実施形態について、詳細に説明する。
[転写ロール]
本実施形態に係る転写ロールは、円筒状の導電性支持体と、導電剤を含有し、アスカーC硬度が5度以上20度以下の内側弾性層(以下単に「内層」と称す)と、導電剤を含有し、アスカーC硬度が30度以上45度以下の外側弾性層(以下単に「外層」と称す)と、をこの順に有し、荷重を掛けない状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、印加電圧1000Vを印加して測定される前記内層の体積抵抗率[ρ(in)]および前記外層の体積抵抗率[ρ(out)]が下記式(1)を満たす。
式(1) ρ(in)>ρ(out)
(以下、この転写ロールを「第1実施形態に係る転写ロール」と称す。)
【0023】
画像形成装置に用いられる転写ロールは、他の導電性のロールと対向配置され、且つ該他のロールから荷重が掛けられてニップ(転写ロールが前記他のロールからの荷重によって押しつぶされている領域)が形成された状態で用いられる。このニップが形成された状態で印加電圧が掛けられると、該ニップ部分で転写ロールから前記他のロール側へまたは前記他のロールから転写ロール側へ電流が流れるが、その際ニップ以外の領域(他のロールからの荷重によって転写ロールが押しつぶされていない領域)でも、放電や漏れ電流が発生することがあった。
転写ロールを画像形成装置に適用する場合、前記放電や漏れ電流の発生は、トナーを転写させる際の該トナーの飛び散りにつながり、その結果形成される画像における像乱れ(トナーの飛び散り、ブラー)の発生につながる。
【0024】
これに対し、図1および図2に示すごとく、上記第1実施形態に係る転写ロール111は、導電性支持体112の外周面上に内層113と外層114とを有し、荷重を掛けない状態(無負荷時)での体積抵抗率が「内層>外層」であり、且つアスカーC硬度が「内層<外層」との構成を有する。この本実施形態に係る転写ロール111が、図3に示すごとく、他のロール115から荷重が掛けられてニップNを形成した場合、アスカーC硬度がより低い範囲である内層113が縮んで厚みが小さくなり、ニップN部分の凹みを内層113が担う。この時、内層113では電子導電性特有の抵抗の電界依存性によって厚みの縮んだニップN部分の抵抗が低くなる。尚、本実施形態に係る転写ロール111では無負荷時の体積抵抗率が上記の通り「内層>外層」であるため、無負荷時の転写ロール111における内層および外層全体の抵抗(即ち導電性支持体112から転写ロール111の外周面までの領域の抵抗)にも内層113の抵抗が寄与する。そのため転写ロールにおける内層および外層全体の抵抗は「ニップN領域<ニップN以外の領域」の関係となる。これにより、内層113の厚みが縮んで抵抗が低くなったニップN領域では導電性支持体112と転写ロール111の外周面との間に良好に電流が流れ、且つ荷重が掛けられていないニップN以外の領域においては導電性支持体112と転写ロール111の外周面との間の電流の流れが抑制されて、電流の流れがニップNに集中するものと推察される。
その結果、転写ロール111と他のロール115とが形成するニップN領域以外の領域での放電や漏れ電流の発生が効率的に抑制されるものと推察され、転写ロール111を画像形成装置に適用する場合であれば、トナーを転写させる際の該トナーの飛び散りが抑制されて、画像における像乱れ(トナーの飛び散り、ブラー)が抑制されるものと推察される。
【0025】
尚、本実施形態に係る転写ロール111では、前記内層113の厚さが、荷重を掛けないときの厚さの20%以上30%以下の少なくとも何れかの厚さとなるよう前記外層114上から荷重を掛けた状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、印加電圧1000Vを印加して測定される前記内層113の体積抵抗率[ρα(in)]および前記外層114の体積抵抗率[ρα(out)]が下記式(2)を満たすことが好ましい。
式(2) ρα(in)<ρα(out)
(以下、この転写ロールを「第2実施形態に係る転写ロール」と称す。)
【0026】
上記第2実施形態に係る転写ロール111と他のロール115とがニップNを形成した際に、転写ロール111の内層113の厚みが縮んで抵抗が低くなった部分で、抵抗の高さが「内層<外層」の関係となる(即ちニップN以外の領域における両者の関係から反転する)ことで、転写ロール111の荷重が掛けられていない領域(即ちニップN以外の領域)では転写ロール111における内層および外層全体の抵抗に内層113の抵抗が寄与し、一方転写ロール111の荷重が掛けられた領域(即ちニップN領域)では転写ロール111における内層および外層全体の抵抗に、外層114の抵抗が寄与する。
そのため、転写ロールにおける内層および外層全体の抵抗は「ニップN領域<ニップN以外の領域」の関係となる。これにより、内層113の厚みが縮んで抵抗が低くなったニップN領域では導電性支持体112と転写ロール111の外周面との間により良好に電流が流れ、且つ荷重が掛けられていないニップN以外の領域においては導電性支持体112と転写ロール111の外周面との間の電流の流れが抑制されて、電流の流れがよりニップNに集中するものと推察される。
その結果、転写ロール111と他のロール115とが形成するニップN領域以外の領域での放電や漏れ電流の発生が効率的に抑制されるものと推察され、転写ロール111を画像形成装置に適用する場合であれば、トナーを転写させる際の該トナーの飛び散りが抑制されて、画像における像乱れ(トナーの飛び散り、ブラー)が抑制されるものと推察される。
【0027】
また、前記内層113に含有される導電剤が電子導電性の導電剤(以下単に「電子導電剤」と称す)であり、且つ前記外層114に含有される導電剤がイオン導電性の導電剤(以下単に「イオン導電剤」と称す)であることがより好ましい。
【0028】
イオン導電剤は電子導電剤に比べ抵抗のムラや抵抗変動が生じにくく、外層114にイオン導電剤を含有することで抵抗のムラや抵抗変動が効率的に抑制される。
また特に、転写ロール111のニップN領域において内層および外層全体の抵抗に外層114の抵抗が寄与する前記第2実施形態に係る転写ロールにおいては、内層113に電子導電剤を含有し外層114にイオン導電剤を含有することで、電流が集中して流れるニップN領域での抵抗のムラや抵抗変動が効率的に抑制され、ニップN領域で安定して電流が流れるものと推察される。
【0029】
尚、本実施形態に係る転写ロールの各構成要素における「導電性」とは、20℃における体積抵抗率が1×10Ωcm以下であることを意味する。
【0030】
−アスカーC硬度の測定方法−
まず転写ロール111から目的とする内層113および外層114をそれぞれ剥がし、内層の測定サンプル(3mm厚)および外層の測定サンプル(10mm厚)をそれぞれ作製する。この測定サンプルの表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の測定針を押しあて、1000g荷重の条件で測定される。
【0031】
−体積抵抗率の測定方法−
内層113および外層114をそれぞれ、個別にチューブ状の形態に作製し、この個別の内層および外層をそれぞれシャフトに被覆して、個別に形成された抵抗測定用サンプルを得る。
「荷重を掛けない状態での内層の体積抵抗率[ρ(in)]」および「荷重を掛けない状態での外層の体積抵抗率[ρ(out)]」は、図4に示す通り前記抵抗測定用サンプル60を金属板70の上に置き、温度22℃、湿度55RH%の環境下、芯金50と金属板70の間に印加電圧V:1000Vを印加して、10秒後の電流値I(A)を読み取り、下記式により計算される。
式 : R=V/I
【0032】
また、「内層の厚さが荷重を掛けないときの厚さの20%以上30%以下の少なくとも何れかの厚さとなるよう前記外側弾性層上から荷重を掛けた状態での内層の体積抵抗率[ρα(in)]」は、図4に示す通り前記抵抗測定用サンプル60を金属板70の上に置き、測定サンプルの厚さが荷重を掛けないときの厚さの20%以上30%以下の何れかの厚さとなるよう芯金50の両端の矢印A1およびA2の箇所に荷重を掛けた状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、芯金50と金属板70の間に印加電圧V:1000Vを印加して、10秒後の電流値I(A)を読み取り、前記式により計算される。
また、「内層の厚さが荷重を掛けないときの厚さの20%以上30%以下の少なくとも何れかの厚さとなるよう前記外側弾性層上から荷重を掛けた状態での外層の体積抵抗率[ρα(out)]」は、既に述べた通りニップN部分の凹みを内層113が担うため、前述の「荷重を掛けない状態での外層の体積抵抗率[ρ(out)]」の測定値を用いる。
【0033】
更に、転写ロール111における内層および外層全体の体積抵抗率(即ち導電性支持体112から転写ロール111の外周面までの領域の抵抗率)は、図4における抵抗測定用サンプル60を転写ロール111に替えることで測定される。
【0034】
尚、体積抵抗率の測定は、抵抗測定用サンプル60を90°ずつずらして周方向の4点について行い、その平均値とする。
【0035】
−達成方法−
尚、前記式(1)の要件および式(2)の要件は、内層113および外層114に用いる導電剤の種類および導電剤の量のバランスを調整することにより達成される。また、内層113および外層114におけるアスカーC硬度は、内層113および外層114のそれぞれに用いる弾性材料等の構成材料を選択することで調整される。
【0036】
以下、本実施形態に係る転写ロール111の各構成要素につき詳細に説明する。
【0037】
(導電性支持体)
導電性支持体112について説明する。
導電性支持体112は、ロール部材の電極および支持部材として機能する部材である。
導電性支持体112としては、例えば、鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属の部材が挙げられる。
導電性支持体112としては、例えば、外側の面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤の分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。
導電性支持体112は、中空状の部材(筒状部材)であってもよいし、非中空状の部材であってもよい。
【0038】
(内側弾性層(内層))
内層113の構成について説明する。
内層113は、例えば、ゴム材料(弾性材料)と、導電剤と、必要に応じてその他添加剤と、を含んで構成される。
【0039】
ゴム材料(弾性材料)としては、例えば、少なくとも化学構造中に二重結合を有する、所謂、弾性材料が挙げられる。
ゴム材料として具体的には、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、およびこれらを混合したゴムが挙げられる。
これらのゴム材料の中でも、ポリウレタン、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、およびこれらを混合したゴムが好適に挙げられる。
【0040】
導電剤としてはイオン導電性の導電剤(イオン導電剤)や電子導電性の導電剤(電子導電剤)が挙げられる。
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
イオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオン導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることがよく、望ましくは0.5質量部以上3.0質量部以下である。
【0041】
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。
ここで、カーボンブラックとして具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、同「MONARCH1300」、同「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
電子導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子導電剤の含有量は、例えば、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることがよく、望ましくは15質量部以上25質量部以下である。
【0042】
その他添加剤としては、例えば、発泡剤、発泡助剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)等の通常弾性層に添加され得る材料が挙げられる。
【0043】
特に内層113には発泡剤を含有させて、気泡を有する弾性層とすることが好ましい。
内層113の平均気泡径(セル径)は、外層114の平均気泡径(セル径)よりも小さいことがよい。
内層113の平均気泡径は、例えば、100μm以上300μm以下であることよい。
内層113の発泡率(発泡倍率)は、例えば、150%以上400%以下であることがよい。
【0044】
ここで、平均気泡径は、デジタルマイクロスコープ(VHX900、キーエンス社製)を用いて計測し、この測定をセル20点につき行った平均値である。
一方、発泡率(発泡倍率)は、デジタル比重計(商品名「AND−DMA−220」、安藤計器製工所社製)を用いて、試料(サンプル)の比重を測定し、当該比重から算出したものである。
【0045】
内層113の気泡(セル)は、隣り合う気泡(セル)同士が独立している状態(いわゆる独立気泡)であってもよいし、連続している状態(いわゆる連続気泡)であってもよい。
【0046】
内層113の厚みは、例えば、1mm以上10mm以下とすることがよく、望ましくは2mm以上5mm以下である。
【0047】
(外側弾性層(外層))
外層114の構成について説明する。
外層114は、例えば、ゴム材料(弾性材料)と、導電剤と、必要に応じてその他添加剤と、を含んで構成される。
【0048】
ゴム材料(弾性材料)、導電剤、その他の添加剤としては、内層113で説明したものが挙げられる。尚、外層114の導電剤にはイオン導電剤を、内層113の導電剤には電子導電剤を用いることがより好ましい。
【0049】
特に外層114には発泡剤を含有させて、気泡を有する弾性層とすることが好ましい。
外層114の平均気泡径(セル径)は、内層113の平均気泡径(セル径)よりも大きいことがよい。
外層114の平均気泡径は、例えば、150μm以上400μm以下であることよい。
外層114の発泡率(発泡倍率)は、例えば、150%以上400%以下であることがよい。
ここで、平均気泡径、発泡率(発泡倍率)の測定方法は、内層113と同様である。
【0050】
外層114の気泡(セル)は、隣り合う気泡(セル)同士が独立している状態(いわゆる独立気泡)であってもよいし、連続している状態(いわゆる連続気泡)であってもよい。
【0051】
外層114の厚みは、例えば、1mm以上10mm以下とすることがよく、望ましくは2mm以上5mm以下である。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る転写ロール111は、例えば画像形成装置において、像保持体(感光体)に対向配置される一次転写ロール、中間転写ベルト上に保持されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写ロール、該二次転写ロールに対向配置される対向ロール等として好適に用いられる。
【0053】
[画像形成装置、プロセスカートリッジ]
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、該像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、中間転写ベルトと、像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルトに転写する一次転写装置と、前記中間転写ベルトに転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、を備え、且つ前記一次転写装置における一次転写ロール、前記二次転写装置における二次転写ロール、または前記二次転写装置における対向ロールとして前述の本実施形態に係る転写ロールを用いる。
【0054】
一次転写ロールとして本実施形態に係る転写ロールを用いる場合、具体的に該一次転写ロールは、中間転写ベルトを介して前記像保持体と対向し且つ該像保持体から掛けられる荷重によりニップを形成するように配置され、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルト表面に転写するための電圧を印加する。
【0055】
尚、前記一次転写ロールでは、前記式(2)を満たす転写ロールを用いることがより好ましく、その場合前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(out)]が下記式(3−1)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記一次転写ロールに掛けることが好ましい。
式(3−1) ρβ−1(in)<ρβ−1(out)
【0056】
対向ロールとして本実施形態に係る転写ロールを用いる場合、具体的に該二次転写装置は、前記中間転写ベルトの外周面側に接し該中間転写ベルトとの間に記録媒体が挿入される二次転写ロール、および、前記中間転写ベルトを介して該二次転写ロールと対向し且つ該二次転写ロールから掛けられる荷重によりニップを形成するように配置される対向ロールを備え、前記中間転写ベルト上の前記トナー像を記録媒体に転写するための電圧を印加する。
【0057】
尚、前記対向ロールでは、前記式(2)を満たす転写ロールを用いることがより好ましく、その場合前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(out)]が下記式(3−2)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記対向ロールに掛けることが好ましい。
式(3−2) ρβ−2(in)<ρβ−2(out)
【0058】
二次転写ロールとして本実施形態に係る転写ロールを用いる場合、具体的に該二次転写装置は、前記中間転写ベルトの外周面側に接し該中間転写ベルトとの間に記録媒体が挿入される二次転写ロール、および、前記中間転写ベルトを介して該二次転写ロールと対向し且つ前記二次転写ロールに荷重を掛けて該二次転写ロールにニップを形成させるように配置される対向ロールを備え、前記中間転写ベルト上の前記トナー像を記録媒体に転写するための電圧を印加する。
【0059】
尚、前記二次転写ロールでは、前記式(2)を満たす転写ロールを用いることがより好ましく、その場合前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(out)]が下記式(3−3)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記二次転写ロールに掛けることが好ましい。
式(3−3) ρβ−3(in)<ρβ−3(out)
【0060】
尚、前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(out)]、前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(out)]、前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(out)]は、荷重および印加電圧の値を前記ニップにおける値に変更する以外は、前述の測定方法に準じて測定される。
【0061】
本実施形態に係る画像形成装置としては、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像装置を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置のいずれのものであってもよい。
【0062】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば上記構成の画像形成装置に脱着され、少なくとも上記本実施形態に係る転写ロールを備える。
【0063】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。図5は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0064】
図5に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに特定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着し得るプロセスカートリッジであってもよい。
【0065】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22および中間転写ベルト20内面に接する対向ロール24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるように、画像形成装置用の転写ユニットを構成している。
なお、対向ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に特定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給し得る。
【0066】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0067】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を特定の電位に帯電させる帯電ロール2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ロール5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを、クリーニングブレードにて除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられ、且つ感光体1Yから掛けられる荷重によりニップを形成するように配置されている。更に、各1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0068】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V以上−800V以下の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0069】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って特定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0070】
現像装置4Y内には、例えば、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き特定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が特定の1次転写位置へ搬送される。
【0071】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ロール5Yに特定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0072】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ロール5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0073】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する対向ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ロール(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。尚、対向ロール24は二次転写ロール26から掛けられる荷重によりニップを形成するように配置されている。一方、記録媒体Pが供給機構を介して2次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接している隙間に特定のタイミングで給紙され、特定の2次転写バイアスが対向ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0074】
この後、記録媒体Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録媒体P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録媒体Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録媒体Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0076】
<内層の形成方法>
(内層の形成−1)
ポリオキシプロピレントリオール(分子量3000)100部と、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製:TDI−80)25部と、を反応させてウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマー100部に、カーボンブラック(Special Black 4A:Degussa社製)15部と、反応活性化触媒としてNメチルモルフォリン1部と、トリエチルアミン0.3部と、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−520)3部と、を添加し30秒間攪拌混合し発泡させて、内層用の発泡液を得た。
φ8mmのSUS製シャフトを入れた金型に前記発泡液を注入し、80℃で熱硬化させ、ウレタンフォームの発泡層を形成し、更に表面を研磨して厚み10mm(外径28mm)に成形して、内層を形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、15度であった。
【0077】
(内層の形成−2)
内層の形成−1のシリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−520)を7部に変更した以外、同じ処方で内層を形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、7度であった。
【0078】
(内層の形成−3)
内層の形成−1のシリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−520)を2部に変更した以外、同じ処方で内層を形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、20度であった。
【0079】
<外層の形成方法>
(外層の形成−1)
エチレンオキサイド基を含有するイオン導電性が高いエピクロルヒドリンゴム(ECO:エピクロマーCG−102:ダイソー社製)60部と、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR:ニポールDN−219:日本ゼオン社製)30部と、を混合し、更に硫黄(鶴見化学工業社製、200メッシュ)1部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーM)1.5部と、発泡剤としてベンゼンスルホニルヒドラジド6部と、を添加してオープンロールで混練りして混合物を得た。この混合物をφ28mmのSUS製シャフトに巻き付け、上記SUS製シャフトを160℃に加熱して前記混合物を加硫発泡させ発泡層を形成し、更に外周面を研磨して外径42mm、厚み7mmにした後シャフトから引き抜き、外層用の発泡チューブを形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、40度であった。
【0080】
(外層の形成−2)
外層の形成−1のベンゼンスルホニルヒドラジドを10部に変更した以外、同じ処方で外層を形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、25度であった。
【0081】
(外層の形成−3)
外層の形成−1のベンゼンスルホニルヒドラジドを3部に変更した以外、同じ処方で外層を形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、48度であった。
【0082】
(外層の形成−4)
外層の形成−1のベンゼンスルホニルヒドラジドを8部に変更した以外、同じ処方で外層を形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、32度であった。
【0083】
(外層の形成−5)
外層の形成−1のベンゼンスルホニルヒドラジドを5部に変更した以外、同じ処方で外層を形成した。アスカーC硬度(1000g荷重)は、43度であった。
【0084】
<転写ロールの作製>
前記内層を形成したSUS製シャフトに、前記外層用の発泡チューブを、エアを吹き込みながら挿入し、転写ロールを得た。尚、各実施例および比較例における内層と外層との組合せは、下記表1の通りである。
【0085】
【表1】



【0086】
〔実施例1〕
(物性値の測定)
荷重を掛けない状態での内層の体積抵抗率[ρ(in)]、荷重を掛けない状態での外層の体積抵抗率[ρ(out)]、荷重を掛けた状態での内層の体積抵抗率[ρα(in)](内層の厚さが荷重を掛けないときの厚さの20%となるよう荷重を掛けた状態)、および、荷重を掛けた状態での転写ロールにおける内層および外層全体の体積抵抗率(即ちシャフトから転写ロールの外周面までの領域の抵抗率)を、温度22℃、湿度55RH%、印加電圧1000Vの測定条件で前述の方法により測定した。
更に温度・湿度の測定条件を、温度10℃・湿度15RH%に変更した低温低湿条件、温度28℃・湿度85RH%に変更した高温高湿条件での各体積抵抗率についても、前述の方法に則して測定した。結果を下記表2に示す。
【0087】
尚、「内層の厚さが荷重を掛けないときの厚さの20%以上30%以下の少なくとも何れかの厚さとなるよう前記外層上から荷重を掛けた状態での外層の体積抵抗率[ρα(out)]」は、既に述べた通りニップN部分の凹みを内層が担うため、前述の「荷重を掛けない状態での外層の体積抵抗率[ρ(out)]」の測定値を用いる。
【0088】
(画質評価試験)
富士ゼロックス社製の画像形成装置:DocuCentre−II C6500の改造機(ニップ形成用に押しつけの度合いを設定し得るよう改造したもの)に、一次転写ロールとして前記転写ロールを使用し、ニップでの荷重条件は内層の厚さが下記表2の「ニップ(負荷時)での内層厚さ」に記載の厚さになるよう設定した。
この画像形成装置を用い、温度22℃・湿度55RH%の環境、温度10℃・湿度15RH%の低温低湿、温度28℃・湿度85RH%の高温高湿で画像を形成し、細線の再現性とドット再現性を、50倍拡大観察して官能評価し、以下の評価基準により評価した。
尚、試験はストレスになるよう、現像後定着前にLED照射しストレスを与えた画像で評価を行った。
◎:トナー飛び散りが見られない
○:僅かに形状が乱れている
△:輪郭が飛び散りで鮮明ではない
×:輪郭が分からない飛び散りがある
【0089】
〔実施例2〜4〕
まず実施例1と同じ方法により転写ロールを得た。
ついで、荷重を掛けた状態での内層の体積抵抗率[ρα(in)]の測定の際の荷重条件(内層の厚さ)、および画質評価試験における画像形成装置でのニップでの荷重条件(内層の厚さ)を、下記表2に記載の「ニップ(負荷時)での内層厚さ」となるよう変更した以外は、実施例1に記載の方法により物性値を測定し、画質評価試験を行った。
結果を表2に示す。
【0090】
〔実施例5〜8、比較例1〜2〕
転写ロールにおける内層と外層との組合せを前記表1に示すごとく変更した以外は、実施例2に記載の方法により物性値を測定し、画質評価試験を行った。
結果を表3に示す。
【0091】
【表2】



【0092】
【表3】



【0093】
比較例2では、表3に示す通り、転写不良が発生したため画質評価が行えなかった。
【符号の説明】
【0094】
1Y、1M、1C、1K 感光体
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K 現像装置
5Y、5M、5C、5K 1次次転写ロール
6Y、6M、6C、6K クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ロール
24 対向ロール
26 2次転写ロール
28 定着装置
30 中間転写体クリーニング装置
50 芯金
60 抵抗測定用サンプル
70 金属板
111 転写ロール
112 導電性支持体
113 内側弾性層(内層)
114 外側弾性層(外層)
115 他のロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の導電性支持体と、
導電剤を含有し、アスカーC硬度が5度以上20度以下の内側弾性層と、
導電剤を含有し、アスカーC硬度が30度以上45度以下の外側弾性層と、
をこの順に有し、荷重を掛けない状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、印加電圧1000Vを印加して測定される前記内側弾性層の体積抵抗率[ρ(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρ(out)]が下記式(1)を満たす転写ロール。
式(1) ρ(in)>ρ(out)
【請求項2】
前記内側弾性層の厚さが、荷重を掛けないときの厚さの20%以上30%以下の少なくとも何れかの厚さとなるよう前記外側弾性層上から荷重を掛けた状態で、温度22℃、湿度55RH%の環境下、印加電圧1000Vを印加して測定される前記内側弾性層の体積抵抗率[ρα(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρα(out)]が下記式(2)を満たす請求項1に記載の転写ロール。
式(2) ρα(in)<ρα(out)
【請求項3】
前記内側弾性層に含有される導電剤が電子導電性の導電剤であり、且つ前記外側弾性層に含有される導電剤がイオン導電性の導電剤である請求項1または請求項2に記載の転写ロール。
【請求項4】
像保持体と、
該像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
中間転写ベルトと、
該中間転写ベルトを介して前記像保持体と対向し且つ該像保持体から掛けられる荷重によりニップを形成するように配置され、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルト表面に転写するための電圧を印加する、請求項1に記載の転写ロールを用いた一次転写ロールと、
前記中間転写ベルトに転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項5】
前記一次転写ロールとして内側弾性層および外側弾性層を有する請求項2に記載の転写ロールを用い、
前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−1(out)]が下記式(3−1)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記一次転写ロールに掛ける請求項4に記載の画像形成装置。
式(3−1) ρβ−1(in)<ρβ−1(out)
【請求項6】
像保持体と、
該像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
中間転写ベルトと、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルト表面に転写する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面側に接し該中間転写ベルトとの間に記録媒体が挿入される二次転写ロール、および、前記中間転写ベルトを介して該二次転写ロールと対向し且つ該二次転写ロールから掛けられる荷重によりニップを形成するように配置され、請求項1に記載の転写ロールを用いた対向ロールを備え、前記中間転写ベルト上の前記トナー像を記録媒体に転写するための電圧を印加する二次転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項7】
前記対向ロールとして内側弾性層および外側弾性層を有する請求項2に記載の転写ロールを用い、
前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−2(out)]が下記式(3−2)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記対向ロールに掛ける請求項6に記載の画像形成装置。
式(3−2) ρβ−2(in)<ρβ−2(out)
【請求項8】
像保持体と、
該像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
中間転写ベルトと、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写ベルト表面に転写する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面側に接し該中間転写ベルトとの間に記録媒体が挿入され、請求項1に記載の転写ロールを用いた二次転写ロール、および、前記中間転写ベルトを介して該二次転写ロールと対向し且つ前記二次転写ロールに荷重を掛けて該二次転写ロールにニップを形成させるように配置される対向ロールを備え、前記中間転写ベルト上の前記トナー像を記録媒体に転写するための電圧を印加する二次転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項9】
前記二次転写ロールとして内側弾性層および外側弾性層を有する請求項2に記載の転写ロールを用い、
前記ニップを形成した状態での前記内側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(in)]および前記外側弾性層の体積抵抗率[ρβ−3(out)]が下記式(3−3)を満たすような荷重および印加電圧を、前記ニップが形成された部分において前記二次転写ロールに掛ける請求項8に記載の画像形成装置。
式(3−3) ρβ−3(in)<ρβ−3(out)

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37079(P2013−37079A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171275(P2011−171275)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】