説明

転写加飾シートの製造方法、加飾成形品の製造方法及び加飾成形品

【課題】十分な剥離性を有し、かつ優れた意匠を成形品に付与することのできる転写加飾シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】表面が離型処理されている基材フィルムの該表面に、剥離層、絵柄層及び接着層を積層する工程を有する転写加飾シートの製造方法であって、少なくとも剥離層及び絵柄層の積層をグラビア印刷により行い、かつ少なくとも剥離層を積層する際の基材フィルムの温度を20℃以下とすることを特徴とする転写加飾シートの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写加飾シートの製造方法、加飾成形品の製造方法及び加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元曲面等の複雑な表面形状を有する樹脂成形体の加飾方法として、射出成形同時加飾法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。射出成形同時加飾法とは、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させ、樹脂成形体表面に加飾を施す方法である。
このような射出成形同時加飾法は、ラミネート加飾法と転写加飾法とに大別することができる。ラミネート加飾法は、基材フィルム及びその上に設けられた装飾層を有する加飾シートの全層が、樹脂成形体の表面に積層一体化されるものであり、一方、転写加飾法は、樹脂成形体の表面に積層一体化された加飾シートのうち、基材フィルムが剥離除去され、装飾層等の転写層のみが樹脂成形体に残留して積層されるものである。転写加飾法では、加飾シートとして転写加飾シートが用いられ、基材フィルムには、成形性に加えて、剥離性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭50−19132号公報
【特許文献2】特公昭61−17255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写加飾シートの剥離性を確保するため、基材フィルムの表面を離型処理し、該離型処理表面に剥離層を設けることが行われる。このような層構成をとることで、剥離性が確保されるが、一方で基材フィルムと剥離層とのなじみが悪くなることから、グラビア印刷法により剥離層を積層する場合には、剥離層を構成するドット状のインクが、ドットごとにはじかれた状態となることがある。このような状態で、該剥離層上に、グラビア印刷により絵柄層が積層されると、剥離層を構成するインキ上に、絵柄層を構成するインキが積層される形となり、絵柄層が基材フィルムの表面に均一に積層されず、絵柄が抜けた部分が生じたり、絵柄に濃淡が生じる場合があって、意匠性を損なうという問題があることがわかった。
本発明は、このような状況下で、十分な剥離性を有し、かつ優れた意匠を成形品に付与することのできる転写加飾シートの製造方法、該転写加飾シートを用いた加飾成形品の製造方法、及び該製造方法により得られた意匠性に優れた加飾成形品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、転写加飾シートの製造過程における、剥離層を積層する工程で、例えば、基材フィルムの裏面に静電気防止層を形成し、乾燥工程を経た直後に剥離層が形成される場合などでは、基材フィルムの温度が高い状態で、剥離層が形成されるために、上記問題が発生しやすいことを見出した。そして、剥離層を積層する工程に際して、基材フィルムを冷却しておくことで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)表面が離型処理されている基材フィルムの該表面に、剥離層、絵柄層及び接着層を積層する工程を有する転写加飾シートの製造方法であって、少なくとも剥離層及び絵柄層の積層をグラビア印刷により行い、かつ少なくとも剥離層を積層する際の基材フィルムの温度を20℃以下とすることを特徴とする転写加飾シートの製造方法、
(2)上記(1)に記載の製造方法により得られる転写加飾シートを用いる加飾成形品の製造方法であって、(A)射出成形金型内に転写加飾シートを配する工程、(B)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形と転写加飾シートの接着を同時に行う工程、及び(C)基材フィルムを剥離する工程を有する加飾成形品の製造方法、及び
(3)上記(2)に記載の方法により得られる加飾成形品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な剥離性を有し、かつ優れた意匠を成形品に付与することのできる転写加飾シートを製造することができる。また、該転写加飾シートを用いた加飾成形品は、優れた意匠性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の転写加飾シートの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の転写加飾シートの製造方法は、表面が離型処理されている基材フィルムの該表面に、剥離層、絵柄層及び接着層を積層する工程を有する。以下、本発明の製造方法について、転写加飾シートの典型的な構造を示す図1を参照しつつ、詳細に説明する。
【0010】
図1は転写加飾シート10の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材フィルム1上に離型層2、剥離層3、絵柄層4、接着層5、及び基材フィルム1の裏面(図1における上部の面)に静電気防止層7を有する。ここでは、基材フィルム1の離型処理として離型層2が設けられており、また、静電気防止層7は射出成形同時加飾に際して、金型に接する面である。
【0011】
基材フィルム1としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、三酢酸セルロース、セロファン、ポリカーボネート、ポリウレタン系等のエラストマー系樹脂等によるものが利用される。これらのうち、成形性及び剥離性が良好である点から、ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という。)が好ましい。
【0012】
基材フィルム1の厚さとしては、形状追従性やしわが発生しにくいなどの成形性、取り扱いが容易であるとの観点から、25〜150μmの範囲が好ましく、さらに50〜100の範囲がより好ましい。
【0013】
上記基材フィルム1は、剥離層3側の表面に離型処理がなされている。離型処理の方法としては種々あるが、基材フィルム1の表面に離型層2を形成する方法が特殊な基材フィルムを用いることなく、簡便に行えることから好ましい。
上記離型層2は、離型剤を塗布、乾燥させることによって形成することができ、離型剤の塗布方法としては、特に限定されず、グラビア印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等を挙げることができる。
また、離型剤としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース樹脂系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤、アクリル樹脂系離型剤及びこれらの複合型離型剤等を用いることができる。これらのうち、アクリル樹脂系離型剤及びポリオレフィン樹脂系離型剤が好ましく、アクリル−ポリエチレン系などのこれらを複合したものが特に好ましい。
【0014】
次に、上記転写加飾シートにおける剥離層3は、射出成形同時加飾後に、基材フィルム1及び離型層2を剥離した際に、転写物の最外層となり、光や薬品、摩耗から成形品や絵柄層を保覆するための層である。従って、耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性等の表面物性に優れるものが好ましい。具体的にはアクリル系樹脂やウレタン系樹脂が好適に用いられる。また、その他の樹脂としては、熱硬化性樹脂組成物や電離放射線硬化性樹脂組成物を用いることもできる。
【0015】
熱硬化性樹脂組成物としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)などを例示することができる。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
なお、電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。
【0016】
上記電離放射線としては、紫外線、電子線、γ線等を挙げることができる。
紫外線の場合のエネルギー源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、無電極放電ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の紫外線ランプ類を挙げることができる。照射線量としては、50〜10000mJ/cm2が好ましい。
また、電子線の場合は、電子線源として、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
【0017】
さらに、剥離層3を構成する樹脂組成物には、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。紫外線吸収剤を含有することにより、加飾成形品に耐候性を付与することができる。具体的には、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量としては、剥離層3を構成する樹脂組成物中に0.1〜30質量%程度である。
また、剥離層3を構成する樹脂組成物には、表面の傷つき防止性を付与するために、ポリエチレンワックスを含有させてもよい。ポリエチレンワックスの含有量としては、剥離層3を構成する樹脂組成物中に0.1〜20質量%程度である。
【0018】
本発明の製造方法においては、剥離層3はグラビア印刷法により製造され、この際に基材フィルムの温度を20℃以下に制御することが重要である。基材フィルムの温度を20℃以下とすることで、剥離層を構成するドット状のインクが、基材フィルム1に濡れ性がよい状態でコートされ、その状態を維持しつつ、後に詳述する絵柄層4が積層される。そのため、剥離層を構成するドット状のインク及び絵柄層を構成するドット状のインクが、はじかれた状態でなく、基材フィルムの表面に、高い濡れ性を有したまま、均一に積層され、その結果、加飾成形品に優れた意匠を付与することができるものである。
特に、剥離層3を塗工する際の基材フィルム1の温度が高い場合に、本発明を適用する効果は大きく、後述する基材フィルム1の裏面に静電気防止層7などの機能性膜を設け、加熱乾燥工程に引き続いて、連続的に剥離層3を設ける場合などに本発明は有効である。通常、静電気防止層7などを設けた場合には、70℃程度で加熱乾燥が行われ、基材フィルム1の温度は50〜60程度まで上昇する。
基材フィルムの温度を20℃以下とする手法については、種々の方法をとることができ、例えば、基材フィルムに冷風を吹きかける方法、内部に冷却水を通したクーリングロールで冷却するなどの方法が例示される。
【0019】
剥離層3をグラビア印刷した後、風乾もしくは100℃以下の温度で10秒以下程度乾燥させ、溶剤を蒸発させる。この条件であれば、基材フィルムが収縮することがなく好ましい。
また、剥離層3の厚さは0.5〜30μmとすることが好ましい。0.5μm以上であると十分な耐摩耗性、耐薬品性などの表面物性が得られ、30μm以下であれば、形状追従性などの成形性が得られるとともに、経済性の点からも有利である。以上の観点から、剥離層3の厚さは1〜10μmの範囲がより好ましい。
【0020】
次に、絵柄層4は、加飾成形品に意匠性を付与するための層である。該絵柄層4としては、例えば、メタリック調などの着色層や、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼調模様、煉瓦積調模様、布目模様、皮絞模様、文字、記号、図形、幾何学模様などの絵柄が挙げられる。本発明は、絵柄層がメタリック調の着色層である場合に特に有効である。
該絵柄層4は、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂、アルキド系樹脂等の樹脂をバインダーとして、適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有する着色インキ等による印刷によって形成することができる。特に好ましい態様であるメタリック調の絵柄は、アクリル樹脂や酢酸セルロース樹脂などのバインダーにアルミニウムなどの箔片を混入させたものなどが用いられる。
本発明においては、絵柄層4の塗工は、剥離層3と同様にグラビア印刷法を用いる。なお、グラビア印刷法は、生産効率の観点から好ましい方法である。
【0021】
次に、接着層5は成形品の表面と転写加飾シート10を接着するためのものである。接着層5には、成形品の素材に適した感熱性又は感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、成形品の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、成形品の材質がポリフェニレンオキサイド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を使用することが好ましい。さらに、成形品の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を使用することが好ましい。
接着層5の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法等のコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法がある。
なお、接着層5の厚さは1〜5μmとすることが好ましい。1μm以上であると十分な接着性が得られ、5μm以下であると経済性の点で有利である。
【0022】
基材フィルム1の裏面に設けられる静電気防止層7は、静電気のスパークによる火災発生の防止、塵埃やほこりの付着による、衛生上の問題や不良品の発生を抑制するために設けられるものである。静電気防止層7は、界面活性剤などの帯電防止剤を塗工することにより、得ることができる。
帯電防止剤としては、種々の界面活性剤が挙げられ、アルキルサルフェート型、アルキルアリールサルフェート型、アルキルホスフェート型、アルキルアミンサルフェート型などのアニオン系界面活性剤;第4級アンモニウム塩型、イミダゾリン型などのカチオン系界面活性剤;ソルビタン型、エーテル型、アミン型、アミド型、エタノールアミド型などのノニオン系界面活性剤;ベタイン型などの両性界面活性剤などが挙げられる。
静電気防止層7の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法等のコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法がある。
【0023】
本発明の加飾成形品の製造方法は、上記転写加飾シートを用いる射出成形同時加飾方法によるものであり、(A)射出成形金型内に転写加飾シートを配する工程、(B)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形と転写加飾シートの接着を同時に行う工程、及び(C)基材フィルムを剥離する工程を有する。
【0024】
(A)工程は、上記転写加飾シート10を成形金型内に配し、挟み込む工程である。具体的には、該転写加飾シート10を、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写層6を内側にして、つまり、基材フィルム1が固定型に接するように転写加飾シート10を送り込む。この際、枚葉の転写加飾シートを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の転写加飾シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。
【0025】
次に、(B)工程はキャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形と転写加飾シートの接着を同時に行う工程である。溶融樹脂は、通常、可動型に設けたゲートより射出され、成形品が形成されるのと同時にその面に転写加飾シートが接着される。
ここで用いることのできる樹脂材料としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等を使用することができる。
【0026】
また、上記(A)工程と(B)工程の間に、さらに(D)真空成形により転写加飾シートを金型に密着させる工程を有することが好ましい。この工程は一般に予備成形と呼ばれるもので、転写加飾シートを所定の位置に配置した後、通常80〜150℃程度に加熱して軟化させ、真空吸引することにより、該シートを成形金型表面に密着させるものである。
【0027】
次いで、冷却した後、成形用金型を開いて、転写加飾シートが接着された加飾成形品を金型から取り出し、基材フィルムを剥離する((C)工程)。基材フィルム1は、離型層2を有するなどの離型処理がなされているため、離型層2と剥離層3との境界面で容易に剥離することができる。このようにして、本発明の転写加飾シートにより、しわのない優れた外観を有し、かつ耐候性、耐摩耗性及び耐薬品性を有する加飾成形品を容易に製造することができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
実施例及び参考例で得られた転写加飾シートについて、以下の方法で評価した。
(1)平均表面粗さ(Ra)
JIS B0601−1976記載の方法に従って行った。具体的には、以下の通りである。
測定には、小坂研究所株式会社製、表面粗さ計「SE−3F」を用いた。測定はまず、触針径2μm、触針加重30mg、カットオフ値0.08mm、測定長2.5mmの条件で、中心線平均粗さを求めた。これを12か所の測定点で行い、このうち最大値と最小値をそれぞれカットし、10点の平均値を求めて平均表面粗さ(Ra)とした。
(2)射出成型同時加飾による加飾成形品の製造
実施例及び比較例で製造した転写加飾シートを金型に配し、予備成形を行った。次いで、金型を閉じ、耐熱性ABS樹脂(日本エーアンドエル社製「MTH」)を射出した。金型温度を60℃、射出樹脂の温度を230℃とし、樹脂は2ヶ所のゲートから射出した。その後、冷却・固化し、得られた加飾成形品について、絵柄の脱落等、意匠性に問題がないか目視にて確認した。
【0029】
実施例1
基材フィルムである厚さ75μmの成型性PETフィルム(加熱により伸張するPETフィルム)の片面(表面)に、アクリル−ポリエチレン系樹脂で構成される離型層を形成した。次いで、該基材フィルムの裏面側に、カチオン界面活性剤をグラビア法により塗工し、70℃で熱風乾燥し、静電気防止層を形成した。熱風乾燥後の基材フィルムの温度は50℃であった。次いで、25℃の室温内にある直径200mmで温度17度のクーリングロールの約3/4円周、フィルムを接触させることにより、基材フィルムを19℃まで冷却した後、前記離型層上にアクリル系樹脂からなる剥離層、絵柄層、及び接着層をグラビア印刷法にて塗布し、転写加飾シートを得た。それぞれの層の厚さは、3μm、2μm、及び3μmとした。なお、基材フィルムの温度は、放射温度計により測定した。このようにして製造した転写加飾シートについて、上記方法にて表面粗さを測定し、また意匠性について評価した。結果を第1表に示す。
【0030】
比較例1
実施例1において、基材フィルムを冷却することなく、剥離層、絵柄層、及び接着層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして転写加飾シートを得た。剥離層を形成する際の基材フィルムの温度は30℃であった。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、十分な剥離性を有し、かつ優れた意匠を成形品に付与することのできる転写加飾シートを製造することができる。また、該転写加飾シートを用いた加飾成形品は、優れた意匠性を有する。
【符号の説明】
【0033】
1.基材フィルム
2.離型層
3.剥離層
4.絵柄層
5.接着層
6.転写層
7.静電気防止層
10.転写加飾シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が離型処理されている基材フィルムの該表面に、剥離層、絵柄層及び接着層を積層する工程を有する転写加飾シートの製造方法であって、少なくとも剥離層及び絵柄層の積層をグラビア印刷により行い、かつ少なくとも剥離層を積層する際の基材フィルムの温度を20℃以下とすることを特徴とする転写加飾シートの製造方法。
【請求項2】
前記基材フィルムの裏面に静電気防止層を形成する工程を有する請求項1に記載の転写加飾シートの製造方法。
【請求項3】
前記離型処理が基材フィルムに離型層を設けることによりなされる請求項1又は2に記載の転写加飾シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの製造方法により得られる転写加飾シートを用いる加飾成形品の製造方法であって、(A)射出成形金型内に転写加飾シートを配する工程、(B)キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形と転写加飾シートの接着を同時に行う工程、及び(C)基材フィルムを剥離する工程を有する加飾成形品の製造方法。
【請求項5】
前記(A)工程と(B)工程の間に、さらに(D)真空成形により転写加飾シートを金型に密着させる工程を有する請求項4に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の方法により得られる加飾成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−73384(P2011−73384A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229144(P2009−229144)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】