説明

転写因子Nrf2活性化剤、並びにその転写因子Nrf2活性化剤を配合した皮膚外用剤、化粧料、及び飲食品

【課題】 酸化ストレスに対する生体の抗酸化防御機構に関与する酵素群の遺伝子発現を誘導する転写因子タンパク質の1つであるNrf2を活性化することによって、酸化ストレスに対する抗酸化防御機構を高めることのできるNrf2活性化剤と、そのNrf2活性化剤を配合した皮膚外用剤、化粧料、及び飲食品に関し、細胞質に存在しているNrf2が、酸化ストレスが生じることで核へ移行して蓄積され、抗酸化酵素群等の発現過程における転写を活性化させている点に鑑み、そのようなNrf2を活性化させる活性化剤と、そのような活性化剤を配合した皮膚外用剤、化粧料、飲食品を提供することを課題とする。
【解決手段】 プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の少なくともいずれかを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写因子Nrf2活性化剤、並びにその転写因子Nrf2活性化剤を配合した皮膚外用剤、化粧料、及び飲食品、さらに詳しくは、酸化ストレスに対する生体の抗酸化防御機構に関与する酵素群の遺伝子発現を誘導する転写因子タンパク質の1つであるNrf2を活性化することによって、酸化ストレスに対する抗酸化防御機構を高めることのできるNrf2活性化剤と、そのNrf2活性化剤を配合した皮膚外用剤、化粧料、及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化ストレスと老化及び様々な病態との関連性を示唆する報告がされている。酸化ストレスは、フリーラジカル等の活性種の生成による生体の機能低下を伴う現象であり、脂質や糖が連鎖的酸化反応を生じ過酸化物や二次的生成物を生じさせること、タンパク質の変性や酵素活性の消失、及びDNA鎖の切断や塩基の変性等がフリーラジカルの細胞障害機序と認められている。
【0003】
生体は本来抗酸化防御機構を備えており、酸化ストレスに対抗すべく各種抗酸化物質や酵素群を自ら産生している。しかし、抗酸化防御機構の許容範囲を超えた量の酸化ストレスを受けた場合や、加齢による抗酸化防御能力が低下すると、酸化と抗酸化のバランスが破綻する。このような酸化と抗酸化のバランスの破綻が、老化の促進や動脈硬化症、癌、心臓病等の疾患を発症又は増悪させる要因の一つであると考えられている。
【0004】
老化の促進の代表的なものに皮膚の老化現象があり、たとえばシワの形成や弾力性の低下、色素沈着、肌理の消失、保湿機能の低下などが挙げられる。これらの皮膚の老化現象は、紫外線暴露によって生じる酸化ストレスによって悪化する。また酸化ストレスが発症や病態の悪化に関連している状態として、上述のような動脈硬化症、癌、心臓病等の他、高血圧、白内障、パーキンソン病・アルツハイマー、胃潰瘍、肝臓病、腎不全等も酸化ストレスを引き起こすと考えられている。たとえばアテローム性動脈硬化症は酸化LDLが発症原因といわれており、抗酸化剤がこの治療に用いられている。さらに虚血再潅流傷害、タバコ、アルコール等も酸化ストレスを引き起こし、酸化ストレス障害に関連する疾患を悪化させると認められている。
【0005】
そして、上述のような酸化ストレスに対しては、一般には老化防止及び疾病予防の健康補助的な食品として、ビタミンC及びその誘導体や、ユビキノール、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化剤や、抗酸化剤を含む植物抽出物を摂取する方法が採用されている。また、これらの抗酸化剤や植物抽出物は、皮膚のシミ、シワなどの予防改善目的の外用剤としても用いられている。
【0006】
しかしながら、これらの抗酸化剤の中には自らが酸化されやすく、製剤中の安定性が低いものもあり、外用もしくは摂取後の効果の持続性に乏しく、十分な効果が得られない場合もある。また酸化ストレスを受ける部位、ストレスの種類は多種多様で、ある特定の抗酸化剤を外用もしくは摂取するだけでは十分な効果が得られるとはいえない。
すなわち、上述のような従来の抗酸化剤や植物抽出物は、酸化ストレスが生ずる結果、発症する個々の症状に対して個別的に使用される一過性のものにすぎず、酸化ストレス
に対する抗酸化防御機構をいかに維持させるかという本質的な観点から開発されているものではない。
【0007】
一方、上述のような酸化ストレスに対しては、生体に種々の抗酸化酵素群が発現していることが知られており、たとえばヘムオキシゲナーゼ(HO−1)やペルオキシドレドキシン(MSP23)が酸化ストレスの際に生ずる過酸化物やラジカルの消去に寄与していることが知られている。
【0008】
そして、近年においては、上述のような抗酸化酵素群を発現させる遺伝子発現誘導において、その酵素群発現に至る転写の段階で種々のタンパク質が転写因子として関与するとの報告がなされており、そのような転写因子の1つとしてNrf2が知られている。
たとえば、下記特許文献1の明細書〔0006〕には、当該特許出願の発明者等が「Nrf2が異物代謝系第2相酵素群の転写活性因子であることを世界に先駆けて報告していること」が記載されている。
【0009】
さらに〔0006〕では、「最強の転写活性を有するNrf2の核移行を制御することにより、異物代謝系第2相を制御していることも明らかにしている。すなわち、Keap1−Nrf2機能複合体に関与する以下の分子メカニズムを提唱した。非ストレス条件下において、Nrf2は細胞質に局在するKeap1のプロペラドメインに結合しているが、酸化ストレス又は第1相解毒酵素により代謝された第2相基質のような刺激に対する細胞制御反応が起ると、Nrf2はKeap1から放出され、すばやく核に移行する。その結果、Nrf2は小Mafのような別のbZipパートナーとヘテロ二量体を形成する。結果として、ヘテロ二量体は標的遺伝子の遺伝子調節領域に存在する抗酸化剤応答配列を介して、標的遺伝子の発現(たとえば、第2相解毒酵素や酸化的ストレス低減タンパク質)をトランス活性化させる。」と記載されている。
【0010】
これらの記載からも明らかなように、転写因子であるNrf2は、酸化ストレスが生じていないときには細胞質に存在し、酸化ストレスが生じると細胞質から核へ移行し、核内に蓄積されて上記のように解毒酵素や酸化的ストレス低減タンパクの発現過程における転写を活性化させているのである。
【0011】
【特許文献1】特開2003−18943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のように、細胞質に存在しているNrf2が、酸化ストレスが生じることで核へ移行して蓄積され、抗酸化酵素群等の発現過程における転写を活性化させている点に鑑み、そのようなNrf2を活性化させる活性化剤と、そのような活性化剤を配合した皮膚外用剤、化粧料、飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上述のような生体の抗酸化防御機構におけるNrf2の作用に着目し、
プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、及びウコン抽出物に上記のようなNrf2の核蓄積に基づく活性化作用があり、抗酸化防御機構を強化する機能があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、転写因子Nrf2活性化剤に係る請求項1記載の発明は、プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の少なくともいずれかを含有することを特徴とする。また請求項2記載の発明は、請求項1記載の転写因子Nrf2活性化剤において、プラティア属植物の抽出物が、サクラダソウの抽出物、プラティア・プベルラの抽出物、又はプラティア・アングラタの抽出物であることを特徴とする。さらに請求項3記載の発明は、請求項1記載の転写因子Nrf2活性化剤において、シトラス属植物の抽出物が、シトラス属植物のチンピ抽出物、セイヒ抽出物、又はキッピ抽出物であることを特徴とする。
【0015】
さらに皮膚外用剤に係る請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の転写因子Nrf2活性化剤を配合したことを特徴とする。また請求項5記載の発明は、請求項4記載の皮膚外用剤において、転写因子Nrf2活性化剤の他に、抗老化成分が配合されていることを特徴とする。
【0016】
さらに化粧料に係る請求項6記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の転写因子Nrf2活性化剤を配合したことを特徴とする。また請求項7記載の発明は、請求項6記載の化粧料において、転写因子Nrf2活性化剤の他に、抗老化成分が配合されていることを特徴とする。
【0017】
さらに飲食品に係る請求項8記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の転写因子Nrf2活性化剤を配合したことを特徴とする。また請求項9記載の発明は、請求項8記載の飲食品において、転写因子Nrf2活性化剤の他に、抗老化成分が配合されていることを特徴とする。さらにグルタチオン産生促進剤に係る請求項10記載の発明は、プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の少なくともいずれかを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、転写因子Nrf2の優れた活性化作用を有する活性化剤を提供することができ、またこのような活性化剤を配合することで、酸化ストレスが原因となる諸症状に対し高い抑制効果を発揮し、皮膚の老化や各種の疾患等に対する防止及び改善に有効な皮膚外用剤、化粧料、飲食品を提供することが可能となった。
また、従来の抗酸化剤のように自らが酸化され易いものではないので、抗酸化剤に比べると、製剤中の安定性、効果の持続性に優れ、さらに抗酸化剤のように発症する個々の症状に対して個別的に使用される一過性のものではなく、酸化ストレスを受ける部位によることなく、且つ多種多様なストレスの種類に応じて抗酸化防御機構を維持することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の転写因子Nrf2活性化剤には、上述のようにプラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の少なくともいずれかを含有するものである。プラティア属植物は、キキョウ科プラティア属の植物であり、本発明においては特にその種類は限定されるものではないが、たとえばサクラダソウ、プラティア・プベルラ、プラティア・アングラタを使用することができる。
【0020】
サクラダソウ(Pratia nummlaria)は、中国南部原産の多年草植物である。またプラティア・プベルラ(Pratia puberula)はタスマニア島原産の多年草植物であり、プラティア・アングラタ(Pratia angulata)はニュージーランド原産の多年草植物である。
【0021】
またシトラス属植物はミカン科シトラス属の植物である。本発明においては、シトラス属植物の果皮の抽出物が主として用いられる。具体的には、たとえば陳皮(チンピ)の抽出物、青皮(セイヒ)の抽出物、橘皮(キッピ)の抽出物が用いられる。陳皮(チンピ)は熟した果皮であり、青皮(セイヒ)は未熟な果皮であり、橘皮(キッピ)はタチバナ(citrus tachibana)の果皮である。
【0022】
プラティア属植物の抽出物(抽出液)は、たとえばプラティア属植物の葉、茎、花、樹皮、種子、果実、根等を乾燥したものから、抽出溶媒で抽出することによって調製される。また、これら葉、茎、花、樹皮、種子、果実、根等を乾燥したものの他、たとえばお茶としてすでに市販されているものを抽出材料として用いることも可能である。またシトラス属植物の抽出物(抽出液)は、シトラス属植物の果皮或いは未熟果を乾燥した乾燥物を、抽出溶媒で抽出する。ウコン(Curcuma longa L.)はショウガ科に属する多年草で、葉、茎、花、樹皮、種子、果実、根等の全草を用いることができるが、根茎を用いることが望ましい。また、ウコンの根茎を乾燥させた生薬を用いることもできる。
【0023】
これら抽出物(抽出液)の調製方法は特に限定されないが、たとえば種々の適当な溶媒を用いて低温若しくは室温で抽出され、或いは加温下で抽出される。抽出溶媒としては、たとえば水またはメタノール、エタノールなどの低級1価アルコール、又はグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、含水アルコール類等を単独或いは組み合わせて用いることができる。好ましい抽出方法の例としては、含水濃度0〜100容量%のエタノールまたは1,3−ブチレングリコールを用い、室温にて1〜5日間抽出を行った後、濾過する方法が挙げられる。
【0024】
本発明の転写因子Nrf2活性化剤は、プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の少なくともいずれかを含有するものであるので、転写因子Nrf2活性化剤が、プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物のいずれか1種のみからなっていてもよく、或いはこれら3種の抽出物のうち、2種若しくは3種が転写因子Nrf2活性化剤に含有されていてもよい。たとえばプラティア属植物の抽出物とシトラス属植物の抽出物を転写因子Nrf2活性化剤に含有させることが可能である。
【0025】
また、2種以上のプラティア属植物の抽出物、若しくは2種以上のシトラス属植物の抽出物を転写因子Nrf2活性化剤に含有させることも可能である。たとえば前記サクラダソウ抽出物、プラティア・プベルラの抽出物、又はプラティア・アングラタのうちの2種若しくは3種を転写因子Nrf2活性化剤に含有させるような場合、或いはシトラス属植物のチンピ抽出物、セイヒ抽出物、又はキッピ抽出物のうちの2種若しくは3種を転写因子Nrf2活性化剤に含有させるような場合である。
【0026】
さらに「含有する」とは、本発明の転写因子Nrf2活性化剤が、プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の1種若しくは2種以上のもののみからなるものであってもよく、またこれらの成分以外のものが含有されていてもよいことを意味する。
【0027】
本発明の皮膚外用剤、化粧料、飲食品には、上述のような転写因子Nrf2活性化剤が配合される。転写因子Nrf2活性化剤の配合量は特に限定されるものではないが、たとえば皮膚外用剤や化粧料の場合、外用剤の全量中、乾燥固形物量として0.0005〜5重量%であることが望ましい。0.0005重量%未満ではNrf2の活性化が
必ずしも十分に発揮されるとは限らず、また5重量%を超えても、その増量分に見合った効果の向上は見られるとは限らないからである。
【0028】
皮膚外用剤とは、皮膚にて適用される各種薬剤を意味し、化粧品、医薬部外品、医薬品等、その用途は問わない。従って、本発明の皮膚外用剤と本発明の化粧料は、その対象が重複する場合もある。皮膚外用剤の形態は特に限定されず、液状、軟膏、クリーム、ゲル、エアゾール等皮膚に適用可能な性状のものであればその種類は問わない。皮膚外用剤が化粧料の場合、乳液、化粧水、パック、洗浄料、ファンデーション等の化粧料や、頭皮に対しては、トニック、リンス、シャンプー、アストリゼント等として使用することができる。
【0029】
皮膚外用剤の形態に応じ、上記必須成分である転写因子Nrf2活性化剤以外に、通常の化粧品や外用医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、たとえば精製水、低級アルコール、多価アルコール、油性成分、粉体、界面活性剤、増粘剤、色材、防腐剤、保湿剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。また本発明の化粧料が口腔化粧品の場合には、歯磨き粉、ジェル、洗口剤、分散液などとして用いることができる。
【0030】
さらに本発明において飲食品とは、狭義の飲食物のみならず、いわゆる健康食品等、美容や健康志向の食品、飲料等も含む。飲食品の形態も特に限定されず、たとえば粉末、錠剤、カプセル、顆粒、散剤などの固形剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤などの液剤、凍結乾燥剤などが例示される。またお茶として煎じて飲用することもできる。さらに食品として、ガム、キャンディ、ヨーグルト、アイスクリーム、清涼飲料水等の嗜好食品とすることもできる。飲食品の形態に応じ、たとえば精製水、生理食塩水、デキストリン、グルコース、マンニトール、ショ糖、乳糖、澱粉、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒドロキシエチレンデンプン等を本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0031】
本発明の転写因子Nrf2活性化剤は、上述のような作用、効果を有するので、皮膚外用剤以外の医薬品、たとえば内服製剤等の医薬品にも適用することが可能である。このような内服薬、或いは上記のような健康食品に適用して経口投与を行う場合、その投与量は、転写因子Nrf2活性化剤の量で一日当たり0.01〜5000mgであることが好ましい。
【0032】
本発明の転写因子Nrf2活性化剤は、既存の抗老化成分と併用して上記のような皮膚外用剤、化粧料、飲食品、医薬品等に配合することにより、酸化ストレスが原因となる諸症状に対し高い抑制効果を発揮するという転写因子Nrf2活性化剤による本来の効果だけではなく、皮膚の老化や各種の疾患等に対する防止及び改善に一層優れた効果が生じることとなる。
【0033】
この場合の抗老化成分とは、抗酸化作用を有する成分、細胞賦活化作用を有する成分、メラニン抑制作用を有する成分、皺を防止しうる成分等、各種の老化の症状を防止しうるような成分を広く含む意味である。そして、この抗老化成分の中には、このような抗老化成分を有効成分として含有する植物抽出物も含む。たとえばアスコルビン酸(ビタミンC)及びその誘導体並びにそれらの塩、トコフェロール(ビタミンE)及びその誘導体、ナイアシンアミド、ナイアシン、グルタチオン、ヒポタウリン、チオタウリン、システイン、N−アセチルシステイン、システアミン等の含硫アミノ酸系成分とその誘導体、レチノール(ビタミンA)及びその誘導体、カロチンやアスタキサンチン等のカロチノイド系成分及びそれらの誘導体、ハイドロキノン及びその誘導体、アルブチン及びその誘導体、アルブチンを含有する植物抽出物、コエンザイムQ10、α-リポ酸、ピクノジェノール及びピクノジェノールを含有する植物抽出物、カテキン等のポリフェノール類、フラボノイド類、、カロチノイド、タンニン、リグニン、サポニン、プロシアニジン、ルチン、ヘスペリジン、クエルセチン、フェルラ酸及びフェルラ酸を含有する植物抽出物、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、パンテノール及びその誘導体、パントテン酸、グラブリジン及びその誘導体、大豆イソフラボン及び大豆イソフラボンを含有する大豆抽出物、エラグ酸及びエラグ酸を含有する植物抽出物、リノール酸やリノレン酸等の高級不飽和脂肪酸及びその誘導体、これらの高級不飽和脂肪酸を10%以上含有する天然油脂等が挙げられる。
【0034】
アスコルビン酸及びその誘導体並びにその塩としては、水溶性アスコルビン酸誘導体として、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、パルミトイル化アスコルビン酸リン酸及びその塩等のアスコルビン酸リン酸エステル及び塩、油溶性アスコルビン酸誘導体として、テトライソパルミチン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビン酸リン酸エステル、パルミチン酸アスコルビル、イソパルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、ジイソパルミチン酸アスコルビル等のアスコルビン酸アルキルエーテルやアスコルビン酸アルキルエステル等の他、アスコルビン酸ポリペプチド、アスコルビン酸キトサン等が挙げられる。
【0035】
ビタミンE誘導体(トコフェロールの誘導体)としては、たとえばニコチン酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、酢酸トコフェロール等が挙げられる。またレチノール誘導体としては、パルミチン酸レチノール、リノール酸レチノール、酢酸レチノール等が挙げられる。
【0036】
本発明の活性化剤で活性化する転写因子Nrf2は、上述のように生体中に存在する様々な抗酸化酵素群、解毒酵素群等の発現量を制御している。細胞質に存在するNrf2は活性酸素などの酸化ストレスによって核に移行して蓄積し、抗酸化酵素群や解毒酵素群を発現させる。
【0037】
Nrf2により発現量が制御される抗酸化酵素群、解毒酵素群には、グルタチオンSトランスフェラーゼ、γグルタミルシスティニルシンセターゼ、ヘムオキシゲナーゼ1、キノンオキシドレダクターゼ1、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン、チオレドキシン、ビリルビン、メタロチオネイン、フェリチン、ペルオキシドレドキシンなどが挙げられる。Nrf2の制御下にある遺伝子産物は上記以外にも多数報告されている。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0039】
(実施例1)
サクラダソウを乾燥して細切し、水、エタノール等の含水濃度50容量%エタノール100mlを加え、室温にて5日間抽出を行ったのち濾過し、サクラダソウ抽出液を得た。このとき乾燥固形物量は1.35重量%であった。
【0040】
(実施例2)
プラティア・ブベルラを乾燥して細切し、水、エタノール等の含水濃度50容量%エタノール100mlを加え、室温にて5日間抽出を行ったのち濾過し、プラティア・ブベルラ抽出液を得た。このとき乾燥固形物量は1.45重量%であった。
【0041】
(実施例3)
プラティア・アングラタを乾燥して細切し、水、エタノール等の含水濃度50容量%エタノール100mlを加え、室温にて5日間抽出を行ったのち濾過し、プラティア・アングラタ抽出液を得た。このとき乾燥固形物量は1.25重量%であった。
【0042】
(実施例4)
温州みかんの果皮を乾燥して細切し、水、エタノール等の含水濃度50容量%エタノール100mlを加え、室温にて5日間抽出を行ったのち濾過し、チンピ抽出液を得た。このとき乾燥固形物量は1.45重量%であった。
【0043】
(実施例5)
温州みかんの未熟果実を乾燥して細切し、水、エタノール等の含水濃度50容量%エタノール100mlを加え、室温にて5日間抽出を行ったのち濾過し、セイヒ抽出液を得た。このとき乾燥固形物量は1.65重量%であった。
【0044】
(実施例6)
橘の果皮を乾燥して細切し、水、エタノール等の含水濃度50容量%エタノール100mlを加え、室温にて5日間抽出を行ったのち濾過し、キッピ抽出液を得た。このとき乾燥固形物量は1.25重量%であった。
【0045】
(実施例7)
ウコンの根茎を乾燥して細切し、水、エタノール等の含水濃度50容量%エタノール100mlを加え、室温にて5日間抽出を行ったのち濾過し、ウコン抽出液を得た。このとき乾燥固形物量は1.75重量%であった。
【0046】
(試験例1)
〔細胞内グルタチオン量測定試験〕
転写因子Nrf2活性化作用を有する物質は、細胞内のグルタチオン濃度を増加させることが報告されている。従って本発明の転写因子Nrf2活性化剤について、下記のような試験を行って細胞内グルタチオン濃度を測定することにより、転写因子Nrf2活性化剤の活性化作用を確認することができる。
【0047】
試験には正常ヒト新生児包皮皮膚由来線維芽細胞を用いた。10容量%牛胎児血清(ICN社製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(シグマ社製)に細胞を懸濁し、径60mm培養シャーレに播種し、CO2インキュベーター(95容量%空気、5容量%二酸化炭素)内、37℃の条件下で24時間培養した。
【0048】
24時間培養後、植物抽出物の乾燥固形物量が培地中に乾燥残分として100μg/mLの濃度で含まれる試料添加培地に交換した。すなわち、シャーレから上記のように培養した培地を除去し、予めサクラダソウ抽出液(実施例1)の乾燥残分が100μg/mLの濃度で含まれるように添加された、牛胎児血清を含まないダルベッコ改変イーグル培地(シグマ社製)をシャーレに入れ換え、CO2インキュベーター(95容量%空気、5容量%二酸化炭素)内、37℃の条件下で24時間培養した。
【0049】
このように24時間培養した後に、トータルグルタチオン量測定キット(同仁製)を用いて、同説明書に従ってグルタチオン量を測定した。すなわち、上記のような線維芽細胞(5×105cells)の培養物を200gで10分間、4℃で遠心し、上清を廃棄した後にPBSを300μL入れ、再び200gで10分間、4℃で遠心し、上清を廃棄することにより洗浄した。洗浄後の培養物に10mMのHClを80μL加え、凍結と溶解を2回繰り返し、細胞膜を破壊した。さらに5%スルホサリチル酸を20μL加え、8000gで10分間遠心し、上清を測定試料とした。グルタチオン濃度の測定は96穴マイクロプレート(96ウエルプレート)上で行った。まず、キット付属のCoenzyme working solution 140μLとEnzyme working solution 20μLを各ウエルに入れ、30℃で5分間インキュベートした。
【0050】
次に、上記のように調整した測定試料と、キット付属の検量線作成用のGSH standard solutionとを、各々のウエルに20μL添加し、30℃で10分間インキュベートした。さらに各ウエルに20μLのSubstrate working solutionを入れ、10分間、室温でインキュベートし、マイクロプレートリーダー(大日本製薬製)で各ウエルの吸光度を測定した。グルタチオン濃度は、5,5'−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸〔5,5'−dithiobis−2−nitorobenzoic acid〕が、グルタチオンの酸化と同時に5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸〔5−mercapto−2−nitorobenzoic acid〕に還元されることを利用し、この物質の吸光度である412nmを測定し、同時に設定したグルタチオン標準品にて作成した検量線から計算した。また、上記のようにして得られた細胞溶解液中のタンパク質量はプロテインアッセイ(バイオラッド社製)を用いて求めた。この細胞溶解液中には、ヒト線維芽細胞から抽出されたグルタチオンが含まれており、細胞内グルタチオン量は、タンパク質量あたりのグルタチオン量であらわした。
【0051】
サクラダソウ(実施例1)以外の植物の抽出物、すなわちプラティア・プベルラの抽出物(実施例2)、プラティア・アングラタの抽出物(実施例3)、チンピ抽出物(実施例4)、セイヒ抽出物(実施例5)、キッピ抽出物(実施例6)についても、同様に上記牛胎児血清を含まないダルベッコ改変イーグル培地(シグマ社製)に、乾燥残分が100μg/mLの濃度で含まれるように添加して、上述のようなグルタチオン量の測定を行なった。尚、この場合の試料添加培地の濃度は、ヒト線維芽細胞が死滅しない範囲で適宜変更することができる。
【0052】
一方、これらの植物抽出物を添加しない無添加の培地(牛胎児血清を含まないダルベッコ改変イーグル培地)についても同様にグルタチオン量の測定を行なった。そして、ヒト線維芽細胞内のグルタチオンの量の他、無添加のものを100とした場合の値(比率)も算出した。試験結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、サクラダソウ抽出物、プラティア・プベルラ抽出物、プラティア・アングラタ抽出物、チンピ抽出物、セイヒ抽出物、及びキッピ抽出物を添加した場合のグルタチオンの量は、いずれも無添加の場合の約1.4倍以上と多く、グルタチオン合成促進効果が認められた。特にサクラダソウ抽出物の場合には、グルタチオンの量が無添加の場合の約1.8倍以上と、グルタチオン合成促進効果が優れたものであった。
【0055】
また正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞を用いて同様の試験を行った。ただし、培地は
ダルベッコ改変イーグル培地に代えて、正常ヒト表皮角化細胞増殖用無血清液体培地Humedia−KG2(クラボウ製)を用いた。培地には表皮角化細胞の増殖に必要なインスリン、hEGF(human epidermal growth factor)、ハイドロコーチゾン、また抗菌剤としてゲンタマイシン及びアンフォテリシンBを含有させている。試験結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2から明らかなように、サクラダソウ抽出物、プラティア・プベルラ抽出物、プラティア・アングラタ抽出物、チンピ抽出物、セイヒ抽出物及びキッピ抽出物を添加した場合のグルタチオンの量は、いずれも無添加の場合に比べて多く、グルタチオン合成促進効果が認められた。特にサクラダソウ抽出物とチンピ抽出物の場合には、グルタチオンの量が無添加の場合の約1.4倍以上と、グルタチオン合成促進効果が優れたものであった。
【0058】
(試験例2)
〔転写因子Nrf2活性化作用の確認〕
正常ヒト新生児包皮皮膚由来線維芽細胞を用いた。10%牛胎児血清(ICN製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(シグマ製)に細胞を懸濁し、100ミリシャーレに播種し、CO2インキュベーター(95容量%空気、5容量%二酸化炭素)内、37℃の条件下で培養した。24時間後、サクラダソウ抽出物(実施例1)を添加した試料添加培地に交換し、さらに6時間培養後に核タンパク質(細胞核に存在していたタンパク質)を抽出した。
【0059】
試料添加濃度は、試験例で有効性の得られた濃度、すなわち培地乾燥残分として100μg/mLで行った。核タンパク質液は、以下の手順で調整した。細胞をLysis buffer A(20mM HEPES(pH7.6),20容量%グリセリン、10mM NaCl, 1.5mM MgCl2 0.2mM EDTA,1mM DTT,0.1容量%NP−40)に懸濁し、氷上に20分間インキュベーションした後、4℃、1500gで5分間遠心し、得られた沈殿物にLysis buffer B(20mM HEPES(pH7.6),20容量%グリセリン、500mM NaCl,1.5mM MgCl2, 0.2mM EDTA,1mM DTT,0.1容量%NP−40)を添加して、4℃で20分撹拌後、再び4℃、1500g、10分間遠心して上清を得た。
【0060】
核タンパク液はSample buffer(125mM Tris−HClpH6.8,4重量%SDS,20容量%グリセリン、10容量%メルカプトエタノール)に溶解し、電気泳動を行なった。ゲル上のタンパク質はニトロセルロースメンブレン(バイオラッド社製)に転写し、3%脱脂粉乳を含むTBS buffer(20mM Tris.base, 137mM NaCl)に1時間浸漬し、ブロッキングした。0.05容量%のTween20を含むTBS bufferで洗浄後、一次抗体であるNrf2抗体(サンタクルーズ製)を含むTBS bufferに交換して一晩浸した後、二次抗体であるHRP標識抗体(サンタクルーズ製)を含むTBS bufferに1時間浸漬した。
【0061】
0.05容量%のTween20を含むTBSバッファーで洗浄後、ニトロセルロースメンブレンにHRPの基質(サンタクルーズ製)を反応させ、フィルムに露光させて得られた結果をデンシトメトリー(アトー社製)で解析した。内部標準として、一次抗体に核内で常時定量的に存在しているLaminB抗体(サンタクルーズ製)を用いて同様の操作を行い、内部標準に対するNrf2量を求めた。
以上の操作をサクラダソウ(実施例1)以外の植物の抽出物、すなわちプラティア・プベルラの抽出物(実施例2)、プラティア・アングラタの抽出物(実施例3)、チンピ抽出物(実施例4)、セイヒ抽出物(実施例5)、キッピ抽出物(実施例6)についても同様に培地に添加して同様の操作を行なった。一方、これらの植物抽出物を添加しない無添加の培地についても同様に操作を行なった。無添加時の内部標準に対するNrf2量を1として各植物抽出液を添加した場合の各試料のNrf2量の比を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表3からも明らかなように、サクラダソウ抽出物、プラティア プルベラ抽出物、プラティア アングラタ抽出物、チンピ抽出物、セイヒ抽出物及びキッピ抽出物を添加した場合、無添加時に比べてNrf2量が著しく多く、従ってこれらの抽出物にはNrf2の核蓄積を誘導し、活性化する作用が認められた。特にサクラダソウ抽出物を添加した場合にはNrf2量は無添加時の6倍を超えていた。
【0064】
(試験例3)
〔シワ改善及び美白効果試験〕
上記のとおり、Nrf2活性化作用を有するサクラダソウ抽出物、プラティア・プルベラ抽出物、プラティア・アングラタ抽出物、チンピ抽出物、セイヒ抽出物及びキッピ抽出物のうちの1つであるサクラダソウ抽出液を配合したクリームを下記製法にて調製し(処方例1)、シワ改善及び美白効果を調べた。サクラダソウ抽出液の無添加のものを比較例3とし、また上述の抗老化成分の1つである抗酸化剤として一般に用いられているアスコルビン酸誘導体であるアスコルビン酸リン酸マグネシウム塩を配合したクリームを比較例1とし、コエンザイムQ10を配合したクリームを比較例2として比較した。また、Nrf2活性化剤と抗酸化剤との併用効果を確認するために、サクラダソウ抽出液の他に上記アスコルビン酸リン酸マグネシウム塩を配合したもの(処方例2)、及びコエンザイムQ10を配合したもの(処方例3)についても試験した。
【0065】
スクワレン、セチルイソオクタノエート、及びマイクロクリスタリンワックスを加熱溶解後、粘土鉱物、POEグリセロールトリイソステアリン酸エステル(界面活性剤)を加え、70℃に保ち、均一に分散・溶解して油性ゲルを得た。
【0066】
次に、サクラダソウ抽出液を所定濃度となるよう精製水に溶解し、70℃に加温した後、油性ゲルの中へ十分に撹拌しながらゆっくりと添加した。ホモミキサーで均一に混合した後、脱気、30℃まで冷却し、クリームを得た。得られた試験例3のクリームの組成及び配合比は次のとおりである。
【0067】
(処方例1)
組成 配合比(重量%)
スクワレン 20 %
セチルイソオクタノエート 8.5%
マイクロクリスタリンワックス 1 %
粘土鉱物 1.3%
POEグリセロール
トリイソステアリン酸エステル 0.2%
サクラダソウ抽出液 1 %
水 残量
【0068】
(処方例2)
組成 配合比(重量%)
スクワレン 20 %
セチルイソオクタノエート 8.5%
マイクロクリスタリンワックス 1 %
粘土鉱物 1.3%
POEグリセロール
トリイソステアリン酸エステル 0.2%
サクラダソウ抽出液 1%
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 2 %
水 残量
【0069】
(処方例3)
組成 配合比(重量%)
スクワレン 20 %
セチルイソオクタノエート 8.5%
マイクロクリスタリンワックス 1 %
粘土鉱物 1.3%
POEグリセロール
トリイソステアリン酸エステル 0.2%
サクラダソウ抽出液 2 %
コエンザイムQ10 0.03%
水 残量
【0070】
(比較例1)
組成 配合比(重量%)
スクワレン 20 %
セチルイソオクタノエート 8.5%
マイクロクリスタリンワックス 1 %
粘土鉱物 1.3%
POEグリセロール
トリイソステアリン酸エステル 0.2%
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 2 %
水 残量
【0071】
(比較例2)
組成 配合比(重量%)
スクワレン 20 %
セチルイソオクタノエート 8.5%
マイクロクリスタリンワックス 1 %
粘土鉱物 1.3%
POEグリセロール
トリイソステアリン酸エステル 0.2%
コエンザイムQ10 0.03%
水 残量
【0072】
(比較例3)
組成 配合比(重量%)
スクワレン 20 %
セチルイソオクタノエート 8.5%
マイクロクリスタリンワックス 1 %
粘土鉱物 1.3%
POEグリセロール
トリイソステアリン酸エステル 0.2%
水 残量
【0073】
〔試験方法〕
被験者は25歳〜54歳の女性の中から、シワ、シミ及び/又はくすみのある90名を選抜した。処方例1乃至3及び比較例1乃至3の被験クリーム1品につき15名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、3カ月間にわたって洗顔後に被験クリームの適量を顔面に塗布した。塗布によるシワ改善効果は以下の基準によって評価した。シワの改善度は下記の評価基準に従って目視判定し、ハリは弾力性を指標としてキュートメーターを用いて測定した。
【0074】
キュートメーターとは、皮膚にプローブを密着させ、プローブ内を陰圧にしたときに吸引される皮膚の変化量及び時間的変化を測定する機器である。減圧から5秒後の変位量をUFとし、減圧開放直後の変位量をUrとする。比較例3のクリーム塗布試験終了後のUr/UFから試験開始前のUr/UFを差し引いた値を100として各処方例1乃至3及び比較例1、2のクリームの値を比であらわした。尚、各被験者の任意の5カ所を測定してUr/UFを平均した場合、試験前の値が試験後を上回る被験者はいなかった。値が高いほど試験開始前よりも弾力性が高いことを示す。
【0075】
肌色の明るさ及びシミ、クスミの目立ち易さは下記の評価基準に従って目視判定し、同時に肌色の明るさを色彩色差計(ミノルタ製)で測定した。評価結果は比較例3のクリームの試験終了後のL*値から試験開始前のL*値を差し引いた値を100として各処方例1乃至3及び比較例1、2のクリームのL*値の上昇を比であらわした。尚、各被験者で任意の5カ所を測定してL*値の平均を算出したところ、試験前の値が試験後を上回る被験者はいなかった。値が高いほど明度が高く、より明るい肌色になったことを示す。
【0076】
(評価基準)
<シワ評価> <内容>
有効 ハリ、ツヤが付与され、シワが改善された。
やや有効 ハリ、ツヤは付与されたが、シワの改善には至らない。
無効 使用前と変化なし。
<美白評価> <内容>
有効 肌色が明るくなり、シミ、くすみが目立たなくなった。
やや有効 肌色が明るくなったが、シミ、くすみは変化なし。
無効 使用前と変化なし。
【0077】
シワ改善評価の結果を表4に示し、美白評価を表5に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
表4からも明らかなように、サクラダソウ抽出液を配合した処方例1のクリームは、サクラダソウ抽出液及び抗酸化剤を含有しない比較例3のクリームに比べて、シワやタルミを改善し、ハリのある肌になることができ、美しい肌とすることが明らかとなった。
そして一般に効果があるとされる抗酸化剤を含有した比較例1、2のクリームと比べても遜色がなく、むしろ優れた結果が得られた。さらに、サクラダソウと抗酸化剤との双方を含有した処方例2、3では、シワ改善効果が高められることが分かり、特にコエンザイムQ10をサクラダソウとともに含有する処方例3では非常に優れた結果が得られた。
【0081】
また表5からも明らかなように、サクラダソウ抽出液を配合した処方例1のクリームは、サクラダソウ抽出液及び抗酸化剤を含有しない比較例3のクリームに比べて美白効果を得ることができ、美しい肌とすることが明らかとなった。そして一般に効果があるとされる抗酸化剤を含有した比較例1、2のクリームと比べても遜色がなく、むしろ優れた結果が得られた。さらにサクラダソウと抗酸化剤との双方を含有した処方例2、3では、美白効果が一層高められることが分かった。
【0082】
(官能評価)
処方例1乃至3及び比較例1乃至3のクリームを用いた場合の肌への効果を被験者に質問した。回答の集計結果を表6及び表7に示す。表6はシワに対する満足度、表7はシミに対する満足度の結果である。
【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
表6、7からも明らかなように、シワ、シミに対する満足度を示す官能評価によってもサクラダソウ抽出液を配合した処方例1のクリームに良好な効果が確認された。また抗酸化剤を併用した処方例2、3のクリームには一層良好な効果が認められた。
【0086】
以上の表4、5、6、7の判定結果より、本発明のNrf2活性化剤の1つであるサクラダソウ抽出物を配合したクリームは皮膚に適用した場合の安全性にも優れ、ハリ、ツヤ、シワ改善およびシミ、くすみの改善にも有効であることがわかった。また抗酸化剤を併用することにより、さらに効果が強化された。
【0087】
(試験例4)
〔過酸化脂質予防〕
サクラダソウ抽出物の摂取と、血中の過酸化脂質量への影響について調べた。市販の飼料(日本クレア製、CE−2粉末状)に3重量%濃度のサクラダソウ抽出物を混合し、10週齢ウィスター系ラット(一群8匹)に自由摂食させ、8週間後に血液中の過酸化脂質量およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)活性を測定した。血液はラットの尾静脈より採取し、抗凝固剤としてヘパリンを10U/mL濃度で添加した。
【0088】
過酸化脂質濃度は過酸化脂質テストワコー(和光純薬工業製)のキットを用いた。これは試料中の過酸化脂質濃度をマロンジアルデヒド濃度として求める方法で、同説明書に従って測定を行った。簡潔に説明すると、血液に生理食塩水を添加して、遠心後得られた上清にN/12硫酸及び10%リンタングステン酸水溶液を添加し、再び遠心して得られた沈殿に蒸留水とTBA試薬(8.8mol/L酢酸、3.35mg/mL 2−チオバルビツール酸)を添加し、沸騰水浴中で60分加熱した。
【0089】
冷却後、n−ブタノールで抽出し、遠心分離後に上層の蛍光を測定した。測定には励起波長515nm、蛍光波長553nmのフィルターを装着したマイクロプレートリーダー(大日本製薬製)を用いた。過酸化脂質濃度は、本キットの標準液(5nmol/ml 1,1,3,3−テトラエトキシプロパン、マロンジアルデヒドを定量的に与える)を同時に測定し、作成した標準曲線より算出した。
【0090】
次にGPX活性をBIOXYTECH pl・GPx.340TM (OXIS製)のキットを用いて測定した。GPXは還元型グルタチオンを用いて過酸化物を無毒化する働きがある。本キットでは、この反応で生成した酸化型グルタチオンをNADPH存在下でグルタチオンレダクターゼによって還元させ、この際に減少するNADPH量を吸光度(340nm)から求めるものである。実験操作は同キットの説明書に従った。
【0091】
すなわち、1500g,10分間,4℃で遠心操作を行い、上清の血漿および白血球画分を取り除き、赤血球を回収した。回収した赤血球は蒸留水で4倍に希釈し、これを測定用試料とした。次にこの測定用試料をキットに付属のAssay buffer 350μLと付属のNADPH溶液350μLと混合し、分光光度計(ベックマンコールター製)を用いて340nmの吸光度を測定した。さらにキット付属のt−ブチルヒドロペルオキシド溶液を350μL加え、よく混合した後、再び340nmの吸光度を測定した。3分後再び340nmの吸光度を測定した。
【0092】
ヘモグロビンあたりのGPx活性に補正するため、ヘモグロビン濃度を測定した。ヘモグロビンはフェロシアン化カリウムとシアン化カリウムの作用により、極めて安定したシアンメトヘモグロビンを生成し、その生成物の濃度は分光光度計を用いて540nmの吸光度に比例する。この生成物とヘモグロビンの含有量は正比例をなすため、試料中のヘモグロビン濃度は、ヘモグロビン標準品の吸光度より作成できる標準曲線より算出できる。すなわち、血液10μLまたはヘモグロビン標準品と反応溶液(0.00014重量%重炭酸ナトリウム、0.02重量%フェリシアン化カリウム、0.005重量%シアン化カリウム)2.5mLを混合して15分放置し540nmの吸光度を測定した。
【0093】
試験結果を表8に示す。
【0094】
【表8】

【0095】
表8からも明らかように、サクラダソウ抽出物の摂取により過酸化脂質量が無摂取群に比べ有意に低下し、GPx活性は高くなることがわかった。この結果はサクラダソウを摂取することによって体内の酸化を防ぎ、酸化ストレスが増悪させる症状や疾病の予防をすることができることを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の少なくともいずれかを含有することを特徴とする転写因子Nrf2活性化剤。
【請求項2】
プラティア属植物の抽出物が、サクラダソウの抽出物、プラティア・プベルラの抽出物、又はプラティア・アングラタの抽出物である請求項1記載の転写因子Nrf2活性化剤。
【請求項3】
シトラス属植物の抽出物が、シトラス属植物のチンピ抽出物、セイヒ抽出物、又はキッピ抽出物である請求項1記載の転写因子Nrf2活性化剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の転写因子Nrf2活性化剤を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項5】
転写因子Nrf2活性化剤の他に、抗老化成分が配合されている請求項4記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の転写因子Nrf2活性化剤を配合したことを特徴とする化粧料。
【請求項7】
転写因子Nrf2活性化剤の他に、抗老化成分が配合されている請求項6記載の化粧料。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかに記載の転写因子Nrf2活性化剤を配合したことを特徴とする飲食品。
【請求項9】
転写因子Nrf2活性化剤の他に、抗老化成分が配合されている請求項8記載の飲食品。
【請求項10】
プラティア属植物の抽出物、シトラス属植物の抽出物、又はウコン抽出物の少なくともいずれかを含有することを特徴とするグルタチオン産生促進剤。

【公開番号】特開2007−31315(P2007−31315A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214385(P2005−214385)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】