説明

転写材搬送装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】画像のチリや乱れ等の異常画像の発生を抑制することができるベルト式転写材搬送装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体1に対向配置され、ローラ13、14、15等の駆動手段を含む複数の張架部材により張架されて表面に転写材Pを担持しながら走行する搬送ベルト11を備え、転写材を感光体1と搬送ベルト11との間の転写ニップ部に搬送するとともに、転写ニップ部でトナー像が転写された転写材Pを定着装置23に向けて搬送する搬送ユニット10において、上記搬送ベルト11は、転写ニップ通過直後の転写材Pから一時的に離間すべく、転写ニップ通過直後の走行面が曲げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等に用いられる、ベルト式転写材搬送装置及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体である感光体を帯電した後、原稿像を露光するか、あるいはレーザー走査光学系やLED光書込光学系等により画像信号に応じた光書き込みを行ない、感光体上に静電潜像を形成する。そして、感光体上の潜像を現像装置のトナーにより現像して顕像化し、転写部にてこのトナー像を転写紙等の転写材に転写する。感光体から転写材への転写は中間転写体を介する場合もある。そして、転写後の転写材を定着装置に搬送し、定着装置でトナー像を定着して画像を得ている。このような画像形成装置において、転写材を転写部まで搬送し、且つ転写後の転写材を定着装置に搬送する装置として、搬送ベルトを用いたベルト式転写材搬送装置が知られている。このベルト式転写材搬送装置は、ローラやガイド板だけで転写材を搬送する場合に比べて、転写材を安定して搬送することが可能である。
【0003】
しかし、ベルト式転写材搬送装置では、転写部から定着装置へ向けて転写材を搬送する際に、画像のチリや乱れ等の異常画像が発生することが問題となっている。画像のチリや乱れは、転写材と搬送ベルトとの分離時に発生する剥離放電や、両者の分離後から定着装置までの搬送経路上に配置された搬送ガイド板等の部材と転写材との間で生じる放電等が原因である。特に、これは、高抵抗となる転写材への転写時や、一度定着装置を通過した後の転写材の裏面への転写時に発生しやすくなる。
【0004】
転写材を搬送ベルトから分離する際には、搬送ベルトを張架するローラ部分での搬送ベルトの曲率と、転写材の剛性とを利用する。しかし、転写材と搬送ベルトとは静電吸着しているため、転写材が搬送ベルトから分離する際に両者の間で剥離放電が起きる。トナーがマイナス極性である場合、転写バイアスはプラス極性となり、転写時の放電により転写材へは負電荷が移動するため、転写材は負帯電し、搬送ベルトは正帯電する。このため、転写材を搬送ベルトから分離する際に剥離放電が起きるのである。そして、転写材と搬送ベルトとの分離時には、転写材上のトナー画像は未定着であり静電吸着により転写材上に付着している不安定な状態にある。そのため、上述した剥離放電の状態が激しいと、その衝撃によって転写材上の未定着トナーが飛び散り、トナー画像のチリや乱れが発生する。また、剥離放電後も、転写材に負電荷が残るため、転写材と搬送ガイド板等の搬送経路上の部材との間で放電が起きやすい。
【0005】
この問題に対して、特許文献1及び2には、搬送ベルトと転写材との分離位置に設置されたローラに転写バイアスと同極性の電圧を付与する方法が開示されている。上述した剥離放電をなるべく分離位置に近接した箇所で行うようにするためである。これにより、通常では放電が発生しないような、転写材と搬送ベルトとの間の小さなギャップにおいても、放電が発生するようになる。ギャップが小さい時ほど、小さな放電が数多く均一に発生することになり、ギャップが大きい時のように局所的な大きな放電が起こらない。このため、トナー画像のチリや乱れ具合を小さくすることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示される方法においても、転写材と搬送ベルトとの間で剥離放電が生じたり、剥離放電後も転写材と搬送経路上の部材との間で放電が生じたりする。このため、これらを原因とする画像のチリや乱れ等の異常画像が発生する不具合を十分に抑制することができないのが実情である。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、画像のチリや乱れ等の異常画像の発生を抑制することができるベルト式転写材搬送装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、像担持体に対向配置され、駆動手段を含む複数の張架部材により張架されて表面に転写材を担持しながら走行する搬送ベルトを備え、転写材を該像担持体と該搬送ベルトとの間の転写ニップ部に搬送するとともに、該転写ニップ部でトナー像が転写された転写材を定着部に向けて搬送する転写材搬送装置において、上記搬送ベルトは、転写ニップ通過直後の転写材から一時的に離間すべく、転写ニップ通過直後の走行面が曲げられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、画像のチリや乱れ等の異常画像の発生を抑制することができるベルト式転写材搬送装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図。
【図2】第二の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図。
【図3】第三の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図。
【図4】第四の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図。
【図5】第五の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図。
【図6】第六の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明適用した画像形成装置の第一の実施形態について説明する。図1は第一の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図である。図1に示すように、この画像形成装置は、像担持体たる感光体1の周囲に、帯電装置2、現像装置3、ドラムクリーニング装置4、除電装置等が配設される作像ユニット5を備えている。この作像ユニット5は、各種装置を共通の保持体に保持し、装置本体に対して一体的に脱着することで、各種装置を同時に交換できるようになっている。上記感光体1は、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中矢印A方向に回転駆動される。帯電装置2は帯電ローラ2aを備え、図示しない電源により帯電バイアスが印加される帯電ローラ2aを感光体1に接触あるいは近接させながら、感光体1と帯電ローラ2aとの間に放電を発生させることで、感光体1の表面を一様帯電せしめる。本実施形態においては、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に感光体1を一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ2aは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電装置2としては、帯電ローラ2a等の帯電部材を感光体1に接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる帯電方式を採用してもよい。
【0012】
また、上記作像ユニット5の上方には、図示しない潜像書込手段たる光書込ユニットが配設されており、光書込ユニットは、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、感光体1を光走査する。一様帯電せしめられた感光体1の表面は、光書込ユニットから発せられるレーザー光Lによって光走査されて静電潜像を担持する。具体的には、感光体1の一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニットは、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。これに代えて、LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書き込みを行うものを採用してもよい。
【0013】
上記現像装置3は、感光体1表面に形成された静電潜像に帯電したトナーを付着させることでトナー像を可視像化する。この現像装置3は、ケーシング内に現像ロール3aを内包する現像部と、現像剤を撹拌搬送するスクリュウ部材3b、3cを内包する現像剤搬送部とを有している。スクリュウ部材3b、3cは、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根と有する。そして、現像剤搬送部内では、スクリュウ部材3b、3cが回転することにより、現像剤が攪拌され現像ロール3aへと搬送される。また、現像剤搬送部において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、現像剤搬送部の現像剤のトナー濃度を検知する。トナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤の透磁率は、トナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサはトナー濃度を検知していることになる。そして、本現像装置3には、現像剤搬送部にトナーを補給するための図示しないトナー補給手段が設けられている。画像形成装置の制御部は、RAMにトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるVtrefを記憶している。トナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Vtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけトナー補給手段を駆動する。これにより、現像装置3における現像剤搬送部にトナーが補給される。
【0014】
上記現像部に収容されている現像ロール3aは、スクリュウ部材3bに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体1にも対向している。この現像ロール3aは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部に現像スリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、スクリュウ部材3bから供給される現像剤をマグネットローラの発する磁力によって現像スリーブ表面に担持しながら、現像スリーブの回転により感光体1に対向する現像領域に搬送する。現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体1の静電潜像よりも大きく、且つ感光体1の一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体1の静電潜像との間には、現像スリーブ上のトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体1の地肌部との間には、現像スリーブ上のトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のトナーが感光体1の静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をトナー像に現像する。本現像装置3はトナー、キャリアを有する二成分現像剤を使用した現像システムを使用しているが、これに代えて、トナーのみを有する一成分現像剤を使用した現像システムを使用してもよい。
【0015】
また、上記作像ユニット5の下方には、搬送ベルト11を具備する搬送ユニット10が配設されている。搬送ベルト11は、転写ローラ6や、駆動ローラを含む複数のローラ12、13、14、15により、感光体1に対向する走行面が略水平方向となるように略逆三角形に張架され、矢印B方向に表面移動する。そして、この搬送ユニット10では、搬送ベルト11を感光体1と転写ローラ6との間に挟みこんで転写ニップ部を形成している。搬送ベルト11の体積抵抗率は10[Ωcm]〜1012[Ωcm]、好ましくは約1010[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。
【0016】
また、上記搬送ユニット10の下方には、転写材Pを紙束の状態で収容する給紙カセット20が配設されている。転写材Pは最終的に画像を得る媒体で、紙やOHP等の樹脂シート等である。給紙カセット20は、紙束の一番上の転写材Pに給紙ローラ21を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その転写材Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対22が配設されている。給紙カセット20内の転写材Pは、画像形成動作とタイミングを合わせて給紙ローラ21により所定の搬送経路に向けて給紙され、レジストローラ22の手前で待機する。レジストローラ22は、挟み込んだ転写材Pを感光体1上のトナー像が転写ニップ部に到達するタイミングに合わせて送出する。レジストローラ22により送出された転写材Pは、略水平方向に張架された搬送ベルト11の走行面に載り、図中矢印C方向に搬送される。
【0017】
そして、上記搬送ベルト11上に搬送された転写材Pは、感光体1の周速度と等速ないしは略等速の周速度を持って感光体1の回転方向に対して順方向に搬送され、転写ローラ6と感光体1に挟まれた転写ニップ部に搬送される。転写ニップ部では、転写材Pが感光体1に対して所定の押圧力をもって圧接されつつ、図示していない高圧電源を具備する転写ローラ6により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、感光体1表面に形成されたトナー像は、上記転写ニップ部において転写材Pの表面に転写される。
【0018】
トナー像を転写材Pに転写したあとの感光体1の表面に残存する転写残トナーは、ドラムクリーニング装置4により除去され、感光体1表面が清掃される。次いでその感光体1表面は図示していない除電装置、例えば除電ランプによってその表面電位が初期化される。なお、ドラムクリーニング装置4としてはクリーニングブレード、クリーニングローラー、クリーニングブラシ等を用いることができ、それらを併用してもよい。また、これらのクリーニング部材にトナーと逆極性の電圧を印加して、クリーニングの効率を高めることもできる。
【0019】
このようにして、上記搬送ユニット10においてトナー像が転写された転写材Pは、支持ローラ13の位置で搬送ベルト5から分離し、定着装置23に向けて搬送される。定着装置23は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ23aと、これに向けて押圧される加圧ローラ23bとの当接による定着ニップ部に転写材Pを挟み込み、加熱や加圧の作用によりトナー像を定着せしめる。トナー像が定着せしめられた転写材Pは、その後機外に排出されるか、裏面に画像を形成させる場合には、転写材Pは図示しない転写材反転機構を通り、再び転写ニップへ搬送され、画像形成が行われる。なお、本定着装置は、定着ローラ23aと加圧ローラ23bにより定着ニップ部を構成する方式であるが、これに代えて、定着ベルトを用いて定着ニップ部を構成する方式等を採用してもよい。
【0020】
ここで、本発明の特徴部となる搬送ユニット10の転写ニップ部周辺の構成について詳細に説明する。搬送ベルト11は、感光体1に対向する走行面が略水平方向となるように張架されて転写材Pの搬送経路を構成しているが、転写ニップ部通過直後の転写材Pから一時的に離間すべく、その走行面が一部曲げられている。具体的には、図1に示すように、搬送ベルト11は、ローラ15と転写ローラ6によって走行面が水平方向になるように張架されるが、ローラ16によって下側に押し下げられるようにして走行面が曲げられている。そして、この搬送ベルト11はローラ12により再度走行面が曲げられ、ローラ12とローラ13とによって走行面が水平に戻るように張架されている。これにより、転写ニップ部を通過直後の転写材Pは、一旦搬送ベルト11から一旦離間し、再び搬送ベルト11と接触するように搬送される。
【0021】
上記構成の搬送ユニット10において、転写材Pは転写ニップ部を通過するとき、感光体1と転写材Pとの間で放電が発生し、転写材Pの表面はトナーと同極性、ここでは負極性に帯電する。一方、転写ニップ通過直後に搬送ベルト11と転写材Pとが一時的に離間するため、転写時に転写材Pの裏面でも放電が発生する。このとき転写材Pの裏面(搬送ベルト側の面)はトナーと逆極性、ここでは正極性に帯電する。これにより、転写材Pの表面と裏面の帯電量の合計量となる転写材Pの総帯電量を小さく制御することが可能である。
【0022】
上記転写材Pの総帯電量は、上述した転写材Pの表裏両面の放電量を制御することで小さくすることができる。転写材Pが表裏両面で放電する場合、転写材Pの表面や裏面に残存する帯電量は、先に放電を開始した面の方が多いため、転写材Pの最終的な帯電極性は先に放電を開始した面の極性となり、各面の帯電量は各面に接する部材の曲率に依存する。つまり、転写材Pと感光体1の 間の距離が転写材Pと搬送ベルト11との間の距離よりも先に開くように構成すると転写材Pの総帯電量は負極性になる。しかし、搬送ベルト11の走行面の曲率を大きくし、転写材Pと感光体1の間の距離が転写材Pと搬送ベルト11との間の距離と同様に開くように構成すると転写材Pの総帯電量は減少し0に近くなる。そして、搬送ベルト11の走行面の曲率をさらに大きくし、転写材Pと搬送ベルト11の間の距離が転写材Pと感光体1の間の距離よりも先に大きくなるように構成すると転写材Pの総帯電量は正極性になる。図1に示す搬送ユニット10では、感光体1の曲率と搬送ベルト11が転写ニップ通過直後に転写材Pから離間する曲率を同程度にし、転写材Pの総帯電量が0付近まで小さくなるように構成されている。
【0023】
このように、第一の実施形態に係る搬送ユニット10では、転写ニップ通過直後の転写材Pの総帯電量を0付近まで小さくすることができるので、その後転写材Pと搬送ベルト11との分離時においても剥離放電が発生しにくい。また、転写材Pと搬送ベルト11の分離後においても、転写材Pの総帯電量が小さいため、転写材Pと分離位置よりも転写材搬送方向下流側に設置される搬送ガイド板等の部材との間で放電が発生しにくい。これにより、これらを原因とするチリ等の異常画像の発生を抑制することができる。
【0024】
次に、第二の実施形態に係る搬送ユニット及びこれを用いた画像形成装置の構成について説明する。図2は第2の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図である。以下、図中、図1で説明した部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略し、異なる構成部分について説明する。
【0025】
第2の実施形態に係る搬送ユニット30においても、第一の実施形態に係る搬送ユニット10のように、転写ベルト11は、転写ニップ通過直後の転写材Pから一時的に離間すべく、その走行方向が曲げられている。しかし、第二の実施形態に係る搬送ユニット30では、図2に示すように、転写ニップ直後に搬送ベルト11が転写材Pから離間する曲率を図1よりもさらに大きくし、転写材Pと搬送ベルト11の間の距離が転写材Pと感光体1の間の距離よりも早く大きくなるように構成されている。具体的には、図2に示すように、搬送ベルト11は、ローラ15と転写ローラ6によって走行面が水平方向になるように張架され、ローラ18によって下側に押し下げられるようにして走行面が垂直方向となるように曲げられている。そして、搬送ベルト11は、ローラ12により再度走行面が曲げられ、ローラ12とローラ13とによって走行面が水平に戻るように張架されている。これにより、上述したように、転写ニップ通過直後の転写材Pの総帯電量は正極性になる。
【0026】
そして、第2の実施形態に係る搬送ユニット30においては、搬送ベルト11と転写材Pとが一時的に離間する空間に放電装置17が具備されている。放電装置17は除電針といわれる針状の電極であり、接地されているかあるいは任意の電圧を印加する電圧印加手段と接続されている。除電針等で転写材Pの除電を行う場合、転写材Pが負極性に帯電していると画像部前端の非画像部面を除電したときに画像部から除電部へ向かってトナーが飛翔しチリが発生する不具合が生ずるが、転写材Pが正極性に帯電している場合は、除電時にチリが発生しない。本実施形態では転写材Pは正極性に帯電しており、放電装置7と転写材Pの間で放電が発生する。これにより、転写材Pの裏面には負極性の電荷が付着し転写材Pの総帯電量が減少する。
【0027】
このように、第二の実施形態に係る搬送ユニット30では、転写ニップ通過直後の転写材Pの総帯電量を0付近まで小さくすることができるので、その後転写材Pと搬送ベルト11との分離時においても剥離放電が発生しにくい。また、転写材Pと搬送ベルト11の分離後においても、転写材Pの総帯電量が小さいため、転写材Pと分離位置よりも転写材搬送方向下流側に設置される搬送ガイド板等の部材との間で放電が発生しにくい。これにより、これらを原因とするチリ等の異常画像の発生を抑制することができる。
【0028】
次に、第三の実施形態に係る転写ユニット及びこれを用いた画像形成装置の構成について説明する。図3は第三の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図である。以下、図中、図2で説明した部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略し、異なる構成部分について説明する。
【0029】
第三の実施形態に係る搬送ユニット31においても、第2の実施形態に係る搬送ユニット30のように、搬送ベルト11が転写ニップ通過直後の転写材から一時的に離間すべく、搬送ベルト11の走行面が一部曲げられている。そして、搬送ベルト11と転写材Pとが一旦離間する位置に放電装置17が具備されている。しかし、第3の実施形態に係る搬送ユニット31において、転写材Pはローラ13において搬送ベルト11から分離するが、このとき搬送ベルト11の走行面は、ローラ19によって転写材Pと搬送ベルト11との空隙が徐々に大きくなるように傾斜(図3中左下がり)が付けられている。また、転写材Pと搬送ベルト11の分離位置から定着装置23の間には、転写材Pを定着装置23の定着ニップ部に案内すべく、ガイド板24が設置されている。このガイド板24においても、転写材Pとガイド板24の間の空隙が徐々に大きくなるように、搬送方向下流側の端部が傾斜あるいは曲率を持った構造となっている。
【0030】
抵抗の高い転写材Pや両面印刷の転写材Pの裏面等においては、転写後の転写材Pの総電荷量が高く、搬送ベルト11と転写材Pの分離時や分離後の搬送経路上において転写材Pの電位が急上昇しやすく、チリ等の異常画像が発生しやすい。このような場合、放電装置17により除電を行っても除電が十分ではなくチリ等の異常画像が発生することがある。しかし、本実施形態に係る搬送ユニット31のように転写材Pと搬送ベルト11の分離部において転写材Pと搬送ベルト11間の空隙が徐々に大きくなるように、搬送ベルト11の走行面を構成することにより、転写材Pの電位の急上昇を抑制し、チリ等の異常画像を抑制できる。同様に、転写材Pとガイド板24間の空隙が徐々に大きくなるようにガイド板24を設置することにより、転写材Pの電位の急上昇を抑制し、チリ等の異常画像を抑制できる。
【0031】
次に、第四の実施形態に係る転写ユニット及びこれを用いた画像形成装置の構成について説明する。図4は第四の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図である。以下、図中、図2で説明した部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略し、異なる構成部分について説明する。
【0032】
第四の実施形態に係る搬送ユニット32においても、第2の実施形態に係る搬送ユニット30のように、搬送ベルト11が転写ニップ通過直後の転写材Pから一時的に離間すべく、搬送ベルト11の走行面が一部曲げられている。そして、搬送ベルト11と転写材Pとが一旦離間する位置に放電装置17を備えている。しかし、第四の実施形態に係る搬送ユニット32において、搬送ベルト11は、ローラ15と転写ローラ6との間、ローラ12とローラ13との間で、走行面が縦方向(地面に対して垂直方向)になるように張架されているのである。これにより、転写材Pは転写ニップ部を縦方向に搬送されることになる。なお、転写材Pの搬送方向は必ずしも垂直である必要はなく、上方へ向けて角度をつけて搬送してもよい。
【0033】
第四の実施形態に係る搬送ユニット32においては、第二の実施形態に係る搬送ユニット30と同様に、転写材Pの総電荷量が小さく制御されるため、転写材Pと搬送ベルト11の分離時や分離後の搬送経路においてチリ等の異常画像が発生し難い。これに加えて、第四の実施形態に係る搬送ユニット32においては、転写材Pの搬送方向を縦方向とすることにより、搬送方向を横方向(水平方向)とする場合に比べ装置内のレイアウトの自由度が高まり、装置の容量を小さくすることが可能となる。また、縦方向に転写材を搬送する場合は、搬送経路上で転写材Pがたわむ等、転写材Pの搬送が不安定になりやすい。しかし、本実施形態に係る搬送ユニット32は、転写材Pが搬送ベルト11に吸着して搬送される転写材搬送装置であるため、紙の姿勢が安定する。
【0034】
次に、第五の実施形態に係る転写ユニット及びこれを用いた画像形成装置の構成について説明する。図5は第五の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図である。
【0035】
第五の実施形態に係る画像形成装置においては、図5に示すように、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(K)の4色を出力するための作像ユニット5Y、5C、5M、5Kを有している。ここで色数は制限されるものではなく、5色以上の作像ユニットを有する装置を採用しても良い。各色の作像ユニット5Y、5C、5M、5Kは、図1で説明した作像ユニット5と同様に、感光体1Y、C、M、Kの周囲に、帯電装置2Y、2C、2M、2K、現像装置3Y、3C、3M、3K、ドラムクリーニング装置4Y、4C、4M、4Kを備えている。これら各色の作像ユニット5Y、5C、5M、5Kは、各々、これら装置を共通の保持体に保持し、装置本体に対して一体的に脱着することで、各種装置を同時に交換できるようになっている。そして、各色の作像ユニット5Y、5C、5M、5Kは、図1で説明したように、感光体1Y、1C、1M、1K表面を帯電装置2Y、2C、2M、2Kで帯電させ、光書込ユニット7で潜像を形成し、現像装置3Y、3C、3M、3Kでトナー像を形成する。
【0036】
また、作像ユニット5Y、5C、5M、5Kの下方には、搬送ベルト11を備える転写材搬送装置たる搬送ユニット33が配設されている。搬送ベルト11は、駆動ローラを含む複数のローラ12、13、14、15等により張架され、転写材Pを表面に担持して図中矢印C方向に無端移動せしめられる。そして、搬送ユニット33では、感光体1Y、1C、1M、1Kに対向する位置に、転写ローラ6Y、6C、6M、6Kを備え、感光体1Y、1C、1M、1Kと転写ローラ6Y、6C、6M、6Kとの間に搬送ベルト11を挟み込んで、Y、C、M、K用の転写ニップが形成されている。転写ローラ6Y、6C、6M、6Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ転写バイアスが印加され、感光体1Y、1C、1M、1K上のY、C、M、Kトナー像と、転写ローラ6Y、6C、6M、6Kとの間に転写電界が形成される。転写ローラ6Y、6C、6M、6Kはローラであり、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備しているが、ローラに代えて、転写チャージャーや転写ブラシ等を採用してもよい。
【0037】
一方、給紙カセット20から給紙ローラ21より所定のタイミングで供給される転写材Pは、レジストローラ22によって作像ユニット5Y、5C、5M、5Kによる作像タイミングに合わせて、搬送ベルト11上に供給される。そして、搬送ベルト11に担持された転写材Pは搬送ベルト11の表面移動によって、はじめにY用の転写ニップに搬送される。感光体1Y上に形成されたトナー像は、転写ニップ部で転写電界やニップ圧の作用により転写材P上に転写される。このようにしてY(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(ブラック)の順で各感光体1Y、1C、1M、1K上に形成されたトナー像が転写材P上に転写され、重ね合わせカラートナー像が形成される。トナー像が転写された転写材Pは、ローラ13の位置で搬送ベルト8から分離され、定着装置23に搬送され、トナー像が定着される。定着後、転写材Pは機外に排出されるか、裏面に画像を形成させる場合には、転写材Pは図示しない転写材反転機構を通り、再び転写ニップへ搬送され画像形成が行われる。一方、転写材P上にトナー像を転写した後の感光体1Y、1C、1M、1Kは、ドラムクリーニング装置4Y、4C、4M、4Kによって転写残トナーの除去がなされ、必要に応じて図示しない除電ランプで除電された後、再度、帯電装置2Y、2C、2M、2Kで一様に帯電される動作を繰り返す。なお、本実施形態に係る搬送ユニット33においては、転写ローラ6Y、6C、6Mは感光体1Y、C、Mから離間可能な構成となっており、作像ユニット5Kのみで画像形成を行う場合には、他色の作像ユニット5Y、5C、5Mの感光体1Y、1C、1Mから転写ローラ6Y、6C、6Mを離間させることができる。
【0038】
ここで、第五の実施形態に係る搬送ユニット33では、搬送ベルト11の感光体1Y、1C、1M、1Kに対向する走行面が略水平方向となるように張架されている。そして、搬送ベルト11は、転写材搬送方向最下流側に位置する転写ニップ部通過直後の転写材Pから一時的に離間すべく、その走行面が一部曲げられている。具体的には、図5に示すように、搬送ベルト11はローラ15と転写ローラ6Kによって走行面が水平方向になるように張架され、ローラ18によって下側に押し下げられるようにして走行面が垂直方向となるように曲げられている。そして、搬送ベルト11は、ローラ12により再度走行面が曲げられ、ローラ12とローラ13とによって走行面が水平に戻るように張架されている。そして、搬送ベルト11と転写材Pが一時的に離間する空間に放電装置17が具備されている。放電装置17は針状の電極であり、接地されているかあるいは任意の電圧を印加する電圧印加手段と接続されている。上述したように、転写材Pは転写ニップ部通過直後に正極性に帯電しているが、放電装置7と転写材Pとの間の放電により転写材Pの裏面には負極性の電荷が付着するため、転写材Pの総帯電量は減少する。
【0039】
このように、第五の実施形態に係る転写ユニット33では、転写ニップ通過直後の転写材Pの総帯電量を0付近まで小さくすることができるので、その後転写材Pと搬送ベルト11との分離時においても剥離放電が発生しにくい。また、転写材Pと搬送ベルト11の分離後においても、転写材Pの総帯電量が小さいため、転写材Pと分離位置よりも転写材搬送方向下流側に設置される搬送ガイド板等の部材との間で放電が発生しにくい。これにより、これらを原因とするチリ等の異常画像の発生を抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、転写材搬送方向最下流側に位置する作像ユニット5Kの転写ニップ部通過直後にのみ、搬送ベルト11が転写材Pから一時的に離間する機構を設けたが、必要に応じて他の作像ユニット5Y、5C、5Mの転写ニップ通過直後に上述した機構を設けてもよい。これにより、搬送経路上で転写材Pの電位が上昇することに由来する異常画像を防ぐことができる。また、第1の実施形態に係る搬送ユニット10と同様に、搬送ベルト11と転写材Pが一旦離間した場所に、除電機構を設けない機構としてもよい。
【0041】
次に、第六の実施形態に係る転写ユニット及びこれを用いた画像形成装置の構成について説明する。図6は第六の実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示す概略構成図である。
【0042】
第六の実施形態に係る画像形成装置においては、図6に示すように、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(K)の4色を出力するための作像ユニット5Y、5C、5M、5Kを有している。ここで色数は制限されるものではなく、5色以上の作像ユニットを有する装置を採用しても良い。各色の作像ユニット5Y、5C、5M、5Kは、図1で説明した作像ユニット5と同様に、感光体1Y、1C、1M、1Kの周囲に、帯電装置2Y、2C、2M、2K、現像装置3Y、3C、3M、3K、ドラムクリーニング装置4Y、4C、4m、4Kを備えている。これら各色の作像ユニット5Y、5C、5M、5Kは、各々、これら装置を共通の保持体に保持し、装置本体に対して一体的に脱着することで、各種装置を同時に交換できるようになっている。そして、各色の作像ユニット5Y、5C、5M、5Kは、図1で説明したように、感光体1Y、1C、1M、1K表面を帯電装置2Y、2C、2M、2Kで帯電させ、光書込ユニット7で潜像を形成し、現像装置3Y、3C、3M、3Kでトナー像を形成する。
【0043】
そして、作像ユニット5Y、5C、5M、5Kの下方には、像担持体たる中間転写ベルト41を備えた中間転写ユニット40を備えている。中間転写ベルト41は、駆動ローラ42、従動ローラ43、二次転写裏面ローラ44により張架され、図示しない駆動手段によって回転駆動される駆動ローラ42により図中矢印D方向に無端移動する。そして、この中間転写ユニット40は、感光体1Y、1C、1M、1Kに対向する位置に、転写ローラ6Y、6C、6M、6Kを備え、感光体1と転写ローラ6との間に中間転写ベルト41を挟み込んで、Y、C、M、K用の一次転写ニップが形成されている。転写ローラ6Y、6C、6M、6Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ定電圧または定電流で制御された1次転写バイアスが印加され、感光体1Y、1C、1M、1K上のY、C、M、Kトナー像と、転写ローラ6Y、6C、6M、6Kとの間に一次転写電界が形成される。中間転写ベルト50の体積抵抗率は10[Ωcm]〜1012[Ωcm]、好ましくは約10[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。像担持体たる中間転写媒体は、ベルト形状の中間転写ベルト41ではなく、ドラム形状のものでもよい。転写ローラ6Y、6C、6M、6Kはローラであり、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備しているが、ローラに代えて、転写チャージャーや転写ブラシ等を採用してもよい。
【0044】
また、中間転写ユニット40においては、二次転写裏面ローラ44と二次転写ローラ45との間に中間転写ベルト41と搬送ベルト11を挟み込んで二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ45は接地されているのに対し、二次転写裏面ローラ44には、二次転写バイアス電源46によって二次転写バイアスが印加される。二次転写バイアス電源46は、直流電源を有しており、トナーの正規の帯電極性と同極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、二次転写ローラ44と二次転写裏面ローラ44との間に、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ44側から二次転写ローラ45側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
【0045】
そして、上記中間転写ユニット40の下方には、搬送ベルト11を備えた転写材搬送装置たる搬送ユニット34が配設されている。搬送ベルト11は、上記二次転写ローラ45や駆動ローラを含む複数のローラ13、14、15により張架され、転写材Pを表面に担持して図中矢印B方向に無端移動せしめられる。搬送ベルト5の体積抵抗率は10[Ωcm]〜1012[Ωcm]、好ましくは約1010[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。
【0046】
上記作像ユニット5Y、5C、5M、5Kで形成された感光体1Y、1C、1M、1K上のトナー像は、一次転写ニップで転写電界やニップ圧の作用により、中間転写ベルト41に順次重ね合わされて転写される。一方、給紙カセット20等より所定のタイミングで供給される転写材Pは、レジストローラ22によって中間転写ベルト41上に転写された4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで、搬送ベルト11の表面上に供給される。中間転写ベルト41上に転写された4色重ね合わせトナー像は、搬送ベルト11により搬送される転写材P上に二次転写ニップで二次転写電界やニップ圧の作用によって一括転写されることになる。そして、搬送ユニット34は、二次転写ニップを通過してフルカラー画像が転写された用紙Pを定着装置23へと搬送する。定着後、転写材Pは機外に排出されるか、裏面に画像を形成させる場合には、転写材Pは図示しない転写材反転機構を通り、再び二次転写ニップへ搬送され画像形成が行われる。一方、転写材P上にトナー像を転写した後の感光体1Y、1C、1M、1Kは、ドラムクリーニング装置4Y、4C、4M、4Kによって転写残トナーの除去がなされ、必要に応じて図示しない除電ランプで除電された後、再度、帯電装置2Y、2C、2M、2Kで一様に帯電される動作を繰り返す。また、二次転写ニップを通過後に中間転写ベルト41上に残留する転写残トナーは、ベルトクリーニング装置47により除去される。なお、本実施形態に係る中間転写ユニット40においては、一次転写ローラ6Y、6C、6Mは、感光体1から離間可能な構成となっており、作像ユニット5Kでのみ画像形成を行う場合には他色のユニット5Y、5C、5Mの感光体1Y、1C、1Mから離間させることができる。
【0047】
ここで、搬送ベルト11は、中間転写ユニット40に対向する走行面が略水平方向となるように張架されて転写材Pの搬送経路を構成している。しかし、搬送ベルト11は、二次転写ニップ部通過直後の転写材Pから一時的に離間すべく、その走行面が一部曲げられている。具体的には、図6に示すように、搬送ベルト11はローラ15と二次転写ローラ45によって走行面が水平方向になるように張架され、ローラ18によって下側に押し下げられるようにして走行面が垂直方向となるように曲げられている。そして、搬送ベルト11は、ローラ12により再度走行面が曲げられ、ローラ12とローラ13とによって走行面が水平に戻るように張架されている。そして、搬送ベルト11と転写材Pが一時的に離間する空間に、放電装置17が具備されている。放電装置17は針状の電極であり、接地されているかあるいは任意の電圧を印加する電圧印加手段と接続されている。上述したように、転写材Pは二次転写ニップ部通過直後に正極性に帯電しているが、放電装置7と転写材Pとの間の放電により転写材Pの裏面には負極性の電荷が付着するため、転写材Pの総帯電量は減少する。なお、図1に示した第1の実施形態と同様に、搬送ベルト11と転写材Pが一旦離間する場所に、除電機構を設けない機構としてもよい。
【0048】
このように、第六の実施形態に係る搬送ユニット34では、二次転写ニップ通過直後の転写材Pの総帯電量を0付近まで小さくすることができるので、転写材Pと搬送ベルト11の分離時や分離後の搬送経路において、チリ等の異常画像が発生し難い。また、これに加えて、本実施形態に係る画像形成装置は、中間転写ベルト41を使用する中間転写ユニット40を備えているため、転写材Pから出る紙粉等で感光体1が直接汚染されず、転写材(紙)の種類を選ばずに転写が可能である。
【0049】
ところで、上述した第一の実施形態から第六の実施形態に係る画像形成装置に用いられるトナーは、製造工程あるいは製造後の工程において球形化されたものが好ましい。トナー変形に起因する中抜け等の異常画像が発生しにくく転写率も良好であり、高画質な画像を提供することができる。しかし、トナーが移動しやいためチリ等の異常画像は発生しやすく、特にベルト式転写材搬送装置においては、転写材と搬送ベルトとの分離時の放電により、トナーが移動し異常画像が発生しやすい欠点があった。これに対し、本実施形態に係る画像形成装置及び搬送ユニット10、30、31、32、33、34では、転写材P上の総電荷量を減らすため、転写材Pと搬送ベルト11の分離時の放電が弱く、球形化したトナーにおいても異常画像が発生し難い。
【0050】
製造後の工程において球形化したトナーとは、例えばトナーの構成材料である樹脂や着色剤等を混合攪拌後に溶融混練し、粉砕・分級して作製した粉砕トナーを熱や機械的な力で球形化したトナーである。製造工程において球形化したトナーとは、例えば分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法により作製されたトナーである。前記球形トナーとしては、下記式(1)により表される扁平度(形状係数)が1.0〜1.35であることが好ましい。扁平度(形状係数)は、真球に近づくほど1に近づく。
扁平度={(最大粒径)×π/(粒子の投影面積×4)}・・・(1)
但し、前記最大粒径は、トナー粒子の2次元投影像における重心を通る最大の粒径を示す。
扁平度(形状係数)が1.35を超えると、画像のドット形成が不均一となり、画像の粒状性が悪化することがある。この扁平度(形状係数)の測定方法としては、例えば、日立製作所製FE−SEM(S−4500)を用い、1000倍に拡大したトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報を、例えば、画像処理ソフト(Media Cybernetics製Image−Pro Plus)を用いて解析をおこない算出することにより測定することが可能である。
【0051】
上述した球形のトナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜7μmであることが好ましい。トナーの体積平均粒径が1μm未満であると、画像不良が発生することがあり、7μmを超えると、電子写真画像の高解像度の要求に対応するのが困難となることがある。この体積平均粒径の測定方法としては、コールターエレクトリク社製コールターマルチサイザー測定により測定することが可能である。
【0052】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
感光体1等の像担持体に対向配置され、ローラ13、14、15等の駆動手段を含む複数の張架部材により張架されて表面に転写材P等の転写材を担持しながら走行する搬送ベルト11等の搬送ベルトを備え、転写材を像担持体と搬送ベルトとの間の転写ニップ部に搬送するとともに、転写ニップ部でトナー像が転写された転写材を定着装置23等の定着部に向けて搬送する搬送ユニット10等の転写材搬送装置において、上記搬送ベルトは、転写ニップ通過直後の転写材から一時的に離間すべく、転写ニップ通過直後の走行面が曲げられている。これによれば、第一の実施形態で説明したように、転写ニップを通過する転写材は、像担持体と対向する表面が像担持体との間での放電(転写電界)によりトナーと同極性に帯電する。一方、転写材の搬送ベルトと対向する裏面は、搬送ベルトと一時的に離間することにより放電が発生してトナーと逆極性に帯電する。このように、転写材の表裏両面で放電することになるため、転写材の表裏両面合わせた総帯電量を減少させることができる。よって、転写材と搬送ベルトとの間の剥離放電や、分離位置よりも転写材搬送方向下流域で転写材と搬送ガイド等の他の部材との間で生じる放電を抑制し、画像チリ等の異常画像の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係る搬送ユニット10などの転写材搬送装置は、搬送ベルトの走行面の一部を曲げるだけでよいので、バイアス印加手段等を設けて放電させる場合に比べて、容量・コストの点で有利である。
(態様B)
(態様A)の転写材搬送装置において、上記搬送ベルトと転写材とが離間しているときに、放電装置17等の転写材に付与された電荷を除電する除電装置、若しくは転写材に逆極性の電荷を付与する放電装置を備える。これによれば、第二及び第三の実施形態で説明したように、転写材と除電装置や放電装置との間で放電が発生するため、転写材の搬送ベルトと対向する裏面がトナーと逆極性に帯電し、転写材の総帯電量を0近くまでの帯電量に減少させることができる。よって、転写材と搬送ベルトとの間の剥離放電や、分離位置よりも転写材搬送方向下流域で転写材と搬送ガイド等の他の部材との間で生じる放電を抑制し、画像チリ等の異常画像の発生を抑制することができる。
(態様C)
(態様A)又は(態様B)の転写材搬送装置において、上記搬送ベルトと転写材との離間距離が、像担持体と転写材との離間距離に比べて早く大きくなる。これにより、第二及び第三の実施形態で説明したように、転写材と搬送ベルトとが離間した際、転写材はトナーと逆極性に帯電することになる。そのため、除電装置や放電装置等と転写材との間で放電が発生しても、チリが発生しない。
(態様D)
(態様A)(態様B)又は(態様C)の転写材搬送装置において、上記搬送ベルトによる転写材の搬送経路は略縦方向であることを特徴とする。これによれば、第四の実施形態で説明したように、転写材の搬送経路を縦方向とすることにより、搬送方向を横(水平方向)とする場合に比べ装置内のレイアウトの自由度が上がるため、装置を小型化できる。なお、縦方向の搬送に対しても、搬送ベルトにより転写材を静電吸着させて搬送するため転写材を安定して搬送することができる。
(態様E)
トナー像を担持する像担持体と、該像担持体上に担持されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、転写材上のトナー像を定着せしめる定着装置と、転写材を搬送ベルトにより該転写手段から該定着装置に向けて搬送する転写材搬送装置とを備える画像形成装置において、上記転写材搬送装置は、(態様A)(態様B)(態様C)又は(態様D)の転写材搬送装置である。これによれば、第一乃至第6の実施形態で説明したように、転写材と搬送ベルトとの間の剥離放電や、分離位置よりも転写材搬送方向下流域で転写材と搬送ガイド等の他の部材との間で生じる放電を抑制し、画像チリ等の異常画像の発生を抑制することができる。
(態様F)
(態様E)の画像形成装置において、上記像担持体は、中間転写体であることを特徴とする。これによれば、第六の実施形態で説明したように、紙粉等の転写材から出る異物が像担持体に付着することによる異常画像の発生を防止することができる。
(態様G)
(態様E)又は(態様F)の画像形成装置において、上記像担持体は、複数色のトナー像を担持する。これによれば、第五及び第六の実施形態で説明したように、転写材と搬送ベルトとの間の剥離放電や、分離位置よりも転写材搬送方向下流域で転写材と搬送ガイド等の他の部材との間で生じる放電を抑制し、画像チリ等の異常画像の発生が少ないカラー画像を提供することができる。
(態様H)
(態様E)(態様F)又は(態様G)の画像形成装置において、上記トナー像に使用されるトナーは、{(最大粒径)×π/(粒子の投影面積×4)}で示される扁平度が1.0以上1.35以下となる略球形トナーである。これによれば、均一粒子で画質、安定性に優れた画像を提供することができる。
(態様I)
(態様E)(態様F)(態様G)又は(態様H)の画像形成装置において、上記トナー像に使用されるトナーの体積平均粒径は1μm以上7μm以下である。これによれば、画質の優れた画像を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 感光体
2 帯電装置
3 現像装置
4 ドラムクリーニング装置
5 作像ユニット
6 転写ローラ
10 搬送ユニット
11 搬送ベルト
17 放電装置
23 定着装置
30、31、32、33、34 搬送ユニット
40 中間転写ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開平9−134082号公報
【特許文献2】特開2007−298768号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に対向配置され、駆動手段を含む複数の張架部材により張架されて表面に転写材を担持しながら走行する搬送ベルトを備え、転写材を該像担持体と該搬送ベルトとの間の転写ニップ部に搬送するとともに、該転写ニップ部でトナー像が転写された転写材を定着部に向けて搬送する転写材搬送装置において、上記搬送ベルトは、転写ニップ通過直後の転写材から一時的に離間すべく、転写ニップ通過直後の走行面が曲げられていることを特徴とする転写材搬送装置。
【請求項2】
請求項1の転写材搬送装置において、
上記搬送ベルトと転写材とが離間しているときに、転写材に付与された電荷を除電する除電装置、若しくは転写材に逆極性の電荷を付与する放電装置を備えることを特徴とする転写材搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2の転写材搬送装置において、
上記搬送ベルトと転写材との離間距離が、上記像担持体と転写材との離間距離に比べて早く大きくなることを特徴とする転写材搬送装置。
【請求項4】
請求項1、2、又は3の転写材搬送装置において、
上記搬送ベルトによる転写材の搬送経路は略縦方向であることを特徴とする転写材搬送装置。
【請求項5】
トナー像を担持する像担持体と、該像担持体上に担持されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、転写材上のトナー像を定着せしめる定着装置と、転写材を搬送ベルトにより該転写手段から該定着装置に向けて搬送する転写材搬送装置とを備える画像形成装置において、
上記転写材搬送装置は、請求項1、2、3又は4の転写材搬送装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
上記像担持体は、中間転写体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5又は6の画像形成装置において、
上記像担持体は、複数色のトナー像を担持することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項5、6又は7の画像形成装置において、
上記トナー像に使用されるトナーは、{(最大粒径)×π/(粒子の投影面積×4)}で示される扁平度が1.0以上1.35以下となる略球形トナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8の画像形成装置において、
上記トナー像に使用されるトナーの体積平均粒径は1μm以上7μm以下であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92725(P2013−92725A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236018(P2011−236018)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】