説明

転写装置、画像形成装置、画像転写方法、及びコンピュータプログラム

【課題】画素量に応じた最適な転写バイアスの印加を可能とし、出力される画像の転写制御の最適化を図る。
【解決手段】像担持体に担持されたトナー画像を1次転写ユニット452及び2次転写ユニット453により中間転写ベルト及び転写紙に転写する転写装置において、転写する画像の画素量と画素の濃度とに基づいて前記1次転写ユニット452及び2次転写ユニット453の転写バイアス電圧をエンジン制御部450で設定する。前記転写する画像の画素量と画素の濃度は、送信されてくる画像情報を画像出力ページに所定の同一の大きさの区分に区分けし、区分けした領域内で画素情報量として抽出する。その際、前記画素情報量は、前記区分けした領域内の前記画素量と画素の濃度の積算値から求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に担持されたトナー画像を電子写真プロセスで転写手段により転写媒体に転写する転写装置、この転写装置を備え、記録媒体上に画像形成を行う複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの内の少なくとも2つの機能を備えたデジタル複合機などの画像形成装置、この画像形成装置で実行される画像転写方法、及び画像転写方法をコンピュータで実行するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、1成分系の現像剤あるいは2成分系の現像剤のいずれかを使用して画像形成を行っている。このうち、2成分系の現像剤の方が、昨今の高速での画像形成に対応可能であることから、画像形成効率を重視する画像形成装置ではトナーとキャリアとからなる2成分系の現像剤を用いている。特に、フルカラーやマルチカラーの画像を形成するカラー画像形成装置では、ほとんどの現像装置が2成分系の現像プロセスを採用している。
【0003】
このような2成分系の現像プロセスで画像を形成する画像形成装置では、現像時には現像剤中のトナー濃度が問題となる。トナー濃度が低くなれば、潜像を現像するときのトナー付着量に問題が生じる。そこで、このような現像装置では、トナー濃度が低くなるとトナー補給を行ってトナー濃度を制御し、常に、一定のトナー濃度が保持できるように制御している。
【0004】
しかし、トナー補給回数が増えると、トナー補給を行っている間、他の動作に影響を与えるため、トナー補給回数は少ない方が望ましい。そこで、特許文献1には、トナー補給をリクエストする信号の送信回数を低減するため、複数色のうちの所定の1色に対応する、1ページ分のトナー消費量が求まるたびに、この求めたトナー消費量に応じたトナー補給リクエストをトナー補給部に送信する第1リクエスト部と、複数色から所定の該1色を除いた残りの色のうちの1色のトナー消費量を、上記第1リクエスト部が1ページ分のトナー消費量を求めるタイミングで求め、この求めたトナー消費量に応じたトナー補給リクエストを、該第1リクエスト部が送信するトナー補給リクエストに付加させて送信する、複数の第2リクエスト部とを備えたことを特徴とする発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、画像出力動作を行えない時間の発生を抑制しつつ、劣化したトナーの入れ替えを行うことができるように、像担持体と、前記像担持体上に形成された静電像をトナーで現像する現像装置と、前記現像装置へトナーを補給する補給手段と、を有し、前記現像装置は、前記補給手段からのトナー補給動作に伴って前記現像装置内のトナーが排出される排出口を有する画像形成装置において、前記現像装置の現像動作に伴うトナーの消費量に見合う量のトナーが前記補給手段から前記現像装置に補給される第1の補給モードと、前記現像装置の現像動作に伴うトナーの消費量に対する前記補給手段からのトナー補給量の比率が前記第1の補給モード時の比率より大きくなるように前記補給手段から前記現像装置にトナーが補給される第2の補給モードと、を有すること、及び、前記第2の補給モードでは、前記現像装置によるトナーの消費量が少ないほど、トナーの消費量に対する補給量の比率が大きくなるように、前記補給手段から前記現像装置にトナーが補給されることを特徴とする発明が開示されている。また、この発明では、前記第1の補給モードと前記第2の補給モードとの切り替えが、画像情報信号の濃度信号のビデオカウント数に基づいて決定されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−259105号公報
【特許文献2】特開2006−343647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1及び2記載の発明では、2成分系の現像剤のトナー補給に注目してトナー濃度を制御している。一方、画像形成が画像担持体から記録媒体上へのトナー転写により行われる以上、画像形成には、現像剤の濃度だけではなく、転写バイアスもまた問題となる。すなわち、画素が0に近ければ、ほぼ転写は不要であるし、画素が100%に近ければ、より多くの転写バイアスを印加する必要があり、転写バイアスは、送信されてくる画素の量によって最適化する必要がある。
【0007】
ところが、従来技術では、トナー濃度は考慮されているが、光書き込み装置によって書き込まれた画像の画素情報が転写制御装置側に入力されることがない。そのため、コントローラから全画像の画像情報を光書き込み装置側に送信し、全画像の画像データの送信が完了したとしても、その画素量は転写制御装置の転写バイアスに反映されることはなかった。その結果、転写制御装置側では、転写する画素情報が確定しない(分からない)まま、平均的な画素量に応じた転写バイアスを印加せざるを得ず、画像転写の最適化に問題があった。
【0008】
そこで、本発明が解決すべき課題は、画素量に応じた最適な転写バイアスの印加を可能とし、出力される画像の転写制御の最適化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第1の手段は、像担持体に担持されたトナー画像を転写手段により転写媒体に転写する転写装置において、転写する画像の画素量と画素の濃度とに基づいて前記転写手段の転写バイアス電圧を設定する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
第2の手段は、第1の手段において、前記転写する画像の画素量と画素の濃度は、送信されてくる画像情報を画像出力ページに所定の同一の大きさの区分に区分けし、区分けした領域内で画素情報量として抽出することを特徴とする。
【0011】
第3の手段は、第2の手段において、前記画素情報量が前記区分けした領域内の前記画素量と画素の濃度の積算値として抽出することを特徴とする。
【0012】
第4の手段は、第1ないし第3のいずれかの手段において、前記トナー画像がモノクロ画像、又は多色のカラー画像であることを特徴とする。
【0013】
第5の手段は、第1ないし第4のいずれかの手段に係る転写装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0014】
第6の手段は、像担持体に担持されたトナー画像を転写手段により転写媒体に転写する画像転写方法において、転写する画像の画素量と画素の濃度とに基づいて前記転写手段の転写バイアス電圧を設定することを特徴とする。
【0015】
第7の手段は、像担持体に担持されたトナー画像を転写手段により転写媒体に転写する画像転写をコンピュータによって実行するためのコンピュータプログラムにおいて、転写する画像の画素量と画素の濃度とを積算し、画素情報量を求める処理と、予め作成された前記画素情報量と当該画素情報量に対応した最適な転写バイアス電圧との関係を参照し、前記処理で求められた画素情報量に対応した最適な転写バイアス電圧を設定する処理と、前記設定された最適な転写バイアス電圧を前記転写手段に印加して前記像担持体に担持されたトナー画像を前記転写媒体に転写させる処理と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
なお、後述の実施形態において、像担持体は感光体ドラム101C,101M,101Y,101K又は中間転写ベルト102に、転写手段は1次転写ローラ103(1次転写ユニット452)又は2次転写ローラ104(2次転写ユニット453)に、転写媒体は中間転写ベルト102又は転写紙212,212に、転写装置はエンジン制御部450、1次転写ユニット452及び2次転写ユニット453に、制御手段はエンジン制御部450(エンジン制御部450のCPU)に、予め作成された前記画素情報量と当該画素情報量に対応した最適な転写バイアス電圧との関係は表1に示したテーブルに、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転写する画像の画素量と画素の濃度とに基づいて前記転写手段の転写バイアス電圧を設定するので、転写バイアス電圧の最適化を図ることが可能となり、これにより画質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係るカラー画像形成装置としてのカラープリンタの概略構成を示す図である。図1において、カラープリンタは作像部100、給紙部200、定着部(定着装置)300及び排紙部250から基本的に構成されている。
【0020】
作像部100は、CMYK各色の感光体ドラム101C,101M,101Y,101Kと、各感光体ドラム101C,101M,101Y,101Kに対して光書き込みを行う図示しない各色毎の光書き込みユニットと、各感光体ドラム101C,101M,101Y,101Kと接触し、感光体ドラム101上の潜像をトナー現像する各色毎に設けられた現像ユニット(不図示)と、駆動プーリと従動プーリとの間に張設された中間転写ベルト102と、中間転写ベルト102を挟んで各感光体ドラム101C,101M,101Y,101Kと対向する位置に設けられた1次転写ローラ(1次転写ユニット)103C,103M,103Y,103Kと、黒転写部の下流側であって縦搬送路105を挟んで設けられた2次転写ローラ(2次転写ユニット)104とから主に構成されている。なお、光書き込みユニットは、前記各感光体ドラム101C,101M,101Y,101Kの下部に設けられている。
【0021】
給紙部200は、第1及び第2の給紙トレイ210,220と、給紙トレイ210,220から給紙ローラ211,221によって繰り出された転写紙212,222を縦搬送路105に搬送するための転写紙搬送経路106と、縦搬送路105に手差しで転写紙を送り込むための手差しトレイ230とから構成されている。
【0022】
定着装置300は縦搬送路105の転写紙搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ310、加熱ローラ320、定着ベルト330及び加圧ローラ340とからなる。
【0023】
排紙部250は、定着装置300の転写紙搬送方向下流側に設けられ、排紙ローラ260と排紙トレイ270から構成されている。
【0024】
このように構成されたカラープリンタでは、給紙トレイ210,220又は手差しトレイ230から給紙された転写紙は、縦搬送路105に送り出され、現像・転写を行う作像部100で作像され、転写ベルト102の表面に重畳されたフルカラーの画像が2次転写ローラ104によって転写紙に転写される。転写紙上に転写された未定着画像は定着装置300に送られ、ヒータ等の熱源により表面が加熱された定着ベルト330の内側で駆動及び従動する定着ローラ310と加圧ローラ340で形成されるニップを通過することにより転写紙の表面に定着されて半永久画像となり、排紙ローラ260から排紙トレイ270に排出される。
【0025】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の制御回路の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るカラープリンタの制御回路は、CPU401、ROM402、RAM403、NVRAM404、操作部405、電送制御部406、画像メモリ407、及び画像処理部408を備え、これらはバス409によってCPU401に接続され、CPU401によって制御される。また、バス409には、前記給紙部200、前記排紙部250、前記定着部300、作像部100及び入出力I/O410も接続され、同じくCPU401によって制御される。なお、入出力I/O410からはスタンドアローンのパソコン又はネットワークを介して接続されたパソコンからのプリントデータが入力され、あるいはスキャナから当該スキャナで読み取った画像情報が入力される。作像部100は光書き込み部420及びエンジン制御部450を備え、エンジン制御部450は当該エンジン制御部450内の図示しないCPUによって作像に関する後述の各ユニット、言い換えれば作像に係るプリントエンジンの制御を司る。したがって、前記CPU401はメインCPUとして機能する。
【0026】
CPU401は、ROM402、RAM403を有し、RAM403をワークエリアとして使用しながらROM402に格納されたプログラムを実行することにより画像形成装置全体及び各部の制御を行う。NVRAM404は、製品データ保存用の不揮発性メモリとして機能し、その付け替えによりPCB交換時にも製品データを引き継ぐことができる。また、NVRAM404は内部を複数エリアに分割して同一データを保存する方法で、ソフトウエア上の設定を行う。
【0027】
操作部405はオペレータが本実施形態に係る画像形成装置の操作入力を行うためのものである。電装制御部406では、本画像形成装置の電装品のメカコントロール制御全般のI/Fを行う。さらに、画像メモリ407には画像処理のための画像情報及び画像処理後の画像情報が記憶され、画像処理部408によって処理すべき画像データ及び処理された画像データが格納される。
【0028】
エンジン制御部450は、現像ユニット451、1次転写ユニット452、2次転写ユニット453、感光体ドラム101、帯電ユニット(不図示)、クリーニングユニット(不図示)、除電ユニット(不図示)等の各部及び作像部100における転写紙搬送を制御し、入出力I/O410から入力され、画像処理部408で処理された画像データを転写紙上に顕像として転写し、出力する。電子写真方式の画像形成手順は公知であり、図1に示したような間接転写方式のタンデム型画像形成装置も公知なので、ここでは、各部及び各部の動作の詳細は省略し、本願発明に関する事項についてのみ説明する。
【0029】
前述のように本実施形態に係るカラープリンタでは、感光体ドラム101C,101M,101Y,101Kに対して光書き込み部410からレーザ書き込みを行って潜像を形成する。次いで、潜像を現像ユニット451で顕像化してトナー画像とし、顕像化されたトナー画像を1次転写ユニット(1次転写ローラ103C,103M,103Y,103K)452で中間転写ベルト102に順次重ね合わせて転写し、4色重畳されたカラー画像を形成する。4色重畳されたカラー画像は、2次転写ローラ104によって縦搬送路105に沿って送り込まれてきた転写紙に2次転写ユニット453配設部で転写される。
【0030】
1次転写ユニット452では、エンジン制御部450から指示された転写バイアス(電圧)が各1次転写ローラ103C,103M,103Y,103Kに印加され、感光体ドラム101C,101M,101Y,101K上のトナー画像が中間転写ベルトに転写されるが、その際、画素情報に基づいて転写バイアス(電圧)が決定される。
【0031】
画像処理部408では入力された画像情報を印刷可能な情報に変換し、必要な補正処理を施した後、レーザ書き込みのためのレーザ変調信号を生成し、光書き込み部420に出力する。光書き込み部420では、入力されたレーザ変調信号に基づいて半導体レーザを駆動し、レーザ書き込みを行う。その際、CPU401は、画像処理部408で補正され、生成された印字画像情報をエンジン制御部450に送信させる。
【0032】
図3は、CPU(コントローラ)401側からの指示により画像処理部408からエンジン制御部450に送信される画像情報をページ上に展開し、格子状に表現した図である。すなわち、送られてくる1ページ分の画像情報を図3に示すように主走査及び副走査に一定の大きさ(大きさは特に問わない)の単位に格子状に区切り、主走査方向から副走査方向に数字を付した順に、その中の色別に前記画像情報から画素情報を抽出する。なお、この際主走査方向の通知順序は逆でも良い。エンジン制御部450では、図3に示した画素情報の主走査列(図3における1,2,3,4)の情報を全て受信した段階で、主走査列の各格子状領域の画素情報量を算出する。
【0033】
画素情報量は、
画素量x画素の濃度 ・・・(1)
から算出する。例えば、濃度10%の画素が全画素量の30%、濃度20%の画素が全画素量の10%であった場合は、
10x30÷100+20x10÷100=5% ・・・(2)
と算出される。この算出された5%が画素情報量となる。画素情報量については、式(1)及び式(2)で示した算出方法は一例であり、画素情報量が算出できさえすれば、その算出方法は問わない。
【0034】
次いで、算出した画素情報量から、以下のような表等を用い、印加する転写バイアスに補正を行う。なお、下記の表1における画素情報量と転写バイアスとの関係は、実機を使用して実験室で計測したデータに基づいたものである。
【0035】
表1
---------------------------------
画素情報量 転写バイアス
---------------------------------
0〜1%未満 −50V
1〜2%未満 −20V
2〜3%未満 −10V
3〜4%未満 −5V
4〜5%未満 補正なし
5〜6%未満 +2V
6〜7%未満 +3V
7〜8%未満 +5V
8〜9%未満 +10V
9〜10%未満 +20V
10%以上 +25V
-----------------------------------
【0036】
この表1から、画素情報量が左欄の範囲にあれば、エンジン制御部450はそれに対応する右欄の転写バイアス(電圧)を1次転写ローラ103C,103M,103Y,103Kに印加し、中間転写ベルト102に各色のトナー画像を転写させる。したがって、カラー画像を形成する場合には、各色毎に画素情報量を算出し、各色毎に転写バイアスを設定する。モノクロの場合には、黒の画像についてのみ転写バイアスを設定する。なお、図1に示したタンデム型の画像形成装置でモノクロの画像を形成する場合には、C,M,Yの各色については感光体ドラム101C,101M,101Yに画像を形成しないばかりでなく、1次転写ローラ103C,103M,103Yを中間転写ベルト102から離間し、中間転写ベルト102を感光体ドラム101C,101M,101Yから離間させる。これにより、黒の画像を形成する感光体ドラム101Kのみに中間転写ベルト102が接触し、接触抵抗が低下した状態で最適化した転写バイアスでモノクロ画像の転写を行うことが可能となる。
【0037】
なお、単色の画像形成装置においては、像担持体から転写紙に直接転写されるが、この場合も同様である。
【0038】
さらに、2次転写ユニット453では、4色重畳された画素情報量と、当該画素情報量に対応した転写バイアス(電圧)との関係を表1と同様にして設けておき、2次転写ローラ104による転写時の転写バイアスを設定する。このときの区分も1次転写ユニット452で転写する場合と同様である。
【0039】
表1の画素情報量と転写バイアスの関係から転写バイアスを補正するのは、補正方法の一例を示したもので、補正する際に、算出式によって演算しながら転写バイアスを設定するなどの方法により等の他の方法を使用しても良いことは言うまでもない。なお、表1の画素情報量と転写バイアスとの関係は、前述のように実験室で計測したデータに基づいて設定し、その結果は、例えばNVRAM404にテーブルとして格納しておく。これにより、エンジン制御部450で前記補正を行う際に、演算した画素情報量に基づいてNVRAM404に格納された前記テーブルを参照し、適切な転写バイアスを設定する。
【0040】
この処理は、CPU401の指示により、画像処理部408から作像部100に送られてくる作像のための画像情報が、前記1−4の主走査列から5−8の主走査列、9−12の主走査列、13−16の主走査列というように副走査方向に1列ずつ増分する毎に実行される。
【0041】
ところで、印刷する画像情報によっては、前記画素情報量に基づいて転写バイアスを設定する制御を行うと、逆に出力される画質が悪化することも有り得ないことではない。そこで、この画素情報量に基づく転写バイアス設定制御の有効、無効をユーザ、あるいは、印刷する転写紙の種類によって、さらには、設置された環境によって、本制御を有効とするか無効とするかを選択できるようにした。図4は、このような有効、無効の選択手順を示すフローチャートである。
【0042】
同図において、まず、画素情報量に基づく転写バイアス制御の無効設定が有効か無効かをチェックし(ステップS101)、無効設定が有効であれば、制御無効として、従来の転写バイアス制御のみ1次転写動作を実行する(ステップS102)。従来の転写バイアス制御とは、前述のように平均的な画素量に応じた転写バイアスを印加する制御のことである。
【0043】
ステップS101で画素情報量に基づく転写バイアス制御の無効設定が無効であれば、印刷モードによる設定無効化が有効かどうかをチェックする(ステップS103)。ここでいう印刷モードによる設定無効化とは、印刷する転写紙の種類、ここでは、厚紙、薄紙の別、さらにはOHPシートかコート紙などの特殊紙か等の別によって設定される厚紙モード、薄紙モード、OHPシートモード、特殊紙モードなどの印刷モードに対して画素情報量に基づいた転写バイアス制御を実行するか否かの設定を無効とすることを意味する。
【0044】
そこで、ステップS103で設定無効化が有効であれば、現在の印刷モードが無効にした印刷モードと合致するかどうかをチェックし(ステップS104)、合致すれば、制御を無効として従来の転写バイアス制御を実行する(ステップS102)。一方、ステップS104で合致しなければ、機器の設置環境による設定無効化の有効性をチェックする(ステップS105)。機器の設置環境による設定無効化とは、機内の温度及び湿度を監視しておき、画素情報量に基づいた転写バイアス制御を実行するという設定を無効とするか否かを判断することである。この判断基準は、予め機内の雰囲気における湿度及び温度について、湿度及び温度と画素情報量に基づいた転写バイアス制御を実行するか否かの関係をNVRAM404にテーブルとして格納し、この格納された関係から判断される。そこで、ステップS105で、環境による設定無効化が有効であると判断された場合には、現在の環境が無効にした環境と合致するか否かをチェックし(ステップS106)、合致すれば制御無効として従来の転写バイアス制御を実行する(ステップS102)。
【0045】
これに対し、ステップS105で設定無効化が有効でないと判断された場合には、画素情報量に基づいた転写バイアス制御を有効とし、転写バイアスを前記表1に示した画素情報に基づいて切り替える(ステップS107)。
【0046】
前記転写バイアス制御の無効設定が有効か無効かは、ユーザが操作部405の操作パネルからの入力により設定する。印刷モード及び環境に基づく設定の場合も同様であり、ユーザが図示しない操作パネルのソフトスイッチから選択する。
【0047】
このように制御することにより、画素情報量に基づいた転写バイアス制御を実行するか否かを印刷モード及び機器環境に応じて決定するので、印刷するときの状態に応じて、最適な転写バイアスで高品質の画像を得ることができる。その際、画素情報量に基づいた転写バイアス制御を実行する場合は、印刷画像情報中の画素情報量に基づいて転写バイアスを決定するので、最適化された転写バイアスで画像転写を行うことが可能となる。
【0048】
なお、機内の温度及び湿度は転写紙に対して画像を転写する2次転写ローラ104(2次転写ユニット453)の近傍に温度及び湿度を検出する公知センサを設けて監視することが好ましい。また、従来から前記センサが設けられているのであれば、補正により当該センサの出力から2次転写ローラ104(2次転写ユニット453)近傍の温度及び湿度を検出する。また、1次転写ローラ101C,101M,101Y,101Kの配設位置近傍の温度及び湿度を検出し、あるいは他の箇所に設置したセンサから推測して前記環境による設定が無効か有効かを決定するようにすることもできる。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、
1)転写印加前に画素情報が画像形成装置に通知されるため、画素情報量に応じた最適な転写バイアスを印加することにより、出力される画像の転写動作の最適化を図ることができる。
2)印刷する画像情報によっては、本実施形態における転写制御では、逆に出力される画質が悪化することがあり得る。そこで、このような画像情報については、本実施形態に係る転写制御を実行するか否か(有効、無効)をユーザが選択できるようにした。これにより、印刷後、画質がユーザの意図するものでないときには、前記制御を無効にすることにより、よりよい画質を得ることが可能となる。
3)厚紙、薄紙、OHPシート、特殊紙などの用紙の種類に対応した印刷モードによっては、本実施形態における転写制御では十分な効果が得られないことがあり得る。そこで、本実施形態では、印刷する転写紙の種類に応じて本実施形態に係る転写制御を実行するか否か(有効、無効)をユーザが選択できるようにした。これにより、紙種によって本実施形態による制御から外れた場合でも、よりよい画質を得ることが可能になる。
4)機器が設置された環境によっては、本実施形態における転写制御では十分な効果が得られないことがあり得る。そこで、本実施形態では、機器内の雰囲気の条件、例えば湿度あるいは温度に応じて本実施形態に係る転写制御を実行するか否か(有効、無効)をユーザが選択できるようにした。これにより、紙種によって本実施形態による制御から外れた場合でも、よりよい画質を得ることが可能になる。
等の効果を奏する。
【0050】
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる全ての技術的事項に及ぶことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係るカラー画像形成装置としてのカラープリンタの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】送信されてくる画像情報をページ上に展開し、画素情報量を得るための領域として格子状の領域を設定した例を示す図である。
【図4】本実施形態における転写制御の実行を有効とするか無効とするかを選択する制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
100 作像部
101C,101M,101Y,101K 感光体ドラム
102 中間転写ベルト
103 1次転写ローラ103
104 2次転写ローラ104
401 CPU(コントローラ)
404 NVRAM
405 操作部
408 画像処理部
420 光書き込み部
450 エンジン制御部450
451 現像部
452 1次転写ユニット
453 2次転写ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に担持されたトナー画像を転写手段により転写媒体に転写する転写装置において、
転写する画像の画素量と画素の濃度とに基づいて前記転写手段の転写バイアス電圧を設定する制御手段を備えていることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記転写する画像の画素量と画素の濃度は、送信されてくる画像情報を画像出力ページに所定の同一の大きさの区分に区分けし、区分けした領域内で画素情報量として抽出することを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2に記載の転写装置において、
前記画素情報量は、前記区分けした領域内の前記画素量と画素の濃度の積算値として抽出することを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記トナー画像がモノクロ画像、又は多色のカラー画像であることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の転写装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
像担持体に担持されたトナー画像を転写手段により転写媒体に転写する画像転写方法において、
転写する画像の画素量と画素の濃度とに基づいて前記転写手段の転写バイアス電圧を設定することを特徴とする画像転写方法。
【請求項7】
像担持体に担持されたトナー画像を転写手段により転写媒体に転写する画像転写をコンピュータによって実行するためのコンピュータプログラムにおいて、
転写する画像の画素量と画素の濃度とを積算し、画素情報量を求める処理と、
予め作成された前記画素情報量と当該画素情報量に対応した最適な転写バイアス電圧との関係を参照し、前記処理で求められた画素情報量に対応した最適な転写バイアス電圧を設定する処理と、
前記設定された最適な転写バイアス電圧を前記転写手段に印加して前記像担持体に担持されたトナー画像を前記転写媒体に転写させる処理と、
を備えていることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−8494(P2010−8494A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164670(P2008−164670)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】