説明

転写装置および画像が転写された植物

【課題】 植物に文字や図形等の画像を簡単、かつ短時間で転写することができるようにして、画像の転写作業の作業性を向上させることができる転写装置およびその転写装置によって画像が転写された植物を提供すること。
【解決手段】 転写装置10が、本体11に設けられ、花びら2を挿通する挿通孔14と、本体11内に設けられ、挿通孔14に挿通された花びら2が設置される設置台15と、一面側が設置台15に対向するとともに、切欠き文字18aが形成されるプレート18と、プレート18の他面側に対向して設けられ、設置台15に設置された花びら2に切欠き文字18aを通してインクを噴射する噴射装置21〜23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の花びら等に文字や図形等の画像を転写することができる転写装置および画像が転写された植物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ばらやカーネーション等の花は、記念日、誕生日、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーや他の有意義な出来事を祝うために様々な理由で贈り物として交換される。また、感謝、友情、愛情、恋愛、同情の気持ちを表すために用いられている。
【0003】
一方、花を送る場合には、メッセージカードに自分の気持ちを書き込んで自分で直接、または花屋を介して相手に送ることにより、自分の気持ちに花を添えて感動的に伝えることができる。
【0004】
また、近時では、花びらに直接文字を転写して相手に送るようにしたものがあり、より感動的に相手に自分の気持ちを伝えることができる。従来の花びらに文字を転写するものとしては、印刷面である版の感光材に、ポジフィルムを用いて文字をフォトエッチングして版にインクを塗った後、パッド等の転写媒体を版に接して置き、次いで、転写媒体により版の画像領域からインクを運び上げ、媒体上に反転画像を作成した後、転写媒体によってインクで描かれた画像を花びらに転写することにより、印刷された画像を花びらに定着するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特表2005−504535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の方法としては、印刷面である版の感光材に、ポジフィルムを用いて文字をフォトエッチングし、版にインクを塗って転写媒体を版に接して置く工程と、転写媒体により版の画像領域からインクを運び上げ、媒体上に反転画像を作成した後、転写媒体によってインクで描かれた画像を花びらに転写する工程とが必要になるとともに、その工程を人手で行う必要があるため、文字を転写するための作業が非常に面倒で時間が掛かるものとなってしまった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、植物に文字や図形等の画像を簡単、かつ短時間で転写することができるようにして、画像の転写作業の作業性を向上させることができる転写装置およびその転写装置によって画像が転写された植物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転写装置は、植物の所定の転写面に画像を転写する転写装置であって、筐体と、前記筐体に設けられ、前記植物を挿通する挿通部と、前記筐体内に設けられ、前記挿通部に挿通された植物が設置される設置部と、一面側が前記設置部に対向するとともに、切欠き画像が形成される転写媒体と、前記転写媒体の他面側に対向して設けられ、前記設置部に設置された前記植物の転写面に、前記切欠き画像を通してインクを噴射する噴射手段とを備えたものから構成されている。
【0009】
この構成により、植物を挿通部に挿通して設置部に設置した後、植物の転写面に転写媒体の切欠き画像を通して噴射手段からインクを噴射することにより、転写媒体の切欠き画像を植物に転写することができる。
このため、植物に文字や図形等の画像を簡単、かつ短時間で転写することができ、画像の転写作業の作業性を向上させることができる。
【0010】
また、植物の転写面に転写媒体の切欠き画像を通して噴射手段からインクを噴射することにより、転写媒体の切欠き画像を植物に転写することができるので、転写装置の構造を簡素化することができ、転写装置の製造コストを低減することができる。
【0011】
また、本発明の転写装置は、前記転写媒体を把持する把持手段と、前記把持手段を前記設置部に対して近接・離隔させる近接・離隔手段とを有し、前記転写媒体により前記転写面を押圧可能であるものから構成されている。
【0012】
この構成により、設置部に設置された転写媒体により植物の転写面を押圧することができるため、植物の転写面が花びらである場合には、花びらを平面状にした状態で転写媒体を介して噴射手段からインクを噴射することができる。このため、花びらに転写されたインクの大きさや濃度を転写面に亘って一定にすることができ、転写品質が低下するのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の転写装置は、前記転写媒体は、前記把持手段に着脱自在であるものから構成されている。
この構成により、文字や図形の異なる種々の切欠き画像が形成された転写媒体を転写装置に装着することができ、植物に多種のメッセージ等を転写することができる。
【0014】
また、本発明の転写装置は、前記転写面が花びらであるものから構成されている。
この構成により、記念日、誕生日、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーや他の有意義な出来事を祝うために花びらに直接メッセージを転写して送ることができる。
【0015】
また、本発明の植物は、前記転写装置によって所定の転写面に画像が転写されたものから構成されている。
この構成により、記念日、誕生日、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーや他の有意義な出来事を祝うために植物に直接メッセージを転写して送ることができる。
【0016】
また、本発明の植物は、前記転写面が花びらであるものから構成されている。
この構成により、記念日、誕生日、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーや他の有意義な出来事を祝うために花びらに直接メッセージを転写して送ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の転写装置および画像が転写された植物によれば、植物に文字や図形等の画像を簡単、かつ短時間で転写することができるようにして、画像の転写作業の作業性を向上させることができる転写装置およびその転写装置によって画像が転写された植物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図8は、本発明に係る転写装置および植物の一実施の形態を示す図である。
【0019】
まず、構成を説明する。図1において、植物としてのばら1の花びら(所定の転写面)2には、例えば、「I LOVE YOU」という文字3が書かれており、この文字3は転写装置によって花びら2に転写されるものである。
【0020】
また、花びら2に転写するものは文字3以外に会社のロゴ等の図形でも良い。要は、画像であれば如何なるものでも良い。本実施の形態では、転写する画像として文字について説明する。また、所定の転写面としては、花びら2以外に茎や葉としても良い。
【0021】
図2〜図4は転写装置を示す図である。図2において、転写装置10の本体(筐体)11は図示しないヒンジを介して連結された上側本体12および下側本体13を備えており、上側本体12および下側本体13は開閉自在になっている。
また、本体11には挿通孔(挿通部)14が形成されており、この挿通孔14を通して本体11内に花びら2が挿通されるようになっている。
図2、図3に示すように下側本体13内には設置台(設置部)15が設けられており、挿通孔14に挿通された花びら2は設置台15に設置されるようになっている。
【0022】
また、下側本体13内には油圧、空気圧等を利用したシリンダ部材(近接・離隔手段)16が設けられており、このシリンダ部材16には把持部材(把持手段)17が設けられている。把持部材17はプレート(転写媒体)18を着脱自在になっており、プレート18を把持した状態でシリンダ部材16が駆動されると、プレート18が設置台15に対して近接・離隔するようになっている。
【0023】
また、プレート18には「I LOVE YOU」という文字(以下、切欠き文字という)18aが打ち抜かれて形成されており、このプレート18の一面側に設置台15が設けられている。
【0024】
なお、プレートは図5に示すように、「おめでとう」という切欠き文字19aが形成されたプレート19や「ありがとう」という切欠き文字20aが形成されたプレート20があり、任意の切欠き文字のプレート18〜20を選択して把持部材17に装着することができるようになっている。なお、プレートは「ありがとう」や「おめでとう」以外の文字が形成されたものが用いることができることは言うまでもない。
【0025】
また、上側本体12には噴射装置(噴射手段)21、22、23が設けられており、この噴射装置21〜23はプレート18の他面側に設けられ、設置台15に設置された花びら2に切欠き文字18aを通してインクを噴射するようになっている。なお、噴射装置21、22、23から噴射されるインクが切欠き文字18a以外のプレート18部分に噴射されて周囲を汚さないように、噴射装置21、22、23から切欠き文字18aにインクが噴射されるように設定されている。
【0026】
なお、噴射装置21〜23のインクの補充に関しては、噴射装置21〜23そのものを上側本体12に対して交換可能にしても良く、噴射装置21〜23にインク供給用のホースを装着して外部から噴射装置21〜23にインクを補充しても良い。
【0027】
また、シリンダ部材16および噴射装置21〜23は図示しないコントローラによって制御されるようになっており、上側本体12の上面に設けられたスイッチ24を押下すると、コントローラはシリンダ部材16および噴射装置21〜23を操作するようになっている。
【0028】
次に、図6、図7に基づいて切欠き文字18aの転写方法を説明する。
まず、花束を送る人が希望する切欠き文字が形成されたプレートを選択する。ここで、プレート18を選択した場合には、下側本体13から上側本体12を開放してプレート18を把持部材17に装着した後、下側本体13により上側本体12を閉塞する。
【0029】
次いで、ばら1を把持して挿通孔14を通して本体11内に花びら2を挿入して花びら2を設置台15に設置する(図6(a)参照)。次いで、スイッチ24を押下すると、シリンダ部材16が駆動されてプレート18が下降して花びら2を押圧する(図6(b)参照)。
【0030】
このとき、花びら2がプレート18に沿って平面状になるとともにプレート18と平行になる。この状態で噴射装置21〜23により切欠き文字18aを通して花びら2にインクを一定時間(例えば、1秒)噴射する(図7(a)参照)。
【0031】
インクを噴射してから所定時間経過すると、シリンダ部材16が駆動されてプレート18が上昇して花びら2から離隔する(図7(b)参照)。この後、花びら2を挿通孔14から取り出すと、図7(c)に示すように花びら2に文字3が転写されたばら1を得ることができる。
【0032】
このように本実施の形態では、転写装置10が、本体11に設けられ、花びら2を挿通する挿通孔14と、本体11内に設けられ、挿通孔14に挿通された花びら2が設置される設置台15と、一面側が設置台15に対向するとともに、切欠き文字18aが形成されるプレート18と、プレート18の他面側に対向して設けられ、設置台15に設置された花びら2に切欠き文字18aを通してインクを噴射する噴射装置21〜23とを備えるので、花びら2を挿通孔14に挿通して設置台15に設置した後、花びら2にプレート18の切欠き文字18aを通して噴射装置21〜23からインクを噴射することにより、切欠き文字18aを花びら2に転写することができる。このため、花びら2に文字を簡単、かつ短時間で転写することができ、画像の転写作業の作業性を向上させることができる。
【0033】
また、花びら2にプレート18の切欠き文字18aを通して噴射装置21〜23からインクを噴射することにより、切欠き文字18aを花びら2に転写することができるので、転写装置10の構造を簡素化することができ、転写装置10の製造コストを低減することができる。
【0034】
また、本実施の形態では、プレート18を把持する把持部材17と、把持部材17を設置台15に対して近接・離隔させるシリンダ部材16とを設け、プレート18により花びら2を押圧できるようにしたので、花びら2を平面状にした状態でプレート18を介して噴射装置21〜23からインクを噴射することができる。このため、花びら2に転写されたインクの大きさや濃度を花びら2の転写面に亘って一定にすることができ、転写品質が低下するのを防止することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、プレート18〜20を把持部材17に着脱自在にしたので、種々の切欠き文字18a〜20aが形成されたプレート18〜20を転写装置10に装着することができ、花びら2に多種のメッセージ等を転写することができる。
【0036】
また、本実施の形態では、転写面を花びら2にしたので、記念日、誕生日、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーや他の有意義な出来事を祝うために花びら2に直接メッセージを転写して送ることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、複数の噴射装置21〜23によってインクを噴射するようにしているが、これに限らず、図8に示すように、1つの噴射装置(噴射手段)31を保持部材32に装着し、この保持部材32を上側本体12に設けられたガイド部材33に沿って移動させることにより、プレート18に向かってインクを噴射するようにしても良い。
ここで、噴射装置31をガイド部材33に沿って移動させる手段としては、ガイド部材33をラックから構成し、保持部材32内にラックに噛合するピニオンおよびピニオンを駆動するモータを内蔵し、ピニオンの回転に伴って保持部材32をラックに沿って移動させるようにしても良い。
【0038】
また、上側本体12にシリンダ部材を装着し、このシリンダ部材を保持部材32に装着して、ピストン部材を駆動することにより、保持部材32をガイド部材33に沿って移動させるようにしても良い。要は、噴射装置31をガイド部材33に沿って移動させることができれば、どのような手段でも良いのである。
また、花はばらに限らず、カーネーションやチューリップであっても良い。但し、目視が容易な画像を印字できる花びらを備えた花であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明に係る転写装置および画像が転写された植物は、植物に文字や図形等の画像を簡単、かつ短時間で転写することができるようにして、画像の転写作業の作業性を向上させることができるという効果を有し、植物の花びら等に文字や図形等の画像を転写することができる転写装置およびその転写装置により画像が転写された植物等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る転写装置および画像が形成された植物の一実施の形態を示す図であり、転写装置によって花びらに文字が転写されたばらを示す図
【図2】一実施の形態の転写装置の外観図およびばらを示す図
【図3】一実施の形態の転写装置の内部構造の外略図
【図4】(a)は一実施の形態の転写装置の内部構造の斜視図、(b)は転写装置の内部構造の正面図
【図5】一実施の形態の異なる切欠き文字が形成された2枚のプレートを示す図
【図6】一実施の形態の切欠き文字の転写手順を示す図
【図7】図6に後続する切欠き文字の転写手順を示す図
【図8】一実施の形態の噴射装置の他の構造を示す図
【符号の説明】
【0041】
1 ばら(植物)
2 花びら(所定の転写面)
3 文字(画像)
10 転写装置
11 本体(筐体)
14 挿通孔(挿通部)
15 設置台(設置部)
16 シリンダ部材(近接・離隔手段)
17 把持部材(把持手段)
18、19、20 プレート(転写媒体)
18a、19a、20a 切欠き文字(切欠き画像)
21〜23、31 噴射装置(噴射手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の所定の転写面に画像を転写する転写装置であって、
筐体と、前記筐体に設けられ、前記植物を挿通する挿通部と、
前記筐体内に設けられ、前記挿通部に挿通された植物が設置される設置部と、
一面側が前記設置部に対向するとともに、切欠き画像が形成される転写媒体と、
前記転写媒体の他面側に対向して設けられ、前記設置部に設置された前記植物の転写面に、前記切欠き画像を通してインクを噴射する噴射手段とを備えたことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記転写媒体を把持する把持手段と、前記把持手段を前記設置部に対して近接・離隔させる近接・離隔手段とを有し、前記転写媒体により前記転写面を押圧可能であることを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記転写媒体は、前記把持手段に着脱自在であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記転写面が花びらであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の転写装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の転写装置によって所定の転写面に画像が転写されたことを特徴とする植物。
【請求項6】
前記転写面が花びらであることを特徴とする請求項5に記載の植物。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−263519(P2006−263519A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82140(P2005−82140)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(502197666)株式会社モック (13)
【Fターム(参考)】