説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】インク吐出ヘッドによりインクを付与される中間転写体を有し、中間転写体と被記録材との接触領域及びこの接触領域での加圧力を確保しながら中間転写体上のインクを被記録材に転写する転写装置及びこれを備えた画像形成装置の提供。
【解決手段】ヘッド61Y、61M、61C、61BKにより吐出されたインクを付与される中間転写体37と、被記録材SをA1方向に沿って搬送しながら中間転写体37上のインクを転写する搬送経路31を形成する転写部材38との少なくとも一方はベルト状のベルト部材である。搬送経路31が非直線状となるようにベルト部材を巻き掛けた複数の支持部材71、72と、搬送経路31を搬送されている被記録材Sが搬送経路31内において中間転写体37と転写部材38との間で加圧されるように、ベルト部材を内側から加圧した状態とするための加圧部材74とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出ヘッドによりインクを付与される中間転写体を有する画像形成装置に備えられ、中間転写体上のインクを用紙等の被記録材に転写する転写装置及びこれを備えたかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等を用いてインクを吐出するヘッドを備え、インクジェット記録を行うインクジェットプリンタ等のインクジェット方式の画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献5〕参照)。
【0003】
インクジェット方式において、ヘッドから記録紙等の被記録材にインクを直接吐出する構成では、ヘッドと被記録材とが近接するため、被記録材に付着している紙粉、埃等がノズルに付着しやすい。紙粉等がノズルに付着すると、ノズルから吐出される液滴の飛翔方向が乱れたり、ノズルが閉塞したりして、画像品質や信頼性が低下する。このような問題を回避するための方策としては、ノズルからの吐出安定性を優先し、粘度が小さいインクを使用するのが一般的であるが、粘度が小さいインクは、被記録材に着弾する際に滲みが発生しやすい。
【0004】
このような事情等により、ヘッドから吐出されたインクを担持する中間転写体と、中間転写体上のインクを被記録材に転写する転写部材とを有する転写装置を備えた中間転写方式のインクジェット画像形成装置が提案されている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献5〕参照)。
【0005】
中間転写方式のインクジェット画像形成装置において、中間転写体から被記録材へのインクの高効率転写は、高品質画像を得るための必須条件である。また、転写率が向上すれば、その後の行程で中間転写体のクリーニング動作の時間や回数を削減可能で、廃インクの回収スペースの削減にもつながり、クリーニング動作による中間転写体の劣化も軽減されるなど、大きな利点がある。
【0006】
中間転写体から被記録材への転写率を向上させるための技術として、中間転写体をベルト状にし、中間転写体を内側から複数の部材で張り渡し、この張り渡した直線状の領域を利用して中間転写体上のインクと被記録材との接触時間を長くする技術が提案されている(たとえば、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕参照)。
【0007】
これに対し、中間転写体も転写部材もローラ状の構成(たとえば、〔特許文献3〕、〔特許文献4〕参照)や、中間転写体がベルト状であるものの中間転写体を内側から巻き掛けた位置で転写を行う構成(たとえば、〔特許文献5〕参照)では、中間転写体と被記録材との接触部である加圧部が、中間転写体の幅方向に沿った線状になるため、上述した技術より、中間転写体と被記録材との接触時間が短く、転写率が低い。これは、中間転写体、転写部材を弾性体とした場合も同様である。
【0008】
近年においては、高生産性が求められており、これを実現するために転写紙Sの搬送速度を高速化する傾向にあるため、かかる接触時間はより短くなってきている。一方、インクの開発においては、高速出力に対応しつつ高画質化するために速乾性や高粘度化が図られていると同時に浸透の高速化も進められているがこれらの両立は難しいのが実情である。
【0009】
これらの事情に鑑みると、中間転写体から被記録材への転写率を向上させるには、上述の技術のように、中間転写体と被記録材との接触時間を長くすること、すなわち中間転写体と被記録材との接触領域を長くすることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、転写率の向上には、かかる接触時間、接触領域を長くすることの他に、接触領域での加圧力を確保することを要する。この点、上述の技術のように、ベルト状の部材を内側から複数の部材で張り渡し、直線状の接触領域で転写を行う構成では、被記録材の接触時間は長くなるものの、接触領域における加圧力が不十分になることが懸念される。また、直線状の接触領域において、ベルト状の部材のテンションや送り速度によってはこの部材がばたつき、瞬間的に被記録材が離間するなど、加圧力が不安定となって転写不良を生ずる可能性もある。加圧力の確保は、とくに吸湿性の悪い紙などへの転写を良好に行ううえで重要である。
【0011】
その他、近年では、高画質・高信頼性のために、化学的や電気的な方法でインクの粘度を変化させたり、高温をかけて溶融させるような固体インクを用いたりするなどインクの種類も多様化しており、中間転写体上の個々のインク滴内の状態も一様とは限らない。これらのインクを確実に転写し、中間転写体上へのインク残りを少なくする為には、転写条件の更なる最適化が可能であることが望ましい。
【0012】
本発明は、インク吐出ヘッドによりインクを付与される中間転写体を有し、中間転写体と被記録材との接触領域及びこの接触領域での加圧力を確保しながら中間転写体上のインクを被記録材に転写する転写装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、インク吐出ヘッドにより吐出されたインクを付与される、所定の方向に移動する中間転写体と、被記録材を前記所定の方向に沿って搬送しながら同被記録材に前記中間転写体上のインクを転写する搬送経路を、同中間転写体との間に形成する転写部材とを有し、前記中間転写体と前記転写部材との少なくとも一方はベルト状のベルト部材であり、前記搬送経路が非直線状となるように前記ベルト部材を内側から巻き掛けた複数の支持部材と、前記搬送経路を搬送されている被記録材が同搬送経路内において前記中間転写体と前記転写部材との間で加圧されるように、前記ベルト部材を内側から加圧した状態とするための少なくとも1つの加圧部材とを有する転写装置にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、インク吐出ヘッドにより吐出されたインクを付与される、所定の方向に移動する中間転写体と、被記録材を前記所定の方向に沿って搬送しながら同被記録材に前記中間転写体上のインクを転写する搬送経路を、同中間転写体との間に形成する転写部材とを有し、前記中間転写体と前記転写部材との少なくとも一方はベルト状のベルト部材であり、前記搬送経路が非直線状となるように前記ベルト部材を内側から巻き掛けた複数の支持部材と、前記搬送経路を搬送されている被記録材が同搬送経路内において前記中間転写体と前記転写部材との間で加圧されるように、前記ベルト部材を内側から加圧した状態とするための少なくとも1つの加圧部材とを有する転写装置にあるので、中間転写体と被記録材との接触領域及びこの接触領域での加圧力を確保しながら中間転写体上のインクを被記録材に転写し、また、加圧部材を用いて搬送経路に圧力分布を形成することが可能となることで、高い転写効率を実現し得るとともに高画質の画像形成に寄与し得る転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の一例の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置においてヘッドから中間転写体に記録液が付与される様子を示す概略図である。
【図3】図1に示した画像形成装置に備えられた転写装置の一例の概略正面図である。
【図4】中間転写体と転写部材との間の圧力分布の一例を示した概念図である。
【図5】図1に示した画像形成装置においてヘッドから吐出された導電性記録液中の顔料がプロトンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図6】図1に示した画像形成装置においてカソードとアノードとの間に形成される導電性記録液による液柱の状態を示す概念図である。
【図7】中間転写体と転写部材との間の圧力分布を記録液の特性に応じて適正化する例を説明するための概念図である。
【図8】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第1の変形例の概略正面図である。
【図9】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第2の変形例の概略正面図である。
【図10】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第3の変形例の概略正面図である。
【図11】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第4の変形例の概略正面図である。
【図12】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第5の変形例の概略正面図である。
【図13】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第6の変形例の概略正面図である。
【図14】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第7の変形例の概略正面図である。
【図15】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第8の変形例の概略正面図である。
【図16】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第9の変形例の概略正面図である。
【図17】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第10の変形例の概略正面図である。
【図18】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第11の変形例の概略正面図である。
【図19】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第12の変形例の概略正面図である。
【図20】図1に示した画像形成装置に備えられる転写装置の第13の変形例の概略正面図である。
【図21】中間転写体と転写部材との間の圧力分布を種々の条件に応じて変化させる場合の制御の例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【0017】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材としての転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
【0018】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインク吐出ヘッドである記録ヘッドたるヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
【0019】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された第1の回転部材たる中間転写ドラムである中間転写部材としてのドラム状の中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動する所定の方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0020】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0021】
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
【0022】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0023】
画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
【0024】
画像形成装置100はまた、図2(b)に示すようにヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態で、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行いかかる状態の記録液に後述のように含まれている色剤の凝集を促進する電圧印加手段としての通電手段33を有している。
【0025】
画像形成装置100はまた、図1に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50と、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての制御部40と、図示しない操作パネルと、画像形成装置100の使用される温湿度環境を測定する温湿度検出手段とを有している。
【0026】
搬送ユニット10は、中間転写体37を備えた転写手段としての転写装置64と、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写装置64に案内するとともに、転写装置64を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39と、中間転写体37をA1方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
【0027】
図1または図3に示すように、転写装置64は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置された第2の回転部材たるベルト状の転写部材であるベルト部材としての転写部材38と、転写部材38を内側から巻き掛けた、複数、本形態では3本の、ローラ状の支持部材である支持ローラ71、72、73と、中間転写体37と転写部材38との対向領域であり当接位置である転写部31において転写部材38に当接したローラ状の加圧部材としての加圧ローラ74と、加圧ローラ74を転写部材38に押圧し転写部材38を内側から加圧させた付勢手段である押圧手段としての押圧バネ75とを有している。
【0028】
転写装置64はまた、A1方向において転写部材38の下流側で中間転写体37に対向して設けられを通過した転写紙Sを中間転写体37から剥離するための剥離部材としての剥離爪76と、A1方向において剥離爪76の下流側であってヘッド61Y、61M、61C、61BKより上流側で中間転写体37に対向して設けられ記録液等が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上に残留している記録液等を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段34と、支持ローラ72を回転駆動して駆動ローラとして機能させ、転写部材38をA1方向に沿ったB1方向に従動の態様で移動させ回転させる図示しない駆動手段としてのモータとを有している。
【0029】
支持ローラ71は、A1方向に沿った転写部材38の移動方向B1において転写部31の上流側に位置し、転写部31の入口を形成している。この点、支持ローラ71は、ローラ状の入口部材である入口ローラとして機能するものとなっている。支持ローラ71、73は、駆動ローラである支持ローラ72の回転駆動によってB1方向に回転する転写部材38に従動回転する従動ローラとなっている。
【0030】
支持ローラ72は、B1方向において転写部31の下流側に位置し、転写部31の出口を形成している。この点、支持ローラ72は、ローラ状の出口部材である出口ローラとして機能するものとなっている。
【0031】
なお、転写部材38を従動回転させることが可能であれば、支持ローラ71、72、73のうち、支持ローラ71、73のいずれかを駆動ローラとし、他の支持ローラを従動ローラとしても良い。
【0032】
支持ローラ71、72は、中間転写体37から離間した定位置で回転するようになっている。支持ローラ71、72の設けられた位置は、転写部材38の、支持ローラ71と支持ローラ72との間に張り渡された部分が、中間転写体37に加圧され、転写部31を形成する位置とされている。
【0033】
転写部31は、転写紙SをA1方向に沿って搬送しながら中間転写体37に密着させ、中間転写体37上に担持された記録液による画像をその転写紙Sに転写する搬送経路となっている。
【0034】
転写部材38は、転写部31を中間転写体38との間に形成する。転写部材38の、支持ローラ71と支持ローラ72との間に張り渡された部分は、中間転写体37に加圧されており、転写部31は、中間転写体37の周面に沿った湾曲形状となっており、非直線状となっている。支持ローラ71、72は、転写部31がこのように非直線状となるように、その配置位置が調整されたものである。
【0035】
したがって、転写部材38は、転写部31全体で転写紙Sを中間転写体37に加圧するベルト状の加圧部材である加圧ベルトとして機能するものとなっている。よって、転写部材38のばたつきが防止され、転写部31の全域にわたって、転写紙Sは中間転写体37に安定して密着し、中間転写体37及び中間転写体37上の記録液と転写紙Sとの接触時間、接触領域が長くなっており、中間転写体37から転写紙Sへの記録液の転写効率が高くなっている。
【0036】
また、転写率の向上により、たとえば後述のように清掃手段34に備えられているクリーニングブレードの中間転写体37への当接圧を低くすることが可能となり、クリーニング動作による中間転写体37の劣化が軽減されるなど、中間転写体37のクリーニング動作の時間や回数を削減することも可能となる他、回収した記録液の回収スペースの削減にもつながるなど、大きな利点が得られる。
【0037】
加圧ローラ74は、転写部31を搬送されている転写紙Sが転写部31内において中間転写体37と転写部材38との間で加圧されるように、押圧バネ75の付勢力により、転写部材38を内側から加圧した状態である加圧状態を形成している。
【0038】
転写部材38は、上述のように、転写部31全体で転写紙Sを中間転写体37に加圧するベルト状の加圧部材である加圧ベルトとして機能するものであり、とくに加圧ローラ74が加圧状態を形成している位置で、高い加圧力で転写紙Sを中間転写体37に加圧する。このように、転写部31は、A1方向、B1方向に沿って不均一の加圧力の分布を有している。この転写部31の加圧力の分布、言い換えると転写部31における中間転写体37と転写部材38との間の圧力分布を、以下、圧力プロファイルという。
【0039】
圧力プロファイルは、たとえば、記録液と転写紙Sとが浸透性の高い組み合わせである場合には、図4に示すように、転写紙Sが転写部31に進入した直後に加圧力が高くなることが望ましい。この圧力プロファイルでは、転写紙Sへの記録液の浸透が進む前に加圧によって記録液を押し広げることにより、記録液の液滴が不均一に広がりながら浸透することを抑止し、転写紙Sの表面付近に記録液を浅く留まらせるため、画像濃度も確保される。このように、適正な圧力プロファイルを用いることで、転写画像の高品質化と高効率転写との両立が可能となる。画像形成装置100に適した圧力プロファイルの詳細については後述する。
【0040】
転写部材38、支持ローラ71、72、73、加圧ローラ74のうちの少なくとも1つは転写紙Sに転写される画像を転写紙Sに定着させるためのヒータを内蔵していても良い。また、搬送ユニット10は、転写部材38によって中間転写体37から転写紙Sに転写された画像を転写紙Sに定着させるための定着手段を備えていてもよい。
【0041】
図2に示すように、中間転写体37は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体37aと、支持体37a上に形成されたシリコーンゴム製の表面層37bとを有している。支持体37aの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層37bの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Sへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムなどによって形成しても良い。
【0042】
表面層37bは、中間転写体37に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係にあるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は10Ω・cm未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。
【0043】
表面層37bの厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。ただし、表面層37bは必須の構成でなく、支持体37aのみを中間転写体37としても良い。また、中間転写体37は、ドラム状でなく、無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
【0044】
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22と、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23と、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sの種類を検知する図示しない紙種検出手段とを有している。紙種検出手段による紙種の検出項目としては、光沢度、厚み、屈曲強さなどが挙げられる。
【0045】
キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【0046】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ複数、主走査方向に並設され、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっている。
【0047】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK側から供給されてきた記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
【0048】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
【0049】
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
【0050】
ポンプは、制御部40によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部40は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部40は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
【0051】
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
【0052】
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、0.1〜40質量%であり、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
【0053】
アニオン性分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0054】
記録液は、転写性の点から、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が塩基を用いて中和されたアニオン性基を有する樹脂をさらに含むことが好ましい。
記録液は、水に可溶な溶媒をさらに含んでもよい。水に可溶な溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等の多価アルコール誘導体;ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒;炭酸プロピレン、炭酸エチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0055】
図2に示すように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズル板61aと、ノズル板61aに形成されたノズル61bと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室61cと、インク室61c内の記録液をノズル61bから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル板61a、ノズル61b、インク室61c、インク吐出手段はこれらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1組のみを図示している。ノズル板61aは、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに備えられているが、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいては、すべてのノズル61b等に共通である。
【0056】
ノズル板61aは、詳細な図示を省略するが、導電性の基板と、この基板の、中間転写体37に対向する側の面に形成された撥水膜とを有している。撥水膜は、フッ素系撥水剤やシリコン系撥水剤などを塗布して形成しても良いし、フッ素系高分子やフッ素―金属化合物共析などをメッキして形成しても良く、撥水性がある膜なら特に限定されない。ノズル板61aは、インク室61c側の面をインク室61c内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えており、後述するようにカソードとして機能する。
【0057】
ノズル板61aは、全体が導電性であっても良いし、インク室61c側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室61c側に配設された導電性部材と中間転写体37側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良い。
【0058】
ノズル板61aの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
【0059】
ノズル板61aは、中間転写体37とのギャップが50〜200μmの間で設定される。かかるギャップが50μm未満であると、回転体である中間転写体37とノズル板61aとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが200μmを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。ただし、ギャップの維持さえ可能なら50μm未満でも特に問題はなく、200μm以上であっても、安定した液柱のブリッジが形成されれば問題ない。
【0060】
インク吐出手段は、各ノズル61bから記録液を液滴化して吐出させ転写紙Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、制御部40による制御によって圧電素子に印加される電圧パルスに応じてノズル61bから記録液を吐出するようになっている。この点、制御部40は、インク吐出制御手段として機能する。インク吐出制御手段として機能する制御部40は、かかる圧電素子を駆動するための電圧パルスを、形成すべき画像データに基づいて生成し、所定の信号波形でかかる圧電素子のそれぞれに入力する。
【0061】
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズル61bから記録液を吐出させるものであっても良い。
【0062】
通電手段33は、電源33aと、電源33aを支持体37aとノズル板61aとに接続した特に図示しない電気回路と、制御部40の機能の一部として実現され電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電圧印加制御手段としての制御部40は、電源33aの電圧を変更する電圧変更手段としても機能する。
【0063】
電源33aは、陽極を支持体37aに接続され、陰極をノズル板61aに接続されている。よって、通電手段33は、中間転写体37をアノードとして備え、ノズル板61aをカソードとして備えている。電源33aは、ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに設けられている。
【0064】
図1に示すように、清掃手段34は、中間転写体37に対していわゆるカウンター当接の態様で当接した、弾性体としてのゴムによって形成された清掃部材としてのクリーニングブレードによって構成されている。清掃手段34はクリーニングブレードとともに、清掃部材としてのクリーニングローラを備えていてもよい。
【0065】
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同じ位置に重なるよう、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
【0066】
このとき、電圧印加制御手段としての制御部40により、通電手段33が駆動され、電源33aから支持体37aとノズル板61aとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、図2(a)に示すように、ノズル61bにおいてメニスカスを形成している記録液が、図2(b)に示すように、中間転写体37に向けて移動し、ノズル61bと中間転写体37との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図2(c)に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体37に担持され、中間転写体37上に記録液による画像が形成される。
【0067】
そして、図2(b)に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段33により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段33の電圧印加により、カソードであるノズル板61aとアノードである中間転写体37とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード:4HO+4e→2H+4OH・・・反応式(1)
アノード:2HO→4H+O+4e・・・反応式(2)
【0068】
これにより、アノードとして機能する中間転写体37の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化してプロトン(H+)が生成するため、図5に示すように、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが、プロトンを介して凝集する。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル61bの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
【0069】
ここで、図6を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジBの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードC及びアノードAの近傍に移動する。その結果、カソードC及びアノードAの表面に、それぞれ電気二重層E及びEが形成されるが、電気二重層E及びEの充電速度は、液柱のブリッジBの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層Eの電圧が数Vに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードAの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料が凝集する。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体37への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
【0070】
このように、通電手段33は、液柱のブリッジBを形成している記録液を電気分解するための、中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BK、具体的にはノズル板61aとの間の電圧印加を行なうための構成となっている。
【0071】
液柱のブリッジBが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十mS/m〜数百mS/mである。このため、中間転写体37に記録液による画像を形成するためには、通電手段33による印加電圧は、水の理論分解電圧である1.23Vや一般的な水の電気分解の条件である数V〜十数Vでは不十分であり、数十V〜数百Vであることが好ましい。
【0072】
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給され、転写部材38がB1方向に回転しながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
【0073】
このようにして画像が転写紙Sに転写されるときには、凝集成分を含む記録液が転写紙Sに転写される。したがって、上述の凝集作用により凝集した色剤によって画像が形成されることにより、転写紙Sが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
【0074】
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Sへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Sの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集作用により記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されることにより、転写紙Sのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Sの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Sの取り扱いが容易化する。
【0075】
さらに、転写部31が非直線状であることにより、転写紙Sが中間転写体37に長い時間押し付けられ、上述のように、中間転写体37上の画像が高効率で転写紙Sに転写されることで、転写紙Sの搬送が高速で行われる場合にも高画質の画像形成が行われる。加えて、圧力プロファイルが図7(a)に示すように、あるいは後述する圧力プロファイルに設定されていることによっても、転写効率が高くなっており、高画質の画像形成が行われる。
【0076】
図7(a)に示した圧力プロファイルは、転写部31の入口から出口に向けて、言い換えるとA1方向上流側から下流側に向けて、複数、具体的には2つのピークを有している。この理由は次のとおりである。
【0077】
反応式(1)、(2)により、中間転写体37上の記録液は、中間転写体37と接触した際に粘度が上昇しているため、図7(b)に示すように、記録液の滴の中でも、中間転写体37と接している部分の粘度が高く、中間転写体37から離れるにつれて粘度が低くなる。したがって、図7(a)に示した圧力プロファイルを用い、記録液と転写紙Sとが当接した直後に加圧力を高め粘度の低い部分を転写し、その後、緩やかな加圧から再び加圧力を強め、高粘度の部分のインクも確実に転写することで、高い転写効率を得ている。
【0078】
近年用いられる記録液は、高画質・高信頼のために、吐出後に化学的な方法や電気的な方法でインクの粘度を変化させたり、高温をかけて溶融させるような固体インクが用いられたりするなどその種類も多様化している。このような事情から、記録液の個々の滴内の状態も一様とは限らず、転写中に複数の状態の記録液に連続して対応する必要がある。
【0079】
画像形成装置100では、中間転写体37に接触した記録液の粘度を調整するため、同図(a)あるいは後述する圧力プロファイルを用いることで高画質・高効率転写を実現するものとなっている。上述のように、インクの特性は画像形成装置によっても異なるため、複数の圧力プロファイルを組み合わせたような複雑な圧力プロファイルを用いることで、種々の画像形成装置において高画質・高効率転写が実現可能となる。
【0080】
転写部31における高効率の転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、中間転写体37は清掃手段34によるクリーニングを受けることで、記録液のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
【0081】
以上のような画像形成装置100においては、中間転写体37がドラム状、転写部材38がベルト状であり、ベルト部材である転写部材38を巻き掛けた支持部材71、72により、転写部31が非直線状となるように、転写部材38を内側から巻き掛けているが、転写部31を非直線状として上述のように安定した加圧力を得ることで転写効率を向上するには、中間転写体37と転写部材38との少なくとも一方がベルト状のベルト部材であれば良く、転写部31が非直線状となるように、複数の支持部材によってベルト部材を内側から巻き掛ければよい。
【0082】
中間転写体37と転写部材38とのうち、転写部材38のみがベルト部材である構成としては、図1、図3に示した構成のほか、たとえば、図10〜図14、図19に示す構成が挙げられる。中間転写体37と転写部材38との両者がベルト部材である構成としては、図8、図9、図15〜図18に示す構成が挙げられる。中間転写体37と転写部材38とのうち、中間転写体37のみがベルト部材である構成としては、たとえば、図20に示す構成が挙げられる。
【0083】
中間転写体37をベルト部材とすると、これを支持するための支持部材を要するなど機構が複雑化しやすいが、レイアウトの自由度が高いため、転写部31の長さを長く採った場合でも小型化がし易いという利点があるほか、たとえば図8、図9、図15〜図18、図20に示すように、中間転写体37を直線状に張り渡した部分に対向するようにヘッド61Y、61M、61C、61BKを並設可能となってヘッド61Y、61M、61C、61BKを設けるために要する空間を小型化し易いなどの利点がある。前者の利点は、図9、図18に示すように、中間転写体37と転写部材38との両者がベルト部材である場合に良く得られる。
【0084】
加圧部材74は、ベルト部材を内側から加圧して適正な圧力プロファイルを得るように、少なくとも1つ備えられていれば良い。たとえば、具体的には、図7(a)に示した圧力プロファイルを得るには、圧力のピーク位置で加圧部材74による加圧を行うように、加圧部材74を2つ設ければ良い。圧力プロファイルにおけるピークの数に応じた数の加圧部材74を設ければよい。
【0085】
このように、加圧部材74のベルト部材への当接位置や個数は、必要な圧力プロファイルが得られるように、使用する記録液の特性、その他、後述するように圧力プロファイルを適正化するのに用いられる各種条件などに合せて適宜変更可能である。加圧部材74の個数は、圧力プロファイルにおけるピークの数を超える数とすることも可能である。
【0086】
加圧部材74は、中間転写体37と転写部材38との両者がベルト部材である構成においては、図8、図9に示されているように、転写部材38を内側から加圧するようにしても良いし、図15〜図17に示されているように、中間転写体37を内側から加圧するようにしても良いし、図18に示されているように、中間転写体37と転写部材38との両者を内側から加圧するようにしても良い。
【0087】
加圧部材74は、ローラ状に限られず、ベルト部材に当接する位置が円弧状をなしたそり状のものでも良いが、現実的には摺動時の負荷や磨耗があるため、耐久性を考慮すると、転写率を多少犠牲にしてもローラ状のほうが望ましい。一方、転写率を最優先にして狙いの圧力プロファイル通りに加圧を行うには、そり状の方が適している。支持部材も同様である。本稿においては、加圧部材74はローラ状をなすものとして説明している。
【0088】
図8、図9に示す構成おいては、そり状の支持部材が備えられている。
具体的に、図8に示す構成においては、ベルト部材である中間転写体37を内側から巻き掛けた複数の支持部材91、92、93のうち、支持部材93がそり状をなし、転写部31を非直線状としたガイド部材となっている。支持部材91、92は、ローラ状であり、中間転写体37の、支持部材91と支持部材92との間で直線状に張り渡された部分に対向して、ヘッド61Y、61M、61C、61BKが設けられている。転写部材38側は、図3に示したのと同様の構成となっている。
【0089】
図9に示す構成においては、転写部材38側の構成として、図3に示した構成に加えて、転写部31を形成したそり状の支持部材77を有している。また、中間転写体37側の構成として、図8に示した支持部材93に代えて、支持部材77の両側で転写部31を形成したそり状の支持部材94、95を有している。支持部材77、94、95は、転写部31を非直線状としたガイド部材となっている。このように、支持部材、ガイド部材の形状、位置、個数等は、種々の組み合わせで用いることが可能である。
【0090】
図10、図11に示すように、加圧部材74は、位置が変更され、これによって圧力プロファイルを変更可能な位置変動部材として機能するものであっても良い。加圧部材74を位置変動部材とすることで、後述するような各種の圧力プロファイルを、より少ない加圧部材74で実現可能となる。図10に示す構成と図11に示す構成とでは、加圧部材74が移動する態様が次に述べるように異なっているが、これらの移動態様を組み合わせて用いるようにしても良い。加圧部材74の位置を変更する駆動手段については、周知の機構を用いることが可能である。
【0091】
図10に示す構成においては、加圧部材74は、中間転写体37の周面に沿って移動可能な位置変動部材として備えられており、加圧状態となる位置を転写部31内において変更可能であるように位置が変更され、加圧状態を形成する位置を任意に変更可能となっている。
【0092】
図11に示す構成においては、加圧部材74を複数、具体的には2つ有しており、選択的に、言い換えるとそれぞれが独立して加圧状態を解除可能なように、中間転写体37に当接および離間する方向に位置が変更される位置変動部材として備えられている。加圧部材74は、中間転写体37に当接および離間する方向に位置が変更されることで、加圧力も変更可能となっている。
【0093】
加圧部材74がこのように位置変動部材として備えられていることにより、圧力プロファイルが変更可能となっているが、転写装置64において、圧力プロファイルは、図21に示すように、転写紙Sの物性及び/又は中間転写体37に付与される記録液の量及び/又は温室度に関する環境に応じて変更し適正化することが可能となっている。圧力プロファイルの切り換えにより、環境条件による記録液の物性変化や、記録液と転写紙Sとの組み合わせ等に応じて最適な圧力プロファイル下で転写を行い、高い転写効率を得る。
【0094】
同図(a)は、圧力プロファイルを転写紙Sの物性を条件として変更する場合の例を、同図(b)は、圧力プロファイルを中間転写体37に付与される記録液の量を条件として変更する場合の例を、同図(c)は、圧力プロファイルを温室度に関する環境を条件として変更する場合の例を示しているが、これらのうちの2つあるいはすべての条件を組み合わせて用いても良い。
【0095】
圧力プロファイルの変更は、制御部40によって、かかる条件に応じた圧力プロファイルの選択により行われる。この点、制御部40は、圧力プロファイル変更手段、圧力プロファイル選択手段として機能する。制御部40は、選択、変更された圧力プロファイルに一致するように、加圧部材74の位置を変更する。この点、制御部40は、圧力プロファイル設定手段として機能する。
【0096】
同図(a)、(b)、(c)に示すそれぞれの場合において、圧力プロファイル変更手段、圧力プロファイル選択手段として機能する制御部40において行われる、圧力プロファイルの変更、選択動作について説明する。
【0097】
同図(a)に示す場合は、制御部40において、画像形成に用いられる転写紙Sの種類、厚み等が取得される。この取得は、操作パネルでの設定や、画像形成装置100に接続されたPC等の外部入力装置による印刷設定によって指定された紙種に基づいて(S11)、あるいは、紙種検出手段によって検知された紙種に基づいて(S12)行われる。
【0098】
圧力プロファイル変更手段、圧力プロファイル選択手段として機能する制御部40は、このように取得された紙種に基づいて、圧力プロファイルを変更、選択するのに用いる紙種を判断、選択して決定し(S13)、最適な圧力プロファイルに選択し変更する(S14)。圧力プロファイル設定手段として機能する制御部40は、選択、変更された圧力プロファイルを形成するように、加圧部材74の位置を変更し、加圧力を変更する(S15)。
【0099】
たとえば、転写紙Sとしては、普通紙のほか、専用コート紙のような普通紙より浸透性の良い紙や、逆に浸透性の悪い紙も用いられることがある。その他、転写紙Sの表面の凹凸や構成材料、吸湿特性によって、記録液の浸透性が変化する。よって、転写紙Sのこのような物性に応じて圧力プロファイルを変更させるよう制御することで、各種の転写紙Sについて最適な圧力プロファイルを設定し、高画質・高効率転写を実現する。
【0100】
なお、加圧部材74は、後述するように、支持部材と共通する部材として備えられることがあるため、加圧部材74が支持部材を構成している場合には、その移動により、加圧力の変更とともにベルト部材である転写部材38や中間転写体37の走行位置の少なくとも一部が変更され転写部31の位置が変更される。このことは、同図(b)、(c)に示す場合も同様である。
【0101】
また、加圧時間が短いほど中間転写体37や加圧部材74とくにそり状の加圧部材74を用いる場合のこれらの部材の劣化が少なくなるため、転写効率を確保しつつかかる加圧時間が短くなるような圧力プロファイルを選択すれば、かかる部材の負担を最小限にしながら、高画質・高効率転写が実現される。このことも、同図(b)、(c)に示す場合において同様である。
【0102】
同図(b)に示す場合は、制御部40において、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出され中間転写体37に付与される記録液の量が取得される。この取得は、インク吐出制御手段として機能する制御部40において圧電素子駆動用の電圧パルスを生成する際に用いた印刷データに基づいて(S21)、インク吐出制御手段として機能する制御部40によって、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出される記録液量を算出することによって(S22)行われる。
【0103】
圧力プロファイル変更手段、圧力プロファイル選択手段として機能する制御部40は、このように取得された記録液量に基づいて、最適な圧力プロファイルに選択し変更する(S23)。圧力プロファイル設定手段として機能する制御部40は、選択、変更された圧力プロファイルを形成するように、加圧部材74の位置を変更し、加圧力を変更する(S24)。
【0104】
記録液が転写紙Sに浸透する時間は、かかる記録液量に左右され、たとえば、記録液量が少なく画像密度が疎な場合は、加圧時間は比較的短くてよく、反対に記録液量が多い場合は、加圧時間を長く取る必要がある。よって印刷データを解析して記録液量すなわち転写紙Sに付着する記録液の量を算出し、その算出結果によって圧力プロファイルを変更させるよう制御することで、それぞれの印刷データを記録するのに最適な圧力プロファイルが設定され、高画質・高効率転写を実現する。
【0105】
同図(c)に示す場合は、制御部40において、画像形成装置100の置かれている環境の温度及び湿度が取得される。この取得は、温湿度検出手段によってかかる温度及び湿度が検出され(S31)、かかる温度及び湿度に関する環境データが制御部40に入力されることによって行われる。
【0106】
圧力プロファイル変更手段、圧力プロファイル選択手段として機能する制御部40は、このように取得された記録液量に基づいて、圧力プロファイルを選択、変更するのに用いる環境、たとえば低温であるか否か、高湿であるか否かを判断、選択して決定し(S32)、最適な圧力プロファイルに変更し選択する(S33)。圧力プロファイル設定手段として機能する制御部40は、選択、変更された圧力プロファイルを形成するように、加圧部材74の位置を変更し、加圧力を変更する(S34)。
【0107】
たとえば、低温環境では記録液の粘度が高くなり転写紙Sに浸透しにくく、また広がりにくくなるため、定着性や画像濃度を良好にするべく、転写部31の入口における加圧力を常温環境に比べて高くするように、転写部31の長さを増加させ加圧時間が長くなるように、などの観点から圧力プロファイルを選択し、変更する。画像形成装置100が用いられる環境は様々であって、温湿度環境によって記録液の物性や挙動が異なるため、温湿度環境に応じて圧力プロファイルを変更させるよう制御することで、転写に最適な圧力プロファイルが設定され、高画質・高効率転写を実現する。ただし、温度と湿度とのうちの何れか一方のみを用いて圧力プロファイルを設定するようにしても良い。
【0108】
図12ないし図19に示すように、加圧部材74は、支持部材と兼用し、支持部材と共通する部材としても良い。中間転写体37、転写部材38をベルト部材とすると、これを巻き掛ける部材を要するため機構が複雑化する傾向にあるが、かかる兼用により、加圧部材74の機能と支持部材の機能とを確保しつつ、かかる複雑化が抑制される。
【0109】
これらの図に示す構成において、支持部材と共通する部材として備えられた加圧部材74がローラ状をなしていることで、ベルト部材の走行性が向上してベルト部材の耐久性がより向上する。加圧部材74は、定位置に設けられた部材であっても良いし、位置変動部材として備えられていても良い。
【0110】
図12に示す構成においては、図1、図3に示した構成において、加圧部材74を支持ローラ71の位置に設けて支持ローラ71を省略し、加圧部材74を転写部31の入口部材として設けている。
【0111】
図13に示す構成においては、図1、図3に示した構成において、支持ローラ71に代えて加圧部材74を設けて加圧部材74を2つ備えた構成とし、支持ローラ71に代えて設けた加圧部材74を転写部31の入口部材としている。
【0112】
図14に示す構成においては、図1、図3に示した構成において、加圧部材74を支持ローラ71、72の位置に設けて支持ローラ71、72を省略し、各加圧部材74を転写部31の入口部材、出口部材として設けている。
【0113】
図15に示す構成においては、加圧部材74を、ベルト部材である中間転写体37を巻き掛けた支持部材と共通し兼用された部材として設けている。具体的には、同図に示す構成においては、図9に示した構成において、加圧部材74を支持部材94の位置に設けて支持部材94を省略し、加圧部材74を転写部31の入口部材として設けている。その他、図9に示した構成と比べて、支持部材77が大型化されているとともに、支持部材95はローラ状をなし支持部材77から離れた位置に設けられており、支持ローラ73は省略されている。
【0114】
図16に示す構成においては、図15に示した構成に加えて、ベルト部材である中間転写体37の内側に設けられた加圧部材74を有し、加圧部材74を2つ備えた構成としている。
【0115】
図17に示す構成においては、図15に示した構成において、加圧部材74を支持部材95の代わりに設けて支持部材95を省略し、またこの加圧部材74を出口部材として設けている。
【0116】
図18に示す構成においては、図15に示した構成において、ベルト部材である中間転写体37の内側に加圧部材74を追加して中間転写体37内の加圧部材74を3つにするとともに、支持部材77を省略して、中間転写体37内の3つの加圧部材74の間の2箇所に、ベルト部材である転写部材38の内側に位置する2つの加圧部材74を設け、転写部31を、加圧部材74の周面上のみに設けている。このように、加圧部材74の数を増やすことで、転写装置64を大型化することなく転写部31の距離を稼ぎ、転写紙Sの加圧時間を長くすることが可能である。
【0117】
図19に示す構成においては、図14に示した構成において、転写部31の入口と出口とを形成している2つの加圧部材74のうち、出口側の加圧部材74の径を、入口側の加圧部材74の径よりも大きくしているとともに、支持ローラ73は省略している。
【0118】
このように、転写部31の終了する側の、転写部31を形成する部分の曲率半径を、転写部31の開始する側の、転写部31を形成する部分の曲率半径より大きくすることで、転写部31の出口における圧力変動が緩やかな圧力プロファイルを形成する。この圧力プロファイルにより、転写部31を通過する転写紙Sと中間転写体37とが離間する速度が緩やかになり、中間転写体37上の記録液が表面張力によって転写紙S側に引き寄せられやすくなることで、転写効率が向上し、中間転写体37上の記録液の残りが少なくなるなどの利点が得られる。
【0119】
なお、このような曲率半径の関係は、支持部材が加圧部材となっていない場合にも適用可能であるし、中間転写体がベルト部材である場合における中間転写体内の支持部材にも適用可能であり、かかる利点と同様の利点が得られる。さらには、図15、図16、図17に示した支持部材77、図8に示した支持部材93のように、1つの部材で入口側と出口側とを兼用している場合には、1つの支持部材における入口側と出口側とでかかる関係を満たすように曲率半径を調整しても良い。
【0120】
図20に示す構成においては、中間転写体37のみがベルト部材となっており、図1、図3、図10〜図14、図19に示す構成との関係において、ベルト部材とドラム状の部材との関係が逆になっている。図20に示す構成のように、中間転写体37のみがベルト部材である場合も、図1、図3、図10〜図14、図19等に示した加圧の態様を適宜組み合わせて用いることが可能である。このことは、図20に示した構成と異なる構成においても同様であり、他の構成を適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0121】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0122】
たとえば、本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリ、プロッタ、印刷機の単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、1つであっても、複数であってもよい。
【0123】
記録液中の顔料は、カチオン性分散剤により分散し、カソードとして機能する中間転写体の表面で生成した水酸化物イオンを介して、凝集させてもよい。
中間転写体は、全体が導電性である必要はなく、少なくとも表面が導電性であればよい。
【0124】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0125】
31 搬送経路
37 中間転写体、ベルト部材
38 転写部材、ベルト部材
61Y、61M、61C、61BK 記録液吐出ヘッド
64 転写装置
71、72、73、74、77 ベルト部材である転写部材の複数の支持部材
74、91、92、93、94、95 ベルト部材である中間転写体の複数の支持部材
74 加圧部材、位置変動部材、加圧ローラ
71、74、93 入口側の支持部材
72、74、94 出口側の支持部材
100 画像形成装置
A1 中間転写体の移動方向
S 被記録材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【特許文献1】特開2008−80656号公報
【特許文献2】特開2010−253727号公報
【特許文献3】特開平6−155725号公報
【特許文献4】特許第3211845号公報
【特許文献5】特開2000−326559号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出ヘッドにより吐出されたインクを付与される、所定の方向に移動する中間転写体と、
被記録材を前記所定の方向に沿って搬送しながら同被記録材に前記中間転写体上のインクを転写する搬送経路を、同中間転写体との間に形成する転写部材とを有し、
前記中間転写体と前記転写部材との少なくとも一方はベルト状のベルト部材であり、
前記搬送経路が非直線状となるように前記ベルト部材を内側から巻き掛けた複数の支持部材と、
前記搬送経路を搬送されている被記録材が同搬送経路内において前記中間転写体と前記転写部材との間で加圧されるように、前記ベルト部材を内側から加圧した状態とするための少なくとも1つの加圧部材とを有する転写装置。
【請求項2】
請求項1記載の転写装置において、
前記加圧部材のうちの少なくとも1つは、前記状態を解除可能及び/又は前記状態となる位置を前記搬送経路内において変更可能であるように位置が変更される位置変動部材であることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2記載の転写装置において、
前記搬送経路における前記中間転写体と前記転写部材との間の圧力分布が、被記録材の物性及び/又は前記中間転写体に付与されるインクの量及び/又は温湿度に関する環境に応じた圧力分布となるように、前記位置変動部材の位置が変更されることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の転写装置において、
前記加圧部材のうちの少なくとも1つは、前記支持部材と共通する部材であることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項4記載の転写装置において、
前記支持部材と共通する前記加圧部材は加圧ローラであることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の転写装置において、
前記複数の支持部材であって、前記搬送経路の同じ側に位置し、同搬送経路の入口と出口とを形成している支持部材のうち、出口側の支持部材の、同搬送経路を形成する部分の曲率半径は、入口側の支持部材の、同搬送経路を形成する部分の曲率半径よりも大きいことを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の転写装置において、
前記搬送経路における前記中間転写体と前記転写部材との間の圧力分布が複数のピークを有することを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つに記載の転写装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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