説明

転動装置部品の製品欠陥検査方法及び製品欠陥検査装置

【課題】インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することのできる転動装置部品の製品欠陥検査方法及び製品欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを検査する際に、転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイル16aと、励磁コイル16aから転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル16bと、誘導コイル16bに発生した誘導起電力を検出するインダクタンス変化検出回路17と、インダクタンス変化検出回路17で検出された誘導起電力の大きさを閾値と比較して製品欠陥の有無を判定する比較判定回路18とを備えてなる検査装置を用いて製品欠陥の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形により製造された転動装置部品(例えば転がり軸受の保持器やシール、電食防止用転がり軸受の軌道輪等)に製品欠陥があるか否かを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
玉軸受に使用される冠型保持器は円環状に形成された主部の片面に複数の弾性片を突設してポケットを形成しており、主部及び弾性片が合成樹脂材で成形されている場合が多い。このため、このような冠型保持器を高温且つ高速の条件下で使用すると、弾性片が遠心力の作用により主部の直径方向外方に弾性変形し、内輪の内周面と擦れ合うことによって焼付きが生じやすくなるという問題がある。そこで、冠型保持器の弾性片が遠心力の作用により主部の直径方向外方に弾性変形することを抑制するために、弾性片が設けられていない側の主部の片面に円環状の金属板を、主部及び弾性片の射出成形時にインサートすることによって、主部に対して非分離に且つ主部の全周にわたって添設したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−145061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような冠型保持器は金属板が射出成形時に位置ずれを起したとしても位置ずれ等の製品欠陥を目視により確認することが難しい。このため、主部に対する金属板の位置ずれを切断などの破壊を伴わずに確認することが求められている。
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、その目的は、インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することのできる転動装置部品の製品欠陥検査方法及び製品欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査方法は、インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを検査する方法であって、前記製品欠陥を検出するセンサとして、前記転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイルと、該励磁コイルから前記転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサを用い、前記誘導コイルに発生した誘導起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定して前記製品欠陥の有無を検査することを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査方法は、請求項1記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法において、前記転動装置部品が主部の内部に金属板をインサート成形により製造された樹脂保持器であり、前記製品欠陥が前記主部と前記金属板との密着度、前記主部に対する前記金属板の位置ずれ、前記主部に発生した内部欠陥、前記金属板に発生した内部欠陥のいずれかであることを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査方法は、請求項1記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法において、前記転動装置部品が合成樹脂材またはエラストマー材からなる主部内に芯金を有するシールであって、前記製品欠陥が前記主部と前記芯金との密着度、前記主部に対する芯金の位置ずれ、前記主部に発生した内部欠陥、前記金属板に発生した内部欠陥のいずれかであることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査方法は、請求項1記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法において、前記転動装置部品が金属からなる環状体の内周面または外周面に合成樹脂製の絶縁層を有する転動装置部品であって、前記製品欠陥が前記環状体と前記絶縁層との密着度、前記環状体に対する絶縁層の位置ずれ、前記環状体に発生した内部欠陥、前記絶縁層に発生した内部欠陥のいずれかであることを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明に係る転動装置部品は、請求項1〜4のいずれか一項記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法により製品欠陥が管理されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査方法は、請求項1〜4のいずれか一項記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法において、転動装置が転がり軸受であることを特徴とする。
【0009】
請求項7記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査装置は、インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを検査する装置であって、前記転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイルと、該励磁コイルから前記転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサを具備し、前記誘導コイルに発生した誘導起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定して前記製品欠陥の有無を検査することを特徴とする。
【0010】
請求項8記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査装置は、請求項7記載の転動装置部品の製品欠陥検査装置において、前記電磁誘導センサ及び前記転動装置部品のうち少なくとも一方が回転、直動、揺動可能であることを特徴とする。
請求項9記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査装置は、請求項7または8記載の転動装置部品の製品欠陥検査装置において、前記電磁誘導センサの出力をデータ処理するデータ処理部と、このデータ処理部の出力を予め設定された閾値と比較して製品欠陥の有無を判定する判定部とを具備したことを特徴とする。
【0011】
請求項10記載の発明に係る転動装置部品の製品欠陥検査装置は、請求項9記載の転動装置部品の製品欠陥検査装置において、前記判定部の判定結果を表示する表示手段と前記電磁誘導センサの出力を記憶する記憶手段のうちの少なくとも一方を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
玉軸受の玉を保持する冠型保持器の一例を図1に示す。同図に示される冠型保持器1は合成樹脂材からなる円環状の主部2を有しており、この主部2の軸方向一端には、玉軸受の玉(転動体)9を保持するためのポケット4を形成する複数の弾性片3が主部2と一体に樹脂成形されている。また、冠型保持器1は主部2及び弾性片3の樹脂成形時にインサートされる円環状の金属板5を有しており、この金属板5は弾性片3と反対側の主部2の軸方向他端部に埋設されている。
【0014】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る転動装置部品用製品欠陥検査装置(以下「製品欠陥検査装置」と略記する)の概略構成を示す図である。同図に示される製品欠陥検査装置は検査対象物である転動装置部品15に交流磁界を付与する励磁コイル16aと、この励磁コイル16aから転動装置部品15に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル16bとを備えており、これらの両コイル16a,16bは電磁誘導センサ16を構成している。
【0015】
また、図2に示される製品欠陥検査装置は誘導コイル16bのインダクタンス変化(誘導コイル16bに発生した誘導起電力の大きさ)を検出するインダクタンス変化検出回路(データ処理部)17と、このインダクタンス変化検出回路17で検出された誘導コイル16bのインダクタンス変化を予め設定された閾値と比較して製品欠陥の有無を判定する判定部としての比較判定回路18と、この比較判定回路18の判定結果を表示する表示装置19とを備えており、比較判定回路18では、誘導コイル16bに発生した誘導起電力の振幅変化量または位相変化量が閾値より大きい場合に製品欠陥が転動装置部品15に存在すると判定するようになっている。また、図2に示される製品欠陥検査装置は比較判定回路18の判定結果を記録用紙等の記録媒体に記録する記録装置20と、電磁誘導センサ16の出力を記憶する記憶装置21とを備えている。なお、図2において符号22は電磁誘導センサ16の励磁コイル16aに交流電流を供給する交流電源である。
【0016】
図3は電磁誘導センサ16の概略構成を示す図であり、同図に示されるように、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bは、その一部を励磁コイル16aに接触させて励磁コイル16aと同軸に巻回されている。
図2に示した製品欠陥検査装置を用いて、図1に示した冠型保持器1に製品欠陥があるか否かを検査する場合は、先ず、図4に示すように、冠型保持器1の表面に電磁誘導センサ16を近づける。そして、この状態で電磁誘導センサ16の励磁コイル16aに交流電流を供給し、図5に示す交流磁界23を励磁コイル16aから冠型保持器1に付与すると、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに誘導起電力が発生する。このとき、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに発生した誘導起電力は冠型保持器1に付与された交流磁界23の磁束密度に応じて変化し、交流磁界23の磁束密度は冠型保持器1に発生した製品欠陥(例えば主部2と金属板5との密着度、金属板5の位置ずれ、主部2または金属板5に発生した内部欠陥等)の大きさに応じて変化する。
【0017】
したがって、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに発生した誘導起電力の振幅変化量または位相変化量をインダクタンス変化検出回路17で検出し、インダクタンス変化検出回路17で検出された誘導起電力の振幅変化量または位相変化量を予め設定された閾値と比較することで、冠型保持器1に製品欠陥があるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することができる。
【0018】
図2に示した本発明の第1の実施形態では、比較判定回路18の判定結果を表示する表示装置19と、比較判定回路18の判定結果を記録用紙等の記録媒体に記録する記録装置20と、電磁誘導センサ16の出力を記憶する記憶装置21とを備えたものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、表示装置19、記録装置20及び記憶装置21のうちの少なくとも1つを備えた構成のものでもよい。
【0019】
次に、本発明の第2の実施形態に係る製品欠陥検査装置の概略構成を図6に示す。同図に示される製品欠陥検査装置は冠型保持器等の転動装置部品を載置するためのターンテーブル26と、このターンテーブル26の上方に設けられた電磁誘導センサ16と、この電磁誘導センサ16をターンテーブル26の上面に対して垂直に支持する支持軸27とを備えており、電磁誘導センサ16は、図3に示すように、転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイル16aと、この励磁コイル16aから転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル16bとから構成されている。
【0020】
また、第2の実施形態に係る製品欠陥検査装置は支持軸27を介して電磁誘導センサ16をX軸回り(図中矢印θ方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構28と、このセンサ揺動機構28を介して電磁誘導センサ16を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構29と、電磁誘導センサ16を図中X軸方向及びY軸方向に動かして電磁誘導センサ16を位置決めするセンサ位置決め機構30とを備えており、ターンテーブル26は検査対象物を位置決めする位置決め機構31により図中X軸方向に移動可能となっている。
【0021】
このように構成される製品欠陥検査装置を用いて図1に示した冠型保持器1に製品欠陥があるか否かを検査する場合は、先ず、冠型保持器1をターンテーブル26上に載置する。次に、センサ揺動機構28、センサ昇降機構29、センサ位置決め機構30及び位置決め機構31を駆動して電磁誘導センサ16を冠型保持器1の端面に近づけた後、電磁誘導センサ16の励磁コイル16aに交流電流を供給して冠型保持器1に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル16bに発生した誘導起電力の大きさは冠型保持器1に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度は冠型保持器1に発生した製品欠陥(例えば主部2と金属板5との密着度、金属板5の位置ずれ、主部2または金属板5に発生した内部欠陥等)の大きさに応じて変化する。
【0022】
したがって、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに発生した誘導起電力の大きさを予め設定された閾値と比較することで、製品欠陥が冠型保持器1にあるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することができる。
次に、本発明の第3の実施形態に係る製品欠陥検査装置の概略構成を図7に示す。同図に示される製品欠陥検査装置は冠型保持器等の転動装置部品を載置するためのターンテーブル26と、このターンテーブル26の上方に設けられた電磁誘導センサ16と、この電磁誘導センサ16をターンテーブル26の上面に対して水平に支持する支持軸32とを備えており、電磁誘導センサ16は、図3に示すように、転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイル16aと、この励磁コイル16aから転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル16bとから構成されている。
【0023】
また、第3の実施形態に係る製品欠陥検査装置は支持軸32を介して電磁誘導センサ16をZ軸回り(図中矢印θ方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構33と、このセンサ揺動機構33を介して電磁誘導センサ16を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構29と、電磁誘導センサ16を図中X軸方向及びY軸方向に動かしてセンサ16を位置決めするセンサ位置決め機構30とを備えており、ターンテーブル26は検査対象物を位置決めする位置決め機構31により図中X軸方向に移動可能となっている。
【0024】
このように構成される製品欠陥検査装置を用いて図1に示した冠型保持器1に製品欠陥があるか否かを検査する場合は、先ず、冠型保持器1をターンテーブル26上に載置する。次に、センサ揺動機構33、センサ昇降機構29、センサ位置決め機構30及び位置決め機構31を駆動して電磁誘導センサ16を冠型保持器1の内周面に近づけた後、電磁誘導センサ16の励磁コイル16aに交流電流を供給して冠型保持器1に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル16bに発生した誘導起電力の大きさは冠型保持器1に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度は冠型保持器1に発生した製品欠陥(例えば主部2と金属板5との密着度、金属板5の位置ずれ、主部2または金属板5に発生した内部欠陥等)の大きさに応じて変化する。
【0025】
したがって、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに発生した誘導起電力の大きさを予め設定された閾値と比較することで、製品欠陥が冠型保持器1にあるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することができる。
図8は、玉軸受のシールに製品欠陥があるか否かを検査する場合の一例を示す断面図である。同図に示される玉軸受6は外輪7及び内輪8を有しており、外輪7と内輪8との間には、複数個の玉9が組み込まれているとともに、玉9を保持する保持器10が設けられている。また、玉軸受6は外輪7と内輪8との間をシールする一対のシール11を有している。これらのシール11は合成樹脂材またはエラストマー材からなる円環状の主部11aを有しており、この主部11aの内部には、円環状の芯金11bがインサート成形により埋設されている。
【0026】
図2に示した製品欠陥検査装置を用いて図8に示した玉軸受6のシール11に製品欠陥があるか否かを検査する場合は、先ず、図8に示すように、シール11の表面に電磁誘導センサ16を押し当てる。そして、この状態で電磁誘導センサ16の励磁コイル16aに交流電流を供給してシール11に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに誘導起電力が発生する。このとき、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに発生した誘導起電力はシール11に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、シール11に付与された交流磁界の磁束密度はシール11に発生した製品欠陥(例えば主部11aと芯金11bとの密着度、芯金11bの位置ずれ、主部11aまたは芯金11bに発生した内部欠陥等)の大きさに応じて変化する。
【0027】
したがって、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに発生した誘導起電力の振幅変化量または位相変化量をインダクタンス変化検出回路17で検出し、インダクタンス変化検出回路17で検出された誘導起電力の振幅変化量または位相変化量を予め設定された閾値と比較することで、シール11に製品欠陥があるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することができる。
【0028】
図9は電食防止転がり軸受の一例を示す断面図であり、同図に示される電食防止転がり軸受は外輪7を有している。この外輪7は軸受鋼等の鉄鋼材料で形成されており、その端面7a,7bと外周面7cは合成樹脂材からなる絶縁被膜(絶縁層)12で被覆されている。
また、図9に示される電食防止転がり軸受は外輪7と同様の素材からなる内輪8を有しており、この内輪8の端面8a,8b及び内周面8cは合成樹脂材からなる絶縁被膜(絶縁層)13で被覆されている。なお、図中9は外輪7と内輪8との間に組み込まれた玉を示している。
【0029】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る製品欠陥検査装置の概略構成を示す図である。同図に示される製品欠陥検査装置は外輪等の転動装置部品を載置するためのターンテーブル26と、このターンテーブル26の上方に設けられた電磁誘導センサ16と、この電磁誘導センサ16をターンテーブル26の上面に対して水平に支持する支持軸32とを備えており、電磁誘導センサ16は、図3に示すように、転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイル16aと、この励磁コイル16aから転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル16bとから構成されている。
【0030】
また、第4の実施形態に係る製品欠陥検査装置は支持軸32を介して電磁誘導センサ16をZ軸回り(図中矢印θ方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構33と、このセンサ揺動機構33を介して電磁誘導センサ16を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構29と、電磁誘導センサ16を図中X軸方向及びY軸方向に動かしてセンサ16を位置決めするセンサ位置決め機構30とを備えている。
【0031】
このように構成される製品欠陥検査装置を用いて図9に示した外輪7に製品欠陥があるか否かを検査する場合は、先ず、外輪7をターンテーブル26上に載置する。次に、センサ揺動機構33、センサ昇降機構29及びセンサ位置決め機構30を駆動して電磁誘導センサ16を外輪7の外周面に近づけた後、電磁誘導センサ16の励磁コイル16aに交流電流を供給して外輪7に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル16bに発生した誘導起電力の大きさは外輪7に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度は外輪7に発生した製品欠陥(例えば外輪7と絶縁層12との密着度、絶縁層12の位置ずれ、外輪7または絶縁層12に発生した内部欠陥等)の大きさに応じて変化する。
【0032】
したがって、電磁誘導センサ16の誘導コイル16bに発生した誘導起電力の大きさを予め設定された閾値と比較することで、製品欠陥が外輪7にあるか否かを切断などの破壊を伴わずに精度よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】玉軸受の玉を保持する冠型保持器の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る転動装置部品用製品欠陥検査装置の概略構成を示す図である。
【図3】電磁誘導センサの概略構成を示す図である。
【図4】冠型保持器に製品欠陥があるか否かを検査する場合の方法を説明するための図である。
【図5】電磁誘導センサの励磁コイルから検査対象物に付与される交流磁界を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る製品欠陥検査装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る製品欠陥検査装置の概略構成を示す図である。
【図8】玉軸受のシールに製品欠陥があるか否かを検査する場合の一例を示す断面図である。
【図9】電食防止転がり軸受の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る製品欠陥検査装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 冠型保持器
2 主部
3 弾性片
4 ポケット
5 金属板
6 玉軸受
7 外輪
8 内輪
9 玉
10 保持器
11 シール
11a 主部
11b 芯金
12,13 絶縁被膜(絶縁層)
15 転動装置部品
16 電磁誘導センサ
16a 励磁コイル
16b 誘導コイル
17 インダクタンス変化検出回路(データ処理部)
18 比較判定回路(判定部)
19 表示装置
20 記録装置
21 記憶装置
26 ターンテーブル
27,32 支持軸
28,33 センサ揺動機構
29 センサ昇降機構
30 センサ位置決め機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを検査する方法であって、前記製品欠陥を検出するセンサとして、前記転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイルと、該励磁コイルから前記転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサを用い、前記誘導コイルに発生した誘導起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定して前記製品欠陥の有無を検査することを特徴とする転動装置部品の製品欠陥検査方法。
【請求項2】
前記転動装置部品が主部の内部に金属板をインサート成形により製造された樹脂保持器であり、前記製品欠陥が前記主部と前記金属板との密着度、前記主部に対する前記金属板の位置ずれ、前記主部に発生した内部欠陥、前記金属板に発生した内部欠陥のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法。
【請求項3】
前記転動装置部品が合成樹脂材またはエラストマー材からなる主部の内部に芯金を有するシールであり、前記製品欠陥が前記主部と前記芯金との密着度、前記主部に対する芯金の位置ずれ、前記主部に発生した内部欠陥、前記金属板に発生した内部欠陥のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法。
【請求項4】
前記転動装置部品が金属からなる環状体の内周面または外周面に合成樹脂製の絶縁層を有する転動装置部品であり、前記製品欠陥が前記環状体と前記絶縁層との密着度、前記環状体に対する絶縁層の位置ずれ、前記環状体に発生した内部欠陥、前記絶縁層に発生した内部欠陥のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法により製品欠陥が管理されていることを特徴とする転動装置部品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項記載の転動装置部品の製品欠陥検査方法において、転動装置が転がり軸受であることを特徴とする転動装置部品の製品欠陥検査方法。
【請求項7】
インサート成形により製造された転動装置部品に製品欠陥があるか否かを検査する装置であって、前記転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイルと、該励磁コイルから前記転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサを具備し、前記誘導コイルに発生した誘導起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定して前記製品欠陥の有無を検査することを特徴とする転動装置部品の製品欠陥検査装置。
【請求項8】
前記電磁誘導センサ及び前記転動装置部品のうち少なくとも一方が回転、直動、揺動可能であることを特徴とする請求項7記載の転動装置部品の製品欠陥検査装置。
【請求項9】
前記電磁誘導センサの出力をデータ処理するデータ処理部と、このデータ処理部の出力を予め設定された閾値と比較して前記製品欠陥の有無を判定する判定部とを具備したことを特徴とする請求項7または8記載の転動装置部品の製品欠陥検査装置。
【請求項10】
前記判定部の判定結果を表示する表示手段と前記電磁誘導センサの出力を記憶する記憶手段のうちの少なくとも一方を有することを特徴とする請求項9記載の転動装置部品の製品欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−32679(P2008−32679A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334184(P2006−334184)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】