説明

転圧機械のポンプ装置

【課題】簡単な構成で、グリスの補給を容易に行うことができる転圧機械のポンプ装置を提供する。
【解決手段】転圧機械のポンプ装置は、転圧機械の水タンクへの水の充填及び水タンクから水使用装置への水の供給に使用されるポンプ58を含むポンプ装置において、ポンプ58は、ポンプ軸74の外周が摺接するメカニカルシール122と、メカニカルシール122に臨んで設けられたグリス注入口124と、グリス注入口124からポンプ58のハウジングを通過して延び、転圧機械の運転席の近傍に位置付けられた端部を有し、且つ、その内部がグリスで満たされている延長チューブ126と、延長チューブ126の端部に配設され、その内部のグリスを延長チューブ126内に押出し、延長チューブ126内のグリスをグリス注入口124からメカニカルシール122に供給可能とする手動操作型のグリスカップ128とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧機械に搭載されるポンプ装置に関し、より詳しくは、転圧機械の水タンクから散水装置等への給水を行うポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、路面の舗装工事を行う場合には、タイヤローラ等の転圧機械が用いられている。このタイヤローラは、車体の前後に回転可能に設けられた転圧ローラを備え、アスファルト混合物等の舗装材を敷きつめた路面を走行しながら、前後の転圧ローラによって舗装材を転圧、つまり、締め固めていくものである。
通常、タイヤローラ等の転圧機械を用いた路面の舗装工事においては、大量の水が使われる。即ち、転圧された路面の舗装材に対して散水することにより舗装材を冷却して硬化を促進することが行われている。
【0003】
このため、転圧機械の車体には、例えば、特許文献1に記載の転圧車両のように、大量の水を貯留するための水タンク及びこの水タンク内の水を散水装置に供給するためのポンプが設けられている。また、転圧機械は、上述のように大容量の水タンクを有することから、水タンク内の水の量が減った他の転圧機械に対して水の供給を行うこともでき、この場合も斯かるポンプが利用される。
【0004】
このような路面への散水や他車への水の供給に使われる給散水ポンプは、油圧モータにより駆動され、高速で回転する。このため、給散水ポンプのポンプ軸に摺接する摺接部には、破損防止のため定期的にグリスを補給する必要がある。
このグリスの補給のため、給散水ポンプはその摺接部の近傍に配置されたグリスカップを備え、このグリスカップを介してグリスの補給が可能となっている。より詳しくは、グリスカップは、グリスを収容したカップ部と、カップ部の先端に連通したグリス供給端とを有しており、斯かるグリス供給端が摺接部に臨んで配設されている。そして、このグリスカップに所定角度の回転操作を付与することにより、グリス供給端より規定量のグリスが摺接部に供給される。
【特許文献1】特開2001−107313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、転圧機械において、運転席は車体の上部に設けられているのに対し、給散水ポンプは車体の下部に設けられているのが一般的である(特許文献1の図1参照。)。
このため、給散水ポンプにグリスを補給する場合、運転席に既に着座した作業者は、車体から降りる必要があり、グリスの補給作業は、作業者にとって負担になることがある。
また、給散水ポンプへのグリスの補給やメンテナンスは通常、車体の外壁に開閉可能にして設けたアクセス開口を通じて行われるが、アクセス開口とグリスカップとの位置関係によっては、グリスカップがアクセス開口から見えにくい場所にあることがある。このような場合、作業者は、グリスカップを回したり、カップ部にグリスを補充する作業を容易に行えず、このことも、グリスの補給作業は作業者には負担をかけるものとなっている。
【0006】
以上のように、給散水ポンプのグリスの補給作業は、作業者に負担をかけ、その作業性が悪いという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で、グリスの補給を容易に行うことができる転圧機械のポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の転圧機械のポンプ装置は、転圧機械の水タンクから水使用装置への水の供給に使用されるポンプ装置において、前記ポンプ装置は、前記転圧機械の運転席の斜め後方に隣接して配置されたポンプを備え、前記ポンプは、ポンプ軸の外周が摺接する摺接部と、前記摺接部に臨んで設けられたグリス注入口と、前記グリス注入口から前記ポンプのハウジングを通過して延び、前記運転席の近傍に位置付けられた端部を有し、且つ、その内部がグリスで満たされている延長チューブと、前記延長チューブの前記端部に配設され、その内部のグリスを前記延長チューブ内に押出し、前記延長チューブ内のグリスを前記グリス注入口から前記摺接部に供給可能とする手動操作型のグリスカップとを備えたことを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
請求項1に記載の転圧機械のポンプ装置によれば、ポンプ装置が運転席に隣接しているため、作業者は、運転席に座ったままでグリスの補給作業が行える。しかも、グリスカップは延長チューブの先端に取り付けられているので、グリスカップを操作し易い任意の場所に位置付けることができる。このため、グリスカップの位置が限定されないので、ポンプ装置の設置場所の選択の自由度が大幅に向上する。
【0009】
また、前記ポンプを覆うカバーを更に含み、前記グリスカップが、前記カバーの表面から露出している構成とすることが好ましい(請求項2)。
この構成によれば、グリスカップがカバーから露出しており、グリスの補給作業が楽に行える。また、グリスの補給作業にともなってカバーを取り外す必要はないので、カバーの簡素化が図れる。
【0010】
また、前記ポンプの吸水口を前記水タンクに接続する一方、外部の水源に接続可能とする吸水側配管系と、前記ポンプの吐出口を前記水タンクに接続する一方、前記転圧機械に搭載された水使用装置に接続可能とする吐出側配管系と、前記吸水側配管系及び前記吐出側配管系にそれぞれ介挿され、前記ポンプの吸水口及び吐出口の接続先をそれぞれ切り替える複数の切替弁とを更に備え、前記カバーは前記切替弁の周辺の配管系の部分をも覆っている構成とすることが好ましい(請求項3)。
【0011】
この構成によれば、切替弁を切り替えることにより、水タンク内への水を水使用装置への供給の他、水タンク内への充填、他車への水の補給等も行える。また、ポンプ自体が運転席近傍に配置されているので、運転席の近傍に設置すべき切替弁とポンプとの距離を短くできるので、切替弁とポンプとを結ぶ配管の取り回しを簡略化でき、製造効率の向上が図れる。
【0012】
また、前記切替弁は、その切替操作を行う操作レバーを含み、前記操作レバーが前記カバーの表面から露出している構成とすることが好ましい(請求項4)。
この構成によれば、操作レバーがカバーから露出しているので、切替弁の切替操作の操作性に優れる。
更に、前記ポンプは、油圧モータにより駆動されている構成とすることが好ましい(請求項5)。
【0013】
この構成によれば、油圧モータは比較的高出力であるので、ポンプ装置を水タンクよりも上方に設置しても十分に水を吸い上げることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1乃至請求項5に記載の本発明の転圧機械のポンプ装置によれば、グリスカップ及び切替弁の操作レバーが運転席に隣接して配設されているので、体勢の悪い状態での作業及び車体から降りての作業を排除することができ、作業者への負担を低減することができる。また、ポンプの摺接部へのグリスの補給、グリスカップ内のグリスの残量確認及びグリスカップへのグリスの補充といった作業を楽に行うことができ、グリスの補給を確実に行えるので、ポンプの破損防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る転圧機械のポンプ装置の形態を、図面を参照して説明する。
本発明が適用される転圧機械としては特に限定されないが、例えば、図1に示すタイヤローラに適用した場合を例に説明する。
図1に示すように、タイヤローラ2は、大きく分けてみたとき、前後方向に延びる車体4と、車体4の前部に回転可能に設けられた前側転圧ローラ6と、車体4の後部に回転可能に設けられた後側転圧ローラ8とを備えている。
【0016】
車体4は、車体フレーム(図示せず)と、この車体フレームにそれぞれ搭載された水タンク10及びタイヤローラ2に必要な機能を発揮させるための各種機能部品(図示せず)と、車体フレームに取り付けられ、水タンク10及び各種機能部品等を覆い、且つ、車体の外形を形作る外壁12とからなっている。
ここで、水タンク10は、車体4の内部にて路面の舗装工事の際に使用される大量の水を貯留しておくものである。
【0017】
一方、車体4はその上部中央に平坦な運転デッキ14を備え、この運転デッキ14には、運転席18、この運転席18の前方の計器盤20及びステアリングホイール22等が配置され、ステアリングホイール22はステアリングコラム16の上端に取り付けられている。なお、運転デッキ14はキャノピ24によって覆われている。そして、車体4の左側面には、運転デッキ14に対する階段状の乗降用ステップ26が設けられ、この乗降用ステップ26は、運転者又は作業者が運転デッキ14に対して乗降をなす際の足場となる。
【0018】
また、運転デッキ14の前方部分には、機能部品として車体フレーム上に搭載されたエンジン及び油圧ポンプ(ともに図示せず)が配設されており、これらはエンジンフード28により覆われている。
前側転圧ローラ6は、車体4の幅方向に延びる前側車軸と、この前側車軸に取り付けられた3個の前側ゴムタイヤ30とからなり、前側車軸、即ち、前側ゴムタイヤ30は車体4の前部下側に操向支持体32を介して取り付けられている。ここで、操向支持体32は、前述したステアリングホイール22の操作により車体4の左右方向に旋回し、前側転圧ローラ6を左右に操向、つまり、操舵させることができる。
【0019】
また、各前側ゴムタイヤ30の直上には、それぞれ前側散布ノズル38が上下2段に2個ずつ配設されている。これら前側散布ノズル38のうち、上段は、水を散布する散水ノズル39であり、この散水ノズル39は、車体4の幅方向に延びる給水パイプ40に取り付けられ、対応する前側ゴムタイヤ30に対向して位置付けられている。この給水パイプ40は前述した操向支持体32にブラケット42を介して取り付けられている。
【0020】
給水パイプ40には、前述した水タンク10に給水ライン(図示せず)を介して接続され、この給水ラインに電動散水ポンプ(図示せず)が設けられている。この電動散水ポンプが駆動されると、水タンク10から給水ライン及び給水パイプ40を通じて各散水ノズル39に水が供給され、これら散水ノズル39から対応する前側ゴムタイヤ30のタイヤ表面に水が霧状に散布される。このようにしてタイヤ表面に水を散布することにより、舗装工事の際に舗装材がタイヤ表面に付着することを防止することができる。
【0021】
一方、下段は、舗装材の付着防止性に優れた液剤を散布するための液剤ノズル41であり、この液剤ノズル41は、給水パイプ40と同様な態様で設けられた液剤供給パイプ43に取り付けられている。この液剤供給パイプ43は、液剤タンクに液剤供給ラインを介して接続され、この液剤供給ラインに液剤散布用電動ポンプが設けられている(ともに図示せず)。この液剤の散布は、水だけでは十分に舗装剤の付着を防止できない場合に行われる。
【0022】
更に、各前側ゴムタイヤ30の近傍には、前側摺接体44もまた配設されている。この前側摺接体44は作動位置にあるとき、タイヤ表面に水又は液剤の膜を均一に形成し、タイヤ表面への舗装材の付着をより有効に防止する。なお、前側摺接体44は、タイヤ表面に摺接する作動位置と、タイヤ表面から離間した休止位置の何れかに選択して位置付け可能となっている。
【0023】
後側転圧ローラ8は、車体4の幅方向に延びる後側車軸と、この後側車軸に取り付けられた4個の後側ゴムタイヤ46とからなり、後側車軸は油圧モータ、即ち、走向モータ(図示せず)に接続されている。走向モータは車体4の後部に配設され、後側ゴムタイヤ46を前進方向又は後進方向に回転駆動可能となっている。
また、各後側ゴムタイヤ46の近傍には、前側ゴムタイヤ30の前側散布ノズル38及び前側摺接体44と同様な態様の後側散布ノズル48(散水ノズル49、液剤ノズル51)と後側摺接体50が配設されており、後側散布ノズル48及び摺接体50は車体4の後端部から垂下された後側ブラケット52に取り付けられている。
【0024】
更に、車体の後端部には、路面散水装置である路面用散水パイプ54が配設されている。この路面用散水パイプ54は、車体4の幅方向に延び、その外周壁には複数の孔が下向きにして設けられている。そして、この路面用散水パイプ54には、水タンク10内の水を供給する配管が連結されている。斯かる配管の途中にはポンプが介挿されており、このポンプにより路面用散水パイプ54に水が圧送され、圧送された水は、前述の孔を通じて路面に細滴状に散布される。
【0025】
ここで、斯かるポンプは、水タンク10の水を路面用散水パイプ54へ圧送の他、他の転圧機械への水の供給や、外部の水源から水タンク10内への水の注入にも用いられる。このポンプを含むポンプ装置56は、前述した運転デッキ14上において運転席18の左側に隣接して配置されている。
より詳しくは、ポンプ装置56は、ポンプ58と、ポンプ58を駆動する油圧モータ60と、ポンプ58の吸水口62に連結された吸水側配管64と、ポンプ58の吐出口66に連結された吐出側配管68と、吸水側配管64及び吐出側配管68の途中にそれぞれ介挿されている切替弁(後述する)と、これらの全体を囲うカバー72とを備えている。
【0026】
ここで、ポンプ58は、図2から明らかなように、ポンプ軸74と、ポンプ軸74の先端に取り付けられている羽根車76と、この羽根車76をその内部に収容したインペラケーシング78と、インペラケーシング78に取り付けられ、ポンプ軸74を支える軸受等を内蔵したベアリングハウジング80等を備えている。
なお、ポンプ58は、図1に示すように、運転デッキ14上に配置されるが、この運転デッキ14の所定位置には貫通孔が設けられており、この貫通孔にポンプ58の取付台座104から突出したボルト106が挿通される。そして、このボルト106に運転デッキ14の裏面側よりナットが螺合され、ポンプ58は運転デッキ14に締結される。
【0027】
上述したベアリングハウジング80は、図2に示すように、インペラケーシング78の一部を形成する端壁108と、この端壁108から延びるシールハウジング部110と、内部にポンプ軸74のための軸受142を内蔵した筒状体112とを備えている。なお、端壁108はパッキン(図示せず)を介してインペラケーシング78に液密にして結合されている。
【0028】
詳しくは、端壁108はその中央にボス120を有し、このボス120はシールハウジング部110内に向けて突出されている。ボス120にはメカニカルシール122を介してポンプ軸74が貫通しており、このメカニカルシール122は、ポンプ軸74の外周面に摺接する摺接部、即ち、ボス120とポンプ軸74との間からの液漏れを防ぐ軸シールである。
【0029】
更に、このボス120にはグリス注入口124が設けられており、このグリス注入口124を通じてメカニカルシール122にグリスが注入可能となっている。詳しくは、グリス注入口124は、メカニカルシール122に臨んで斜めに設けられた貫通孔であり、その内周面には雌ねじが刻設されている。
グリス注入口124にはコネクタ130がねじ込んで取り付けられており、このコネクタ130から可撓性を有した延長チューブ126が延び、この延長チューブ126内はグリスで満たされている。延長チューブ126は、シールハウジング部110の開口を通じてベアリングハウジング80外に導出され、その先端にグリスカップ128が取り付けられている。
【0030】
より詳しくは、グリスカップ128は、グリスが収容されたカップ本体132と、カップ本体132に螺合された蓋体134とを備えている。カップ本体132は、その底から突出する差し込み管134を有し、この差し込み管134が延長チューブ126差し込まれて、延長チューブ126に接続されている。そして、グリスカップ128は、蓋体134が回転操作されることで、カップ本体132内のグリスを差し込み管134を通じて延長チューブ126内に押し出し可能となっており、これにより、延長チューブ126からグリス注入口124を通じてメカニカルシール122に所定量のグリスを供給することができる。
【0031】
なお、カップ本体132の底部外周には雄ねじ部136が形成され、この雄ねじ部136が板状の取付ブラケット138に螺合されることで、グリスカップ128は取付けブラケット138に取り付けられている。
取付ブラケット138は、グリスカップ128を所望位置に取り付けるための部材であり、グリスカップ128のカップ本体132を挟んだ両端部にねじ孔を有する。なお、図3の取付ブラケット138は、ねじ孔に取付ボルト140を螺合した状態で示されている。
【0032】
前述した油圧モータ60は、タイヤローラ2のエンジンにより油圧ポンプを介して駆動され、ポンプ軸74に連結された出力軸148を有する。
従って、油圧モータ60、即ち、ポンプ58が駆動されると、ポンプ58は吸水口62から水を吸い込み、斯かる水を加圧して吐出口66より吐出させることができる。
前述した図3に示すように、吸水側配管64は吸水口62側からメイン吸水配管150と、このメイン吸水配管150に吸水側三方切替弁152を介して接続された水タンク側吸水配管154及び外部側吸水配管156とからなる。ここで、吸水側三方切替弁152は、ポンプ側出口158と、水タンク側入口160と、外部側入口162とを備えており、切替レバー164の操作により、ポンプ側出口158に対して水タンク側入口160又は外部側入口162の接続を選択的に切り替えるものである。具体的には、切替レバー164が図3中のA位置にあるとき、水タンク側入口160とポンプ側出口158が接続され、一方、外部側入口162とポンプ側出口158との間の接続は遮断された状態にある。これに対し、切替レバー164がB位置にあるとき、外部側入口162とポンプ側出口158とが接続され、一方、水タンク側入口160とポンプ側出口158との間の接続は遮断された状態にある。なお、切替レバー164は、ポンプ58に対し、車体の前後方向でみて前側に位置付けられている。
【0033】
メイン吸水配管150は、90度に屈曲したエルボ型配管であり、吸水口62と吸水側三方切替弁152のポンプ側出口158とを接続している。
水タンク側吸水配管154は、水タンク10内の水を吸い込むための配管であり、吸水側三方切替弁152の水タンク側入口160と水タンク10とを接続し、水タンク10の底部に位置付けられた吸込口を有している。
【0034】
外部側吸水配管156は、外部、例えば、川、貯水池などの外部水源から水を吸い込んで、水タンク10へ水を供給するための配管であり、切替弁152側から90度に屈曲したエルボ型配管166と、このエルボ型配管166から延びる可撓性を有する長尺なホース168とからなる。ホース168は、外部からの吸水を行わない場合には、巻かれた状態で車体4の収納スペース(図示せず)に収納されている。
【0035】
一方、吐出側配管68は、ポンプ58の吐出口66に接続されたメイン吐出配管170に加え、このメイン吐出配管170に吐出側切替ユニット178を介して接続された他車給水配管172、路面散水用配管174及び水タンク注水配管176からなっている。他車給水配管172、路面散水用配管174及び水タンク注水配管176はポンプ58から吐出される水を、他の転圧機械の水タンク、路面用散水パイプ54及び自身のタイヤローラの水タンク10にそれぞれ供給するために使用される。
【0036】
そして、吐出側切替ユニット178は、メイン吐出配管170を、配管172,174,176の何れかに接続すべく切替作動される。具体的には、吐出側切替ユニット178は、2つの三方切替弁を組み合わせて構成され、これら三方切替弁は、図3に示すように、他車給水側切替弁180と、路面散水側切替弁182である。他車給水側切替弁180は、ポンプ58から吐出された水を導入するポンプ側入口184、他車給水配管172へ水を導出する他車側出口186及び路面散水切替弁182に水を導出する切替弁側出口188を有し、切替レバー190の操作により、前述の吸水側三方切替弁152での場合と同様に、水の流れ方向を他車側出口186と切替弁側出口188との間で切り替えるものである。具体的には、切替レバー190が図3中のC位置にあるとき、ポンプ側入口184と切替弁側出口188が接続され、これに対し、切替レバー190がD位置にあるとき、ポンプ側入口184と他車側出口186が接続される。
【0037】
また、路面散水側切替弁182は、切替弁側出口188と接続される切替弁側入口192、路面散水用配管174へ水を導出する散水側出口194及び水タンク注水配管176へ水を導出する水タンク注水側出口196を有し、切替レバー198の操作により、水の流れ方向を散水側出口194と水タンク注水側出口196との間で切り替えるものである。具体的には、切替レバー198が図3中のE位置にあるとき、切替弁側入口192と水タンク注水側出口196とが接続され、切替レバー198がF位置にあるとき、切替弁側入口192と散水側出口194とが接続される。なお、吐出側切替弁178の2つの切替レバー190,198は、ポンプ58の上方に位置付けられ、並列に配置されている。
【0038】
メイン吐出配管は170は、90度に屈曲したエルボ型配管であり、ポンプ58の吐出口66と他車給水側切替弁180のポンプ側入口184とを接続している。
他車給水配管172は、水タンク10の水を他車へ供給するための配管であり、90度に屈曲したエルボ型配管200と、このエルボ型配管200から延びる可撓性を有した長尺なホース202とからなり、エルボ型配管200が他車給水側切替弁180の他車側出口186に連結されている。ホース202は、他車への給水を行わない場合には、巻かれた状態で車体の収納スペース(図示せず)に収納されている。
【0039】
路面散水用配管174は、45度に屈曲したエルボ型配管204と、このエルボ型配管204から延びる可撓性を有したホース206とからなる。そして、エルボ型配管204が路面散水側切替弁182の散水側出口194に接続されており、ホース206は前述した路面用散水パイプ54に接続されている。
水タンク注水配管176は、90度に屈曲したエルボ型配管208と、このエルボ型配管208から延びる可撓性を有したホース210とからなる。エルボ型配管208は、路面散水側切替弁182の水タンク注水側出口196に連結されている。ホース210は、水タンク10の上方に位置付けられた注水口を有している。
【0040】
前述したカバー72の詳細は図4に示されている。カバー72は、天板214と、車体の前方を向いた前面板216と、車体の幅方向に互いに離間した2枚の側板218とを有している。ここで、天板214には2つの円形の貫通孔220が車体の幅方向に互いに離間して設けられている。即ち、これら貫通孔220は、他車給水側切替弁180及び路面散水側切替弁182のそれぞれに対応した位置に位置付けられている。2つの貫通孔220には、切替弁180,182における切替レバー190,198のレバー軸がそれぞれ挿通され、ここでの挿通により、斯かるレバー190,198は天板214上に露出して配設されている。
【0041】
また、車体の前後方向でみて天板214の後端部略中央に、円形の貫通孔222が形成されているとともに、この貫通孔222の左右両側にボルト挿通孔224,224がそれぞれ形成されている。それ故、前述したグリスカップ128は、天板214の裏面に宛がった取付ブラケット138に貫通孔222を通じてねじ込まれ、そして、左右のボルト挿通孔224を通じて取付ブラケット138のねじ孔に取付ボルト140がそれぞれねじ込まれることで、天板214に対し、取付ブラケット138を介して取り付けられ、これにより、グリスカップ128はそのカップ本体132及び蓋体134が天板214から露出した状態なる。
【0042】
一方、前面板216には円形の貫通孔226が形成され、この貫通孔226を通じて吸水側三方切替弁152における切替レバー164のレバー軸が外側に突出されている。それ故、切替レバー164もまた前面板216から露出した状態で配設されている。
なお、各側面板218の下端縁にはフランジ228がそれぞれ設けられており、これらフランジ228はボルト232を介して運転デッキ14に連結されている。即ち、カバー72は運転デッキ14に固定されている。
【0043】
また、車体の左側に位置する側面板218には必要に応じて、2つの矩形の開口234,236が対角位置に形成されており、これら開口234,236は、ポンプ58のメンテナンスを行う際に利用される。
以上のようなポンプ装置56の使用の態様について、図3を基に以下に説明する。
まず、車体内の水タンク10が空の場合、外部の水源から水を汲み上げ、水タンク10に供給する。即ち、この際には、外部側吸水配管156のホース168を延ばし、このホース168の先端を水源の水中に沈める。このとき、吸水側三方切替弁152の切替レバー164はB位置に切り替えられ、ポンプ58の吸水口62と外部側吸水配管156とが互いに接続されており、また、他車給水側切替弁180の切替レバー190はC位置に切り替えられているとともに、路面散水側切替弁182の切替レバー198はE位置に切り替えられ、ポンプ58の吐出口66と水タンク注水配管176とが互いに接続されている。この状態で、ポンプ58が駆動され、ポンプ58は、外部側吸水配管156を介して外部の水源の水を汲み上げ、水タンク注水配管176を介して水タンク10内に水を吐出する。
【0044】
水タンク10内に所定量の水が供給されたら、吸水側三方切替弁152の切替レバー164はAの位置に切替操作され、これにより、ポンプ58の吸水口62と水タンク側吸水配管154とが互いに接続される。この場合、水タンク10内の水がポンプ58により吸い込まれ、吸い込まれた水は水タンク注水配管176を介して水タンク10に戻され、循環する。ここで、上述のように、吸水側三方切替弁152の切替レバー164がA位置、他車給水側切替弁180の切替レバー190がC位置、路面散水側切替弁182の切替レバー198がE位置にあり、水がポンプ58と水タンク10との間にて循環している状態のときの各切替レバー164,190,198の切替位置を標準切替位置とする。
【0045】
次いで、路面の舗装工事を行い、路面に散水する場合、標準切替位置の状態から路面散水側切替弁182の切替レバー198はF位置に切替操作される。これにより、ポンプ58から吐出された水は、水タンク注水配管176から路面散水用配管174を通じて路面用散水パイプ54に供給され、この路面用散水パイプ54から路面に散布される。そして、路面散水を中止する場合は、路面散水側切替弁182の切替レバー198はE位置、即ち、標準切替位置に戻され、再度、水はポンプ58と水タンク10との間にて循環する。
【0046】
一方、タイヤローラよりも水タンクの容量が小さいマカダムローラ等の他車(他の転圧機械)に対して水タンク10内の水を供給する場合、他車給水配管172のホース202を延ばし、その先端を他車の水タンク吸水口に繋ぐ。そして、標準切替位置の状態から他車給水側切替弁180の切替レバー190がD位置に切替操作される。これにより、ポンプ58から吐出された水は、水タンク注水配管176から他車給水配管172を介して他車の水タンクに供給される。そして、他車への給水を中止する場合は、他車給水側切替弁180の切替レバー190はC位置の標準切替位置に戻され、水はポンプ58と水タンク10との間で循環する。
【0047】
一方、ポンプ装置56のメカニカルシール122には定期的にグリスを供給する必要がある。例えば、ポンプ装置56の稼働時間が累積で50時間に達する毎にグリスの供給がなされ、このグリスの供給はグリスカップ128の蓋体134を1/4回転だけ回すことで実施される。これにより、グリスカップ128から所定量のグリスが押し出され、延長チューブ126を介してメカニカルシール122に供給される。なお、ポンプ装置56の稼働時間が累積で800時間に達すると、グリスカップ128内へのグリスの補充が実施される。
【0048】
本発明に係るポンプ58は、図4に示すように、運転席18の隣に配設されているので、グリスカップ128を延長チューブ126を介してカバー72の表面に露出させた態様で配設することができる。それ故、作業者は、運転席18に座ったままの姿勢で、グリスカップ128の蓋体134を回す作業(グリスの供給)やグリスカップの蓋体134を開けてグリスを補充する作業を楽に行える。このため、メカニカルシール122にグリスの補給を確実に行え、ポンプ58の破損防止に寄与するとともに、斯かるグリス補給作業にともなう作業者への負担を軽減することができる。
【0049】
また、ポンプ58自体を運転席18の近傍に配置しているので、各切替弁とポンプ58の吸水口及び吐出口との間を繋ぐ配管を短くすることができる。具体的には、ポンプ58の吸水口62に連結されるメイン吸水配管150及びポンプ58の吐出口66に連結されるメイン吐出配管170を短いエルボ型配管とすることができ(図3参照)、ポンプ本体を車体下部に配置していた従来に比べて、切替弁を運転席近傍に配置するための延長ホースを省略でき、部品のコスト削減に寄与する。
【0050】
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
上記した実施例においては、ポンプの駆動手段として油圧モータ60を採用した態様について説明したが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、電動モータを採用しても構わない。
また、本実施例においては、路面散水装置に路面用散水パイプ54を用いた態様について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、路面散水装置として、例えば、車体後部に設けた路面散水用のノズルを採用する態様としても構わない。
【0051】
更に、本実施例においては、ポンプ装置をタイヤローラに採用した態様について説明したが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、マカダムローラ等の他の転圧機械に採用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】転圧機械としてのタイヤローラの構成を示す一部切欠側面図である。
【図2】実施形態に係るポンプ装置の概略構成を示す一部切欠側面図である。
【図3】実施形態に係るポンプ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係るポンプ装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
2 タイヤローラ(転圧機械)
4 車体
10 水タンク
12 外壁
18 運転席
54 路面用散水パイプ
56 ポンプ装置
58 ポンプ
60 油圧モータ
62 吸水口
64 吸水側配管
66 吐出口
68 吐出側配管
74 ポンプ軸
122 メカニカルシール
124 グリス注入口
126 延長チューブ
128 グリスカップ
132 カップ本体
134 蓋体
152 吸水側三方切替弁
164 切替レバー
180 他車給水側切替弁
182 路面散水側切替弁
190 切替レバー
198 切替レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧機械の水タンクから水使用装置への水の供給に使用されるポンプ装置において、
前記ポンプ装置は、
前記転圧機械の運転席の斜め後方に隣接して配置されたポンプを備え、
前記ポンプは、
ポンプ軸の外周が摺接する摺接部と、
前記摺接部に臨んで設けられたグリス注入口と、
前記グリス注入口から前記ポンプのハウジングを通過して延び、前記運転席の近傍に位置付けられた端部を有し、且つ、その内部がグリスで満たされている延長チューブと、
前記延長チューブの前記端部に配設され、その内部のグリスを前記延長チューブ内に押出し、前記延長チューブ内のグリスを前記グリス注入口から前記摺接部に供給可能とする手動操作型のグリスカップと
を備えたことを特徴とする転圧機械のポンプ装置。
【請求項2】
前記ポンプを覆うカバーを更に含み、
前記グリスカップが、前記カバーの表面から露出していることを特徴とする請求項1に記載の転圧機械のポンプ装置。
【請求項3】
前記ポンプの吸水口を前記水タンクに接続する一方、外部の水源に接続可能とする吸水側配管系と、
前記ポンプの吐出口を前記水タンクに接続する一方、前記転圧機械に搭載された水使用装置に接続可能とする吐出側配管系と、
前記吸水側配管系及び前記吐出側配管系にそれぞれ介挿され、前記ポンプの吸水口及び吐出口の接続先をそれぞれ切り替える複数の切替弁とを更に備え、
前記カバーは前記切替弁の周辺の配管系の部分をも覆っていることを特徴とする請求項2に記載の転圧機械のポンプ装置。
【請求項4】
前記切替弁は、その切替操作を行う操作レバーを含み、前記操作レバーが前記カバーの表面から露出していることを特徴とする請求項3に記載の転圧機械のポンプ装置。
【請求項5】
前記ポンプは、油圧モータにより駆動されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の転圧機械のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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