説明

転移のための新規な因子及びその使用

【課題】転移(metastasis)及び/又は遊走(migration)、グルコース代謝及びアミノ酸代謝に関与する新規な因子、医薬及び診断剤、その製造方法及びその使用方法を提供する。
【解決手段】PI3−キナーゼ経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれる生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸。前記核酸によってコードされる、特定のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいはデータバンクエントリーgi9506687又はNP_061931、好ましくはNP_061931.1の配列を有するポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中でも、転移(metastasis)及び/又は遊走(migration)、グルコース代謝及びアミノ酸代謝に関与する新規な因子、医薬及び診断剤の製造方法及びその使用に関する。
【0002】
現代の薬物開発は、もはや多少発見的なアプローチによるのではなくて、典型的には疾患又は状態(condition)の基礎をなす分子機構の解明、候補標的分子の同定及び該標的分子の評価を包含する。候補標的分子の同定がこのようなプロセスに必須であることは明らかである。ヒトゲノムの配列決定及びそれぞれの配列データの公表によって、原則、ヒトのコード核酸のすべてが入手可能である。しかしながら、このデータに対する深刻な限界は、典型的には、該配列の機能のアノテーションが与えられていないということである。更に、コード核酸配列についての単なる知識はin vivoでのポリペプチドの機能を予言するのには十分ではない。従って、なんらの正式に正当と認められたアノテーションなしにデータバンクエントリーを調べても、当業者はこの核酸データをいかに使うかに関するいかなる技術的教示も得ることはできない。in silico法は第1の可能なアノテーションを可能とするが、これはエラーしがちであり、そしてそれぞれの核酸配列によりコードされたポリペプチドの真の機能を必ずしも反映しない。該ポリペプチドを正しいin vivo及びin situ状況に置き、そしてその機能を解明することは、依然として驚くべき発見を生じる、過大な労力を要する仕事である。
【0003】
本明細書で標的又は標的分子とも呼ばれる有効と認められた標的分子が一旦入手可能になると、それを指向する薬物候補をスクリーニング又は開発し、次いで試験することができる。多くの場合に、このような薬物候補は、合成又は天然の化合物からなりうる化合物ライブラリーのメンバーである。組換えライブラリーの使用もよく知られている。このような化合物ライブラリーを、本明細書では候補化合物ライブラリーとも呼ぶ。過去において、このアプローチは成功することが証明されたが、依然としてそれは時間とお金がかかる。
【0004】
依然として、多数の腫瘍及び癌はヒトの健康にとって大きな脅威である。より少ない副作用を有する、より安全でより強力な薬物を創るために、標的分子に関して知ることが必要であり、この標的分子は、適当な化合物により働きかけられる(addressed)と、その活性又は存在について特異的に及び選択的に影響を受けうる。潜在的又は候補薬物でありうる化合物と標的との好ましくは選択的及び特異的相互作用の故に、例えば、癌、腫瘍形成及び転移の如き疾患(disease)又は疾患状態(disease condition)における標的の機能は影響を受けうるし、疾患を治療又は予防することができ、そして疾患状態を改善することができる。新たに同定されそして有効と認められた標的分子に基づく治療的アプローチとは別に、診断的アプローチも重要である。このような診断的アプローチは、処置されるべき状態又は疾患を、処置の前又は処置期間中又は処置後に監視して、意思決定者、例えば、医師が処置を進めるか又は処置を個々の患者の必要性にそれを適合させるかどうかを決定することを可能とするのに適当である。
【0005】
ゆえに、本発明の基礎をなす課題は、癌及び腫瘍にそれぞれ特異的な標的を提供することであった。本発明の基礎をなす更なる課題は、更に特定的には、腫瘍形成及び転移に関与する標的を与えることである。最後に、腫瘍形成及び転移に関係する診断マーカーを与えることは本発明の基礎をなす課題である。
【0006】
第1の観点では、本発明の基礎をなす課題は、生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスが、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路で調節されるプロセス(PI3-kinase pathway and/or a HIF1α pathway regulated process)、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス(amino acid and glucose deprivation processes)、糖尿病、創傷の治癒(wound healing)、ストレス応答、低酸素症、アポトーシス、転移、腫瘍形成(tumorigenesis)、細胞遊走(cell migration)、細胞外マトリックスにおける細胞運動性及び細胞外マトリックスにおける細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該因子が配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドあるいはデータバンクエントリーgi9506687又はNP_061931、好ましくは、NP_061931.1の配列を有するポリペプチドである、核酸により解決される。
【0007】
第2の観点では、本発明の基礎をなす問題は、生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスが、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、低酸素症、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該核酸が、配列番号2又は配列番号3の核酸配列あるいはデータバンクエントリーgi9506686又はNM_019058、好ましくはNM_019058.1の核酸配列を含む、核酸により解決される。
【0008】
第3の観点では、本発明の基礎をなす問題は、生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスは、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、低酸素症、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該核酸は、遺伝子コードの縮重がなければ、本発明の核酸、更に詳細には本発明の第2の観点に従う核酸にハイブリダイゼーションする、核酸により解決される。
【0009】
第4の観点では、本発明の基礎をなす問題は、生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスは、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、低酸素症、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該核酸は、ストリンジェントな条件下に、本発明の核酸、更に詳細には本発明の第2の観点に従う核酸にハイブリダイゼーションする、核酸により解決される。
【0010】
核酸に関する本発明のいかなる観点においても、核酸はDNA又はRNAとして存在することができる。核酸が一本鎖核酸、部分的に二本鎖の核酸又は二本鎖核酸として存在することができることも本発明の範囲内にある。好ましい態様では、本発明に従う核酸は一本鎖RNAとして存在する。このような一本鎖RNAは、好ましくは、発現システムにおいてmRNAとして使用され、該発現システムは、好ましくは、本明細書に記載のとおりの発現システムである。本発明に従う核酸の態様では、核酸は、一本鎖であり、そして遺伝子コードの縮重がなければ、本発明に従う因子をコードする核酸に本質的に相補的な核酸にハイブリダイゼーションする。更なる態様では、本発明に従う一本鎖核酸は、本発明の第2の観点に従う核酸に本質的に相補的な核酸にストリンジェントな条件下にハイブリダイゼーションする。
【0011】
第5の観点では、本発明の基礎をなす問題は、本発明に従う核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターにより解決される。このような目的のベクターは当業者に知られている。
【0012】
第6の観点では、本発明の基礎をなす問題は、本発明に従うベクターを含む細胞、好ましくは哺乳動物細胞により解決される。
【0013】
第7の観点では、本発明の基礎をなす問題は、生物学的プロセスに関与する因子であって、該プロセスは、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、低酸素症、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該因子が配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドあるいはデータバンクエントリーgi9506687又はNP_061931、好ましくはNP_061931.1の配列を有するポリペプチドである、因子により解決される。
【0014】
第8の観点では、本発明の基礎をなす問題は、生物学的プロセスに関与する因子であって、該プロセスは、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、低酸素症、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、該因子は本発明に従う核酸によりコードされている、因子により解決される。
【0015】
本発明に従う因子の態様では、因子は該プロセスのためのマーカーである。
【0016】
本発明に従う因子の更なる態様では、因子は形質転換された細胞のためのマーカー、好ましくは浸潤性細胞(invasive cells)のためのマーカーである。
【0017】
第9の観点では、本発明の基礎をなす問題は、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路の下流の標的又は下流のマーカーとしての、好ましくはPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路の下流薬物標的(drug target)としての本発明に従う因子又はそのフラグメント又は誘導体の使用により解決される。
【0018】
第10の観点では、本発明の基礎をなす問題は、疾患の治療及び/又は予防用医薬の製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための本発明に従う因子又はそのフラグメント又は誘導体の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌(metastatic cancers)、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用により解決される。
【0019】
第11の観点では、本発明の基礎をなす問題は、疾患の処理及び/又は予防のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための本発明に従う核酸又はそのフラグメント又は誘導体の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用により解決される。
【0020】
本発明の種々の観点に従う使用の態様では、該疾患は、該疾患に関与している細胞がPTEN活性を欠いており及び/又は増加した攻撃的な挙動を示し及び/又はPI3−キナーゼ経路及び/もしくはHIF1α経路の過剰活性化(hyperactivation)を示し及び/又は腫瘍細胞、好ましくは後期段階の腫瘍の細胞であることを特徴とする。
【0021】
好ましい態様では、細胞は哺乳動物細胞、好ましくは、ヒト細胞である。
【0022】
本発明の種々の観点に従う使用の特に好ましい態様では、疾患は後期段階の腫瘍(後期腫瘍:late stage tumor)である。
【0023】
本発明の種々の観点に従う使用の更なる好ましい態様では、疾患は、グルコース代謝に関連した、PI3−キナーゼ経路のブランチ(branch)及び/又はHIF1α経路のブランチに関連した疾患であり、好ましくは、疾患は糖尿病である。
【0024】
本発明の種々の観点に従う使用の他の好ましい態様では、疾患は、腫瘍増殖及び/又は転移に関連した、PI3−キナーゼ経路のブランチ及び/又はHIF1α経路のブランチに関連した疾患である。
【0025】
第12の観点では、本発明の基礎をなす問題は、疾患の処理及び/又は予防のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための作用物質をスクリーニングする方法であって、該疾患は、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれ、該方法は、
a)候補化合物を提供し、
b)本発明に従う因子のための発現システム及び/又は本発明に従う因子の活性を検出するシステム、好ましくは活性システム(activity system)を提供し、
c)候補化合物を本発明に従う因子のための発現システム及び/又は本発明に従う因子の活性を検出するシステム、好ましくは活性システムと接触させ、
d)本発明に従う因子の発現及び/又は活性が候補化合物の影響下で変化するかどうかを決定する段階を含む、
方法により解決される。
【0026】
本発明に従う方法の好ましい態様では、候補化合物は化合物のライブラリーに含有される。
【0027】
本発明に従う方法の他の好ましい態様では、候補化合物は、ペプチド、タンパク質、抗体、アンチカリン(anticalines)、機能的核酸、天然の化合物及び小分子を含むクラスの化合物の群より選ばれる。
【0028】
本発明に従う方法の特に好ましい態様では、機能的核酸は、アプタマー、アプタザイム(aptazymes)、リボザイム、スピーゲルマー(spiegelmers)、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNAを含む群より選ばれる。
【0029】
第13の観点では、本発明の基礎をなす問題は、疾患の治療及び/又は予防用医薬の開発及び/又はデザイン及び/又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための標的分子としての、本発明に従う因子又はその一部又は誘導体及び/又は本発明に従う核酸又はその一部又は誘導体の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用により解決される。
【0030】
本発明の第13の観点に従う使用の態様では、医薬及び/又は診断剤は、抗体、ペプチド、アンチカリン、小分子、アンチセンス分子、アプタマー、スピーゲルマー及びRNAi分子を含む群より選ばれる作用物質を含む。
【0031】
本発明の第13の観点に従う使用の更なる態様では、作用物質は本発明に従う因子又はその一部又は誘導体と相互作用する。
【0032】
本発明の第13の観点に従う使用の別の態様では、作用物質は、本発明に従う核酸又はその一部又は誘導体、特に、本発明に従う因子のためのmRNA、ゲノム核酸又はcDNAと相互作用する。
【0033】
第14の観点では、本発明の基礎をなす問題は、疾患の治療及び/又は予防用医薬の開発又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための、本発明に従う因子又はその一部又は誘導体と相互作用するポリペプチドの使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用により解決される。
【0034】
本発明の第14の観点に従う使用の態様では、ポリペプチドは、本発明に従う因子又はその一部又は誘導体に対する抗体、及び前記請求項のいずれかに記載の因子又はその一部又は誘導体に結合するポリペプチドを含む群より選ばれる。
【0035】
第15の観点では、本発明の基礎をなす問題は、疾患の治療及び/又は予防用医薬の開発又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための、本発明に従う因子又はその一部又は誘導体と相互作用する核酸の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用により解決される。
【0036】
本発明の第15の観点に従う使用の態様では、核酸は、アプタマー及びスピーゲルマーを含む群より選ばれる。
【0037】
第16の観点では、本発明の基礎をなす問題は、疾患の治療及び/又は予防用医薬の開発又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための、本発明に従う因子又はその一部又は誘導体をコードする核酸と相互作用する核酸の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用により解決される。
【0038】
本発明の第16の観点に従う使用の態様では、相互作用する核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム及び/又はsiRNAである。
【0039】
本発明の第16の観点に従う使用の更なる態様では、前記請求項のいずれかに記載の因子又はその一部又は誘導体をコードする核酸はcDNA、mRNA又はhnRNAである。
【0040】
第17の観点では、本発明の基礎をなす問題は、好ましくは疾患の予防及び/又は治療のための、本発明に従う因子又はその一部又は誘導体、本発明に従う因子もしくその一部もしくは誘導体と相互作用する小分子又は本発明に従う因子もしくその一部もしくは誘導体をコードする核酸と相互作用する小分子、本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体に特異的な抗体、本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用するポリペプチド、本発明に従う核酸、本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体をコードする核酸、本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用する核酸、及び本発明に従う因子もしくはその一部又もしく誘導体をコードする核酸と相互作用する核酸を含む群より選ばれる少なくとも1種の作用物質並びに少なくとも1種の薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物であって、該疾患が、好ましくは、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、医薬組成物により解決される。
【0041】
第18の観点では、本発明の基礎をなす問題は、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒、いかなる低酸素症関連疾患及びPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる疾患又は状態を特徴付けるためのキットであって、本発明に従う因子又はその一部又は誘導体、本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体に特異的な抗体、本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用するポリペプチド、本発明に従う核酸と相互作用するポリペプチド及び/又は本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体をコードする核酸と相互作用するポリペプチド、本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用する核酸、及び本発明に従う核酸と相互作用する核酸及び/又は本発明に従う因子もしくはその一部もしくは誘導体をコードする核酸と相互作用する核酸を含む群より選ばれる少なくとも1種の作用物質並びに場合により少なくとも1種の他の化合物を含むキットにより解決される。
【0042】
本発明のいかなる観点においても、腫瘍は好ましくは後期段階腫瘍である。
【0043】
本発明者は、驚くべきことに、多数の生物学的プロセス、例えば、癌細胞の代謝シフト(Warburg効果)、グルコース代謝、アミノ酸代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、創傷の治癒、転移、腫瘍形成、低酸素症、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖に関与する新規なポリペプチド因子を見出した。これらのプロセスはPI3−キナーゼ経路の制御下にある。この新規な因子は、本明細書ではPI3−キナーゼ経路で調節される因子1(PI3-kinase pathway regulated factor 1)又はPRF1と呼ばれる。
【0044】
PRF1のゲノム配列は染色体10に局在化されており、更に特定的には、遺伝子座は10pter−q26.12である。この遺伝子は最近規定されたとおり総計1760個のヌクレオチドを含む。そのcDNAを表すそれぞれのデータバンクエントリーは、NM_019058、更に好ましくは、NM_019058.1及びgi9506686として表される。PRF1をコードするcDNAは、本明細書では配列番号2として表されそしてそのコード配列(coding sequence)は配列番号3として表される。PRF1をコードする核酸は、いくらかの変異(variations)、例えば、CがGにより置き換えられている位置312、AがTにより置き換えられている位置991、CがTにより置き換えられている位置1247、CがTにより置き換えられている相補的位置1297、CがTにより置き換えられている位置1958、AがGにより置き換えられている相補的位置1666、及びAがCにより置き換えられている位置1743における変異を有することができることは本発明の範囲内にある。前記した位置のすべては、本明細書では配列番号2としても表されるcDNAのことを指す。オープンリーディングフレームは、位置198で始まりそして位置896で終わる。
【0045】
PRF1のアミノ酸配列は本明細書では配列番号1としても表される。アミノ酸配列を表すそれぞれのデータバンクエントリーは、NP_061931、更に特定的には、NP_061931.1及びgi9506687である。
【0046】
本発明に従うポリペプチドは、例えば、RがGにより置き換えられているアミノ酸位置39における如き変異を含むこともできる。
【0047】
本発明に従うポリペプチドは、最近文献ではREDD1として表されそしてEllisen, L.W., Molecular Cell, Vol.10, 995-1005, November, 2002によりそのまま記載されている。
【0048】
しかしながら、該配列のいずれかにでも含有された何らかの配列決定エラーがありうることは理解されるべきであり、基本的配列は更に完成させることができる上記した配列であり、そして上記の受託番号から、やはり本発明の範囲により含まれるべき、それぞれの修正された配列を採用することができることは、当業者により知られるであろう。1以上の上記した変異が含まれるか又は実現される態様も本発明の範囲に含まれるべきである。
【0049】
PRF1の誘導体もしくはトランケーションされたバージョン又はそれをコードする核酸は、所望の効果を実現することができる限りは、本発明に従って使用することができることは本発明の範囲内にある。所望の効果は、中でも、特定の化合物、例えば、機能的核酸、抗体、ポリペプチド及び小分子を依然としてスクリーニングするか又はデザインすることができるという効果であることができる。そのかぎりにおいて、PRF1という用語はこの種の誘導体又はトランケーションされたバージョンも含む。PRF1の好ましい誘導体は、中でも、そのリン酸化されたバージョン又はグリコシル化されたバージョンである。かくして、誘導体化及びトランケーションの程度はルーチンな分析により当業者によって決定されうる。それが核酸配列となると、これらの核酸配列は、前記した受託番号により特定された核酸にハイブリダイゼーションしているPRF1をコードする核酸配列及び前記したアミノ酸配列から誘導されうるすべての核酸配列という用語によっても包含される。このようなハイブリダイゼーション及びその実験的特性は当業者には知られている。このようなハイブリダイゼーションの特性は、例えば、Ausubel et al., (1996) Current Protocols in Molecular Biology.J.Wiley and Sons, NewYorkからも分かりうる。本明細書で使用されるストリンジェントなハイブリダイゼーションは、例えば、0.1×SSC;0.1%SDS、65℃、15分を意味する。更に、PRF1をコードする核酸という用語は、前記した核酸配列のいずれかに相同的な核酸配列も含み、その際相同性の程度は好ましくは75、80、85,90又は95%であるが、70%と99%との間のいかなる百分率も含む。
【0050】
PRF1をコードする遺伝子は、文献に、それになんらの機能もアノテーションしないで記載されている。この遺伝子は低酸素症誘導性でありそして低酸素症誘導性因子1に応答性であることが述べられている(Shoshani T., et al., Molecular and cellular biology, April 2002, p.2283-2293)。
【0051】
該論文において、PRF1は低酸素症により調節されるといわれている。しかしながら、PRF1が低酸素症応答に関係するそして低酸素症応答に関与する生存因子(survival factor)であることはそこには開示されていない。本発明者は、驚くべきことに、PRF1は、PI3−キナーゼ及び/又はHIF1α依存性方式で調節されることを見出した。PRF1のノックダウンは、本明細書の実施例に記載のとおりマトリゲルアッセイ(matrigel assay)において細胞の増殖を抑制するのに適当である。それに関連して、PRF1のノックダウンはタンパク質レベルでも示すことができ、そして機能の損失はLY294002の効果と同様に抑制性表現型(inhibitory phenotype)を示し、これは、PRF1がHIF1α及びAktの下流の特異的標的、更に詳細には、癌標的であるという本発明者の発見を確証するということは注目に値する。これは、HIFが腫瘍治療において高度に適切である(highly relevant)ことを確証する多数の入手可能なテータがあるので、更に適切である。また、PRF1のノックダウンは、腫瘍モデルとしてPC−3細胞を使用して例示された腫瘍の抑制をもたらす。これから、PRF1の種々の用途及び更に詳細にはPRF1を抑制する化合物の種々の用途が誘導されうる。従って、PRF1は、そのようなものとして細胞系で過剰発現させて、細胞が低酸素条件を生き残ることを可能とすることができる。このような条件は、例えば、卒中(stroke)、心不全において実現され、その結果PRF1の過剰発現又は活性化はこの種の疾患の処理又は予防のための適当な手段でありうる。PRF1の増加した発現又は活性化に関与するいかなる化合物又は機構もまたかくしてこの種の疾患の処理及び/又は予防のための適当な手段でありうることが当業者により知られるであろう。
【0052】
更に、PRF1の発現又は本明細書で同義語的に使用されている活性化のいかなる減少も、それぞれの細胞系を低酸素条件(hypoxic condituons)に相当する条件に置くのに適当であるということは本発明の範囲内にある。これらの条件下に、更なる細胞プロセス、例えば、アポトーシスが始まることができる。PRF1を抑制することにより、低酸素条件を実現することができ、これは、細胞が十分な酸素を与えられるべきではないことを意図する場合に、これらの疾患を処理するのに適当である。細胞が低酸素症を経験する状態又は細胞が低酸素症にさらされる状態又は細胞が低酸素症の下で経験する状態に細胞を巻き込ませることにより処置することができる既知の疾患がある。1つのこのような疾患は本明細書で記載された腫瘍及び癌である。その限りにおいて、転写レベル及び翻訳レベルの両方でPRF1の発現及び/又は活性を減少させるのに適当ないかなる化合物も、特に本明細書に記載の化合物は、この種の疾患の予防及び/又は処理のために適当でありうる。これらの疾患は本明細書では低酸素症関連疾患とも呼ばれる。これらの化合物又は手段は、中でも、腫瘍血管形成(tumor angiogenesis)の抑制に基く腫瘍の処理において有効でありうる。
【0053】
本発明者は、驚くべきことに、PRF1は、癌及び腫瘍及び他の生物学的プロセス、例えば、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖、及びそれに基く又はこれらのプロセスのいずれかが関与するいかなる疾患及び疾患状態にも関連する価値ある標的であることを発見した。更に詳細には、本発明者は、PRF1はPI3−キナーゼ/PTEN経路及び/又はHIF1α経路の下流の標的(downsteam target)であることを発見した。更に驚くべきことに、本発明者は、本明細書の図1に示されたとおりPRF1はPI3−キナーゼ経路のブランチのいくつかに連結されることを発見した。更に、本発明者は、驚くべきことに、図7にも示されたとおりPRF1はAkt経路に平行するHIF1α経路により高度に調節されていることを発見した。PRF1と関連して、グルコース輸送、増殖翻訳(growth translation)及び転移及び遊走に関係したブランチは最も関係がある(relevant)。これらのプロセスにおけるPRF1の重要性は、抑制機能、更に詳細にはPTEN癌抑制機能が失われる場合に示される。実施例に示されるとおり、PRF1は、PI3−キナーゼ経路に対する抑制剤であるPTENが活性ではない条件下にアップレギュレーションされるであろう。
【0054】
PRF1は、その発現が多数の後期段階腫瘍及び疾患状態に特徴的なPTENマイナス細胞において増加する価値ある診断マーカーである(Cantley, L.C.and Neel, B.C.(1999).Proc.Natl.Acad、Sci.USA 96, 4240-4245; Ali, I.U.(2000).I.Natl.Cancer Inst.92, 861-863)。PTENの喪失はまた、それぞれの腫瘍細胞の攻撃的及び浸潤性挙動の増加と相関する。従って、PRF1はそれに関する価値ある診断剤である。他方、これらの結果は、PRF1がPI3−キナーゼ/PTEN経路及び/又はHIF1α経路の価値ある下流薬物標的であることも示し、これは従って本明細書にも開示されるとおり種々の治療的アプローチ及びそれぞれの作用物質により働きかけられることができる。これは、PRF1の抑制剤が細胞の転移及び遊走挙動を制御するのに適当な手段であることを意味し、そしてこれは、腫瘍及び癌、更に詳細には、転移性でありそしてその細胞が「本明細書に記載された疾患」又は「本明細書に記載された疾患状態」として本明細書で一般的に表される転移性及び/又は遊走性挙動を示すこれらの腫瘍及び癌の処置のための適当な手段であることを意味する。本明細書に記載された疾患又は本明細書に記載された疾患状態は腫瘍形成及び転移も含むが、それらに限定はされない。更なる疾患及び疾患状態は、それぞれ、一般にPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路及び更に詳細には図1及び図12に示されたこれらの種々のプロセスが関与する如何なる疾患又は病理的状態にも関連した疾患及び疾患状態である。PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路に関連したこれらの疾患の1つは、中でも、糖尿病である。これは、このような疾患又は疾患状態に関与した細胞がPTENネガティブである(これは癌抑制剤PTENが活性ではないか又は減少したレベルの活性を有することを意味する)本明細書に記載のこれらの疾患及び本明細書に記載のこれらの疾患状態に当てはまり、又はPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与するこれらに当てはまる。転移性腫瘍のほかに、糖尿病は、それぞれ、この種の疾患及び疾患状態に属する。ゆえに、細胞、特に本明細書に記載された疾患又は疾患状態に関与した細胞及びPTENネガティブである細胞は、関与したそれぞれの細胞におけるPRF1の活性を減少させるか又は排除するような作用様式の薬物による処理に感受性である。従って、その腫瘍がPTENネガティブである患者又はPTENネガティブである細胞を有する患者は、特にもしこれらの細胞が本明細書で記載された疾患又は本明細書に記載された疾患状態にあるならば、該薬物を使用して有利に処置することができる。同じことがそれぞれ診断剤又は医薬にも当てはまる。
【0055】
該薬物を使用して有利に処置することができる更なる群の患者は、PTEN機能の喪失の高い発生率を有する癌に罹っている患者、特に後期腫瘍における患者である。(Cantley, L.C.and Neel, B.G.(1999)。癌抑制剤への新規な見識:PTENはホスホイノシチド3−キナーゼ/Akt経路及び/又はHIF1α経路を抑制することにより腫瘍形成を抑制する。Proc.Natl.Acad、Sci.USA96, 4240-4245; Ali, I.U.(2000)。子宮内膜に対するゲートキーパー:PTEN癌抑制剤遺伝子。J Natl Cancer Inst 92, 961-863)。PTENの損失はそれぞれの腫瘍細胞の攻撃的及び浸潤性挙動の増加と相関している。この故に、好ましい態様では、それぞれPRF1に向けられたこれらの診断剤及び治療剤は、前記した用件が満たされるとの条件下に、即ち、PTENが攻撃的及び浸潤性挙動の増加と相関しているとの条件下に、いかなる腫瘍にも使用することができる。
【0056】
本明細書に与えられた開示、即ち、PRF1がPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路の下流標的であること、しかも増殖制御、転移及び遊走に対してもそうであることに照らして、当業者はそれぞれ、本明細書に記載された疾患及び本明細書に記載された疾患状態に対する治療剤及び診断剤の両方を開発することができる。一旦標的が正当であると立証されると、薬物をいかにしてスクリーニングすることができるかに関する代表的な記載は、例えば、Prendergast Nature Biotechnology, October 2001, Vol.19, p.919-921又はTorrance C.J.et al., Nature Biotechnology, October 2001, Vol.19, p.940-945により記載されている。
【0057】
上記に概説した機構にPRF1が関与するので、それ又はそれをコードする核酸は、細胞又はこのような種類の細胞をその身体に有する患者の状態を診断するためのマーカーとして使用することもでき、細胞が転移、腫瘍形成又は本明細書に記載されたすべての他のプロセスを受けるかどうか及び細胞が腫瘍細胞、特に速く増殖している癌細胞について指示される酸素、グルコース及び/又はグルコース枯渇に苦しんでいるかどうかを診断するためのマーカーとして使用することもできる。この種のアプローチが働きそしてその目的に適用可能である例としては、例えば、ICAM−1がある。ICAM−1は転移が起こりそうな胃癌の予後に使用され(Maruo Y, Gochi A, Kaihara A, Shimamura H, Yamada T, Tanaka N, Orita K.Int J Cancer.2002 Aug1; 100(4): 486-490)、その場合にs−ICAM−1レベルは肝臓転移を有する患者において高められることが見出された。他の例では、オステオポンチンが乳癌のための予後マーカーとして使用される(Rudland PS, Platt-Higgins A, E1-Tanani M, de Silva Rudland S, Barraclough R, Winstanley JH, Howitt R, West CR, Cancer Res.2002 Jun 15; 62(12): 3417-3427。その限りにおいて、PRF1の存在又は存在のレベル(タンパク質又はmRNA)又は活性のレベルをマーカーとして使用することができ、そしてそれ故PRF1と多かれ少なかれ特異的に相互作用する如何なる化合物も適切な診断剤及び/又は適切な分析ツール又は手段である。
【0058】
いずれにせよPRF1と特異的に及び/又は選択的に相互作用する薬物及び診断剤のための方法及びデザインの原理は下記に開示される。
【0059】
これらの発見に照らして、PRF1は、典型的にPI3−キナーゼ経路に関係するいくつかの面のみの、例えば、転移及び遊走並びに低酸素症応答、細胞増殖、創傷治癒、翻訳制御及びグルコース輸送の選択的調節(selective modulation)、並びに、典型的にPI3−キナーゼ経路に関係するプロセス、更に詳細には、転移及び遊走並びに増殖翻訳及びグルコース輸送の選択的及び特異的診断アプローチ、即ち、検出、を可能とする適当な下流薬物標的であることが証明される。
【0060】
PI3−キナーゼ経路は、増殖因子誘導時のPI3−キナーゼ経路活性及び平行なシグナリング経路により特徴付けられる。細胞の増殖因子刺激は細胞膜におけるそれらのコグネイト受容体を活性化させ、これは細胞内シグナリング分子、例えばPI3−キナーゼと会合しそしてそれを活性化する。PI3−キナーゼ(調節p85及び触媒p110サブユニットからなる)の活性化は、リン酸化によりAktを活性化させ及び/又はHIF1αを活性化させ、それにより更に下流の細胞応答、例えば、増殖、生存又は遊走を支持する。かくして、PTENはホスファチジルイノシトール(PI)3−キナーゼ経路に関与する癌抑制剤であり、そしてそれは細胞増殖及び形質転換の調節におけるその役割について徹底的に研究されている(概観としては、Stein, R.C. and Waterfield, M.D.(2000).PI3-kinase inhibition: a target for drug development? Mol Med Today6, 347-357; Vazquez, F.and Sellers, W.R.(2000) and/or the HIF1α pathway. The PTEN tumor suppressor protein: an antagonist of Phosphoinositide 3-kinase signaling.Biochim Biophys Acta 1470, M21-35; Roymans, D.and Slegers, H.(2001). Phosphatidylinositol 3-kinases in tumor progression.Eur J Biochem268, 487-498参照)。癌抑制剤PTENはPI3−キナーゼで触媒される反応を逆にすることによりPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路のネガティブレギュレーターとして機能しそしてそれにより該経路の活性化が一過性の且つ制御された方式で起こることを確実にする。PI3−キナーゼ及び/又はHIF1α経路シグナリングの慢性的過剰活性化はPTENの機能的不活性化により引き起こされる。PI3−キナーゼ活性及び/又はHIF1α活性は低分子抑制剤LY294002の添加によりブロックすることができる。平行な経路で作用するシグナリングキナーゼMEKの活性及び下流の応答は、例えば、低分子抑制剤PD98059により抑制されうる。
【0061】
PTEN機能の喪失によるPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路の活性化、特に慢性的活性化は、腫瘍形成及び転移に対する主要な貢献であり、これはこの癌抑制剤が制御された細胞増殖に対する重要なチェックポイントを表すことを示す。PTENノックアウト細胞は、PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が活性化された形態のPI3−キナーゼを介して誘導されている、特に慢性的に誘導されている細胞と同様な特徴を示す(Di Cristofano, A., Pesce, B., Cordon-Cardo, C and Pandolf, P.P. (1998)。PTENは胚発生及び腫瘍
抑制のために必須である。Nat Genet 19, 348-355.Klippel, A., Escobedo, M.A., Wachowicz, M.S., Apell, G., Brown, T.W., Giedlin, M.A., Kavanaugh, W.M.and Williams, L.T.(1998)。ホスファチジルイノシトール3−キナーゼの活性化は細胞サイクルエントリーのために十分でありそして癌性形質転換(oncogenic transformation)の細胞変化特徴を促進する。Mol Cell Biol 18, 5699-5711.Kobayashi, M., Nagata, S., Iwasaki, T., Yanagihara, K., Saitoh, I., Karouji, Y., Ihara, S.and fukui, Y.(1999)。Dedifferentiation of adenocarcinomas by activation of phosphatidylinositol 3-kinase。Proc.Natl.Acad、Sci. USA96, 4874-4879)。
【0062】
本明細書に記載された種々の疾患は、PI3−キナーゼ経路の過剰活性化及び/又はHIF1α経路の活性化、好ましくは過剰活性化により特徴付けられることもできる。この活性化又は過剰活性化はPTEN活性を欠く細胞の状況に似ている。本明細書で使用されるPI3−キナーゼ経路の過剰活性化及び/又はHIF1α経路の活性化は、特に該経路の普通に観察される活性、即ち、細胞が疾患又は疾患状態の一部でないか又は疾患又は疾患状態に関与しない特定の種類の細胞のPI3−キナーゼ経路の活性、に比べてPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路の増加した活性を意味する。
【0063】
PTENは、PTEN関連経路とも呼ばれるいくつかの経路、例えば、PI3K/PTEN経路、Akt経路、EGF関連オートクリーンループ(EGF-related autocrine loop)、mTOR経路に関与しそして本発明者により実証されたとおり、HIF1α経路にも関与する。PI3−キナーゼ経路は、実際に、直接又は間接にPI3−キナーゼが関与する如何なる経路でもある。PI3−キナーゼはこのような経路における抑制剤又は活性化剤として作用することができ、又はそれはそのようなものとして経路の他の要素により調節されうる。
【0064】
PI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路が関与する疾患及び状態を記載しているたくさんの先行技術がある。かくして、これらの状態及び疾患のいずれも、本発明の方法及び薬物及び診断剤により働きかけられることができ、そのデザイン、スクリーニング又は製造は本明細書に教示されている。限定ではなくて説明のために、それは下記のものを指す:子宮内膜癌、結腸直腸癌(colorectal carcinomas)、グリオーマ、子宮内膜癌、腺癌、子宮内膜過形成、コーデン症候群(Cowden' syndrome)、遺伝性非ポリープ性結腸直腸癌(hereditary non-polyposis colorectal carcinoma) 、リフローメニ症候群(Li-Fraumen's syndrome)、乳−卵巣癌、前立腺癌(Ali, I.U., Journal of the National Cancer Institute, Vol.92, no.11, June 07, 2000, page861-863) , バナヤン−ゾナナ症候群(Bannayan-Zonana syndrome)、LDD(ラーミット−ダクロス症候群:Lhermitte-Duklos' syndrome) (Macleod, K., supra)、カウ病(Cow disease)(CD)及びバナヤン−ルバルカバ−リリィ症候群(BRR)を含む過誤腫大頭症疾患(hamartoma-macrocephaly disease)、粘膜病変(例えば、毛根鞘種)、大頭症、精神遅滞、胃腸過誤腫、脂肪腫、甲状腺腺腫、胸部繊維嚢疾患(fibrocysticdisease of the breast)、小脳形成異常神経節細胞腫(cerebellar dysplastic gangliocytoma)及び胸部及び甲状腺悪性疾患(Vazquez, F., Sellers, W.R.supra)。
【0065】
この点から、PRF1は、PRF1の上流の標的を指向する他の薬物より少ない副作用を有する薬物により働きかけられるPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路の価値ある下流薬物標的である。その限りにおいて、本発明は、例えば、LY294002の如き当該技術分野で知られた化合物よりも選択性の高い薬学的に活性な化合物のデザイン、スクリーニング、開発及び製造に適当な薬物標的を与える。エフェクター分子、即ち、PRF1及び該経路に関与するすべての更なる下流の分子のこの特定のフラクションに対する制御を有することにより、非常に限られた数のその平行なブランチ又はシグナリングカスケードにおける更なる上流の標的のみが望まれない効果を引起すようである。ゆえに、細胞サイクル、DNA修復、アポトーシス、グルコース輸送、翻訳に関係するPI3−キナーゼ経路及び/又はHIF1α経路の他の活性は影響を受けないであろう。
【0066】
上記した疾患及び調節ネットワークに関連する価値ある標的分子であることのほかに、本明細書に記載されたPRF1は、核酸レベル及びタンパク質レベルで、組合わせ治療及びこのような組合わせ治療に使用される医薬の開発及び適用に関連する特に価値ある標的でもある。換言すれば、PRF1、即ち、それをコードする核酸及びタンパク質は、細胞、組織、器官又は患者が処理、好ましくは、核酸レベル又はタンパク質レベルでPRF1に働きかけるそれぞれ化合物及び医薬とは異なる化合物又は医薬を使用する処理に感受性であるように、細胞、組織、器官又は患者をセンシタイズするのに使用することができる化合物のスクリーニング、発生、製造又はデザインのために使用することができる。該化合物を、それぞれ本明細書で記載された状態及び疾患のいずれかの処理用の医薬の製造のために、単独で又はPRF1に働きかけるそれぞれ化合物及び医薬と一緒に使用することができることは、本発明の範囲内にある。
【0067】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、PRF1は、PI3−キナーゼ経路のHIF1α経路ブランチ及びAktブランチの両方により調節されと思われる。HIF1αは低酸素条件下にアップレギュレーションされそしてAktはストレス条件下にアップレギュレーションされて細胞のアポトーシス反応に反対の作用をする生存応答をトリガーするので、本明細書に記載されたPRF1に働きかけるそして医薬又はPRF1の相互作用パートナーとしても使用する子で化合物は、核酸レベル及びタンパク質レベルの両方において、他の化合物が特に有効である状態に細胞を移すことができる。ゆえに、腫瘍疾患を含むがそれに限定はされない本明細書に記載の疾患のいずれかの処理のために使用することができる化合物のスクリーニングのため及び該疾患の処理の両方のために、該PRF1に働きかける化合物(PRF1 addressing compounds)を使用することは本発明の範囲内にある。ゆえに、スクリーニングは、例えば、低酸素条件下に行うことができ及び/又は細胞にストレスを加えて、例えば、細胞分裂抑制剤、例えば、好ましくは腫瘍及び高熱処置(hyperthermia)に関連して使用されるシスプラチン、放射を加えて行うことができる。好ましくは、かくして、本明細書に開示された疾患のいずれかの処理及び/又は処理用の医薬の開発のための、それぞれ、化合物及び医薬のスクリーニング、発生、製造及び/又はデザインプロセスに関与する2つの標的があり、その際該標的の1つは好ましくはPRF1とは異なる。
【0068】
転写因子、例えばHIF1αに対するスクリーニングは都合よく行うことができることは、Welsh, S.J.et al., Molecular Cancer Therapeutics Vol.2, 235-243, March 2003から理解することができる。
【0069】
また、インスリンシグナリングは誘導されず、これはLY294002の使用に関連して観察される糖尿病応答又は他の副作用が実際に回避されることを意味する。LY294002(2−(4−モルホリニル)8−フェニルクロモン)はPI−3Kの抑制剤としてLilly Research Laboratories (Indianapolis)により開発されたいくつかのクロモン誘導体低分子抑制剤の一つである(Vlahos et al.1994, JBC 269.5241-5248)。それは、触媒中心に結合するADPと競合することによってPI−3K分子のそれらの触媒サブユニット、p110及び機能を標的とする。しかしながら、LY294002は、異なる細胞機能を有することが示唆されているp110の種々のアイソフォーム(α、β、γ、δ)間の区別をすることができない。
【0070】
PRF1はまたラパマイシンにより働きかけられるmTORの更に下流にある。Raft又はFRAPとしても知られているmTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的)はPI3−キナーゼの下流で作用して、細胞サイクルへのpp70S6キナーゼ依存性エントリーの如きプロセスを調節する。mTORは増殖因子及び栄養利用性のためのセンサとして作用してpp70S6キナーゼ及び開始因子4Eを活性化することにより翻訳を制御する。mTOR機能はT細胞及びある種の腫瘍細胞の増殖をブロックするバクテリアマクロライドラパマイシンにより抑制される(Kuruvilla and Schreiber 1999, Chemistry & Biology6, R129-R136)。
【0071】
ラパマイシン及びその誘導体が臨床で最近使用されている適当な薬物であるということは、薬物標的がより有用であればあるほどそしてより少ない副作用を有すれば有するほど、それは、例えばYu et alにより証明されたとおり特定の分子機構に対してより特異的であることを証明する(Yu, K.et al(2001) Endrocrine-RelatCanc 8, 249)。ラパマイシンはヒトにおける免疫抑制のために使用されるので、PRF1を妨害する薬物はこの適応症(indication)に対してより特異的ですらありうる。
【0072】
潜在力のある薬物標的としてのその使用に関して上述したPRF1の特異性の故に、それは診断マーカーとして使用することもでき、そしてそれぞれ好ましくはPRF1の選択的及び特異的検出を可能とするデザインされた作用物質は診断剤として使用されよう。やはり、マーカーが或る生物学的現象に対してより近くそしてより特異的であればあるほど、又はシグナリング経路に関して、最終的に観察される効果により近ければ近いほど、最終プロセス、この場合にはそれぞれ転移及び腫瘍形成である、が起こりそうであるかどうかに関するすべての記述はより高い信頼性がある。ゆえに、それぞれPRF1に基づく及びPRF1を検出する診断剤は、それぞれ腫瘍形成及び転移又は本明細書に記載の他の疾患及び本明細書に記載の疾患状態のいずれかが起こる可能性のより信頼性の高い評価を可能とする診断剤である。これらの予言は特に本明細書に記載のこれらの疾患及び本明細書に記載の疾患状態に関する。本明細書に開示されたPRF1に基づく治療剤のデザイン、スクリーニング及び/又は製造において、PRF1は、薬物又は薬物候補として又は診断剤として使用されうる化合物が向けられる化合物として使用することができる。これらの化合物は、抗体、ペプチド、アンチカリン、アプタマー、スピーゲルマー、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNA並びに小分子(small molecules)の如き種々のクラスの化合物に属する。該化合物は、PRF1自体を物理的又は化学的実在として使用すること又はPRF1に関する情報を使用することによりデザインされ、選択され、スクリーニングされ、発生され及び/又は製造される。該クラスの化合物のデザイン、選択、スクリーニング、発生及び/又は製造において、PRF1は、それぞれの化合物を必要としている患者へのその最終的な適用におけるよりはむしろプロセスにおいて使用される標的とも言われるであろう。種々のクラスの化合物を与えるプロセスにおいて、PRF1又はPRF1をコードする核酸を使用することができ、これらは上記した変異のいずれかを有するかもしくは含むいかなる態様も含む。本明細書で使用されたPRF1という用語は、医薬又は診断剤としてそれら/それを適用するとそのままで活性なそれぞれのクラス(1種又は複数)の化合物のうちの該クラスの化合物のデザイン、選択、スクリーニング、発生及び/又は製造を可能とするPRF1のいかなるフラグメント又は誘導体も含む。本明細書で使用したPRF1をコードする核酸という用語は、上記したPRF1をコードする核酸又はその一部を含有するいかなる核酸も含む。PRF1をコードする核酸の一部は、医薬又は診断剤としてそれら/それが適用されるとそのままで活性な該クラスの化合物のデザイン、選択、スクリーニング、発生及び/又は製造のために適当であるかぎりは、そのようなものとみなされる。PRF1をコードする核酸は、ゲノム核酸、hnRNA、mRNA、cDNA又はその一部であることができる。
【0073】
上記した化合物、即ち、それらに限定はしないが、抗体、ペプチド、アンチカリン、アプタマー、スピーゲルマー、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNはそのようなものとしてPRF1について述べたのと同じ目的に使用することができることは本発明の範囲内にある。
【0074】
上記したとおり、本明細書に記載のPRF1又はその一部もしくは誘導体又はそれに対する核酸配列のほかに、PRF1又はPRF1をコードする核酸から生じる効果を創り出すため又は抑制するために他の手段又は化合物を使用することができることは本発明の範囲内にある。このような手段は、スクリーニング方法において決定又は選択することができる。このようなスクリーニング方法において、第1段階は、1種以上のいわゆる候補化合物を提供することである。本明細書で使用される候補化合物は、その適性が、本明細書に記載の種々の疾患及び本明細書に記載の疾患状態を処理又は軽減するための試験システムにおいて試験されるべき化合物、又はこの種の疾患又は疾患状態の診断手段又は診断剤として使用されるべき化合物である。もしも候補化合物が試験システムでそれぞれの効果を示すならば、該候補化合物は該疾患及び疾患状態の処理のための適当な手段又は適当な作用物質でありそして一般に該疾患及び疾患状態のための適当な診断剤である。第2段階では、候補化合物をPRF1発現システム又はPRF1活性システムと接触させる。PRF1活性システムは本明細書ではPRF1の活性を検出するシステムとも呼ばれる。
【0075】
PRF1発現システムは、基本的にPRF1の発現を示すか又は表示する(display)発現システムであり、その際発現の程度又はレベルは基本的に変えることができる。PRF1活性システムは、本質的にPRF1の発現よりはむしろ活性又は活性の状態を測定する発現システムである。更に詳細には、候補化合物の影響下に、PRF1の活性又はPRF1をコードする核酸の活性が候補化合物なしの状況とは異なるかどうかが試験される。特定のシステムが発現システムであるか又は活性システムであるかどうかにかかわりなく、それぞれ活性及び発現の増加又は減少が起こりうること及び測定されうることは本発明の範囲内にある。典型的には、発現システム及び/又は活性システムは、in vitro反応システム、例えば、細胞抽出物又は細胞抽出物のフラクション、例えば核抽出物である。本明細書で使用されたPRF1発現システム又は活性システムは、細胞、組織又は器官、好ましくは、本明細書に記載の疾患及び本明細書に記載の疾患状態に関与する細胞又は組織もしくは器官の細胞である。
【0076】
本発明に従う作用物質のスクリーニングの方法は、段階d)の後、この方法に固有のシーケンス1段階の第1ラウンドで得られた又は同定された候補化合物を段階c)に付し、その際発現システム又は活性システムは、候補化合物を特徴付ける第1ラウンド期間中に使用されたそれぞれ発現システム又は活性システムとは異なる、ように行うことができることも又本発明の範囲内にある。従って、第1ラウンドではそれぞれ発現システム及び活性システムは本明細書に記載の疾患に関与する細胞であることができるが、これに対して、第2ラウンドでは、細胞は、該疾患に関与しない細胞であることができる。別の態様では、2つの細胞型の使用の順序は逆にすることができる。
【0077】
活性システム又は発現システムにおける増加又は減少があるかどうかは、例えば、PRF1をコードする核酸、更に詳細にはmRNAの量の増加もしくは減少又は候補化合物の影響下に発現されたPRF1の増加もしくは減少を測定することにより、発現の各レベルで決定することができる。測定、更に詳細には、例えばmRNA又はタンパク質に関するこの種の変化の定量的測定に必要な技術は当業者に知られている。例えば、適当な抗体の使用によりPRF1の量又は含有率を決定するための方法も当業者に知られている。抗体は、当業者に知られているとおりにそして例えば、Harlow, E., and Lane, D., “Antibodies: A Laboratory Mannual, ”Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1988)に記載の如くして発生させることができる。
【0078】
PRF1発現システムの場合には、PRF1の活性の増加又は減少は好ましくは機能的アッセイにおいて決定することができる。
【0079】
候補化合物と、それぞれ、発現システム及び活性システムとの接触は、通常は、一般に本明細書では試験システムと呼ばれるそれぞれの反応システムに候補化合物の水性溶液を加えることにより行われる。水性溶液のほかに、有機溶媒中の候補化合物の懸濁液又は溶液も使用することができる。水性溶液は好ましくは緩衝溶液である。
【0080】
好ましくは、それぞれ、発現システム及び活性システムを使用する試験において、単一の候補化合物のみが使用される。しかしながら、いくつかのこの種の試験を高スループットシステムで平行して行うことも本発明の範囲内にある。
【0081】
本発明に従う方法の更なる段階は、候補化合物の影響の下でPRF1又はそれをコードする核酸に関するそれぞれ発現システム及び活性システムの発現又は活性が変化するかどうかを決定することにある。典型的には、これは、候補化合物を添加しない場合の反応に対して候補化合物を添加する場合のシステムの反応を比較することによりなされる。好ましくは、候補化合物は化合物のライブラリーのメンバーである。基本的には、化合物のいかなるライブラリーも化合物のクラスにかかわりなく本発明の目的に適当である。化合物の適当なライブラリーは、中でも、小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、アンチカリン及び機能的核酸からなるライブラリーである。後者の化合物は当業者に知られているとおりにそして本明細書に述べた如くして発生させることができる。
【0082】
PRF1に特異的な又はPRF1をコードする核酸に特異的な抗体の製造は、当業者に知られておりそして、例えば、Harlow, E., and Lane, D., "Antibodies: A Laboratory Mannual," Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1988)に記載されている。好ましくは、Cesar及びMilsteinのプロトコル及びそれに基づいて更に発展したものに従って製造することができるモノクローナル抗体を本発明に関して使用することができる。本明細書で使用された抗体は、それらが適当でありそしてプロテインキナーゼNβに結合することができるかぎりは、完全な抗体、抗体フラグメント又は誘導体、例えば、Fabフラグメント、Fcフラグメント及び一本鎖抗体を含むがそれらに限定はされない。モノクローナル抗体のほかに、ポリクローナル抗体も使用及び/又は発生させることができる。ポリクローナル抗体の発生も当業者に知られておりそして、例えば、Harlow, E., and Lane, D., "Antibodies: A Laboratory Mannual," Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1988)に記載されている。好ましくは、治療目的で使用される抗体は上記の如く人体に適応させられるか又はヒト抗体である。
【0083】
本発明に従って使用することができる抗体は、1つ以上のマーカー又は標識を有することができる。このようなマーカー又は標識はその診断用途又はその治療用途において抗体を検出するのに有用でありうる。好ましくは、マーカー及び標識は、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、金及びフルオレセインを含む群より選ばれる。これらのマーカー及び更なるマーカーはHarlow et al(Harlow, E., and Lane, D., "Antibodies: A Laboratory Mannual," Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1988)に記載されている。
【0084】
標識又はマーカーが、検出とは別の追加の機能、例えば、他の分子との相互作用を示すことも本発明の範囲内にある。このような相互作用は、例えば、他の化合物との特異的相互作用であることができる。これらの他の化合物は、抗体、例えば、ヒトもしくは動物抗体が使用されるシステムに固有の化合物、又はそれぞれの抗体を使用することにより分析されるサンプルに固有な化合物であることができる。適当なマーカーは、例えば、ビオチン又はフルオレセインであることができ、その際その特異的な相互作用パートナー、例えば、アビジン及びストレプトアビジン等がそれぞれの化合物又は構造上に存在し、かくしてマーカー付きの又はラベルされた抗体と相互作用する。
【0085】
PRF1のタンパク質又はPRF1をコードする核酸を使用して発生させることができる更なるクラスの医薬及び診断剤は、該タンパク質又は核酸に結合するペプチドである。このようなペプチドは、当該技術分野の状態に従う方法、例えば、ファージディスプレー(pharge display)を使用することにより発生させることができる。基本的には、ペプチドのライブラリーを、例えば、ファージの形態で発生させそしてこの種のライブラリーを標的分子、この場合には、例えば、PRF1と接触させる。標的分子に結合するこれらのペプチドは、その後それぞれの反応から好ましくは標的分子との複合体として除去される。結合特性は、少なくともある程度、特定的に実現された実験的セットアップ、例えば、塩濃度等に依存することは当業者に知られている。より高いアフイニティー又はより大きい力で標的分子に結合するこれらのペプチドをライブラリーの非結合性メンバーから分離しそして場合により標的分子及びペプチドの複合体から標的分子も除去した後、それぞれのペプチド(1種又は複数)を次いで特徴付けることができる。特徴付ける前に、場合により増幅段階を、例えばペプチドコードファージを増殖させることにより実現する。特徴付けは、好ましくは、標的結合性ペプチドの配列決定を含む。基本的には、ペプチドはそれらの長さに限定はないが、好ましくは約8〜20個のアミノ酸の長さを有するペプチドが好ましくはそれぞれの方法で得られる。ライブラリーのサイズは、約10〜1018、好ましくは10〜1015の異なるペプチドであることができるが、それに限定はされない。
【0086】
標的結合性ポリペプチドの特定の形態は、中でも、German patent application DE19742706に記載のいわゆる「アンチカリン」である。
【0087】
本発明に従えば、PRF1及びPRF1をコードする核酸は、小分子又は小分子のライブラリーを使用するスクリーニングプロセスにおいて、本明細書に記載の疾患及び本明細書に記載の疾患状態の処理用の医薬の製造又は開発のための標的として並びに該疾患及び該状態を診断する手段の製造及び/又は開発のための標的として使用することができる。このスクリーニングは、標的分子を、単一の小分子と接触させ又は様々な小分子と同時に又は引き続いて接触させ、好ましくは、上記したライブラリーからの小分子と接触させ、そして標的分子に結合するこれらの小分子又はライブラリーのメンバーを同定する段階を含み、これらは、他の小分子とともにスクリーニングされる場合に、非結合性又は非相互作用性小分子から分離させることができる。結合及び非結合は特定の実験セットアップにより強く影響されうることが知られるであろう。反応パラメーターのストリンジェンシーを改変する際に結合及び非結合の程度を変えることが可能であり、これはこのスクリーニングプロセスの精密な同調(tuning)を可能とする。好ましくは、標的分子と特異的に相互作用する1種以上の小分子の同定の後、この小分子を更に特徴付けることができる。この更なる特徴付けは、例えば、小分子の同定並びにその分子構造及び更なる物理的、化学的、生物学的及び/又は医学的特徴の決定にあることができる。好ましくは、天然の化合物は約100〜1000Daの分子量を有する。又好ましくは、小分子は当業者に知られている5つのレピンスキーの規則(Lepinsky rule)に合致する小分子である。別法として、小分子は、好ましくは非合成の天然の生成物とは対照的に、好ましくは合成化学(combinatorial chemistry)から生じる合成小分子であるように定義することもできる。しかしながら、これらの定義は当該技術分野におけるそれぞれの用語の一般的な理解を補足するものに過ぎないことに留意されるべきである。
【0088】
後に医薬又は診断剤として直接又は間接に使用されうるアプタマー及びスピーゲルマーの製造及び選択のための標的分子としてPRF1及び/又はPRF1をコードする核酸を使用することも本発明の範囲内にある。
【0089】
アプタマーは、標的分子と特異的に相互作用する一本鎖又は二本鎖のD−核酸である。アプタマーの製造又は選択は、例えば、European patent EP0553838に記載されている。基本的には、下記の段階を実現する。第一に、各核酸が典型的には、いくつかの、好ましくは少なくとも8つの順々に続まランダム化されたヌクレオチド(subsequently randomised nucleotides)のセグメントを含む核酸、即ち、潜在的アプタマーの混合物を提供する。次いでこの混合物を標的分子と接触させ、それにより核酸(1種又は複数)は、候補混合物に比べて、例えば、標的に対する増加したアフイニティーに基づいて又は標的に対するより大きな力で、標的分子に結合する。結合している核酸(1種又は複数)を次いで混合物の残りから分離させる。場合により、このようにして得られた核酸(1種又は複数)を例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して増幅させる。これらの段階を数回繰り返して標的に特異的に結合する核酸の割合が増加した混合物を最後に得ることができ、次いでこれから最後の結合している核酸を場合により選ぶ。これらの特異的に結合している核酸(1種又は複数)はアプタマーと呼ばれる。アプタマーの発生又は同定のための方法のいかなる段階においても、個々の核酸の混合物のサンプルを採取して、標準技術を使用してその配列を決定することができることは明らかである。例えば、アプタマーを発生させる当業者に知られている規定された化学的基を導入することによりアプタマーを安定化させることができることは本発明の範囲内にある。このような修飾は、例えば、ヌクレオチドの糖部分の2’−位置にアミノ基を導入することにあることができる。アプタマーは最近治療剤として使用される。しかしながら、このようにして選択し又は発生させたアプタマーを標的の正当性の立証のため及び/又は医薬、好ましくは小分子に基づく医薬の開発のためのリード物質として使用することができることも本発明の範囲内にある。これは実際には競合アッセイによりなされ、この競合アッセイによれば、標的分子とアプタマー間の特異的相互作用は候補薬物により抑制され、その際、標的とアプタマーの複合体からアプタマーが追い出されると、それぞれの薬物候補が標的とアプタマーとの相互作用の特異的抑制を可能とすることが推測されえ、そして相互作用がもし特異的であるならば、該候補薬物は少なくとも一般に、このような標的を含むそれぞれのシステムにおいて標的をブロックし、かくしてその生物学的アベイラビリティー又は活性を減少させるのに適当であろう。このようにして得られた小分子は次いで更なる誘導体化及び修飾に付されてその物理的、化学的、生物学的及び/又は医学的特徴、例えば、毒性、特異性、生物分解性及びバイオアベイラビリティを最適化させることができる。
【0090】
PRF1又はPRF1をコードする核酸を使用して本発明に従って使用するか又は発生させることができるスピーゲルマーの発生又は製造は同様な原理に基づいている。スピーゲルマーの製造は国際特許出願WO98/08856に記載されている。スピーゲルマーはL−核酸であり、これはスピーゲルマーがアプタマーを構成するD−ヌクレオチドよりはむしろL−核酸からなることを意味する。スピーゲルマーは、生物学的システムにおいて極めて高い安定性を有しており、そしてアプタマーに匹敵して、スピーゲルマーが向けられている標的分子と特異的に相互作用することにより特徴付けられる。スピーゲルマー
を発生させるプロセスにおいて、D−核酸の不均一な集団を創生し、そしてこの集団を標的分子の光学的対掌体、この場合には例えばPRF1の天然に存在するL−エナンチオマーと接触させる。次いで、標的分子の光学的対掌体と相互作用しないこれらのD−核酸を分離する。しかし標的分子の光学的対掌体と相互作用するこれらのD−核酸を分離し、場合により決定及び/又は配列決定し、次いで対応するL−核酸をD−核酸から得られた核酸配列情報に基づいて合成する。標的分子の光学的対掌体と相互作用する上記したD−核酸と配列の点で同じであるこれらのL−核酸は、天然に存在する標的分子の光学的対掌体とよりはむしろ天然に存在する標的分子と特異的に相互作用するであろう。アプタマーの発生のための方法と同様に、種々の段階をいくつかの回数繰り返し、かくして標的分子の光学的対掌体と特異的に相互作用するこれらの核酸を濃縮する(enrich)ことが可能である。
【0091】
本明細書に開示された標的分子としてPRF1又はPRF1をコードする核酸に基づいて製造又は発生させることができる更なるクラスの化合物は、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNAである。PRF1の作用の機能及び様式により、核酸をベースとする薬物とも呼ばれそして核酸をベースとする薬物として使用されるこれらの種類の分子は、好ましくは本発明の開示に基づいて、更に好ましくは、本明細書に開示されそして記載された核酸配列に基づいて創製及び/又は製造される。
【0092】
上記した核酸のすべての共通の特徴は、それらが、翻訳産物のレベルの標的分子、この場合にはPRF1、と相互作用するのではなくて、むしろ転写産物、即ち、PRF1をコードする核酸、例えば、ゲノム核酸又はそれから誘導されたすべての核酸、例えばそれぞれ対応するhnRNA、cDNA及びmRNAと相互作用するということである。それゆえ、上記したクラスの化合物の標的分子は好ましくはPRF1のmRNAである。
【0093】
リボザイムは、基本的には、好ましくは2つの部分を含むRNAからなる触媒的に活性な核酸である。第一部分は触媒活性を示し、これに対して第二部分は、標的核酸、この場合にはプロテインキナーゼNβをコードする核酸との特異的相互作用の責任を持つ。典型的にはハイブリダイゼーション及び2つのハイブリダイゼーションしている鎖上の塩基の本質的に相補的なストレッチのワトソン−クリックの塩基対形成により、標的核酸とリボザイムの第二部分とが相互作用すると、触媒的に活性な部分が活性となり、これは、それが分子内でも分子間でも、リボザイムの触媒活性がホスホジエステラーゼ活性である場合には標的核酸を触媒することを意味する。次いで、標的核酸の更なる分解があり得、これは、新たに合成されるPRF1の欠如及び先に存在するPRF1の代謝回転により最後には標的核酸の分解をもたらし、そして該標的核酸から誘導されたタンパク質、この場合にはPRF1、を分解させる。リボザイム、その使用及びデザイン原理は当業者に知られておりそして例えばDoherty及びDoudnaに記載されている(Ribozyme structures and mechanism.Annu ref.Biophys.Biomolstruct.2001; 30: 457-75) そしてLewin及びHauswithに記載されている(Rybozyme gene Therapy: Applications for molecular medicine.2001 7: 221-8)。
【0094】
医薬の製造のため及び診断剤としてのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、それぞれ、同様な作用様式に基づいている。基本的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは塩基相補性に基づいて標的RNA、好ましくはmRNAとハイブリダイゼーションし、それによりRNアーゼHを活性化させる。RNアーゼHは、ホスホジエステルカップルドDNA及びホスホロチオエートカップルドDNA(phosphodiester and phosphorothioate-coupled DNA)の両方により活性化される。しかしながら、ホスホジエステルカップルドDNAは、ホスホロチオエートカップルドDNAを除いて細胞ヌクレアーゼにより迅速に分解される。これらの抵抗性の非天然に存在するDNA誘導体はRNAとのハイブリダイゼーション時にRNアーゼHを抑制しない。換言すれば、アンチセンスポリヌクレオチドはDNARNAハイブリッド複合体としてのみ有効である。この種のアンチセンスオリゴヌクレオチドの例は、中でもUS-patent US5, 849, 902及びUS5, 989, 912に記載されている。換言すれば、この場合にはPRF1をコードする核酸である標的分子の核酸配列に基づいて、標的タンパク質であってそれからそれぞれの核酸配列を一般に推定することができる標的タンパク質から又は核酸配列それ自体、特にmRNAを知ることにより、適当なアンチセンスオリゴヌクレオチドを塩基相補性の原理に基づいてデザインすることができる。
【0095】
特に好ましいのは、短いストレッチのホスホロチオエートDNA(3〜9塩基)を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。最小3DNA塩基がバクテリアRNアーゼHの活性化のために必要であり、そして最小5塩基が哺乳動物RNアーゼHの活性化のために必要である。これらのキメラオリゴヌクレオチドにおいては、RNアーゼHのための基質を形成しない修飾されたヌクレオチドからなるハイブリダイジング「アーム」により隣接されている(flanked)RNアーゼHのための基質を形成する中心領域がある。キメラオリゴヌクレオチドのハイブリダイジングアームは、例えば、2’−O−メチル又は2’−フルオロにより修飾されていてもよい。別のアプローチは、該アームにおいてメチルホスホネート又はホスホルアミデート結合を使用した。本発明の実施に有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドの更なる態様はP−メトキシオリゴヌクレオチド、部分的P−メトキシオリゴデオキシリボヌクレオチド又はP−メトキシオリゴヌクレオチドである。
【0096】
本発明のために特に重要であり有用なのは、更に詳細には上記2つのUSpatentsに記載のこれらのアンチセンスオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは天然に存在する5’→3’連結されたヌクレオチド(5'→3'-linked nucleotides)を含有しない。むしろ該オリゴヌクレオチドは2つのタイプのヌクレオチド:RNアーゼHを活性化する2’−デオキシホスホロチオエート及びRNアーゼHを活性化しない2’−修飾されたヌクレオチドを有する。2’−修飾されたヌクレオチド間の連結は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート又はP−エトキシホスホジエステルであることができる。RNアーゼHの活性化は、連続的RNアーゼH活性化領域(contiguous RNaseH-activating region)により達成され、このRNアーゼH活性化領域は、バクテリアRNアーゼHを活性化するために3〜5個の2’−デオキシホスホロチオエートヌクレオチドを含有し、そして真核生物、特に哺乳動物RNアーゼHを活性化するために5〜10個の2’−デオキシホスホロチオエートヌクレオチドを含有する。分解からの保護は、5’及び3’末端塩基を高度にヌクレアーゼ抵抗性とし、そして場合により3’末端ブロッキング基を配置することにより達成される。
【0097】
更に特定的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’末端及び3’末端を含みそして2’−修飾されたホスホジエステルヌクレオチド及び2’−修飾されたP−アルキルオキシホスホトリエステルヌクレオチドよりなる群から独立に選ばれる11〜59個の5’→3’連結されたヌクレオチドを含み、そして5’末端ヌクレオシドは、3〜10個の連続的なホスホロチオエート連結されたデオキシリボヌクレオチド(contiguous phosphorothioate-linked deoxyribonucleotides)のRNアーゼH活性化領域に結合されており、そして該オリゴヌクレオチドの3’末端は、逆向きのデオキシリボヌクレオチド(inverted deoxyribonucleotide)、1〜3個のホスホロチオエート2’−修飾されたリボヌクレオチド(phosphorothioate 2'-modified ribonucleotides)の連続的ストレッチ(contiguous stretch)、ビオチン基及びP−アルキルオキシホスホトリエステルヌクレオチドよりなる群から選ばれる。
【0098】
RNアーゼH活性化領域に結合しているのが5’末端ヌクレオシドではなくて上記した3’末端ヌクレオシドであるアンチセンスオリゴヌクレオチドも使用することができる。また、5’末端は、該オリゴヌクレオチドの3’末端よりはむしろ特定の基から選ばれる。
【0099】
5’末端RNアーゼH活性化領域を含みそして5〜10個の連続的デオキシホスホロチオエートヌクレオチド;11〜59個の連側的5’→3’連結された2’−メトキシリボヌクレオチド;及び非5’−3’−ホスホジエステル連結されたヌクレオチド、1〜3個の連続的な5’−3’連結された修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチド化学的ブロッキング基よりなる群から選ばれるオリゴヌクレオチドの3’末端に存在するエキソヌクレアーゼブロッキング基を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドも又適当で有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0100】
2つのクラスの特に好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは下記の如くして特徴付けることができる:
本明細書では第2世代のアンチセンスオリゴヌクレオチドとも呼ばれる第1のクラスのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’→3’方向に7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドのストレッチ、9個の2’−デオキシリボヌクレオチドのストレッチ、6個の2’−O−メチルリボヌクレオチドのストレッチ及び3’末端2’−デオキシリボヌクレオチドを含む総計23個のヌクレオチドを含む。第1群の7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドから、最初の4個はホスホロチオエート連結されており、これに対して次の4個の2’−O−メチルリボヌクレオチドはホスホジエステル連結されている。また、最後、即ち、最も3’末端の2’−O−メチルリボヌクレオチドと9個の2’−デオキシリボヌクレオチドからなるストレッチの最初のヌクレオチドとの間にホスホジエステル連結がある。2’−デオキシリボヌクレオチドのすべてはホスホロチオエート連結されている。最後の、即ち、最も3’末端の2’−デオキシリボヌクレオチドと6個の2’−O−メチルリボヌクレオチドからなる次のストレッチの最初の2’−O−メチルリボヌクレオチドとの間にもホスホロチオエート連結が存在する。この群の6個の2’−O−メチルリボヌクレオチドのうち、やはり5’→3’方向にそれらの最初の4個はホスホジエステル連結されており、これに対して位置20〜22に相当するそれらの最後の3個はホスホロチオエート連結されている。最後の、即ち、末端の3’末端2’−デオキシヌクレオチドは、最後の、即ち、最も3’末端の2’−O−メチルリボヌクレオチドにホスホロチオエート連結を介して連結されている。
【0101】
この第1クラスは下記の図式構造:
【表1】


を参照して説明することもできる。ここで、Rはホスホロチオエート連結された2’−O−メチルリボヌクレオチド(A,G,U,C)を示し;nは2’−O−メチルリボヌクレオチド(A,G,U,C)を示し;Nはホスホロチオエート連結されたデオキシリボヌクレオチド(A,G,T,C)を表す。
【0102】
本明細書で第3世代のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はGene Blocksとも呼ばれる第2クラスの特に好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドも、下記の基本構造(5’→3’方向に)を有する総計17〜23個のヌクレオチドを含む。
【0103】
5’末端には、エキソヌクレアーゼ活性に対する抵抗を与えるのに適当な構造でありそして例えばWO99/54459に記載の逆方向abasicヌクレオチドがある。こ逆方向abasicはホスホジエステル連結されている5〜7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドのストレッチに連結されている。5〜7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドのこのストレッチの後に、7〜9個の2’−デオキシリボヌクレオチドのストレッチがあり、そのすべてはホスホロチオエート連結されている。最後の、即ち最も3’末端の2’−O−メチルリボヌクレオチドと2’−デオキシヌクレオチドを含むストレッチの最初の2’−デオキシヌクレオチドとの間の連結はホスホジエステル連結を介して起こる。7〜9個の2’−デオキシヌクレオチドのストレッチに隣接して、5〜7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドからなるストレッチが連結されている。最後の2’−デオキシヌクレオチドは5〜7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドからなる後者に述べたストレッチの最初の2’−O−メチルリボヌクレオチドにホスホロチオエート連結を介して連結されている。5〜7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドのストレッチはホスホジエステル連結されている。5〜7個の2’−O−メチルリボヌクレオチドの第2ストレッチの3’末端には、他の逆方向abasicが結合している。
【0104】
この第2のクラスは、下記の図式構造を参照して説明することができる:(第3世代のアンチセンスオリゴヌクレオチドを表すGeneBlocsも下記の図式構造を有する)
cap−(np)(Ns)(np)−cap又は
【表2】


ここで、capは両端における逆方向デオキシabasic又は同様な修飾を表し;nは2’−O−メチルリボヌクレオチド(A,G,U,C)を示し;Nはホスホロチオエート連結されたデオキシリボヌクレオチド(A,G,T,C)を表し、xは5〜7の整数を表し;yは7〜9の整数を表し;そしてzは5〜7の整数を表す。
【0105】
整数x、y及びzは互いに独立に選ぶことができることに留意されるべきであるが、xとzは与えられたアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいては同じであることが好ましい。従って、第3世代のアンチセンスオリゴヌクレオチドの下記の基本的デザイン又は構造は以下のとおりであることができる:
【表3】

【0106】
本明細書に記載の技術的教示に基づいて発生させことができそして医薬及び/又は診断剤として使用することができる更なるクラスの化合物は、PRF1をコードする核酸、好ましくは、mRNAに向けられた低分子干渉性RNA(small interfering RNA)(siRNA)である。siRNAは典型的には約21〜約23個のヌクレオチドの長さを有する二本鎖RNAである。2つのRNA鎖の1つの配列は、分解されるべき標的核酸、例えば、PRF1をコードする核酸の配列に相当する。換言すれば、標的分子、この場合にはPRF1の核酸配列、好ましくはmRNA配列を知れば、2つの鎖の一方がこの、例えばPRF1のmRNAに相補的であるように二本鎖RNAをデザインすることができ、そしてPRF1をコードする遺伝子、ゲノムDNA、hnRNA又はmRNAを含有するシステムに該siRNAを適用すると、それぞれの標的核酸は分解され、かくしてそれぞれのタンパク質のレベルは減少するであろう。医薬及び診断剤として該siRNAをデザイン、構築及び使用する基本的原理は、中でも、国際特許出願WO00/44895及びWO01/75164に記載されている。
【0107】
前記したクラスの化合物、例えば、抗体、ペプチド、アンチカリン、アプタマー、スピーゲルマー、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNAの作用様式に基づいて、本明細書に記載の疾患のいずれか及び本明細書に記載の疾患状態のいずれかのための医薬又は診断剤の製造のために、それぞれ、PRF1及びそれをコードする核酸を標的とするこれらの化合物のいずれかを使用することもまた、従って本発明の範囲内にある。更にこれらの作用物質は該疾患及び疾患状態の進行及びそれぞれ適用されたいかなる治療の成功も監視するのに使用することができる。
【0108】
本発明に従ってデザインされた種々のクラスの化合物、例えば、抗体、ペプチド、アンチカリン、アプタマー、スピーゲルマー、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNAは医薬組成物に含有させることもできる。好ましくは、このような医薬組成物は、本明細書に記載の疾患又は本明細書に記載の疾患状態の処理のために使用される。医薬組成物は、態様では1種以上の前記クラスの化合物及び/又は単一クラスの1種以上のメンバー及び場合により更なる医薬的に活性な化合物及び医薬的に許容できる担体を含むことができる。このような担体は、液体又は固体、例えば、溶液、緩衝液、アルコール性溶液等であることができる。適当な固体担体は、中でも、デンプン等である。特定の投与経路、例えば、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内等を実現するために、前記したクラスの化合物に従う種々の化合物のためのそれぞれの配合物(formulations)を提供することは当業者に知られている。
【0109】
前記した種々のクラスの化合物の様々な化合物は、単独で又は組み合わされていてもよく、キットに付されるか又は含有されてもよい。このようなキットは、それぞれの化合物(1種又は複数)のほかに、更に1種以上の更なるエレメントを含み、その際エレメントは、緩衝液、ネガティブコントロール、ポジティブコントロール及び種々の化合物の使用に関するインストラクションよりなる群から選ばれる。好ましくは、種々の化合物は、乾燥形態又は液体形態で、好ましくは各々1回の投与のための単位投与量(unit dosage)として存在する。キットは、特に、本明細書に記載の疾患及び疾患状態に関する治療、診断のためあるいは疾患の進行又は適用された治療を監視するために使用することができる。
【0110】
更なる観点では、本明細書に記載の疾患及び疾患状態のいずれかの処理及び/又は予防及び/又は診断に有用な化合物の開発及び/又は発生及び/又はデザインのために、PRF1及びそれをコードする核酸及び好ましくはアミノ酸配列及びPRF1ポリペプチド又はタンパク質を使用することができる。その目的で、第1段階において、PRF1、好ましくはPRF1タンパク質の相互作用パートナーが決定又は選択される。更に好ましくは、このような相互作用パートナーは天然に存在する相互作用パートナーであり、そしてなお更に好ましくは、このような相互作用パートナーは天然の相互作用パートナーである(1種又は複数種)。このような相互作用パートナーを決定又はスクリーニングするための方法は当業者に知られている。周知の技術は、いわゆるツーハイブリッドシステム(two-hybrid system)であり、これは、例えば、Ausbell(supra) , unit13.14 ”Interaction Trap/Two-Hybrid System to Identify Interacting Proteins” 又は Fields S., Song, O., Nature.1989Jul20; 340(6230): 245-6に記載されている。その別法は、PRF1タンパク質又はそのフラグメントを細胞抽出物又は細胞溶解物から沈殿させそしてどの他の因子がPRF1と結合するか又は共沈するかを決定することである。このような分析は、当業者に知られている標準技術、例えば、質量分析法を使用して行うことができる。特定の態様では、沈殿は免疫沈殿である。更なる態様では、沈殿は、放射能標識された細胞、好ましくは35S標識された細胞を使用して行われる。その相互作用パートナーのほかに、クロマトグラフィー手段を使用しそして得られた、即ち、溶離された画分を特徴付けることにより、特に天然の相互作用パートナーを決定することができる。好ましい態様では、このようなクロマトグラフィー手段は、アフイニティークロマトグラフィーであることもでき、それによれば、PRF1タンパク質を分離媒体上に固定化する。PRF1タンパク質と可能な相互作用パートナー間の特異的相互作用により、この相互作用パートナーはクロマトグラフィープロセスにおけるリガンドとして作用し、かくして精製されそして更に特徴付けられることができる。
【0111】
第2の段階では、このようにして同定された相互作用パートナーをPRF1について本明細書で記載したスクリーニングプロセスにおいて使用することができる。追加的に又は別法として、相互作用パートナーをコードする核酸は、もしもそれがポリペプチド又は核酸をベースとする相互作用パートナーであるならば、本明細書で定義したクラスの化合物、例えば、抗体、ペプチド、アンチカリン、小分子、アプタマー、スピーゲルマー、リボザイム、アンチセンス分子(本明細書ではアンチセンスオリゴヌクレオチドとも呼ばれる)及びsiRNA、これらに限定はされない、のデザイン及び/又は製造及び/又は発生のために使用することができる。用語siRNAに関しては、そのいかなる形態も含まれるべきであり、WO03/070918に記載のsiRNAを含むが、それに限定はされない。
【0112】
上記した第1段階はそれ自身の方法であり、第2段階は場合により行われるにすぎないことは理解されるべきである。
【0113】
本発明を下記の図、実施例によりこれから更に説明するが。これらの実施例は本発明を限定することを意図するものではなく本発明の例示のために与えられるものである。該図、実施例から、本発明の更なる特徴、態様及び利点を引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】PI3−キナーゼ経路の増殖因子で誘導される活性化の略図を示す。
【図2】ラパマイシン(Rapamune)による処理の同所PC3マウスモデルにおけるリンパ節転移の測定を示す。
【図3】PI3−キナーゼ経路の下流標的薬物としてPRF1を同定するための実験的アプローチを示す。
【図4】PC3細胞に対する一次GeneBlocスクリーンを示す。
【図5】マトリゲルでのPRF1特異的GeneBlocでトランスフェクションされたPC3細胞の増殖を示し、図5Aはこれらの条件下のmRNAノックダウンを示し、図5Bはマトリゲルで増殖したそれぞれの細胞から撮った写真を示す。
【図6】PRF1特異的RNA干渉による前立腺腫瘍増殖の程度(C)及び同じPRF1特異的RNA干渉を使用する総リンパ節転移の程度(D)を示し、AはsiRNAの発現のための基本的ベクターデザインを示し、そしてBは使用したsiRNA配列を示す。
【図7】PRF1の発現を種々の増殖表面で増殖させた種々の細胞系において監視し、その際細胞はPI3−キナーゼ経路の種々のエレメントに働きかけるように種々の化合物で処理されている、ディファレンシャル発現実験の結果を示す。
【図8A】PRF1に対するポリクローナル抗体の特異性を特徴付けるために行ったウエスタンブロット分析の結果を示す。
【図8B】図8Aで特徴付けられたポリクローナル抗体で染色された前立腺癌組織及び免疫前の血清を使用して染色された前立腺癌組織の2つの写真を示す。
【図9A】24時間、48時間、72時間及び96時間LY294002(LY)及びDMSOで処理された細胞のウエスタンブロット分析の結果を示す。
【図9B】p110βに特異的なアンチセンス分子(GB)で処理されたPC3細胞のウエスタンブロット分析の結果を示す。
【図10A】PC3細胞をAkt特異的アンチセンス分子(GB)で処理した実験のウエスタンブロット分析の結果を示す。
【図10B】低酸素条件下に増殖させそしてHIF1αに特異的なアンチセンス分子で処理されたPC3細胞のウエスタンブロット分析の結果を示す。
【図11A】細胞外マトリックスにおいて種々のアンチセンス分子(GB)により処理されたPC3細胞の写真を示す。
【図11B】図5Aに従う写真に示されたPC3細胞のウエスタンブロット分析を示す。
【図12】本図ではREDD1として表されたPRF1に集中するAktに平行な経路の下流エレメントとして今やHIF1αも含むPI3−キナーゼ経路の増殖因子で誘導される活性化の略図を示す。
【0115】
図1は、PI3−キナーゼ経路の増殖因子で誘導される活性化の略図を示す。細胞の増殖因子刺激は細胞膜におけるそれらのコグネート受容体の活性化をもたらし、これは細胞内シグナリング分子、例えばPI3−キナーゼと会合しそしてそれを活性化する。癌抑制剤PTENはPI3−キナーゼ媒介下流応答を妨害しそして該経路の活性化が一時的方式で起こることを確実にする。LY294002はPI3−キナーゼの低分子抑制剤である。PI3−キナーゼ経路の既知の下流の遺伝子の1つはmTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的)であり、これは臨床的に認可された薬物ラパマイシン(ラパマン(Rapamune))により抑制されうる。PI3−キナーゼは細胞サイクル及びDNA修復、アポトーシスの調節、グルコース輸送、増殖翻訳、転移及び遊走に関与する。Xは、癌細胞の転移挙動を促進することに関与していると想像される潜在的下流薬物標的を示しておりそして、減少した副作用によりmTORの如きより「上流の」標的よりも良好な薬物標的であると考えられうる。
【0116】
図12は、図1の表示と同様なPI3−キナーゼ経路の増殖因子で誘導される活性化の略図を示す。しかしながら、本発明の基礎をなす発見により、PI3−キナーゼ経路は、HIF1αがAkt媒介経路に平行なPRF1へのPI3−キナーゼ経路のブランチとして同定されるように更に詳しく述べられている。
【0117】
他の図の更なる詳細は下記の実施例に示されるであろう。
実施例1: 材料及び方法
細胞培養
American Type Culture Collection(ATCC) からヒト前立腺癌PC−3細胞を得た。細胞を、10%ウシ胎仔血清(CS)、ゲンタマイシン(50μg/ml)及びアンホテリシン(50ng/ml)を含有するF12K栄養混合物(F12K Nutrient Mixture)(Kaighnの改変(Kaighn's modification))中で培養した。製造者の教示に従って種々のカチオン脂質、例えばオリゴフェクタミン、リポフェクタミン(Life Technologies)、NC388(Ribozyme Pharmaceuticals, Inc., Boulder, Co)又はFuGene6(Roche)を使用することにより96ウエル又は10cmプレートにおいて(30%〜50%集密度(confluency)で)トランスフェクションを行った。血清を含まない培地中のGeneBlocと脂質の予め形成した5倍濃縮した複合体を完全培地中の細胞に加えることによりGeneBlocsをトランスフェクションした。総トランスフェクション容積は96ウエル内でプレート培養された細胞では100μlでありそして10cmプレート中の細胞では10mlであった。最終脂質濃度は細胞密度に依存して0.8〜1.2μg/mlであり、GeneBloc濃度は各実験で指示される。
【0118】
培養した細胞をトリプシシ処理しそして培地によりトリプシン作用を停めた後収穫した。洗浄手順(PBS;遠心5分/1.000rpm)を加えそして最後に、接種されるべき細胞数及び容積を考慮してペレットを再懸濁させる。
【0119】
Taqman分析によるRNAレベルの相対的量の決定
96ウエル中でトランスフェクションされた細胞のRNAを単離しそしてInvisorb RNA HTS96キット(InVitek GmbH, Berlin)を使用して精製した。300nMPRF1 5’プライマー、300nMPRF1 3’プライマー及び100nMの標識されたPRF1taqmanプローブFam−Tamuraを使用してリアルタイムRT−PCR(Taqman)分析によりPRF1mRNA発現の抑制を検出した。反応を、下記の条件:48℃30分、95℃10分、続いて95℃で15秒及び60℃で1分の40サイクル、の下で製造者の教示に従って50μlで行いそしてABI PRISM 7700配列検出器(Applied Biosystems)でアッセイした。
【0120】
マトリゲルマトリックス(matrigel matrix)でのin vitro増殖
PC3細胞をマトリゲルに播種されるとき10μMのLY294002又はDMSOで処理した。細胞が播種の前にトランスフェクションされる場合には、細胞をGeneBlocでトランスフェクションしそしてトランスフェクションの48時間後トリプシン処理した。細胞を、培地中で洗浄しそして250μlのマトリゲル基底膜マトリックス(Becton Dickman)でプレコートされた対をなす24ウエル(duplicate 24-wells)(ウエル当り1000.000個の細胞)中に播種した。24〜72時間のインキュベーションの後、Axiovert S100顕微鏡(Zeiss)に取り付けられたAxiconカメラで5倍の倍率で写真を撮った。
【0121】
Affimetrix
マトリゲルで増殖させた細胞からのトータルRNAを、製造者のプロトコルに従ってトータリーRNAキット(Totally RNA kit)(AMBION)を使用して調製した。最後の段階で、沈殿したトータルRNAをInvisorb溶解緩衝液中に再懸濁させそしてInvisorbスピン細胞RNAキット(INVITEK)を使用して精製した。Affymetrixプロトコルに従ってビオチン標識されたcRNAを調製しそして15μgのcRNAをAffymetrix Gene ChipセットHG−U95にハイブリダイゼーションさせた。
【0122】
データ分析
Affymetrix GeneChip software Microarray
Suite v4.0を使用して生のデータを分析した。各プローブ組の強度は、1転写物に相当する16〜20プローブ対の組にわたって平均したミスマッチオリゴヌクレオチドに対する完全マッチオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションシグナルの差として計算された。プローブ組の平均差は転写物の存在量(abundance)に比例している。種々のアレーのトータルシグナル強度を比較の前に同じ値にスケール化した。実験及びベースラインアレーからの対応するプローブ対の強度の対方式の比較(pairwise comparison)によりAffymetrixソフトウエアを使用して、倍比変化(fold change)を計算した。Affymetrixにより記載された決定マトリックスを使用して、ソフトウエアはアブソリュートコール(absolute calls)(実験において、転写物は、存在しない、わずかに存在する又は存在する)及びディファレンスコール(difference calls)(他の実験に比べて1つの実験における転写物の存在量:増加、わずかに増加、変化なし、わずかに減少、減少)も発生する。結果を、Microsoft Excelにエキスポートし(アブソリュートコール、ディファレンスコール、倍比変化)そしてフィルターする。不存在コール又は変化なしコールを有するすべてのプローブ組は捨てられそして表は倍比変化により選別された。
【0123】
動物試験
食品医薬品協会(Food and Drug Administration)のGood Laboratory Practice for Nonclinical Laboratory Studies(GLP Regulations)に一致しそして法律的な基礎としてドイツ動物保護法に従ってin vivo実験を行った。
【0124】
SPF条件(空気層流装置(Laminar air flowequipment) 、Scantainer, Scanbur)下に維持されたMale Shoe:NMRI−nu/nuマウス(Tierzucht Schoenwalde GmbH)をヒト前立腺癌細胞のための宿主(recipients)として使用した。6〜8週齢で体重28〜30gの該動物は、前立腺の左背側面葉(left dorsolateral lobe) (iprost; 同所(orthotopic) )又は肝臓の左外側葉(Lobus lateralis sinister)の先端(ihep;異所(Ectopic))の両方に2×10/0.03mlの腫瘍細胞を接種された。この目的で、マウスは、Ketanest(Parke-Davis GmbH) とRompun (bayer Vital GmbH) 80:1の混合物をそれぞれ100mg/kg及び5mg/kgの投与量で使用する全身麻酔を受けた。腹側体表面の完全な滅菌の後、腹部皮膚及び包皮腺(preputial gland)の境界付近で始まりそして約1cmの寸法の腹膜壁を通して切開を行った。毛抜きと綿棒の対によって、前立腺を可視化した。同所細胞チャレンジ(orthotopic cell challenges)を、拡大鏡の助けと30G 0,30×13マイクロランス針(microlance needles)を有する1ml注射器(henke Sass Wolf GmbH)の使用によって引き続いて行った(followed)。投与は接種位置のマークのついたブレブ(bleb)を観察して都合よく行った。傷を腹膜壁に関しては縫合材料(PGA Resorba, Franz Hiltner GmbH)により及び腹部皮膚のためにはミッチェルクランプ(Michel cramps) 11×2mm(Heiland)により閉じた。傷噴霧(Hansaplast Spreuhpflaster, Beiersdorf AG)により外傷を覆った。手術後の期間中、完全に目覚めるまで動物を暖かい環境に維持した。動物は各群当り5〜10匹の動物からなる処理群の数に従って無作為化された。それらは所見をプロトコル化することを含めて引き続いて検査された。Ssniff NM−Z、10mm、加圧滅菌可能(autoclavable)、を強化食事として投与しそして飲み水は適宜にHClにより酸性化された。
【0125】
評価
実際の投与量レベルを受け入れるために、処理日に体重を記録した。同時に、それは全体の生物に対する処理の様式(modalities)の影響を認識するために体重の発育から誘導されうる。
【0126】
血液穿刺(blood puncture)を0日目(ベースライン)、14、28及び35日目(殺す)に行った。血液は短期間麻酔された動物(ジエチルエーテル、Otto Fischar GmbH)の眼窩静脈から抜き取った。処理の適合性及び副作用に対するデータを与える評価パラメーターは下記:白血球数;血小板数;酵素である。更なる血液生まれのパラメーター(blood borne parameters)(ビリルビン、クレアチニン、タンパク質、尿素、尿酸)。
【0127】
殺したすべての動物を完全に解剖しそして写真により証拠書類として提供した。腫瘍(前立腺)及び転移(尾、腰、腎臓リンパ節転移)は一対のカリパーによって二次元で測定した。容積は、V(mm)=ab/2、ここでb<a、に従って計算した。一般に、治療アプローチのために実行された(performed)細胞数は前立腺に関して100%腫瘍取得(tumor take)を引き起こす。いくらかの器官(肝臓、脾臓、腎臓)の重量が二次副作用に関する知見に関する追加のデータを見出すために記録された。
【0128】
組織学的分析のために、腫瘍組織、即ち、前立腺腫瘍及びリンパ節転移、のサンプルを5%ホルムアルデヒド中に固定しそしてパラフィン包埋した。ルーチンに、切片をHE染色し、必要ならば特異的染色を行った(Azan、PAS)。
【0129】
ヒト起源の腫瘍及び転移細胞を検出するために、十分な組織サンプルを液体窒素中に冷凍した。huHPRT特異的アンプリコンによるPCR及びTaqman分析を使用して、我々は5mgの組織中に50個のヒト細胞を検出することができた。
【0130】
治療結果はMann及びWhitneyのu−検定(u−test)により統計的に正当であることが立証された。
【0131】
実施例2:下流薬物標的の適性に関する実験的概念証明
参照によりここに組み込まれるこの明細書の序言の部で略述したとおり、シグナリング経路に下流で連結されている標的は医薬又は薬物及び診断剤の両方のデザイン又は開発のために価値がある。もし特定の標的が異なる他の経路に連結されているか又はシグナリング経路内のその位置により、多数の生物学的現象、例えば、PI3−キナーゼ経路の場合における如く転移及び遊走、増殖翻訳、アポトーシス、細胞サイクル、DNA修復等に連結されているならば、この標的に働きかけるいかなる化合物も多数の副作用を持ちそうであり、これらの副作用は、システムに有害であり得そして医学的観点からは望まれないことがあり得るか又は間違ったもしくは非特異的分析結果を引き起こすことがあり得ることは明らかである。従って、下流の標的が最初に選ばれるべきである。
【0132】
本発明者は、PI3−キナーゼ経路の制御下に、mTORとは別の更なる可能な標的が関与しており、これは転移及び遊走の現象及び従って腫瘍形成を制御するために特異的でありそして場合によっては、増殖翻訳及びグルコース及び/又はアミノ酸飢餓に対しても特異的であることを見出した。製薬工業においては、Rapamuneの商品名の下で販売されているラパマイシンは転移及び遊走を抑制するのに適当でありそして免疫抑制(例えば、器官移植のための)に適当であることが見出された。これは、下流薬物標的をアドレスするためのストラテジーが適当であることを確認する。
【0133】
図2から分かりうるとおり、ラパマイシンは、リンパ節転移の容積を減少させるのに適当であり、そしてその限りにおいて、周知のPI3−キナーゼ抑制剤LY294002にその効果において匹敵するが、しかしながらLY294002は多数の副作用に連結されており、これはPI3−キナーゼ及びmTORが多数の生物学的現象に連結しているということを認めると驚くには当たらない。図2に示されたとおり、腫瘍取得モデル(tumor take model)が使用されそしてRapamuneにより処理は1日目に開始した。使用した両濃度、即ち、0.4mg/kg/用量及び2mg/kg/用量は、リン酸緩衝化生理的食塩水であるネガティブコントロールに比べてmmとして表してリンパ節転移の程度を顕著に減少させた。
【0134】
処理を28日目に開始する確立された腫瘍モデルのRapamune処理の場合にも基本的に同じ結果が得られた(図2B)。
【0135】
基礎を成す実験的セットアップは、ラパマイシン(Rapamune)による処理の後同所PC−3マウスモデル(orthotopic PC3 mouse model)におけるリンパ節転移を測定するようなセットアップであった。図2(A)において、腫瘍取得モデルの結果が示される。Nude Shoe:NMRI−nu/nuマウス(群当り8匹)は0.03mlの前立腺内に2×10PC3細胞を注入されそして2mg/kg及び0.4mg/kgの用量で28日間毎日腹腔内にRapamuneを使用して処理を行った。PBSはコントロールとして使用された。
【0136】
確立された腫瘍の処理では(B)、細胞を28日間同所増殖させ(grow ipros)そして移植後29〜50日にRapamuneを使用して経口的に処理を行った。用量はAに略述した如く選ばれた。動物をそれぞれ29日及び51日目に殺しそして総リンパ節転移を決定した。
【0137】
実施例3:PI3−キナーゼ経路の下流薬物標的としてのPRF1の同定
基本的実験アプローチは図3に示される。マトリゲル上で増殖させたPC3細胞をDMSO又はPI3−K抑制剤LY294002で処理し、そしてトータルRNAを各サンプルから単離した。ディファレンシャルAffymetrix遺伝子発現プロフィル化を行いそして発現をリアルタイムRT−PCRTaqmanアッセイにより確かめた。p110αを非ディファレンシャル標準として使用した。
【0138】
PC3細胞はPTEN−/−であり、これは癌抑制剤PTENが実際にはこれらの細胞において欠失しており、その結果PI3−キナーゼ経路は恒久的に活性化されており、これはマトリゲルアッセイにおいて細胞の増殖パターンにより発現される細胞の増加した転移活性又は挙動をもたらすことを意味する。(Peterson, O.W., Ronnov-Jessen, L., Howlett, A.R. and Bissell, M.J.(1992)基底膜との相互作用は、正常な及び悪性のヒト乳房上皮細胞の増殖及び分化パターンを迅速に区別するのに役立つ。Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 89, 9064-9068. (Auch: Stemberger et al., 2002 Antisense & Nucleic acid drug development 12: 131-143)。
【0139】
それに関して、PC3細胞をマトリゲル中で増殖させそして、これをin vivo環境に近いモデルシステムとみなして、RNAをそれから単離したことは留意されるべきであり、例えば慣用の細胞培養プレートの如き非マトリゲル環境で増殖させた細胞から得られるいかなる調製物よりもin situ状況又は結果に近いと推測される。
【0140】
PC3細胞のほかに、他の細胞、例えばPNT−1A、MCF−10A及びHELAを増殖させそして試験した。種々の増殖表面を使用しそして細胞をPI3−キナーゼ経路に影響を与えると思われるか又は影響を与えることが知られている化合物で処理した。結果を図7に記載の表に示す。最後の2つの右欄の「変化」として表される読み取りから分かりうるとおり、Affymetrix遺伝子発現プロフィル化で得られるシグナルは、細胞に投与された化合物の下記の組み合わせ、即ち、PC3細胞の場合にはPI3−キナーゼp110a及びp110bの触媒サブユニットに対して指向されたミスマッチGBsとLY(LY294002である)を伴う同じミスマッチとの組み合わせ、PNT−1A 細胞の場合にはPTEN17と名づけられたアンチセンス分子とそれぞれのミスマッチの組み合わせ及び、HELA細胞の場合にはTamとDMSOの組み合わせのそれぞれ48時間及び72時間プラス96時間後を除いては、増加した。構成的に活性なPI3−キナーゼの誘導性形態を発現する安定な細胞系、Mp110*ERが記載されている(Klippel et al., 1998; Stemberger et al., 2002)。増殖培地中で安定にトランスフェクションされた細胞のプールを前記したDMSO中の誘導物質4−OHTamoxifen(Tam)200nMで刺激した。
【0141】
実施例4:
PRF1に向けられた最適アンチセンスオリゴヌクレオチドのためのスクリーニング
PRF1に向けられた最適アンチセンスオリゴヌクレオチドをスクリーニングするために、8種のGeneBlocsをPRF1のトータルmRNA配列に対して選んだ。
【0142】
PC3細胞を記載の如き種々のGeneBlocs濃度でトランスフェクションしそして、300nMのNM_019058特異的フォーワードプライマー及びリバースプライマー及び100nMプローブ並びにヒトβ−アクチンのための40nMのフォーワードプライマー及びリバースプライマー及び100nMプローブによるTaqmanアッセイを使用してトランスフェクションの24時間後にmRNAレベルを決定した。
【0143】
本明細書では一次GeneBlocスクリーンとも呼ばれるこの方法の結果は、図4に示される。得られた結果から、GeneBlocs70034及び70044が更なる研究のために選ばれた。
【0144】
種々の実施例において本明細書で使用されたGeneBlocに関して、それらは本明細書で特定されたすべて第3世代のアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、これは表1からも明らかなとおり、アッパーケース文字がホスホルジエステル連結よりはむしろホスホロチオエートにより連結されているデオキシリボヌクレオチドを表すことを意味するということに留意されるべきである。
【0145】
表1: 使用した種々のGeneBlocの概観、それらの別名、標的核酸に対するミスマッチ及び配列の構造的特徴
【表4】

【0146】
更に、上記「t」のいずれも、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドがGeneBlocsである、即ち第3世代アンチセンスオリゴヌクレオチドであることを考えると、実際には「u」であることに留意されるべきである。
【0147】
本発明の種々の実施例及び態様で使用された更なるアンチセンス分子は、名称、即ち、アンチセンス分子の内部標準、それらの配列及び配列の特徴を示す表2から選ぶことができる。これらのアンチセンス分子はGeneBloc、即ち第3世代アンチセンスオリゴヌクレオチドである。下線は標的配列に対するミスマッチを示す。
【0148】
表2:使用した更なるGeneBlocの概観
【表5】

【0149】
実施例5:
PRF1の選択的ノックダウン
PRF1がPI3−キナーゼ経路の適当な下流薬物標的であることを証明するために、実施例4から得られた2つの特に有利なGeneBlocs、即ち、70044及び70043をマトリゲルをベースとする増殖実験において使用した。マトリゲル増殖実験は、それぞれの細胞の転移及び遊走挙動を示す代用モデルとして選ばれる。細胞のより集密した増殖は、それらの転移及び遊走挙動が増加し、それにより細胞がマトリゲルにより与えられた三次元構造にわたって広がることを可能とすることを指示するものとして理解される。この実施例の結果は図5に示される。
【0150】
PC3細胞をトランスフェクションしそして記載の如くしてマトリゲル上に播種しそして増殖を監視した。mRNAをマトリゲル上に播種された細胞のアリコートから単離しそしてTaqmanアッセイを使用して分析した(左パネル)。PRF1(NM_019058)特異的mRNAを内部p110αmRNAレベルに標準化した。PTEN特異的GeneBlocをPTEN−/−PC3細胞におけるネガティブコントロールとして使用しそしてp110β特異的GeneBlocを細胞外マトリックスにおける増殖のためのポジティブコントロールとして使用する。特異的増殖抑制は、それぞれPRF1特異的GeneBlocs70043及び70044で処理された細胞の増殖対それぞれそれらの対応するミスマッチしたオリゴヌクレオチド70168及び70169を比較することにより示される。
【0151】
図5A及び図5Bから、2つの好ましいGeneBloc、即ち、70043及び70044はPRF1のmRNAの有意なノックダウンをもたらし、それによりこの結果はマトリゲル増殖アッセイから得られた結果に相当することが分かりうる。y軸はApplied Biosystemsの教示に従うDCt法により決定されたmRNAの量を表す。
【0152】
実施例6:PRF1に対するポリクローナル抗体の発生及び特異性
標準技術を使用してPRF1に対するポリクローナル抗体を発生させた。このようにして得られたポリクローナル抗体をPRF1に対するその特異性について試験した。その目的で、PRF1特異的アンチセンス分子、更に特定的には遺伝子ブロックで処理されたPC3細胞からの細胞溶解物又は組換えHAタグ付きPRF1のための発現プラスミドでトランスフェクションされた細胞からの細胞溶解物を調製した。溶解物をポリクローナル抗体を使用してウエスタンブロット分析により分析しそして結果を図8Aに示す。
【0153】
図8Aから分かりうるとおり、本明細書に開示された核酸配列に特異的な遺伝子ブロック番号70043(GB43、表1参照)で処理されたPC3細胞は発現されたPRF1タンパク質の明らかな減少を示し、その際PI3−キナーゼは依然としてp110α及びp85特異的抗体により示されるとおり多量に発現されている。やはりPRF1に対してデザインされた第2アンチセンス分子、即ち、GB44もPRF1タンパク質の発現の有意な減少をもたらした。やはり、GB43に対するミスマッチMM43の場合におけるごとくミスマッチ分子では、PRF1タンパク質が細胞において有意に発現された。組換えHAタグ付きPRF1のための発現プラスミドでトランスフェクションされた細胞からの溶解物は、2つのバンドを示し、1つはHAタグ付きPRF1に対するバンドであり、そして他方は内因性PRF1に対するバンドである。
【0154】
これらの結果は、ポリクローナル抗体がPRF1に対する特異性を示し、かくしてPRF1のそれぞれ存在及び不存在を監視するのに価値あるツールであることを確証する。
【0155】
実施例7:前立腺腫瘍組織なおけるPRF1の免疫染色
ヒト前立腺腫瘍組織を染色するためにその発生及びその特徴が実施例6に記載されている抗体を使用した。1:1000希釈率のポリクローナル血清を使用して、タンパク質レベルでのPRF1の発現を図8Bに示されたように明白に可視化することができ、その際左の写真は実施例6に記載のポリクローナル抗体を使用する染色を示し、これに対して右の写真は免疫前の血清(preimmune serum)を使用した前立腺腫瘍染色のスライスを示す。
【0156】
実施例8:PRF1タンパク質発現はPI3−キナーゼ経路の様々なメンバーに依存する
PRF1がPI3−キナーゼ経路及びHIF1経路の下流の標的であることを証明するために、種々の実験を行い、その際それぞれの経路の様々なエレメントに特異的であることが知られている化合物を使用しそしてPRF1タンパク質レベルに対するこのような化合物の影響を調べた。
【0157】
a)PRF1タンパク質発現に対するPI3−キナーゼ活性の影響
PI3−キナーゼ活性がPRF1タンパク質発現に対す影響を有するかどうかを調べるために、PC3細胞をLY294002又はコントロールとしてのDMSOで処理した。PRF1タンパク質の検出手段としてポリクローナル抗体を使用するウエスタンブロット分析により分析を行った。PRF1タンパク質のほかに、Akt及びリン酸化されたAkt(P*Akt)の発現もそれぞれの特異的抗体を使用して監視した。更に、p110α及びp85の発現を監視した。
【0158】
結果を図9Aに示す。
【0159】
それぞれ72時間及び96時間後、PRF1タンパク質はDMSOで処理された細胞でのみ検出することができた。LY294002の影響下では、それぞれAkt及びリン酸化Aktからなるカスケード及びPRF1タンパク質はダウンレギュレーションされた。
【0160】
同じマーカーを使用して、細胞を今回はアンチセンス分子、即ち、p110β−GB88と名付けられたGeneBloc(GB)で処理してPI3−キナーゼを特異的に抑制した。
【0161】
結果を図9Bに示す。
【0162】
第3及び第5レーンから分かるとおり、触媒的に活性なサブニットp110βに対するGeneBlocは既知のPI3−K抑制剤LY294002と同様な効果を有しており、これは、PRF1が、そのタンパク質発現がPI3−キナーゼにより影響される下流の標的であることを確証する。p110αに対して向けられたアンチセンス分子又はミスマッチアンチセンス分子又はDMSOはタンパク質レベルでのPRF1の発現になんらの効果も持たなかった。
【0163】
PRF1タンパク質発現に対するAkt及びHIF1αの影響
タンパク質レベルでのPRF1の発現がAkt(PKB)活性及びHIF1α活性にも依存しているかどうかを調べるために、PC3細胞をAkt特異的アンチセンス分子で処理した。更に特定的には、Akt1−GB及びAkt2分子と名付けられた2つのアンチセンス分子を使用し、読み取りは図9に関して説明したのと同じであり、その際更に商業的に入手可能なタンパク質Gで精製したポリクローナル抗体(R&DSSystem, Lot Number. IUGO13071)を使用してHIF1αタンパク質発現を監視した。結果を図10に示す。図10Aから分かりうるとおり、アンチセンス分子による72時間の処理の後、Akt2GeneBlocで処理された細胞及びAkt2GeneBlocと共にAkt1GeneBlocで処理されたこれらの細胞はPRF1タンパク質レベルの減少を示し、これはそれぞれAkt1及びAkt2がPRF1タンパク質発現のレベルに対するある抑制効果を有することを示す。
【0164】
Akt及びP*Aktを除いて監視のための同じマーカーを使用する同じ実験を、CoClで細胞を処理することにより実現された低酸素条件下に増殖させた細胞で行った。2つの異なる形態のアンチセンス分子、即ち、HIF1α−GB66及びHIF1α−GB67を使用しそしてコントロールとしてそれぞれのミスマッチを使用した。該GeneBlocsはタンパク質レベルでのHIF1αの発現を減少させ、これはPRF1タンパク質の発現を減少させた。この結果はGeneBlocによる72時間処理後及び24時間CoCl処理の後に観察された。
【0165】
この結果から、PRF1のタンパク質レベルはAkt及びHIF1αの活性の両方に依存性であるが、タンパク質レベルでのPRF1の発現に対するHIF1αの影響はAktの影響より更に顕著であると思われることが分かりうる。
【0166】
これらの結果は、PRF1がPI3−キナーゼ及びHIF1αシグナリングの下流のエフェクターであることを確証する。経路欠損(pathway defection)に関して与えられたデータは、低酸素増殖条件下でPRF1はHIF1α活性に依存性であることを示唆する。更に、HIF1α依存性ではないと思われるPRF1発現の追加のAkt依存性があると思われる。この調節関係は図12に示される。
【0167】
実施例9:HIF1αタンパク質及びPRF1タンパク質が抑制されている細胞の表現型分析
この実施例の基礎を成す実験の目的は、タンパク質レベルで、それぞれHIF1α及びPRF1の発現の抑制を示す細胞の表現型の変化を調べることであった。
【0168】
細胞をマトリゲル表面で増殖させそしてアンチセンス分子(ジェネブロック)及びそれぞれコントロールにより上記実験で述べた条件下に処理した。
【0169】
結果を図11A及び図11Bに示し、その際各列は一緒に論議する図11A及び図11Bの一部からなる。
【0170】
図11Aは、マトリゲル表面で増殖させそしてそれぞれのアンチセンス分子で処理された細胞の一連の写真を示し、これに対して図11Bはマトリゲル表面から得られた細胞に関して行われたウエスタンブロット分析の結果を示す。ブロットのレーンは対応する写真に示された細胞の細胞溶解物を表す。読み出しとして、p110α及びp85はローディングコントロールとして示されそして調べられたPI3−キナーゼ経路、即ち、AKTの成分は、P*AKT、HIF1α及びPRF1として監視される。
【0171】
未処理細胞はマトリゲルアッセイにおいて正常な腫瘍細胞の増殖パターンを示す。p110βに対して指向されたアンチセンス分子のミスマッチが使用されるときは同様な表現型が観察される。PI3−Kを抑制しているPTENに対して指向されたアンチセンス分子を使用することは、この腫瘍抑制剤によって達成されない細胞系の表現型を示す(図11A、第1列)。予想されるとおり、P*AKTは、これらの条件下に有意に減少しそして機能的p110βノックダウンの読み出しを与える(図11B、第1列)。p110βのノックダウンに関すると同じく機能の損失による同様な表現型がHIF1αに対するアンチセンス分子を使用する場合に観察され、その際ミスマッチは表現型の変化をもたらさない(図11A第2列)。ウエスタンブロット分析はこれを確認しそして両HIF1α特異的アンチセンス分子についてHIF1αの減少したタンパク質レベルを示す(図11B、第2列)。最後に、PRF1特異的アンチセンス分子を使用すると、やはり機能表現型の同じ損失が観察されえ(図11Aの第3列の画像1及び3)、ウエスタンブロット分析においてもPRF1タンパク質の減少した発現を伴っている(図11B、第3列)。
【0172】
要約すると、これらの結果は、PRF1はタンパク質レベルでもPI3−キナーゼシグナリングの下流エフェクターであることを確証する。また、PRF1は低酸素増殖条件下にHIF1α活性に依存している。更に、HIF1α依存性ではないと思われるPRF1発現の追加のAKT依存性があると思われる。
【0173】
実施例10:特異的RNA干渉による前立腺腫瘍増殖の抑制
この実験は、下流薬物標的PRF1が特異的に働きかけられることを可能とする低分子干渉性RNA(siRNA)の都合のよいデザインの例である。siRNA分子は、標的特異的配列のプロモーター(u6+2)駆動発現により発生させた。
【0174】
siRNA発現プラスミドの構築
polIIIプロモーターカセットU6+2を、合成オリゴヌクレオチドを使用してPCR発生させそしてpUC誘導ベクターのEcoRI/XhoI制限部位にクローニングした。非パリンドローム制限酵素(5’突き出し部TTTT、3’突き出し部GGCAを有するBsmBI)を使用して特異的siRNAインサートをクローニングした。5’CCGT及び3’AAAA突き出し部を有する2つの合成オリゴヌクレオチドをアニーリングさせることによりインサートを発生させた。プロモーター、発現されるべきsiRNA及びターミネーター配列を含む発現カセットは、PRF1特異的siRNAの場合には下記の如く読まれる:
【表6】


肉太の部分におけるU6+2合成プロモーター及びPRF1特異的siRNA(EcoRI;XhoI)
この発現カセットは一般にいかなる発現ベクターにもクローニングすることができる。
【0175】
siRNA発現構築物の基本的デザインは図6Aにも示されており、それから、siRNAは、ポリAストレッチ(poly-A-stretch)により発生させられる細胞内ループを形成するようにデザインされることが分かりうる。図6Bは本実施例で使用される種々のsiRNA構築物、即ち、p110βのため(配列番号14)、p110α(配列番号15)及びPRF1のmRNAのため、を示す。
【0176】
種々のsiRNA構築物、例えば、p110α、p110β及びPTENに向けられたsiRNA並びにPRF1特異的siRNAを同じベクター構築物にクローニングした。PC3細胞(1×10細胞)を、それぞれのsiRNA発現プラスミド又はEGFP発現プラスミド6μgで製造者の教示に従ってEffectene(登録商標)(Quiagen, Hilden, Germany)を使用してトランスフェクションして、p110α、p110β又はPRF1に対するsiRNAを発現させ、あるいは安定にトランスフェクションされたPC3細胞の腫瘍増殖のためのコントロールとして役立つ完全長EGFPを発現させた。トランスフェクションの48時間後細胞をトリプシン処理しそして希釈しそして500μg/ml Geneticinを含有する150mm皿に再播種した。500μg/ml Geneticinを有する培地を毎日取り替えそしてトランスフェクションの7日後600μg/ml Geneticinを含有する培地により取り替えた。抵抗性プールの細胞を増殖させそして収穫し、細胞数を決定しそして記載した動物実験のために調製した。
【0177】
結果を図6に示し、その際更に特定的には図6Cにおいて、接種の56日後の一次前立腺腫瘍の容積をmmで示しそして図6Dにおいて接種の56日後の総リンパ節転移の容積をmmで示す。
【0178】
前立腺腫瘍増殖はPRF1特異的siRNAを投与することにより有意に抑制することができることは該図から分かりうる。抑制の程度は、それによれば、p110βに向けられたsiRNA構築物と同様である。しかしながら、PI3−キナーゼ経路におけるそれぞれp110β及びPRF1の位置を考慮すると、PRF1に特異的なsiRNAは、p110βをアドレスすることに比較して、PI3−キナーゼ経路の一部又はブランチ及びそれに連結したプロセスのより特異的なアドレッシング、したがって調節(modulation)を可能とすることは理解されるべきである。同じことが、総リンパ節転移を考慮する場合にも成り立つが、その場合には効果はより少なく顕著である。
【0179】
明細書、配列リスト、特許請求の範囲及び/又は図面に開示された本発明の特徴は、本発明をその種々の形態で実現するために個別的にもそのいかなる組み合わせにおいても必須でありうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスが、PI3−キナーゼ経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該因子が配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドあるいはデータバンクエントリーgi9506687又はNP_061931、好ましくは、NP_061931.1の配列を有するポリペプチドである、核酸。
【請求項2】
生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスが、PI3−キナーゼ経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該核酸が、配列番号2又は配列番号3の核酸配列あるいはデータバンクエントリーgi9506686又はNM_019058、好ましくはNM_019058.1の核酸配列を含む、核酸。
【請求項3】
生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスが、PI3−キナーゼ経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、そして該核酸は、遺伝子コードの縮重がなければ、請求項2に記載の核酸又はその一部に本質的に相補的である核酸にハイブリダイゼーションする、核酸。
【請求項4】
生物学的プロセスに関与する因子をコードする核酸であって、該プロセスは、PI3−キナーゼ経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、該核酸は、請求項2に記載の核酸又はその一部に本質的に相補的である核酸にストリンジェントな条件下にハイブリダイゼーションする、核酸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターを含む細胞、好ましくは、哺乳動物細胞。
【請求項7】
生物学的プロセスに関与する因子であって、該プロセスが、PI3−キナーゼ経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、該因子が配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドあるいはデータバンクエントリーgi9506687又はNP_061931、好ましくはNP_061931.1の配列を有するポリペプチドである、因子。
【請求項8】
生物学的プロセスに関与する因子であって、該プロセスが、PI3−キナーゼ経路で調節されるプロセス、好ましくは、グルコース代謝、アミノ酸及びグルコース欠乏プロセス、糖尿病、創傷の治癒、ストレス応答、アポトーシス、転移、腫瘍形成、細胞遊走、細胞外マトリックス中の細胞運動性及び細胞外マトリックス中の細胞増殖よりなる群から選ばれるプロセスであり、該因子が請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸によりコードされている、因子。
【請求項9】
因子が該プロセスのためのマーカーである請求項7又は8に記載の因子。
【請求項10】
因子が、形質転換細胞のためのマーカー、好ましくは浸潤性細胞のためのマーカーである請求項7〜9のいずれか一項記載の因子。
【請求項11】
PI3−キナーゼ経路の下流の標的又は下流のマーカーとしての、好ましくはPI3−キナーゼ経路の下流薬物標的としての請求項1〜10のいずれか一項記載の因子又はそのフラグメント又は誘導体の使用。
【請求項12】
疾患の治療及び/又は予防用の医薬の製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための請求項1〜11のいずれか一項記載の因子又はそのフラグメント又は誘導体の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用。
【請求項13】
疾患の治療及び/又は予防のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための請求項1〜12のいずれか一項記載の核酸又はそのフラグメント又は誘導体の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用。
【請求項14】
該疾患が、該疾患に関与している細胞がPTEN活性を欠いているか又はPI3−キナーゼ経路の過剰活性化を示すか又は攻撃的な挙動の増大を示すか又は腫瘍細胞、好ましくは後期段階の腫瘍の細胞である請求項11〜13のいずれか一項記載の使用
【請求項15】
該疾患が後期段階の腫瘍である請求項11〜14のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
疾患が、グルコース代謝に関連したPI3−キナーゼ経路のブランチに関連した疾患であり、好ましくは、疾患が糖尿病である請求項11〜15のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
疾患の処理及び/又は予防のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための作用物質をスクリーニングする方法であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれ、該方法は、
a)候補化合物を提供し、
b)請求項1〜16のいずれか一項記載の因子のための発現システム及び/又は請求項1〜16のいずれか一項記載の因子の活性を検出するシステム、好ましくは活性システムを提供し、
c)候補化合物を請求項1〜16のいずれか一項記載の因子のための発現システム及び/又は請求項1〜16のいずれか一項記載の因子の活性を検出するシステム、好ましくは活性システムと接触させ、
d)請求項1〜16のいずれか一項記載の因子の発現及び/又は活性が候補化合物の影響の下で変化するかどうかを決定する段階を含む、
方法。
【請求項18】
候補化合物が化合物のライブラリーに含有されていることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
候補化合物が、ペプチド、タンパク質、抗体、アンチカリン、機能的核酸、天然の化合物及び小分子を含むクラスの化合物の群より選ばれることを特徴とする請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
機能的核酸が、アプタマー、アプタザイム、リボザイム、スピーゲルマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNAを含む群より選ばれることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
疾患の治療及び/又は予防用医薬の開発及び/又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための標的分子としての、請求項1〜20のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体及び/又は請求項1〜20のいずれか一項記載の核酸又はその一部又は誘導体の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用。
【請求項22】
医薬及び/又は診断剤が、抗体、ペプチド、アンチカリン、小分子、アンチセンス分子、アプタマー、スピーゲルマー及びRNAi分子を含む群より選ばれる作用物質を含むことを特徴とする請求項21に記載の使用。
【請求項23】
作用物質が、請求項1〜22のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体と相互作用することを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項24】
作用物質が、請求項1〜23のいずれか一項記載の核酸又はその一部又は誘導体、特に、請求項1〜23のいずれか一項記載の因子のためのmRNA、ゲノム核酸又はcDNAと相互作用することを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項25】
疾患の治療及び/又は予防用医薬の開発又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための、請求項1〜24のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体と相互作用するポリペプチドの使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用。
【請求項26】
ポリペプチドが請求項1〜25のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体に対する抗体、及び請求項1〜25のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体に結合するポリペプチドを含む群より選ばれることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項27】
疾患の治療及び/又は予防用の医薬の開発又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための、請求項1〜26のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体と相互作用する核酸の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用。
【請求項28】
核酸が、アプタマー及びスピーゲルマーを含む群より選ばれることを特徴とする請求項27に記載の使用。
【請求項29】
疾患の治療及び/又は予防用の医薬の開発又は製造のため及び/又は疾患の診断用の診断剤の製造のための、請求項1〜28のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体をコードする核酸と相互作用する核酸の使用であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、使用。
【請求項30】
相互作用する核酸が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム及び/又はsiRNAであることを特徴とする請求項29に記載の使用。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体をコードする核酸が、cDNA、mRNA又はhnRNAであることを特徴とする請求項29又は30に記載の使用。
【請求項32】
好ましくは疾患の予防及び/又は処理のための、請求項1〜31のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体、請求項1〜31のいずれか一項記載の因子もしくその一部もしくは誘導体と相互作用する小分子又は請求項1〜31のいずれか一項記載の因子もしくその一部もしくは誘導体をコードする核酸と相互作用する小分子、請求項1〜31のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体に特異的な抗体、請求項1〜31のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用するポリペプチド、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸、請求項1〜31のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体をコードする核酸、請求項1〜31のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用する核酸、及び請求項1〜31のいずれか一項記載の因子もしくはその一部又もしく誘導体をコードする核酸と相互作用する核酸を含む群より選ばれる少なくとも1種の作用物質並びに少なくとも1種の薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物であって、該疾患が、癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる、医薬組成物。
【請求項33】
癌、転移性癌、糖尿病、創傷の治癒及びPI3−キナーゼ経路が関与するいかなる病理学的状態も含む群から選ばれる疾患又は状態を特徴付けるためのキットであって、請求項1〜32のいずれか一項記載の因子又はその一部又は誘導体、請求項1〜32のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体に特異的な抗体、請求項1〜32のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用するポリペプチド、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸と相互作用するポリペプチド及び/又は請求項1〜32のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体をコードする核酸と相互作用するポリペプチド、請求項1〜32のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体と相互作用する核酸、及び請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸と相互作用する核酸及び/又は請求項1〜32のいずれか一項記載の因子もしくはその一部もしくは誘導体をコードする核酸と相互作用する核酸を含む群より選ばれる少なくとも1種の作用物質、並びに場合により少なくとも1種の他の化合物を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−125339(P2011−125339A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−285811(P2010−285811)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2004−544275(P2004−544275)の分割
【原出願日】平成15年10月20日(2003.10.20)
【出願人】(505047256)サイレンス・セラピューティクス・アーゲー (13)
【氏名又は名称原語表記】SILENCE THERAPEUTICS AG
【Fターム(参考)】