説明

転移ヒト腫瘍細胞で発現される糖タンパク質抗原SIMA135

【課題】ヒトにおける癌の診断および癌細胞による転移を減少させる方法を提供。
【解決手段】転移細胞で生産されるタンパク質(SIMA135)のグリコシル化および非グリコシル化形態。SIMA135およびSIMA135のフラグメントに特異的かつ選択的に結合する抗体、並びに前記抗体を使用する癌の診断方法および試験試料中における癌細胞の存在の測定方法。抗体を含む医薬組成物およびキット、細胞によるSIMA135の生産を調節する薬剤についてのスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概括的には哺乳類、例えばヒトにおける癌の診断および癌細胞による転移を減少させる方法に関するものである。さらに具体的には、本発明は、腫瘍マーカータンパク質の使用による、細胞におけるタンパク質生成増加の検出に使用され得る抗体の生成、および抗体の使用による、腫瘍マーカータンパク質を生産する癌細胞による転移の低減化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
悪性腫瘍は、新しい組織へ移動し、二次腫瘍を生じさせる細胞を散らすが、良性腫瘍が二次腫瘍を生じさせることは無い。二次腫瘍を発生させる過程は転移と呼ばれ、腫瘍細胞が一次腫瘍からは遠い部位でコロニーを形成する複雑な過程である。腫瘍転移は、依然として癌患者における主たる死亡原因であるが、腫瘍細胞播種の根底にある分子機構についてまだはっきりとは理解されていない。
【0003】
転移は、腫瘍細胞が、一次腫瘍から分離し、細胞マトリックスに侵入し、血管に浸透し、すなわち循環系に入り(血管内侵入し)、遠位で停止し、血流から出て行き(溢出し)、増大すると推定される多段階過程である。例えば、G. L. Nicolson (1982) Biochim. Biophis. Acta. 695: 113-176; G. L. Nicolson および G. Poste (1983) In. Rev. Exp. Pathol. 25: 77-181; G. Poste および I. J. Fidler (1980) Nature 283: 139-145; および E. Roos (1984) Biochim. Biophis. Acta. 738: 263-284参照。過程の複雑度を考慮すると、非常に多くの遺伝子が腫瘍細胞転移を仲介すると考えられる。事実、転移表現型は、プロテアーゼ、接着分子などを含む様々なタンパク質の発現との相関関係が明らかにされている。しかしながら、所定のタンパク質が直接播種に関与しているという証拠は欠けているか、または立証困難であることが多い。L. A. Liotta および W. Stetler-Stevenson (1989) J. Natl. Cancer Inst. 81: 556-557。
【0004】
ヒト類表皮癌、HEp−3は、転移性播種を遂行する遺伝子を検出し、特性確認するのに使用され得る独特なシステムを提供する。ニワトリ漿尿膜(CAM)での連続継代により増殖されたHEp−3細胞は、腫瘍形成性かつ自発転移性である(T+M+)。L.OssowskiおよびE.Reich(1980a)Cancer Res. 40:2300−2309。しかしながら、上記細胞をインビトロで連続的に培養すると、それらは容易に一次腫瘍を形成するが、時間経過に伴い漸進的に非転移性(T+M−)となる。L. Ossowski および E. Reich (1980b) Cancer Res. 40: 2310-2315。インビトロで長期間培養すると、それらも結局は非腫瘍形成性(T−M−)になる。転移能力の喪失は可逆性である。2〜3継代にわたり漿尿膜において受け継がれたT+M−細胞は、自発的転移形成能力を取り戻している。すなわち、培養条件を改変することにより、これらの細胞の転移潜在能力は、研究者により操作され得る。
【0005】
ニワトリ胚におけるHEp−3細胞の自発的転移が、ヒト−ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)に特異的な抗体により阻害されることから、uPAはHEp−3の播種に直接関与することが示された。L.OssowskiおよびE.Reich(1983b)Cell 35:611−619。それに続いて、uPA活性の阻害により個々のHEp−3細胞によるCAM間葉の浸潤が遮断されることが観察された。L.Ossowski(1988a)Cell 52:321−328。しかしながら、活性uPAは、腫瘍細胞の管外浸出ではなく管内侵入に必須であると思われた。L.Ossowski(1988a)。すなわち、他の因子(複数も可)の中にもHEp−3播種および癌細胞の播種に関与するものがあるはずである。J.P.Quigley et al.(1988)Ciba Foundation Symposium 141;22−47、Brooks et al.(1993)J.Cell Biol.122(6):1351−1359およびTesta, et al.、米国特許第6245898号および同第6498014号は、HEp−3細胞で発現された細胞表面抗原を認識し、漿尿膜モデルにおいて腫瘍転移を阻害するモノクローナル抗体(mAb)の「サブトラクティブ免疫」を用いた作製について報告している。それにもかかわらず、これらの抗原は、インビボ転移と相関関係を示したことも、インビボ転移プロセスに直接関与することも示されたことが無かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、新たな組織への腫瘍細胞転移の阻止に使用され得る治療法を開発するために癌細胞播種に機能的に関与する生物分子を同定することが要望されている。また、腫瘍細胞転移の阻害および癌診断方法についても、癌に罹患した哺乳類の体全体への癌細胞の拡散を低減化または排除することによる癌制御のための戦いで役立たせることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、転移細胞で生産されるタンパク質(SIMA135)(配列番号1)の同定および特性確認に関するものである。従って、本発明は、SIMA135のグリコシル化および非グリコシル化形態を提供する。本発明はまた、SIMA135およびSIMA135のフラグメントに特異的かつ選択的に結合する抗体を提供する。これらの抗体は、グリコシル化または非グリコシル化形態であるSIMA135またはSIMA135のフラグメントに結合し得る。従って、本発明は、SIMA135に特異的に結合する抗体の使用を通じて癌細胞の転移を阻止、低減化または排除する方法を提供する。本発明はまた、癌の診断方法および試験試料中における癌細胞の存在の測定方法を提供する。これらの方法は、哺乳類、例えばヒトに関して使用され得る。本発明はまた、SIMA135およびSIMA135のフラグメントに特異的かつ選択的に結合する抗体を含む医薬組成物およびキットを提供する。本発明はまた、細胞によるSIMA135の生産を調節する薬剤についてのスクリーニング方法を提供する。
【0008】
本発明は、SIMA135およびSIMA135のフラグメントを提供する。好ましくは、SIMA135またはSIMA135のフラグメントはグリコシル化されていない。さらに好ましくは、SIMA135またはSIMA135のフラグメントはグリコシル化されている。好ましくは、SIMA135のフラグメントは、抗原性であり、生物体、例えば哺乳類または鳥類に投与されたとき免疫応答を誘導し得る。好ましくは、SIMA135の抗原性フラグメントはグリコシル化されている。
【0009】
本発明は、SIMA135またはSIMA135のフラグメントに結合する抗体、例えばモノクローナル抗体41−2を提供する。モノクローナル抗体は、好ましくはSIMA135と選択的かつ特異的に結合するため、好ましくは、抗体はモノクローナル抗体41−2ではない。好ましくは、抗体は組換え抗体である。さらに好ましくは、抗体はポリクローナル抗体である。さらに好ましくは、抗体はヒト化抗体である。最も好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、非グリコシル化SIMA135またはSIMA135の非グリコシル化フラグメントに結合する。さらに好ましくは、抗体は、グリコシル化SIMA135またはSIMA135のグリコシル化フラグメントに結合する。
【0010】
本発明は、癌細胞転移の阻止、低減化または排除方法を提供する。本方法では、SIMA135に結合する抗体を、それを必要とする生物体に投与する。モノクローナル抗体41−2は、SIMA135と、また転移に関与する他の抗原とも結合し得るが、本方法の抗体はモノクローナル抗体41−2以外であるのが好ましい。上記の他の抗体は、SIMA135と選択的かつ特異的に結合する。好ましくは、生物体は哺乳類である。さらに好ましくは、生物体はヒトである。好ましくは、抗体は、SIMA135またはそのフラグメントに非特異的に結合する。さらに好ましくは、抗体は、SIMA135またはそのフラグメントに特異的に結合する。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体である。さらに好ましくは、抗体は組換え抗体である。さらに好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。最も好ましくは、抗体はヒト化抗体である。好ましくは、抗体は、非グリコシル化SIMA135またはSIMA135の非グリコシル化フラグメントに結合する。さらに好ましくは、抗体は、グリコシル化SIMA135、またはSIMA135のグリコシル化フラグメントに結合する。好ましくは、抗体は、医薬組成物としてそれを必要とする生物体に投与される。
【0011】
本発明はまた、生物体における癌の診断方法を提供する。一実施態様では、SIMA135に結合する抗体を、生物体から得た試験試料と接触させ得、次いで試験試料に結合する抗体の相対量を、非癌性対照試料に結合する抗体の相対量と比較する。対照試料との比較における試験試料への抗体結合の増加は、生物体が癌に罹患していることを示す。別の実施態様において、本発明は、生物体における癌の免疫組織化学的診断方法であって、抗体を生物体から得た試験試料と接触させ、そして試験試料が呈した抗体結合パターンを、対照試料の使用を通じて作製された抗体結合パターンと比較する方法を提供する。試験試料を用いて作製された抗体結合パターンが、癌性対照試料の使用を通じて作製された抗体パターンとマッチする場合、生物体は癌に罹患しているものとして診断される。別法として、試験試料への抗体結合パターンが、非癌性対照試料の使用を通じて作製された抗体結合パターンと異なる場合、生物体は癌に罹患しているものとして診断される。好ましくは、抗体は、SIMA135またはそのフラグメントに非特異的に結合する。さらに好ましくは、抗体は、SIMA135またはそのフラグメントに特異的に結合する。
【0012】
本発明はまた、抗体がモノクローナル抗体41−2ではないことを前提として、SIMA135またはそのフラグメントに結合する抗体、および医薬用担体を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明はまた、SIMA135またはSIMA135のフラグメントに結合する抗体、およびパッキング材料を含むキットを提供する。
【0014】
本発明は、細胞によるSIMA135の生産を調節する薬剤の同定方法を提供する。また本発明は、本方法で機能し得る細胞系および検定方法自体を包含する。好ましくは、本方法により同定される薬剤は、細胞によるSIMA135の生産を増加させる。かかる同定により上記薬剤の発癌性が立証されるため、癌誘発因子についての迅速な試験法として使用され得る。さらに好ましくは、本方法により同定される薬剤は、細胞によるSIMA135の生産を減少させる。かかる同定により、上記薬剤の抗発癌性が立証される。一実施態様では、候補薬剤を試験細胞と接触させ、試験細胞によるSIMA135の生産を、候補薬剤と接触させなかった対照細胞の場合と比較する。対照細胞との比較における試験細胞によるSIMA135生産の増加または減少は、候補薬剤が細胞によるSIMA135の生産を調節することを示している。好ましくは、細胞は哺乳類細胞である。さらに好ましくは、細胞はヒト細胞である。さらに好ましくは、細胞は非転移性HEp3細胞である。最も好ましくは、細胞は転移性HEp3細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はSIMA135のアミノ酸配列を示す。シグナル配列は小文字で書かれており、推定される貫膜ドメインは四角に囲まれている。12の共通N−グリコシル化モチーフは、黒三角で示されている。細胞質チロシン残基は円で囲まれている。残基221〜348および417〜544に及ぶと考えられるCUBドメインには下線が付されている。トリプシン消化および配列決定から同定される3ペプチドには、上に線が引かれている。ペプチド2に先行するArg残基およびペプチド3に先行するLysについては、四角で囲むことにより、Arg/Lys含有基質についてのトリプシン特異性との一致を強調している。細胞質ドメインPXXP配列には下線が付されている。推定される貫膜ドメインの後の共通パルミチル化モチーフは、黒丸により示されている。推定される貫膜ドメインの後の共通パルミチル化モチーフは、黒丸により示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な記載
本発明は、41−2と称されるモノクローナル抗体を用いたサブトラクティブ免疫を通じて転移性HEp3細胞から精製されたグリコシル化タンパク質の発見に関するものである。このタンパク質は、SIMA135と称される(サブトラクティブ免疫MHEp3結合135kDaタンパク質)。
【0017】
SIMA135とは、核酸配列の翻訳から予測される(punitive)タンパク質である場合とは対照的に、細胞から物理的に単離され得るタンパク質をいう。SIMA135タンパク質の物理的単離は、多くの理由により重要である。一つには、タンパク質の単離により、mRNAが実際にポリペプチドに翻訳されていることが示されるためである。次いで、本明細書で報告されているタンパク質の単離および特性確認により、タンパク質がグリコシル化されていることが示されるためである。グリコシル化タンパク質の物理的単離により、ポリペプチド内のグリコシル化部位がグリコシル化に利用可能であり、グリコシルトランスフェラーゼが接近できなくなるような折りたたまれたタンパク質中に埋もれていないことが確認される。上記立体配座は、グリコシル化がタンパク質の折りたたみおよび免疫原性において演じる既知役割故に重要である。従って、SIMA135タンパク質の単離は、核酸配列から予測される理論的ポリペプチド配列と比較すると顕著な前進である。
【0018】
SIMA135 cDNAは、mAb41−2と特異的に免疫反応する135kDaのI型貫膜細胞表面タンパク質をコード化することが本明細書において示されている。免疫精製およびアミノ酸配列決定により、成熟タンパク質は、29アミノ酸シグナルペプチドの除去後にPhe30から始まることが確認される。免疫細胞化学分析により、細胞表面へのタンパク質の局在性およびこのタンパク質のI型配向が確認される。さらに、12の潜在的細胞外グリコシル化部位の存在と一致することに、脱グリコシル化細胞ライゼートのウエスタン・ブロット分析は、成熟SIMA135の見かけ上(〜135kDa)と理論上(〜90kDa)の分子量における40kDaまでの差異がN−結合グリカンに起因するものであることを示している。ウエスタン・ブロット分析は、SIMA135がホスホチロシンタンパク質であり、5個の細胞内チロシン残基の存在と一致することを立証している。さらに、阻害剤PP2を用いることにより、Srcキナーゼファミリー構成員は、HEp3細胞でSIMA135のチロシンをリン酸化すべく作用することが立証された。
【0019】
SIMA135のドメイン構造は、それが、恐らくはそのアミノ末端領域内に存在すると推定されるCUBドメインを介して、細胞外タンパク質、例えば可溶性リガンド、他の細胞表面タンパク質および/またはマトリックス成分と相互作用し得ることを示す。これらの構造は、様々なタンパク質リガンドへの結合を仲介すると考えられている。例えば、補体カスケードのレクチン分枝内で作用するMASPセリンプロテアーゼのホモ二量体化は、CUBドメインを必要とする相互作用を通じて安定化する(ChenおよびWallis、2001)。また、多くのII型貫膜セリンプロテアーゼは、酵素−基質相互作用を仲介すると考えられるCUBドメインを含む(Hooper et al.、2001)。さらに、キュビリンのCUBドメインは、内因性因子−コバラミンおよびアルブミンの両方への結合を仲介する(Yammani et al.、2001)。SIMA135はその細胞外ドメイン内で重度にグリコシル化されているため、細胞表面糖タンパク質CD44の様々なイソ型について立証されているところにように、リガンド結合は、少なくとも部分的に、糖質部分に左右されると考えられる(Bajorath、2000)。グリコシル化はまた、SIMA135タンパク質折りたたみ、および細胞表面への輸送および細胞表面での維持に貢献すると考えられている(Gorelik et al.、2001;Grogan et al.、2002)。
【0020】
SIMA135は、印環細胞癌(GenBankエントリーAK026622)および非小肺細胞癌細胞系Calu6(GenBankエントリーAY026461)に関連する他のタンパク質とのアミノ酸配列における差異を示した(Scherl−Mostageer et al.、2001)。これらの差異は、既知タンパク質と比べた場合、他の分子と相互作用するSIMA135の能力に影響を与えると考えられる。第一アミノ酸変化、525Arg→Glnは、SIMA135の潜在的CUBドメインの2番目、細胞外潜在的リガンド結合ドメイン内で起こる。第二アミノ酸変化、709Gly→Aspは、チロシン残基の2残基後に位置する。非極性アミノ酸から荷電残基へのこの変化は、近位チロシンがリン酸化される能力に著しい影響を与えると予測され得るため、例えばSH2ドメインへ結合するSIMA135の能力に影響を与えると考えられる。最後の変化、827Ser→Asnは、PXXPモチーフから4残基のところに位置する。従って、この変化はまた、他のタンパク質、この場合SH3ドメイン含有タンパク質と相互作用するSIMA135の能力に影響を与え得る。
【0021】
正常な結腸組織では、SIMA135タンパク質は、結腸管腔の内側を覆う上皮細胞の基底および先端面および陰窩上皮細胞の先端面で観察される。正常結腸におけるその明白な局在性とは対照的に、結腸腫瘍組織におけるSIMA135分布は入り乱れ不均一であり、原形質膜および細胞質の両染色により調節障害であると思われる。SIMA135の発現は、結腸漿膜で深部へ浸潤している腺および排出中の血管内で強いと思われる。これらの結果は、SIMA135タンパク質発現の増加が、発癌現象の後期段階、例えば局所浸潤および転移に伴うことを示している。この提案は、同組織から生じるヒト腫瘍細胞系対のウエスタン・ブロット分析により部分的に裏付けされている。例えば、SIMA135レベルは、共通遺伝子性および低転移性変異型、M−HEp3と比べて高転移性M+HEp3細胞でかなり高かった。さらに、非共通遺伝子性前立腺癌細胞系PC−3およびLNCaPは、類似傾向を示しており、転移性細胞系である前者は、低転移性細胞型である後者と比べてかなり高レベルのSIMA135を示していた(Soos et al.、1997)。
【0022】
正常および悪性腫瘍の両腺の腺粘膜における見かけ上の遊離SIMA135の観察結果は、このタンパク質の110kDa可溶性形態がHEp3細胞によりインビトロで放出されるという観察結果と一致している。腫瘍形成中に見られる腺組織超微細構造の独特な喪失により、結腸癌患者の体液および脈管系へのSIMA135/CDCP1の可溶性形態の放出が可能となり得る。従って、SIMA135は、貫膜タンパク質MUC1(RyeおよびMcGuckin、2001)、CD44(Adham et al.、1990)およびICAM−1(Maruo et al.、2002)について提案された通り、血清または組織液マーカーとして有用であると考えられる。
【0023】
1.グリコシル化されているかまたは非グリコシル化形態であるSIMA135、そのフラグメントおよび変異型
本発明は、グリコシル化されているかまたは非グリコシル化形態であり得るSIMA135タンパク質(配列番号1)、SIMA135のフラグメント、およびSIMA135の変異型を提供する。SIMA135のこれらのタンパク質、フラグメントおよび変異型は、SIMA135に結合する抗体、例えばSIMA135に特異的および/または選択的に結合する抗体の産生を誘導する抗原として使用され得る。上記選択的結合抗体には、SIMA135またはSIMA135の一部分に結合するが、SIMA135またはSIMA135のフラグメントではないタンパク質およびタンパク質のフラグメントには結合しないものが含まれる。またこれらのタンパク質、フラグメントおよび変異型は、SIMA135に特異的および選択的に結合する抗体を選択するのに使用され得る。上記の特異的および選択的結合抗体には、SIMA135またはSIMA135の一部分には結合するが、SIMA135またはSIMA135のフラグメントではないタンパク質およびタンパク質のフラグメントには結合しないものが含まれる。特に、上記抗体の選択性は、米国特許第6498014号に記載されているところによると、それらがSIMA135またはSIMA135の一部分には結合するが、転移性Hep−3細胞ライゼートから生産される180kDaのタンパク質には結合しないことを意味し、その場合の解離定数はSIMA135またはそのフラグメントへの結合によるものと同じ桁数であるが、180kDaタンパク質との上記抗体の結合は、SIMA135またはそのフラグメントとの結合についての上記定数より少なくとも2桁大きい解離定数で行われ得る。上記抗体の特異性は、免疫原性結合が、エピトープ−超可変領域相互作用の結果であって、非特異的タンパク質−タンパク質相互作用の結果ではないことを意味する。非特異的タンパク質−タンパク質相互作用は、典型的にはエピトープ−超可変領域相互作用の特異的結合についての解離定数よりも少なくとも3桁大きい解離定数を有する。抗体−抗原免疫結合対についての解離定数は、Harlow et al.、Antibodies: A Laboratory Manual(コールドスプリングハーバー・パブリッシング、1988)に記載された技術に従って決定され得、これについては出典明示により援用する。
【0024】
本明細書で使用されているSIMA135タンパク質のフラグメントは、抗原性を示すのに充分な長さを有するペプチドフラグメントをいう。概して、フラグメントは、少なくとも5個のアミノ酸を含む。本発明は、グリコシル化または非グリコシル化形態のSIMA135のフラグメント、例えば配列番号1のフラグメントであって、アミノ酸525および・またはアミノ酸827を含むフラグメントに関するものである。本発明は、SIMA135のフラグメント、例えば配列番号1のフラグメントに関するものであり、上記フラグメントにおいて、アミノ酸525はグルタミンではなく、および/またはアミノ酸827はアスパラギンではないものとする。本発明は、SIMA135のフラグメント、例えば配列番号1のフラグメントに関するものであり、上記フラグメントにおいて、アミノ酸525はアルギニンであり、および/またはアミノ酸827はセリンであるものとする。
【0025】
変異型タンパク質には、生物学的活性であるかまたは抗原として使用されたときに抗体産生を誘発するアミノ酸置換を有するタンパク質が含まれる。SIMA135の変異型は、天然タンパク質のN−末端および/またはC−末端部分への1個またはそれ以上のアミノ酸の欠失(いわゆる先端切除)または天然タンパク質のN−末端および/またはC−末端部分へのそれらの付加、天然タンパク質における1個またはそれ以上の部位での1個またはそれ以上のアミノ酸の欠失または付加、または天然タンパク質における1個またはそれ以上の部位での1個またはそれ以上のアミノ酸の置換により天然SIMA135から誘導されたタンパク質を含むものとする。好ましくは、525位の変異型はグルタミンではなく、827位の変異型はアスパラギンではなく、好ましくは709位のアミノ酸はグリシンである。上記変異型は、例えば遺伝子多型または人為的操作により生じ得る。上記操作方法は当業界では公知である。
【0026】
すなわち、本発明のSIMA135タンパク質は、アミノ酸置換、欠失、先端切除および挿入を含む様々な方法で改変され得る。上記操作方法は当業界では公知である。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列変異型は、SIMA135をコード化するDNAにおける突然変異により製造され得る。突然変異導入およびヌクレオチド配列改変方法は当業界ではよく知られている。例えば、Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82、488 (1985); Kunkel et al., Methods in Enzymol.,154:367(1987); 米国特許第4873192号、Walker および Gaastra編、Techniques in Molecular biology、マクミリアン・パブリッシング・カンパニー、ニューヨーク(1983)およびそこに引用されている参考文献参照。興味の対象であるタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al., Atlas of Protein Sequence and Structure, Natl. Biomed. Res. Found.、ワシントンC.D.(1978)のモデルにおいて見出され得、それについては出典明示により援用する。同類置換(Conservative substitutions)、例えば一アミノ酸と特性が類似した別のアミノ酸との交換が好ましい。同類アミノ酸置換は好ましく、例を挙げると、酸性アミノ酸としてアスパラギン酸−グルタミン酸、塩基性アミノ酸としてリジン/アルギニン/ヒスチジン、疎水性アミノ酸としてロイシン/イソロイシン、メチオニン/バリン、アラニン/バリン、親水性アミノ酸としてセリン/グリシン/アラニン/トレオニンがある。同類アミノ酸置換はまた、側鎖に基いたグループ分けを含む。各群における構成員は、互いに置換され得る。例えば、脂肪族側鎖を有する一群のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンである。これらは、互いに置換され得る。脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の一群は、セリンおよびトレオニンである。アミド含有側鎖を有するアミノ酸の一群は、アスパラギンおよびグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸の一群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸の一群は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンである。硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の一群は、システインおよびメチオニンである。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンによる置換、アスパラギン酸(アスパルテート)のグルタミン酸(グルタメート)による置換、トレオニンのセリンによる置換、または構造上関連したアミノ酸によるアミノ酸の類似置換を実施することにより本発明の変異型ポリペプチドが製造され得る。
【0027】
本発明タンパク質は、グリコシル化されているかまたはグリコシル化されていないものであり得る。タンパク質は、組換えタンパク質をグリコシル化させ得る細胞でタンパク質を発現させることによりインビボでグリコシル化され得る。別法として、本発明タンパク質は、糖トランスフェラーゼの使用によりインビトロでグリコシル化され得る。タンパク質を、市販されている酵素、例えばPNGアーゼF(ニューイングランド・バイオラブズ、ビバリー、マサチューセッツ)の使用を通じて処理することにより、結合したグリカンを開裂させ得る。従って、本発明タンパク質は、天然SIMA135、変性SIMA135、SIMA135の特異的部分、グリコシル化SIMA135、および非グリコシル化SIMA135に結合する抗体の製造に使用され得る。
【0028】
2.SIMA135またはSIMA135のフラグメントに選択的に結合する抗体
本発明は、SIMA135に結合する抗体を提供する。医薬組成物で使用されるのに好ましい抗体には、腫瘍転移を阻害する抗体がある。腫瘍転移の阻害は、多くの検定法、例えば移動検定法、侵入検定法またはニワトリ漿尿膜検定法により測定され得る。
【0029】
動物を天然SIMA135または変性SIMA135でそれぞれ免疫化することにより、天然に折りたたまれたSIMA135、または変性SIMA135を認識する抗体が製造され得る。さらに、グリコシル化されているか、またはグリコシル化されていないSIMA135で動物を免疫化することにより、それぞれグリコシル化されているSIMA135、またはグリコシル化されていないSIMA135を認識する抗体が製造され得る。様々な形態のSIMA135(例えば、天然対変性、およびグリコシル化対非グリコシル化)を認識する抗体は、細胞がSIMA135を適切に折りたたみ、そしてグリコシル化できるか否かを測定するのに有用である。上記抗体は、候補薬剤が、転移中にSIMA135をプロセッシングする細胞作用を妨害できるか否かを測定するのに有用である。従って、上記抗体を用いることにより、癌細胞による転移の阻害に使用され得る薬剤の作用を同定され得る。
【0030】
SIMA135、SIMA135のフラグメント、およびSIMA135の変異型に結合する抗体は、免疫抗原として興味の対象である小ペプチドを含む無傷のタンパク質またはフラグメントを用いて製造され得る。抗原として使用され得るSIMA135のフラグメントには、動物において免疫応答を生じさせるものがある。これらのフラグメントは、一般的に5アミノ酸またはそれ以上の長さを有する。動物の免疫化に使用されるタンパク質またはペプチドは、翻訳されたcDNAまたは化学合成から誘導され得るもので、所望ならば、担体タンパク質にコンジュゲートされ得る。ペプチドに化学的にカップリングされる上記の常用担体には、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)、および破傷風トキソイドがある。次いで、カップリングしたタンパク質またはペプチドは、動物(例、マウス、ラット、またはウサギ)の免疫化に使用される。モノクローナル抗体41−2は、SIMA135の単離に初めて使用された抗体である。それは、SIMA135およびそれに加えて、米国特許第6245898号および同第6498014号に記載された180kDaタンパク質を含む幾つかの他の転移タンパク質を認識する。この理由のため、本発明による好ましい抗体は、例えば選択的および/または特異的にSIMA135と結合するモノクローナル抗体であり、例えば上記抗体は他の転移タンパク質とは結合せず、例えば上記抗体はSIMA135のエピトープを認識する。
【0031】
所望ならば、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、例えば抗体を産生させたポリペプチドまたはペプチドが結合されているマトリックスへの結合およびそこからの溶離により精製され得る。当業者であれば、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の精製および/または濃縮についての免疫学分野では一般的である様々な技術について知っているはずである(Coligan et al.、ユニット9、Current Protocols in Immunology、ワイリー・インターサイエンス、1991、出典明示により援用する)。
【0032】
本発明タンパク質への結合に適切な抗体は、タンパク質の一領域の少なくとも一部分に特異的である。例えば、当業者であれば、タンパク質またはペプチドを用いることにより、本発明の適切な抗体を製造できるはずである。本発明抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のフラグメントが含まれる。
【0033】
本発明は、ヒトおよび動物体の治療的処置として使用される本発明による抗体に関するものであり、本発明はまた、哺乳類において癌細胞による転移を阻害するのに使用される医薬の製造を目的とする本発明抗体に関するものである。
【0034】
ポリクローナル抗体の製法は当業者にはよく知られている(Green et al.、Production of Polyclonal Antisera、Immunochemical Protocols(Manson編)、1〜5頁(ウマナ・プレス、1992);Coligan et al.、Production of Polyclonal Antisera in Rabbits,Rats,Mice and Hamsters、Current Protocols in Immunology、2.4.1項(1992)出典明示により援用する)。
【0035】
モノクローナル抗体の製法もまた慣用的である(Kohler & Milstein、Nature、256:495(1975);Coligan et al.、2.5.1−2.6.7項;およびHarlow et al.、Antibodies: A Laboratory Manual、726頁(コールドスプリングハーバー・パブリッシング、1988)出典明示により援用する)。簡単に述べると、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射し、血清試料を取出すことにより抗体産生の存在を立証し、脾臓を摘出してBリンパ球を得、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを製造し、ハイブリドーマをクローニングし、抗原に対して抗体を生産する陽性クローンを選択し、そしてハイブリドーマ培養物から抗体を単離することにより得られる。モノクローナル抗体は、様々な充分に確立された技術によりハイブリドーマ培養物から単離および精製され得る。上記単離技術には、プロテインAセファロースによるアフィニティー・クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーがある(Coligan et al.、2.7.1−2.7.12項および2.9.1−2.9.3項、Barnes et al.、Purification of Immunoglobulin G(IgG)、Methods in Molecular Biology、第10巻、79−104頁(ウマナ・プレス、1992))。モノクローナル抗体のインビトロおよびインビボ増殖方法は、当業者にはよく知られている。インビトロでの増殖は、所望により哺乳類血清、例えば胎児ウシ血清または微量元素および成長維持補給剤、例えば正常マウス腹膜滲出液細胞、脾臓細胞、骨髄マクロファージが補充されていてもよい、適切な培養培地、例えばダルベッコ修飾イーグル培地またはRPMI1640培地で実施され得る。インビトロでの製造によると比較的純粋な抗体製品が提供され、拡大することにより大量の目的抗体が製造され得る。大規模ハイブリドーマ培養は、エアーリアクター、連続攪拌式リアクターにおける均一懸濁培養、または固定化または包括細胞培養により実施され得る。インビボ増殖は、親細胞と組織適合性のある哺乳類、例えば卵子同系(osyngeneic)マウスへ細胞クローンを注射して、抗体生産腫瘍の増殖を誘発することにより実施され得る。所望により、動物を、注射前に炭化水素、特に油類、例えばプリスチンテトラメチルペンタデカンで初回感作してもよい。1〜3週間後、所望のモノクローナル抗体が動物の体液から採取される。
【0036】
本発明抗体は、「ヒト化」モノクローナル抗体から誘導され得る。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの可変重鎖および軽鎖からのマウス相補性決定領域を、ヒト可変ドメインへ移入し、次いでマウスの対応するフレームワーク領域においてヒト残基を置換することにより製造される。ヒト化モノクローナル抗体から誘導された抗体成分の使用により、マウス定常領域の免疫原性に伴う可能性のある問題は回避される。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングする一般的技術については報告されている(Orlandi et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:3833(1989)、出典明示により援用する)。ヒト化モノクローナル抗体の製造技術については報告されている(Jones et al.、Nature、321:522(1986)、Riechmann et al.、Nature、332:323(1988);Verhoeyen et al.、Science、239、1534(1988);Carter et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992);Sandhu、Crit.Rev.Biotech.、12:437(1992);およびSinger et al.、J.Immunol.、150:2844(1993)、出典明示により援用する)。
【0037】
さらに、本発明抗体は、ヒトモノクローナル抗体から誘導され得る。上記抗体は、抗原負荷に応答して特異的ヒト抗体を生産するように「遺伝子操作が加えられた」トランスジェニックマウスから得られる。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座のエレメントを、内因性重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的とされた破壊を含む胚性幹細胞系から誘導されたマウスの系統へ導入する。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成し得、マウスを使用することにより、ヒト抗体−分泌ハイブリドーマが製造され得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法については報告されている(Green et al.、Nature Genet.、7:13(1994);Lonberg et al.、Nature、368:856(1994)、およびTaylor et al.、Int.Immunol.、6:579(1994)出典明示により援用する)。
【0038】
本発明の抗体フラグメントは、抗体のタンパク質加水分解により、またはフラグメントをコード化するDNAのエシェリキア・コリ(E.coli)における発現により製造され得る。抗体フラグメントは、慣用的方法により全抗体のペプシンまたはパパイン消化により得られる。例えば、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素的開裂により製造され、F(ab')2と称される5Sフラグメントを生じさせ得る。このフラグメントは、チオール還元剤、および所望によるジスルフィド連鎖の開裂から生じるスルフヒドリル基についての遮断基を用いてさらに開裂され、3.5SFab'一価フラグメントを生成し得る。別法として、ペプシンを用いる酵素的開裂により、2種の一価Fab'フラグメントおよびFcフラグメントが直接生成される。これらの方法については報告されている(Goldenberg、米国特許第4036945号および同第4331647号、およびそこに含まれる参考文献、Porter、Biochem.J.、73:119(1959);Edelman et al.、Methods in Enzymology、第1巻、422頁(アカデミック・プレス1967)、およびColigan et al.、2.8.1−2.8.10および2.10.1−2.10.4項)。
【0039】
他の抗体開裂方法、例えば重鎖分離による一価軽−重鎖フラグメントの形成のための重鎖の分離、フラグメントのさらなる開裂、または他の酵素的、化学的、または遺伝学的技術もまた、フラグメントが無傷抗体により認識される抗原に結合する場合には使用され得る。
【0040】
例えば、Fvフラグメントは、VおよびV鎖の会合を含む。この会合は非共有結合であり得る(Inbar et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69:2659(1972))。別法として、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合により結合されるかまたは化学物質、例えばグルタルアルデヒドにより架橋され得る(Sandhu、前出)。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーにより連結されたVおよびV鎖を含む。これらの1本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドにより連結されたVおよびVドメインをコード化するDNA配列を含む構造遺伝子を構築することにより製造される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、それに続いて宿主細胞、例えばエシェリキア・コリ(E.coli)に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドにより単一ポリペプチド鎖を合成する。sFvの製造方法については報告されている(Whitlow et al.、Methods: A Companion to Methods in Enzymology、第2巻、97頁(1991);Bird et al.、Science、242:423(1988)、Ladner et al.、米国特許第4946778号;Pack et al.、Bio/Technology、11:1271(1993)およびSandhu、前出)。
【0041】
抗体フラグメントの別形態は、単一相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、興味の対象である抗体のCDRをコード化する遺伝子を構築することにより得られる。上記遺伝子は、例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体生産細胞のRNAから可変領域を合成することにより製造される(Larrick et al.、Methods: A Companion to Methods in Enzymology、第2巻、106頁(1991))。
【0042】
3.転移性腫瘍を処置し、腫瘍細胞による転移を阻止する方法。
本発明はまた、転移性腫瘍の処置方法を含む。「転移性腫瘍を処置する」とは、腫瘍の転移を予防、遅延または阻止することを意味する。転移性腫瘍は、転移可能である原発部位での腫瘍および二次部位での転移腫瘍の両方を包含する。上記転移性腫瘍は、肺、肝臓、腎臓、乳腺、上皮、甲状腺、白血病、膵臓、子宮内膜、卵巣、子宮頚部、皮膚、結腸およびリンパ系組織などの組織に由来するものであり得る。処置され得る対象は、マウス以外のヒト、イヌ、サル、ウシ等を含む哺乳類対象であり得る。
【0043】
本発明の一実施態様は、対象における転移性腫瘍の処置方法であって、対象に本発明の腫瘍転移阻止抗体の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。本発明の腫瘍転移阻止抗体は、上記で報告されている。好ましい腫瘍転移阻止抗体には、選択的にSIMA135、またはそのフラグメントに結合する抗体が含まれる。
【0044】
腫瘍転移阻止抗体は、単独または医薬上許容される担体と一緒に投与され得る。医薬上許容される担体には、例えば脂肪、油、水、食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、増量剤、分散媒質、細胞培養培地など、またはそれらの組合わせのような受容対象にとって非毒性である溶媒全てが含まれる。
【0045】
本発明によると、有効成分を、慣用的および実践的方法で、例えば溶解、懸濁、乳化、混合、封入、吸収などにより担体と合わせ得、そして必要ならば、合わせた組成物をペレットまたは錠剤に成型し得る。上記手順は、当業者にとって常用のものである。
【0046】
治療上有効である抗体投与量は、病気の状態および他の臨床因子、例えば対象の体重および状態、治療に対する対象の応答、処方物のタイプおよび投与経路により異なる。治療上有効となる化合物の正確な投与量は、当業者により決定され得る。一般規則として、抗体の治療有効用量は、1単位用量形態につき約0.5μg〜約2グラムの範囲であり得る。単位用量形態とは、哺乳類処置用の単位投薬量として適切な物理的個別単位をいい、各単位は、必要とされる医薬用担体と共に所望の治療効果を生じさせるように算出された予め定められた量の活性物質を含有する。本発明方法は、同時または長期間にわたることを前提とした単一および多回投与を包含する。
【0047】
腫瘍転移阻止抗体の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸液、植込みまたは移植を含む、慣用的方法で実施され得る。好ましくは、本発明抗体は、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、動脈内(i.a.)または静脈内(i.v.)注射により患者に投与される。
【0048】
4.哺乳類における癌の診断方法。
本発明はまた、SIMA135の発現を検出することによる、対象における転移性腫瘍の診断方法を含む。
【0049】
転移性腫瘍は、転移可能である原発部位での腫瘍および二次部位での転移腫瘍の両方を包含する。上記転移性腫瘍は、肺、肝臓、腎臓、乳腺、上皮、甲状腺、白血病、膵臓、子宮内膜、卵巣、子宮頚部、皮膚、結腸およびリンパ系組織などの組織に由来するものであり得る。
【0050】
SIMA135の発現は、SIMA135またはSIMA135のフラグメントに結合する抗体を用いることにより検出され得る。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方が使用され得る。
【0051】
一実施態様では、試料を対象から採取し、例えば転移性腫瘍を有する疑いのある組織から生検標本を採取する。一般的に、検定実施前に試料を処理する。使用され得る検定法には、ELISA、RIA、EIA、ウエスタン・ブロット分析、免疫組織学的染色などがある。使用される検定法により、抗原または抗体は、酵素、発蛍光団または放射性同位元素により標識され得る。例えば、Coligan et al.、Current Protocols in Immunology、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド、ニューヨーク、ニューヨーク(1994)およびFrye et al.、Oncogen 4:1153−1157(1987)参照。
【0052】
試料の処理は、SIMA135の検出に使用される検定法により異なり得る。例えば、組織生検の細胞は溶解され得、細胞ライゼートは、例えばウエスタン・ブロット分析で使用される。検定法、例えばホールセルELISA検定法については、細胞を例えばPBSで洗浄し、次いで検定前にPBS中の0.25%グルタルアルデヒドにより固定させ得る。
【0053】
上記方法のいずれかを用いることにより検出される、SIMA135、またはSIMA135のフラグメントの発現を、組織の正常部分における同抗原の発現と比較する。正常組織における発現と比較したときの抗原発現レベルの実質的増加は、転移性腫瘍の存在を示す。実質的増加とは、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%、さらに好ましくは、少なくとも約35%の増加を意味する。
【0054】
別の実施態様では、免疫組織化学を用いることにより、生物体における転移性腫瘍が診断され得る。この実施態様では、試料を生物体から採取し、例えば転移性腫瘍を有する疑いのある組織から生検標本を採取する。試料をスライドに付着させ、本明細書で開示されている通り、SIMA135に結合する抗体と接触させ得る。抗体は、酵素、発蛍光団または放射性同位元素により標識され得る。例えば、Coligan et al.、Current Protocols in Immunology、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(ニュー)参照。SIMA135への抗体の結合後、公知技術の使用により抗体の位置を測定する。異種染色、組織試料全体にわたるSIMA135の広範な発現、および結腸漿膜における悪性腫瘍腺内染色は、転移性癌を示す。
【0055】
5.SIMA135に選択的に結合する抗体およびパッケージング材料を含むキット。
本発明は、SIMA135に結合する抗体およびパッケージング材料を含むキットを提供する。上記キットは、癌の処置および検出に使用され得る抗体の輸送および貯蔵に有用である。具体的には、上記キットは、生物体から得られた組織試料における転移性癌を検出するために研究室における医療関係者により使用され得る。さらに、上記キットは、本発明抗体を含む医薬組成物を処方する場合に医療関係者にとって有用であり得る。
【0056】
パッケージング材料は、抗体にとって保護された環境を提供する。例えば、パッケージング材料は、抗体が汚染されるのを防ぎ得る。さらに、パッケージング材料は、溶解状態の抗体が乾燥するのを防ぎ得る。
【0057】
パッケージング材料用に使用され得る適切な材料の例としては、ガラス、プラスチック、金属などがある。上記材料は、抗体とパッケージング材料の付着を回避するためシラン処理され得る。
【0058】
6.SIMA135、またはSIMA135のフラグメントに選択的に結合する抗体、および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
本発明の医薬組成物は、医薬組成物として処方され、選択された投与経路、すなわち経口または非経口、静脈内、筋肉内、局所または皮下経路に適合化された様々な形態で動物宿主、例えばヒト患者に投与されるSIMA135に結合する抗体を含むものである。
【0059】
すなわち、抗体は、例えば医薬上許容される賦形剤、例えば不活性希釈剤または同化性可食担体と組合わせて、経口的に全身投与され得る。それらは、ハードまたはソフトゼラチンカプセルに封入され得るか、錠剤に圧縮され得るか、または直接患者の食餌療法の食べ物に組込まれ得る。経口治療投与については、抗体は、1種またはそれ以上の賦形剤と組合わされ、経口摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ、カプセル剤、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハーなどの形態で使用され得る。上記組成物および製品は、少なくとも0.1%の割合で抗体を含むべきである。勿論、組成物および製品のパーセンテージは、変動し得るものであり、好都合には所定の単位用量形態の重量の約2〜約60%の範囲であり得る。上記の治療上有用な組成物における1種またはそれ以上の抗体の量は、有効投薬レベルが達成されるように設定される。経口投与の場合、本発明組成物は、好ましくはゼラチンカプセルで投与され得る。
【0060】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセル剤などはまた、以下のものを含み得る:結合剤、例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸など;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、および甘味料、例えばしょ糖、果糖、乳糖またはアスパルテームまたは香味料、例えばペパーミント、冬緑油またはチェリー香味料が添加され得る。単位用量形態がカプセルであるとき、それは、上記タイプの材料に加えて、液体担体、例えば植物油またはポリエチレングリコールを含み得る。様々な他の材料は、コーティングとして、または固体単位用量形態の物理的形態を他の形で修飾するように存在し得る。例えば、錠剤、丸薬またはカプセル剤は、ゼラチン、蝋、セラックまたは糖などでコーティングされ得る。シロップまたはエリキシルは、一抗体または複数抗体、甘味料としてしょ糖または果糖、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、染料および香味料、例えばチェリーまたはオレンジフレーバーを含み得る。勿論、単位用量形態の製造に使用される材料はいかなるものでも、医薬上許容され、使用される量では実質的に非毒性であるべきである。さらに、一抗体または複数抗体は、持続放出製品および装置中に組込まれ得る。
【0061】
本発明の一抗体または複数抗体はまた、注入または注射により静脈内または腹腔内投与され得る。一抗体または複数抗体の溶液は、水で製造され得、所望により非毒性界面活性剤と混合してもよい。分散液はまた、グリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物および油類で製造され得る。通常の貯蔵および使用条件下では、これらの製品は、微生物の増殖を阻止するための保存剤を含む。
【0062】
注射または注入に適切な医薬用量形態は、所望によりリポソームに封入されていてもよい、滅菌注射可能または注入可能溶液または分散液のその場での製造に適合化された一抗体または複数抗体を含む滅菌水溶液または分散液または滅菌粉末を含み得る。いかなる場合においても、最終的な投薬形態は、製造および貯蔵条件下において無菌および流動状態で、安定しているべきである。液体担体または媒体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または液体分散媒質であり得る。適切な流動性は、例えばリポソームの形成、分散液の場合に要求される粒子サイズの維持または界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより阻止され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝液または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。注射可能組成物の吸収性は、吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用により延長され得る。
【0063】
滅菌注射可能溶液は、上記で列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒中に必要とされる量の一抗体または複数抗体を組込み、必要に応じ、続いて滅菌濾過することにより製造される。
【0064】
7.細胞によるSIMA135の生産を調節する薬剤の同定方法
本発明は、細胞によるSIMA135の生産を増加または減少させる薬剤の同定方法を提供する。一般的に、本方法では、試験細胞を候補薬剤と接触させ、試験細胞によるSIMA135の生産が、候補薬剤と接触させなかった対照細胞に対して増加しているか減少しているかを測定する。
【0065】
試験細胞および対照細胞によるSIMA135生産は、多くの当業界で認められている方法の使用を通じて検出され得る。上記方法の例としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、蛍光標識抗体の使用などを含む免疫学的方法がある。
【0066】
本方法に従ってスクリーニングされ得る候補薬剤の多くの例は、アメリカ合衆国薬局方、国民医薬品集、またはそれらの補遺に記載されている。簡単に述べると、候補薬剤の例には、炭化水素、環状有機分子、二環式有機分子、アリール有機分子、アルキル有機分子などがある。Merck Manual、メルク・リサーチ・ラボラトリーズ、ホワイトハウス・ステーション、ニュージャージー、第17版、BeersおよびBerkow 1999、Merck Index、メルク・リサーチ・ラボラトリーズ、ホワイトハウス・ステーション、ニュージャージー、第13版、2001。
【0067】
転移性HEp3細胞、例えば以下の項で例として挙げられているものは、本発明方法において試験細胞および対照細胞として使用され得る。しかしながら、本方法は、SIMA135を通常または組換え技法を通じて生産する細胞によっても実施され得る。例えば、SIMA135の生産を行う発現構築物は、発現カセット導入前にはSIMA135を生産しない細胞へ導入され得る。次いで、形質転換細胞を本発明方法内で使用することにより、SIMA135生産を調節する薬剤が同定され得る。SIMA135の存在および量の検出についての上記診断方法を上記細胞系で使用することにより、試験および対照細胞によるSIMA135生産が検定され得る。
【0068】
本発明方法はまた、インビボでも実施され得る。以下の項で例として挙げている通り、候補薬剤は試験動物に投与され得る。組織試料は試験動物から入手され得、組織試料中の細胞によるSIMA135生産を、対照動物から得た組織試料中の細胞によるSIMA135生産と比較させ得る。対照動物の場合に対する試験動物によるSIMA135生産の増加は、候補薬剤がSIMA135生産を増加させることを示している。対照動物の場合に対する試験動物によるSIMA135生産の減少は、候補薬剤がSIMA135生産を減少させることを示している。SIMA135の検定法は、上記の診断に関する項で与えられた分析方法のいずれかにより決定され得る。多様な動物が本発明方法の範囲内で使用され得る。上記動物の例には、ウサギ、ラット、マウス、サルなどがある。
【0069】
本発明方法は、インビトロで実施され得る。例えば、試験細胞および対照細胞を組織培養で増殖させ得る。これにより、候補薬剤を試験細胞とインビトロで接触させ得る。次いで、試験細胞によるSIMA135生産を、上記要領で対照細胞によるSIMA135生産と比較することにより、候補薬剤が細胞によるSIMA135生産を増加させるかまたは減少させるかが測定され得る。
【0070】
上記インビトロおよびインビボ方法により、転移を促進および最小化または阻止する試験薬剤の能力が測定される。促進を測定することにより、薬剤は、癌誘発または促進因子として同定される。この測定は、癌誘発因子の迅速な同定についての実践的適用性を有する。最小化または阻止の測定により、薬剤は癌阻害因子として同定される。この測定は、抗癌剤の同定についての実践的適用性を有する。
【実施例】
【0071】
実施例1
細胞系およびハイブリドーマ
ヒト子宮頚腺癌ヒーラ、線維肉腫HT1080、結腸腺癌DLD−1およびSW480、乳腺癌MCF7、前立腺癌PC−3、前立腺癌リンパ節転移LNCaP、肺癌A549および腎横紋筋肉腫様腫瘍G401細胞を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ロックビル、メリーランド)から入手した。ヒト肝癌HuH7およびHLE、および胃癌MKN45およびSTKM−1細胞は、ドクターPeter Vogt(ザ・スクリップス・リサーチ・インスティテュート、ラホーヤ、カリフォルニア)により提供され、乳腺癌MDA−MB−231細胞は、ドクターLiliana Ossowski(マウント・サイナイ・スクール・オブ・メディシン、ニューヨーク)により提供された。ヒト類表皮癌HEp3細胞を、ニワトリ胚の漿尿膜(CAM)で連続継代された固体腫瘍から入手した(Testa、1992;Brooks et al.、1993)。HEp3細胞の転移性変異型、M+HEp3を使用前に20日未満の期間培養した。低転移性変異型、M−HEp3を、使用前に少なくとも80日間培養状態で維持した。ヒト微小血管内皮細胞(HEC)および皮膚線維芽細胞(HDF)を、クローンティクス(サンディエゴ、カリフォルニア)から入手し、それぞれEGM−2 MVおよびFGM−2培地(クローンティクス)で維持した。癌細胞系を、10%FBS(ハイクローン、ローガン、ユタ)、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび非必須アミノ酸(インビトロゲン)を補ったDMEM(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア)中で単層培養物として維持し、37℃で加湿5%CO雰囲気中において成長させた。MoAb41−2を生産するハイブリドーマを、以前に報告されたサブトラクティブ免疫方法(Brooks et al.、1993)により作製した。mAbのハイブリドーマ培養および精製を、標準手順を用いてザ・スクリップス・リサーチ・インスティテュートのザ・プロテイン・アンド・ヌクレイック・アシッズ・コア・ファシリティーにより実施した。
【0072】
実施例2
試薬
プロテアーゼ阻害剤、正常マウスIgG、抗FLAG M2 mAb、DAB試薬およびギルヘマトキシリンを、シグマ(セントルイス、ミズーリ)から購入した。逆転写およびPCR試薬およびpCR−II Topoベクターをインビトロゲンから購入した。PP2をカルビオケム(ラホーヤ、カリフォルニア)から入手した。
【0073】
実施例3
タンパク質精製、ペプチド配列決定およびタンパク質分析
非標識または35S−標識HEp3細胞(5×10)からのライゼートにおいて免疫沈降を実施した。トラン35S−標識(100μCi/ml;ICN、コスタメサ、カリフォルニア)を含むメチオニン/システイン不含有DMEM中で代謝性標識を一晩実施した。細胞を、PBSで充分に洗浄し、次いで0.1Mのトリス(pH8.0)、0.1%トリトンX−100、150mMのNaCl、5mMのEDTA、10μMのトランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド(4−グアニジノ)ブタン、20μg/mlの大豆トリプシン阻害剤および25μg/mlのアプロチニンを含む緩衝液中で溶解した。ライゼートを、4℃で30分間、プロテインG−セファロース(ファルマシア・バイオテック、ピスキャタウェイ、ニュージャージー)に対して澄明化し、次いで、20μgのmAb 41−2または対照としてnmIgGと4℃で一晩インキュベーションした。プロテインG−セファロースを用いて、免疫複合体を沈澱させ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析前に還元性SDSローディング緩衝液中で沸騰させることにより複合体を変性させた。35S−標識タンパク質については、ゲルを乾燥し、−80℃でフィルムに露出した。他方タンパク質をポリビニリジンジフルオリド(PVDF)膜(ミリポア、ベッドフォード、マサチューセッツ)へ移した。135kDaでの優勢なクーマシー染色バンドを切除し、次いでトリプシンで消化した。生成したペプチドを高圧液体クロマトグラフィーにより分離し、プロサイス494タンパク質シーケンサー(アプライド・バイオシステムズ、インコーポレイテッド、フォスターシティー、カリフォルニア)で配列決定した。トリプシン消化およびペプチド配列決定を、ザ・スクリップス・リサーチ・インスティテュートのザ・プロテイン・アンド・ヌクレイック・アシッズ・コア・ファシリティーにより実施した。ペプチド配列を用いることにより、米国立生物工学情報センター(NCBI)ウェブサイトで利用可能なアルゴリズムを用いてGenBankデータベースを検索した。Prositeデータベース(Falquet et al.、2002)、SMARTアルゴリズム(Schultz et al.、1998)、PSORTアルゴリズム(NakaiおよびKanehisa、1992)およびNetPhos2.0アルゴリズム(Blom et al.、1999)を用いて、完全SIMA135タンパク質配列を、構造ドメイン、細胞プロセッシングシグナルおよび共通翻訳後修飾モチーフについて解析した。
【0074】
実施例4
発現構築物および一時的トランスフェクション
真核生物発現ベクターpME18S−FL3(GenBank受入番号AK026622)におけるSIMA135 cDNAは、日本国NEDOヒトcDNA配列決定プロジェクトの一環として作製され、ドクターHiroko Hata(東京大学、医科学研究所、ウイルス学部門)のご好意で提供された。親構築物の停止コドンの直前にFLAGエピトープをコード化する配列(DYKDDDDK)を配置するPCRによりSIMA135FLA Gin構築物を作製した。両構築物を配列決定した。製造業者により記載された要領で、スーパーフェクト試薬(キアゲン、バレンシア、カリフォルニア)を用いて、ヒーラ細胞(4×10)を、SIMA135またはSIMA135FLAGin発現構築物により一時的にトランスフェクションした。10mMのトリス(pH8.0)、150mMのNaCl、1%のトリトンX−100、5mMのEDTAおよび1×完全ミニEDTA不含有プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ、インディアナポリス、インディアナ)を含む氷冷緩衝液中で細胞を溶解した。10分間14000rpmでの遠心分離により不溶性材料を除去した。
【0075】
実施例5
HEp3細胞からのSIMA135 cDNAのクローニング
RNeasyキット(キアゲン)を用いて全RNAを単離し、その2μgを、スーパースクリプトII逆転写酵素を用いる逆転写反応における鋳型として用いた。生成したcDNA1μgにおいて、プライマーTCCCCACCGTCGTTTTCC(配列番号2)およびGGTTAGGAACACGGACGGGTG(配列番号3)(GenBank受入番号AK026622に基いて設計)およびプルーフリーディング酵素プラチナPfx DNAポリメラーゼを用いることによりPCRを実施した。PCRサイクリング条件は、94℃で3分間の後、94℃を30秒間、55℃を30秒間および72℃を150秒間を1サイクルとして30サイクル、次いで最後の72℃伸長は10分間であった。PCR産物を、ゲル精製(キアゲン)し、プラチナTaq DNAポリメラーゼを用いてアデノシンを付加し、次いでpCR−II Topoベクターでクローン化し、配列決定した。
【0076】
実施例6
免疫蛍光
SIMA135FLAGin発現構築物により一時的にトランスフェクションしたヒーラ細胞、およびHEp3細胞を、カバーガラス上に置いた。37℃で48時間インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、次いで2%ホルムアルデヒドに固定した。抗FLAG mAbとインキュベーションされるヒーラ細胞は、透過性化されていないかまたは室温で5分間PBS中0.5%のトリトンX−100中でインキュベーションすることにより透過性にされていた。両細胞型ともPBS中5%のBSAで遮断した。ブロッキングバファー中でmAb 41−2(5μg/ml)または抗FLAG M2 mAb(4μg/ml)と4℃で一晩インキュベーションした後、細胞をPBSで洗浄し、次いでAlexa Fluor546コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(2μg/ml)(モレキュラー・プローブズ)とインキュベーションした。バイオラッド1024MRC2走査型共焦イメージングシステムを用いて、標識細胞を視覚化および撮影した。
【0077】
実施例7
ノーザン・ブロット分析
ヒト12レーン多組織ノーザン・ブロット(クロンテック)を、68℃のUltraHyb溶液(アンビオン)中で一晩SIMA135 cDNAの[α−32P]dCTP標識(アンビオン)EcoRI/HincII DNA挿入フラグメントとハイブリダイゼーションした。ブロットを、68℃で0.1×SSC、0.1%SDSの最終ストリンジェンシーとなるまで洗浄し、次いで−80℃でフィルムに露出した。ブロットをβ−アクチンcDNAで再プロービングすることにより、各レーンにおけるRNAローディングのコンシステンシーを測定した。
【0078】
実施例8
ウエスタン・ブロット分析
細胞ライゼート、血清不含有条件培地および免疫沈降タンパク質を、8%SDS−ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動により分離し、次いでニトロセルロース膜(ミリポア)に移した。膜をPBS中5%の脱脂粉乳で遮断し、次いで4℃で一晩、mAb 41−2(2μ/ml)、抗FLAG M2 mAb(0.8μg/ml)または抗ホスホチロシンmAb(1μg/ml;アップステート・バイオテクノロジー、レークプラシッド、ニューヨーク)とインキュベーションした。充分な洗浄後、膜を室温で2時間ヤギ抗マウスIgG(0.16μg/ml、ピアス、ロックフォード、イリノイ)とインキュベーションし、免疫反応性バンドを強化化学発光(ピアス)により検出した。
【0079】
実施例9
生化学的特性確認手順
N−結合グリカンの除去については、M+HEp3細胞およびSIMA135FLAGin発現構築物により一時的にトランスフェクションしたヒーラ細胞からのライゼート(50μl)を、100℃で10分間、0.5%SDS、1%β−メルカプトエタノール中で変性させて還元し、次いで37℃で45分間、PNGアーゼF(ニューイングランド・バイオラブズ、ベヴァリー、マサチューセッツ)とインキュベーションした。SIMA135のチロシンリン酸化の基礎レベルの分析については、HEp3およびヒーラ(陰性対照として)細胞の準飽和レベルの培養物を、37℃で30分間、50mMのNaFおよび1mMのNaVOを含む血清不含有DMEMとインキュベーションし、次いで氷冷PBSで洗浄した。Srcキナーゼファミリーリン酸化の阻害については、HEp3細胞を、NaFおよびNaVOを含まない血清不含有DMEM中でPP2(50μM)と共に37℃で30分間培養した。次いで、細胞を、50mMのトリス(pH7.4)、150mMのNaCl、1%トリトンX−100、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド、1mMのベンズアミジン、25μl/mlのアプロチニン、25μg/mlのロイペプチン、50mMのNaFおよび1mMのNaVOを含む氷冷緩衝液に溶解した。不溶性材料を10分間14000rpmでの遠心分離により除去した。1μgのmAb 41−2またはnmIgG(陰性対照として)を用いて、300μgの細胞ライゼートについて上記要領により免疫沈降を実施した。可溶性SIMA135の存在について検定するため、飽和密度に近づいたHEp3細胞を、PBSで3回洗浄し、次いで血清不含有条件培地中で24時間インキュベーションした。培地を集め、4℃および10000gでの遠心分離にかけ、次いで分子重量カットオフが30000kDaであるミクロン遠心分離フィルター(ミリポア)を用いて10倍濃縮した。細胞ライゼートを上記要領で集めた。
【0080】
実施例10
免疫組織化学
3患者からの既採取ヒト腺癌結腸組織試料からのクリオスタット薄片(6μm)を、15分間亜鉛−ホルマリンに固定し、簡単にPBSですすぎ、次いで、3%BSAを含むPBS中でインキュベーションすることにより非特異的結合部位を遮断した。mAb41−2(5μg/ml)を4℃で一晩適用した。特異的抗体結合は、ビオチンコンジュゲート抗マウス抗体(ピアス)、次いでDAB試薬を用いて可視化されたペルオキシダーゼコンジュゲートニュートラアビジン(ピアス)の添加により検出された。ギルヘマトキシリンを用いて薄片を対比染色した。
【0081】
実施例11
mAb41−2は、高転移性ヒト腫瘍HEp3細胞において高レベルで発現された135kDa抗原を認識する
抗体mAb41−2により認識される抗原を同定および特性確認した。mAb 41−2により認識される抗原の意義の決定における最初の段階として、非還元的条件下で電気泳動させた高転移性(M)および低転移性(M)HEp3細胞から調製したライゼート(20μg)でmAb41−2を用いてウエスタン・ブロット分析を実施した。サブトラクティブ免疫により生成された、モノクローナル抗体41−2(mAb)により両細胞型において約135kDaの単一バンドが検出された。mAb41−2の生成で採られたサブトラクティブ免疫方法と合致することに、免疫反応性タンパク質はMHEp3細胞よりもMHEp3細胞における方が高レベルで発現された。高転移性(M)および低転移性(M)HEp3細胞から調製したライゼートの平行クーマシー染色ゲルは、全体的タンパク質パターンおよび内容物がMおよびMHEp3細胞抽出物間で区別できなかったことを立証している。mAb41−2免疫反応性の差異は、2種の細胞系間における同族抗原の発現レベルにおける著しい差異を示す。
【0082】
実施例12
転移性HEp3細胞からのmAb41−2により認識される抗原の同定
精製mAb41−2を用いて、MHEp3細胞から実施例11の抗原を免疫沈降させた。mAb41−2または正常マウスIgGによりMHEp3細胞から免疫沈降した35S標識タンパク質を、還元的条件下においてSDS−PAGEで分析した。ゲルを乾燥し、一晩−80℃でフィルムに露出した。放射性標識HEp3細胞から免疫沈降した主要タンパク質は、約135kDaの分子量を有していた。これは、実施例11で検出された抗原の分子量と一致していた。免疫沈降したタンパク質をPVDF膜に移した、非標識HEp3細胞を用いた平行実験では、135kDaタンパク質バンドを切除し、トリプシン消化にかけ、分離したフラグメントをN−末端から配列決定した。3つの主要ペプチド配列が得られた。GenBank非重複タンパク質データベースの検索結果は、ペプチド配列の各々が、未公開cDNA登録AK026622から翻訳された、受入番号BAB15511の未公開登録の理論的配列と正確またはほぼ正確なマッチ(対合)を有することを示していた。
【0083】
ペプチド1 FEIALPRESQITVLG(I)KXGT 配列番号4
BAB15511 FEIALPRESNITVLIKXGT 配列番号5
ペプチド2 XXXXIPGSTTNPE 配列番号6
BAB15511 VEYYIPGSTTNPE 配列番号7
ペプチド3 XYXLQVPSDILH 配列番号8
BAB15511 SYSLQVPSDILH 配列番号9
【0084】
サブトラクティブ免疫(subtractive immunization)HEp3結合(associated)135kDaタンパク質(SIMA135)と命名された、同定されたタンパク質の完全配列を図1に示す。SIMA135がmAb41−2により特異的に認識されるタンパク質と同一であることを確認するため、HEp3細胞、非トランスフェクションヒーラ細胞およびSIMA135cDNAで一時的にトランスフェクションされたヒーラ細胞からのライゼートでウエスタン・ブロットを実施した。ウエスタン・ブロット分析では、HEp3細胞、モックトランスフェクションヒーラ細胞およびSIMA135 cDNAで一時的トランスフェクションしたヒーラ細胞から非還元的条件下で電気泳動させた全細胞ライゼート(25μg)をmAb41−2でプロービングした。mAb41−2は、HEp3細胞およびSIMA135cDNAにより一時的トランスフェクションしたヒーラ細胞に存在するが、非トランスフェクションヒーラ細胞には存在しない同一135kDaタンパク質バンドと反応した。追加的確証を提供するため、SIMA135 mRNAのタンパク質エンコーディング領域を、逆転写−PCRによりHEp3細胞からクローン化した。この方法により作製された2クローンのDNA配列解析により、SIMA135mRNAがこれらの細胞により発現されることを確認した。4つのヌクレオチド差異が、GenBank登録AK026622およびHEp3細胞から得られたSIMA135配列間で確認された:ヌクレオチド1684G→A、1847T→C、2236G→Aおよび2590G→A。第二トランジションはサイレントであり、他はアミノ酸変化525Arg→Gln、709Gly→Aspおよび827Ser→Asnをそれぞれもたらした。
【0085】
実施例13
SIMA135構造的特徴
SIMA135タンパク質配列は、836アミノ酸(配列番号1−図1)を含み、分子量が92.9kDaであると推定される。配列解析により以下の構造的特徴が確認された。推定アミノ末端シグナルペプチドについては、Ala29の後で開裂が行なわれると予測される。この特徴はペプチド1の配列と一致することから、成熟SIMA135が予測分子量90.1kDaであり、Phe30から始まることを示している。残基666〜686(図1で四角に囲まれている)に及ぶ潜在的貫膜ドメインは、そのカルボキシ末端が細胞内に位置すべくSIMA135を配向させると予測される(Hartmann et al.、1989)。N−グリコシル化についての12の共通モチーフは、図1に示されている(indicted)。共通1タイプパルミチル化モチーフ(IICCV)(Hansen et al.、1999)は、残基687〜691に位置する。他のタンパク質ではSrc相同性(SH)3ドメインへの結合を仲介することが示されていた(Pawson1995、Mayer、2001)5個のPXXPモチーフが存在する(図1)。5個のチロシン残基(図1では円で囲まれている)はリン酸化部位であり得る。2個の空間的に近いチロシン残基(Tyr734およびTyr743)は、SH2ドメイン結合についての共通モチーフ(YXXL/I)に存在する(Songyang et al.、1993)。SIMA135は、GenBank非重複データベースにおける他の確認されたタンパク質との相同性を欠いていた。しかしながら、SIMA135は、報告された核酸配列の翻訳により測定されたところによると(Scherl-Mostageer et al.、2001)、理論的タンパク質CDCP1と高い相同性を実際に有していた。さらに、残基221〜348および417〜544に及ぶ、SIMA135タンパク質の2領域は、CUB(補体タンパク質サブコンポーネント1r/C1s、ウニ(urchin)胚成長因子および骨(bone)形態形成タンパク質1)ドメインとの相同性の低いことが確認された(BorkおよびBeckmann、1993)。これらのドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用の仲介において作用すると報告されている(ChenおよびWallis、2001;Sieron et al.、2000)。残基545〜660に及ぶScherl-Mostageerおよび共同研究者により報告された第3の推定CUBドメイン(Scherl-Mostageer et al.、2001)は、SIMA135アミノ酸配列およびCDCP1についての理論的アミノ酸配列を走査するのに我々が使用した検索アルゴリズムの相同性検出閾値より下であった。
【0086】
実施例14
正常および悪性細胞および組織におけるSIMA135の発現パターン
32P標識SIMA135 cDNAプローブでプロービングした12の正常ヒト組織からのポリARNA(1レーンにつき1μg)のノーザン・ブロット分析を実施した。β−アクチン mRNAのレベルは、ローディングの尺度として示されている。12の正常ヒト組織におけるSIMA135 mRNAの発現パターンを、32P標識2.8kb SIMA135 cDNAプローブとのハイブリダイゼーションによるノーザン・ブロット分析により調べた。約6.0kbのバンドは、骨格筋および結腸において非常に高レベルで検出され、腎臓、小腸、胎盤および肺では低い発現レベルであった。〜6.0kbでのほとんど検出できないシグナルは、末梢血白血球に存在した。さらに、約3.3kbでのかなり弱いシグナルが、骨格筋、結腸、胎盤および肺に存在した。SIMA135 mRNAは、脳、心臓、胸腺、脾臓または肝臓からは検出されなかった。CDCP1 cDNAおよびゲノム配列とSIMA135のアラインメントに基くと(データは示さず)、ノーザン・ブロット分析により検出された2つのSIMA135転写物は、SIMA−135 3'UTR内の選択的ポリアデニル化シグナルの使用により生じる可能性が非常に高いと思われる。長い、発現レベルの高い転写物はさらなる3'共通ポリアデニル化シグナル(ヌクレオチド5950)の使用により生じたと考えられ、短い、発現レベルの低い転写物はヌクレオチド3186に位置する有効性が劣る変異型ポリアデニル化シグナルの使用により生じたと思われる。また、これらの変異型転写物がSIMA135プレ−mRNAの選択的スプライシングから生じる可能性もある。
【0087】
mAb41−2とプロービングする16ヒト細胞系、14ヒト腫瘍細胞系および2正常ヒト細胞系、におけるSIMA135タンパク質発現を、非還元的条件下でのウエスタン・ブロット分析により分析し、その際等量の細胞ライゼートタンパク質(20μg)を各細胞系について電気泳動させた。SIMA135は、転移性HEp3細胞で最も高度に発現され、前立腺癌細胞系PC3、および結腸癌細胞系DLD−1の場合も高レベルの発現性を示した。線維肉腫細胞系HT1080、胃癌細胞系MKN45およびSTKM−1、結腸癌細胞系SW480および非転移性前立腺癌細胞系LNCaPでは中レベルの抗原が検出された。2肝臓癌細胞系、2乳癌細胞系、肺癌細胞系A549および腎臓横紋筋肉腫様腫瘍細胞系G401では低レベルのSIMA135が検出された。SIMA135は、正常なヒト微小血管内皮細胞および皮膚線維芽細胞では全く検出され得なかった。多くのヒト腫瘍細胞系では様々なレベルのSIMA135タンパク質が発現され、2種の正常ヒト細胞型は上記タンパク質を発現しなかった。
【0088】
実施例15
SIMA135は、細胞表面、リン酸化糖タンパク質である。
免疫細胞化学を用いて、HEp3細胞、および同じくSIMA135発現構築物で一時的にトランスフェクションしたヒーラ細胞におけるSIMA135の細胞位置を測定した。発現構築物は、SIMA135タンパク質のカルボキシ末端後に融合したFLAGエピトープを含んでいた。mAb41−2とインキュベーションしたHEp3細胞は、原形質膜での強い染色を示した。FLAG標識SIMA135により一時的にトランスフェクションしたヒーラ細胞もまた、mAb41−2とインキュベーションしたとき類似した強い膜染色を示した。さらに、細胞内に位置するFLAG標識への抗体の接近を可能とするために、0.5%トリトンX−100を用いて透過性にされ、抗FLAGmAbとインキュベーションされた一時的トランスフェクションヒーラ細胞は、抗FLAGエピトープmAbとインキュベーションしたときに強度の膜染色を示したが、非透過性の細胞では、抗FLAGmAbによる染色が低度またはほぼバックグラウンドに近かったので、SIMA135カルボキシ末端は細胞内にあるものとして測定された。非トランスフェクションヒーラ細胞は、mAb41−2または抗FLAGエピトープmAbとインキュベーションしても本質的に染色されなかった。これらのデータにより、SIMA135の予測される細胞表面位置およびI型配向が確認された。また、SIMA135−FLAG標識発現構築物で一時的にトランスフェクションしたヒーラ細胞においてmAb41−2および抗FLAG mAbで観察された染色の一致により、SIMA135がmAb41−2についての標的抗原であることがさらに確認された。
【0089】
成熟SIMA135の理論的分子量は90.1kDaである。しかしながら、mAb41−2により検出されたタンパク質の見かけ上の分子量は135kDaであった。SIMA135FLAG標識発現構築物により一時的にトランスフェクションされたヒーラ細胞からの細胞ライゼートを、酵素活性についての最適条件下においてN−グリコシダーゼFで処理することにより、分子量の差異がN−グリコシル化に因るものか否かを判定した。SIMA135FLAGin発現構築物で一時的にトランスフェクションされたヒーラ細胞からの未処理(−)およびN−グリコシダーゼF(PNGアーゼF)処理(+)ライゼートの抗FLAGエピトープmAbを用いた還元的条件下でのウエスタン・ブロット分析によりタンパク質を調べた。SIMA135によるバンドが示されている。非特異的交差反応性バンドは80kDaで現われている。N−グリコシダーゼF処理により、135kDaでのSIMA135タンパク質バンドは消失し、約95〜105kDaの広い低分子量バンドと置換わった(データは示さず)。また、MHEp3細胞のライゼートを、mAb41−2により免疫沈降させ、N−グリコシダーゼFで処理した。この方法に従って検出されたタンパク質もまた、明らかに類似した分子量の減少を示した。従って、見かけ上の分子量が30〜40kDaまでのSIMA135は、N−グリコシル化に因るものであり、このタンパク質の細胞外領域における多数の共通グリコシル化部位と一致していた(図1、配列番号1)。
【0090】
SIMA135の細胞内領域は、5個のチロシン残基を含んでいた(図1)。抗ホスホチロシン抗体による還元的条件下でのウエスタン・ブロット分析を、mAb41−2によりHEp3細胞ライゼートから免疫沈降したタンパク質で実施することにより、これらの残基のいずれかがリン酸化されているか否かを判定した。HEp3およびヒーラ(陰性対照)細胞ライゼートからの免疫沈降は、正常マウスIgG(nmIgG)またはmAb41−2により実施された。免疫沈降タンパク質を、抗ホスホチロシン抗体(抗−P−Tyr)およびmAb41−2でプロービングすることにより、リン酸化および全SIMA135の存在がそれぞれ示された。細胞ライゼートタンパク質をmAb41−2により免疫沈降させた。ライゼートを、未処理(−)または30分間PP2(50μM)と37℃でインキュベーションした(+)HEp3細胞から調製した。抗ホスホチロシン抗体により、mAb41−2でHEp3細胞から免疫沈降する135kDaのタンパク質が検出された。免疫沈降タンパク質をmAb41−2でプロービングしたとき、同一タンパク質バンドが検出された。また、ウエスタン・ブロット分析を、mAb41−2でヒーラ細胞ライゼートから免疫沈降したタンパク質、および対照として正常マウスIgGによりHEp3細胞ライゼートから免疫沈降したタンパク質について実施した。免疫沈降タンパク質は両方とも、抗ホスホチロシン抗体またはmAb41−2のいずれでプロービングしても免疫反応性を示さなかったことから、HEp3細胞により観察された免疫反応性の特異性が立証された。SIMA135チロシンリン酸化におけるSrcキナーゼファミリー構成員の関与について、PP2、Srcファミリー選択的チロシンキナーゼ阻害剤を用いて調べた(Hanke et al.、1996)。mAb41−2によりHEp3細胞ライゼートから免疫沈降したタンパク質の抗ホスホチロシン抗体によるウエスタン・ブロット分析は、PP2で30分間処理されたHEp3細胞では、未処理HEp3細胞からのタンパク質と比べてSIMA135チロシンリン酸化レベルが顕著に低下(〜75%)していることを示した。同一免疫沈降タンパク質のmAb41−2を用いたウエスタン・ブロット分析は、ほぼ等量のSIMA135タンパク質が膜上の両レーンに存在することを示していた。これらのデータは、Srcキナーゼファミリー構成員が、HEp3細胞においてSIMA135のチロシンリン酸化中に作用することを示唆していた。
【0091】
多くの内在性細胞表面タンパク質、例えばc−met(Wajih et al.、2002)およびCD44(Goebeler et al.、1996)もまた、可溶性分子として生産される。mAb41−2でプロービングするウエスタン・ブロット分析を用いて、HEp3細胞がSIMA135の可溶性形態を生産するか否かを調べた。HEp3細胞培養物をPBSで充分に洗浄し、次いで血清不含有(SF)培地と20時間インキュベーションした。条件培地(CM)を採取し、遠心分離により細胞物質を除去し、次いで培地を10倍に濃縮した。抗体mAb41−2により、HEp3 SFCMにおいて約110kDaの免疫反応性バンドが検出された。HEp3ライゼートからの細胞に結合しているSIMA135は、135kDaで検出された。対照的に、非トランスフェクションヒーラ細胞は、SIMA135を生産せず、ライゼートまたは濃縮SFCMのいずれにおいても免疫反応性バンドを全く生じさせなかった。これらのデータは、HEp3細胞がSIMA135の可溶性形態を放出し、可溶性形態はより低分子量の免疫反応性タンパク質として存在することを示している。
【0092】
実施例16
正常および癌結腸におけるSIMA135の発現
免疫組織化学分析を実施することにより、正常および癌結腸におけるSIMA135のインビボ局在性を測定した。薄片(6μm)を、一次抗体としてmAb41−2で染色した。代表的正常結腸粘膜は、SIMA135の上皮発現を示す(カラー写真では赤−褐色、示さず)。結腸癌は、SIMA135の不均一で広範な発現を示す。SIMA135は、結腸漿膜における浸潤性悪性腺により発現される。SIMA135は、結腸漿膜における排出血管の管腔内における悪性上皮細胞により発現される。正常な結腸粘膜では、SIMA135は、それが結腸管腔の内側を覆う細胞の管腔および基底表面、および腺陰窩の内側を覆う細胞の先端表面に均一に存在する上皮細胞により独占的に発現された(データは示さず)。陰窩の杯細胞内容物および腺管腔の粘膜における強度染色の存在は、SIMA135が結腸上皮細胞により可溶性形態で生産されるという考えを裏付けている。結腸癌標本では、SIMA135は、悪性腺内の粘膜にある程度焦点強調部分を伴いながら広範で不均一に発現された。浸潤性癌細胞群の中には、基底、先端および外側膜上並びに腺粘膜内におけるSIMA135の存在を示す多量に染色されたものもあった。結腸漿膜深部および排出血管内の癌細胞はSIMA135抗原について強い陽性であることが多いことから、悪性の高い、浸潤性腺と強度染色を関連付ける明確な傾向があった。一次抗体ではなく二次抗体とインキュベーションした対照薄片は、染色されなかった。
【0093】
実施例17
ヒーラ細胞についての上記トランスフェクション手順に従って、7種の異なる細胞系を用いることにより、SIMA135mRNAの発現を試験およびモニターした。これらの細胞系のうち、クローン番号3は、適切な塩基対シグナルを生じた。
【0094】
これらの細胞系のインビトロ試験における輸送、SCIDマウスにおける転移および腫瘍形成およびSCIPマウスにおける二次臓器への転移増殖能力についても試験した。クローン3は、多孔質膜を通って、およびインビボで脱離および移動し、二次臓器へ転移増殖できることが測定された。これらの結果は、SIMA135が、転移を支配する鍵を握る中心因子であることを立証している。形質転換クローン3番細胞はまた、悪性細胞の転移を促進または阻止/最小化する薬剤を同定するための細胞系として有用である。
【0095】
上記で概説したトランスフェクション手順に従って、7種の異なる細胞系を用いることにより、SIMA−135発現の影響を試験した。これらの細胞系を図8に示す。上記のSIMA135RMA検出についての分析手順に従って、これらの7細胞系を分析した。図7は、SIMA−135mRNAをモニターするこれら7種の異なる細胞系のRT−PCR分析の結果を示す。対照および関連性の無いRT−PCRデータは、図1の左側部分にある。図の右側部分は、SIMA−135特異的プライマーから生成された600bp増幅シグナルを示す。非トランスフェクションヒーラ細胞はシグナルを生じず、ヒーラ細胞4番もまたシグナルを生じず、Eff(2)3番は、クローン3番と呼ばれており、実質的600bpシグナルを生成する。これらのデータは、クローン3番細胞が高レベルのSIMA−135mRNAを有することを示している。
【0096】
これらの7細胞系の試料を溶解し、細胞内容物を標準ウエスタン・ブロット手順に従って分析することにより、MoAb41−2との結合を通してSIMA−135の存在を測定した。7種の異なる細胞系から調製したライゼートにおけるウエスタン・ブロットでは、MoAb41−2でプロービングした。結果は、クローン3番(Eff(2)3番)がかなりのレベルのSIMA−135免疫反応性タンパク質を生産することを立証している。このクローン化細胞系は、前述の高転移性HEp−3細胞系、Mよりも(then)多くのSIMA−135タンパク質を生産する。クローン4番および親ヒーラ細胞は、検出可能なSIMA−135タンパク質を生産しない。
【0097】
SIMA−135陰性細胞およびSIMA−135過剰発現体が得られたことが確認されると、これらの細胞を、その悪性潜在能力、すなわちSCIDマウスにおけるその増殖および腫瘍形成能力およびSCIDマウスにおけるその二次臓器への転移増殖能力について試験した。表1は、2タイプの独立した検定法の概要である。パネルAは、興味の対象である細胞を、直接マウスの尾部静脈へ接種する実験的転移検定法の結果を示す。数週間後、接種されたマウスの選択された臓器を、総臓器マウスDNAのバックグラウンドにおけるヒト細胞(ヒトDNA)の存在について分析した。以下の参考文献(A.Zijlstra et al.、Cancer Research、2002)に記載された要領でalu反復配列に基いたヒト特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRにより、分析を実施した。パネルAに示された結果は、クローン3番細胞が、同様に接種されたクローン4番細胞の場合を実質的に越えるレベルでマウス肺および骨髄において転移増殖および/または成長することを示している。また、上記で示されている別の臓器、膵臓はクローン3番およびクローン4番細胞の両方をほぼバックグラウンドレベルで含むに過ぎないことから、クローン3番が接種されたマウスの体全体に拡散しているわけではないということも明らかである。
【0098】
表1のパネルBは、細胞をSCIDマウスの脇腹に皮下接種し、100mgを越えるまで腫瘍を発達させ、次いで選択された臓器、通常は肺を二次転移沈積物について分析する標準自発的転移検定法の結果を含む。ヒトDNAに特異的な同じリアルタイムaluPCR手順により二次転移を測定した。結果は、クローン3番およびクローン4番が、ほぼ同じ大きさ(ミリグラム−mgでの重量)の一次腫瘍を形成することを示している。しかしながら、クローン3番は、クローン4番より少なくとも10倍大きいレベルで肺に転移したと思われる。クローン4番肺における細胞のレベルは、ほとんど検出できないレベルでのバックグラウンド(50〜100細胞)に近いことから、それは10倍より大であり得る。
【0099】
結果は、SIMA−135タンパク質を、それを通常は生産しない細胞へ導入するかまたは発現させることにより、悪性特性がそれらの細胞に伝達されることを立証している。これら2種のクローンが悪性潜在能力を獲得した理由を示し得る特性についてそれらを特性検定するため、我々は上記クローンについて若干の細胞生物学的検定法を実施した。上記手順に従って、細胞成長または増殖検定法を細胞培養物において実施した。これら2種のクローンのインビトロ成長は類似しており、また親ヒーラ細胞とも類似している。すなわち、単なる増殖速度がそれらの特異な悪性潜在能力についての理由というわけではない。
【0100】
また、興味の対象である細胞を、2チャンバー間に挿入された多孔質フィルターを通って移動させるトランス−ウェル移動検定法を実施した。培養培地により検定法を実施した。結果を図10に示す。上部チャンバーは培地中に細胞を含み、下部チャンバーは、上部チャンバーから移動している細胞を誘引するための胎児ウシ血清(FCS)補った強化培地を含む。結果は、クローン3番細胞がクローン4番細胞より移動性がかなり高いことを示している。これはSIMA−135過剰発現体の獲得特性の一つであり得、悪性潜在能力についてそれらを助長するものである。予備データはまた、クローン3番細胞がクローン4番細胞より、化合物araCにより化学的に誘導されるアポトーシスに対する抵抗性が強いと思われることを示している。
【0101】
表1
SCIDマウスに接種された2種のヒーラクローン;クローン4番(SIMA−135陰性)およびクローン3番(SIMA−135過剰発現体)のインビボ悪性
【表1】

*静脈接種の2週間後および皮下接種の4週間後に摘出された臓器から抽出された全DNAで実施されたリアルタイムaluPCRに基く。
【0102】
文献
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米国特許第6,245,898号。
A. Zijlstra, et al., Cancer Research, 2002。
【0103】
全ての出版物、特許および特許出願については、出典明示により援用する。上記明細書では、本発明についてそのある種の好ましい実施態様と関連付けて記載し、多くの詳細を説明目的で示したが、当業者であれば、本発明に対し追加の実施態様が加えられ得、本明細書に記載した詳細のある種の態様を、本発明の基本原理から逸脱することなく相当に変更し得ることは容易に理解できるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1を有するグリコシル化または非グリコシル化タンパク質。
【請求項2】
配列番号1のグリコシル化または非グリコシル化フラグメントであって、アミノ酸525および/またはアミノ酸827を含むフラグメント。
【請求項3】
請求項1記載の配列番号1のタンパク質の変異型であって、アミノ酸525がアルギニンであり、および/またはアミノ酸827がセリンである変異型。
【請求項4】
請求項1記載のタンパク質に特異的に結合する抗体であって、mAb41−2ではない抗体。
【請求項5】
請求項2記載のフラグメントに特異的に結合する抗体であって、mAb41−2ではない抗体。
【請求項6】
請求項3記載の変異型に特異的に結合する抗体であって、mAb41−2ではない抗体。
【請求項7】
抗体がモノクローナルまたはポリクローナル抗体である、請求項5〜6のいずれか1項記載の抗体。
【請求項8】
ヒトおよび動物体の治療的処置として使用される、請求項5〜6のいずれか1項記載の抗体。
【請求項9】
哺乳類における癌細胞による転移の阻害に使用される医薬の製造を目的とする、請求項5〜6のいずれか1項記載の抗体。
【請求項10】
癌細胞が、類表皮癌細胞、前立腺癌細胞、結腸癌細胞、線維肉腫、胃癌細胞、肝癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞および腎臓杆状癌細胞である、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
癌細胞がHep3細胞である、請求項10記載の抗体。
【請求項12】
請求項5〜6のいずれか1項記載の抗体および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項5〜6のいずれか1項記載の抗体およびパッケージ材料を含むキット。
【請求項14】
(a)哺乳類から得られる試験試料と請求項5〜8のいずれか1項記載の抗体を接触させ、そして(b)抗体が非癌組織の対照試料に結合する場合よりも著しい程度で抗体が試験試料に結合するか否かを測定することを含む癌の診断方法で使用される、請求項5〜6記載の抗体。
【請求項15】
(a)問題の切片と請求項のいずれか1項記載の抗体の結合を視覚化し、そして(b)抗体が、組織試料の異種染色を誘発するか、組織試料の全体にわたってSIMA135の充分な発現を示すか、または結腸漿膜における悪性腺を染色するか否かを測定することを含む癌の診断方法で使用される、請求項5〜6記載の抗体。
【請求項16】
(a)請求項5〜8記載の抗体と試験試料を接触させ、そして(b)非転移Hep3細胞を含む対照試料への抗体の結合と試験試料への抗体の結合を比較することを含み、対照試料への抗体の結合と比べて試験試料への抗体の結合が増加しているときは、試験試料が転移HEp3細胞を含むことを示すものとする、試験試料が転移細胞を含むか否かを測定するのに使用される、請求項5〜6記載の抗体。
【請求項17】
SIMA−135を発現する細胞を薬剤と合わせることにより試験細胞を製造し、試験細胞からのSIMA−135の発現が、薬剤と合わせる前に細胞により発現される量より多いか少ないかを測定することを含む、薬剤の転移調節能力の測定に使用される、請求項5〜6記載の抗体。
【請求項18】
(a)候補薬剤と試験細胞を接触させ、そして(b)試験細胞によるSIMA135生産が、対照によるSIMA135生産に対して増加しているか減少しているかを測定することを含む、候補薬剤が細胞によるSIMA135生産を調節するか否かを測定するのに使用される、請求項5〜6記載の抗体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−46712(P2011−46712A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199239(P2010−199239)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2006−501880(P2006−501880)の分割
【原出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【Fターム(参考)】