説明

転移性乳癌の治療

【課題】乳癌、特にヒト転移性乳癌の治療用の医薬品の提供。
【解決手段】ヒト転移性乳癌の治療用の医薬品の製造のための、特定のアミノ酸配列を含む抗EpCAM抗体の使用。さらに、上記抗EpCAM抗体を投与する段階を含む、ヒト転移性乳癌の治療方法。当該医薬品は、特定の負荷プログラムにより投与されるのが好ましい。また、特定濃度の塩化ナトリウム溶液を含む溶液において投与されること、静脈内に投与されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転移性乳癌の治療用の医薬品の製造のための抗EpCAM抗体の使用に関する。本発明はさらに、前記抗EpCAM抗体を投与する段階を含む、転移性乳癌の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌は女性において最も頻度の高い癌であり、癌による死亡の二番目の原因である。2001年において、乳癌の発生率は米国では90〜100人/100,000人であり、欧州では50〜70人/100,000人であった。この疾患の発生率は世界的に高まりつつある。乳癌の危険因子には、人種、年齢、ならびに腫瘍抑制遺伝子BRCA-1およびBRCA-2ならびにp53における突然変異が含まれる。アルコール消費、脂肪分の多い食事、運動不足、閉経後の外因性ホルモン、および電離放射線も、乳癌を発症するリスクを増大させる。エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体が陰性である乳癌(それぞれ「ER-」および「PR-」)、大きな腫瘍サイズ、高悪性度の細胞学的状態、ならびに35歳未満の年齢は、予後不良と関連がある(Goldhirsch et al. (2001). J. Clin. Oncol. 19: 3817-27(非特許文献1))。2005年には浸潤性乳癌の新たな症例212,000人および非浸潤性乳癌の新たな症例58,000人が診断されると推定され、40,000人の女性が乳癌のために死亡すると予想されている。
【0003】
乳癌は一般に、いくつかの主要なステージに分けることができる:早期、局所進行性、局所再発性、および転移性。早期乳癌には、非浸潤性乳癌、例えば上皮内小葉癌(「LCIS」)および非浸潤性乳管癌(「DCIS」)が含まれる。最も一般的には、乳癌は、American Joint Committee on Cancerにより提唱されている腫瘍-リンパ節転移-遠隔転移(「TNM」)分類体系(AJCC Cancer Staging Manual, 6th Edition(非特許文献2))に従ってステージ分類がなされる。TNM分類体系は、乳癌の7つの別個のステージを定義している:0、I、IIA、IIB、IIIA、IIIB、およびIV。ステージ0、I、およびステージIIのいくつかのサブタイプは一般に早期乳癌と関連づけられる。ステージIII、ならびにステージIIのいくつかのサブタイプは一般に進行乳癌と関連づけられる。ステージIVは一般に転移性乳癌と関連づけられる。乳癌のTNM分類に関するより詳細な情報は図1に示されている。腫瘍サイズは、固形腫瘍治療効果評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(「RECIST」基準)によって測定およびモニターすることができる(Therasse et al. (2000). J. Natl. Cancer Inst. 92: 205-16(非特許文献3))。
【0004】
早期乳癌に関する5年生存予後は一般に60%を上回るが、この数字は進行乳癌では40〜60%に低下する。転移性乳癌に関する5年生存予後は一般に15%前後である。乳癌の遠隔転移の頻度が最も高い部位には、肺、肝臓、骨、リンパ節、皮膚、およびCNS(脳)が含まれる。ひとたび転移性乳癌と診断されると、患者の平均余命は18〜24カ月であると予想される。転移性乳癌の治癒の可能性は低く、この全身疾患に対する治療様式は主として姑息的である。
【0005】
以上のことは、乳癌の治療法、特に転移性乳癌に対する治療法の新たな開発の重要性を強く示している。
【0006】
転移性乳癌を含む乳癌の治療のための、現在の治療上の選択肢には、外科手術(例えば、切除術、自家骨髄移植)、放射線療法、化学療法(例えば、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤、シクロホスファミドおよびマイトマイシンCなどのアルキル化剤、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン系薬剤、カペシタビンなどの代謝拮抗薬、ビンカルカロイドであるナベルビンなどの微小管阻害薬)、内分泌療法(例えば、タモキシフェンなどの抗エストロゲン薬、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール(megastrol acetate)などのプロゲスチン、アミノグルテチミド(aminoglutethamide)およびレトロゾールなどのアロマターゼ阻害薬)および生物製剤(例えば、サイトカイン、モノクローナル抗体などの免疫療法薬)が含まれる。最も一般的には、転移性乳癌は、化学療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ナベルビン、カペシタビンおよびマイトマイシンCを含む、最も有効な薬剤)および内分泌療法の1つまたは組み合わせによって治療される。
【0007】
乳癌における標準的な医療は、腫瘍ステージおよび危険因子に応じてホルモン療法または化学療法の前または後に行われる、腫瘍の外科的除去および放射線療法である。ステージIからステージIIIAまでの患者(以下ならびに図1を参照)は、アジュバント化学療法またはホルモン療法によって治療されうる。手術不能な浸潤性のステージIIIBの疾患またはステージIVの転移性乳癌の患者では、化学療法は症状を緩和するに過ぎない。
【0008】
最近、タキサン系薬剤およびアントラサイクリン系薬剤が乳癌患者の生存率を著しく改善させた。カペシタビン(Xeloda(登録商標)、カペシタビン、Roche Ltd:Summary of Product Characteristics(非特許文献4))は、特にその毒性の低さおよび経口製剤を理由として、アントラサイクリン系薬剤および/またはタキサン系薬剤を含む細胞傷害性化学療法が失敗に終わった患者における第二選択の治療またはより高度の治療のために承認されている(O'Shaughnessy (2002). Oncology 16: 17-22(非特許文献5))。しかし、これらの改良された治療様式にもかかわらず、進行乳癌の患者の生存性は不良なままであり、化学療法は姑息的に過ぎない。
【0009】
モノクローナル抗Her-2/neu抗体であるトラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、トラスツズマブ、Roche, Ltd:Summary of Product Characteristics, March 2002(非特許文献6))は、腫瘍がHer2/neuを過剰発現している乳癌の患者の治療のために承認された初の生物学的標的療法薬である。パクリタキセルとの併用で、これは転移性乳癌の患者の第一選択の治療として指定され、単剤として同じ患者集団における第二選択の治療またはより高度の治療として指定されている(Cardoso et al. (2002). Clin. Breast Cancer 3: 258-9(非特許文献7); Tan-Chiu & Piccart (2002). Oncology 63: 57-63(非特許文献8))。しかし、Her2/neuを高レベルで過剰発現し、このためこの抗体による治療が適するのは、乳癌の患者のごく一部(およそ20%)に過ぎない。
【0010】
したがって、特にトラスツズマブの適応ではない乳癌患者の治療のための、新たな抗癌薬の開発は、重要な医学的要請である。
【0011】
1つの有望な免疫療法薬は、SEQ ID NO. 3、4および5に示されたその重鎖可変領域アミノ酸配列を含む、ならびに/またはSEQ ID NO. 6、7および8に示されたその軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、ヒト抗体である。本明細書では以後、この抗体を「抗EpCAM」と称し、これはさらにその重鎖および軽鎖に関して、それぞれSEQ ID NO. 1および2に示されたアミノ酸配列によって特徴づけられる。この抗体は上皮細胞接着分子(epithelial cell adhesion molecule)(「EpCAM」、これは17-1A抗原、KSA、EGP40、GA733-2、ks 1-4およびesaとも呼ばれる)と結合する。EpCAMは、乳癌を含む、起源が異なる多くの癌において過剰発現される、高度に保存された表面糖タンパク質である。結腸癌、胃癌、肺癌、卵巣癌または前立腺癌の患者3722例からの腫瘍試料が、組織マイクロアレイ上での高感度免疫組織化学染色アッセイを用いて、EpCAM発現に関して分析されている。中間的ないし強度のEpCAM発現が、すべての腫瘍試料の88%超、卵巣癌の94%、結腸癌の94%、胃癌の92%、前立腺癌の90%および肺癌の71%で報告されている。これらの結果は、EpCAMが上皮腫瘍細胞に高い頻度で存在することを裏づけ、潜在的な診断標的および治療標的としての抗EpCAMを強く示している。
【0012】
原発性乳癌腫瘍を対象とした2件の研究で、強いEpCAM発現が、384件の切片の36%(Tandon et al. (1990) Cancer Res. 50: 3317-24(非特許文献9))および128件の試料の59%(Edwards et al. (1986) Cancer Res. 46: 1306-17(非特許文献10))でそれぞれ示されている。別の研究(Spizzo et al. (2002) Int. J. Cancer 98: 883-8(非特許文献11))では、205件のうち73件(36%)の乳房腫瘍標本で強いEpCAM発現が見られ、著者らは乳癌におけるEpCAM過剰発現が無病生存率および全生存率と関連していると報告している。EpCAM過剰発現はまた、腫瘍サイズおよびホルモン受容体陰性とも相関づけられた;これは乳管癌および組織学的悪性度IIIサブタイプで最も高度であった。別の系列では、乳癌試料のおよそ90%がEpCAMを何らかの程度で発現することが示され、40%超が強いEpCAM発現を示した。
【0013】
インビトロでは、抗EpCAMは抗体依存性細胞傷害性(「ADCC」)および保存依存性細胞傷害性(「CDC」)の両方を引き起こす。最も可能性の高い作用機序としては、抗EpCAMは、EpCAM陽性腫瘍細胞と結合することによって患者のナチュラルキラー細胞を腫瘍部位に動員する。患者の免疫エフェクター細胞の活性化を介して、EpCAM陽性腫瘍細胞をその後に除去することができる。
【0014】
抗EpCAMを使用する、ある治療レジメンが、当技術分野で公知である(WO 2005/080428(特許文献1))。具体的には、WO 2005/080428(特許文献1)は、癌患者に対する抗EpCAMの投与を伴う治療レジメンを記載している。ここでは、例えば乳癌または微小残存病変の治療において、抗EpCAMを投与することを考えた。後者の文脈において、微小残存病変は、単一の腫瘍細胞の生存によって引き起こされる腫瘍の局所的および非局所的な再発として解釈することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 2005/080428
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Goldhirsch et al. (2001). J. Clin. Oncol. 19: 3817-27
【非特許文献2】AJCC Cancer Staging Manual, 6th Edition
【非特許文献3】Therasse et al. (2000). J. Natl. Cancer Inst. 92: 205-16
【非特許文献4】Roche Ltd:Summary of Product Characteristics
【非特許文献5】O'Shaughnessy (2002). Oncology 16: 17-22
【非特許文献6】Roche, Ltd:Summary of Product Characteristics, March 2002
【非特許文献7】Cardoso et al. (2002). Clin. Breast Cancer 3: 258-9
【非特許文献8】Tan-Chiu & Piccart (2002). Oncology 63: 57-63
【非特許文献9】Tandon et al. (1990) Cancer Res. 50: 3317-24
【非特許文献10】Edwards et al. (1986) Cancer Res. 46: 1306-17
【非特許文献11】Spizzo et al. (2002) Int. J. Cancer 98: 883-8
【発明の概要】
【0017】
本発明の目標は、既存の乳癌療法を改良することである。
【0018】
したがって、本発明の1つの局面は、ヒト転移性乳癌の治療用の医薬品の製造のための、SEQ ID NO. 3、4、5、6、7および/または8に示されたアミノ酸配列を含む抗EpCAM抗体(「抗EpCAM」)の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】乳癌に関するTNM分類/ステージ分類体系の概要
【図2】それぞれ32例および35例の患者に投与された低用量および高用量の抗EpCAMに関して、疾患の無増悪の確率を時間に対して示した無増悪期間(「TTP」)プロット
【図3】それぞれ27例および40例の患者に投与された低用量および高用量の抗EpCAMに関して、疾患の無増悪の確率を時間に対して示した(「TTP」)プロット
【図4】高レベルおよび低レベルのEpCAMの双方を発現する患者に投与された高用量および低用量の抗EpCAMに関して、疾患の無増悪の確率を時間に対して示した(「TTP」)プロット
【図5】高レベルのEpCAMを発現する患者に投与された高用量の抗EpCAMに関して、他のすべての患者と比較して、疾患の無増悪の確率を時間に対して示した(「TTP」)プロット
【図6】それぞれ54例および55例の患者に投与された低用量および高用量の抗EpCAMに関して、疾患の無増悪の確率を時間に対して示した(「TTP」)プロット
【図7】高レベルおよび低レベルのEpCAMの双方を発現する患者に投与された高用量および低用量の抗EpCAMに関して、疾患の無増悪の確率を時間に対して示した(「TTP」)プロット
【図8】高レベルのEpCAMを発現する患者に投与された高用量の抗EpCAMに関して、低レベルのEpCAMを発現する患者に投与された低用量の抗EpCAMと比較して、疾患の無増悪の確率を時間に対して示した(「TTP」)プロット
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で用いる場合、「転移性乳癌」という用語は、乳房の原発性腫瘍由来の少なくとも1つの形質転換細胞、すなわち癌性細胞が、原発性腫瘍から切り離されて、原発性腫瘍とは別の場所(本明細書では以後「別の場所」)で成長を続けて腫瘍化する疾患として解釈される。別の場所は例えば、原発性腫瘍が位置するのと同じ乳房(同側乳房)の内部にあってもよく、または他方の乳房(対側乳房)の内部にあってもよい。そのほかの例として、別の部位は、移動性であるか固定性であるか、原発性腫瘍に対して同側性であるか対側性であるか、鎖骨上窩、腋窩または他のものであるかを問わず、1つまたは複数のリンパ節の内部にあってよい。TNM腫瘍分類体系(図1に示されている)の文脈において、本明細書で用いる「転移性乳癌」は、そのステージ分類がM=1(すなわち、ステージIVの乳癌;図1参照)を含むすべての腫瘍、すなわち、何らかの程度の転移が、例えば肺、肝臓、骨、リンパ節、皮膚、脳などの遠隔部位、ならびに/または同側性および/もしくは対側性の乳房の内部の別の部位に存在する、すべての腫瘍を含むと考えられる。
【0021】
本明細書で用いる「乳癌」という用語は、1つの原発性腫瘍または複数の個別の原発性腫瘍が1つまたは複数の乳房に存在する疾患を表す。一般に、これは、癌性細胞が乳房内で原発性腫瘍から(まだ)切り離されるに至っておらず、「別の部位」に波及していないことを意味する。この文脈において、同一の乳房内または同側性および対側性乳房の両方における複数の原発性腫瘍の存在は、それ自体では、「転移性乳癌」の意味の範囲の中にあるとは解釈されないことに注意すべきである。これは、一方または両方の乳房の内部にある複数の細胞が、いずれも転移性ではないか転移性にまだなっていない複数の原発性腫瘍から生じている可能性があるためである。その一方で、単一の乳房の内部の複数の原発性腫瘍の1つのみから癌性細胞が切り離され、その後にこの単一の細胞が「別の部位」で別個の腫瘍に発達することは、乳房の少なくとも一方における1つまたは複数の原発性腫瘍の有無にかかわらず、本明細書で用いる「転移性乳癌」の一部をなすと考えられる。
【0022】
本明細書で用いる「転移性乳癌」という用語は、「別の部位」に存在する前記転移が、乳房のいずれか1つの特定の原発性腫瘍から生じなければならないことを意味するわけではないことに注意すべきである。すなわち、「別の部位」にある転移の起源は、乳房組織で発生した転移の元が原発性腫瘍である限り、疾患を「転移性乳癌」と呼ぶことにとって特に重要ではない。この目的において、「乳房組織」という用語は、乳房の小葉および乳管、すなわち、乳房の腫瘍の最も一般的な元となる組織を含むものと解釈されるものとする。
【0023】
本出願人は、驚いたことに、抗EpCAMが、乳癌それ自体、すなわち、少なくとも1つの原発性腫瘍を乳房内に含む乳癌の治療だけでなく、転移性乳癌の治療の治療にも非常に適することを見いだした。転移性乳癌に伴う腫瘍負荷量(tumor load)(すなわち、体内の癌細胞の数、腫瘍のサイズまたは癌の量;「全身腫瘍組織量(tumor burden)」とも呼ばれる)は、非転移性乳癌で観察されるよりも一般に多いことから、抗EpCAMをこの様式で用いうることは全く予想していなかった。これは、単一の原発性乳房腫瘍は多数の散在性の転移を全身に生じさせる可能性が十分にあり、しばしば実際にそうであるためである。このため、全身の悪性細胞の表面に存在するEpCAM分子の絶対的な数は、一般に、転移性乳癌の場合の方が非転移性乳癌よりも多い。添付の実施例に提供されているデータは、抗EpCAM抗体を含む薬学的組成物の投与が、治療された疾患のTTP(無増悪期間(time to progression))の有意な延長を招くことを示している。実際の効果は、治療しようとした悪性細胞の表面でのEpCAMの発現レベルと相関するように思われる。患者は、Gastl et al. (2000) Lancet 356, 1981-2に従って、EpCAM発現例(expressor)の複数の異なる群に選別することができる。手短に述べると、Gastlらは、さまざまな患者から単離した腫瘍細胞のEpCAM発現を免疫組織化学的染色にて分析した。総免疫染色スコアは、比率スコアと強度スコアとの積として算出した。比率スコアは、Gastlらに従って、陽性染色腫瘍細胞の推算率を記述する(0、なし;1、<10%;<10%;2、10%〜50%;3、50%〜80%;4、>80%)。強度スコアは、Gastlらに従って、推算染色強度を表した(0、染色なし;1、弱;2、中;3、強)。結果として得られる総スコアは0から12までの範囲である。高EpCAMは4を上回る総スコアとして定義されるが、その理由は、患者試料がEpCAM発現に関して二峰性分布(EpCAM低発現例および高発現例)を示し、その区分となる最下点が総スコア値3〜4であるためである。EpCAM高発現例として同定され、抗EpCAM抗体の投与を含む治療法を受ける患者の予後は、EpCAM中発現例または低発現例として同定される患者よりも楽観的である。この観察所見と一致して、極めて高度のEpCAM発現例(悪性細胞の表面にEpCAM高発現例の平均よりも多くの量のEpCAMを示す患者、すなわち、総スコア≧8)として同定される患者は、EpCAM高発現例として同定され、同じ治療法を受ける患者と比較して、TTPのさらなる延長を示す。さらに、患者に対して投与される薬学的組成物中の抗EpCAM抗体の量は、予後と直接相関する。特に、高用量の抗EpCAM抗体の投与は、同じ群のEpCAM発現例の患者に対する低用量の投与と比較して、治療された疾患のTTPの延長をもたらす。
【0024】
1つの好ましい態様において、抗EpCAM抗体である抗EpCAMはヒト抗体である。
【0025】
1つのさらなる好ましい態様において、抗EpCAMは、SEQ ID NO. 3、4、5、6、7および8のすべてを含む。1つのさらなる好ましい態様において、抗EpCAMは、SEQ ID NO. 1および/または2を含む。1つの特に好ましい態様において、抗EpCAMはSEQ ID NO. 1および2の両方を含む。
【0026】
1つの好ましい態様によれば、転移性乳癌の治療は、転移性乳癌の長期的安定化を含む。「長期的安定化」は、抗EpCAM抗体を用いる治療過程にわたって、疾患の進行がその初期レベルまたはそれ未満に安定化される場合と解釈されるべきである。これは疾患の進行までに要する期間の延長と解釈することができる。「長期的安定化」はまた、腫瘍が縮小する筋書き(部分奏効)も含む。「長期的安定化」はまた、疾患進行が検出可能なレベルまたはそれ未満に低下する、すなわち、患者が治療に完全に反応して疾患が治癒する筋書き(完全奏効)も含む。このような筋書きにおいて、治療は、疾患の再発を防ぐために必要に応じて無期限に続けることもでき、または医師の裁量で終了することもできる。
【0027】
1つの好ましい態様によれば、医薬品はいわゆる「低用量投与」に適する。低用量投与の場合、各投与の用量は1〜3mgの抗EpCAM抗体/kg体重の範囲にある。好ましくは、低用量投与は、1〜3mg/kg体重の範囲にある少なくとも1回の負荷量と、それに続く複数回の維持量を含み、各維持量は1〜3mg/kg体重の範囲にある。また、低用量投与の個々の用量が、1.5〜2.5mg/kg体重の範囲、より好ましくは1.75〜2.25mg/kg体重の範囲にあることも好ましい。最も好ましくは、低用量投与のための個々の用量は2mg/kg体重である。低用量投与のためには、低用量投与のための少なくとも1回の負荷量が2mg/kg体重であり、複数回の維持量がそれに続き、各維持量が2mg/kg体重であることが好ましい。または、医薬品はいわゆる「高用量投与」に適する。高用量投与の場合、各投与の用量は4.5〜8mgの抗EpCAM抗体/kg体重の範囲にある。好ましくは、高用量投与は、4.5〜8mg/kg体重の範囲にある少なくとも1回の負荷量と、それに続く複数回の維持量を含み、各維持量は4.5〜8mg/kg体重の範囲にある。また、高用量投与の個々の用量が、5〜7mg/kg体重の範囲、より好ましくは5.5〜6.5mg/kg体重の範囲、さらに好ましくは5.75〜6.25mg/kg体重の範囲にあることも好ましい。最も好ましくは、高用量投与のための個々の用量は6mg/kg体重である。高用量投与のためには、高用量投与のための少なくとも1回の負荷量が6mg/kg体重であり、複数回の維持量がそれに続き、各維持量が6mg/kg体重であることが好ましい。このような負荷量および維持量が、全身の多数の転移を根絶する必要のある転移性乳癌の治療に対して治療的有用性を与えることは予想外である。
【0028】
本発明の1つのさらなる態様によれば、転移性乳癌患者がEpCAMをより高い程度で発現するか、それともより低い程度で発現するかを確かめることは有益であろう。患者は、例えば、Gastl et al.(2000) Lancet 356, 1981-2に記載された通りに、EpCAM非発現例、EpCAM中発現例、EpCAM低発現例およびEpCAM高発現例の群に選別することができる。一般に、転移性乳癌患者に投与された抗EpCAMの量を当該の患者に関して観察されるEpCAM発現のレベルと相関づけて、EpCAM高発現例により高用量の抗EpCAMを投与し、EpCAM低発現例により低用量の抗EpCAMを投与することは有益な可能性がある。高レベルのEpCAMを発現している患者には、以上の2種の用量の抗EpCAMのうち高い方、すなわち6mg/kg体重を投与することが特に有益な可能性がある。
【0029】
本発明の1つのさらなる態様によれば、各々の負荷量とそれに引き続く別の負荷量または初回の維持量のいずれかとの間の時間の長さは1週間を上回ってはならず、一方、各々の維持量とそれに続く維持量との間の時間の長さは2週間を上回ってはならない。好ましくは、その/各負荷量は毎週投与され、前記維持量のそれぞれは隔週投与される。「負荷相」における抗EpCAMの負荷量の毎週の投与は、血清中の抗EpCAMの最低レベル(排泄および除去の形態での連続的排除を考慮に入れる)は、すべての時点で、所望の治療効果を誘発する程度に十分に高く保たれる。治療効果のために必要な抗EpCAMのこの最低レベルは「血清トラフレベル」として知られており、本明細書では以後そのように称する。ひとたびこの血清レベルに達すると、引き続く2週間間隔での「維持相」における抗EpCAMの維持量のさらなる投与により、抗EpCAMの血清レベルが継続的な治療効果のために必要なものよりも決して低下しないことが確実になる(同じく連続的排除を考慮に入れる)。抗EpCAMに関する血清トラフレベルを決定するために必要な薬物動態学的計算は、当技術分野で記載されている(WO 2005/080428号を参照)。
【0030】
1つの特に好ましい態様によれば、1回ずつの負荷量が治療法の第1、第2および第3週のそれぞれの初めに投与され、それに続いて11回の維持量が投与され、1回ずつの維持量は治療法の第4、6、8、10、12、14、16、18、20、22および24週のそれぞれの初めに投与される。今回、驚いたことに、上記の間隔での3回の負荷量と、それに続く上記の間隔での11回の維持量との組み合わせが、転移性乳癌の治療において特に有効であることが見いだされた。これは、開始から完了までの合計治療期間が24週間であることを意味する(あらゆる種類のこのような治療法に通常付随する治療後検査は考慮に入れない)。1つのさらなる好ましい態様において、開始から完了までの合計治療期間は30週、40週、50週または60週である。また、上記のスキームに即したEpCAM抗体の投与の期間の後に、EpCAM抗体の投与を伴わない期間があり、さらにEpCAM抗体を投与する治療期間があることも好ましい。このような順序の期間を数回繰り返してもよい。
【0031】
または、本発明の1つのさらなる態様は、上記のような負荷量での抗EpCAMの投与に続いて、腫瘍の進行を抑えるために必要なだけ多くの数の維持量を投与することも想定している。この態様において、腫瘍の進行は、モニターしている転移性腫瘍の1つまたは複数のサイズが増大していない限り、抑えられていると見ることができる。最良の場合には、モニターしている1つまたは複数の腫瘍のサイズは実際に縮小する(部分奏効の場合のように)。ここで、モニターしている腫瘍が縮小してなくなる、すなわち消失してもよい(完全奏効の場合のように)。モニターしている腫瘍が同じサイズにとどまり、それ故に疾患無増悪期間が延長してもよい(疾患の安定化の場合のように)。このため、この態様によれば、部分奏効または安定な治療効果のいずれかがある限り、抗EpCAMの維持量を上記の間隔で無期限に継続し、完全奏効が測定される場合となるまで続けることができる。さらなる腫瘍の進行(すなわち、モニターしている腫瘍のサイズまたは数が治療期間中に増加)がみられる場合には、抗EpCAMによる治療を打ち切り、適宜、別の形態の治療法を代わりに行うことができる。
【0032】
本発明の1つのさらなる態様によれば、抗EpCAMは、0.9%塩化ナトリウムを含む溶液として投与される。
【0033】
本発明の1つのさらなる態様によれば、抗EpCAMは転移性乳癌患者に対して静脈内投与される。
【0034】
本発明の1つのさらなる局面は、転移性乳癌の治療のための抗EpCAMの使用である。
【0035】
本発明の1つのさらなる局面は、ヒト転移性乳癌を治療する方法であって、SEQ ID NO. 3、4、5、6、7および/または8を含む抗EpCAM抗体をヒトに投与する段階を含む方法に関する。この抗体はさらに、それぞれSEQ ID NO. 1および2に示された重鎖および軽鎖のアミノ酸配列によって特徴づけられる。
【0036】
転移性乳癌を治療する本方法の好ましい態様は、本発明の使用の文脈において以上に示されている;これらの態様は、本発明の方法に対して、必要な変更を加えて適用される。
【0037】
ここで、本発明を、以下の図面および非限定的な実施例によって説明する。
【実施例】
【0038】
実施例
全般
以下の実施例は、本発明のさまざまな局面を説明することを意図しており、本発明の範囲を全く限定するものではない。一般に、これらの実施例は、「抗EpCAM」と称する完全ヒトIgG1抗体に関してデザインされた臨床試験プログラム、ならびにこの臨床試験プログラムによる結果を記述している。抗EpCAMの重鎖可変領域の第1、第2および第3の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO. 3、4および5に示されている。抗EpCAMの軽鎖可変領域の第1、第2および第3のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO. 6、7および8に示されている。抗EpCAMの重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO. 1に示されており、抗EpCAMの軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO. 2に示されている。以下の実施例の全体を通して、以下の用語および略号が用いられる:
【0039】
ADCC 抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性
AE 有害事象
ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ
ANCOVA 共分散分析
AP アルカリホスファターゼ
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
AUC 曲線下面積
BRCA 乳癌腫瘍抑制遺伝子
CBA サイトメトリービーズアレイ
CDC 補体依存性細胞傷害性
CHO チャイニーズハムスター卵巣
Cmin 最低薬物濃度
CNS 中枢神経系
CR 完全奏効
CRF 症例報告書
CRP C反応性タンパク質
CT コンピュータ断層撮影法
CTCAE 有害事象共通用語基準
ECOG 米国東部癌臨床試験グループ
ELISA 酵素結合免疫吸着検定
EpCAM 上皮細胞接着分子
FAS 最大解析対象集団
GCP 臨床試験実施基準
GGT γ-グルタミルトランスフェラーゼ
HAHA ヒト抗ヒト抗体
HBsAg B型肝炎表面抗原
HCV C型肝炎ウイルス
HIV ヒト免疫不全ウイルス
ICF 同意説明文書
IEC 独立倫理委員会
INR 国際標準比
IRB 施設内審査委員会
LDH 乳酸デヒドロゲナーゼ
NK ナチュラルキラー
OTR 全体的腫瘍治療効果
PK 薬物動態学
PP プロトコール適合解析対象集団
PR 部分奏効
PT プロトロンビン時間
PTT 部分トロンボプラスチン時間
PVP ポリビニルピロリドン
RBC 赤血球
RECIST 固形腫瘍治療効果評価基準
SAE 重篤有害事象
SAF 安全性解析対象集団
SAP 統計解析計画書
SD 疾患の安定
SGOT 血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ
SGPT 血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ
ULN 正常値上限
WBC 白血球
WHO 世界保健機構
【0040】
実施例1:抗EpCAMに関してデザインされた第II相臨床試験プログラム
実施例1.1:臨床試験の概要
抗EpCAMに関してデザインされた臨床試験は、以下の表(表1)にまとめられている。
【0041】
(表1)臨床試験の概要


【0042】
実施例1.2:抗EpCAMを用いた非臨床試験の概要
抗EpCAMおよびトラスツズマブがADCCを誘導する有効性を、9種の乳癌細胞株を用いて調べた。抗EpCAMは、ADCC特異的な溶解をトラスツズマブと同じレベルで媒介することができた。細胞表面上のEpCAM分子の濃度と抗EpCAMを用いたADCCに対する感受性との間には強い相関がみられた。すべての場合に、最大の特異的溶解が10μg/mL未満の抗EpCAM濃度で達成され、これを患者において目標とする最低トラフ濃度とした。
【0043】
抗EpCAMはウサギにおいて、意図した静脈内投与経路で優れた局所忍容性を示し、肉眼的な変化は観察されず、微視的な変化もわずかしか観察されなかった。
【0044】
実施例1.3:用量選択に関する理論的根拠
前臨床実験によれば、10μg/mLの血清トラフレベルは抗EpCAMの抗腫瘍活性にとって有効であると予想される。しかし、より高用量がより有効である可能性は否定できない。このため、30μg/mLの血清トラフレベルを達成するために算出した第2の用量を、この試験で評価することにした。
【0045】
この試験で意図している用量は、第I相試験で患者に投与された最も高い用量を上回らない。負荷相および維持相は、目標とするトラフ血清中濃度を短期間のうちに達成し、かつ第I相試験で評価したものを上回る最高血漿中濃度を回避するように、薬物動態学的モデル化を用いて計算した。
【0046】
実施例1.4:公知の利益
前臨床データは、転移性乳癌および他の腫瘍を有する患者が、抗EpCAMを介した、EpCAMを発現する腫瘍細胞の除去によって、進行の遅延(疾患の安定)による利益を受ける可能性を示唆している。
【0047】
実施例1.5:臨床試験の目的
主要な目的
・EpCAM陽性の転移性乳癌を有する患者における抗EpCAMの2種類の用量の臨床的有用性を評価すること
【0048】
副次的な目的
・抗EpCAMの2種類の用量に対する他の治療効果パラメーターを評価すること
・抗EpCAMの2種類の用量の安全性および忍容性を評価すること
・抗EpCAMの2種類の用量の薬物動態を明らかにすること
・抗EpCAMの2種類の用量の薬力学を評価すること
・転移性乳癌の患者における抗EpCAMの薬物動態を明らかにすること
・抗EpCAM(NK細胞)の薬力学を評価すること
【0049】
実施例1.6:治験計画
試験エンドポイント;主要エンドポイント 24週時点の臨床的有用率(SD+PR+CR)
【0050】
臨床的有用率は、RECISTに従った、疾患安定(SD)+部分奏効(PR)+完全奏効(CR)の患者の割合と定義される(実施例1.18参照)。
【0051】
試験エンドポイント;副次エンドポイント
・12週時点の臨床的有用率(SD+PR+CR)
・最良の全体的腫瘍奏効率(OTR)
・奏効期間/無増悪期間
・有害事象の発生率および検査所見の異常
・抗EpCAMの血清中濃度
・末梢ナチュラルキラー(NK)細胞の数
【0052】
全体的な試験デザイン
これは、低/中等度、または高度のEpCAM発現を有する患者における、24週間の治療にわたる、抗EpCAMの2種類の治療用量の有効性および安全性を調べる、非盲検多施設(multicenter)無作為化並行群第II相試験である。
【0053】
合計112例の患者を試験に組み入れた。スクリーニング期間の後に、すべての適格基準を満たす患者を、それぞれのEpCAM層の内部で、以下の2つの治療群の1つに無作為化する:低用量群および高用量群。抗EpCAMは、60分間の静脈内(i.v.)注入として、負荷相の間は毎週(第1日、第8日および第15日)、その後は隔週で、合計24週間または疾患の進行まで投与する。患者はEpCAM発現のレベルに従って層別化した。今回は以下の2つの群とした:低/中等度のEpCAM発現を有するもの、および高度のEpCAM発現を有するもの。表2はこのさらなる層別化の概要を示している。
【0054】
(表2)層別化した治療群および抗EpCAMの用量

【0055】
患者は第24週までは6週毎に、その後(追跡試験中)は8週毎に、臨床的評価および臨床検査によってモニターする。胸部CTスキャンまたは胸部X線、腹部CTスキャンまたはMRI、および骨病変がスクリーニング時に検出された場合には骨シンチグラフィーを含むさらなる評価を、腫瘍治療効果の判定のために行う。
【0056】
有効性を各群に関して評価し、奏効期間/無増悪期間をこの患者集団における期待値と比較する。RECISTによって評価した腫瘍治療効果(実施例1.18)基準を判定し、統計解析のために用いる。
【0057】
試験の主要エンドポイントは、4つの群のそれぞれにおける第24週時点の臨床的有用率(CR+PR+SD)である。12週時点の臨床的有用率(SD+PR+CR)、最良の全体的腫瘍奏効率(OTR)、奏効期間/無増悪期間を副次エンドポイントとして評価する。安全性および忍容性の結果は治療群間で第24週時に比較する。
【0058】
試験期間中の任意の時点で一方の用量が有効性または忍容性の理由から好ましいことが明らかになった場合には、試験プロトコールをそれに応じて修正する。
【0059】
24週間の治療後にSD、PRまたはCRが記録されていて、容認できない毒性(および4週を上回る治療中断)が報告されていない患者には、継続的な抗EpCAM療法による追跡試験に参加するように申し出た。長期的忍容性、臨床的進行および全生存率などのパラメーターを評価する。
【0060】
実施例1.7:臨床試験集団
組み入れ基準
1.患者は以下のすべての基準に該当する場合にのみ試験参加に関して適格である:
2.スクリーニング時の免疫組織化学検査によって決定された、保管された組織試料におけるEpCAM発現が陽性である組織学的に確認された転移性乳癌
3.少なくとも1つの寸法で測定可能な少なくとも1つの病変(すなわち、転移)(RECISTに従う(実施例1.18参照))
4.期待余命≧12カ月
5.ECOG動作状態が0〜1
6.年齢≧18歳
7.インフォームドコンセント書面を理解して署名する意志があること
【0061】
除外基準
患者は以下のいずれかの基準に該当する場合にはこの試験に参加するには適格でない:
1.治験担当者の判定で、組み入れ時点で何らかの他の治療が推奨される/好ましい
2.CNS転移の病歴
3.治験担当者の判定で、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))治療の適応症
4.治療法の開始前4週以内の、免疫療法、放射線療法、化学療法または任意の他の抗癌療法、ただし以下は例外とする:
・1回目の受診前に開始した限局性放射線療法(標的病変が照射領域内部にあってはならず、放射線療法が除外基準6に定義した骨髄抑制をもたらすと予想されるべきではない)
・患者が進行性であった時に行われ、被験治療の前に終了したホルモン療法
5.治療開始前4週以内の治験薬
6.以下のように定義される臓器または骨髄機能の異常:
・ヘモグロビン濃度≦90g/Lまたは9.0g/dL
・白血球<3x109/L(3000/mm3
・血小板数<100x109/L(100,000/mm3
・AST(SGOT)またはALT(SGPT)>正常値上限(ULN)の2倍(肝転移が存在するならば>ULNの5倍)
・血清クレアチニン>ULNの1.5倍
・血清リパーゼ>ULNの1.5倍
・血清アミラーゼ>ULNの1.5倍
7.治療開始前5年以内の乳癌以外の悪性腫瘍の病歴、ただし皮膚の基底細胞腫または子宮頸部上皮内癌癌は例外
8.治験担当者による判断で、試験の実施に干渉すると考えられた他の併発症または病状
9.試験開始前4週以内に、全身性コルチコステロイドなどの免疫抑制薬の予期される必要性または常用
10.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染および/またはB型肝炎ウイルス(HbsAg陽性)もしくはC型肝炎ウイルス(抗HCV陽性)の感染が判明
11.妊娠中または授乳中の女性、または妊娠の可能性があり、試験参加期間中およびその後少なくとも3カ月間に有効な形態の避妊を用いる意志のない女性
12.免疫グロブリンまたは被験薬配合物の何らかの他の成分に対する過敏性が判明
【0062】
実施例1.8:臨床試験の材料
調製物
臨床試験に用いるための治験薬である抗EpCAMは、例えば10mg/mLの抗EpCAMを等張リン酸緩衝液中に含み、+2〜+8℃の間で保存される、GMP品質の溶液として供給される。
【0063】
患者への注入用の最終的溶液の調製のための抗EpCAMの量は、患者の体重および治療群に基づいて計算する(上の表2を参照)。
【0064】
抗EpCAMは、清潔な無菌の環境(層流フード)内で、500mLの0.9%塩化ナトリウム溶液中に希釈する。注入用の最終的な抗EpCAM溶液を混合するためには、泡立ちを避けるためにバッグを穏やかに反転させるべきである。濃縮液および注入用の最終的溶液はいずれも単回のみの使用とする。
【0065】
治療割り付け手順
無作為化は抗EpCAM療法の開始のできるだけ近くで行う。無作為化の時点で適格基準を満たしていなければならない。集中管理下での無作為化手順は、ICRS(対話型コンピュータ応答システム)によって行われる。治験担当者は個別の識別番号およびパスワードを用いて保護されたウェブサイトにログインし、そこで彼女/彼は、治療割り付けに関する即時的な応答を得るために、基本患者データ(患者番号、スクリーニングのデータ、誕生日、EpCAM検査の結果)を与える必要がある。この無作為化手順ではセンター別での治療の割り付けは行わず、EpCAM発現に関する両方の層において高用量および低用量の治療の均衡のとれた分布が確実に得られるようにEpCAM発現別に割り付けを行う。要求された患者数が治療選択肢で達成された時点で、それ以上の患者はこの各々の選択肢に無作為化しなくともよい。
【0066】
溶液は患者に対して流速500mL/hで60分かけて静脈内に投与すべきである。
【0067】
実施例1.9:治療
治療スケジュール
各患者は、疾患の進行または治療の制約となる毒性が起こらない限り、24週間の治療にわたって抗EpCAMの合計14回の注入を受ける。注入用の抗EpCAM溶液は、負荷相の間は毎週、維持相の間は隔週で、60分をかけて患者に静脈内投与される。2回目の受診(第1日)の前に、患者はEpCAM発現に関する各層の内部で以下の治療群の1つに無作為化される:
・I群およびIII群(低用量):2mgの抗EpCAM/kg体重を毎週(第1、2および3週)行う負荷相に続いて、2mgの抗EpCAM/kg体重の隔週での11回の維持量
・II群およびIV群(高用量):6mgの抗EpCAM/kg体重を毎週(第1、2および3週)行う負荷相に続いて、6mgの抗EpCAM/kg体重の隔週での11回の維持量
【0068】
無作為化手順は、集中管理式とし、スクリーニング時に実施したEpCAM検査の結果に従って層別化した。EpCAMの結果および患者データを登録するには対話型コンピュータ応答システムを用いる。データの登録後に、患者に対して治療の割り付けを行う。患者に対する個々の用量の計算および注入用の最終的溶液の調製は各センターで行う。
【0069】
24週間の治療後にSD、PRまたはCRと記録され、容認できない毒性(および4週を上回る治療中断)が報告されていない患者は、継続的な抗EpCAM療法による追跡試験に参加するよう申し出るように報告した。
【0070】
有害事象にかかわる治療中止
高用量群の患者に関しては、有害事象の重症度および因果関係に応じて、試験投薬を中断もしくは中止するか、または用量を減らしてもよい。
【0071】
もし治験担当者が有害事象が試験投薬に起因するのではないという有力な証拠を持っているならば、治療を継続すべきである。しかし、有害事象と試験投薬との関係が否定できない場合は、用量を修正すべきである。
【0072】
患者に関する中止基準
以下のいずれかが起こった場合には治験薬による治療を中止すべきである:
・RECISTによって定義される疾患の進行(実施例1.18参照)
・患者の同意の撤回
・患者または治験担当者が試験プロトコールを遵守せず
・治験担当者の見解で患者の試験へのそれ以上の参加を止めるべきとされる病状の進行
・許可されていない併用薬の投与
・治療法の変更が患者にとって最も利益になるという治験担当者の判断
・グレード3の有害事象の発生であって、以下の場合
○有害事象が治験担当者からみて臨床的に重要なものとして認められる、かつ
○次の投与の前までにグレード2以下に軽快しない、かつ
○試験投薬と少なくとも関連する可能性がある。
・4週間を超える投薬中断を生じるグレード4の有害事象の発生
・治験担当者および/または患者の見解で中断が望ましいか必要とされる何らかの有害事象の発生
【0073】
患者の中止の前には、試験エンドポイント(実施例1.11参照)の評価が可能となるように、安全性追跡のために計画されたすべての検査も行うべきである。
【0074】
併用薬
すべての併用薬は症例報告書(CRF)に記録すべきである。以下の投薬および治療法は試験期間全体を通して認められない:
・以下のような、治験薬以外のあらゆる抗腫瘍療法:
○ホルモン療法
○生物療法
○化学療法
○放射線療法(例外:1回目の受診前に開始した限局性放射線療法(標的病変が照射領域内部にあってはならず、放射線療法が除外基準6に定義した骨髄抑制をもたらすと予想されるべきではない)
LHRH類似薬で治療された閉経前患者(ホルモン受容体+)は、試験参加の前にLHRH類似薬の下で進行しているならば、試験中もこの治療を継続しうる
・長期的な高用量コルチコステロイド療法および他の免疫抑制療法
・あらゆる他の治験薬
【0075】
必要であれば、支持療法を標準的な診療に従って医学的に必要とされるように投与すべきであり、CRFに記録すべきである。ビスホスフォネートによる治療法は試験参加時に骨転移を有する患者には許可される。
【0076】
実施例1.10:判定
適格性/有効性の判定
インフォームドコンセント:書面によるインフォームドコンセントを、試験に特定的なあらゆる手順の前に入手しなければならない。
【0077】
組み入れ/除外:患者の適格性の判定は、スクリーニングのために行ったすべての臨床検査測定値の審査を含め、上の実施例1.7‐臨床試験集団で概説したように行うべきである。
【0078】
病歴/現在の病状:過去および現在の病状の履歴を含む、全般的および疾患特異的な病歴;腫瘍のステージ、他の予後判定マーカー、以前の抗腫瘍療法に関する情報を含む、患者の癌の経過に関する詳細な履歴をスクリーニング時に記録する。
【0079】
併用薬:すべての併用薬を試験全体を通して記録する。
【0080】
B型およびC型肝炎の検査:B型またはC型肝炎ウイルスへの活動性感染を除外するために、B型肝炎表面抗原(HBsAg)およびC型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査をスクリーニング期間中に行う。
【0081】
腫瘍の判定:腫瘍治療効果はRECIST(実施例1.18参照)基準に従って定義される
・骨シンチグラフィー:骨シンチグラフィーは骨転移の存在を判定するためにスクリーニングおよび最終受診時に行う。骨転移がスクリーニング時に存在する場合、または臨床的に適応となる場合(例えば、疼痛の発生およびアルカリホスファターゼの上昇)には、さらなるスキャンを行う。
・胸部コンピュータ断層(CT)スキャンまたは胸部X線:胸部CTまたは胸部X線は、スクリーニング時に遠隔転移の存在について記録するため、または治療相の間および最終受診時に治療効果を定期的に評価するために行う。
・腹部CTスキャンまたはMRI:腹部CTスキャンまたはMRIは、スクリーニング時に遠隔転移の存在について判定するため、ならびに治療相の間および最終受診時に治療効果を定期的に評価するために行う。
【0082】
安全性の判定
有害事象:治療期間中および最後の抗EpCAM注入から4週後までに起こる有害事象(AE)を記録する。スクリーニング期間の間に、試験手順と関連づけられたAEも報告すべきである。
【0083】
重篤有害事象:スクリーニングおよび追跡期間を含め、試験期間全体を通して、すべての重篤有害事象(SAE)を記録する。
【0084】
身体診察:生命徴候を含む、すべての身体系統の詳細な身体診察を、スクリーニング時、治療相の間は定期的な間隔で、および最終受診時に行う。症状に向けた身体診察は試験を通して適宜行い、すべての臨床に重要な所見を文書記録する。注入日には、抗EpCAM注入の前に身体診察を行うべきである。
【0085】
生命徴候のモニタリング:体温(口腔または鼓膜)、心拍数および血圧(収縮期/拡張期)を試験を通して以下のように測定する:
・注入の前
・2〜6回目の受診時の注入中は15分毎
・2〜6回目の受診時の注入終了後は最長4時間にわたり1時間毎
【0086】
ECOGスコア:患者の動作状態の判定は、米国東部癌臨床試験グループ(ECOG)スコア(実施例1.19における表6を参照)を用いて行う。
【0087】
心電図(ECG):標準的な12誘導ECGを、スクリーニング時、治療相の間および最終受診時に行う。各ECGに関して、2枚のプリントアウトを入手すべきであり、一方は現場での記録用とし、一方はセンターの循環器医による評価用とする。
【0088】
安全性臨床検査評価:安全性臨床検査評価のための血液試料を各試験受診時の朝(注入日の注入の前)に採取し、以下の分析を行う:
・臨床化学:アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、アルカリホスファターゼ(AP)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、総ビリルビン、総タンパク質、クレアチニン、尿素、尿酸、グルコース、カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、リン酸、アミラーゼ、リパーゼ、アルブミン、C反応性タンパク質(CRP)。
・血液学:赤血球数(RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数(WBC)、白血球分画数および血小板数。
・凝固:プロトロンビン時間(PT、国際標準比[INR])、部分トロンボプラスチン時間(PTT)およびフィブリノーゲン。
【0089】
尿分析:尿中のグルコース、タンパク質および血液の存在を各受診時に尿試験紙によって判定する。抗EpCAMの注入日には、尿分析を抗EpCAM注入前に行うべきである。
【0090】
妊娠検査:妊娠する可能性のある女性ではスクリーニング時および最終受診時に妊娠検査(β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン[β-HCG])を行う。
【0091】
免疫原性:抗EpCAM免疫原性の判定のための血液試料はスクリーニング時、第6週および24週ならびに17回目および18回目の最後の2回の追跡受診の時に採取する。
【0092】
薬力学的評価
ナチュラルキラー細胞:ナチュラルキラー(NK)細胞の数を蛍光活性化セルソーター(FACS)によって測定する。
【0093】
薬物動態学的評価
抗EpCAMの血清トラフレベルおよびピークレベルを2〜6回目の受診時、治療期間中は6〜8週毎および16〜18回目の最後の3回の追跡受診時に測定する。
【0094】
EpCAM発現の分析
EpCAM発現を、患者の保管した腫瘍材料を用いてスクリーニング時に評価する。EpCAM発現はセンターの検査室で免疫組織化学によって決定する。
【0095】
低/中等度または高度というEpCAMの結果が得られた患者のみが、すべてのスクリーニング手順に進むことができる。EpCAM検査結果が陰性であった患者は適格基準を満たさず、スクリーニング不合格とみなされる。
【0096】
試験中に生検を行う場合には(例えば、新たに検出された転移の場合)、腫瘍組織をEpCAM発現の分析のためにも収集すべきである。
【0097】
実施例1.11:受診スケジュール
すべての試験受診の計算は、抗EpCAM注入の初回投与日と定義されるベースライン(第1日)を基にする。
【0098】
スクリーニング期間(第-28日〜第-1日)
すべての適格基準を満たした患者のみに患者番号を割り付ける(実施例1.8-治療割り付け手順を参照)。
【0099】
すべてのスクリーニング評価は、治験薬の初回投与(第1日)の28日以内に行わなければならない。EpCAM発現検査を含むすべての結果が得られてから、患者が試験の参加に関して適格であると申告されるべきである。ひとたび検査評価による結果が得られ、患者がすべての適格基準を満たした時点で、治験担当者は集中管理下での無作為化手順(ICRS)を進めるべきである。
【0100】
治療期間(2〜15回目の受診)
治療期間中は、以下の手順および判定を行うべきである:
○生命徴候
○身体診察
○安全性臨床検査評価
○尿分析
○薬物動態学
○NK細胞
○免疫原性
○併用薬
○有害事象および重篤有害事象
○胸部X線/CTスキャン
○腹部CTスキャンまたはMRT
○骨シンチグラフィー(骨病変がスクリーニング時に検出された場合)
○ECG(6回目および15回目の受診時のみ)
【0101】
安全性追跡期間および最終的なPK/PD評価(16〜18回目の受診)
安全性追跡受診は治療の終了から2週後および4週後に行う。17回目の受診は最終的な安全性追跡受診である。
【0102】
最後の試験受診(18回目の受診)は、治療の終了から12週後の最終的なPK/PD評価である。
【0103】
試験受診の終了(17回目の受診/最終)
試験受診の終了は、最後の追跡受診時、または患者が早期に試験を中止する任意の時点に行われる。
・詳細な身体診察
・生命徴候
・12誘導ECG
・ECOG
・安全性臨床検査評価
・尿分析
・妊娠検査
・胸部X線/CTスキャン
・骨シンチグラフィー
・腹部CTスキャンまたはMRI
・薬物動態学
・免疫原性
・併用薬
・有害事象および重篤有害事象
【0104】
有効性追跡期間
患者は、疾患の進行、他の癌治療および生存に関して、試験への参加の終了から1年後まで3カ月毎に追跡する。第24週時点で疾患の安定、部分奏効または完全奏効がみられた患者は、疾患の進行および全生存率の評価を行う非盲検試験に参入する機会を得る。
【0105】
実施例1.12:試料の保存
免疫原性、NK細胞数およびPKに関する血清試料は試験場所で-20℃で保存する。
【0106】
実施例1.13:安全性に関する検討事項
治験担当者は、有害事象(AE)または重篤有害事象(SAE)の定義を満たす事象の発見および文書記録の責任を負う。これには、その重篤性、その重症度、ならびに治験薬および/または併用療法との因果関係の評価が含まれる。
【0107】
実施例1.14:有害事象、重篤有害事象
有害事象
治験医薬品の投与の間または後に発見または診断される以下の事象は有害事象である。
・既存の疾病または永続的な障害の悪化
・既存の偶発性事象または病状の頻度または強度の増大
・治験医薬品の投与後に発見または診断される徴候または症状、たとえそれらが試験参加の前に起こったか存在したものであってもよい
・顕著な血液学的および他の臨床検査上の異常、ならびに被験薬/治験薬治療の中止、用量減量または意味のある追加的な併用療法を含む介入を招く、あらゆる事象
【0108】
重篤有害事象
重篤な有害事象(経験)または反応とは、以下である、任意の用量でのあらゆる有害な医学的発生または影響のことである:
・死亡をもたらす(1)、
・生命を脅かす(2)、
・入院、または入院患者の入院の延長を必要とする、
・持続的または重大な身体障害または能力障害をもたらす、
・先天異常または出生時欠損である。
【0109】
重症度の判定:AEの重症度(または強度)は、癌治療法評価プログラム、有害事象に関する共通用語基準(CTCAE)、バージョン3.0で提供される等級づけ尺度に従って評価される。
【0110】
実施例1.15:統計解析
統計学的方法および試験変数の決定
この試験の狙いは、抗EpCAMの有効性および安全性を明らかにすることである。このために、2つの選択肢(低用量の抗EpCAMおよび高用量)を有し、各治療選択肢が標準的な一段階の第II相試験と考えられるものとする、無作為化第II相試験を行う。治療が十分な活性を示すことが立証されたか否かの判断を各治療選択肢に関して別々に行う。標本数の見積もりおよび主要な統計解析は、標準的な一段階で一選択肢の第II相デザインに基づく。
【0111】
表3は、主要および副次試験エンドポイントを明らかにするために行われる、測定および/またはデータ管理の過程を列記している。
【0112】
(表3)主要および副次的な試験目的、導かれる変数、ならびに測定の方法

【0113】
統計学的仮説:以下の仮定を試験の統計学的仮説に対して行う:
最良の支持的ケアに関するバックグラウンドの臨床的有用率は≦5%(p0)と推定する。記述された患者集団(EpCAM発現が陽性)における抗EpCAMの将来の使用は、真の臨床的有用率(π)が≧25%(p1)であるならばかなりの重要性を持つと考えられる。
【0114】
各治療選択肢(低/中等度および高度のEpCAM層の内部での、低用量または高用量群)に関して、以下の仮説を適用する:
H0ij(π≦p0ij):pij≦5%(バックグラウンドの臨床的有用性の確率)
H1ij(π≧p1ij):pij≧25%(抗EpCAMに関する関心対象の臨床的有用性の確率)、
ここでpiは、用量レベルiによって治療された低/中等度のEpCAM発現層(j=l)および高度のEpCAM発現層の患者(j=2)で観察された臨床的有用率であり、i=1は低用量レベルを表し、i=2は高用量レベルを示す。
【0115】
有意水準、多重比較および多重性:I型の過誤5%およびII型の過誤15%(検出力85%)は、臨床的有用率を決定するのに妥当とみなされる。多重比較のためにも多重性のためにも有意水準の調整は行わないものとする(治療選択肢間の確認用の比較は行わない)。
【0116】
標本数の決定:標本数の見積もりは、二項分布に対する通常の近似(Fleming (1982). Biometrics 38:143-51)ではなく正確な二項分布(A'Hern (2001). Statistics in Medicine 20:859-66)を用いる、フレミングの標準的な一段法に基づく。このアプローチが好ましいのは、通常の近似は標本数が少ない場合には正確でないためであり、正確な分布に基づく標本数およびカットオフポイントには、カットオフポイントが達成された場合に算出される信頼区間がp0を含まないという利点がある。このため、A'Hern(A'Hern (2001). Statistics in Medicine 20:859-66)によって提供された標本数の表を、この試験では用いる。
【0117】
これらの計算によれば、24週にわたる真の臨床的有用率が25%(p1)である場合に、奏効率に関する95%片側信頼区間(すなわち、第1種の過誤=5%)が5%(p0)を除外することを示す確率として85%(すなわち、検出力=85%)を得るためには、有効性に関して評価しうる患者は選択肢毎に24例が必要である。
【0118】
患者のおよそ10%を有効性に関して評価不能(脱落)と仮定すると、合計で少なくとも108例の患者(低/中等度のEpCAM層が54例で、うち27例を低用量、27例を高用量で治療し、高度のEpCAM発現層が54例で、うち27例を低用量、27例を高用量で治療する)を試験で無作為化すべきである。
【0119】
計画される解析
主要変数および副次変数を調査のために解析する。患者に関するすべての該当データ(CRFからのデータ、臨床検査データ)を治療選択肢および受診毎にグループ分けして記述的に解析する。
【0120】
個々の患者データはリスト(治療選択肢および患者番号によって区分)として提示する。CRF中に収集され、データベース中に含まれるすべてのデータをリスト化する。
【0121】
人口統計学的および他のベースライン特性:人口統計学的および他のベースライン特性を、連続変数に関しては要約統計量(患者の数、平均、標準偏差、最小値、中央値、最大値)により、カテゴリー変数に関しては絶対的および相対的な頻度により、全体的および治療選択肢毎にまとめる。ベースライン特性は、最初の抗EpCAM投与の前に行われた検査のすべての結果と定義される。
【0122】
主要エンドポイントに関して計画される解析:主解析は最大解析対象集団を基にし、プロトコール遵守セットを基にした解析を感度解析として行う。試験の主要エンドポイントは臨床的有用率である(RECISTに従って疾患の安定+CR+PRがみられる患者(実施例1.18参照))
【0123】
最初の段階では、各治療選択肢における臨床的有用率を別々に評価する。各治療選択肢において臨床的有用率に関して95%片側信頼区間を算出する。奏効率の95%片側信頼区間の下界が1つの治療選択肢においてp0=5%よりも大きければ、帰無仮説はこの治療選択肢に関して棄却される。この試験に関するカットオフポイントは4である;これは治療選択肢において臨床的有用性を有する患者が4例に達した時点で直ちに、各々の治療に関する帰無仮説を棄却しうることを意味する。
【0124】
・すべての治療選択肢が十分な活性を示す場合には、同じ用量レベルの治療選択肢をプールして、低/中等度のEpCAM発現を有する患者または高度のEpCAM発現を有する患者で同等でない臨床的有用率が得られるか用量レベルを比較する。2種の用量レベルの比較は、EpCAM発現および用量レベルという2つの要因を用いるロジスティック回帰モデルによって行い、そこから2種の用量レベルに関する適切なオッズ比を算出する。
【0125】
・両方の用量レベルが患者集団の一方のみ(低/中等度のEpCAM発現または高度のEpCAM発現を有する患者)で十分な活性を示す場合には、これらの2種の用量レベルを記述的に比較する。
【0126】
主要エンドポイントに関して計画される解析:第24週時点の最良の全体的腫瘍奏功率を、各治療選択肢に関して、主要エンドポイントについて記載したのと同じ様式で評価する。
【0127】
有害事象は、治療選択肢毎に全体的に、ならびに主要な臓器系の種類、高レベルの項、好ましい項および重症度によってグループ化した用量レベル毎にまとめる。
【0128】
治療選択肢間および用量レベル間で有害事象の全発生率の統計学的比較は行わない。
【0129】
データを、すべての試料採取日に関して全体的に、治療選択肢毎におよび用量レベル毎にまとめる。ベースライン後のすべての試料採取日に関するベースライン値からの絶対的変化を、全体的に、治療選択肢毎におよび用量レベル毎にまとめる。尿分析データに関して作成されたベースラインからの推移の表を、全体的に、治療選択肢毎におよび用量レベル毎にまとめる。
【0130】
薬力学パラメーターは、生データの要約統計量(患者の数、平均、標準偏差、最小値、中央値、最大値)、ならびに全試験日に関するベースラインからの変化を全体的および治療選択肢毎および用量レベル毎に提示することによって記述的に解析する。
【0131】
管理上のデータの審査
抗EpCAMを用いる以後の試験のさらなる戦略を決定する目的で、最良の全体的奏効率に関する管理上の解析を、以下のように行う。
・70例の患者が少なくとも1回の注入を受け、9回目の受診/第12週を経過した時点、または試験を早期中止した後に、
・最良の全体的奏効率に関するデータが適度にきれいであるとみなされること。
【0132】
この管理上の解析のために登録を中止することはしない。
【0133】
実施例1.16:質の管理および質の保証
試験場所での患者の組み入れの前には、独立倫理委員会(IEC)の承認ならびに治験担当者および試験スタッフの経歴といった特定の規制上の文書が入手可能でなければならない。
【0134】
試験は、治験依頼者によって指名された、資格を持ち、適切な訓練を受けた人によって監視される。
【0135】
実施例1.17:法的および倫理的な規定
この試験は、ICH三極ハーモナイズドガイドライン(ICH Harmonized Tripartite Guideline)、臨床試験実施基準ガイドライン、ならびに、第48回世界医師会(48th World Medical Association, Somerset West, Republic of South Africa, October 1996)によって修正された1964年6月のヘルシンキ宣言を含む該当するすべての法律および規制に従って実施される。
【0136】
患者の情報およびインフォームドコンセント
患者のインフォームドコンセントを得るための過程は、該当するすべての規制上の規定に従う。患者を臨床試験に含める前に、彼/彼女の自由意志に基づく表出されたインフォームドコンセントを書面として得なければならない。
【0137】
実施例1.18:RECIST基準
以下は前記の試験の全体にわたって用いられるRECIST基準の概要である。
【0138】
適格性
ベースライン時に測定可能な疾患を有する患者のみを、客観的な腫瘍治療効果を主要エンドポイントとするプロトコールに含めるべきである。
【0139】
測定可能な疾患‐少なくとも1つの測定可能な病変の存在。測定可能な疾患が孤立病変に限られる場合には、その新生物的な性質を細胞学/組織学によって確認すべきである。
【0140】
測定可能な病変‐少なくとも1つの寸法を正確に測定可能であり、最長の直径が従来の手法を用いて≧20mmである、またはらせん状CTスキャンを用いて≧10mmである病変。
【0141】
測定不能な病変‐他のすべての病変、これには小さな病変(最長の直径が従来の手法を用いて<20mmである、またはらせん状CTスキャンを用いて<10mmである)、すなわち骨病変、軟膜疾患、腹水、胸水/心嚢液貯留、炎症性乳房疾患、皮膚/肺リンパ管炎、嚢胞性病変、ならびに画像検査法による確認および追跡を行えない腹部腫瘤が含まれる。
【0142】
すべての測定は、定規またはキャリパーを用いて、メートル法表記で行って記録すべきである。すべてのベースライン評価は、治療の開始のできるだけ近くで行うべきであり、治療の開始の4週間前よりも先に行ってはならない。
【0143】
同定され、報告されたそれぞれの病変についてベースライン時および追跡期間中に特性描写を行うためには、同じ判定方法および同じ手法を用いるべきである。
【0144】
臨床的病変は、それらが表在性である場合(例えば、皮膚結節および触知可能なリンパ節)にのみ測定可能であるとみなされる。皮膚病変の場合に関しては、病変のサイズを推定するための定規を含むカラー写真による文書記録が推奨される。
【0145】
測定の方法
CTおよびMRIは、治療効果判定のために選択された標的病変を測定するための、現在利用可能で再現性のある最良の方法である。従来のCTおよびMRIは、10mmまたはそれ未満のスライス幅を刻み目として連続的に行うべきである。らせん状CTは5mmの連続再構築アルゴリズムを用いて行うべきである。これは胸部、腹部および骨盤の腫瘍に対して当てはまる。頭頸部腫瘍および四肢のそれは通常、特定のプロトコールを必要とする。
【0146】
胸部X線上の病変は、それらの境界線が明瞭であり、空気の入った肺に取り囲まれている場合には、測定可能な病変として許容される。しかし、CTが好ましい。
【0147】
試験の主要エンドポイントが客観的な治療効果の評価である場合には、腫瘍病変を測定するために超音波(US)を用いるべきではない。しかし、それは、皮下病変および甲状腺結節といった表在性の触知可能なリンパ節の臨床的測定に代わるものとして考えられる選択肢である。USはまた、通常は臨床的検査によって判定される表在性病変の完全な消失を確認するためにも有用な可能性がある。
【0148】
客観的な腫瘍評価のための内視鏡検査および腹腔鏡検査の利用については、まだ妥当性が完全かつ広く検証されてはいない。この特定の状況におけるそれらの使用は、いくつかのセンターでしか得られないであろう、非常に複雑な装置および高レベルの専門技術を必要とする。このため、客観的な腫瘍治療効果のためのそのような手法の利用は、特化したセンターにおける妥当性検証の目的に限定されるべきである。しかし、そのような手法は、生検試料が得られている場合には、完全な病理学的治療効果を確認する上では有用な可能性がある。
【0149】
治療効果の判定のために腫瘍マーカーのみを用いることはできない。マーカーが最初に正常上限を上回るならば、すべての病変が消失した場合に患者を完全臨床奏効と判断するためには、それらは正常化しなければならない。
【0150】
細胞学および組織学は、稀な場合(例えば、生殖細胞腫瘍などの腫瘍型における残存良性病変と残存悪性病変とを識別するための治療の後)に、PRとCRとを鑑別するために用いることができる。
【0151】
「標的」および「非標的」病変のベースラインでの記録
臓器毎に最大で5個、すべての関与臓器を代表した合計で10個までの病変である、すべての測定可能な病変を、ベースライン時に標的病変として同定し、記録および測定すべきである。
【0152】
標的病変は、それらのサイズ(最長の直径を有する病変)および正確な反復測定(画像検査法による、または臨床的に)に対するそれらの適性に基づいて選択されるべきである。すべての標的病変に関する最長の直径(LD)の合計値を算出し、ベースラインの合計LDとして報告する。ベースラインの合計LDは、目的腫瘍の特性描写を行うための参照基準として用いられる。
【0153】
すべての他の病変(または疾患の部位)は非標的病変として同定されるべきであり、同じくベースライン時に記録されるべきである。これらの病変の測定は必要ではないが、それぞれの有無は追跡全体にわたって調べるべきである。
【0154】
治療効果の基準
標的病変の評価
* 完全奏効(CR):すべての標的病変の消失
* 部分奏効(PR):ベースラインの合計LDを参照基準として、標的病変のLDの合計値の少なくとも30%の減少
* 疾患の進行(PD):治療開始以来に記録された最小の合計LDを参照基準として、標的病変のLDの合計値の少なくとも20%の増加、または1つもしくは複数の新たな病変の出現
* 疾患の安定(SD):治療開始以来の最小の合計LDを参照基準として、PRを適切とする十分な縮小もなく、PDを適切とする十分な増大もない
【0155】
非標的病変の評価
* 完全奏効(CR):すべての非標的病変の消失、および腫瘍マーカーレベルの正常化
* 不完全奏効/疾患の安定(SD):1つまたは複数の非標的病変の持続、または/および正常範囲を上回る腫瘍マーカーレベルの維持
* 疾患の進行(PD):1つまたは複数の新たな病変の出現、および/または既存の非標的病変の明白な進行(1)
【0156】
(1)「非標的」病変のみの明らかな進行は例外的であるが、そのような状況では、治療にあたる医師の見解が優先すべきであり、進行状態は審査委員団(または試験の長)によって後に確認されるべきである。
【0157】
最良の全体的治療効果の評価
最良の全体的治療効果は、治療の開始から疾患の進行/再発までに記録された最良の治療効果のことである(PDに関する参照基準は治療開始以来に記録された最小の測定値とする)。一般に、患者の最良の治療効果の割り付けは、測定および確認基準の両方の達成に依存する。

【0158】
その時点で疾患進行の客観的な証拠はないが治療の中断を必要とする、健常状態の全体的な悪化を伴う患者は、「全身性の悪化」を有すると分類すべきである。治療の中断後も、客観的な進行を文書記録するためにあらゆる努力を払うべきである。
【0159】
状況によっては、残存疾患を正常組織と区別することが難しいこともある。完全奏効の評価がこの決定に依存している場合には、完全奏効状態を確認するために、残存病変を調べること(細針吸引/生検)が推奨される。
【0160】
確認
客観的な治療効果の確認の主な目標は、観察される奏功率の過剰評価を避けることである。治療効果の確認が実施可能でない場合には、そのような試験のアウトカムを報告する際に、治療効果が確認されていないことを明らかにすべきである。
【0161】
PRまたはCRの状態に割り付けられるためには、腫瘍測定値の変化を、治療効果に関する基準が最初に満たされてから4週間以降に行われるべきである反復測定によって確認しなければならない。試験プロトコールによって決定された、より長い間隔も適切なことがある。
【0162】
SDの場合には、追跡での測定値が、SD基準を、試験参加後に少なくとも1回、試験プロトコールに規定された最小の間隔(一般に、6〜8週を下回らない)で満たさなければならない。
【0163】
全奏効期間
全奏効期間は、測定値の基準がCRまたはPR(最初に記録された状態がどちらであっても)に関して満たされた時点から、再発またはPDが客観的に文書記録された時点までとして計測され、PDに関する参照基準は治療開始以来に記録された最小の測定値とする。
【0164】
疾患の安定の期間
SDは治療の開始から疾患の進行に関する基準が満たされるまで計測され、参照基準は治療開始以来に記録された最小の測定値とする。SDの期間の臨床的重要性は、腫瘍のタイプおよびグレードが異なればさまざまである。このため、プロトコールは、SDの決定のために2つの測定間に必要とされる最小の時間間隔を特定することが大いに推奨される。この時間間隔は、そのような状態が試験中の集団にもたらす可能性のある、期待される臨床的有用性を考慮に入れるべきである。
【0165】
治療効果の審査
奏功率が主要エンドポイントである治験に関しては、試験の完了時に、すべての治療効果を試験とは無関係な専門家が見直すことが強く推奨される。患者のファイルおよび放射線像を同時に見直すこことが最善のアプローチである。
【0166】
結果の報告
試験に含められたすべての患者は、たとえプロトコール治療からの大きな逸脱があっても、または彼らが不適格であったとしても、治療に対する効果について判定しなければならない。各患者は以下のカテゴリーの1つに割り付けられる:1)完全奏効、2)部分奏効、3)疾患の安定、4)疾患の進行、5)悪性疾患による早期死亡、6)毒性による早期死亡、7)他の原因による早期死亡、または9)不明(判定不能、不十分なデータ)。
【0167】
適格基準を満たした患者はすべて、奏効率に関する主解析に含めるべきである。治療効果カテゴリー4〜9にある患者は、治療効果を得ることに失敗した(疾患の進行)とみなされるべきである。したがって、不正な治療スケジュールまたは薬物投与は、奏効率の解析からの除外とはされない。カテゴリー4〜9に関する厳密な定義はプロトコール特異的であると考えられる。
【0168】
結論はすべて、すべての適格患者を基にすべきである。
【0169】
続いてサブ解析を、大きなプロトコール逸脱(例えば、他の理由による早期死亡、治療の早期中断、大きなプロトコール違反、など)が特定された者を除外した、患者のサブセットを基にして行う。しかし、これらのサブ解析は、治療有効性に関する結論を引き出すための基盤としては役立たない可能性もあり、患者を解析から除外する理由は明確に報告されるべきである。
【0170】
95%信頼区間が提供されるべきである。
【0171】
実施例1.19:ECOG動作状態の概要
ECOG動作状態の尺度は、Oken, M.M. et al.(1982) Am J Clin Oncol 5:649-655に開示されている。
【0172】
実施例2:抗EpCAMの第II相臨床試験に関する管理上のデータの審査
実施例2.1:試験の概要および序論
実施例1で上述した通りに臨床試験を行った。この試験の結果を以下の実施例2に記す。
【0173】
方法:
無作為化された非盲検多施設並行群第II相試験。この試験は、EpCAM検査結果が陽性の場合の、2種類の用量での24週間の治療にわたる抗EpCAMの有効性および安全性を評価するためにデザインされた。センターでの無作為化処理では、スクリーニング時に実施したEpCAM検査の結果に従って層別化を行った。EpCAM層の1つへの登録後に、患者を低用量治療群または高用量治療群のいずれかに無作為に割り付けた。
【0174】
無作為化および治療を行った患者の数:112例(28例の患者は未だに継続中である)
【0175】
解析した患者の数:73例の治療患者(37例は抗EpCAM高用量、36例は抗EpCAM低用量)
【0176】
前記の解析のために解析したデータ:
これらの結果を導くためのすべてのデータは、GCP規定に従ってモニターしたが、データは完全にきれいではなかった。第12週までのすべての受診を完了し、第6週および12週に必要なすべての腫瘍評価を受けたすべての患者のCRF(n=23)を、大きなプロトコール逸脱を発見すること、および安全性データをきれいなものにすることに重点を置く医学的審査の対象とした。これらの23例の患者に対して、放射線学データをこの解析のために中央部門で審査した。
【0177】
解析のための集団の定義:
・安全性解析対象集団(SAF):割り付けられた試験投薬の少なくとも1回の用量を受けたすべての患者。
・最大解析対象集団(FAS):EpCAM陽性(低/中等度または高発現)腫瘍を有し、臨床的な疾患進行以外の理由による早期中断の場合には治療開始後に少なくとも1回の腫瘍評価を受けている、安全性解析対象集団からの患者。
【0178】
安全性データの解析はSAFを基にした。
【0179】
ベースラインのデータおよび有効性エンドポイントの解析は最大解析対象集団を基にした。
【0180】
解析したエンドポイント(上記の実施例1.1と比較のこと):
・12週時点の最良の全体的腫瘍奏効(OTR)率(RECISTに従って完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)
・12週時点の臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)
・24週時点の臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)
・無作為化からの時間および治療開始からの代替的な時間としての無増悪期間(TTP)。
【0181】
解析したサブグループ:
EpCAMの高発現例、中等度発現例および低発現例は、Gastl et al.(2000) Lancet 356, 1981-2に従って同定した。
【0182】
以下のサブグループを解析した:
・低用量抗EpCAMによって治療したEpCAM低/中等度発現例(「低用量抗EpCAM/低EpCAM」)
・高用量抗EpCAMによって治療したEpCAM低/中等度発現例(「高用量抗EpCAM/低EpCAM」)
・低用量抗EpCAMによって治療したEpCAM高発現例(「低用量抗EpCAM/高EpCAM」)
・高用量抗EpCAMによって治療したEpCAM高発現例(「高用量抗EpCAM/高EpCAM」)
・低または高用量の抗EpCAMによって治療したEpCAM低/中等度発現例(「低EpCAM」)
・低または高用量の抗EpCAMによって治療したEpCAM高発現例(「高EpCAM」)
・EpCAM低/中等度発現例またはEpCAM高発現例における低用量抗EpCAM(「低用量抗EpCAM」)
・EpCAM低/中等度発現例またはEpCAM高発現例における高用量抗EpCAM(「高用量抗EpCAM」)。
【0183】
行った解析:
以上に定義した治療効果(CBRまたはOTR)エンドポイントを以下のように解析した:
・各サブグループ(上記参照)および全患者に関するCBR/OTR率。
・以下の比較のためのCBR/OTR率に関するフィッシャーの直接確率検定:
・各サブグループ(上記参照)と他のすべての患者を合わせたものとの比較
・「低用量抗EpCAM/低EpCAM」と「低用量抗EpCAM/高EpCAM」との比較
・「低用量抗EpCAM/低EpCAM」と「高用量抗EpCAM/低EpCAM」との比較
・「高用量抗EpCAM/高EpCAM」と「低用量抗EpCAM/高EpCAM」との比較
・「高用量抗EpCAM/高EpCAM」と「高用量抗EpCAM/低EpCAM」との比較。
【0184】
臨床的な疾患無増悪期間は、最初の抗EpCAM注入の日(または感度解析においては無作為化の日)と臨床的な疾患進行の日、すなわち、疾患の進行の最初の発生日との間の期間としてそれぞれ定義される。臨床な疾患進行が観察されない場合には、各々の時間幅を試験終了日によって修正した。試験終了日に関するデータがない場合には、行った最後の受診の日を代わりに用いた。
【0185】
無増悪期間(TTP)エンドポイントは以下のように解析した:
・各サブグループおよび全患者に関するTTPの中央値(見積り可能な場合)
・以下の比較のためのTTPに関するログランク検定:
○各サブグループと他のすべての患者を合わせたものとの比較
○「低用量抗EpCAM/低EpCAM」と「低用量抗EpCAM/高EpCAM」との比較
○「低用量抗EpCAM/低EpCAM」と「高用量抗EpCAM/低EpCAM」との比較
○「高用量抗EpCAM/高EpCAM」と「低用量抗EpCAM/高EpCAM」との比較
○「高用量抗EpCAM/高EpCAM」と「高用量抗EpCAM/低EpCAM」との比較
【0186】
実施例2.2:結果‐試験患者
解析したデータセット
解析のための集団は表4に表の形で示されている。
【0187】
最大解析対象集団(FAS)(n=67)は、治療効果および無増悪期間の判定のための解析集団である。EpCAM状態は2つの抗EpCAM用量群において等しく分布しており、各治療群においてEpCAM低発現例は約38%であり、EpCAM高発現例は57%であった。
【0188】
(表4)解析のための集団1

1 管理上のデータの審査に含めた患者の数(%)
2 最大解析対象集団(FAS):EpCAM陽性(低/中等度または高発現)腫瘍を有し、臨床的な疾患進行以外の理由による早期中断の場合には治療開始後に少なくとも1回の腫瘍評価を受けている、安全性解析対象集団からの患者。
【0189】
実施例2.3:結果‐全体的腫瘍奏効率(OTR)および臨床的有用率(CBR)に関する有効性解析
試験プロトコールによれば、試験の主要エンドポイントは24週時点の臨床的有用率である。
【0190】
「最良の全体的腫瘍奏効率(OTR)」
EpCAM高発現例および低発現例ならびに全体に関するFASにおける「12週時点の最良の全体的腫瘍奏効率(OTR)」、「12週時点の臨床的有用率(CBR)」および「24週時点の臨床的有用率(CBR)」は以下の表5および表6に提示されている。
【0191】
RECIST基準に従ったPRまたはCRの点からみた治療効果は、中央部門での放射線学的評価ではFASのいずれの患者でも確認することができなかった。
【0192】
W12での「臨床的有用率(CBR)」
全体的には、FASの67例の患者のうち16例(24%)が12週時点で疾患安定化(SD)を示した。12週時点の臨床的有用率に関して治療群間に有意差は認められず、低用量群では21.9%、高用量群では25.7%であった。CBRは高EpCAM群の方が低EpCAM群よりも高かったが、この差は統計学的に有意ではなかった。
【0193】
RECISTに従った寛解は発見されなかったため、臨床的有用率には、疾患の安定がみられた患者のみを含めた(上記参照)。
【0194】
(表5)12週時点の臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)‐最大解析対象集団

1 RECISTに従って臨床的有用性を判定しうる患者における臨床的有用性がみられる患者の数
2 フィッシャーの両側直接確率検定
3 低用量群/高用量群におけるN
【0195】
W24での「臨床的有用率(CBR)」
高用量群では24週時点で低用量群(6.3%)よりも高い臨床的有用率(14.3%)が認められた。高用量群では、CBRは低および高EpCAMサブグループについて同一(14.3%)であった。低用量群では、CBRは高およびEpCAM低発現例について同程度であった(5.3%対7.7%)。
【0196】
PRまたはCRが発見されなかったため、CBRは疾患の安定がみられた患者のみを基にしている。
【0197】
(表6)24週時点での臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)

1 RECISTに従って臨床的有用性を判定しうる患者における臨床的有用性がみられる患者の数
2 フィッシャーの両側直接確率検定
3 低用量群/高用量群におけるN
【0198】
有効性解析:無増悪期間
臨床的な疾患無増悪期間は、最初の抗EpCAM注入の日(または感度解析においては:無作為化の日)と、臨床的な疾患進行の日、すなわち、RECISTに従った疾患の進行の最初の発生日との間の期間として定義した。臨床な疾患進行が観察されない場合には、各々の時間幅を試験終了日によって修正した。試験終了日に関するデータが得られない場合には、行った最後の受診の日を代わりに用いた。
【0199】
低用量群および高用量群ならびにEpCAMサブグループに関するFASにおける無増悪期間の中央値は、表7(治療開始から臨床的な疾患進行までの時間)および表8(無作為化から臨床的な疾患進行までの時間)に示されている。
【0200】
全体的に抗EpCAM高用量は、抗EpCAM低用量治療と比較して、無増悪期間の中央値(最初の注入からの時間として計算)の43日から78日への明らかな延長を示した(図2に示されている)。「生存」曲線を検定したところ、この差は統計学的に有意であった(p=0.0348;ログランク検定)(図3に示されている)。低EpCAM発現の患者と高EpCAM発現の患者を比較した場合には、無増悪期間の中央値(最初の注入からの時間として計算)に同様の差が観察された(それぞれ42日から80日;p=0.0431;ログランク検定)。無増悪期間の中央値(最初の注入からの時間として計算)の最大値は、高用量の抗EpCAMによって治療された高EpCAM発現の患者で観察された(90日;p=0.0238;ログランク検定‐他のすべての患者と比較)(図5に示されている)。
【0201】
(表7)無増悪期間の中央値(注入の開始から臨床的な疾患進行までの時間[日])‐最大解析対象集団

1 無増悪期間の中央値(日)
2 治療群間の差に関するログランク検定
3 低用量群/高用量群におけるN
【0202】
表7のデータは、図4に図式的に表示されている。
【0203】
無作為化の日から計算した無増悪期間については同等の結果が見いだされた。この場合も、全体的に抗EpCAM高用量は、抗EpCAM低用量治療と比較して、無増悪期間の中央値(無作為化からの時間として計算)の46日から79日への明らかな延長を示した。「生存」曲線を検定したところ、この差は統計学的に有意であった(p=0.0441;ログランク検定)。治療による差は、高EpCAM群でより顕著であり、無増悪期間の中央値は低用量および高用量の高EpCAM群ではそれぞれ63日および91日であり、低用量および高用量の低EpCAM群ではそれぞれ43日および53日であった。
【0204】
(表8)無増悪期間の中央値(無作為化から臨床的な疾患進行までの時間[日])‐最大解析対象集団

【0205】
有効性に関する結論
試験プロトコールに基づき、
‐最良の全体的奏効率(OTR)
‐臨床的有用率(CBR);および
‐無増悪期間(TTP)
に関して、高用量抗EpCAM群と低用量抗EpCAM群を、全体的な集団ならびに低および高EpCAMサブグループにおいて比較する解析を行った。
【0206】
12週および24週時点(それぞれW12およびW24)での臨床的有用率を、それぞれの時点で疾患の安定を示した全患者を含めて確かめることができた。
【0207】
‐W12では、CBRは高用量抗EpCAM群の方が低用量群よりも幾分高く(25.7%対21.9%)、さらに両方の用量群とも高EpCAMサブグループの方が高い率を示した。
【0208】
‐W24では、CBRは高用量抗EpCAM群の方が高かった(14.3%に対して低用量抗EpCAM群では6.3%)。EpCAMサブグループ間に顕著な差は見いだされなかった。
【0209】
全体的な標本における無増悪期間の中央値については、抗EpCAM高用量が抗EpCAM低用量と比較して明らかな延長を示し(43日から78日に)、生存曲線を検定したところ、この差は統計学的に有意であった(p=0.0348、ログランク検定)。無増悪期間の中央値(最初の注入からの時間として計算)は、高用量の抗EpCAMによって治療された高EpCAM発現の患者で観察された(90日;p=0.0238;他のすべての患者と比較したログランク検定)。
【0210】
全体的な結論
得られたデータにより、少なくとも7例の患者では長期的な疾患安定化(>第24週)が示されており、何例かの患者は未だに継続中である。
【0211】
図2〜5から明らかに見てとれるように、無増悪期間の評価により、高用量抗EpCAM集団が統計学的に有意に達して優れるとする「生存期間」の顕著な延長が示された。具体的には、図5に示されているように、高用量の抗EpCAMを投与されている高EpCAM発現の患者では、無増悪生存期間が有意に延長した(90日に対して、他の群では41〜49日)。
【0212】
実施例3:抗EpCAMの第II相臨床試験に関する最終的試験報告
実施例3.1:試験の概要および序論
臨床試験を実施例1に上述した通りに行った。この試験の結果を以下の実施例3に記す。
【0213】
方法:
無作為化された非盲検多施設並行群第II相試験。この試験は、EpCAM検査結果が陽性の場合の、2種類の用量での24週間の治療にわたる抗EpCAMの有効性および安全性を評価するためにデザインされた。センターでの無作為化処理では、スクリーニング時に実施したEpCAM検査の結果に従って層別化を行った。EpCAM層の1つへの登録後に、患者を低用量治療群または高用量治療群のいずれかに無作為に割り付けた。
【0214】
無作為化および治療を行った患者の数:112例
【0215】
解析した患者の数:112例の治療患者(56例は抗EpCAM高用量、56例は抗EpCAM低用量)、うち109例の患者で検査結果がEpCAM+であった。
【0216】
前記の解析のために解析したデータ:
これらの結果を導くためのすべてのデータは、GCP規定に従ってモニターされ、きれいにされており、最終解析を行う前にデータベースをロックした。
【0217】
解析のための集団の定義:
・安全性解析対象集団(SAF):割り付けられた試験投薬の少なくとも1回の用量を受けたすべての患者。
・最大解析対象集団(FAS):EpCAM陽性(低/中等度または高発現)腫瘍を有し、臨床的な疾患進行以外の理由による早期中断の場合には治療開始後に少なくとも1回の腫瘍評価を受けている、安全性解析対象集団からの患者。
【0218】
安全性データの解析はSAFを基にした。
【0219】
ベースラインのデータおよび有効性エンドポイントの解析は最大解析対象集団を基にした。
【0220】
解析したエンドポイント(上記の実施例1.1と比較のこと):
・24週時点の臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定[SD]または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)
・12週時点の最良の全体的腫瘍奏効(OTR)率(RECISTに従って完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)
・12週時点の臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定[SD]または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)
・無作為化からの時間および治療開始からの代替的な時間としての無増悪期間(TTP)。
【0221】
解析したサブグループ:
EpCAMの高発現および中等度/低発現例は、Gastl et al.(2000) Lancet 356, 1981-2に従って同定した。
【0222】
以下のサブグループを解析した:
・低用量抗EpCAMによって治療したEpCAM低/中等度発現例(「低用量抗EpCAM/低EpCAM」)
・高用量抗EpCAMによって治療したEpCAM低/中等度発現例(「高用量抗EpCAM/低EpCAM」)
・低用量抗EpCAMによって治療したEpCAM高発現例(「低用量抗EpCAM/高EpCAM」)
・高用量抗EpCAMによって治療したEpCAM高発現例(「高用量抗EpCAM/高EpCAM」)
・低または高用量の抗EpCAMによって治療したEpCAM低/中等度発現例(「低EpCAM」)
・低または高用量の抗EpCAMによって治療したEpCAM高発現例(「高EpCAM」)
・EpCAM低/中等度発現例またはEpCAM高発現例における低用量抗EpCAM(「低用量抗EpCAM」)
・EpCAM低/中等度発現例またはEpCAM高発現例における高用量抗EpCAM(「高用量抗EpCAM」)。
【0223】
行った解析:
以上に定義した治療効果(CBRまたはOTR)エンドポイントを以下のように解析した:
・各サブグループ(上記参照)および全患者に関するCBR/OTR率。
【0224】
臨床的な疾患無増悪期間は、最初の抗EpCAM注入の日(または感度解析においては無作為化の日)と臨床的な疾患進行の日、すなわち、疾患の進行の最初の発生日との間の期間としてそれぞれ定義される。臨床な疾患進行が観察されない場合には、各々の時間幅を試験終了日によって修正した。試験終了日に関するデータがない場合には、行った最後の受診の日を代わりに用いた。
【0225】
無増悪期間(TTP)エンドポイントは以下のように解析した:
・各サブグループおよび全患者に関するTTPの中央値(見積り可能な場合)
・以下の比較のためのTTPに関するログランク検定:
○各サブグループと他のすべての患者を合わせたものとの比較
○「低用量抗EpCAM/低/中等度のEpCAM」と「低用量抗EpCAM/高EpCAM」との比較
○「低用量抗EpCAM/低/中等度EpCAM」と「高用量抗EpCAM/低/中等度EpCAM」との比較
○「高用量抗EpCAM/高EpCAM」と「低用量抗EpCAM/高EpCAM」との比較
○「高用量抗EpCAM/高EpCAM」と「高用量抗EpCAM/低/中等度EpCAM」との比較
○「低用量抗EpCAM/低/中等度EpCAM」と「高用量抗EpCAM/高EpCAM」との比較
○「低用量抗EpCAM」と「高用量抗EpCAM」との比較
○「高EpCAM」と「低/中等度EpCAM」との比較
【0226】
実施例3.2:結果‐試験患者
解析したデータセット
解析のための集団は表9に表の形で示されている。
【0227】
最大解析対象集団(FAS)(n=109)は、治療効果および無増悪期間の判定のための解析集団である。
【0228】
(表9)解析のための集団1

1 患者の数、平均±標準偏差(最小-最大、中央値)
2 患者の数(%)
【0229】
実施例3.3:結果‐全体的腫瘍奏効率(OTR)および臨床的有用率(CBR)に関する有効性解析
試験プロトコールによれば、試験の主要エンドポイントは24週時点の臨床的有用率である。
【0230】
「最良の全体的腫瘍奏効率(OTR)」
EpCAM高発現例および低発現例ならびに全体に関するFASにおける「12週時点の最良の全体的腫瘍奏効率(OTR)」、「12週時点の臨床的有用率(CBR)」および「24週時点の臨床的有用率(CBR)」は以下の表10および表11に提示されている。
【0231】
2件の治療効果(RECIST基準に従ったPRまたはCRの点で)が地域での放射線学的評価によって診断されたが、中央部門の放射線学的評価ではFASのいずれの患者でも確認することができなかった。
【0232】
W24での「臨床的有用率(CBR)」
高用量群では24週時点で、有意ではないものの、低用量群(4.5%)よりも臨床的有用率(CBR)が高い傾向(7.9%)が認められた。同様に、EpCAM高発現例に関するCBRは、低/中等度のEpCAM発現例よりもCBR率が高い傾向を示した(7.3%対3.7%)。PRまたはCRが発見されなかったため、CBRは疾患の安定がみられた患者のみを基にしている。
【0233】
(表11)24週時点での臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)

1 患者の数(%)
2 「最終的な」判定による
3 未だに試験が継続中で、それぞれの治療効果判定が中央部門/IRABの判定で「判定不能」と分類されている患者
【0234】
W12での「臨床的有用率(CBR)」
全体的には、FASの109例の患者のうち17例(16%)が12週時点で疾患安定化(SD)を示した。高用量群では12週時点で、有意ではないものの、低用量群(14.5%)よりも臨床的有用率(CBR)が高い傾向(16.7%)が認められた。同様に、EpCAM高発現例に関するCBRは、低/中等度のEpCAM発現例よりもCBR率が高い傾向を示した(18.9%対8.6%)。
【0235】
(表10)12週時点の臨床的有用率(CBR)(RECISTに従って疾患の安定または完全寛解[CR]または部分寛解[PR]がみられる患者)‐最大解析対象集団

1 患者の数(%)
2 「最終的な」判定による
3 未だに試験が継続中で、それぞれの治療効果判定が中央部門/IRABの判定で「判定不能」と分類されている患者
【0236】
有効性解析:無増悪期間
臨床的な疾患無増悪期間は、最初の抗EpCAM注入の日(または感度解析においては無作為化の日)と、臨床的な疾患進行の日、すなわち、RECISTに従った疾患の進行の最初の発生日との間の期間として定義した。臨床な疾患進行が観察されない場合には、各々の時間幅を試験終了日によって修正した。試験終了日に関するデータが得られない場合には、行った最後の受診の日を代わりに用いた。
【0237】
無増悪期間に関するカプラン-マイヤー(KM-)曲線の解析が、図6〜8(治療の開始から臨床的な疾患進行までの時間)に示されている。
【0238】
全体的に抗EpCAM高用量は、抗EpCAM低用量治療と比較して、経時的に無増悪期間の有意な延長を示した(図6に示されている;ハザード比(HR)=0.666)。「生存」曲線を検定したところ、この差は統計学的に有意であった(p=0.0465;ログランク検定)。同様に、低/中等度EpCAM発現の患者と高EpCAM発現の患者を比較した場合には、無増悪期間の中央値(最初の注入からの時間として計算)に同様の差の傾向が観察された(図7;HR=0.706;p=0.1157;ログランク検定)。無増悪期間(最初の注入からの時間として計算)に関する最大のリスク低下は、高用量の抗EpCAMによって治療された高EpCAM発現の患者で観察された(HR=0.433;p=0.0057;ログランク検定‐低用量の抗EpCAMによって治療された低EpCAM発現の患者と比較)(図8に示されている)。
【0239】
有効性に関する結論
試験プロトコールに基づき、
‐最良の全体的奏効率(OTR)
‐臨床的有用率(CBR);および
‐無増悪期間(TTP)
に関して、高用量抗EpCAM群と低用量抗EpCAM群を、全体的な集団ならびに低および高EpCAMサブグループにおいて比較する解析を行った。
【0240】
12週および24週時点(それぞれW12およびW24)での臨床的有用率を、それぞれの時点で疾患の安定を示した全患者を含めて確かめることができた。
【0241】
‐W12では、CBRは高用量抗EpCAM群の方が低用量群よりも幾分高く(16.7%対14.5%)、さらに両方の用量群とも高EpCAMサブグループの方が高い率を示した(18.9%に対して低/中等度EpCAM発現例では8.6%)。
【0242】
‐W24では、CBRは高用量抗EpCAM群の方が高く(7.9%に対して低用量抗EpCAM群では4.5%)、さらに両方の用量群とも高EpCAMサブグループの方が高い率を示した(7.3%に対して低/中等度EpCAM発現例では3.7%)。
【0243】
全体的な標本における無増悪期間の解析については、抗EpCAM高用量が抗EpCAM低用量と比較して明らかな延長を示し(R=0.666)、生存曲線を検定したところ、この差は統計学的に有意であった(p=0.0465、ログランク検定)。無増悪期間(最初の注入からの時間として計算)の最大の延長は、高用量の抗EpCAMによって治療された高EpCAM発現の患者で観察された(HR=0.433;p=0.0057;ログランク検定‐低用量の抗EpCAMによって治療された低EpCAM発現の患者と比較)。
【0244】
全体的な結論
得られたデータにより、中央部門での放射線学的な審査により、少なくとも6例の患者では長期的な疾患安定化(>第24週)が示されている。
【0245】
図6〜8から明らかに見てとれるように、無増悪期間の評価により、高用量抗EpCAM集団が統計学的に有意に達して優れるとする「生存期間」の顕著な延長が示された。具体的には、図8に示されているように、高用量の抗EpCAMを投与されている高EpCAM発現の患者では、無増悪生存期間が有意に延長した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト転移性乳癌の治療用の医薬品の製造のための、SEQ ID NO. 3、4、5、6、7、および/または8を含む抗EpCAM抗体の使用。
【請求項2】
抗EpCAM抗体がSEQ ID NO. 1および/または2を含む、請求項1記載の使用。
【請求項3】
治療が転移性乳癌の長期的安定化を含む、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
転移性乳癌が腫瘍-リンパ節転移-遠隔転移(「TNM」)体系に従ってステージIVとして分類される、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
医薬品が、2mg/kg体重の少なくとも1回の負荷量と、それに続く複数回の維持量として投与され、各維持量が2mg/kg体重である、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
医薬品が、6mg/kg体重の少なくとも1回の負荷量と、それに続く複数回の維持量として投与され、各維持量が6mg/kg体重である、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
その/それぞれの負荷量が毎週投与され、各維持量が隔週投与される、請求項5または6記載の使用。
【請求項8】
負荷量が1回ずつ、治療の第1、2、および3週のそれぞれの最初に投与され、それに続いて11回の維持量が投与され、維持量は1回ずつ、治療の第4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、および24週のそれぞれの最初に投与される、請求項7記載の使用。
【請求項9】
抗体が0.9%塩化ナトリウム溶液を含む溶液において投与される、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
抗体が静脈内に投与される、前記請求項のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
ヒト転移性乳癌を治療する方法であって、SEQ ID NO. 3、4、5、6、7、および/または8を含む抗EpCAM抗体をヒトに投与する段階を含む方法。
【請求項12】
抗EpCAM抗体がSEQ ID NO. 1および/または2を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
治療が転移性乳癌の長期的安定化を含む、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
転移性乳癌が腫瘍-リンパ節転移-遠隔転移(「TNM」)体系に従ってステージIVとして分類される、請求項11〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
抗EpCAM抗体が、2mg/kg体重の少なくとも1回の負荷量と、それに続く複数回の維持量として投与され、各維持量が2mg/kg体重である、請求項11〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
抗EpCAM抗体が、6mg/kg体重の少なくとも1回の負荷量と、それに続く複数回の維持量として投与され、各維持量が6mg/kg体重である、請求項11〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
その/それぞれの負荷量が毎週投与され、各維持量が隔週投与される、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
負荷量が1回ずつ、治療の第1、2、および3週のそれぞれの最初に投与され、それに続いて11回の維持量が投与され、維持量は1回ずつ、治療の第4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、および24週のそれぞれの最初に投与される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
抗体が0.9%塩化ナトリウム溶液を含む溶液において投与される、請求項11〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
抗体が静脈内に投与される、請求項11〜19のいずれか一項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67645(P2013−67645A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−272352(P2012−272352)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−553685(P2008−553685)の分割
【原出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(512069865)アムゲン リサーチ (ミュンヘン) ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】