説明

転送サービスシステム、セッション制御サーバ、および転送サービス制御方法

【課題】セッションを開始して呼を接続するネットワークにおいて着信呼を適切に転送することを可能にする技術を提供する。
【解決手段】加入者データ蓄積手段は、着信呼を転送するか否かを示す転送設定情報と、転送先電話番号と、対応する端末装置のサービス能力を示す能力情報とを含む転送シナリオを蓄積する。転送判定手段は、着信のセッション開始要求を受け付け、転送シナリオを参照して、転送設定情報が転送することを示し、かつ、端末装置のサービス能力が、セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、セッション開始要求で要求される呼を転送すると判定し、そうでない場合には呼を転送しないと判定する。転送処理手段は、呼を転送しないと判定されたら、セッション開始要求を着呼先の端末装置に中継し、呼を転送すると判定されたら、セッション開始要求を、転送先電話番号の端末装置を収容する制御装置に中継する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代ネットワーク(以下「NGN(Next Generation Network)」と称する)における着信呼を転送する転送サービスを実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
NGNは、一般的な電話サービスをはじめ、固定通信と移動通信を融合したサービスや今後開発される新しい情報通信サービスを提供する基盤ネットワークである(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、NGNは、音声通信のみを対象とするPSTN(Public Switched Telephone Network)とは異なり、高機能なメディアを使えることに特徴がある。例えば、オーディオメディアでは、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector) G.711だけではなく、G.722やG.711.1を使った通信に対応している。また、映像メディアでは、H.264やハイビジョンビデオのような高機能な映像を使った通信にも対応している。
【0004】
このような高機能メディア通信を開始するために、NGNでは、通信種別や帯域などの情報をやり取りして帯域を確保するだけではなく端末間でのメディアの符号化則が事前に調整される。発信端末が要求する通信メディア(ペイロードタイプ)と、着信端末がサポートしている通信メディア(ペイロードタイプ)が不一致の場合、適切な通信を確立することができないからである。
【0005】
ところで、従来のPSTNでは、利用者にとって便利な様々な付加サービスが提供されている。付加サービスのなかでも転送サービスは重要なサービスの一つであり、NGNにおいても同様のサービスを提供する必要がある。転送サービスとは、着信があったとき予め設定した条件に基づき着信呼を転送先に転送するサービスのことである。
【0006】
PSTNにおいて提供されている転送サービスでは、着信呼を、あらかじめ指定された転送先に転送するに際して、無条件で転送する、無応答時に転送する、登録した電話番号からの着信呼のみを転送するといった多様な転送条件を設定できるようになっている。これにより、例えば、発加入者の電話番号を予め登録しておくことで、発加入者を選別し、重要度の高い発加入者からの電話だけを、指定した転送先に転送することが可能になる(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、IP(Internet Protocol)網を用いたシステムにおける従来の転送技術として、IP網およびPSTNの両方の網に接続するIP/PSTN統合制御装置を設置するというものがある(特許文献2参照)。IP/PSTN統合制御装置は、IP網に接続するためのIP網信号送受信制御部と、PSTNに接続するためのPSTN信号送受信制御部と、通信端末を接続するための端末制御部と、動作モードを含む制御データを格納するデータ格納部と、呼の接続制御を行う中央制御部とを有する。中央制御部が、データ格納部に格納された、転送や音声蓄積等の動作モードに基づき、接続制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−223292号公報
【特許文献2】特開2003−324522号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】宇治則孝、「豊かなブロードバンド・ユビキタス社会を築くNGN」、NTT技術ジャーナル 2007.12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されているPSTNにおける転送サービスは、電話回線および電話交換機の構成を前提としており、IP網にてセッションを開始して呼を接続するNGNにそのまま適用することはできない。また、PSTNにおける転送サービスは、音声メディア(G.711)を前提とした転送サービスであり、NGNが取り扱うような画像等の高機能メディアの概念はない。
【0011】
また、特許文献2に開示されている技術は、PSTNとIP網を統合するためにIP/PSTN統合制御装置を宅内に設置するものであり、IPによる公衆網にてセッションを開始して呼を接続するNGNに適用することはできない。また、これも音声メディア(G.711)を前提とした転送サービスであり、NGNが取り扱うような画像等の高機能メディアの概念はない。
【0012】
本発明の目的は、セッションを開始して呼を接続するネットワークにおいてセッション制御サーバにセッション開始要求に含まれるメディア情報によって転送先を判別する機能を有していなくても、転送シナリオの設定によって高機能メディア通信の着信呼を適切に転送することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の転送サービスシステムは、高機能メディアを扱うことが可能な端末装置間の通信に用いられる転送サービスシステムであって、
着信呼を転送するか否かを示す転送設定情報と、転送する場合の転送先電話番号と、対応する加入者電話番号の端末装置のサービス能力を示す能力情報とを含む転送シナリオを、前記加入者電話番号に対応付けて、加入者データに蓄積する加入者データ蓄積手段と、
前記加入者電話番号への着信のセッション開始要求を受け付け、該加入者電話番号に対応する転送シナリオを参照して、前記転送設定情報が転送することを示し、かつ、該加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、該セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、該セッション開始要求で要求される呼を転送すると判定し、そうでない場合には該呼を転送しないと判定する転送判定手段と、
前記呼を転送しないと判定されたら、前記セッション開始要求を前記加入者電話番号の端末装置に中継し、前記呼を転送すると判定されたら、前記セッション開始要求を、前記転送シナリオに含まれている転送先電話番号の端末装置を収容する制御装置に中継する転送処理手段と、を有する。
【0014】
また、前記転送判定手段が、前記加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示しているが、該加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、前記セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できないものであると判定した場合、前記転送処理手段は、前記セッション開始要求を、前記加入者電話番号の端末装置にも、前記転送先電話番号の端末装置を収容する制御装置にも中継せず、該セッション開始要求に対する拒否応答を返送するものであってもよい。
【0015】
また、前記転送判定手段は、前記加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示している場合に前記呼を転送することにするか、前記加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示し、かつ、該加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、該セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、前記呼を転送することにするかを機能スイッチの設定に応じて選択するものであってもよい。
【0016】
また、前記転送判定手段は、前記機能スイッチを加入者単位に備えていてもよい。
【0017】
また、前記加入者データ蓄積手段の前記加入者データに前記転送シナリオを登録するためのインタフェースを提供する転送シナリオ入力手段を更に有することにしてもよい。
【0018】
また、前記転送判定手段と前記転送処理手段がセッション制御サーバに備えられ、
前記加入者データ蓄積手段が複数のセッション制御サーバに共通の加入者データ蓄積装置に備えられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、セッションを開始して呼を接続するネットワークにおいて高機能メディア通信の着信呼を適切に転送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態によるセッション制御サーバ3bの構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図4】本実施形態の通信システムの動作の他の例を示すシーケンス図である。
【図5】本実施形態の通信システムの動作の更に他の例を示すシーケンス図である。
【図6】図3におけるセッション制御サーバ3bに収容されている端末装置4bの加入者データを示す図である。
【図7】図4、5におけるセッション制御サーバ3bに収容されている端末装置4bの加入者データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。同図を参照すると、通信システムはセッション制御サーバ3a〜3cと加入者端末装置(以下「端末装置」という)4a〜4cを有している。
【0023】
ここでは、いずれかを特定せずにセッション制御サーバを示す場合にはセッション制御サーバ3と表記するものとする。また、いずれかを特定せずに端末装置を示す場合には端末装置4と表記するものとする。
【0024】
セッション制御サーバ3aは、加入者データ31aを保持しており、端末装置4aを収容している。同様に、セッション制御サーバ3bは加入者データ31bを保持しており、端末装置4bを収容している。セッション制御サーバ3cは加入者データ31cを保持しており、端末装置4cを収容している。
【0025】
セッション制御サーバ3bおよび端末装置4bはNGN1の構成要素である。本実施形態の説明では、NGN1に属するセッション制御サーバ3bに収容されている端末装置4bへの着信呼の転送に着目して説明する。
【0026】
転送先がNGN1内であるか否かは問わない。そのため、その他のセッション制御サーバ3a、セッション制御サーバ3c、加入者データ31a、加入者データ31c、端末装置4a、および端末装置4cはNGN1の構成要素であってもよく、あるいはNGN1の構成要素でなくてもよい。それらは例えばPSTNや移動体通信網に属するものであってもよい。
【0027】
セッション制御サーバ3は、呼処理や着信呼の転送を含むセッション制御機能を実行するサーバである。セッション制御サーバ3は複数の加入者を収容し、各加入者の加入者データを保持する。詳細は後述する。
【0028】
加入者データ31は、各加入者の端末装置4の電話番号と、その電話番号への着信呼を転送する転送シナリオを含む情報である。本実施形態では、セッション制御サーバ3が加入者データ31を保持する例を示しているが、この構成に限定されるものではない。他の例として、セッション制御サーバ3とは別体の加入者データ蓄積装置に加入者データ31が保持され、セッション制御サーバ3が必要に応じて加入者データ蓄積装置にアクセスすることにしてもよい。更に、加入者データ蓄積装置は複数のセッション制御サーバ3に収容されている加入者の加入者データを保持し、複数のセッション制御サーバ3が共通にアクセスするものであってもよい。
【0029】
端末装置4は、加入者が通信に使用する端末装置である。端末装置4は、通常の通信の他に、加入者データに含まれる転送シナリオの登録、変更、解除にも使用される。
【0030】
なお、図1においては、図面の都合上、セッション制御サーバ3と端末装置4をそれぞれ3台ずつ示しているが、それぞれが更に多く存在していてもよい。また、ここでは、セッション制御サーバ3a〜3cがそれぞれ独立に構成されているが、その一部や全部が一体的に構成されていてもよい。
【0031】
図2は、本実施形態によるセッション制御サーバ3bの構成を示すブロック図である。セッション制御サーバ3bは上述のようにNGN1に属するサーバである。
【0032】
図2を参照すると、セッション制御サーバ3bはセッション制御部51および加入者データ蓄積部52を有し、更に転送シナリオ入力部53を有していてもよい。セッション制御部51はセッション制御を行う処理部であり、本発明に関連する構成として転送判定部54と転送処理部55を有している。
【0033】
加入者データ蓄積部52には上述の加入者データ31bが蓄積されている。加入者データ31bには、着信呼を転送するか否かを示す転送設定情報と、転送する場合の転送先電話番号とを含む転送シナリオが、加入者電話番号に対応付けて記録されている。図1の例では、端末装置4bの加入者電話番号は012−345−6666である。
【0034】
転送判定部54は、セッション制御サーバ3bに収容されている端末装置4bの加入者電話番号への着信のセッション開始要求を受け付け、加入者データ31bにおける、その加入者電話番号に対応する転送シナリオに含まれている転送設定情報を参照することにより、セッション開始要求で要求される呼を転送するか否か判定する。
【0035】
転送処理部55は、転送判定部54で呼を転送しないと判定されたら、セッション開始要求を加入者電話番号の端末装置に中継する。また、転送処理部55は、転送判定部54で呼を転送すると判定されたら、セッション開始要求を、転送シナリオに含まれている転送先電話番号の端末装置4を収容するセッション制御サーバ3に中継する。
【0036】
転送シナリオ入力部53は、加入者データ蓄積部52の加入者データ31bに転送シナリオを登録するためのインタフェースである。例えば、加入者が端末装置3bで所定の操作を行うと、転送シナリオ入力部53がそれを受け付けて転送シナリオを加入者データ31bに登録することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、セッション制御サーバ3bが加入者電話番号への着信のセッション開始要求を受け付け、その着信呼を転送しない場合は、その加入者電話番号の端末装置4bに、着信呼を転送する場合は、転送先電話番号の端末装置4を収容するセッション制御サーバ3に、セッション開始要求を中継する。そのため、セッションを開始して呼を接続するNGN1において着信呼を適切に転送することができる。
【0038】
なお、転送設定情報は着信呼を転送するか否かを示すだけでなく、所定の転送条件を満たした場合に着信呼を転送するというような転送条件が設定されていてもよい。一定時間無応答の場合に転送する無応答転送起動、無条件で転送する無条件転送起動、転送を起動しない転送未起動、転送を行うことができない転送不可などの転送条件の設定が可能であってもよい。更に、所定の曜日の着信呼のみを転送する、所定の時間帯の着信呼のみを転送するといった設定が可能であってもよい。その場合、転送判定部54は、転送条件が満たされている場合に、着信呼を転送すると判定すればよい。
【0039】
また、本実施形態では好適な態様として、加入者データ蓄積部52が蓄積している転送シナリオには、その転送シナリオが対応する加入者電話番号の端末装置4bのサービス能力を示す能力情報が更に含まれている。転送判定部54は、セッション開始要求を受け付けたとき、加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示し、かつ、その加入者電話番号の端末装置4のサービス能力が、セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、セッション開始要求で要求される呼を転送すると判定する。そうでない場合、転送判定部54は、その呼を転送しないと判定する。ここでいう通信サービスは、音声だけの通信か、音声と映像による通信か、音声と映像とデータによる通信かといったサービスの種別であり、通信に要求されるペイロードタイプに対応する。
【0040】
これにより、多様なメディアによる高機能な通信サービスを提供するNGN1において、転送先の端末装置4が要求される通信サービスを提供できる場合に限って着信呼を転送することができるので、多様な通信サービスを提供するNGN1において、高機能メディア通信に対して適切な転送サービスを実現することができる。
【0041】
更に、転送判定部54が、加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示しているが、その加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できないものであると判定した場合、転送処理部55は、セッション開始要求を、加入者番号の端末装置4bにも、転送先番号の端末装置4を収容するセッション制御サーバ3にも中継せず、そのセッション開始要求に対する拒否応答を返送することにしてもよい。
【0042】
また、他の変形例として、転送判定部54は、加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示している場合に着信呼を転送することにするか、加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示し、かつ、加入者電話番号の端末装置4bのサービス能力が、セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、着信呼を転送することにするかを機能スイッチの設定に応じて選択することにしてもよい。機能スイッチは、通信事業者によって情報として設定され、セッション制御サーバ3bの転送判定部54が、それ保持し、その設定に応じて動作する機能的なスイッチである。
【0043】
これによれば、転送先の端末装置4が要求される通信サービスを提供できる場合に着信呼を転送するのを、着信先の端末装置4bがその通信サービスに対応しているか否かによらず行うか、着信先の端末装置4bがその通信サービスに対応している場合に限って行うかを機能スイッチによって切り替えることができる。より多様な転送サービスを実現することができる。
【0044】
その機能スイッチはセッション制御サーバ3bに収容されている加入者に共通のものであってもよく、あるいは機能スイッチが加入者単位に設けられていてもよい。機能スイッチを加入者単位に設ける場合、例えば、機能スイッチを加入者データに含めることにしてもよい。
【0045】
また、セッション制御部51だけがセッション制御サーバ3bに備えられ、加入者データ蓄積部52がセッション制御サーバ3bとは別体の加入者データ蓄積装置に備えられていてもよい。その場合、加入者データ蓄積装置は、複数のセッション制御サーバ3に収容されている加入者の加入者データを蓄積するものであってもよい。また、その加入者データ蓄積装置は更に転送シナリオ入力部53を備えていてもよい。
【0046】
以下、本実施形態の通信システム全体およびセッション制御サーバ3bの動作例について説明する。
【0047】
図3は、本実施形態の通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【0048】
図3には、着信呼の転送が設定されていない端末装置4bに端末装置4aから着信があったときの動作例が示されている。図6は、図3におけるセッション制御サーバ3bに収容されている端末装置4bの加入者データを示す図である。図6のペイロードタイプがサービス情報に対応し、転送起動未起動が転送設定情報に対応する。図6を見て分かるように、加入者電話番号012−345−6666の端末装置4bには「転送未起動」が設定されている。サービス情報は、通信パケットのペイロードタイプによって通信サービスの種別を示す情報である。ここでいう通信サービスは、音声だけの通信か、音声と映像による通信か、音声と映像とデータによる通信かといったサービスの種別である。また、音声や映像のCODECの符号化方式によって更に異なる種別とされてもよい。また、ここでは呼の発側の装置に「発」を付加し、着側の装置に「着」を付加して表記するものとする。
【0049】
発端末装置4aが着端末装置4bと通信を確立するために、INVITEwithSDPc信号を送信する(ステップA1)。SDP(Session Description Protocolは、マルチメディアでセッションを開始する際に必要なペイロードタイプ等の情報が記述される。INVITEwithSDPcはペイロードタイプcの呼の設定を要求するINVITE信号である。ペイロードタイプcは、ここでは音声と映像の通信データを示すものとする。
【0050】
着端末装置4bは、ペイロードタイプbの機能を持った端末であるものとする。ペイロードタイプbは、ここでは音声だけの通信データを示すものとする。
【0051】
発セッション制御サーバ3aはINVITEwithSDPc信号を着セッション制御サーバ3bに中継する(ステップA2)。着セッション制御サーバ3bは、INVITEwithSDPc信号を受信すると、INVITEwithSDPc信号に含まれている着信先の着電話番号「012−345−6666」をキーにして加入者データを検索する。
【0052】
ここでは、図6に示したように、加入者電話番号「012−345−6666」の加入者データに登録されている転送シナリオは「転送未起動」である。そのため、着セッション制御サーバ3bは、「転送未起動」の転送処理(ステップA3)として、着端末装置4bにINVITEwithSDPc信号を中継する(ステップA4)。
【0053】
着端末装置4bは、ペイロードタイプcの機能に対応していないため、メディアタイプ判別処理(ステップA5)で着信が不可能と判断する。
【0054】
着端末装置4bは、着セッション制御サーバ3bに、着信を拒否する488信号を返却する(ステップA6)。488信号は着セッション制御サーバ3bおよび発セッション制御サーバ3aで中継され(ステップA7)、発端末装置4aに到達する。これにより、ペイロードタイプネゴシエーションが失敗となり、通信が未確立となる(ステップ8)。
【0055】
図4は、本実施形態の通信システムの動作の他の例を示すシーケンス図である。
【0056】
図4には、着信呼の転送が設定されている端末装置4bに端末装置4aから着信があったときの動作例が示されている。図4におけるセッション制御サーバ3bに収容されている端末装置4bの加入者データが図7に示されている。図6と同様、図7のペイロードタイプがサービス情報に対応し、転送起動未起動が転送設定情報に対応する。図7を見て分かるように、加入者電話番号012−345−6666の端末装置4bには、「無条件転送起動」が設定され、転送先電話番号として「023−456−7777」が設定されている。これは着信を無条件で023−456−7777に転送するという設定である。
【0057】
発端末装置4aが着端末装置4bと通信を確立するために、INVITEwithSDPc信号を送信する(ステップB1)。INVITEwithSDPcはペイロードタイプc(音声と映像の通信データ)を要求するINVITE信号である。
【0058】
ここでは着端末装置4cはペイロードタイプcの機能を持った端末であるものとする。次のステップB2は図3のステップA2と同様である。
【0059】
次に、着セッション制御サーバ3bが着電話番号「012−345−6666」をキーにして加入者データを検索すると、その着電話番号に対応して「無条件転送起動」が設定されている。図4は、この点で図3と異なる。
【0060】
着セッション制御サーバ3bは転送元となって「無条件転送起動」の転送処理を行う(ステップB3)。転送処理として、着セッション制御サーバ3bは、着端末装置4bにはINVITEwithSDPc信号を中継することなく、着転送先セッション制御サーバ3cにINVITEwithSDPc信号を中継する(ステップB4)。着転送先セッション制御サーバ3cは、着転送先端末装置4cに、そのINVITEwithSDPc信号を転送する。
【0061】
着転送先端末装置4cは、ペイロードタイプ判断処理として着信が可能であるか否か判定する(ステップB5)。端末装置4cはペイロードタイプcの機能に対応しているため、着転送先端末装置4cは着信が可能と判断する。ここで、このようにペイロードタイプcを着信可能と判断することで、高機能メディアの通信を確立することが可能となっている。
【0062】
着転送先端末装置4cは、着転送先セッション制御サーバ3cに、セッション確立を受け入れるための200OK信号を返却する(ステップB6)。200OK信号は着転送先セッション制御サーバ3bおよび着転送元セッション制御サーバ3aで中継され(ステップB7)、発端末装置4aに到達する。これにより、ペイロードタイプネゴシエーションが成功し、通信が確立される(ステップB8)。
【0063】
このシーケンスでは、セッション制御サーバ3bに「無条件転送起動」を設定することで、端末装置31bにペイロードタイプ判断処理を行わせず、ペイロードタイプcに対応している端末装置4cに着信を転送することで、ペイロードタイプcの高機能メディアの通信の確立を可能にしている。これにより高機能メディアを扱うNGNを活かした新規性のあるサービスが実現される。
【0064】
しかしながら、別の考え方として、ペイロードタイプcのような高機能メディア通信に対応しない端末装置4bへの高機能メディア通信が、無条件転送起動を設定しておくことによって確立されることがないようにするというシステムの運用も考えられる。セッション制御サーバ3bで管理されている端末装置4bのペイロードタイプbを、端末装置4bの加入者によって自由にペイロードタイプcに拡張されうるのが加入者データの管理上またリソースの消費上問題となり得るからである。
【0065】
図5は、本実施形態の通信システムの動作の更に他の例を示すシーケンス図である。
【0066】
図5には、図4と同様に、着信呼の転送が設定されている端末装置4bに端末装置4aから着信があったときの動作例が示されている。しかし、図5には、転送シナリオの設定によって高機能メディア通信が可能となるのを許容しない動作が示されている。なお、図5におけるセッション制御サーバ3bに収容されている端末装置4bの加入者データは図7に示したものと同じである。
【0067】
図5のシーケンスは、ペイロード判断処理を着端末装置4ではなく、着セッション制御サーバ3bが実行している点で図3、4のシーケンスと相違している。
【0068】
発端末装置4aが着端末装置4bと通信を確立するために、INVITEwithSDPc信号を送信する(ステップC1)。INVITEwithSDPcはペイロードタイプc(音声と映像の通信データ)を要求するINVITE信号である。
【0069】
INVITEwithSDPcは発セッション制御サーバ3aで中継され(ステップC2)、着セッション制御サーバ3bに受信される。
【0070】
着セッション制御サーバ3bは、受信したINVITEwithSDPc信号から取り出した着電話番号「012−345−6666」をキーにして加入者データを検索する。
【0071】
ここでは、図7に示した通り、加入者データ「012−345−6666」に登録されている転送シナリオは「無条件転送起動」である。そのため、着セッション制御サーバ3bは「無条件転送起動」の転送処理にかかる(ステップC3)。
【0072】
しかし、ここで着セッション制御サーバ3bは更にペイロード判断処理を行う(ステップC5)。ペイロード判定処理で、着セッション制御サーバ3bは、加入者データ「012−345−6666」に登録されているデータより、着端末装置4bが扱えるペイロードタイプbは「音声だけ」であることを認識する。そして、着セッション制御サーバ3bは、着信で要求されているペイロードタイプcと、着端末装置4bが扱えるペイロードタイプbとを比較し、転送が不可であると判断する。そのため、図5において着セッション制御サーバ3bと着端末装置4bの間に破線で示されたSIPシーケンス(ステップC4、ステップC6)は実行されない。
【0073】
その代わり、着セッション制御サーバ3bは、発セッション制御サーバ3aに488信号を返却する(ステップC7)。この例では、このようにセッション制御サーバ3側でネゴシエーションさせるペイロードタイプを管理することが可能となっている。
【0074】
なお、図3、4では着セッション制御サーバ3bがペイロードタイプ判断処理を行わず、図5では着セッション制御サーバ3bがペイロードタイプ判断処理を行っていた。しかし、着セッション制御サーバ3bがペイロードタイプ判断処理を行うか否かを機能スイッチによって任意に設定することができてもよい。このような機能スイッチをセッション制御サーバ3bに備えることで、図3、4あるいは図5のいずれのシーケンスを採用することも可能になる。
【0075】
また、その機能スイッチは、セッション制御サーバ3bに収容されている加入者全てに共通の機能スイッチであってもよく、あるいは加入者毎にあってもよい。加入者毎にあれば、加入者に対して高機能メディア通信への拡張を可能とするか否かを個別に設定することが可能となる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば、加入者は、加入者電話番号012−345−6666に着信した呼を、夜間は電話番号012−345−6666である自宅の電話機である端末装置4bに着信させ、昼間は別の電話番号012−345−7777である事務所の音声と映像のメディアに対応した端末装置4cに転送し着信するように設定できる。これにより、例えば、以下に示すような時間帯と着信呼の通信メディアに応じたサービスの提供が可能となる。
【0077】
発加入者からの着呼が音声通信であれば夜間と昼間で以下のように扱われる。
・夜間は電話番号012−345−6666の自宅の電話端末で音声通話を行う。
・昼間は事務所の音声と映像のメディアに対応した電話番号012−345−7777の端末装置4で音声通話を行う。
【0078】
また、発加入者からの着呼が音声と映像のメディアによる通信であれば夜間と昼間で以下のように扱われる。
・夜間は電話番号012−345−6666の自宅の電話端末では着信不可となる。
・昼間は事務所の音声と映像のメディアに対応した電話番号012−345−7777の端末装置4で音声と映像による通信を行う。
【0079】
従来であれば、発加入者が意図した呼のメディアが音声と映像であれば、電話番号012−345−6666の着信端末4bが音声メディアだけに対応したものである場合、着信不可とされるか、あるいはメディアフォールバックによって音声メディアだけで通信を確立していた。しかし、本実施形態によれば、予め適切な転送シナリオを設定し、音声および映像のメディアを扱う能力がある電話番号012−345−7777の端末装置4へ転送することにより、音声と映像のメディアによる通信を確立することが可能となる。このように、本実施形態によれば、PSTNと同等の転送サービスをNGNで実現するだけでなく、音声メディアだけのPSTNでは考えられないような利便性の高い転送サービスをNGNにおいて実現することも可能となる。
【符号の説明】
【0080】
1 NGN
3、3a−3c セッション制御サーバ
4、4a−4c 端末装置
51 セッション制御部
52 加入者データ蓄積部
53 転送シナリオ入力部
54 転送判定部
55 転送処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高機能メディアを扱うことが可能な端末装置間の通信に用いられる転送サービスシステムであって、
着信呼を転送するか否かを示す転送設定情報と、転送する場合の転送先電話番号と、対応する加入者電話番号の端末装置のサービス能力を示す能力情報とを含む転送シナリオを、前記加入者電話番号に対応付けて、加入者データに蓄積する加入者データ蓄積手段と、
前記加入者電話番号への着信のセッション開始要求を受け付け、該加入者電話番号に対応する転送シナリオを参照して、前記転送設定情報が転送することを示し、かつ、該加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、該セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、該セッション開始要求で要求される呼を転送すると判定し、そうでない場合には該呼を転送しないと判定する転送判定手段と、
前記呼を転送しないと判定されたら、前記セッション開始要求を前記加入者電話番号の端末装置に中継し、前記呼を転送すると判定されたら、前記セッション開始要求を、前記転送シナリオに含まれている転送先電話番号の端末装置を収容する制御装置に中継する転送処理手段と、を有する転送サービスシステム。
【請求項2】
前記転送判定手段が、前記加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示しているが、該加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、前記セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できないものであると判定した場合、前記転送処理手段は、前記セッション開始要求を、前記加入者電話番号の端末装置にも、前記転送先電話番号の端末装置を収容する制御装置にも中継せず、該セッション開始要求に対する拒否応答を返送する、
請求項1に記載の転送サービスシステム。
【請求項3】
前記転送判定手段は、前記加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示している場合に前記呼を転送することにするか、前記加入者電話番号に対応する転送設定情報が転送することを示し、かつ、該加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、該セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、前記呼を転送することにするかを機能スイッチとして予め保持し、該機能スイッチの設定に応じて動作を選択する、請求項1または2に記載の転送サービスシステム。
【請求項4】
前記転送判定手段は、前記機能スイッチを加入者単位に備えている、請求項3に記載の転送サービスシステム。
【請求項5】
前記加入者データ蓄積手段の前記加入者データに前記転送シナリオを登録するためのインタフェースを提供する転送シナリオ入力手段を更に有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の転送サービスシステム。
【請求項6】
前記転送判定手段と前記転送処理手段がセッション制御サーバに備えられ、
前記加入者データ蓄積手段が複数のセッション制御サーバに共通の加入者データ蓄積装置に備えられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の転送サービスシステム。
【請求項7】
請求項1から4の何れか一項に記載の前記転送判定手段と前記転送処理手段を有するセッション制御サーバ。
【請求項8】
請求項5に記載の前記加入者データ蓄積手段と前記転送判定手段と前記転送処理手段と前記転送シナリオ入力手段を有するセッション制御サーバ。
【請求項9】
高機能メディアを扱うことが可能な端末装置間の通信に用いられる転送サービス制御方法であって、
着信呼を転送するか否かを示す転送設定情報と、転送する場合の転送先電話番号と、対応する加入者電話番号の端末装置のサービス能力を示す能力情報とを含む転送シナリオを、加入者電話番号に対応付けて、加入者データに予め蓄積し、
前記加入者電話番号への着信のセッション開始要求を受け付け、該加入者電話番号に対応する転送シナリオを参照して、前記転送設定情報が転送することを示し、かつ、該加入者電話番号の端末装置のサービス能力が、該セッション開始要求で要求されている通信サービスを提供できるものである場合に、該セッション開始要求で要求される呼を転送すると判定し、そうでない場合には該呼を転送しないと判定し、
前記呼を転送しないと判定したら、前記セッション開始要求を前記加入者電話番号の端末装置に中継し、
前記呼を転送すると判定したら、前記セッション開始要求を、前記転送シナリオに含まれている転送先電話番号の端末装置を収容する制御装置に中継する、転送サービス制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−84976(P2012−84976A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227498(P2010−227498)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】