説明

転送装置及びネットワークシステム

【課題】転送装置が送信するユーザデータのフレーム長が大きくても、伝送路の異常の誤検出を防止する転送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】転送装置において、監視データを周期的に他の装置へ送信する監視データ送信部と、ユーザデータを他の装置へ送信するユーザデータ送信部と、他の装置から送信された監視データを所定の受信時間以内に受信していない場合に、異常を検出する異常検出部と、ユーザデータを送信するために必要なユーザデータ送信時間を計測する送信時間計測部と、送信時間計測部によって計測されたユーザデータ送信時間が監視データの送信周期より大きい場合、監視データの送信周期がユーザデータ送信時間より大きくなるように監視データの送信周期を変更する監視データ送信周期変更部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを転送する転送装置に関し、特に、監視データの送信周期を変更する転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LAN(Local Area Network)の主流であって、勧告IEEE802.3で標準化されたイーサネット(登録商標、以下同じ)の普及が進むに従って、イーサネット網での保守管理機能の強化する要望が高まっている。イーサネットの保守管理機能としてEther OAMがITU−T勧告Y.1731で標準化されている。Ether OAMを利用することによって、イーサネットの故障をインチャネルで検出し、イーサネットの品質をインチャネルで管理できる。
【0003】
勧告Y.1731では、用途に応じて様々なEther OAMフレームが規定されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
二つの転送装置間の接続を監視するためにはETH−CC(Ethernet Continuity check)(Ethernetは登録商標、以下同じ)が用いられる。ETH−CCは転送装置(送信装置)から所定の周期で送信される。送信装置に接続された転送装置(受信装置)は、ETH−CCの受信周期を監視し、所定の周期でETH−CCを受信しない場合、伝送路に障害があると判定して警報をネットワークに送信する。
【0005】
具体的には、送信装置は、ETH−CCを3.33ms周期で送信する。受信装置は、ETH−CCの送信周期を3.5倍した受信時間内(3.33ms×3.5=11.655ms)に、ETH−CCを3フレーム受信しなければ、伝送路障害警報としてLOC(Loss of continuity)をネットワークに送信する。受信装置が伝送路の障害が回復したと判定する条件(LOC回復条件)は、受信時間にETH―CCを3フレーム以上受信することである。
【0006】
次に、勧告G.8031で規定されるイーサネットリニアプロテクションについて説明する。
【0007】
前提として、二つの転送装置は、ユーザデータを送信する運用系の伝送路と予備系の伝送路とによって接続されている。一方の転送装置が運用系の伝送路に障害を検出した場合、運用系の伝送路を予備系の伝送路に切り替え、予備系の伝送路を運用系の伝送路に切り替える。イーサネットリニアプロテクションでは、転送装置は、伝送路を切り替えたことを他の転送装置に通知するためにETH−APS(Ethernet Automatic protection switching)を使用する(例えば、非特許文献2)。
【0008】
ETH−APSは、5s周期で送信されるが、転送装置が、伝送路を切り替えると、ETH−APSに切替トリガ情報を含めて送信する。切替トリガ情報を含むETH−APSを受信した転送装置は、受信したETH−APSに基づいて伝送路を切り替える。ETH−APSが切替トリガ情報を含む場合3.33ms周期で送信される。これによって、通常のETH−APSと切替トリガ情報を含むETH−APSとは区分される。
【0009】
図9及び図10を用いて従来のイーサネットリニアプロテクションを利用するネットワークシステムについて説明する。
【0010】
図9は、従来のネットワークシステムの説明図である。
【0011】
ネットワークシステムは、転送装置A10及び転送装置B20を備える。
【0012】
転送装置A10及び転送装置B20は二重化された伝送路によって接続される。このネットワークシステムは、転送装置A10に備わる0系インタフェース11と転送装置B20に備わる0系インタフェース21とを接続する伝送路を運用系の伝送路として利用し、転送装置A10に備わる1系インタフェース12と転送装置B20に備わる1系インタフェース22とを接続する伝送路を予備系の伝送路として利用する。
【0013】
具体的には、転送装置A10のセレクタ13は、0系インタフェース11を運用系として選択し、1系インタフェース12を予備系として選択する。同様に転送装置B20のセレクタ23は、0系インタフェース21を運用系として選択し、1系インタフェース22を予備系として選択する。
【0014】
転送装置A10及び転送装置B20は、運用系として選択された0系インタフェース11及び21の間でユーザデータを通信する。
【0015】
転送装置A10は、0系インタフェース11のポートB及び1系インタフェース12のポートBから3.33ms周期でETH−CCを送信する。転送装置B20は、0系インタフェース21のポートC及び1系インタフェース22のポートCから3.33ms周期でETH−CCを送信する。
【0016】
また、転送装置A10は、1系インタフェース11のポートBから5s周期でETH−APSを送信する。転送装置B20は、1系インタフェース22のポートCから5s周期でETH−APSを送信する。
【0017】
すなわち、ETH−CCは、運用系の伝送路及び予備系の伝送路の両方で通信され、ETH−APSは予備系の伝送路のみで通信される。
【0018】
図10は、従来のネットワークシステムの伝送路の異常の検出に基づいて伝送路を切り換える処理のシーケンス図である。
【0019】
図10では、転送装置A10及び転送装置B20が、図9と同様に、0系インタフェース11及び21を運用系として選択している。
【0020】
例えば、図9に示す0系インタフェース11のポートBと0系インタフェース21のポートBとを接続する伝送路に障害が発生すると、転送装置B20は、転送装置A10からのETH−CCを受信できなくなる。
【0021】
転送装置B20は、ETH−CCの送信周期(3.33ms)に所定の値(保護段数):3.5を乗算した受信時間(11.655ms)内にETH−CCを3フレーム受信できず、LOCを検出する。
【0022】
この場合、転送装置B20のセレクタ23は、1系インタフェース22を運用系として選択し、切替トリガ情報を含むETH−APSを1系インタフェース22のポートCから送信する。
【0023】
転送装置A10は、切替トリガ情報を含むETH−APSを受信した場合、セクレタ13は1系インタフェース12を運用系として選択する。
【0024】
伝送路に障害が発生し、転送装置B20が他の転送装置にデータを送信できなくなってから転送装置Aが運用系を切り替え、転送装置B20が他の転送装置にデータを送信できるようになるまでの信号断時間を、イーサネットリニアプロテクションでは50ms以内に保証する。
【0025】
このため、ETH−CCは、3.33msという高速周期で送信されるようにして、障害発生からLOC検出までの時間、つまり、障害発生から切替トリガ情報を含むETH−APSを送信するまでの時間を短縮化する。また、切替トリガ情報を含むETH−APSは、3.33msという高速周期で通信されるようにし、他の転送装置への切替通知を高速化する。
【0026】
また、勧告G.8021 P158 10章では、10Mbps,100Mbps,1000Mbps,及び10Gbpsの四つの伝送速度がEther OAMの伝送速度として規定されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0027】
さらに、イーサネットではIEEE802.3 P90 4.4.2章では、運用系の伝送路を介して通信されるユーザデータのフレーム長は最大1518バイトと規定されている(例えば、非特許文献4参照)。しかし、近年の転送装置は、フレーム長が9000バイトから16000バイトであるユーザデータ(ジャンボフレーム)をサポートする。今後は、さらに大きなフレーム長のユーザデータをサポートする転送装置が開発されることも考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】ITU-T Y.1731: OAM functions and mechanisms for Ethernet based networks
【非特許文献2】ITU-T G.8031/Y.1342: Ethernet linear protections switching
【非特許文献3】ITU-T G.8021/Y.1341: Characteristics of Ethernet transport network equipment functional blocks:P158 10章
【非特許文献4】IEEE standard 802.3 Information Technology − Telecommunications and information exchange between systems − Local and metropolitan area networks − Specific requirements − Carrier sense multiple access whit collision detection (CSMA/CD) access method and physical layer specifications
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
イーサネットリニアプロテクションでは、Ether OAMの高速通信を実装する関係上、以下に示す課題が生じる。
【0030】
上述したように、イーサネットリニアプロテクションでは、運用系と予備系とを切り替えるトリガとして、ETH−CCの未受信に基づくLOCの検出を用いる。ETH−CCは3.33ms周期で高速通信されるのが望ましいが、伝送路速度及びユーザデータのフレーム長次第で、転送装置A10が3.33ms周期で送信できず、転送装置B20が伝送路に障害が発生していないにもかかわらず、LOCを検出してしまうことがある。
【0031】
例えば、伝送路速度が10Mbpsでフレーム長が16000バイトのユーザデータを転送装置が送信する場合、転送装置がユーザデータを送信するために必要な時間(ユーザデータ送信時間)は12.8msとなる。このユーザデータ送信時間は、ETH−CCの送信周期(3.33ms)より大きくなる。また、転送装置は、ユーザデータを送信する間、ETH−CCを転送装置に接続された転送装置(対向装置)に送信できない。
【0032】
このため、対向装置は、ユーザデータ送信時間である12.8msの間ETH−CCを受信できず、受信時間(11.655ms)にETH−CCを3回以上受信できず、LOCを検出する。転送装置がLOCを一旦を検出すると、自動的に解除できない。
【0033】
伝送路速度が10Mbpsである場合を例にLOCの誤検出を説明したが、10Mbps以外の伝送路速度でもユーザフレーム長が大きくなれば同じ問題が生じ得る。
【0034】
また、ETH−CC以外のEther OAMフレームを監視データとして用いる場合でも、上述のようにEther OAMフレームを期待通りに送信できず、Ether OAMの保守管理機能を行えない状態となる。
【0035】
本発明は、転送装置が送信するユーザデータのフレーム長が大きくても、伝送路の異常の誤検出を防止する転送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の代表的な一例を示せば、接続された他の装置へデータを転送する転送装置において、監視データを周期的に前記他の装置へ送信する監視データ送信部と、ユーザデータを前記他の装置へ送信するユーザデータ送信部と、前記他の装置から送信された監視データを所定の受信時間以内に受信していない場合に、異常を検出する異常検出部と、前記ユーザデータを送信するために必要なユーザデータ送信時間を計測する送信時間計測部と、前記送信時間計測部によって計測されたユーザデータ送信時間が前記監視データの送信周期より大きい場合、前記監視データの送信周期が前記ユーザデータ送信時間より大きくなるように前記監視データの送信周期を変更する監視データ送信周期変更部と、を備えることを特徴とする転送装置。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、転送装置が送信するユーザデータのフレーム長が大きくても、伝送路の異常の誤検出を防止する転送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】本発明の第1実施形態の伝送路に障害が発生したネットワークシステムの説明図である。
【図1B】本発明の第1実施形態のネットワークシステムの異常を検出した転送装置B20のインタフェースの切替えの説明図である。
【図1C】本発明の第1実施形態のネットワークシステムの切替トリガ情報を受信した転送装置A10のインタフェースの切替えの説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態のETH−CCのフレームフォーマットの説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態のETH−CCのFlagsのフィールドフォーマットの説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態のETH−CCによって表現可能な送信周期が従来のETH−CCによって表現可能な送信周期より多くなることを説明するための図である。
【図5】本発明の第1実施形態のETH−CCの送信周期の変更処理のフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態のLOC検出解除条件の変更処理のフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態のネットワークシステムのETH−CCの送信周期の変更処理及びLOC検出解除条件の変更処理のシーケンス図である。
【図8】本発明の第2実施形態のETH−CCの送信周期の変更処理のフローチャートである。
【図9】従来のネットワークシステムの説明図である。
【図10】従来のネットワークシステムの伝送路の異常の検出に基づいて伝送路を切り換える処理のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図7を用いて説明する。
【0040】
まず、イーサリニアプロテクションを用いたネットワークシステムについて図1A〜図1Cを用いて説明する。
【0041】
図1Aは、本発明の第1実施形態の伝送路に障害が発生したネットワークシステムの説明図である。
【0042】
転送装置A10は、0系インタフェース11、1系インタフェース12、及びセレクタ13を備える。
【0043】
セレクタ13は、運用系のインタフェース及び予備系のインタフェースを選択する。図1Aでは、0系インタフェース11が運用系として選択され、1系のインタフェース12が予備系として選択される。
【0044】
0系インタフェース11は、ポートA、ポートB、ポートC、及びポートDを備え、0系インタフェース11は運用系として選択されているので、転送装置B20の0系インタフェース21とユーザデータ及びETH−CCを通信する。
【0045】
ポートAは、他の転送装置に接続され、当該他の転送装置から送信されたユーザデータを受信する。ポートBは、伝送路を介して転送装置B20の0系インタフェース21のポートBに接続され、ポートAが受信したユーザデータ及びETH−CCを転送装置B20の0系インタフェース21のポートBに送信する。
【0046】
ポートCは伝送路を介して転送装置B20の0系インタフェース21のポートCに接続され、転送装置B20の0系インタフェース21のポートCから送信されたユーザデータ及びETH−CCを受信する。ポートDは、他の転送装置に接続され、ポートCが受信したユーザデータをセレクタ13を介して当該他の転送装置に送信する。
【0047】
転送装置A10の0系インタフェース11のポートBと転送装置B20の0系インタフェース21のポートBとを接続する伝送路と、転送装置A10の0系インタフェース11のポートCと転送装置B20の0系インタフェース21のポートCとを接続する伝送路とによって一つのネットワークが構築される。0系インタフェース11及び21が運用系として選択されているので、当該ネットワークを運用系ネットワークという。
【0048】
1系インタフェース12は、ポートA、ポートB、ポートC、及びポートDを備え、1系インタフェース12は予備系として選択されているので、転送装置B20の1系インタフェース22とETH−CC及びETH−APSを通信する。
【0049】
ポートAは、他の転送装置に接続され、当該他の転送装置から送信されたユーザデータを受信可能であるが、現在1系インタフェース12は予備系として選択されているので、ユーザデータを受信しない。ポートBは、伝送路を介して転送装置B20の1系インタフェース22のポートBに接続され、ETH−CC及びETH−APSを転送装置B20の1系インタフェース22のポートBに送信する。
【0050】
ポートCは伝送路を介して転送装置B20の1系インタフェース22のポートCに接続され、転送装置B20の1系インタフェース22のポートCから送信されたETH−CC及びETH−APSを受信する。ポートDは、他の転送装置に接続され、ポートCが受信したユーザデータをセレクタ13を介して当該他の転送装置に送信するが、現在1系インタフェース12は予備系として選択されているので、ユーザデータを受信しない。
【0051】
転送装置A10の1系インタフェース12のポートBと転送装置B20の1系インタフェース22のポートBとを接続する伝送路と、転送装置A10の1系インタフェース12のポートCと転送装置B20の1系インタフェース22のポートCとを接続する伝送路とによって一つのネットワークが構築される。1系インタフェース12及び22が予備系として選択されているので、当該ネットワークを予備系ネットワークという。
【0052】
転送装置B20の構成については転送装置A10の構成と同じであるので説明を省略する。
【0053】
転送装置A10及び転送装置B20は、ETH−CCを3.33ms周期で送信し、ETH−APSを5s周期で送信する。
【0054】
図1Aでは、転送装置A10の0系インタフェース11のポートBと転送装置B20の0系インタフェース21のポートBとを接続する伝送路に障害が発生し、転送装置B20がETH−CCを受信できなくなった状態を示している。
【0055】
転送装置A10及び転送装置B20は、所定の受信時間内にETH−CCを受信しない場合、伝送路に異常が発生したと判定し、伝送路障害警報としてLOC(Loss of continuity)をネットワークに送信する。転送装置A10及び転送装置B20の当該機能は異常検出部として機能する。所定の受信時間は、ETH−CCの送信周期(3.33ms)に所定の値(保護段数:3.5)を乗算した受信時間(11.655ms)である。このLOCを検出する条件をLOC検出条件という。
【0056】
図1Aでは、転送装置B20は、受信時間内にETH−CCを受信できないので、異常を検出する。
【0057】
以上のように、ETH−CCは伝送路の異常を検出するために周期的に送信されるデータであり、監視データという。
【0058】
また、転送装置がユーザデータを送信する機能をユーザデータ送信部といい、転送装置が監視データを周期的に送信する機能を監視データ送信部という。また、転送装置が受信時間内に監視データを受信しない場合に異常を検出する機能を異常検出部という。
【0059】
図1Bは、本発明の第1実施形態のネットワークシステムの異常を検出した転送装置B20のインタフェースの切替えの説明図である。
【0060】
図1で説明したように、伝送路で異常が発生し、転送装置B20が伝送路の異常を検出した場合、転送装置B20のセレクタ23は、運用系として選択されている0系インタフェース21を予備系のインタフェースとして選択し、予備系として選択されている1系インタフェース22を運用系のインタフェースとして選択する。
【0061】
この場合、転送装置B20は、1系インタフェース22のポートCから切替トリガ情報を含むETH−APSを送信する。なお、切替トリガ情報を含むETH−APSの送信周期は3.33msであり、通常のETH−APSの送信周期である5sとは異なる。
【0062】
図1Cは、本発明の第1実施形態のネットワークシステムの切替トリガ情報を受信した転送装置A10のインタフェースの切替えの説明図である。
【0063】
転送装置A10は、転送装置B20から送信された切替トリガ情報を含むETH−APSを受信した場合、運用系として選択されている0系インタフェース11を予備系のインタフェースとして選択し、予備系として選択されている1系インタフェース12を運用系のインタフェースとして選択する。
【0064】
これによって、ネットワークシステムでは、転送装置A10では、1系インタフェース12が運用系として選択され、0系インタフェース11が予備系として選択される。また、転送装置B20では、1系インタフェース22が運用系として選択され、0系インタフェース21が予備系として選択される。すなわち、運用系ネットワークが予備系ネットワークに切り替えられ、予備系ネットワークが運用系ネットワークに切り替えられる。
【0065】
このセレクタ13及び23の運用系及び予備系ネットワークを切り替える機能をネットワーク切替部という。
【0066】
図2は、本発明の第1実施形態のETH−CCのフレームフォーマットの説明図である。
【0067】
本実施形態で使用するETH−CCのフレームフォーマットは勧告Y.1731で規定されている。
【0068】
ETH−CCは、合計75バイトのデータである。
【0069】
具体的には、ETH−CCは、3ビットのMEL、5ビットのVersion、1バイトのOpCode、1バイトのFlags、1バイトのTLV Offset、4バイトのSequence Number、2バイトのMEP ID、56バイトのMEG ID、1バイトのTxFCf、1バイトのTxFCf、1バイトのRxFCb、1バイトのRxFCb、1バイトのTxFCb、1バイトのTxFCb、1バイトのReserved、1バイトのReserved、及び1バイトのEnd TLVを含む。
【0070】
図3は、本発明の第1実施形態のETH−CCのFlagsのフィールドフォーマットの説明図である。
【0071】
本実施形態のETH−CCに含まれるFlagsのフィールドフォーマットは勧告T.1731で規定されている。
【0072】
ETH−CCに含まれるFlagsは、1ビットのRDI、4ビットのReserved、及び3ビットのPeriodを含む。
【0073】
勧告Y.1731では、3ビットのPeriodにETH−CCの送信周期を格納して、転送装置に送信していた。
【0074】
図4は、本発明の第1実施形態のETH−CCによって表現可能な送信周期が従来のETH−CCによって表現可能な送信周期より多くなることを説明するための図である。
【0075】
図4では、勧告Y.1731で規定されるPeriodに格納されるビット列と当該ビット列が示す送信周期との関係を示す。
【0076】
Flags401は、Periodに格納されるビット列が表す。Period Value402は、Periodに格納されるビット列が示すETH−CCの送信周期を表す。Commnets403は、Periodに格納されるビット列が示すETH−CCの送信周期に関する付加情報を表す。
【0077】
ビット列「100」が示すETH−CCの送信周期が「1s」である場合、当該ETH−CCは転送装置に発生した故障を通知する信号として用いられる。
【0078】
ビット列「011」が示すETH−CCの送信周期が「100ms」である場合、当該ETH−CCは転送装置の性能を監視するための信号として用いられる。
【0079】
ビット列「001」が示すETH−CCの送信周期が「3.33ms」である場合、当該ETH−CCはイーサネットリニアプロテクションにおける接続監視データとして用いられる。
【0080】
これら以外のETH−CCの送信周期は予備である。
【0081】
3ビットのPeriodを用いてETH−CCの送信周期を他の転送装置に通知するので、8通りの送信周期しか設定できない。
【0082】
このため、本実施形態では、ETH−CCの送信周期を格納するPeriodをResevedまで拡大して、ETH−CCの送信周期を格納するPeriodを合計7ビットとする。
【0083】
これによって、合計7ビット分の最大127種類のETH−CCの送信周期を表現できるので、ETH−CCの送信周期を1ms単位で送信周期を表現できる。
【0084】
次に、ETH−CCの送信周期の変更処理について、図5を用いて説明する。
【0085】
図5は、本発明の第1実施形態のETH−CCの送信周期の変更処理のフローチャートである。
【0086】
ETH−CCの送信周期の変更処理は、転送装置A10及び転送装置B20(以下、転送装置A10及び転送装置B20を総称して、転送装置という)の図示しないプロセッサと論理回路(例えば、FPGAに代表されるプログラマブル論理回路)によって実行される。また、ETH−CCの送信周期の変更処理のプログラムは、転送装置の図示しないメモリに記憶されている。
【0087】
まず、転送装置は、ユーザデータの最大パケット長を設定する(501)。この最大パケット長は任意の値でよく、管理者によって転送装置に入力されるものであってもよいし、転送装置に予め設定されたものであってもよい。
【0088】
次に、転送装置は、ETH−CCの送信周期の初期値を設定する(502)。ETH−CCの送信周期の初期値は、ステップ501の処理で設定された最大パケット長のユーザデータの送信時間よりも長い時間であれば任意の値でよい。また、ETH−CCの送信周期は、管理者によって転送装置に入力されてもよいし、転送装置に予め設定されていてもよい。
【0089】
なお、ユーザデータの送信時間は、ユーザデータのパケット長を伝送路速度で除算することによって算出される。例えば、伝送路速度が10Mbpsで、ユーザデータのパケット長が1518バイトであれば、ユーザデータの送信時間は、1.21msである。
【0090】
次に、転送装置は、ステップ502の処理で設定されたETH−CCの送信周期に基づいて、LOC検出接除条件の初期値を設定する(503)。LOC検出解除条件とは、検出されたLOCを解除するための条件であり、所定の受信時間以内に所定数のETH−CCを受信するという条件である。具体的には、所定の受信時間は、ETH−CCの送信周期に保護段数という所定の値を乗算した時間である。
【0091】
保護段数の算出方法について説明する。
【0092】
まず、転送装置は、信号断時間(50ms)から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算した減算値を算出する。保護段数は、減算値をステップ502の処理で設定されたETH−CCの送信周期で除算した除算値を超えないように設定される。除算値が3.5よりも大きい場合、保護段数は3.5に設定される。
【0093】
なお、所定の受信時間以内に受信するETH−CCの受信回数は、保護段数の整数部分によって特定される。
【0094】
転送装置は、以上のように保護段数を決定することによって、LOC検出解除条件を設定する。
【0095】
ここで、保護段数はLOC検出条件にも用いられる。具体的には、転送装置は、ETH−CCの送信周期に保護段数を乗算した受信時間内にETH−CCを受信しない場合にLOCを検出する。
【0096】
転送装置がユーザデータを送信又は受信している間、切替トリガ情報を含むETH−APSを3.33ms周期で送信できない可能性がある。このため、信号断時間から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算した時間を超えて受信時間が設定されている場合、転送装置によるLOCの検出が遅れ、信号断時間内に二つの転送装置のインタフェースの切替えが完了しない可能性がある。信号断時間内に二つの転送装置のインタフェースの切替えの完了を担保するために、受信時間が信号断時間から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算した時間を超えないように保護段数を設定するようにした。
【0097】
例えば、ステップ501の処理でユーザデータの最大パケット長が1518バイトに設定され、ステップ502の処理でETH−CCの送信周期が10msに設定された場合、保護段数が3.5であれば、受信時間は35msである。この受信時間は、信号断時間から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算した時間(50ms−1.21ms)を超えないので、保護段数は3.5に設定される。
【0098】
なお、ステップ501〜503の処理は、転送装置が、ユーザデータの最大パケット長、ETH−CCの送信周期、及びLOC検出解除条件に適当な所定値を設定すればよいので、実行されなくてもよい。また、ステップ501〜503の処理は、ETH−CCの送信周期の変更処理の運用が開始されてから実行されてもよい。
【0099】
ステップ501〜503の処理で、ユーザデータの最大パケット長、ETH−CCの送信周期、及びLOC検出解除条件が初期設定されると、ETH−CCの送信周期の変更処理の運用が開始される(504)。
【0100】
まず、転送装置は、ユーザデータ及びETH−CCを受信する(505)。
【0101】
次に、転送装置は、受信したユーザデータの送信時間を計測する(506)。具体的には、転送装置は、受信したユーザデータに含まれるトップ符号及びエンド符号に基づいて、ユーザデータのパケット長を計測する。そして、転送装置は、受信したユーザデータを送信する伝送路の伝送路速度及び計測したパケット長に基づいてユーザデータの送信時間を算出する。ユーザデータの送信時間の算出方法についてはステップ502の処理で説明した通りである。この転送装置のユーザデータの送信時間を計測する機能を送信時間計測部という。
【0102】
なお、ステップ506の処理では、転送装置は、受信したETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットに基づいて、ETH−CCの送信周期を特定する。
【0103】
次に、転送装置は、受信したユーザデータの送信時間が、ETH−CCの送信周期以上であるか否かを判定する(507)。
【0104】
ステップ507の処理で、受信したユーザデータの送信時間が、ETH−CCの送信周期よりも小さいと判定された場合、転送装置は、ユーザデータの送信によってETH−CCの送信周期に影響を与えることはないので、ステップ506の処理に戻る。
【0105】
一方、ステップ507の処理で、受信したユーザデータの送信時間が、ETH−CCの送信周期以上であると判定された場合、転送装置は、ETH−CCの送信周期が受信したユーザデータの送信時間よりも大きくなるように、ETH−CCの送信周期を変更し(508)、ステップ506の処理に戻る。このETH−CCの送信周期をユーザデータ送信時間よりも大きくする機能を送信周期変更部という。
【0106】
例えば、伝送路速度が10Mbpsであって、ユーザデータの最大パケット長が1518バイトから16000バイトになった場合、ユーザデータの送信時間は1.21msから12.8msとなる。ETH−CCの送信周期が3.33msであった場合、ステップ508の処理では、転送装置は、ETH−CCの送信周期を12.8msよりも大きくなるように、例えば、13msに変更する。
【0107】
また、ステップ508の処理では、転送装置は、ETH−CCのETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットに変更後のETH−CCの送信周期が含まれるように設定し、変更後のETH−CCの送信周期を含むETH−CCを送信する。
【0108】
当該転送装置に接続された転送装置は、この変更後の送信周期を含むETH−CCを受信することによって、ETH−CCの送信周期が変更されたことを把握する。
【0109】
なお、図5では、ステップ507の処理で、転送装置は、ユーザデータを受信するたびに、受信したユーザデータの送信時間がETH−CCの送信周期以上であるか否かを判定したが、受信したユーザデータのパケット長が、受信したユーザデータのパケット長が現在まで受信したユーザデータのパケット長の中で最大となる場合にのみステップ507の処理を実行し、受信したユーザデータのパケット長が現在まで受信したユーザデータのパケット長の中で最大とならない場合、ステップ506の処理に戻るようにしてもよい。
【0110】
これによって、転送装置は、必要な場合にのみステップ507の処理を実行するので、処理負荷を軽減できる。
【0111】
また、ステップ507の処理では、ユーザデータの送信時間がETH−CCの送信周期以上であるか否かを判定したが、所定時間内に計測されたユーザデータの送信時間の平均がETH−CCの送信周期以上であるか否かを判定してもよい。
【0112】
さらに、ステップ507の処理では、ユーザデータの送信時間がETH−CCの送信周期以上であるか否かを判定したが、ユーザデータの送信時間がETH−CCの送信周期より大きいか否かを判定し、ユーザデータの送信時間がETH−CCの送信周期より大きい場合に、ステップ508の処理に進むようにしてもよい。
【0113】
図6は、本発明の第1実施形態のLOC検出解除条件の変更処理のフローチャートである。
【0114】
LOC検出解除条件の変更処理は、転送装置がETH−CCの送信周期の変更を検出した場合、LOC検出解除条件を変更する処理である。LOC検出解除条件の変更処理は、転送装置の図示しないプロセッサと論理回路(例えば、FPGAに代表されるプログラマブル論理回路)によって実行される。また、LOC検出解除条件の変更処理のプログラムは、転送装置の図示しないメモリに記憶されている。
【0115】
ステップ601〜603の処理は、ステップ501〜503の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0116】
ステップ603の処理が実行された後、LOC検出解除条件の変更処理の運用が開始される(604)。
【0117】
まず、転送装置は、ETH−CCの送信周期が変更されたか否かを判定するために、今回受信したETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットが、前回受信したETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットから変更されたか否かを判定する(605)。
【0118】
ステップ605の処理で、今回受信したETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットが、前回受信したETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットから変更されていないと判定された場合、ETH−CCの送信周期が変更されていないと判定し、ステップ605の処理に戻る。
【0119】
ステップ605の処理で、今回受信したETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットが、前回受信したETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットから変更されたと判定された場合、ETH−CCの送信周期が変更されたと判定し、転送装置は、LOC検出解除条件を変更する(606)。
【0120】
具体的には、変更後のETH−CCの送信周期に保護段数(3.5)を乗じた乗算値が信号断時間から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算した減算値よりも小さいか否かを判定する。ここで、ユーザデータの送信時間は、転送装置がユーザデータを送信する場合に、ユーザデータのパケット長及びユーザデータを送信する伝送路の伝送路速度に基づいて算出されている。
【0121】
乗算値が減算値よりも小さい場合、転送装置は保護段数を3.5に設定する。
【0122】
一方、乗算値が減算値以上である場合、転送装置は、信号断時間から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算した減算値を、変更後のETH−CCの送信周期で除算した除算値を算出する。そして、転送装置は、算出した除算値よりも小さい値に保護段数を設定する。
【0123】
例えば、ETH−CCの送信周期が13msに変更され、ユーザデータの最大パケット長のユーザデータの送信時間が12.8msである場合について説明する。
【0124】
変更後のETH−CCの送信周期(13ms)に保護段数(3.5)を乗じた乗算値(45.5ms)が、信号断時間(50ms)から最大パケット長のユーザデータの送信時間(12.8ms)を減算した減算値(37.2ms)より大きくなるので、転送装置は保護段数を変更する。
【0125】
具体的には、減算値(37.2ms)を変更後のETH−CCの送信周期(13ms)で除算した除算値(2.86)を算出する。そして、転送装置は、2.86よりも小さい値に保護段数を設定する。ここでは、保護段数は0.5刻みで設定可能であるものとし、2.5に設定される。
【0126】
この場合、LOC検出条件及びLOC検出解除条件の受信時間は、変更後のETH−CCの送信周期(13ms)に保護段数(2.5)を乗じた値である32.5msとなる。また、LOC解除条件は、32.5ms以内にETH−CCを2回(2.5の整数部分)受信することが条件となる。
【0127】
以上のように、LOC検出条件及びLOC検出解除条件の受信時間は、ETH−CCの送信周期の変更によって、信号断時間から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算した減算値を超えないように変更される。この受信時間の変更機能を受信時間変更部という。
【0128】
次に、転送装置は、転送装置は、ETH−CCのETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットに変更後のETH−CCの送信周期が含まれるように設定し、変更後のETH−CCの送信周期を含むETH−CCを送信し(607)、ステップ605の処理に戻る。
【0129】
このETH−CCを転送装置が受信すると、当該転送装置は、図6と同じく、LOC接続解除条件を変更する。
【0130】
図7は、本発明の第1実施形態のネットワークシステムのETH−CCの送信周期の変更処理及びLOC検出解除条件の変更処理のシーケンス図である。
【0131】
転送装置A10及び転送装置B20は、ETH−CCの送信周期の変更処理及びLOC検出解除条件の変更処理を開始すると(701)、ステップ501〜503の処理又はステップ601〜603の処理でユーザデータの最大パケット長、ETH−CCの送信周期、及びLOC検出解除条件が初期設定を設定し(702)、ETH−CCの送信周期の変更処理及びLOC検出解除条件の変更処理の運用を開始する(703)。
【0132】
次に、転送装置A10及び転送装置B20は、ステップ702の処理で設定されたETH−CCの送信周期でETH−CCの送信を開始する(704)。
【0133】
また、転送装置A10及び転送装置B20は、送信したユーザデータの送信時間の計測を開始する(705)。
【0134】
ここで、転送装置A10は、ステップ704の処理でユーザデータの送信時間がステップ702の処理で設定されたETH−CCの送信周期よりも大きくなったことを検出すると(706)、当該送信時間より大きくなるようにETH−CCの送信周期を変更する(707)。
【0135】
そして、転送装置A10は、変更後のETH−CCの送信周期をETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットに設定して、変更後の送信周期でETH−CCを送信する(708)。
【0136】
転送装置B20は、変更後のETH−CCの送信周期を含むETH−CCを受信した場合、ETH−CCの送信周期が変更されたことを検出し、LOC検出解除条件及びETH−CCの送信周期を変更する(709)。このLOC検出解除条件及びETH−CCの送信周期の変更は、図6のステップ606及び607の処理で説明した通りである。
【0137】
そして、転送装置B20は、変更後のETH−CCの送信周期をETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットに設定して、変更後の送信周期でETH−CCを送信する(710)。
【0138】
この後、転送装置B20は、送信したユーザデータの送信時間の計測を開始する(705)。
【0139】
転送装置A10は、変更後のETH−CCの送信周期を含むETH−CCを受信した場合、ETH−CCの送信周期が変更されたことを検出し、LOC検出解除条件を変更する(711)。転送装置A10は、変更後の送信周期でETH−CCを送信する。
【0140】
この後、転送装置A10は、送信したユーザデータの送信時間の計測を開始する(705)。
【0141】
以上によって、ユーザデータの送信時間がETH−CCの送信周期以上である場合、ETH−CCの送信周期をユーザデータの送信時間よりも大きくし、対向する転送装置に変更後のETH−CCの送信周期を通知し、対向する転送装置のLOCの検出のための受信時間を変更するので、ユーザデータの送信に時間がかかっても、LOCを誤って検出することを防止できる。
【0142】
また、信号断時間から最大パケット長のユーザデータの送信時間を減算時間よりLOCの検出のための受信時間を少なくするように、転送装置が保護段数を設定するため、ETH−CCの送信周期が大きくなっても信号断時間内にネットワークを切り替えることを担保できる。
【0143】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ETH−CCの送信周期がユーザデータの送信時間よりも大きくなるように一旦変更されると、当該ETH−CCの送信周期は短縮されなかったが、第2実施形態では、所定時間のユーザデータの最大送信時間がETH−CCの送信周期より小さくなると、所定時間のユーザデータの最大送信時間に基づいて、ETH−CCの送信周期を短縮する。
【0144】
本実施形態について図8を用いて説明する。
【0145】
図8は、本発明の第2実施形態のETH−CCの送信周期の変更処理のフローチャートである。図8では、図5に示すETH−CCの送信周期の変更処理と同じ処理は同じ符号を付与し、説明を省略する。また、図8では、図5に示すステップ501〜503の処理の図示を省略している。
【0146】
図8では図示しないステップ501〜503の処理が実行されると、ステップ504の処理で、ETH−CCの送信周期の変更処理の運用が開始され、ステップ505の処理で、転送装置は、ユーザフレーム及びETH−CCを受信する。そして、転送装置は、ステップ506の処理で、ユーザフレームの送信時間を計測し、ステップ507の処理で、受信したユーザデータの送信時間が、ETH−CCの送信周期以上であるか否かを判定する。
【0147】
ステップ507の処理で、受信したユーザデータの送信時間が、ETH−CCの送信周期より小さいと判定された場合、ステップ506の処理に戻る。
【0148】
一方、ステップ507の処理で、受信したユーザデータの送信時間が、ETH−CCの送信周期以上であると判定された場合、転送装置は、ステップ508の処理で、ETH−CCの送信周期が受信したユーザデータの送信時間よりも大きくなるように、ETH−CCの送信周期を変更する。また、転送装置は、ステップ508の処理で、ETH−CCのETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットに変更後のETH−CCの送信周期が含まれるように設定し、変更後のETH−CCの送信周期を含むETH−CCを送信する。
【0149】
次に、転送装置は、ウィンドウ時間を算出する(801)。ウィンドウ時間は、変更後のETH−CCの送信周期に保護段数を乗じた時間よりも長くする。なお、保護段数は、図6に示すステップ606の処理と同じく、ウィンドウ時間が信号断時間から最大パケット長となるユーザデータの送信時間を減算した時間を超えないように設定される。
【0150】
そして、転送装置は、ステップ801の処理で算出されたウィンドウ時間が経過したか否かを判定する(802)。
【0151】
ステップ801の処理で算出されたウィンドウ時間が経過しないと、ステップ802の処理で判定された場合、転送装置は、ウィンドウ時間内に送信するユーザデータの送信時間を計測する(803)。
【0152】
次に、転送装置は、ウィンドウ時間内で最大となるユーザデータの送信時間が、全時間で最大となるユーザデータの送信時間より小さいか否かを判定する(804)。
【0153】
ステップ804の処理で、ウィンドウ時間内で最大となるユーザデータの送信時間が、ウィンドウ時間が設定される前までの時間で最大となるユーザデータの送信時間より小さいと判定された場合、転送装置は、ETH−CCの送信周期を、ステップ508の処理で設定されたETH−CCの送信周期より小さく設定する(805)。
【0154】
具体的には、転送装置は、ETH−CCの送信周期がウィンドウ時間内で最大となるユーザデータの送信時間より大きくなるように、ETH−CCの送信周期を設定する。ウィンドウ時間内で最大となるユーザデータの送信時間が、ウィンドウ時間が設定される前までの時間で最大となるユーザデータの送信時間より小さいため、ETH−CCの送信周期は、ステップ508の処理で設定されたETH−CCの送信周期より小さくなる。
【0155】
例えば、ウィンドウ時間が設定される前までの時間で最大となるユーザデータの送信時間が12.8msで、ウィンドウ時間内で最大となるユーザデータの送信時間が1.21msである場合、ETH−CCの送信周期は13msから、1.21msより大きい例えば3.33msに短縮される。
【0156】
なお、ステップ805の処理では、転送装置は、ETH−CCのETH−CCのFlagsフィールドのReservedビット及びPeriodビットに変更後のETH−CCの送信周期が含まれるように設定し、変更後のETH−CCの送信周期を含むETH−CCを送信する。
【0157】
ステップ802の処理で、ウィンドウ時間が経過したと判定された場合、ステップ506の処理に戻る。
【0158】
ステップ804の処理で、ウィンドウ時間内で最大となるユーザデータの送信時間が、ウィンドウ時間が設定される前までの時間で最大となるユーザデータの送信時間以上であると判定された場合、ステップ802の処理に戻る。なお、この場合、ステップ802の処理で、ウィンドウ時間が経過したと判定され、ステップ506の処理に戻ると、ウィンドウ時間が設定される前までの時間で最大となるユーザデータの送信時間より大きければ、ステップ508の処理でETH−CCの送信周期が変更される。
【0159】
以上によって、送信に時間がかかるユーザデータが送信されなくなれば、ETH−CCの送信周期が短縮されるので、必要な場合にのみETH−CCの送信周期を延長することができる。
【0160】
本発明では、周期的に他の転送装置に送信される監視データとして、ETH−CCを用いたが、周期的に他の転送装置に送信されるデータで他のデータ(例えばETH−APSや、Ether OAM以外の監視フレーム)であってもよい。
【0161】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0162】
10 転送装置A
11 0系インタフェース
12 1系インタフェース
13 セレクタ
20 転送装置B
21 0系インタフェース
22 1系インタフェース
23 セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された他の装置へデータを転送する転送装置において、
監視データを周期的に前記他の装置へ送信する監視データ送信部と、
ユーザデータを前記他の装置へ送信するユーザデータ送信部と、
前記他の装置から送信された監視データを所定の受信時間以内に受信していない場合に、異常を検出する異常検出部と、
前記ユーザデータを送信するために必要なユーザデータ送信時間を計測する送信時間計測部と、
前記送信時間計測部によって計測されたユーザデータ送信時間が前記監視データの送信周期より大きい場合、前記監視データの送信周期が前記ユーザデータ送信時間より大きくなるように前記監視データの送信周期を変更する監視データ送信周期変更部と、を備えることを特徴とする転送装置。
【請求項2】
前記監視データ送信周期変更部は、前記監視データの送信周期を変更した場合、前記他の装置に前記変更後の監視データの送信周期を通知し、
前記監視データの送信周期が変更されたことを前記他の装置から通知された場合、前記通知された変更後の監視データの送信周期に基づいて、現在設定されている受信時間より大きくなるように前記受信時間を変更する受信時間変更部を備えることを特徴とする請求項1に記載の転送装置。
【請求項3】
前記転送装置と前記他の装置とは二つのネットワークによって接続され、
前記ユーザデータ送信部は、一つのネットワークに前記ユーザデータを送信することによって、前記ユーザデータを前記他の装置へ送信し、
前記異常検出部が異常を検出した場合、前記ユーザデータ送信部が前記ユーザデータを送信しているネットワークを他方のネットワークに切り替えるとともに、前記他の装置にもネットワークを切り替えさせるネットワーク切替部を備え、
前記異常検出部による異常の検出から前記他の装置のネットワークの切り替えは、所定の切替時間以内で実行され、
前記異常検出部は、前記監視データの送信周期に所定の値を乗算した時間である前記受信時間以内に、前記監視データを受信していない場合、前記異常を検出し、
前記受信時間変更部は、
前記受信時間を変更する場合、前記切替時間から前記送信時間計測部によって計測されたユーザデータ送信時間のうち最大のユーザデータ送信時間を減算した減算値を算出し、
前記算出した減算値を前記変更後の監視データの送信周期で除算した除算値を算出し、
前記所定の値を前記算出した除算値より小さくなるように変更することによって、前記受信時間を変更することを特徴とする請求項2に記載の転送装置。
【請求項4】
前記送信時間計測部は、前記監視データ送信周期変更部によって前記監視データの送信周期が変更された時間から所定時間経過するまでのユーザデータ送信時間を変更後ユーザデータ送信時間として計測し、
前記監視データ送信周期変更部は、
前記変更後ユーザデータ送信時間のうち最大となる第1ユーザデータ送信時間が、前記監視データ送信周期変更部によって前記監視データの送信周期が変更される前の変更前ユーザデータ送信時間のうち最大となる第2ユーザデータ送信時間より小さいか否かを判定し、
前記第1ユーザデータ送信時間が前記第2ユーザデータ送信時間より小さい場合、前記監視データの送信周期を前記第1ユーザデータ送信時間より大きく、前記第2ユーザデータ送信時間より小さくなるように変更することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の転送装置。
【請求項5】
前記監視データは、ETH−CCフレームであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の転送装置。
【請求項6】
データを転送する転送装置を備えるネットワークシステムにおいて、
前記転送装置は、
監視データを周期的に前記他の装置へ送信する監視データ送信部と、
ユーザデータを前記他の装置へ送信するユーザデータ送信部と、
前記他の装置から送信された監視データを所定の受信時間以内に受信していない場合に、異常を検出する異常検出部と、
前記ユーザデータを送信するのにかかるユーザデータ送信時間を計測する送信時間計測部と、
前記送信時間計測部によって計測されたユーザデータ送信時間が前記監視データの送信周期より大きい場合、前記監視データの送信周期が前記ユーザデータ送信時間より大きくなるように前記監視データの送信周期を変更する監視データ送信周期変更部と、を備えることを特徴とするネットワークシステム。
【請求項7】
前記転送装置は、第1転送装置と前記第1転送装置に接続された第2転送装置とを含み、
前記第1転送装置の前記監視データ送信周期変更部が前記監視データの送信周期を変更した場合、当該監視データ送信周期変更部は、前記変更後の監視データの送信周期を前記第2転送装置に通知し、
前記第2転送装置は、前記監視データの送信周期が変更されたことを前記第1転送装置から通知された場合、前記通知された変更後の監視データの送信周期に基づいて、現在設定されている受信時間より大きくなるように前記受信時間を変更する受信時間変更部を備え、
前記第2転送装置が前記監視データの送信周期が変更されたことを前記第1転送装置から通知された場合、前記第2転送装置の前記監視データ送信周期変更部は、前記通知された変更後の監視データの送信周期に前記監視データの送信周期を変更し、前記変更後の監視データの送信周期を前記第1転送装置に通知し、
前記第1転送装置は、前記監視データの送信周期が変更されたことを前記第2転送装置から通知された場合、前記通知された変更後の監視データの送信周期に基づいて、現在設定されている受信時間より大きくなるように前記受信時間を変更する受信時間変更部を備えることを特徴とする請求項6に記載のネットワークシステム。
【請求項8】
前記第1転送装置と前記第2転送装置とは二つのネットワークによって接続され、
前記第1転送装置及び前記第2転送装置のユーザデータ送信部は、同じ一つのネットワークに前記ユーザデータを送信することによって、前記ユーザデータを他方の転送装置へ送信し、
前記第1転送装置及び前記第2転送装置は、前記異常検出部が異常を検出した場合、ユーザデータ送信部が前記ユーザデータを送信しているネットワークを他方のネットワークに切り替えるとともに、前記他の装置にもネットワークを切り替えさせるネットワーク切替部を備え、
前記異常検出部による異常の検出から前記他の装置のネットワークの切り替えは、所定の切替時間以内で実行され、
前記異常検出部は、前記監視データの送信周期に所定の値を乗算した時間である前記受信時間以内に、前記監視データを受信していない場合、前記異常を検出し、
前記第1転送装置及び前記第2転送装置の前記受信時間変更部は、
前記受信時間を変更する場合、
前記切替時間から前記送信時間計測部によって計測されたユーザデータ送信時間のうち最大のユーザデータ送信時間を減算した減算値を算出し、
前記算出した減算値を前記変更後の監視データの送信周期で除算した除算値を算出し、
前記所定の値を前記算出した除算値より小さくなるように変更することによって、前記受信時間を変更することを特徴とする請求項7に記載のネットワークシステム。
【請求項9】
前記送信時間計測部は、前記監視データ送信周期変更部によって前記監視データの送信周期が変更された時間から所定時間経過するまでのユーザデータ送信時間を変更後ユーザデータ送信時間として計測し、
前記監視データ送信周期変更部は、
前記変更後ユーザデータ送信時間のうち最大となる第1ユーザデータ送信時間が、前記監視データ送信周期変更部によって前記監視データの送信周期が変更される前の変更前ユーザデータ送信時間のうち最大となる第2ユーザデータ送信時間より小さいか否かを判定し、
前記第1ユーザデータ送信時間が前記第2ユーザデータ送信時間より小さい場合、前記監視データの送信周期を前記第1ユーザデータ送信時間より大きく、前記第2ユーザデータ送信時間より小さくなるように変更することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一つに記載のネットワークシステム。
【請求項10】
前記監視データは、ETH−CCフレームであることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか一つに記載のネットワークシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−70329(P2013−70329A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208923(P2011−208923)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】