説明

軸不斉イソキノリン誘導体及びその製造方法並びに不斉合成方法

【課題】配位子や求核触媒等として有用なイソキノリン誘導体を、光学分割の工程を経ることなく簡易な方法で製造できるイソキノリン誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物と、をロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒の存在下で反応させて一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を得る工程。〔Q:=N−など、Z:Oなど]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸不斉イソキノリン誘導体及びその製造方法並びに不斉合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸不斉ビアリール化合物は、生理活性物質やBINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)に代表される光学活性二座配位子に多く見られる基本骨格である。そのため、これまでに様々なビアリール化合物の合成法が研究されている(例えば、非特許文献1参照)。
例えば、軸不斉ホスフィン二座配位子であるBINAPの合成方法として、酸化カップリングによる2,2’−ビナフトールの合成、アルコールの臭素化、ジフェニルホスフィノイル基の導入、光学分割、及びジフェニルホスフィンオキシドの還元をこの順に行う方法が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
一方、近年では、軸不斉含窒素ビアリール化合物の合成への期待が高まっている。
軸不斉含窒素ビアリール化合物は多彩な利用が可能で、特に配位子や求核触媒としての利用が多数報告されている(例えば、非特許文献3〜5参照)。
例えば、イソキノリン骨格を有する軸不斉P−N二座配位子Quinap(1−(2−ジフェニルホスフィノ−1−ナフチル)イソキノリン)を用いた反応では、ロジウム触媒を用いたスチレンの不斉ヒドロホウ素化反応が報告されている(例えば、非特許文献6及び7参照)。
また、イソキノリンN−オキシド骨格を有する軸不斉求核触媒QUINOXを用いた反応として、芳香環アルデヒドの不斉アリル化反応が報告されている(例えば、非特許文献8及び9参照)。
【0004】
このように、軸不斉含窒素ビアリール化合物は、不斉合成において、金属触媒の配位子として、また、求核触媒として重要な化合物であるため、その実用的合成法の開発が強く求められている。
これまでに、軸不斉含窒素ビアリール化合物の合成法として、以下のような報告例がある。
例えば、1993年にBrownらは、Pd触媒を用いた1−クロロイソキノリンとアリールボロン酸の酸化カップリングによるヘテロ環ビアリール化合物の合成、リン原子の導入、Pd錯体を用いた光学分割などを経て、配位子Quinapを合成する方法(下記反応スキーム参照)について報告した(例えば、非特許文献10参照)。
【0005】
【化1】



【0006】
また、2003年にKocovskyらは、Quinapの合成と類似の手法によりヘテロビアリール化合物の合成、mCPBAによる窒素原子の酸化、光学分割などを経て、軸不斉求核触媒QUINOXを合成する方法(下記反応スキーム参照)について報告した(例えば、非特許文献8及び9参照)。
【0007】
【化2】



【0008】
しかし、これらの合成法では多段階の反応を必要とし、さらに光学分割の工程も必要であるという問題点があった。
また、カップリング反応を用いたAr−Ar結合形成による、軸不斉ビアリール化合物のエナンチオ選択的合成が数例報告されている。
2000年にBuchwaldらにより、アリールボロン酸と1−ブロモナフタレン誘導体との不斉鈴木カップリングを用いた高エナンチオ選択的軸不斉ビアリール化合物の合成が報告された(例えば、非特許文献11参照)。
しかし、軸不斉ヘテロビアリール化合物のエナンチオ選択的合成は報告されていない。
【0009】
また短工程かつ原子効率の高いヘテロビアリール化合物の合成法として、[2+2+2]付加環化反応がある。この反応では、環構築の際に立体を制御することによりエナンチオ選択的に軸不斉構築が可能である(例えば、非特許文献12〜16参照)。
Kotoraらは、Co錯体触媒を用いたアルキンとニトリルの[2+2+2]付加環化反応によりアリールピリジンの位置選択的合成を行い、この化合物を酸化することで求核触媒である軸不斉アリールピリジンN−オキシドへの展開(下記反応スキーム参照)を報告した(例えば、非特許文献17参照)。この反応は短工程かつ高い位置選択性、良好な収率でアリールピリジンの合成を可能としたが、これまでと同様に光学分割を必要とした。
【0010】
【化3】



【0011】
2004年にHeller、Gutnovらは、コバルト錯体触媒を用いて1−ナフトニトリルと1,6−ジインとの[2+2+2]付加環化反応、又は1−ナフチル−1,7−オクタジインとニトリルとの[2+2+2]付加環化反応により、軸不斉含窒素ビアリールのエナンチオ選択的合成(下記反応スキーム参照)を報告した(例えば、非特許文献18参照)。
【0012】
【化4】



【0013】
上記の反応は、[2+2+2]付加環化反応による初めてのヘテロビアリール化合物のエナンチオ選択的合成であるが、キラルCo錯体の合成が困難であること、収率、エナンチオ選択性、基質適応範囲などに制限がある等の問題点があった。
【0014】
一方、カチオン性ロジウム錯体触媒を用いたビアリール化合物の合成が報告されている(例えば、非特許文献19参照)。
例えば、基質として、末端に2,6−二置換フェニル基を有するアルキニルホスフォネート、またはホスフィンオキシドと、対称及び非対称1,6−ジインとをカチオン性ロジウム/H−BINAP錯体触媒を用い、高収率かつ高エナンチオ選択的に配位子の前駆体である軸不斉ビアリールを合成する方法が報告されている(例えば、特許文献1及び非特許文献20参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−169201号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 5384.
【非特許文献2】T. Tetrahedron. 2005, 61, 5405.
【非特許文献3】Coordination Chemistry Reviews. 2007, 251, 2119.
【非特許文献4】Adv. Synth. Catal. 2004, 346, 497.
【非特許文献5】Tetrahedron. 2003, 59, 9471.
【非特許文献6】Chem. Eur. J. 1999, 5, 1320.
【非特許文献7】J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1993, 1673.
【非特許文献8】J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 5341.
【非特許文献9】Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 3674.
【非特許文献10】Tetrahedron Asymmetry. 1993, 4, 743.
【非特許文献11】J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 12051.
【非特許文献12】Angew. Chem., Int. Ed. 2009, 48, 2830.
【非特許文献13】Synlett 2008, 2571.
【非特許文献14】Org. Biomol. Chem. 2008, 1317.
【非特許文献15】Chem. Soc. Rev. 2007, 36, 1085.
【非特許文献16】Adv. Synth. Catal. 2006, 348, 2307.
【非特許文献17】Tetrahedron. 2006, 62, 968.
【非特許文献18】Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 3795.
【非特許文献19】Chem. Asian J. 2009, 4, 508.
【非特許文献20】Angew. Chem., Int. Ed. 2007, 46, 3951.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記非特許文献8〜10及び12〜18に記載の軸不斉含窒素ビアリール化合物は、製造(合成)の際に光学分割の工程が必要であり、また、収率及びエナンチオ選択性等について更なる改善が求められている。
また、上記非特許文献11、19及び20に記載の合成は、骨格中に窒素原子を含まない軸不斉ビアリール化合物の合成である点で、骨格中に窒素原子を含む軸不斉含窒素ビアリール化合物の合成とは本質的に全く異なるものである。
【0018】
従って本発明は、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、金属触媒の配位子、求核触媒、またはこれらの前駆体として有用であり、光学分割の工程を経ることなく簡易な方法で製造できる軸不斉イソキノリン誘導体を提供することである。
また、本発明の目的は、上記軸不斉イソキノリン誘導体を不斉合成触媒として用いた不斉合成方法を提供することである。
また、本発明の目的は、光学分割の工程を必要としない簡易な方法であり、収率及びエナンチオ選択性に優れた軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、をロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒の存在下で反応させて下記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を得る工程を有する軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
【0020】
【化5】

【0021】
〔一般式(1)及び一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)、又は−COOR1C基(R1Cは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、Qは、窒素原子又は=N(O)−を表す。
一般式(1)及び一般式(3)中、Zは、酸素原子、−NR−(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はトシル基を表す)、又は−(CR4142−(R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。nは、1又は2を表す。)を表す。
一般式(3)中、*は不斉軸を表す。〕
【0022】
<2> 前記Rが、炭素数1〜6のアルキル基である<1>に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
<3> 前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、を10℃以上100℃以下の温度条件下で反応させる<1>又は<2>に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
<4> 前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、を70℃以上90℃以下で反応させる<1>〜<3>のいずれか1項に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
<5> 前記ロジウム金属の量が、前記一般式(2)で表される化合物の量に対し、0.1mol%以上30mol%以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
【0023】
<6> 下記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体。
【0024】
【化6】

【0025】
〔一般式(3)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。
一般式(3)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)、又は−COOR1C基(R1Cは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)を表す。
一般式(3)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
一般式(3)中、Qは、窒素原子又は=N(O)−を表す。
一般式(3)中、Zは、酸素原子、−NR−(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はトシル基を表す)、又は−(CR4142−(R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。nは、1又は2を表す。)を表す。
一般式(3)中、*は不斉軸を表す。〕
【0026】
<7> 前記Rが、炭素数1〜6のアルキル基である<6>に記載の軸不斉イソキノリン誘導体。
【0027】
<8> <6>又は<7>に記載の軸不斉イソキノリン誘導体を用いた不斉合成方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、金属触媒の配位子、求核触媒、またはこれらの前駆体として有用であり、光学分割の工程を経ることなく簡易な方法で製造できる軸不斉イソキノリン誘導体を提供することができる。
また、本発明によれば、上記軸不斉イソキノリン誘導体を不斉合成触媒として用いた不斉合成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、光学分割の工程を必要としない簡易な方法であり、収率及びエナンチオ選択性に優れた軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
≪軸不斉イソキノリン誘導体≫
本発明の軸不斉イソキノリン誘導体は、下記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体である。
【0030】
【化7】

【0031】
一般式(3)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。
一般式(3)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)、又は−COOR1C基(R1Cは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)を表す。
一般式(3)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
一般式(3)中、Qは、窒素原子(=N−)又は=N(O)−を表す。
一般式(3)中、Zは、酸素原子(−O−)、−NR−(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はトシル基を表す)、又は−(CR4142−(R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。nは、1又は2を表す。nが2であるときは、2つずつ存在するR41及びR42は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)を表す。
一般式(3)中、*は不斉軸を表す。
【0032】
本発明者は、軸不斉含窒素ビアリール化合物の中でも、特に一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体が、収率及びエナンチオ選択性良く得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明では、特に、前記Qが窒素原子又は=N(O)−であることが、収率及びエナンチオ選択性の向上に寄与している(例えば、後述の実施例1−1及び比較例1参照)。
【0033】
また、前記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体は、金属触媒の配位子、求核触媒、またはこれらの前駆体として有用な化合物である。
従って、一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を、金属触媒の配位子、求核触媒、またはこれらの前駆体として用いることで、収率及びエナンチオ選択性に優れた不斉合成(例えば、スチレンの不斉ヒドロホウ素化反応、芳香環アルデヒドの不斉アリル化反応、等)を行うことができる。
例えば、一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体のうち、Rが−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)であり、かつ、Qが窒素原子(=N−)である化合物は、軸不斉P−N二座配位子として特に有用である。
また、一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体のうち、Qが=N(O)−である化合物は、軸不斉求核触媒として特に有用である。
【0034】
一般式(3)において、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
該炭素数1〜6のアルキル基としては、該炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0035】
一般式(3)におけるR及びRついては前述のとおりであるが、収率及びエナンチオ選択性をより向上させる観点からは、前記R及び前記Rとしては、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0036】
一般式(3)におけるRついては前述のとおりであるが、収率及びエナンチオ選択性をより向上させる観点からは、前記Rとしては、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。前記Rとしては、該炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0037】
一般式(3)におけるRについては前述のとおりであるが、収率及びエナンチオ選択性をより向上させる観点からは、前記Rとしては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、又は−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、又は−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)がより好ましく、炭素数3又は4のアルキル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、又は−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、フェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)が特に好ましい。
【0038】
一般式(3)におけるR、R、R、R、及びRについては前述のとおりであるが、中でも、合成の簡便さ(又は原料の入手容易さ)の観点からは、いずれも水素原子であることが好ましい。
【0039】
一般式(3)におけるZについては前述のとおりであるが、収率及びエナンチオ選択性をより向上させる観点からは、酸素原子(−O−)又は−NR−(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はトシル基を表す)であることが好ましく、酸素原子(−O−)又は−NR−(Rはトシル基を表す)であることが特に好ましい。
【0040】
前記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体の具体例(例示化合物)としては、後述する、化合物3aa、化合物3ab、化合物3ac、化合物3ae、化合物3af、化合物3ba、化合物3bb、化合物3be、化合物3bf、化合物4ba、化合物4be、化合物4bf、化合物6aa、化合物6bb、が挙げられるが、本発明はこれら具体例に限定されることはない。
【0041】
≪軸不斉イソキノリン誘導体及びその製造方法≫
本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、をロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒の存在下で反応させて下記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を得る工程を有する。本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法は、必要に応じ、その他の工程を有していてもよい。
【0042】
【化8】

【0043】
一般式(1)〜一般式(3)中、R〜R、Z、及びQについては、既述の「軸不斉イソキノリン誘導体」の項で説明したとおりであり、好ましい範囲も同様である。
【0044】
本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法は、ジイン化合物である前記一般式(1)で表される化合物と、基質としての前記一般式(2)で表される化合物と、を[2+2+2]付加環化反応により反応させて前記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を得る方法である。
本発明者は、[2+2+2]付加環化反応を用いた系において、基質として骨格中に窒素原子を含む前記一般式(2)で表される化合物を用いることで、一般式(3)で表される化合物を収率及びエナンチオ選択性良く製造できることを見出し、本発明を完成した(後述の実施例1−1及び比較例1参照)。
更に、本製造方法では、前記Rとして、前記で例示した様々な基を用いることができること、即ち、基質適応範囲が広いこともわかった。
【0045】
なお、一般式(3)においてQが=N(O)−である化合物は、まず、本製造方法により一般式(3)においてQが窒素原子(=N−)である化合物を製造し、引き続き、この「一般式(3)においてQが窒素原子(=N−)である化合物」を酸化することによっても製造できる。
また、一般式(3)においてRが−PR2122基である化合物は、まず、本製造方法により一般式(3)においてRが−P(O)R2122基である化合物を製造し、引き続き、この「一般式(3)においてRが−P(O)R2122基である化合物」を還元することによっても製造できる。
【0046】
本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法における、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物とを反応させる際の反応温度には特に限定はないが、収率及びエナンチオ選択性をより向上させる観点からは、好ましくは−20℃〜120℃、より好ましくは10℃〜100℃、特に好ましくは70℃〜90℃の範囲である。
特に、反応温度が70℃〜90℃の範囲であると、少ない触媒においても収率及びエナンチオ選択性良く一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を合成でき、また、短時間で収率及びエナンチオ選択性良く一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を合成できる。
【0047】
また、反応時間には特に限定はないが、好ましくは30分〜30時間、より好ましくは1時間〜20時間である。なお、反応は、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0048】
また、本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法において、用いられる反応溶媒としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限は無いが、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、例えばジクロロメタン(塩化メチレン)、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えばtert−ブタノール等の非求核性のアルコール類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類及び例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら反応溶媒は、夫々単独で用いてもよく、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、前述のとおり、一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体において、−P(O)2122基中のaが0である化合物は、対応するaが1である化合物を常法(例えば還元反応などの方法)に付することによって容易に製造できる。
【0050】
また、本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法において、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物との反応終了後は、濾過やシリカゲルカラムクロマトグラフィー等、この種分野で通常行われる後処理操作を行い、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等の精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的の一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を得ることができる。
【0051】
また、本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法において、前記「ロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒」に含まれるロジウム金属の量(実質的には前記触媒の量に相当する)は、基質である一般式(2)で表される化合物の量に対し、例えば、0.01mol%以上とすることができる。
収率及びエナンチオ選択性をより向上させる観点からは、前記ロジウム金属の量は、0.1mol%以上が好ましく、1mol%以上がより好ましい。
前記ロジウム金属の量の上限には特に限定はないが、例えば、30mol%とすることができる。
以下、ロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒について説明する。
【0052】
<ロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒>
本発明の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法では、ロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒(即ち、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒)を用いる。
前記ロジウム金属のロジウム源としては、ロジウム化合物が用いられ、好ましいロジウム化合物としては、オレフィン性配位子が配位したロジウム(I)の錯体が挙げられる。 具体的なロジウム(I)錯体としては、[Rh(cod)]X、[Rh(nbd)]X、[RhCl(エチレン)、[RhCl(cod)]、[RhCl(nbd)]等が挙げられる。前記錯体化学式中、Xはカウンターアニオンを表し、codは1,5−シクロオクタジエン、nbdはノルボルナジエンを表す。
【0053】
前記光学活性ビスホスフィンとしては、例えば下記の一般式(5)で表されるものが挙げられる。
1011P−Q−PR1213 … (5)
(一般式(5)中、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R10とR11とで及び/又はR12とR13とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
【0054】
上記式(5)中、R10、R11、R12及びR13で表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
これらアリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
【0055】
前記アリール基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等が挙げられる。
【0056】
前記アリール基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等が挙げられる。
【0057】
前記アリール基の置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0058】
前記アリール基の置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。一方、芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、ヘテロ原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0059】
また、一般式(5)中、R10、R11、R12及びR13で表される、置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、5員環又は6員環のシクロアルキル基が挙げられ、好ましいシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルキル基又はアルコキシ基等の置換基で、1乃至2以上置換されていてもよい。
【0060】
また、一般式(5)中、R10とR11とで及び/又はR12とR13とで形成してもよい環としては、R10、R11、R12及びR13が結合しているリン原子を含めた環として、四員環、五員環又は六員環の環が挙げられる。具体的な環としては、ホスフェタン環、ホスホラン環、ホスファン環、2,4−ジメチルホスフェタン環、2,4−ジエチルホスフェタン環、2,5−ジメチルホスホラン環、2,5−ジエチルホスホラン環、2,6−ジメチルホスファン環、2,6−ジエチルホスファン環等が挙げられ、これらの環は光学活性体でもよい。
【0061】
また、一般式(5)中、Qで表される、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基等が挙げられる。フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられ、該フェニレン基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等のアルコキシ基;水酸基、アミノ基又は置換アミノ基等で置換されていてもよい。ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基としては、1,1’−ビアリール−2,2’−ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基は、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等で置換されていてもよい。また、フェロセンジイル基も置換基を有していてもよく、置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられる。
【0062】
一般式(5)で表される光学活性ビスホスフィンの具体例としては、例えば公知のビスホスフィン類が挙げられ、その内の一つとして下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【化9】

【0064】
(一般式(6)中、R14及びR15は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示すか、またはシクロペンチル基もしくはシクロヘキシル基を示す。)
【0065】
上記R14及びR15における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0066】
14及びR15の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、3,5−キシリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0067】
また、一般式(6)で表される化合物の基本骨格であるビナフチル環は、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、例えばメチル基、t−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基及びトリフェニルシリル基等のトリアリールシリル基が挙げられる。
【0068】
また、R1011P−Q−PR1213で表される光学活性ビスホスフィンの他の具体例としては、下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化10】

【0070】
(一般式(7)中、R16及びR17は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基を示す。R18、R19、R20、R21、R22及びR23は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R18、R19及びR20のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよく、R21、R22及びR23のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。また、R20とR23とで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R20とR23は水素原子ではない。)
【0071】
上記R16及びR17における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上に複数置換していてもよい。R16及びR17の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0072】
また、R18〜R23で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜10のアシルオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、ハロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のハロアルキル基が挙げられ、ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0073】
18、R19及びR20のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合、並びにR21、R22及びR23のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合のメチレン鎖としては、例えば、炭素数3〜5のメチレン鎖が好ましく、具体的にはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。また、該置換基を有していてもよいメチレン鎖における置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0074】
また、R18、R19及びR20のうちの二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合、並びにR21、R22及びR23の内の二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合の(ポリ)メチレンジオキシ基の具体例としては、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等が挙げられる。また、該(ポリ)メチレンジオキシ基に置換する置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0075】
一般式(6)及び(7)で示される光学活性ビスホスフィン化合物の具体例としては、例えば2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(m−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロペンチル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、
【0076】
2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−ターシャリーブチルフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、
【0077】
((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(以下、segphosという)、(4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、
【0078】
2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラ(トリフルオロメチル)−5,5’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,6−ジ(トリフルオロメチル)−4’,6’−ジメチル−5’−メトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジフェニルホスフィノ−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、1,11−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,7−ジヒドロベンゾ[c,e]オキセピン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’−テトラメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシ−1,1’−ビフェニル、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジエチルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジイソプロピルホスホラノ)ベンゼン、1−(2,5−ジメチルホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,1’−ビス(2,4−ジエチルホスフォタノ)フェロセン等が挙げられる。
【0079】
それら以外にも、本発明で用いることのできる光学活性ビスホスフィン化合物の具体例としては、例えば、N,N−ジメチル−1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス[(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等が挙げられる。
【0080】
本発明で用いられる触媒は、触媒成分として上記で説明したようなロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒であり、例えば、下記一般式(4)で表される化合物である。
[Rh(L)(Y)]X … (4)
(一般式(4)中、LはR1011P−Q−PR1213で表される光学活性ビスホスフィンを表し、Yは非共役ジエン化合物を表し、Xはカウンターアニオンを表す。また、mは1又は2の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。但し、m=1のとき、n=0又はn=1であり、m=2のときはn=0である。R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R10とR11とで及び/又はR12とR13とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
【0081】
上記一般式(4)中、Lで表されるR1011P−Q−PR1213なる光学活性ビスホスフィンについては、前述した通りである。
【0082】
続いて、本発明で用いられるロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒の例である一般式(4)で表される化合物について、さらに詳しく説明する。
【0083】
一般式(4)において、Yで表される非共役ジエン化合物としては、環状でも非環状でもよく、非共役ジエン化合物が環状非共役ジエン化合物である場合には、単環状、多環状、縮環状、架橋環状のいずれであってもよい。また、非共役ジエン化合物は、置換基で置換された非共役ジエン化合物、即ち置換非共役ジエン化合物でもよく、該置換基は、本発明の製造方法に悪影響を与えない置換基であれば特に限定されない。好ましい非共役ジエン化合物としては、例えば、1,5−シクロオクタジエン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0084】
一般式(4)において、Xで表されるカウンターアニオンとしては、例えばBF、ClO、CFSO(以下、OTfと略記する)、PF、SbF、B(3,5−(CF及びBPh等が挙げられる。
【0085】
本発明で用いられる、一般式(4)で表される化合物は、例えば、下記スキーム1に示すように、不活性ガス雰囲気下、公知の方法で得られるか、又は市販されているロジウム−オレフィン配位錯体に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で、例えば前記のLで表される光学活性ビスホスフィンを反応させた後、MX(Mは一価の金属陽イオンを示し、Xは前記と同じ意味を表す。)でカウンターアニオンの交換反応を行う(これによりスキーム1中の(A)又は(B)の化合物が得られる)ことにより、あるいは更に水素ガスを作用させてオレフィン性配位子を脱離させる(これによりスキームA中の(C)の化合物が得られる)ことにより得ることができる。なお、化学式中のCODは、1,5−シクロオクタジエンを示す(以下同様)。
【0086】
(スキームA)
【化11】



【0087】
前記一般式(4)で表される化合物は、また、下記スキームBに示すように、予めカウンターアニオンの交換反応を行ったロジウム−ビスオレフィン錯体にLで表される光学活性ビスホスフィンを反応させることにより、あるいは更に水素ガスでオレフィン性配位子を脱離させることによっても得ることができる。
【0088】
(スキームB)
【化12】

【0089】
スキームA及びスキームBに示されるようなロジウム−オレフィン配位錯体の中心金属モル数に対しての、Lで表される光学活性ビスホスフィンの添加量は、ビスホスフィンの一部が酸化を受ける場合があるので、1.0〜2.4倍モル、より好ましくは1.05〜2.2倍モルであることが望ましい。
【0090】
本発明において、一般式(4)で表される化合物を触媒として調製する際に用いられるロジウム−オレフィン配位錯体としては、オレフィン配位子の選択によって種々の錯体を取り扱うことが可能であるが、入手の容易性より、1,5−シクロオクタジエンのロジウム錯体である[Rh(COD)Cl]や、ノルボルナジエンのロジウム錯体である[Rh(NBD)Cl] が特に好ましい。なお、化学式中のNBDは、2,5−ノルボルナジエンを示す(以下同様)。
【0091】
また、カウンターアニオン交換反応においては、MXとして例えば銀塩(AgX)を用いて行うことが、取り扱いの面で好ましい。
【0092】
なお、一般式(4)で表される化合物における触媒活性種は[Rh(L)]Xであるが、その前駆体である化合物、例えば前記スキームに記載の(A)の化合物[Rh(L)(COD)]Xも本発明の製造法において用いることができる。
【0093】
例えば前記スキームに記載の(A)、(B)及び(C)の化合物などの一般式(4)で表される化合物は、触媒として調製後は、特に精製することなく本発明の製造法に用いることができる。さらにいえば、本発明の製造方法においては、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を調製後即時使用することができ、具体的には、ロジウム化合物と光学活性ビスホスフィンとを反応させて該触媒を調製し、続いて上記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物とを加えればよい。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、「室温」及び「rt」は25℃を指す。
【0095】
≪反応条件及び反応触媒の検討≫
〔実施例1−1〕
下記反応スキーム1に従って、一般式(1)で表される化合物である化合物1aと、一般式(2)で表される化合物である化合物2aと、を反応させ、一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体である化合物3aaを合成した。
【0096】
【化13】

【0097】
以下、反応スキーム1の詳細について説明する。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に、配位子(Ligand)としての(R)−BINAP(0.010mmol)、[Rh(cod)]BF(0.010mmol)、及び塩化メチレン1.0mLを加え、30分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。
続いて反応液を濃縮して乾固し、塩化メチレン0.2mLを加えた。得られた溶液に、上記化合物2a(0.05mmol)及び上記化合物1a(0.150mmol;化合物2aに対し3当量)の塩化メチレン0.3mL溶液を加え、更に塩化メチレン0.5mLを加えた。
得られた混合物を室温で16時間撹拌して反応させた。
次いで、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、化合物3aaを無色固体として得た(収率60%、ee99%)。
この実施例1−1において、触媒量は20mol%である。
ここで、触媒量は、基質である一般式(2)で表される化合物(例えば化合物2a)に対する触媒(Ligand及び[Rh(cod)]BF)の量(Rh原子換算)を指す。以降の実施例においても同様である。
実施例1−1における、配位子(Ligand)、触媒量、反応温度、収率、エナンチオマー過剰率(以下、「ee」と表記する)を、下記表1に示す。
【0098】
〔実施例1−2〜実施例1−8〕
実施例1−1において、配位子(Ligand)、触媒量、及び反応温度を下記表1に示すようにしたこと以外は実施例1−1と同様にして、化合物3aaを合成した。
収率及びeeを下記表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1における各配位子(Ligand)の構造を以下に示す。
【0101】
【化14】

【0102】
表1に示すように、いずれの配位子を用いても反応が進行し、高いエナンチオ選択性で目的とする化合物3aaが得られた(実施例1−1〜実施例1−8)。
【0103】
≪置換基の検討≫
〔実施例2−1〜2−9〕
下記反応スキーム2に従って、一般式(1)で表される化合物である一般式(1A)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物である一般式(2A)で表される化合物と、を反応させたこと以外は実施例1−3と同様にして、一般式(1)で表される軸不斉イソキノリン誘導体である一般式(3A)で表される化合物を合成した。
触媒量及び反応温度は表2に示すとおりとし、反応時間はいずれも16時間とした。
【0104】
また、一般式(1A)で表される化合物としては、表2に示す化合物1a又は化合物1bを用いた。化合物1aを用いる場合、該化合物1aの量は一般式(2A)で表される化合物に対し3当量とし、化合物1bを用いる場合、該化合物1bの量は一般式(2A)で表される化合物に対し1.1当量とした。
また、一般式(2A)で表される化合物としては、表2に示す化合物2a、化合物2b又は化合物2cを用いた。
また、一般式(3A)で表される化合物としては、表2に示す化合物3aa、化合物3ba、化合物3ab、化合物3bb、及び化合物3acをそれぞれ合成した。
なお、前記実施例1−3は、化合物1aと化合物2aとを反応させて化合物3aaを合成する場合に相当する。
【0105】
実施例2−1〜2−9における収率及びeeを下記表2に示す。
なお、表2中には、対比のため、実施例1−3における収率及びeeも併記した。
【0106】
【化15】

【0107】
【表2】

【0108】
上記表2をはじめ、本明細書中では、Tsはトシル基を表し、i−Prはイソプロピル基を表し、n−Buはノルマルブチル基を表す。
【0109】
表2に示すように、一般式(1A)におけるZ、及び、一般式(2A)におけるRとして、いずれの置換基を用いた場合においても、良好な収率かつ高いエナンチオ選択性で一般式(3A)で表される化合物(具体的には、化合物3aa、化合物3ba、化合物3ab、化合物3bb、化合物3ac)を合成できた。
このように、本反応では、一般式(2)で表される化合物におけるRとして様々な基を用いることができること(即ち、基質適応範囲が広いこと)が確認された。
【0110】
≪軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシドの合成≫
〔実施例3−1〜3−7〕
下記反応スキーム3に従って、一般式(1)で表される化合物である一般式(1A)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物である化合物2eと、を反応させ、一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体として、軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシド(一般式(3B)で表される化合物)を合成した。
ここで、触媒における配位子(Ligand)、触媒量、反応温度、は下記表3に示すとおりであり、反応時間はいずれの例においても16時間である。その他の条件及び操作は実施例1−1と同様である。
また、一般式(1A)で表される化合物としては、表3に示す化合物1a又は化合物1bを用いた。化合物1aを用いる場合、該化合物1aの量は化合物2eに対し3当量とし、化合物1bを用いる場合、該化合物1bの量は化合物2eに対し1.1当量とした。
また、一般式(3B)で表される化合物としては、表3に示す化合物3ae(一般式(3B)のZが酸素原子である化合物)及び化合物3be(一般式(3B)のZがNTsである化合物)をそれぞれ合成した。
実施例3−1〜3−7における収率及びeeを下記表3に示す。
【0111】
【化16】

【0112】
【表3】

【0113】
表3に示すように、表3中のいずれの配位子を用いた場合においても、軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシド(化合物3ae及び化合物3be)を合成することができた。
特に、(R)−Solphosを用いた実施例3−4〜3−7では、エナンチオ選択性に特に優れており、中でも、反応温度を80℃とした実施例3−4、実施例3−5、及び実施例3−7では、エナンチオ選択性に加えて収率も良好であった。
【0114】
≪軸不斉求核触媒イソキノリンN−オキシド(化合物4ba)の合成≫
〔実施例4〕
下記反応スキーム4に従って、軸不斉求核触媒として有用なイソキノリンN−オキシド(化合物4ba)を合成した。
具体的には、塩化メチレン中で、化合物3ba(ee93%)をmCPBA(メタクロロ過安息香酸)を用いて酸化させた。反応温度は室温とし、反応時間は16時間とした。
【0115】
【化17】



【0116】
その結果、上記反応スキーム4に示すように、軸不斉を保持したまま、良好な収率で軸不斉求核触媒イソキノリンN−オキシド(化合物4ba)が得られた(収率78%、ee92%)。
【0117】
≪軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシドの合成≫
〔実施例5−1〜5−6〕
下記反応スキーム5に従って、一般式(1)で表される化合物である一般式(1A)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物である化合物2f(化合物2eにおけるイソキノリンの8位がメチル基で置換された化合物)と、を反応させ、一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体として、軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシド(一般式(3C)で表される化合物)を合成した。
軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシド(一般式(3C)で表される化合物)は、軸不斉P−N二座配位子の前駆体として有用である。
【0118】
ここで、触媒における配位子(Ligand)、触媒量、反応温度、は下記表4に示すとおりであり、反応時間はいずれの例においても16時間である。その他の条件及び操作は実施例1−1と同様である。
また、一般式(1A)で表される化合物としては、表4に示す化合物1a又は化合物1bを用いた。化合物1aを用いる場合、該化合物1aの量は化合物2fに対し3当量とし、化合物1bを用いる場合、該化合物1bの量は化合物2fに対し1.1当量とした。
また、一般式(3C)で表される化合物としては、表4に示す化合物3af(一般式(3C)中のZが酸素原子である化合物)及び化合物3bf(一般式(3C)中のZがNTsである化合物)をそれぞれ合成した。
実施例5−1〜5−6における収率及びeeを下記表4に示す。
【0119】
【化18】



【0120】
【表4】

【0121】
表4に示すように、表4中のいずれの配位子を用いた場合においても、軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシド(化合物3af及び化合物3bf)を合成することができた。
【0122】
上記表4に示すように、8位をメチル基とすることにより、8位を水素原子とした場合と比較して、より高い収率及びより高いエナンチオ選択性で軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシドを合成できることがわかった。
例えば、上記実施例3−5と上記実施例5−2との対比により、8位をメチル基とすることにより(実施例5−2、収率74%、ee94%)、8位を水素原子とした場合と比較して(実施例3−5、収率64%、ee73%)、より高い収率及びより高いエナンチオ選択性で軸不斉含窒素ビアリールホスフィンオキシドを合成できた。
【0123】
≪軸不斉P−N二座配位子(化合物4bf)の合成≫
〔実施例6〕
実施例5−2で得られた化合物3bfを、トルエン中で、トリクロロシラン(HSiCl)及びトリエチルアミン(EtN)を用いて還元させて軸不斉P−N二座配位子(化合物4bf)を得た(下記反応スキーム6)。
反応温度は80℃とし、反応時間は16時間とした。
【0124】
【化19】



【0125】
その結果、上記反応スキーム6に示すように、軸不斉を保持したまま、良好な収率で軸不斉P−N二座配位子(化合物4bf)が得られた(収率72%、ee94%)。
【0126】
〔比較例1〕
実施例1−1において、化合物2aに代えて下記化合物5a(化合物2a中のイソキノリン骨格をナフタレン骨格に代えた化合物)を用い、(R)−BINAPに代えてrac−BINAPを用いたこと以外は実施例1−1と同様にして合成を行った(下記反応スキーム7)。
【0127】

【0128】
この合成では、化合物1aの単独反応のみが起こり、化合物1aと化合物5aとの反応が起らなかった。結果として、上記反応スキーム7に示すように軸不斉ビアリール(化合物6aa)は得られなかった(収率0%)。
各実施例と比較例1との対比により、反応の進行には、イソキノリン骨格における窒素原子が必須であることがわかった。
【0129】
〔参考例1〕
〜化合物2aの合成〜
上記化合物2aは、以下のようにして合成した。
まず、1−クロロイソキノリン(2.00g、12.2mmol)及びトリメチルシリルアセチレン(1.32g、13.5mmol)のトリエチルアミン(30mL)溶液と、PdCl(PPh(0.086g、0.122mmol)と、CuI(0.023g、0.122mmol)と、を混合した。
得られた混合物を60℃で7時間攪拌し、更に、室温で15時間攪拌した。
得られた反応液をろ過し、ろ液を濃縮して、トリメチルシラニルエチニルイソキノリン(化合物2a)の粗生成物を得た。
得られた粗生成物をメタノール(13.4mL)及びTHF(テトラヒドロフラン)(3mL)に溶解させ、そこに、KOH(0.7g)の蒸留水(3mL)溶液を加えた。
得られた混合物を室温で45分間攪拌した後、水で希釈し、エーテルで抽出した。
有機層を食塩水で洗浄し、更にNaSOを加えて乾燥させ、更に濃縮した。
得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、化合物2aを白色固体として得た(収量1.46g(9.2mmol)、1−クロロイソキノリンからの収率75%)。
【0130】
〔参考例2〕
〜化合物2eの合成〜
上記化合物2eは、以下のようにして合成した。
上記で得られた化合物2a(1.41g,9.18mmol)、トリエチルアミン(2.79g,27.54mmol)、及びCuI(0.09g,0.46mmol)のトルエン溶液と、クロロジフェニルホスフィン(1.65mL、9.18mmol)と、を室温で混合し、得られた混合物を室温で更に18時間攪拌した。
得られた反応物を水で冷却した後、酢酸エチルで抽出した。
有機層を食塩水で洗浄し、更にNaSOを加えて乾燥させ、更に濃縮した。
得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、1−〔(ジフェニルホスファニル)−エチニル〕−イソキノリンを得た。
1−〔(ジフェニルホスファニル)−エチニル〕−イソキノリンの塩化メチレン溶液と、過酸化水素と、を0℃で加え、得られた反応物を室温で5時間攪拌した、
攪拌後の反応物を水で冷却し、酢酸エチルで抽出した。
有機層を、NaSOの10mol%水溶液及び食塩水で洗浄し、更にNaSOを加えて乾燥させ、更に濃縮した。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、1−〔(ジフェニルホスフィノイルエチニル)−イソキノリン(化合物2e)を薄黄色固体として得た(収量2.39g(6.77mmol)、収率55%)。
【0131】
≪一般式(2)で表される化合物の構造と物性データ≫
本実施例により合成した一般式(2)で表される化合物の構造と物性データを以下に列挙する。
【0132】
<1-(3-Methyl-but-1-ynyl)-isoquinoline (化合物2b)>
【0133】
【化20】

【0134】
暗緑色油状物; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.48 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.43−8.36 (m, 1H), 7.81 (dd, J = 7.2, 1.2 Hz, 1H), 7.67 (ddd, J = 16.5, 14.7, 1.5 Hz, 1H), 7.67 (dt, J = 16.5, 1.5 Hz), 7.58 (dd, J = 5.7, 0.6 Hz, 1H) 2.98 (sept, J = 6.9 Hz, 1H), 1.42 (s, 3H), 1.39 (s, 3H) ; 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 144.8, 142.7, 135.7, 130.4, 129.2, 127.7, 127.1, 126.4, 130.0, 101.1, 77.7, 22.7, 21.3.
【0135】
<1-(Diphenyl-phosphinoylethynyl)-isoquinoline (化合物2e)>
【0136】
【化21】

【0137】
薄黄色固体; Mp 96−98 °C; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.60 (d, 1H), 8.44−8.38 (m, 1H), 8.06−7.94 (m, 4H), 7.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H) 7.80−7.64 (m, 3H), 7.54 (m, 6H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 142.8, 141.07, 141.01, 141.00, 135.6, 133.0, 132.4, 132.3, 131.3, 130.91, 130.88, 130.76, 129.6, 128.7, 128.5, 126.9, 126.0, 122.5, 101.1, 100.7, 87.5, 85.4.
【0138】
<1-(Diphenyl-phosphinoylethynyl)-8-methyl-isoquinoline (化合物2f)>
【0139】
【化22】

【0140】
白色固体; Mp 154−155 °C; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.58 (d, J = 5.4Hz, 1H), 8.03−7.90 (m, 4H), 7.73 (d, J = 5.4 Hz, 1H) 7.70 (d, J = 5.7 Hz, 1H) 7.63−7.46 (m, 7H), 7.43−7.37 (m, 1H), 2.98 (s,3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 142.4, 139.5, 139.4, 137.3, 135.5, 133.0, 132.4, 132.3, 131.4, 131.3, 131.09, 130.94, 129.0, 128.7, 128.6, 126.0, 123.5, 105.9, 105.6, 87.2, 85.1, 23.7.
【0141】
≪一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体の構造と物性データ≫
本実施例により合成した一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体の構造と物性データを以下に列挙する。
【0142】
<5-(Diphenyl-phosphinoyl)-4,7-dimethyl-6-naphthalen-1-yl-2-(toluene-4-sulfonyl)-2,3-dihydro-1H-isoindole (化合物6bb)>
【0143】
【化23】

【0144】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ7.87−7.78 (m, 2H) 7.47 (dd, J = 6.9, 1.5 Hz, 1H) 7.42−7.19 (m, 10H) 7.18−7.09 (m, 2H) 7.06−6.89 (m, 6H) 6.85−6.74 (m, 2H) 4.76−4.57 (m, 4H), 2.47 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 1.47 (s, 3H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 36.5 min (major isomer) and 59.6 min (minor isomer).
【0145】
<1-(4,7-Dimethyl-6-trimethylsilanyl-1,3-dihydro-isobenzofuran-5-yl)-isoquinoline (化合物3aa)>
以下、トリメチルシリル基を「TMS」と表記する。
【0146】
【化24】

【0147】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.59 (d, J = 5.7 Hz, 1H) 7.87 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.68 (ddd, J = 8.4, 6.6, 1.2 Hz, 1H), 7.67 (dd, J = 5.7, 0.6 Hz, 1H), 7.57 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1H) 7.47 (ddd, J = 8.1, 6.9, 1.2 Hz, 1H), 5.26−5.06 (m, 4H), 2.40(s, 3H), 1.59 (s, 3H), −0.30(s, 9H); CHIRALPAK OD-H, hexane/2-PrOH = 95:5, 1.0 mL/min, retention times: 6.9 min (minor isomer) and 7.9 min (major isomer).
【0148】
<1-[4,7-Dimethyl-2-(toluene-4-sulfonyl)-6-trimethylsilanyl-2,3-dihydro-1H-isoindol-5-yl]-isoquinoline (化合物3ba)>
【0149】
【化25】

【0150】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.55 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.1 Hz,2H), 7.67 (ddd, J = 8.1, 6.3, 2.1 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 7.66 (J = 6.0 Hz, 1H) 7.53−7.42 (m, 2H), 7.35 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 4.78 (m, 4H), 2.45 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), −0.35 (s, 9H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 7.1 min (minor isomer) and 8.6 min (major isomer).
【0151】
<1-(6-Butyl-4,7-dimethyl-1,3-dihydro-isobenzofuran-5-yl)-isoquinoline (化合物3ac)>
【0152】
【化26】

【0153】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.63 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.89 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.72−7.64 (m, 1H), 7.67 (d, J = 5.4 Hz, d), 7.58−7.52 (m, 1H), 7.46 (ddd, J = 8.1, 6.9, 1.2 Hz), 2.29 (ddd, J = 13.2, 11.7, 4.8 Hz, 1H), 2.22 (s, 3H), 1.98 (ddd, J = 13.2, 11.4, 5.1 Hz, 1H), 1.68 (s,3H), 1.44−1.23 (m, 1H), 1.21−1.04 (m, 1H) 0.96 (sext, J = 7.2 Hz, 2H), 0.52 (t, J = 7.2 Hz, 3H); CHIRALPAK OD-H, hexane/2-PrOH = 90:10, 1.0 mL/min, retention times: 5.4 min (minor isomer) and 7.0 min (major isomer).
【0154】
<1-(6-Isopropyl-4,7-dimethyl-1,3-dihydro-isobenzofuran-5-yl)-isoquinoline (化合物3ab)>
【0155】
【化27】

【0156】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.62 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.89 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.68 (ddd, J = 8.1, 6.9, 1.5 Hz, 1H) 7.65 (dd, J = 5.7, 0.6 Hz, 1H), 7.61−7.55 (m, 1H), 7.47 (ddd, J = 8.1, 6.9, 1.2 Hz, 1H), 5.27−5.06 (m, 4H), 2.59 (br, 1H) 2.34 (s, 3H), 1.60 (s, 3H), 1.09 (s, 3H), 1.07 (s,3H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 95:5, 1.0 mL/min, retention times: 7.5 min (major isomer) and 10.0 min (minor isomer).
【0157】
<1-[6-Isopropyl-4,7-dimethyl-2-(toluene-4-sulfonyl)-2,3-dihydro-1H-isoindol-5-yl]-isoquinoline (化合物3bb)>
【0158】
【化28】

【0159】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.58 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.68 (ddd, J = 8.1, 6.6, 1.8 Hz, 1H), 7.65 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.54−7.41(m, 2H), 7.35 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.78−4.50 (m, 4H), 2.45 (s, 3H), 2.30 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 1.04 (s, 3H), 1.02 (s, 3H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 9.5 min (minor isomer) and 10.9 min (major isomer).
【0160】
<1-[6-(Diphenyl-phosphinoyl)-4,7-dimethyl-2-(toluene-4-sulfonyl)-2,3-dihydro-1H-isoindol-5-yl]-isoquinoline (化合物3be)>
【0161】
【化29】

【0162】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.27 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.92−7.82 (m, 2H), 7.79 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.55−7.32 (m, 9H), 7.19 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 6.83−6.64 (m, 3H), 6.51 (dt, J = 7.5, 3.3 Hz, 2H), 4.80−4.56 (m, 4H), 2.46 (s, 3H), 2.40 (s, 3H), 1.41 (s, 3H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 50.2 min (minor isomer) and 79.6 min (major isomer).
【0163】
<1-[6-(Diphenyl-phosphinoyl)-4,7-dimethyl-1,3-dihydro-isobenzofuran-5-yl]-isoquinoline (化合物3ae)>
【0164】
【化30】

【0165】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.80 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.97−7.84 (m, 2H), 7.57−7.37 (m, 7H), 7.20 (dd, J = 5.7, 0.6 Hz, 1H), 6.87−6.76 (m, 2H), 6.74−6.65 (m, 1H), 6.59−6.48 (m, 2H), 5.30−5.10 (m, 4H), 2.43 (s, 3H), 1.66 (s, 3H), 1.46 (s, 3H); OA3100, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 43.7 min (major isomer) and 61.6 min (minor isomer).
【0166】
<1-[6-Diphenylphosphanyl-4,7-dimethyl-2-(toluene-4-sulfonyl)-2,3-dihydro-1H-isoindol-5-yl]-isoquinoline (化合物4be)>
【0167】
【化31】

【0168】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.47 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.85−7.79 (m, 3H), 7.62−7.47 (m,3H), 7.41−7.30 (m, 3H), 7.28−7.10 (m, 10H), 4.81−4.46 (m, 4H), 2.46 (s, 3H), 1.72 (s, 6H); CHIRALCEL OD-H, hexane/2-PrOH = 90:10, 0.75 mL/min, retention times: 23.8 min and 35.8 min.
【0169】
<1-[4,7-Dimethyl-2-(toluene-4-sulfonyl)-6-trimethylsilanyl-2,3-dihydro-1H-isoindol-5-yl]-isoquinolin-2-ol (化合物4ba)>
【0170】
【化32】

【0171】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.22 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.86−7.77 (m, 3H), 7.69 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.56 (ddd, J = 7.5, 6.9, 1.2 Hz, 1H), 7.47 (ddd, J = 7.8, 6.9, 1.2 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.86−4.67 (m, 2H), 4.54 (d, J = 15 Hz, 1H), 4.54 (d, J = 11.1 Hz, 1H), 2.45 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 1.66 (s,3H), −0.17 (t, J = 7.2 Hz, 3H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 12.1 min (minor isomer) and 30.0 min (major isomer).
【0172】
<1-[6-(Diphenyl-phosphinoyl)-4,7-dimethyl-1,3-dihydro-isobenzofuran-5-yl]-8-methyl-isoquinoline (化合物3af)>
【0173】
【化33】

【0174】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.30 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.02−7.91 (m, 2H), 7.57−7.42 (m, 3H), 7.39−7.34 (m, 2H), 7.28−7.16 (m, 2H), 6.67−6.59 (m, 1H), 6.56−6.46 (m, 2H), 5.32−5.05 (m, 4H), 2.42 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 1.44 (s, 3H); doubly connected CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 0.8 mL/min, retention times: 42.6 min (minor isomer) and 48.6 min (major isomer).
【0175】
<1-[6-(Diphenyl-phosphinoyl)-4,7-dimethyl-2-(toluene-4-sulfonyl)-2,3-dihydro-1H-isoindol-5-yl]-8-methyl-isoquinoline (化合物3bf)>
【0176】
【化34】

【0177】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.26 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.91 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 7.89 (dd, J = 12.3, 1.5 Hz, 1H), 7.55−7.13 (m, 11H), 6.84 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 6.62 (dt, J = 7.5, 1.5 Hz, 1H), 6.49 (dt, J = 7.5, 2.7 Hz, 2H), 4.83−4.42 (m, 4H), 2.46 (s, 3H), 2.38 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 1.39 (s, 3H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 54.5 min (minor isomer) and 87.6 min (major isomer).
【0178】
<1-[6-Diphenylphosphanyl-4,7-dimethyl-2-(toluene-4-sulfonyl)-2,3-dihydro-1H-isoindol-5-yl]-8-methyl-isoquinoline (化合物4bf)>
【0179】
【化35】

【0180】
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 8.36 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.82−7.75 (m, 2H), 7.67 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.55 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.47 (dd, J = 7.8, 7.2 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.28−7.10 (m, 11H), 4.84−4.39 (m, 4H), 2.46 (s, 3H), 2.14 (s, 3H), 1.77 (s, 3H), 1.73 (s, 3H); CHIRALPAK AD-H, hexane/2-PrOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 8.5 min (minor isomer) and 10.9 min (major isomer).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、をロジウム金属及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒の存在下で反応させて下記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体を得る工程を有する軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
【化1】


〔一般式(1)及び一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)、又は−COOR1C基(R1Cは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、Qは、窒素原子又は=N(O)−を表す。
一般式(1)及び一般式(3)中、Zは、酸素原子、−NR−(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はトシル基を表す)、又は−(CR4142−(R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。nは、1又は2を表す。nが2であるときは、2つずつ存在するR41及びR42は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)を表す。
一般式(3)中、*は不斉軸を表す。〕
【請求項2】
前記Rが、炭素数1〜6のアルキル基である請求項1に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、を10℃以上100℃以下の温度条件下で反応させる請求項1又は請求項2に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、を70℃以上90℃以下で反応させる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記ロジウム金属の量が、前記一般式(2)で表される化合物の量に対し、0.1mol%以上30mol%以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の軸不斉イソキノリン誘導体の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(3)で表される軸不斉イソキノリン誘導体。
【化2】


〔一般式(3)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。
一般式(3)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、−SiR1S2S3S基(R1S、R2S、及びR3Sは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)、−P(O)1P2P基(R1P及びR2Pは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。aは、0又は1を表す。)、又は−COOR1C基(R1Cは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)を表す。
一般式(3)中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
一般式(3)中、Qは、窒素原子又は=N(O)−を表す。
一般式(3)中、Zは、酸素原子、−NR−(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はトシル基を表す)、又は−(CR4142−(R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表す。nは1又は2を表す。)を表す。
一般式(3)中、*は不斉軸を表す。〕
【請求項7】
前記Rが、炭素数1〜6のアルキル基である請求項6に記載の軸不斉イソキノリン誘導体。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の軸不斉イソキノリン誘導体を用いた不斉合成方法。

【公開番号】特開2012−31119(P2012−31119A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173558(P2010−173558)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月12日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第90春季年会(2010)講演予稿集」に発表 平成22年3月29日 社団法人 日本化学会主催の「日本化学会第90春季年会」において文書をもって発表
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】