説明

軸付ブラシ及びブラシ用軸体

【課題】軸体に対しブラシを確実に取り付け得るようにする。
【解決手段】軸体7の溝部20において、溝空間21を挟む溝壁部22及び23の一部に押付部22A及び23Aを設け、また側面21A及び21Bに突出部24を設けた。そして軸付ブラシ部3の組立時には、幹状部8Bを溝部20の溝空間21に合わせるように軸体7にブラシ8を開放方向から挿入した後、押付部22A及び23Aの内側面を幹状部8Bに覆い被せるよう、当該押付部22A及び23Aを変形加工する。これにより軸付ブラシ部3は、軸体7に対しブラシ8を抜け落ちることがないよう強固に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸付ブラシ及びブラシ用軸体に関し、例えばマスカラブラシや洗浄用ブラシのように、軸体にブラシを取り付けた軸付ブラシに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸付ブラシにおいては、例えば液体の塗布や洗浄等に用いるブラシを、塗布箇所や洗浄箇所に到達させ或いは使用者に把持させるための軸体の端部に取り付けたものが、幅広く普及している。
【0003】
この軸付ブラシは、化粧用のマスカラ液をまつ毛に塗布するマスカラブラシとしても利用される場合がある。かかるマスカラブラシは、例えば樹脂材料等でなる軸体の一端側に、2本又は4本の金属線の間に毛材を挟んで縒り合わせたブラシ(いわゆる捻りブラシ)を取り付けた構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる軸付ブラシの製造時における、軸体に対するブラシの取付手法として、例えば軸体の一端に下孔を穿設し、当該下孔にブラシの金属線部分(以下これを芯線と呼ぶ)を捻り込むことにより固定する手法(以下これを捻込固定手法と呼ぶ)が知られている。
【0005】
また軸体に対するブラシの取付手法として、例えばブラシの芯線を加熱し、或いは下孔を穿設した軸体の一端側を超音波や高周波等により加熱した状態で、当該下孔に当該芯材を挿入し、そのまま冷却することにより固定する手法(以下これを加熱固定手法と呼ぶ)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−69022号公報(第3頁、第20図〜第22図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで軸付ブラシの一般的な形状としては、ブラシにおける略直線状の芯線を、棒状の軸体における長手方向に沿わせるように、すなわち全体として略直線状に構成したものが実施されている。
【0008】
しかしながらマスカラブラシにおいては、瞼の端部に弓状に生えたまつ毛にマスカラ液を塗布する点を考慮して、ブラシ部分を弓状に湾曲させることや、軸体に対しブラシ部分を所定角度傾けること等が考えられる。
【0009】
またマスカラブラシにおいては、マスカラ液を塗布したまつ毛を整えるための櫛状部を軸体の先端側に形成することにより、使い勝手を向上させることも考えられる。
【0010】
このようなマスカラブラシの場合、その形状等によっては、上述した捻込固定手法や加熱固定手法を利用することができず、或いはこれらの手法では軸体に対しブラシを確実に固定できないおそれがあった。
【0011】
またマスカラ液には、短時間で揮発するような各種溶剤やまつ毛に固着するための接着成分等が含まれる。すなわち、接着剤を用いて軸体にブラシ部分を固定した場合には、当該接着剤がマスカラ液に溶け出してしまう恐れがあるため、入念な試験や検査の上で溶け出さないような接着剤を選定する必要がある。このような観点から、事実上、軸体にブラシ部分を固定する際に接着剤を用いることは得策ではなかった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、軸体にブラシを確実に取り付け得る軸付ブラシ及びブラシを確実に取り付け得るブラシ用軸体を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明においては、塑性を有する材料でなる軸体に、長手方向の一端に当該長手方向に沿った所定距離に渡りブラシの芯線の一部を内包し得ると共に当該長手方向と略直交する開放方向に開放された溝部と、溝部の溝空間を挟む溝壁部の一部分でなる押付部とを設け、略線状の芯線に当該芯線の周方向へ突出する毛材が固着されたブラシの当該芯線を溝部の溝空間に嵌め込んだ状態で押付部を当該芯線に押し付けるよう変形させることにより、当該軸体に当該ブラシを固定させるようにした。
【0014】
これにより本発明は、ブラシの芯線を回転させることなく溝部に嵌め込ませた状態で、軸体の一部又は全面でなる押付部をプレス押圧して変形させることにより、当該軸体に対し当該ブラシの芯線を強固に固定できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブラシの芯線を回転させることなく溝部に嵌め込ませた状態で、軸体の一部でなる押付部を組成変形させることにより、当該軸体に対し当該ブラシの芯線を強固に固定できる。かくして本発明は、軸体にブラシを確実に取り付け得る軸付ブラシ及びブラシを確実に取り付け得るブラシ用軸体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】液塗布具の基本構成を示す略線的斜視図である。
【図2】ブラシの構成を示す略線図である。
【図3】第1の実施の形態による軸体及び軸付ブラシ部の構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図4】第1の実施の形態による軸体の構成(2)を示す略線的平面図である。
【図5】第1の実施の形態による軸体の構成(3)を示す略線的断面図である。
【図6】第2の実施の形態による軸体及び軸付ブラシ部の構成を示す略線的斜視図である。
【図7】他の実施の形態による押付部の構成を示す略線的断面図である。
【図8】他の実施の形態による軸体の構成を示す略線的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.液塗布具の構成]
図1(A)において、液塗布具1は、塗布液を内部に保有する容器部2と、当該容器部2を密閉し、また当該塗布液を塗布対象物に塗布するための軸付ブラシ部3とにより構成されており、全体として細長い円柱状に形成されている。
【0019】
因みに液塗布具1は、例えば化粧用のマスカラ液塗布具でなり、マスカラ液でなる塗布液を、軸付ブラシ部3の使用により塗布対象物としてのまつ毛に塗布することが想定されている。
【0020】
容器部2は、塗布液容器4を中心に構成されている。塗布液容器4は、上面が開放された中空の円筒状でなり、液体状の塗布液をその内部に貯蔵するようになされている。また塗布液容器4の上端部近傍には、その下方よりも窄められた取出口4Aが設けられ、その内側に比較的小さな内径を有するしごき部材5が取り付けられている。
【0021】
軸付ブラシ部3は、キャップ6、軸体7及びブラシ8により構成されている。キャップ6は、底面が開放された中空の円筒状でなり、塗布液容器4の栓として密閉し得るようになされている。またキャップ6の内部では、所定の中間部材を介して軸体7が取り付けられている。
【0022】
軸体7は、細長い円柱状に形成されており、キャップ6の下端よりも下方へ大きく突出している。また軸体7は、下方の先端部分に後述する溝部20が形成されており、当該溝部20を介してブラシ8が取り付けられている。
【0023】
かかる構成により液塗布具1は、使用者に軸付ブラシ部3のキャップ6を把持させ、当該キャップ6に軸体7を介して取り付けられたブラシ8を容器部2の取出口4Aから出し入れすることにより、当該ブラシ8を塗布液に浸して外部に取り出させる。
【0024】
ここで液塗布具1は、軸付ブラシ部3を容器部2から引き抜くとき、ブラシ8の周囲に付着している余分な塗布液をしごき部材5によってしごき落とす。
【0025】
その後軸付ブラシ部3は、使用者によりキャップ6が把持されたまま、塗布液が付着されたブラシ8が塗布対象物(すなわちまつ毛)を撫でるように移動、回転等されることにより、塗布液を塗布対象物に塗布することができる。
【0026】
[1−2.ブラシの構成]
ブラシ8は、図2(A)に示すように、いわゆる捻りブラシとなっている。すなわちブラシ8は、1本のステンレス線材を折り曲げて見かけ上2本の芯材11A及び11Bとし、さらに両者を互いに捻り合わせてなる芯線11を中心に構成されている。因みに第1の実施の形態では、芯線11は全体として略直線状に整形されている。
【0027】
芯線11のうち屈曲点側の所定範囲では、捻り合わされた芯材11A及び11Bの間に形成された螺旋状保持部11Cに、繊維状の合成樹脂材料(ナイロン、テトロン(登録商標)、ポリエステル、ポリプロピレン等)でなり所定の剛性を有する毛材12を、芯線11からその周方向へ伸びるように挟着保持している。以下では、ブラシ8のうち芯線11により毛材12を挟着保持している部分を毛材挟着部8Aと呼ぶ。
【0028】
またブラシ8のうち毛材挟着部8Aに含まれない部分は、螺旋状に捻り合わされた芯材11A及び11Bにより略円柱状に構成されている。以下では、この部分を幹状部8Bと呼ぶ。
【0029】
幹状部8Bは、芯材11A及び11Bが螺旋状に縒り合わされているため、図2(B)に示すように、見かけ上の直径が周期的に変化する。すなわち幹状部8Bは、見かけ上は外径R1となるものの、局所的には直径R2のように外径R1よりも細くなる。
【0030】
[1−3.軸体の構成]
軸体7は、塑性を有する樹脂材料により構成されており、図3(A)、図4及び図5(A)に示すように、全体として細長い円柱状に形成されている。
【0031】
軸体7の先端側に設けられた溝部20は、長手方向に沿って断面U字状に形成されることにより、軸体7における所定の側面方向(以下これを開放方向と呼ぶ)及び先端方向を開放するように溝空間21が形成されている。
【0032】
すなわち溝空間21は、側面21A及び21B、底面21C並びに側端面21Dにより4方向から囲まれ、開放方向及び先端方向に開放されている。因みに底面21Cは、図5(A)に示したように、円筒状に湾曲している。また溝空間21の長手方向に関する長さは、ブラシ8の幹状部8Bにおける長手方向の長さとほぼ同等となっている。
【0033】
溝空間21を両側から挟む溝壁部22及び23は、キャップ6側から先端方向へ進むに連れて、固定壁部22C及び23Cとの間に隙間22B及び23Bを介して突出部22A及び23Aが形成されている。押付部22A及び23Aは、開放方向へ向けて周囲よりも長く延設されており、また開放方向へ進むに連れて徐々に薄くなるような板状に形成されている。
【0034】
溝壁部22側の側面21Aには、軸体7の中心軸へ向けて周囲よりも突出した突出部24A1及び24A2が形成されている。これと対向するように溝壁部23側の側面21Bには、軸体7の中心軸へ向けて周囲よりも突出した突出部24B1及び24B2が形成されている。
【0035】
図4(A)及び(B)に示したように、突出部24A1、24A2、24B1及び24B2(以下これらをまとめて突出部24と呼ぶ)は、いずれも開放方向を長手方向とする半円柱状に形成されている。
【0036】
ここで突出部24A2及び24B2(又は突出部24A1及び24B1)における突出端同士の間隔W2は、溝空間21の溝幅W1よりも十分に狭くなっている。
【0037】
さらに溝空間21とブラシ8(図2)の幹状部8B(すなわち芯線11)との間では、間隔W2及び外径R1について次の(1)式の関係が成立するようになされている。
【0038】
R1>W2 …(1)
【0039】
このように軸体7は、溝部20において、溝空間21を挟む溝壁部22及び23にそれぞれ押付部22A及び23Aが設けられ、また内側の側面21A及び21Bに突出部24がそれぞれ設けられている。
【0040】
[1−4.軸付ブラシの組立]
軸付ブラシ部3は、軸体7(図3(A))にブラシ8(図2(A))を取り付ける際、溝部20の溝空間21に対し開放方向から当該ブラシ8の幹状部8Bが挿入される。
【0041】
ここで溝空間21の溝幅W1が幹状部8Bの外径R1よりも広い場合には、特に抵抗なく幹状部8Bを溝空間21へ挿入することができる。
【0042】
一方、溝空間21の溝幅W1が幹状部8Bの外径R1とほぼ同等若しくは当該外径R1よりも僅かに狭い場合には、軸体7の構成材料が有する性質を利用して溝空間21の溝幅を押し広げるように幹状部8Bを押し込むことにより、当該幹状部8Bを当該溝空間21へ挿入することができる。
【0043】
このとき軸体7は、幹状部8Bを溝空間21に嵌め込んだような状態となり、溝部20全体の構造により当該幹状部8Bを側面21A及び21B、底面21C並びに側端面7ADの4方向から囲み、当該4方向への動きを規制することになる。
【0044】
また溝部20は、突出部24により幹状部8Bを挟持する。これにより軸体7は、ブラシ8の長手方向(先端方向)への移動を規制することができる。
【0045】
続いて軸付ブラシ部3は、押付部22A及び23Aに対し、図5(A)に示す矢印P1及びP2の方向へ、すなわち軸体7のほぼ中心軸へ向かう方向へ所定の圧力が印加される。
【0046】
このとき軸体7は、図5(B)に断面図を示すように、押付部22A及び23Aを互いに近接させるよう、すなわち当該押付部22A及び23Aの内側面を幹状部8Bに覆い被せるように変形させる。これにより軸付ブラシ部3は、図3(B)に示すように、いわゆる「かしめた」状態となる。
【0047】
また押付部22A及び23Aは、軸体7を構成する樹脂材料の性質やその肉厚等により塑性を呈し、変形された状態をそのまま維持する。これにより押付部22A及び23Aは、幹状部8Bの開放方向への移動を規制することができる。
【0048】
すなわち軸付ブラシ部3は、押付部22A及び23Aの変形により、軸体7に対するブラシ8における全ての方向への移動を規制することができ、その結果として当該軸体7に当該ブラシ8を固定することができる。
【0049】
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態では、軸体7の溝部20に、溝空間21を挟む溝壁部22及び23の一部に押付部22A及び23Aを設け、また内側の側面21A及び21Bに突出部24A1、24A2、24B1及び24B2を設けた。
【0050】
軸付ブラシ部3は、その組立時に、軸体7に形成した溝部20の溝空間21にブラシ8の幹状部8Bが開放方向から挿入され、押付部22A及び23A(すなわち溝壁部22及び23の一部)が、その内側面を幹状部8Bに覆い被せるように変形加工されることにより、当該軸体7に対し当該ブラシ8が強固に固定される。
【0051】
また軸体7の溝空間21には、側面21A及び21Bに突出部24を形成し、(1)式を満たすよう間隔W2(図4(B))を設定した。
【0052】
これにより軸付ブラシ部3は、幹状部8Bを開放方向から溝空間21へ挿入させるだけで、幹状部8Bの螺旋構造における周期的に変化する外径部分と当該突出部24とを適切に係合させ、長手方向に関しブラシ8を確実に規制することができる。
【0053】
例えば、仮に軸付ブラシ部3において突出部24A等を設けず、押付部22A及び23Aの変形のみによって幹状部8Bを固定する場合には、当該押付部22A及び23Aを幹状部8Bに対し強力に押し付けた状態を保持する必要がある。
【0054】
この場合、押付部22A及び23Aをより肉厚に形成しておき、且つ強力な圧力により変形させる必要があるため、例えば軸体7の軸径を太くし、或いは強度の高い材料を用いるといった対策が必要であった。又この変形加工処理が不十分であった場合、軸体7からブラシ8が容易に脱落する恐れもあった。
【0055】
これに対し本実施の形態では、ブラシ8の先端方向への脱落を防止し得る突出部24を設けたため、押付部22A及び23Aにより幹状部8Bを開放方向へ脱落させない程度に保持できれば、ブラシ8の脱落を確実に防止することができる。
【0056】
すなわち本実施の形態では、幹状部8に対し押付部22A及び23Aをそれほど強力に押し付けておく必要はなく、これに伴い当該押付部22A及び23Aをそれほど肉厚に形成する必要もなく、変形加工処理における圧力もそれほど強力にする必要がない。
【0057】
またこの変形加工処理についても、少なくとも幹状部8Bを開放方向へ脱落させない程度に押付部22A及び23Aを変形できれば良いため、加工精度を高める必要が無く、加工不良の発生割合を極めて低く抑えることができる。
【0058】
特に軸付ブラシ部3は、容器部2(図1(A))から引き抜かれる際、塗布液の付着量を調整するべく、しごき部材5によりブラシ8が強くしごかれる。これに対し軸付ブラシ3は、上述したように軸体7に対しブラシ8を強固に固定しているため、このようなしごきによる脱落の恐れを確実に回避できる。
【0059】
さらに軸体7の溝壁部22には、押付部22Aと固定壁部22Cとの間に隙間22Bを設け、溝壁部23には、押付部23Aと固定壁部23Cとの間に隙間23Bを設けた。
【0060】
これにより、隙間22A及び22Bを設けなかった場合に生じ得る、押付部22A及び23Aに引っ張られて固定壁部22C及び23Cが不必要に変形することや、形状を維持する固定壁部22C及び23Cに抑えられて押付部22A及び23Aを十分に変形できなくなることを未然に回避することができる。
【0061】
以上の構成によれば、第1の実施の形態においては、軸体7の溝部20に溝空間21を挟む溝壁部22及び23に押付部22A及び23Aを設け、また内側の側面21A及び21Bに突出部24を設けた。そして軸付ブラシ部3の組立時には、溝部20の溝空間21にブラシ8の幹状部8Bを開放方向から挿入し、押付部22A及び23Aに圧力を加えてその内側面を幹状部8Bに覆い被せるように変形加工する。これにより軸付ブラシ部3は、軸体7に対しブラシ8を抜け落ちることがないよう強固に固定することができる。
【0062】
[2.第2の実施の形態]
[2−1.液塗布具及びブラシの構成]
図1(B)に示すように、第2の実施の形態による液塗布具30は、第1の実施の形態による液塗布具1の軸付ブラシ部3に代わる軸付ブラシ部33が設けられている。この軸付ブラシ部33は、軸付ブラシ部3と比較して、軸体7およびブラシ8に代わる軸体37及びブラシ38を有している点が相違している。
【0063】
ブラシ38は、図2(C)に示すように、ブラシ8と比較して、毛材挟着部38Aが弓状に湾曲されている点が相違するものの、幹状部8Bと対応する幹状部38B等の他の部分は同様に構成されている。
【0064】
[2−2.軸体の構成]
図3(A)と対応する図6(A)に示すように、軸体37は、軸体7の溝部20と対応する溝部40の先端側に、アーチ状のガイド部50が延設され、さらにその先端側に仮止部60が設けられたような形状となっている。
【0065】
溝部40には、溝部20の溝空間21と対応する溝空間41及び当該溝空間41を両側から挟む溝壁部42及び43が設けられている。
【0066】
側壁部42及び43には、押付部22A及び23A、隙間22B及び23B並びに固定壁部22C及び23Cとそれぞれ対応する押付部42A及び43A、隙間42B及び43B並びに固定壁部42C及び43Cが設けられている。
【0067】
また固定壁部42C及び43Cにおける内側の側面には、突出部24と対応する突出部44(44A1、44A2、44B1及び44B2)が設けられている。
【0068】
さらに溝壁部42及び43には、押付部42A及び43Aの先端側に、隙間42D及び43Dを介して固定壁部42E及び43Eが設けられている。
【0069】
一方、ガイド部50は、溝部40と同様に長手方向に沿って断面U字状に形成され、且つ、中央部分が開放方向へ突出するよう弓状に湾曲された溝空間51が形成されている。
【0070】
側壁部52及び53には、その開放方向側の面上に、開放方向へ向けて微小な突起が長手方向に沿って所定数突設されている。またガイド部50の下面(開放方向と反対側の面)には、複数の櫛歯を有する櫛状部55が形成されている。
【0071】
仮止部60は、端面から見てU字状に形成されており、さらに開放方向側の規制部62における間隔が中央部分の保持空間61における間隔よりも狭くなっている。
【0072】
また軸体37は、その構成材料がある程度の弾性を有している。このため仮止部60は、外力が加えられた場合、一時的に弾性変形して規制部62の間隔を拡大し、この外力が加えられなくなると、弾性作用により規制部62を元の状態に戻すようになされている。
【0073】
[2−3.軸付ブラシの組立]
軸付ブラシ部33は、軸体37(図6(A))にブラシ38(図2(C))を取り付ける際、まず幹状部38Bを溝部40の溝空間41に合わせ、且つ毛材挟着部38Aの湾曲部分をガイド部50の溝空間51に合わせるよう、開放方向から当該ブラシ38が挿入される。
【0074】
この結果軸付ブラシ部33は、ブラシ38の幹状部38Bを溝部40の溝空間41内で突出部44により挟持すると共に、毛材挟着部38Aの一部をガイド部50の溝空間51及び仮止部60の保持空間61に位置させた状態となる。
【0075】
このときガイド部50は、側壁部52及び53の形状等により、毛材12が伸びる方向を、全周囲のうち開放方向を中心としたおよそ60°〜180°の比較的狭い範囲に規制し、且つ長手方向に関し所定の間隔ごとに分散させる。
【0076】
因みにこのとき軸付ブラシ部33は、仮止部60の規制部62によって毛材挟着部38Aの一部を保持空間61内に保持すると共に、突出部44によって幹状部38Bを挟持することにより、軸体37に対しブラシ38を比較的弱い力で固定する状態、いわば仮止めした状態となる。
【0077】
続いて軸付ブラシ部33は、押付部42A及び43Aに対し、矢印P1及びP2(図5(A))の方向へ、すなわち軸体37のほぼ中心へ向かう方向へ所定の圧力が印加される。
【0078】
これにより軸付ブラシ部33は、図6(B)に示すように、押付部42A及び43Aの内側面を幹状部38Bに覆い被せるように変形させ、いわゆる「かしめた」状態となり、塑性によりその状態を維持して幹状部38Bの開放方向への移動を規制する。
【0079】
この結果軸付ブラシ部33は、毛材挟着部38Aの一部及び当該ガイド部50を弓状に湾曲させた状態で、当該ブラシ38を軸体37に固定することができる。
【0080】
[2−4.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態では、軸付ブラシ部33の組立時に、幹状部38Bを溝部40の溝空間41に合わせ、且つ毛材挟着部38Aの湾曲部分をガイド部50の溝空間51に合わせるよう、軸体37にブラシ38が開放方向から挿入される。
【0081】
この状態で軸付ブラシ部33は、押付部42A及び43A(すなわち溝壁部42及び43の一部)が、その内側面を幹状部38Bに覆い被せるように変形加工されることにより、当該軸体37に対し当該ブラシ38が強固に固定される。
【0082】
特に軸体37は、溝部40の先端側に湾曲したガイド部50が形成され、且つブラシ38も予め湾曲しているため、従来の「下孔を穿設しておきブラシをねじ込む」といった組立手法をとることが極めて困難である。また上述したように、接着剤を用いることも得策ではない。
【0083】
この点において軸付ブラシ部33は、ガイド部50の湾曲部分とブラシ38の毛材挟着部38Aにおける湾曲部分とを合わせるように、軸体37に対し開放方向からブラシ38を挿入させれば良く、組立時にブラシ38又は軸体37を回転させる必要なく容易に組み立てることができる。
【0084】
その他の点においても、第2の実施の形態による軸付ブラシ部33は、第1の実施の形態による軸付ブラシ部3と同様の作用効果を奏し得る。
【0085】
以上の構成によれば、第2の実施の形態では、軸付ブラシ部33の組立時に、幹状部38Bを溝部40の溝空間41に合わせ、且つ毛材挟着部38Aの湾曲部分をガイド部50の溝空間51に合わせるよう、軸体37にブラシ38を開放方向から挿入し、押付部42A及び43Aの内側面を幹状部38Bに覆い被せるように変形加工する。これにより軸付ブラシ部33は、第1の実施の形態と同様に、軸体37に対しブラシ38を抜け落ちることがないよう強固に固定することができる。
【0086】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1実施の形態においては、溝空間21を両側から挟む溝壁部22及び23に押付部22A及び23A(図3等)を設けるようにした場合について述べた。
【0087】
本発明はこれに限らず、例えば図7(A)及び(B)に断面図を示すように、軸体80において片側の溝壁部82のみに押付部82Aを形成し、矢印P1の方向へ圧力を加えることにより当該押付部82Aのみを変形加工するようにしても良い。
【0088】
或いは、図7(C)及び(D)に示すように、軸体90において押付部92A及び93Aの開放方向側の先端部分を丸めておき、矢印P1及びP2の方向へ圧力を加えることにより、当該押付部92A及び93Aを変形加工するようにしても良い。この場合、溝空間91にブラシ8の幹状部8Bを挿入する際に、押付部91A及び91Bの先端部分が当該溝空間91内へ案内するため、当該幹状部8Bの位置合わせを容易化できる。
【0089】
さらには、図7(E)及び(F)に示すように、軸体100において、開放方向へ向かうに連れて肉厚が徐々に薄くなる押付部102A及び103Aを形成しておき、矢印P1及びP2の方向へ圧力を加えることにより、当該押付部102A及び103Aを変形加工するようにしても良い。この場合、肉厚を適切に調整することにより、圧力が加えられた際に変形する範囲を定めることができる。
【0090】
また、図7(G)及び(H)に示すように、軸体110において、開放方向へ向かうに連れて肉厚が段階的に薄くなる押付部112A及び113Aを形成しておき、矢印P1及びP2の方向へ圧力を加えることにより、当該押付部112A及び113Aを変形加工するようにしても良い。この場合、圧力が加えられた際に変形する箇所を予め明確に特定することができる。
【0091】
さらには、例えば図3(A)及び(B)とそれぞれ対応する図8(A)及び(B)に示すように、軸体7と対応する軸体120において、溝部20における固定壁部22C及び23Cを省略し、溝部130の溝壁部132及び133にそれぞれ押付部132A及び133A並びに隙間132B及び133Bを設けるようにしても良い。
【0092】
この場合、押付部122A及び123Aによってブラシ8の幹状部8Bを強固に固定することにより、軸体120からのブラシ8の脱落を防止することができる。
【0093】
また、図8(C)及び(D)に示すように、軸体7と対応する軸体140において、溝部20における隙間22B及び23Bを省略し、溝部150における溝壁部152及び153の一部を押付部152A及び153Aとするように、換言すれば押付部と固定壁部とを一体化しても良い。
【0094】
この場合、ブラシ8を固定する際には、押付部152A及び153Aに圧力を加えることにより、溝壁部152及び153をそれぞれ捻りながら、少なくとも当該押付部152A及び153Aが幹状部8Bを覆うように変形させれば良い。
【0095】
このように溝部の溝空間を両側から挟む溝壁部に設ける押付部としては、溝壁部の一部又は全部であれば良い。すなわち押付部は、溝壁部の両側又は片側のいずれに設けても良く、また種々の形状としても良く、さらには長手方向に関し複数箇所に設けるようにしても良く、また固定壁部との間に隙間を設けなくても良い。
【0096】
また押付部の長手方向に関する長さは適宜定めれば良く、開放方向に関する長さは、変形後に必ずしも幹状部8Bを覆う必要はなく、少なくとも幹状部8Bの開放方向への脱落を防止できれば良い。
【0097】
要は、押付部としては、変形加工前にはブラシ8の幹状部8Bを溝空間21内で少なくとも開放方向又はその反対方向へ移動させることができ、且つ変形加工後に当該幹状部8Bを開放方向へ脱落させないよう保持できれば良い。
【0098】
また押付部に対し圧力を加える方向としては、軸体7のほぼ中心へ向かう矢印P1及びP2(図5)の方向以外にも、側方から互いに近接する矢印P3及びP4の方向や開放方向の反対方向へ向かう矢印P5及びP6の方向等、種々の方向としても良い。要は、押付部をブラシ8の幹状部8Bに押し付けて当該幹状部8Bを覆うように変形加工できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0099】
さらに押付部を変形加工させる際には、圧力を加えるのみに限らず、圧力を加える際に治具を加温し、或いは超音波や高周波により当該押付部を加熱する等、種々の加工技術を適宜組み合わせて用いるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0100】
また上述した第1の実施の形態においては、軸体7の溝部20において固定壁部22C及び23Cの内側面(すなわち側面21A及び21B)に突出部24を設けるようにした場合について述べた。
【0101】
本発明はこれに限らず、図8(A)〜(D)に示したように、溝部20における突出部24(図4等)を省略しても良い。この場合、押付部122A及び123A等によってブラシ8の幹状部8Bを強固に固定することにより、軸体120からのブラシ8の脱落を防止できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0102】
さらに上述した第1の実施の形態においては、図4に示したように、溝部20において、固定壁部22C及び23Cの内側面に突出部24A1及び24B1を互いに対向させ、また突出部24A2及び24B2を互いに対向させる場合について述べた。
【0103】
本発明はこれに限らず、例えば幹状部8Bを一側面方向から見た場合における形状に合わせて突出部24A1及び24B1を長手方向に関し互いにずらすように配置し、或いはどちらか一方の側壁部にのみ突出部24を設ける等、種々の位置に配置するようにしても良い。またその形状についても、半円柱状に限らず、例えば半球状や角柱状等、種々の形状としても良い。
【0104】
要は、突出部24が、対向する突出部24又は側壁部の内側面等との間に幹状部8Bを挟持し、且つ幹状部8Bにおいて長手方向に関し外径や凹凸が変化する箇所と適切に係合できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0105】
さらに上述した第1の実施の形態においては、軸体7を円柱状とするようにした場合について述べた。
【0106】
本発明はこれに限らず、例えば角柱状や楕円柱状等、種々の形状としても良い。またその断面形状や太さは長手方向に関して一様とする場合に限らず、例えば先端側が徐々に細くなるようにしても良い。
【0107】
さらに上述した第1の実施の形態においては、軸体7を所定の樹脂材料により構成する場合について述べた。
【0108】
本発明はこれに限らず、例えば所定の金属材料により軸体7を構成するようにしても良く、要は塑性を有し溝壁部の一部でなる押付部を変形加工し得るような材料により当該軸体7を構成すれば良い。この場合の押付部に対する変形加工については、材料に応じて、加える圧力を調整し、或いは加熱加工等を併用するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0109】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブラシ8をいわゆる捻りブラシにより構成し、芯材11A及び11Bを螺旋状に捻り合わせることにより幹状部8Bを略螺旋状とするようにした場合について述べた。
【0110】
本発明はこれに限らず、幹状部8Bを円柱状や角柱状等、細長い種々の形状とするようにしても良い。この場合、長手方向に関し断面形状が一様でなければ、溝部20の溝空間21内において突出部24によりブラシの長手方向への移動を規制することができる。また芯線11の材料としては、金属に限らず、樹脂等であっても良い。
【0111】
さらに、例えば図2(D)に示すように、繊維状の毛材12に代えてシリコン樹脂等の柔らかい材料による毛材172が形成されたブラシ168を用いるようにしても良い。このブラシ168は、突起形成部168Aにおいて金属製の芯線171の周囲にシリコン樹脂による柱状部171Aが形成され、その周側面に例えば円錐状でなる毛材172が8列に渡って放射状に伸びるよう形成されている。また幹状部168Bは、その直径が一様ではなく、部分ごとに相違している。
【0112】
この場合軸体7の溝部20は、幹状部168Bが溝空間21内に挿入された状態で押付部22A及び23Aが変形加工されることにより、当該幹状部168Bを強固に固定することができる。
【0113】
このように本発明では、ブラシとして種々の構成のものを用いることができる。すなわちブラシとしては、芯線等の軸状の部分を中心に構成され、当該軸状部分のうち先端側の範囲に周方向へ伸びる複数の毛材が設けられ、当該毛材同士の隙間等に塗布液を保有して塗布対象物へ塗布することができれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0114】
さらに上述した第1の実施の形態においては、化粧用のマスカラ液を塗布するマスカラブラシに本発明を適用する場合について述べた。
【0115】
本発明はこれに限らず、例えば歯間ブラシやモールブラシ等、液体の塗布以外にも洗浄等の種々の用途に用いる種々のブラシにおけるブラシ部分を軸体や柄等の一端に固定する場合に適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、マスカラブラシや洗浄用ブラシ等でも利用できる。
【符号の説明】
【0117】
1、30……液塗布具、3、33……軸付ブラシ部、7、37……軸体、8、38……ブラシ、8A、38A……毛材挟着部、8B、38B……幹状部、11……芯線、11A、11B……線材、12、172……毛材、20、40……溝部、21、41、51……溝空間、22、23、42、43……溝壁部、22A、23A、42A、43A……押付部、22B、23B、42B、43B……隙間、22C、23C、42C、43C、42E、43E……固定壁部、24、24A1、24A2、24B1、24B2……突出部、50……ガイド部、55……櫛状部、55A……櫛歯、60……仮止部、62……規制部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略線状の芯線に当該芯線の周方向へ突出する毛材が固着されたブラシと、
塑性を有する材料でなり、長手方向の一端に当該長手方向に沿った所定距離に渡り上記ブラシの上記芯線の一部を内包し得ると共に当該長手方向と略直交する開放方向に開放された溝部と、上記溝部の溝空間を挟む溝壁部でなる押付部とを有する軸体と
を有し、
上記溝部の溝空間に上記ブラシの上記芯線を嵌め込んだ状態で上記押付部を当該心材に押し付けるよう変形させることにより、当該軸体に当該ブラシを固定させた
軸付ブラシ。
【請求項2】
上記押付部は、
上記溝壁部の周囲よりも上記開放方向へ突出している
請求項1に記載の軸付ブラシ。
【請求項3】
上記軸体は
上記溝壁部における上記押付部と他の部分との間に切込が形成されている
請求項1に記載の軸付ブラシ。
【請求項4】
上記ブラシの上記芯線は、
長手方向に関する断面形状が一様でなく、
上記軸体は、
上記溝部の内側面に周囲よりも突出した突出部が形成されている
請求項1に記載の軸付ブラシ。
【請求項5】
上記軸体は、
上記ブラシが上記固定された場合における上記ブラシの上記毛材が固着された部分に沿うように上記一端から延設されたガイド部
を有する請求項1に記載の軸付ブラシ。
【請求項6】
上記ブラシの上記芯線は、
上記毛材が固着された部分が略弓状に湾曲されてなり、
上記軸体は、
上記ガイド部が上記芯線に合わせて湾曲されている
請求項5に記載の軸付ブラシ。
【請求項7】
塑性を有する材料でなり、長手方向の一端に当該長手方向に沿った所定距離に渡り、所定のブラシにおける略線状の芯線の一部を内包し得ると共に当該長手方向と略直交する開放方向に開放された溝部と、
上記溝部の溝空間を挟む溝壁部でなり、上記溝部の溝空間に上記ブラシの上記芯線が嵌め込まれた状態で当該心材に押し付けるよう変形される押付部と
を有するブラシ用軸体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−55492(P2012−55492A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201359(P2010−201359)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(594190884)東京パーツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】