説明

軸体保持具

【課題】スペースを取らずに軸体を安定して仮保持できるとともに、確実に固定することのできる軸体保持具を提供する。
【解決手段】第1保持手段と第2保持手段を係合することによって円柱状の軸体を固定保持する軸体保持具であって、前記第1保持手段と第2保持手段とは仮組みされており、前記第1保持手段と第2保持手段とが離間した状態で軸体を装着可能なスペースを有しており、前記第1保持手段と第2保持手段とを近接嵌合した状態で前記軸体を第1保持手段と第2保持手段とに設けられた軸体保持手段で固定保持するので、スペースを取らずに軸体を安定して仮保持できるとともに、確実に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のエンジン室内等に配設してあるケーブルやパイプ等の軸体を位置ズレしないように保持固定するための軸体保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より種々の保持具が提案されており、例えば、特許文献1に示すような構造の保持具の場合、第1腕部と第2腕部の間にケーブルを仮保持し、上から横板部材を鋸歯状凹凸部に沿って装着して行き、ケーブルを固定するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3404361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記構成の従来の保持具は、横板部材を下までスライドさせて行き、第1腕部と第2腕部及び横板部材でケーブルを挟み込むまで、安定させることができないと云う欠点が存在した。
また、横板部材を下までスライドさせても、第1腕部と第2腕部の寸法は、そのままであり、被取付部材から突出する方向に余計なスペースを必要としていた。
【0005】
この発明は、上記したような不都合を解消するために為されたもので、被取付部材から突出する方向の寸法を短くし、省スペースを実現するとともに、軸体を安定して仮保持することのできる軸体保持具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下のような内容である。
(1)本発明の軸体保持具は、第1保持手段と第2保持手段を係合することによって円柱状の軸体を固定保持する軸体保持具であって、前記第1保持手段と第2保持手段とは仮組みされており、前記第1保持手段と第2保持手段とが離間した状態で軸体を装着可能なスペースを有しており、前記第1保持手段と第2保持手段とを近接嵌合した状態で前記軸体を第1保持手段と第2保持手段とに設けられた軸体保持手段で固定保持することを特徴とする。
(2)(1)に記載の軸体保持具において、前記第1保持手段と第2保持手段とは、嵌合状態を保持する嵌合手段を備えたことを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載の軸体保持具において、前記第1保持手段と第2保持手段の何れか一方に、被取付部材と係合する係合部を設けたことを特徴とする。
(4)(1)〜(3)に記載の軸体保持具において、前記係合部は、前記被取付部材に設けられたブラケットと係合し、前記第1保持手段と第2保持手段とが嵌合した際、前記係合凹溝の一部を覆い、ブラケットの離脱を確実に防止することを特徴とする。
(5)(1)〜(4)に記載の軸体保持具において、前記軸体保持手段は、軸体外周の少なくとも3方向から接触し、前記軸体保持手段の幅は、軸体の直径より長く形成されたことを特徴とする。
(6)(1)〜(5)に記載の軸体保持具において、前記第1保持手段と第2保持手段とは、それぞれ前記軸体外周に設けられたバルジ部と係合する係合溝を備えたことを特徴とする。
(7)(1)〜(6)に記載の軸体保持具において、前記軸体は、中空パイプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、第1保持手段と第2保持手段を係合することによって円柱状の軸体を固定保持する軸体保持具であって、前記第1保持手段と第2保持手段とは仮組みされており、前記第1保持手段と第2保持手段とが離間した状態で軸体を装着可能なスペースを有しており、前記第1保持手段と第2保持手段とを近接嵌合した状態で前記軸体を第1保持手段と第2保持手段とに設けられた軸体保持手段で固定保持するので、設置スペースの削減を図るとともに軸体を確実に仮保持できる。また、軸体を安定して固定することができる。
また、前記第1保持手段と第2保持手段とは、嵌合状態を保持する嵌合手段を備えたので、確実に軸体を保持固定することができる。
また、前記第1保持手段と第2保持手段の何れか一方に、被取付部材と係合する係合部を設けたので、軸体を確実に軸体保持具を介して被取付部材に取り付けることができる。
また、前記係合部は、前記被取付部材に設けられたブラケットと係合し、前記第1保持手段と第2保持手段とが嵌合した際、前記係合凹溝の一部を覆い、ブラケットの離脱を確実に防止するので、係合したブラケットが離脱する虞がない。
また、前記軸体保持手段は、軸体外周の少なくとも3方向から接触し、前記軸体保持手段の幅は、軸体の直径より長く形成されたので、軸体を確実に保持固定することができる。
また、前記第1保持手段と第2保持手段とは、それぞれ前記軸体外周に設けられたバルジ部と係合する係合溝を備えたので、軸体の軸線方向への移動を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態である軸体保持具を仮組みする状態の斜視図である。
【図2】図2は、同軸体保持具を係合した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、同軸体保持具を仮組みした状態を示す平面図である。
【図4】図4は、同軸体保持具を係合した状態を示す側面図である。
【図5】図5は、同軸体保持具を構成する第1保持手段を示す正面図である。
【図6】図6は、同第1保持手段の平面図である。
【図7】図7は、同第1保持手段の側面図である。
【図8】図8は、同第1保持手段の背面図である。
【図9】図9は、図5に於けるA−A線断面図である。
【図10】図10は、図9に於けるB部拡大断面図である。
【図11】図11は、本発明の軸体保持具を構成する第2保持手段を示す正面図である。
【図12】図12は、同第2保持手段の正面図である。
【図13】図13は、同第2保持手段の側面図である。
【図14】図14は、同第2保持手段の背面図である。
【図15】図15は、図14に於けるC−C線断面図である。
【図16】図16は、図14に於けるD−D線断面図である。
【実施例1】
【0009】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である軸体保持具を仮組みする状態の斜視図、図2は本発明の軸体保持具の係合した状態を示す斜視図である。ここで、本発明の軸体保持具10は、第1保持手段11と第2保持手段12を係合することによって円柱状の軸体13を固定保持するものであって、前記第1保持手段11と第2保持手段12とは仮組みされており、前記第1保持手段11と第2保持手段12とが離間した状態で軸体13を装着可能なスペースを有しており、前記第1保持手段11と第2保持手段12とを近接嵌合した状態で前記軸体13を第1保持手段11と第2保持手段12とに設けられた軸体保持手段14で固定保持するよう構成されている。
【0010】
図5は本発明の軸体保持具を構成する第1保持手段を示す正面図、図6は、同第1保持手段の平面図、図7は側面図、図8は背面図、図9は、図5に於けるA−A線断面図、図10は、図9に於けるB部拡大断面図である。
第1保持手段11は、正面に湾曲面を有する複数のリブ15a〜15dから構成された軸体保持手段14を有するとともに、左右に延設された腕部材19に嵌合孔16を有している。軸体保持手段14の幅方向寸法は、軸体の直径より長く形成されている。また、腕部材19の略中央には、第2保持手段12と係合する為の係合凹部20が形成されている。更に、リブ15bと15cの間に軸体13に形成されたバルジ部を収納する係合溝31が形成されている。一方、頂部左右には、第2保持手段12と係合するレール部17が形成されている。そして、レール部レール部の先端近傍に案内突起17aが立設されている。更に、頂部中央には、第2保持手段12と係合する係合突起18が立設される。
【0011】
また、図4、9、10に示すように第1保持手段11には、被取付部材に設けられたブラケット21と係合するための係合凹溝22が形成されており、その係合凹溝22に臨んで係止突起23が突出退避可能に配設されている。
【0012】
図11は、本発明の軸体保持具を構成する第2保持手段を示す正面図、図12は平面図、図13は側面図、図14は背面図、図15は、図14に於けるC−C線断面図、図16は、図14に於けるD−D線断面図である。
第2保持手段12は、断面略U字状をしており、正面(U字状内底部)に湾曲面を有する軸体保持手段24を有している。軸体保持手段24の幅方向寸法は、軸体13の直径より長く形成されている。また、略中央に軸体13に形成されたバルジ部を収納する係合溝32が形成されている。更に、頂部には、第1保持手段11に形成されたレール部17を摺動可能に案内する案内溝25が形成されている。案内溝25には、上面に第1係合孔26と間隔をおいて長穴27が開口形成されており、係合された第1保持手段11の案内突起17aが係合される。また、上面中央には、第1保持手段11の係合突起18が係合する中央係合孔28が形成されている。
【0013】
第2保持手段12の底面側の正面には、左右に第1保持手段11の嵌合孔16と係合する嵌合片29が形成されている。また、嵌合片29の先端近傍には、係合突起29aが形成されている。更に、第2保持手段12の正面中央には、第1保持手段11の係合凹部20に挿入される係止片30が形成されている。
【0014】
以上のように構成された第1保持手段11と第2保持手段12は、図1に示す方向に向かい合わせて、図3に示す状態に仮組みして軸体保持具10を構成する。仮組みは、図3に示すように第1保持手段11のレール部17を第2保持手段12の案内溝25に挿通し、案内突起17aが第1係合孔26に係合するまで前進させる。この状態で、先ず図外の被取付部材に設けられたブラケット21を第1保持手段11の係合凹部20の組み付けるとともに、軸体13を第1保持手段11と第2保持手段12の間に装着する。ブラケット21は、係止突起23によって抜け止めされる。
【0015】
次に、第2保持手段12を前進させると、図3に示す状態から案内突起17aが長穴27に進入し、この長穴27内を摺動可能となる。更に、第2保持手段12を前進させると、図2、4に示す様に軸体保持手段14及び軸体保持手段24が軸体13の外周を押圧保持する。また、第2保持手段12の嵌合片29は、第1保持手段11の嵌合孔16内に係合し、係合突起29aで抜け止めされるとともに、第2保持手段12の係止片30は、第1保持手段11の係合凹部20に挿通される。更に、第1保持手段11に形成された係合凹溝22の上端は、第2保持手段12の一部によって塞がれ、図2に示すように外部から見えなくなる。
【0016】
また、軸体13の外周に環状突起(バルジ部)を設けた場合、第1保持手段11のリブ15bと15cの間に形成された係合溝31と第2保持手段12の略中央に形成された係合溝32とで保持し、軸体13が軸線方向に移動することを阻止する。
【0017】
このように本発明の軸体保持具10によれば、ブラケット21に第1保持手段11を取り付けるとともに、軸体13を第1保持手段11と第2保持手段12間に装着することで、仮留めができる。また、被取付部材からの寸法を第1保持手段11及び第2保持手段12の寸法に抑えることができ、省スペース化を実現できる。更に、係合溝31、32によって外周に環状突起(バルジ部)を設けた軸体の軸線方向の移動を阻止することができる。また、第1保持手段11に形成された係合凹溝22の上端は、第2保持手段12の一部によって塞がれ、外部から見えなくなるので、ブラケットを保護することができる。
【0018】
なお、軸体保持手段14、24は、第1保持手段11と第2保持手段12の嵌合時に軸体13の全周を押圧するものでもよく、また軸体外周の少なくとも3方向から接触するものでもよい。また、軸体13は、中実のものに限ることなく、中空パイプであってもよい。
【0019】
更に、本発明は上述の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 軸体保持具
11 第1保持手段
12 第2保持手段
13 軸体
14 軸体保持手段
15 リブ
16 嵌合孔
17 レール部
17a 案内突起
18 係合突起
19 腕部材
20 係合凹部
21 ブラケット
22 係合凹溝
23 係止突起
24 軸体保持手段
25 案内溝
26 第1係合孔
27 長穴
28 中央係合孔
29 嵌合片
29a 係合突起
30 係止片
31 係合溝
32 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1保持手段と第2保持手段を係合することによって円柱状の軸体を固定保持する軸体保持具であって、
前記第1保持手段と第2保持手段とは仮組みされており、
前記第1保持手段と第2保持手段とが離間した状態で軸体を装着可能なスペースを有しており、
前記第1保持手段と第2保持手段とを近接嵌合した状態で前記軸体を第1保持手段と第2保持手段とに設けられた軸体保持手段で固定保持することを特徴とする軸体保持具。
【請求項2】
前記第1保持手段と第2保持手段とは、嵌合状態を保持する嵌合手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の軸体保持具。
【請求項3】
前記第1保持手段と第2保持手段の何れか一方に、被取付部材と係合する係合部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の軸体保持具。
【請求項4】
前記係合部は、前記被取付部材に設けられたブラケットと係合し、前記第1保持手段と第2保持手段とが嵌合した際、前記係合凹溝の一部を覆い、ブラケットの離脱を確実に防止することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の軸体保持具。
【請求項5】
前記軸体保持手段は、軸体外周の少なくとも3方向から接触し、前記軸体保持手段の幅は、軸体の直径より長く形成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の軸体保持具。
【請求項6】
前記第1保持手段と第2保持手段とは、それぞれ前記軸体外周に設けられたバルジ部と係合する係合溝を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の軸体保持具。
【請求項7】
前記軸体は、中空パイプであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の軸体保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−96530(P2013−96530A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241311(P2011−241311)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】