説明

軸受外輪の製造方法

【課題】背面組み合わせ型の複列アンギュラ型玉軸受を構成する外輪3を、円柱状の素材10を塑性変形させる事により造る場合に、両外輪軌道2、2に、この素材10のうちで清浄度の高い中間部金属材料29を露出させられる製造方法を実現する。
【解決手段】上記素材10に、(A)→(B)の据え込み加工と、(C)→(D)の後方押出加工と、(D)→(E)の打ち抜き加工と、(E)→(F)のローリング加工と、仕上加工とを順次施す事により、上記外輪3とする。上記据え込み加工で造る第一中間素材11aの外径を、後方押出加工に使用するダイス13の内周面の内周面側大径部18の内径以下で内周面側小径部19の内径よりも大きくする。そして、上記後方押出加工で、上記第一中間素材11aの外径寄り部分を内周面側傾斜部20に全周に亙り引っ掛けた状態で、この第一中間素材11aをパンチ14の先端面により上記ダイス13の底部に向けて押し込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車、工作機械、産業機械等、各種機械装置の回転支持部に組み込む複列アンギュラ型の転がり軸受を構成する軸受外輪の製造方法の改良に関する。本発明の製造方法の対象となる軸受外輪は、内周面の軸方向2個所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備えたものである。この様な軸受外輪は、外周面が、軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、この軸方向中間部の両側部分が、軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である。尚、軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面とは、軸方向両端縁部に設けた面取り部を除き、外径が変化しない形状を言う。又、本発明の製造方法の対象となる軸受外輪は、複列アンギュラ型であれば、玉軸受用の外輪に限らず、円すいころ軸受用の外輪も含まれる。
【背景技術】
【0002】
各種機械装置の回転支持部分を構成する為に、図7に示す様な、背面組み合わせ型の複列アンギュラ型玉軸受1が、広く使用されている。この複列アンギュラ型玉軸受1は、内周面に複列の外輪軌道2、2を備えた外輪3と、それぞれの外周面に内輪軌道4を形成した1対の内輪5、5と、これら両外輪軌道2、2と両内輪5、5の内輪軌道4、4との間にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けられた玉6、6と、これら各玉6、6を保持する為の1対の保持器7、7とを備える。この様な複列アンギュラ型玉軸受1は、例えば、上記外輪3をハウジング8に内嵌固定すると共に、上記両内輪5、5を回転軸9に外嵌固定する。そして、このハウジング8の内側にこの回転軸9を、回転自在に支持する。
【0003】
この様な複列アンギュラ型玉軸受1を構成する、上記外輪3及び上記両内輪5、5は、例えば特許文献1〜5等に記載されて周知の様に、鍛造加工、ローリング加工、切削乃至研削加工を施す事により、所定の形状及び寸法に加工している。例えば、上記外輪3に関しては、従来から、図8に示す様な工程で造っていた。先ず、この従来の軸受外輪の製造方法に就いて説明する。
【0004】
この図8に示した、従来から知られている軸受外輪の製造方法では、先ず、(A)に示した様な円柱状の素材10を、長尺な原材料を所定長さに切断する事により得る。
次いで、この素材10に、1対の金型の互いに対向する押圧面同士の間で軸方向に押し潰す、据え込み加工を施す事により、(B)に示す様な、外周面が凸円弧面である第一中間素材11とする。
次いで、この第一中間素材11に、(C)→(D)に示した後方押出加工を施す事により、(D)に示した第二中間素材12とする。
【0005】
上記後方押出加工は、ダイス13とパンチ14との間で上記第一中間素材11の径方向中央部分を軸方向に押し潰すと共に、径方向外寄り部分を上記パンチ14の押し込み方向後方に塑性変形させる事により行う。上記ダイス13は有底円筒状で、円形の底板部15と、この底板部15の外周縁部から上方に立上った周壁部16とを備える。このうちの底板部15の外形寄り部分には環状凹溝17を、全周に亙って形成している。又、上記周壁部16の内周面は、開口部寄り(中間部乃至上端部)の内周面側大径部18と、上記底板部15寄り(下端部)の内周面側小径部19とを、軸方向中間部底板部寄り部分の内周面側傾斜部20により連続させた、段付形状としている。このうちの内周面側小径部19は、上記環状凹溝17の外径寄り内周面と単一円筒面上に位置している。又、上記パンチ14は、外周面を、先端寄り(下半部)の外周面側小径部21と、基端寄り(上半部)の外周面側大径部22とを、軸方向中間部の外周面側傾斜部23により連続させた、段付形状としている。それぞれが上述の様に構成される上記ダイス13とパンチ14とは、プレス加工機のテーブルとラムとに、互いに同心に支持固定する。即ち、上記ダイス13をこのテーブルの上面に、上記パンチ14を上記ラムの下端面に、それぞれ固定する。
【0006】
上記後方押出加工を行う際には、上記ラムと共に上記パンチ14を上昇させた状態で、上記第一中間素材11を上記ダイス13内にセットする。従来の製造方法の場合、この第一中間素材11の外径は、少なくとも下端寄り部分で上記内周面側小径部19内に入り込む部分で、この内周面側小径部19の内径よりも小さかった。従って、上記第一中間素材11を上記ダイス13内にセットした状態では、(C)に示す様に、この第一中間素材11の下面が上記底板部15の上面で上記環状凹溝17の内側部分に当接する。そこで、この状態から上記ラムにより上記パンチ14を下降させて、(D)に示す様に、このパンチ14の先端面と上記ダイス13の底板部15の上面との間で、上記第一中間素材11の中央部を軸方向に押し潰す。
【0007】
この押し潰しにより、この底板部15の上面と上記パンチ14の先端面との間から径方向外方に押し出された金属材料は、上記第一中間素材11の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、上記パンチ14の押し込み方向後方(上方)に移動する。この様にしてこのパンチ14の押し込み方向後方に移動した金属材料は、このパンチ14の外周面と前記周壁部16の内周面との形状に倣って、内外両周面が段付円筒面である、段付円筒状となる。又、上記金属材料の一部は、上記環状凹溝17内に入り込んで、当該部分の形状を糸底状とする。この様にして行う上記後方押出加工により、(D)に示す様な、内外両周面が段付円筒面で全体が有底円筒状の、前記第二中間素材12を得られる。
【0008】
次いで、この様な第二中間素材12に、この第二中間素材12の底部24を打ち抜き除去する打ち抜き加工を施す事により、(E)に示す様な、段付円筒状の第三中間素材25とする。この打ち抜き加工は、プラス加工機により打ち抜きパンチを、上記第二中間素材12に突き通す事により行う。
【0009】
この様にして、上記第三中間素材25を造った後、この第三中間素材25に冷間でローリング加工(CRF)を施して、(F)に示す様な第四中間素材26とする。この冷間ローリング加工では、例えば上記第三中間素材25を、この第三中間素材25の(大径側の)外径と一致する内径を有し、内周面を円筒面とした外径側ローラに内嵌する。そして、上記第三中間素材25の内径よりも十分に小さな外径を有し、外周面の母線形状を上記第四中間素材26の内周面の母線形状に見合う(凹凸が逆になった)形状とした内径側ローラを、上記第三中間素材25の内周面に押し付ける。そして、この内径側ローラを回転させつつ、この第三中間素材25の内周面に押し付ける。上記外径側ローラは、回転のみ自在に(径方向の変位を阻止された状態で)支持されているので、上記内径側ローラの回転に伴って上記第三中間素材25が、上記外径側ローラと共に回転する。この為、この第三中間素材25の内周面に上記内径側ローラの外周面の母線形状が全周に亙って転写されると共に、この第三中間素材25の外周面が円筒面に加工される。
【0010】
尚、上記ローリング加工は、互いに反対方向に回転する1対のローラ同士の間に上記第三中間素材25の一部を挟持し、これら両ローラを互いに近付く方向に押圧しつつ、これら両ローラの外周面の形状を上記第三中間素材25の内外両周面に転写する状態で行う場合もある。何れにしても、上記(F)に示す様な第四中間素材26を得られる。この第四中間素材26は、外周面が軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である。
【0011】
この様にして得られた、上記第四中間素材26には、必要な仕上加工を施す事により、前述の図7に示した様な、複列アンギュラ型玉軸受1を構成する外輪3として完成する。即ち、上記第四中間素材26のうちの余肉部を削り取る事で、図8の(F)及び図9に鎖線で示した形状の外輪3とする。又、この外輪3の内周面に形成した1対の外輪軌道2、2部分に、研削加工や超仕上加工等、これら両外輪軌道2、2の表面の性状を整える加工を施す。
【0012】
ところで、上記外輪3を造る為の、前記素材10は、鉄鋼メーカーで押し出し成形された、断面円形の長尺材を所定長さに切断する事で造られた、円柱状のものを使用する。この様にして得られる円柱状の素材10の組成(清浄度)は均一でない事が、特許文献6に記載される等により、従来から知られている。即ち、上記素材10の中央部40%の範囲(中心から半径の40%までの中央寄り円柱状部分)は、非金属介在物が存在し易い事が、上記特許文献6に記載される等により、従来から知られている。又、上記素材10の外径寄り20%の範囲(中心から半径の80%よりも外周面側に存在する円筒状部分)に関しても、酸化物や非金属介在物が存在し易い等により、清浄度が低い事が知られている。そして、中心寄り、外周面寄り、何れの部分に存在する金属材料にしても、清浄度が低い金属材料が、上記外輪3の内周面に設けた外輪軌道2、2のうちで、特に玉6、6(図7)の転動面が転がり接触する部分に露出すると、この部分の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。
【0013】
これらの事を考慮し、且つ、素材中の酸化物や非金属介在物の分布のばらつきや、製造作業時に発生する(押圧力等の)各種ばらつきを考慮した場合、上記素材10の中央部50%の範囲、及び、上記素材10の外径寄り30%の範囲に存在する金属材料が、上記両外輪軌道2、2のうちで、少なくとも転動面が転がり接触する部分に露出しない様にする事が好ましい。言い換えれば、上記両外輪軌道3、3のうちの少なくとも転動面が転がり接触する部分には、上記素材10のうちで、中心からの半径が50〜70%の範囲である、中間円筒状部分27{図8の(A)に斜格子を付した部分。他の、図1〜6、図8の(B)〜(F)、図9に関しても、斜格子を付した部分は、上記中間円筒状部分27に存在した金属材料(中間部金属材料29)により構成されている事を表している。}に存在する金属材料を露出させる事が好ましい。
【0014】
ところが、本発明の製造方法の対象となる様な、軸方向中間部の内径が小さく、内周面の軸方向2個所位置でこの内径が小さくなった部分の両側に複列の外輪軌道を備えた外輪3を鍛造加工により造る場合、上記中間円筒状部分27に存在する金属材料を上記両軌道面に露出させる事が難しい。例えば、前述の図8に示した様な方法で、上記図9に鎖線で示した外輪3を造ると、上記素材10中の各部の金属材料、即ち、中心から半径の50%までの中央寄り円柱状部分に存在する中心側金属材料28と、中心からの半径が50〜70%の範囲である、上記中間円筒状部分27に存在する中間部金属材料29と、外径寄り30%の範囲の外径寄り円筒状部分に存在する外径側金属材料30とは、上記図9に示す様に、上記外輪3中に分布する。この外輪3は、前述の様に、鍛造加工により図9に実線で示した第四中間素材26を造った後、切削加工及び研削加工により、この図9に鎖線で示す状態にまで上記第四中間素材26を削り取り、上記外輪3として完成する。
【0015】
この様な第四中間素材26と外輪3とを示した図9中、斜格子で示した、上記中間円筒状部分27に存在する中間部金属材料29が、1対の外輪軌道2、2のうちで、少なくとも玉の転動面が転がり接触する部分に露出すれば、これら両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を確保し、上記外輪3を含む、前記複列アンギュラ型玉軸受1の耐久性確保を図り易くなる。ところが、上記図9から明らかな通り、従来の製造方法により上記外輪3を造ると、上記中央寄り円柱状部分の中心側金属材料28が、上記両外輪軌道2、2のうちの一方(図9の下方)の外輪軌道2の表面全体に露出する。例えば、図9の矢印α、αは、各玉6、6(図7参照)の接触角を40度(接触角の余角である中心軸に対する角度=50度)とした場合に、上記各玉6、6から上記両外輪軌道2、2に加わる荷重の作用方向を示している。上記外輪3の断面形状を表す上記図9の鎖線上で、上記各矢印α、αが指している部分に上記中間部金属材料29が存在すれば、上記両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を確保し易いが、図9の下方の内輪軌道2に関しては、上記図9の鎖線上で上記各矢印α、αが指している部分に、中心側金属材料28が存在する。この為、従来から知られている軸受外輪の製造方法では、上記複列アンギュラ型玉軸受1の耐久性確保を図る為の設計の自由度が限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−176740号公報
【特許文献2】特開平9−280255号公報
【特許文献3】特開平11−140543号公報
【特許文献4】特開2002−79347号公報
【特許文献5】特開2003−230927号公報
【特許文献6】特開2006−250317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、内周面の軸方向中間部の内径が両側部分の内径よりも小さく、且つ、この内径が小さくなった部分を挟む軸方向2個所位置に複列の外輪軌道を備えた軸受外輪を、円柱状の素材を塑性変形させる事により造る場合に、上記両外輪軌道のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられる軸受外輪の製造方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の軸受外輪の製造方法のうち、請求項1に記載した製造方法は、前述の図8に示した従来から知られている軸受外輪の製造方法と同様に、円柱状の素材に、据え込み加工と、後方押出加工と、打ち抜き加工と、ローリング加工と、仕上加工とを順次施す事により、内周面の軸方向2個所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備えた軸受外輪とする。
そして、上記据え込み加工では、上記素材を、1対の金型の互いに対向する押圧面同士の間で軸方向に押し潰して、第一中間素材とする。
又、上記後方押出加工では、ダイスとパンチとの間で上記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰す。このうちのダイスは、有底円筒状で、内周面を、開口部寄りの内周面側大径部と底部寄りの内周面側小径部とを軸方向中間部の内周面側傾斜部により連続させた段付形状としている。又、上記パンチは、外周面を、先端寄りの外周面側小径部と基端寄りの外周面側大径部とを軸方向中間部の外周面側傾斜部により連続させた段付形状としている。上記後方押出加工では、この様なパンチの先端面と上記ダイスの底板部との間で上記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰す。そして、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料を、上記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、上記パンチの押し込み方向後方に移動させて、内外両周面が段付円筒面で全体が有底円筒状の第二中間素材とする。
又、上記打ち抜き加工では、上記第二中間素材の底部を打ち抜き除去する事で、内外両周面が段付円筒面で全体が円筒状の第三中間素材とする。
又、上記ローリング加工では、この第三中間素材の内外両周面を塑性変形させて、外周面が軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、この軸方向中間部の両側部分が軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である第四中間素材とする。軸方向に関して外径が実質的に変化しない事の意味は、前述した通りである。
更に、前記仕上加工では、上記第四中間素材の内周面を削り取る事により、この内周面に上記両外輪軌道を形成する。
【0019】
特に、本発明のうち、請求項1に記載した軸受外輪の製造方法に於いては、前記据え込み加工で造る上記第一中間素材の外径を、上記ダイスの内周面側大径部の内径以下で上記内周面側小径部の内径よりも大きくする。即ち、上記据え込み加工での、前記素材の加工量(押し潰し量)を前述した従来の製造方法の場合よりも多くして、上記第一中間素材の外径を、この従来の方法を実施する場合に造る第一中間素材の外径よりも大きくする。
又、上記後方押出加工では、上記第一中間素材の外径寄り部分を上記ダイスの前記内周面側傾斜部に全周に亙り引っ掛けた状態で、この第一中間素材を上記パンチの先端面により上記ダイスの底部に向けて押し込む。そして、この第一中間素材を外径寄り部分程このダイスの開口部に向かう方向に傾斜した形状に塑性変形させてから、この第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰すと共に、この第一中間素材の外径寄り部分を上記パンチの押し込み方向後方に移動させて、上記第二中間素材とする。
【0020】
又、請求項2に記載した軸受外輪の製造方法の場合には、上記据え込み加工で使用する1対の金型のうちの一方の金型の押圧面を平坦面とすると共に、他方の金型の押圧面の少なくとも外径寄り部分を、外周縁に向かうに従って上記一方の金型の押圧面から遠ざかる方向に傾斜した傾斜面とする。そして、上記据え込み加工で造る第一の中間素材は、その軸方向片面が径方向中央部が外周縁部に対し凹み、軸方向他面が平坦面である形状とする。そして、後方押出加工の際に、この凹んだ面をダイスの底部に対向させる。
【0021】
一方、請求項3に記載した軸受外輪の製造方法の場合には、円柱状の素材に、据え込み加工と、前後方同時押出加工と、打ち抜き加工と、ローリング加工と、仕上加工とを順次施す事により、内周面の軸方向2個所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備えた軸受外輪とする。即ち、上述した請求項1〜2に記載した軸受外輪の製造方法での後方押出加工に代えて、前後方同時押出加工を採用する。上記請求項3に記載した軸受外輪の製造方法の構成は、この前後方同時押出加工を採用している点以外は、上記請求項1に記載した発明と同様である。
上記前後方同時押出加工では、有底円筒状で、底面中央部に深さ寸法の1/2未満の高さ寸法を有する円形凸部を設け、この円形凸部の外周面と内周面との間を円筒状成形空間としたダイスと、このダイスの内径よりも小さな外径を有するパンチとの間で上記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰す。そして、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料を、上記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、上記円筒状成形用空間及び上記パンチの押し込み方向後方でこのパンチの外周面と上記ダイスの内周面との間に存在する円筒状の空間に(同時に)移動させて、円筒部の軸方向中間部内径側に隔壁部を設けた第二中間素材とする。そして、この第二中間素材を、上記請求項1に記載した製造方法の場合と同様にして、軸受外輪に加工する。
【発明の効果】
【0022】
上述の様に構成する本発明の軸受外輪の製造方法によれば、内周面のうち、内径が最も小さくなった部分を挟んだ、軸方向に離隔した2個所位置に形成した両外輪軌道のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられる。この為、上記両外輪軌道の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道を備えた軸受外輪を含む、複列転がり軸受の耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。
又、請求項1に記載した発明を実施する場合に、必要に応じて、請求項2に記載した構成を採用する事で、上記中間円筒状部分の金属材料を上記両外輪軌道の表面部分のより広い範囲に、効果的に露出させられる。
更に、請求項3に記載した発明の軸受外輪の製造方法によれば、上記両外輪軌道に素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を、より十分に配置できて、複列転がり軸受の耐久性確保の為の設計の自由度をより向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の軌道輪部材の製造方法の実施の形態の第1例を工程順に、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況が変化する状況と共に示す、素材乃至第四中間素材、並びに、ダイス及びパンチの断面図。
【図2】第四中間素材の段階での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。
【図4】同じく図2と同様の図。
【図5】本発明の実施の形態の第3例をダイス及びパンチを省略した状態で示す、図1と同様の図。
【図6】同じく図2と同様の図。
【図7】本発明の製造方法の対象となる軸受外輪を備えたアンギュラ型の複列玉軸受を備えた回転支持部の1例を示す断面図。
【図8】従来から知られている軸受外輪の製造方法を示す、図1と同様の図。
【図9】同じく図2と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、請求項1にのみ対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の製造方法は、図1の(A)に示した、中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の、塑性加工後に焼き入れ硬化可能な、金属製で円柱状の素材10に、順次、塑性加工或いは打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した第一中間素材11a、(D)に示した第二中間素材12a、(E)に示した第三中間素材25aを経て、(F)に示した第四中間素材26aを得る。更に、この第四中間素材26aに、必要とする切削加工及び研削加工を施して、前述の図7に示した様な複列アンギュラ型玉軸受1を構成する外輪3とする。以下、上記素材10を上記第四中間素材26aに加工する工程に就いて、順番に説明する。尚、以下の加工のうち、(A)→(E)に示した、据え込み加工と、後方押出加工と、打ち抜き加工とは、基本的には総て熱間若しくは温間で行い、(E)→(F)に示したローリング加工は冷間で行うが、小型の外輪3を形成し、しかも金属材料として優れた延性を有するものを使用する場合等、可能であれば、全工程を冷間で行っても良い。
【0025】
先ず、据え込み工程で、図1の(A)→(B)に示す様に、上記素材10を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、この素材10を、軸方向中間部が膨らんだ、上記第一中間素材11aとする。この様な据え込み工程の基本的な実施状況に関しては、前述の図8に示した、従来の製造方法での据え込み工程と同様である。但し、本例の場合には、上記据え込み加工で、上記素材10を軸方向に押し潰す、1対の金型の押圧面同士の最接近距離を、上記従来の製造方法の場合よりも短くする。即ち、上記据え込み加工での、上記素材10の加工量(押し潰し量)を、上記従来の製造方法の場合よりも多くする。この為、上記第一中間素材11aの形状は、ビヤ樽型よりも、むしろ厚肉円板状に近くなる。そして、上記据え込み加工により造る上記第一中間素材11aの外径D11を、上記従来の製造方法の途中過程で造る第一中間素材11の外径d11{図8の(B)参照}よりも大きく(D11>d11)している。具体的には、次の後方押出加工に使用するダイス13{図1の(C)、(D)参照}の内周面に形成した内周面側大径部18の内径R18以下で、同じく内周面側小径部19の内径R19よりも大きく(R18≧D11>R19と)する。
【0026】
上述の様な、上記第一中間素材11aは、次の後方押出工程で、図1の(C)→(D)に示す様に、前記第二中間素材12aに塑性加工する。この様な後方押出工程では、前述した従来の製造方法の場合と同様のダイス13とパンチ14とを使用して、上記第一中間素材11aの径方向中央寄り部分を軸方向に圧縮し、金属材料を径方向外方に移動させつつ、軸方向両側(前後両方向、但し、主として後側)に移動させる。但し、本例の製造方法の場合には、上記第一中間素材11aの外径D11が大きい分だけ、次の様に、加工状況が上記従来の製造方法の場合とは異なる。
【0027】
即ち、本例の場合、上記後方押出加工では、先ず、図1の(C)に示す様に、上記第一中間素材11aの外径寄り部分を上記ダイス13の内周面の軸方向中間部に設けた内周面側傾斜部20に、全周に亙り引っ掛ける。そして、この状態から、上記パンチ14を下降させ、このパンチの先端面により、上記第一中間素材11aを上記ダイス13の底板部15の上面に向けて押し込む。この押し込みの初期段階、即ち、上記第一中間素材11aの下面中央部が上記底板部15の上面に当接する以前の状態に於いては、この第一中間素材11aが、外径寄り部分程上記ダイス13の開口部に向かう方向(上方)に塑性変形する。
【0028】
そして、上記第一中間素材11aの下面中央部が上記底板部15の上面に当接した後、更に上記パンチ14を下降させると、上記第一中間素材11aの中央部を軸方向に押し潰すと共に、押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料を、上記第一中間素材11aの径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、主として、上記パンチ14の押し込み方向後方(上方)に移動させる。この様に、このパンチ14の押し込み方向後方に移動した金属材料の内外両周面は、このパンチ14の外周面と上記ダイス13を構成する周壁部16の内周面とに見合った段付形状となる。この結果、上記後方押出加工により、図1の(C)に示した上記第一中間素材11aが、同図の(D)に示した、内外両周面が段付円筒面で全体が有底円筒状の第二中間素材12aとなる。又、上記金属材料の一部を押し込み方向前方に移動させて、上記底板部15の外径寄り部分に形成した環状凹溝17内に進入させる。
【0029】
この様な第二中間素材12aは、図示しないカウンターパンチにより底部24を上方に押圧する等により、上記ダイス13から取り出した後、前述した従来の製造方法の場合と同様の打ち抜き加工とローリング加工とを施す事により、図1の(F)及び図2に示す様な、第四中間素材26aとする。このうちの打ち抜き加工では、上記第二中間素材12aを図示しない受型の内周面に保持した状態で、この第二中間素材12aの内径側に図示しない打ち抜きパンチを押し込み、上記底部24を打ち抜き除去する。この様な打ち抜き工程により、図1の(E)に示す様な、段付円筒状の、前記第三中間素材25aとする。次いで、上記ローリング加工では、図示しない1対のローラによりこの第三中間素材25aの内外両周面をこれら両ローラの周面に見合う形状に塑性変形させて、上記第四中間素材26aとする。
【0030】
この第四中間素材26aは、完成後の外輪3{図1の(F)及び図2の鎖線参照}よりも厚肉である。そこで、この第四中間素材26aに、所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、上記外輪3として完成する。上記図1の(A)〜(F)に、加工の進行に伴う、中心側、中間部、外径側各金属材料28〜30の分布状態の変化状況を、図1の(F)及び図2に、上記第四中間素材26aの段階での、上記各金属材料28〜30の分布状態と完成後の外輪3の断面形状とを示している。
【0031】
これら各図から明らかな通り、本例の外輪3の製造方法によれば、この外輪3の内周面の軸方向に離隔した2個所位置に形成した両外輪軌道2、2のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、各図に斜格子で示した、前記素材10のうちで清浄度の高い中間円筒状部分27の中間部金属材料29を露出させられる。この為、上記両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道2、2を備えた外輪3を含む車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。
【0032】
[実施の形態の第2例]
図3〜4は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、図3の(A)→(B)の過程で行う据え込み加工で使用する1対の金型のうちの一方の金型の押圧面を平坦面とすると共に、他方の金型の押圧面の外径寄り部分を、外周縁に向かうに従って上記一方の金型の押圧面から遠ざかる方向に傾斜した傾斜面とする。そして、上記据え込み加工で造る第一中間素材11bの形状を、その軸方向片面を、径方向中央部が外周縁部に対し凹んだ形状とする。本例の場合、この軸方向片面の中央部を平坦面とし、外周寄り部分を部分円すい状凹面とする事で、この軸方向片面を逆円すい台状の凹面としている。これに対して、軸方向他面は平坦面としている。この様な形状を有する上記第一中間素材11bの場合、図3の(B)(C)と前述の図1の(B)(C)とを比較すれば明らかな通り、上記据え込み加工に伴って中心側金属材料28及び中間部金属材料29が径方向外方に変位する程度が、軸方向片面側で著しくなる。
【0033】
この様な、形状が軸方向に関して非対称な、上記第一中間素材11bは、図3の(C)→(D)に示した後方押出加工の際に、上記凹んだ軸方向片面をダイス13の底板部15の上面に対向させる。そして、上述した実施の形態の第1例の場合と同様にして、(C)→(D)に示した後方押出加工を施して第二中間素材12bとし、(D)→(E)に示した打ち抜き加工を施して第三中間素材25bとし、更に、(E)→(F)に示したローリング加工を施して、第四中間素材26bとする。この結果、図3の(F)及び図4と、前述の図1の(F)及び図2とを比較すれば明らかな通り、上記実施の形態の第1例の場合に比べて、清浄である、中間部金属材料29を1対の外輪軌道2、2の表面部分のより広い範囲に、効果的に露出させられる。
その他の部分の構成及び効果は、上記実施の形態の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0034】
[実施の形態の第3例]
図5〜6は、請求項3に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、前述の図1〜2に記載した実施の形態の第1例の場合に図1の(C)→(D)で行う、後方押出加工に代えて、図5の(B)→(C)に示した前後方同時押出加工を行う。本例の場合、この前後方同時押出加工を採用し、これに合わせて第一中間素材11を、前述した従来例と同様のビヤ樽型としている点以外は、上記実施の形態の第1例の製造方法と同様である。
本例の場合、上記前後方同時押出加工で、図5の(B)に示した第一中間素材11を、図5の(C)に示した第二中間素材12cに加工する。この様に、第一中間素材11を第二中間素材12cに加工する上記前後方同時押出加工には、この第二中間素材12cの表面形状に合致する内面形状を有するダイス及び外面形状を有するパンチを使用する。このうちのダイスの内面形状は、上記図5の(C)に示した上記第二中間素材12cの形状から分かる様に、有底円筒状で、底面中央部に深さ寸法の1/2未満の高さ寸法を有する円形凸部を設けている。そして、この円形凸部の外周面と内周面との間を、上記第二中間素材12cの下寄り部分を形成する為の、円筒状成形空間としている。又、上記パンチは、上記第二中間素材12cの上寄り部分に押し込まれて、この上寄り部分の内面形状を加工する為のもので、上記ダイスの内径よりも小さな外径を有する。
【0035】
上記前後方同時押出加工で、上記第一中間素材11を上記第二中間素材12cに加工するには、上記ダイス内にこの第一中間素材11を、この第一中間素材11の軸方向片面(下面)の中央部を、上記円形凸部に当接させる(載置する)状態でセットする。次いで、上記パンチにより上記第一中間素材11の軸方向他面の中央部を強く押圧し、このパンチの先端面(下面)と上記円形凸部の先端面(上面)との間で、上記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰す。そして、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料を、上記第一中間素材11の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、上記円筒状成形用空間及び上記パンチの押し込み方向後方でこのパンチの外周面と上記ダイスの内周面との間に存在する円筒状の空間に移動させる。そして、図5の(C)に示す様な、円筒部31の軸方向中間部内径側に隔壁部32とを設けた、上記第二中間素材12cとする。そして、この第二中間素材12cに、上記実施の形態の第1例の場合と同様、図5の(C)→(D)に示す打ち抜き加工、同じく(D)→(E)に示したローリング加工、更に仕上加工により、図5の(E)及び図6に鎖線で示す形状を削り出して、複列玉軸受用の外輪3に加工する。
【0036】
本例の場合、上記第一中間素材11から上記第二中間素材12cへの加工を、上記前後方同時押出加工により、これら両素材11、12cの軸方向に関してほぼ対称な状態で行う為、図5の(C)〜(E)及び図6から明らかな通り、清浄度の高い中間部金属材料29を、複列の外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させられる。この為、上記両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を十分に確保できる。そして、これら両外輪軌道2、2を備えた外輪3を含む、車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度を、より向上させられる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上述した実施の各例は、本発明の製造方法により、複列アンギュラ型玉軸受1を構成する外輪3を造る場合に就いて説明した。これに対して本発明の軸受外輪の製造方法は、複列アンギュラ型円すいころ軸受を構成する外輪を造る場合に利用する事もできる。この場合、請求項1、2に記載した発明を実施するには、外輪の内周面に形成する複列の外輪軌道の幅、仕上加工による削り代等を考慮して、後方押出加工に使用するダイスの中間部内周面に設けた内周面側傾斜部の軸方向位置を工夫し、素材中の中間部金属材料を、上記外輪軌道の表面に露出させる。
【符号の説明】
【0038】
1 複列アンギュラ型玉軸受
2 外輪軌道
3 外輪
4 内輪軌道
5 内輪
6 玉
7 保持器
8 ハウジング
9 回転軸
10 素材
11、11a、11b 第一中間素材
12、12a、12b、12c 第二中間素材
13 ダイス
14 パンチ
15 底板部
16 周壁部
17 環状凹溝
18 内周面側大径部
19 内周面側小径部
20 内周面側傾斜部
21 外周面側小径部
22 外周面側大径部
23 外周面側傾斜部
24 底部
25、25a、25b 第三中間素材
26、26a、26b 第四中間素材
27 中間円筒状部分
28 中心側金属材料
29 中間部金属材料
30 外径側金属材料
31 円筒部
32 隔壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の素材に、据え込み加工と、後方押出加工と、打ち抜き加工と、ローリング加工と、仕上加工とを順次施す事により、内周面の軸方向2個所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備えた軸受外輪とする為、
上記据え込み加工では、上記素材を、1対の金型の互いに対向する押圧面同士の間で軸方向に押し潰して、第一中間素材とし、
上記後方押出加工では、有底円筒状で、内周面を、開口部寄りの内周面側大径部と底部寄りの内周面側小径部とを軸方向中間部の内周面側傾斜部により連続させた段付形状としたダイスと、外周面を、先端寄りの外周面側小径部と基端寄りの外周面側大径部とを軸方向中間部の外周面側傾斜部により連続させた段付形状としたパンチとの間で上記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰し、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料を、上記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、上記パンチの押し込み方向後方に移動させて、内外両周面が段付円筒面で全体が有底円筒状の第二中間素材とし、
上記打ち抜き加工では、上記第二中間素材の底部を打ち抜き除去する事で、内外両周面が段付円筒面で全体が円筒状の第三中間素材とし、
上記ローリング加工では、この第三中間素材の内外両周面を塑性変形させて、外周面が軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、この軸方向中間部の両側部分が軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である第四中間素材とし、
上記仕上加工では、上記第四中間素材の内周面を削り取る事により、この内周面に上記両外輪軌道を形成する軸受外輪の製造方法に於いて、
上記据え込み加工で造る上記第一中間素材の外径を、上記ダイスの内周面側大径部の内径以下で上記内周面側小径部の内径よりも大きくし、
上記後方押出加工では、上記第一中間素材の外径寄り部分を上記ダイスの内周面側傾斜部に全周に亙り引っ掛けた状態で、この第一中間素材を上記パンチの先端面により上記ダイスの底部に向けて押し込み、この第一中間素材を外径寄り部分程このダイスの開口部に向かう方向に傾斜した形状に塑性変形させてから、この第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰すと共に、この第一中間素材の外径寄り部分を上記パンチの押し込み方向後方に移動させて上記第二中間素材とする事を特徴とする
軸受外輪の製造方法。
【請求項2】
据え込み加工で使用する1対の金型のうちの一方の金型の押圧面を平坦面とすると共に、他方の金型の押圧面の少なくとも外径寄り部分を、外周縁に向かうに従って上記一方の金型の押圧面から遠ざかる方向に傾斜した傾斜面とする事で、第一の中間素材の軸方向片面を、径方向中央部が外周縁部に対し凹んだ形状とし、後方押出加工の際に、この凹んだ面をダイスの底部に対向させる、請求項1に記載した軸受外輪の製造方法。
【請求項3】
円柱状の素材に、据え込み加工と、前後方同時押出加工と、打ち抜き加工と、ローリング加工と、仕上加工とを順次施す事により、内周面の軸方向2個所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備えた軸受外輪とする軸受外輪の製造方法であって、
上記据え込み加工では、上記素材を、1対の金型の互いに対向する押圧面同士の間で軸方向に押し潰して、第一中間素材とし、
上記前後方同時押出加工では、有底円筒状で、底面中央部に深さ寸法の1/2未満の高さ寸法を有する円形凸部を設け、この円形凸部の外周面と内周面との間を円筒状成形空間としたダイスと、このダイスの内径よりも小さな外径を有するパンチとの間で上記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰し、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料を、上記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、上記円筒状成形用空間及び上記パンチの押し込み方向後方でこのパンチの外周面と上記ダイスの内周面との間に存在する円筒状の空間に移動させて、円筒部の軸方向中間部内径側に隔壁部を設けた第二中間素材とし、
上記打ち抜き加工では、上記第二中間素材の隔壁部を打ち抜き除去する事で、全体が円筒状の第三中間素材とし、
上記ローリング加工では、この第三中間素材の内外両周面を塑性変形させて、外周面が軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、この軸方向中間部の両側部分が軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である第四中間素材とし、
上記仕上加工では、上記第四中間素材の内周面を削り取る事により、この内周面に上記両外輪軌道を形成する
軸受外輪の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−6218(P2013−6218A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184983(P2012−184983)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2008−2761(P2008−2761)の分割
【原出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】