説明

軸受装置、及び情報記録再生装置

【課題】剛性を維持した上で、薄くて低コストな軸受装置及び情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】第1転がり軸受12の内輪21はシャフト14に固定されるとともに、第1転がり軸受12の外輪22が第2転がり軸受13の内輪41に固定され、第1転がり軸受12において、外輪22と転動体23とが転動体23の中心に対して軸方向の一端側で接触する一方、内輪21と転動体23とが転動体23の中心に対して軸方向の他端側で接触し、第2転がり軸受13において、外輪42と転動体43とが転動体43の中心に対して軸方向の一端側で接触する一方、内輪41と転動体43とが転動体43の中心に対して軸方向の他端側で接触していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置及びこれを有する情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の情報をディスク(磁気記録媒体)に記憶・再生させるハードディスク等の情報記録再生装置が知られている。一般的に、情報記録再生装置は、ディスクに信号を記録再生するスライダを備えたヘッドジンバルアセンブリと、ヘッドジンバルアセンブリを先端側に装着したアーム(回動部材)と、を備えている。このアームは、基端側に設けられた軸受装置によって回動可能とされている。アームを回動させることにより、スライダをディスクの所定位置に移動させ、信号の記録や再生を行うことができる。
【0003】
上述した軸受装置としては、シャフトと、シャフトに外挿され、シャフトの軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受と、シャフトと同軸状に配置され、一対の転がり軸受の軸方向の内側に配置された円筒状のスペーサと、を備えたものがある。また、スペーサに代えて、スリーブから径方向の内側に向けて突設された環状突起を挟んで、一対の転がり軸受が配置されたものもある。
このような軸受装置では、転がり軸受に軸方向(アキシアル方向)に予圧を付与することで、外輪及び内輪と転動体との内部隙間をゼロまたはマイナスにして、転がり軸受の剛性を高めている。
【0004】
ところで、近時では、情報記録再生装置の更なる薄型化に対応するため、情報記録再生装置に組み込まれる軸受装置についても更なる薄型化が求められている。
そこで、例えば特許文献1には、各転がり軸受の内輪における軸方向の幅を外輪よりも短く設定する構成が知られている。この構成によれば、スペーサ等を介さず外輪同士を接触させた状態で各転がり軸受をシャフトに組み付けた場合であっても、内輪同士の間に与圧を付与するためのスペースが形成されるため、軸受装置の薄型化に対応できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−318255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成にあっても、転がり軸受が軸方向に沿って並べて配設されるため、二つの転がり軸受の軸方向に沿う幅以下の薄型化は不可能であった。
また、特許文献1に示された転がり軸受は、内輪と外輪との幅を異ならせるような特殊な転がり軸受であるため、標準的なものに比べて高価であるという問題があった。
また、さらなる薄型化を実現するためには、転がり軸受の軸方向に沿う幅を縮小させることが考えられるが、設計的に限界がある。特に、幅を小さくするためには、それに対応して外輪と内輪との間で保持される転動体を小さくする必要があるが、転動体を縮小すると剛性が低下するという問題がある。その結果、情報記録再生装置の性能が低下する虞がある。
【0007】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、剛性を維持した上で、薄くて低コストな軸受装置及び情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の軸受装置は、シャフトと、前記シャフトに外挿された第1転がり軸受と、前記第1転がり軸受よりも大径に形成され、前記第1転がり軸受に外挿された第2転がり軸受と、前記第2転がり軸受の外輪を軸方向の一端側から支持する支持部と、を備え、前記第1転がり軸受の内輪は前記シャフトに固定されるとともに、前記第1転がり軸受の前記外輪が前記第2転がり軸受の内輪に固定され、前記第1転がり軸受において、前記外輪と転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の一端側で接触する一方、前記内輪と前記転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の他端側で接触し、前記第2転がり軸受において、前記外輪と転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の一端側で接触する一方、前記内輪と前記転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の他端側で接触していることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、従来のように第1転がり軸受と第2転がり軸受とを軸方向に並べて配置する場合に比べて、軸受装置としての性能を維持した上で、軸受装置の軸方向の幅を縮小できる。これにより、軸受装置の薄型化を図ることができる。
また、径(呼び径)の異なる2つの転がり軸受を組み合わせる構成なので、上述した特許文献1のような特殊な転がり軸受を用いる必要もなく、低コストな軸受装置を提供できる。
さらに、転がり軸受自体を薄型化する必要はないので、転がり軸受自体の剛性を維持することができる。
【0010】
また、前記第1転がり軸受は、前記第2転がり軸受に対して軸方向に沿う他端側に突出して配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1転がり軸受が、第2転がり軸受よりも軸方向の他端側に向けて突出した状態で固定されているので、各転がり軸受に作用する予圧方向がほぼ直線状に配置されることになる。そのため、軸受装置の更なる高剛性化が可能になり、特に軸方向に沿って負荷がかかった場合であっても軸受装置のがたつきや、ずれ等を抑制できる。
【0011】
また、前記シャフトと前記支持部とが一体的に形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、シャフトと支持部とを一体的に形成することで、部品点数の削減を図ることができる。また、シャフトと支持部との位置合わせが容易になるので、第1転がり軸受及び第2転がり軸受の組み付け性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の情報記録再生装置は、上記本発明の軸受装置と、前記シャフトに接続されたハウジングと、前記第1転がり軸受の前記外輪、及び前記第2転がり軸受の前記内輪のうち少なくとも一方に固定された回動部材と、前記回動部材に装着され、磁気記録媒体に情報の記録及び再生を行うスライダと、を備えたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の軸受装置を備えているので、薄くて低コストな情報記録再生装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る軸受装置によれば、剛性を維持した上で、薄くて低コストな軸受装置を提供することができる。
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、上記本発明の軸受装置を備えているので、薄くて低コストな情報記録再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】情報記録再生装置の斜視図である。
【図2】図1のA−A線における側面断面図である。
【図3】軸受装置の拡大断面図である。
【図4】軸受装置の製造方法の説明図である。
【図5】軸受装置の製造方法の説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る図2に相当する断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
(情報記録再生装置)
図1は情報記録再生装置の斜視図である。
図1に示すように、この情報記録再生装置1は、記録層を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、書き込み及び読み取りを行う装置である。情報記録再生装置1は、アーム(回動部材)8と、アーム8の先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ4と、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に装着されたスライダ2と、ヘッドジンバルアセンブリ4をスキャン移動させるアクチュエータ(VCM:ボイスコイルモータ)6と、ディスクDを回転させるスピンドルモータ7と、情報に応じて変調した電流をスライダ2に供給する制御部5と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0016】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料からなり、上部に開口部を有する箱型形状のものであって、平面視四角形状の底壁9aと、底壁9aの周縁部から垂直に立設された周壁(不図示)と、で構成されている。周壁に囲まれたハウジング9の内側には、上述した各構成品を収容する凹部が形成される。底壁9aの略中心には、上述したスピンドルモータ7が取り付けられており、スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定されている。
【0017】
ディスクDの側方には、軸受装置10が配置され、この軸受装置10にアーム8が回動可能に支持されている。軸受装置10を挟んでアーム8の延在方向に沿う一方側は、上述したアクチュエータ6に接続されている。またアーム8の延在方向に沿う他方側はディスクDの表面と平行に延設され、その先端にヘッドジンバルアセンブリ4が接続されている。ヘッドジンバルアセンブリ4は、サスペンション3と、サスペンション3の先端に装着され、ディスクDの表面に対向配置されたスライダ2とを備えている。スライダ2は、ディスクDに対する情報の書き込み(記録)を行う記録素子と、ディスクDから情報の読み取り(再生)を行う再生素子と、を備えている。
【0018】
上述のように構成された情報記録再生装置1において、情報の記録または再生を行うには、まずスピンドルモータ7を駆動して、中心軸L2の周りにディスクDを回転させる。またアクチュエータ6を駆動して、軸受装置10の中心軸L1の周りにアーム8を回動させる。これにより、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に配置されたスライダ2を、ディスクDの表面の各部にスキャン移動させることができる。そして、スライダ2の記録素子または再生素子を駆動することにより、ディスクDに対する情報の記録または再生を行うことができる。
【0019】
(軸受装置)
図2は図1のA−A線における側面断面図である。
図2に示すように、軸受装置10は、ベース部11と、ベース部11に組み付けられた転がり軸受20(第1転がり軸受12及び第2転がり軸受13)と、を備えている。なお、以下の説明では、軸受装置10の中心軸L1に沿った方向を「軸方向」、「軸方向」に直交する方向を「径方向」、「軸方向」周りの方向を「周方向」という。
【0020】
ベース部11は、軸方向に沿って延在するシャフト14と、シャフト14における軸方向の一端側(図2中下側)から径方向の外側に向けて突設する支持部15と、がアルミニウムやステンレス等の金属材料により一体的に形成されたものである。
【0021】
シャフト14は、円筒状に形成され、その内側には軸方向の他端側からボルト16が挿通されている。ボルト16は、ハウジング9の底壁9aに形成された雌ねじ部9bに螺合され、これによりベース部11がハウジング9に固定されている。
支持部15は、ハウジング9の底壁9aに沿って延在する円環状に形成され、その外周縁には軸方向の他端側に向けて突出する突出部17が形成されている。突出部17は、支持部15の全周に亘って形成されており、その軸方向の他端側の端面は径方向に沿う平坦面となっている。
【0022】
(転がり軸受)
転がり軸受20は、シャフト14に外挿された第1転がり軸受12と、第1転がり軸受12よりも大径に形成され、第1転がり軸受12に外挿された第2転がり軸受13と、を有している。
第1転がり軸受12は、シャフト14に接着剤Wにより固定された内輪21と、内輪21における径方向の外側を囲繞するように配置された外輪22と、内輪21と外輪22との間に配置された複数の転動体23と、転動体23に対して軸方向の一端側に配置され転動体23を転動自在に保持するリテーナ24と、転動体23に対して軸方向の他端側(図2中上側)に配置され内輪21と外輪22との隙間を封止するシールド25と、を備えている。
【0023】
内輪21、及び外輪22は、金属材料により円筒形状に形成されている。
内輪21の外周面における軸方向の中央部分には、径方向の内側に向けて窪んだ転動溝31が形成されている。転動溝31は、内輪21の全周に亘って形成されている。転動溝31の内面が転動面31aとされ、転動面31aの軸方向に沿う断面は円弧状に形成されている。
外輪22の内周面における軸方向の中央部分には、径方向の外側に向けて窪んだ転動溝32が形成されている。転動溝32は、外輪22の全周に亘って形成されている。転動溝32の内面が転動面32aとされ、転動面32aの軸方向に沿う断面は円弧状に形成されている。
【0024】
転動体23は、金属材料により球状に形成されている。転動体23は、各転動溝31,32の内部に配置され、各転動溝31,32に沿って転動するようになっている。なお、各転動面31a,32aの曲率半径は、転動体23の外周面の曲率半径と同等に形成されている。
【0025】
また、外輪22における軸方向の他端側は、軸方向の一端側に比べて内径が拡大された大径部33となっている。大径部33は、周方向の全周に亘って形成されている。
シールド25は、内輪21と外輪22との間を軸方向の他端側から閉塞する環状の部材であり、その外周部分が上述した大径部33の内側に嵌合されることで外輪22に装着されている。また、シールド25の内周部分は内輪21から離間されており、これにより、内輪21と外輪22の軸方向に沿う相対的な変位が許容されている。
【0026】
リテーナ24は、樹脂材料等により王冠状に形成されている。具体的に、リテーナ24は、内輪21と外輪22との間で転動体23に対して軸方向の一端側に配置されるとともに、シャフト14と同軸状に配置されたリング部34と、リング部34から軸方向の他端側に突出する転動体保持部35と、を備えている。転動体保持部35は、周方向に間隔をあけて複数形成されており、各転動体保持部35間に転動体23が転動可能に保持されている。
【0027】
第2転がり軸受13は、第1転がり軸受12の外輪22に固定された内輪41と、内輪41における径方向の外側を囲繞するように配置された外輪42と、内輪41と外輪42との間に配置された複数の転動体43と、転動体43に対して軸方向の一端側に配置され転動体43を転動可能に保持するリテーナ44と、転動体43に対して軸方向の他端側に配置され内輪41と外輪42との隙間を封止するシールド45と、を備えている。
【0028】
内輪41は、内径が第1転がり軸受12の外輪22と同等以上に形成されており、その内周面が第1転がり軸受12における外輪22の外周面に接着剤Wにより固定されている。このとき、上述した第1転がり軸受12は、第2転がり軸受13よりも軸方向の他端側に向けて突出した状態で固定されている。内輪41の外周面における軸方向の中央部分には、径方向の内側に向けて窪んだ転動溝51が形成されている。転動溝51は、内輪41の全周に亘って形成されている。転動溝51の内面が転動面51aとされ、転動面51aの軸方向に沿う断面は円弧状に形成されている。
【0029】
外輪42の内周面における軸方向の中央部分には、径方向の外側に向けて窪んだ転動溝52が形成されている。転動溝52は、外輪42の全周に亘って形成されている。転動溝52の内面が転動面52aとされ、転動面52aの軸方向に沿う断面は円弧状に形成されている。また、外輪42における軸方向の両端側は、軸方向の中央部分に比べて内径が拡大された大径部53となっている。
【0030】
シールド45は、上述した第1転がり軸受12のシールド25と同等の構成からなり、大径部53のうち、軸方向に沿う他端側の大径部53の内側に嵌合されることで外輪42に装着されている。
リテーナ44は、上述した第1転がり軸受12のリテーナ24と同等の構成からなり、内輪41と外輪42との間で転動体43に対して軸方向の一端側に配置されるとともに、シャフト14と同軸状に配置されたリング部54と、リング部54から軸方向の他端側に突出して転動体43を保持する転動体保持部55と、を備えている。
【0031】
また、外輪42における軸方向の一端側の端面は、上述したベース部11の突出部17に当接した状態で固定されており、外輪42の軸方向に沿う一端側への移動が規制されている。そして、第2転がり軸受13のうち、内輪41及び転動体43は、支持部15に対して軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0032】
このように、本実施形態の軸受装置10では、第1転がり軸受12の内輪21と第2転がり軸受13の外輪42とがベース部11に相対的に固定されるとともに、第1転がり軸受12の外輪22と第2転がり軸受13の内輪41とが固定されている。そして、第1転がり軸受12の内輪21と第2転がり軸受13の外輪42とに対して、第1転がり軸受12の外輪22と第2転がり軸受13の内輪41とがともに回転するように構成されている。
【0033】
図3は、軸受装置の拡大断面図である。なお、図3では、図面を分かり易くするため要部のみを示している。
ところで、図2,3に示すように、上述した第1転がり軸受12、第2転がり軸受13は、軸方向(アキシアル方向)に沿って予圧が付与された状態で固定されている。
具体的に、第1転がり軸受12において、外輪22の転動面32aと転動体23とは、常に転動体23の中心Q1に対して軸方向の一端側の接触点61で接触する一方、内輪21の転動面31aと転動体23とは転動体23の中心Q1に対して軸方向の他端側の接触点62で接触している。したがって、予圧方向は図3に示す矢印C1方向となる。
また、第2転がり軸受13において、外輪42の転動面52aと転動体43とが転動体43の中心Q2に対して軸方向の一端側の接触点63で接触する一方、内輪41の転動面51aと転動体43とが転動体43の中心Q2に対して軸方向の他端側の接触点64で接触している。したがって、予圧方向は図3に示す矢印C2方向となる。
【0034】
これにより、第1転がり軸受12及び第2転がり軸受13において、内輪21,41、及び外輪22,42と、転動体23,43とのがたつきがそれぞれなくなり、第1転がり軸受12及び第2転がり軸受13の剛性をそれぞれ向上させることができる。また、本実施形態では、第1転がり軸受12の予圧方向C1と第2転がり軸受13の予圧方向C2とがほぼ直線状に設定されている。
【0035】
このように形成された軸受装置10に上述したアーム8が回動可能に支持されている。具体的には、図2に示すように、アーム8の延在方向に沿う基端部には、軸方向に沿って貫通する取付孔8aが形成されるとともに、この取付孔8aの開口縁は軸方向の一端側に向けて突設された膨出部8bが形成されている。そして、アーム8は、取付孔8aを通して第1転がり軸受12に外挿されるとともに、膨出部8bにおける軸方向に沿う一端側の端面が第2転がり軸受13の内輪41に当接した状態で、取付孔8aの内周面が第1転がり軸受12における外輪22の外周面に固定されている。
【0036】
(軸受装置の製造方法)
次に、上述した軸受装置の製造方法について説明する。
図4,5は、軸受装置の製造方法の説明図である。
まず図4に示すように、第1転がり軸受12と第2転がり軸受け13とを固定する。具体的には、まず第1転がり軸受12に第2転がり軸受13を外挿し、第1転がり軸受12における外輪22の外周面と、第2転がり軸受13における内輪21の内周面と、を接着剤Wで固定する。この際、第1転がり軸受12が、第2転がり軸受13よりも軸方向の他端側に突出した状態で両者を固定する。
【0037】
次に、図5に示すように、第1転がり軸受12及び第2転がり軸受13が固定された状態で、第1転がり軸受12をシャフト14に外挿する。このとき、第2転がり軸受13における外輪42の軸方向に沿う一端側の端面が支持部15の突出部17に当接する位置まで、第1転がり軸受12を外挿する。
【0038】
次に、予圧付与治具90を使用して、第1転がり軸受12及び第2転がり軸受13に予圧を付与する。予圧付与治具90は円筒状に形成され、その内径はシャフト14の外径より大きく形成され、その外径は第1転がり軸受12における内輪21の外径より小さく形成されている。予圧付与治具90により、第1転がり軸受12の内輪21を軸方向の一端側に向けて押圧すると、第1転がり軸受12の内輪21は外輪22に対して軸方向に沿う一端側にずれた状態となる。これにより、図3に示すように、第1転がり軸受12において、外輪22の転動面32aと転動体23とは、常に転動体23の中心Q1に対して軸方向の一端側の接触点61で接触する一方、内輪21の転動面31aと転動体23とは転動体23の中心Q1に対して軸方向の他端側の接触点62で接触している。
【0039】
また、第1転がり軸受12の内輪21が押圧されることで、第1転がり軸受12の外輪22に固定された第2転がり軸受13における内輪41も軸方向の一端側に押圧されることになる。一方、第2転がり軸受13の外輪42は、支持部15の突出部17により軸方向の一端側への移動が規制されている。したがって、第2転がり軸受13の内輪41は、外輪42に対して軸方向に沿う一端側にずれた状態となる。これにより、第2転がり軸受13において、外輪42の転動面52aと転動体43とが転動体43の中心Q2に対して軸方向の一端側の接触点63で接触する一方、内輪41の転動面51aと転動体43とが転動体43の中心Q2に対して軸方向の他端側の接触点64で接触している。したがって、予圧方向は図3に示す矢印C2方向となる。すなわち、各転がり軸受12,13は、矢印C1,C2方向にそれぞれ予圧が付与されている。この状態で、図5に示すように、シャフト14の外周面と、第1転がり軸受12における内輪21の内周面と、を接着剤Wで固定するとともに、第2転がり軸受13の外輪42と支持部15の突出部17とを固定する。
以上により、本実施形態に係る軸受装置10が完成する。
【0040】
その後、第1転がり軸受12にアーム8を外挿し、アーム8における取付孔8aの内周面と、第1転がり軸受12の外輪22と、を接着剤等で固定する。これによりアーム8が軸受装置10に回動可能に支持されることになる。なお、アーム8は、第1転がり軸受12の外輪22及び第2転がり軸受13の内輪41のうち、少なくとも何れか一方に固定されていれば構わない。
【0041】
このように、本実施形態では、シャフト14に外挿された第1転がり軸受12と、第1転がり軸受12を外側から囲繞するとともに、内輪41が第1転がり軸受12の外輪22に固定された第2転がり軸受13と、が予圧を付与された状態で組み付けられる構成とした。
この構成によれば、従来のように第1転がり軸受12と第2転がり軸受13とを軸方向に並べて配置する場合に比べて、軸受装置10としての性能を維持した上で、軸受装置10の軸方向の幅を縮小できる。これにより、軸受装置10の薄型化を図ることができる。
また、呼び径の異なる2つの転がり軸受12,13を組み合わせる構成なので、上述した特許文献1のような特殊な転がり軸受を用いる必要もなく、低コストな軸受装置10を提供できる。
さらに、転がり軸受12,13自体を薄型化する必要はないので、転がり軸受12,13自体の剛性を維持することができる。
そして、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、上述した軸受装置10を備えているので、薄くて低コストな情報記録再生装置1を提供することができる。
【0042】
また、本実施形態では、シャフト14と支持部15とを一体的に形成することで、部品点数の削減を図ることができる。また、シャフト14と支持部15との位置合わせが容易になるので、第1転がり軸受12及び第2転がり軸受13の組み付け性を向上させることができる。
さらに、第1転がり軸受12が、第2転がり軸受13よりも軸方向の他端側に向けて突出した状態で固定されているので、各転がり軸受12,13に作用する予圧方向がほぼ直線状に配置されることになる。そのため、軸受装置10の更なる高剛性化が可能になり、特に軸方向に沿って負荷がかかった場合であっても軸受装置10のがたつきや、ずれ等を抑制できる。
【0043】
以上、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、第1転がり軸受を第2転がり軸受から軸方向に沿う他端側に突出させる構成について説明したが、これに限らず、図6に示すように、第1転がり軸受12を第2転がり軸受13の軸方向の内側に配置する構成としてもよい。
この構成によれば、上述した実施形態に比べて軸受装置10の更なる薄型化が可能になる。
【0044】
また、図7に示すように、突出部17から軸方向の他端側に向けて立設されたリング部91を周方向の全周に亘って形成し、このリング部91により第2転がり軸受13の外輪42における軸方向の一端側を径方向の外側から保持するような構成にしても構わない。
この構成によれば、第2転がり軸受13を径方向の外側から保持できるので、更なる高剛性化を図ることができる。
【0045】
また、第1転がり軸受12及び第2転がり軸受13の大きさ等は、適宜設計変更が可能である。
さらに、上述した実施形態では、支持部15とシャフト14とを一体的に形成する場合について説明したが、これに限らず、シャフト14と支持部15とを別体で形成しても構わない。例えば、ハウジング9の底壁9aから支持部15(突出部17)を立設させるような構成にしても構わない。
また、第2転がり軸受13の外輪42と突出部17とは固定せずに、摺接するようにしても構わない。
さらに、各転がり軸受12,13の固定手段は、接着剤Wに限らず適宜変更が可能である。
【0046】
例えば、情報記録再生装置1の具体的な構成は、実施形態の構成に限られない。また、軸受装置10のシャフト14の具体的な形状も、実施形態の形状に限られない。
また、上述した実施形態では転がり軸受12,13のシールド25,45を外輪22,42に固定したが、内輪21,41に固定してもよい。
さらに、上述した実施形態では、転がり軸受12,13のシールド25,45を軸方向に沿う他端側のみに配置した、いわゆる片側シールドについて説明したが、これに限らず、シールド25,45を軸方向に沿う両端に配置した、いわゆる両側シールドの構成を採用しても構わない。本実施形態のように片側シールドを採用することで、転がり軸受12,13の更なる薄型化が可能になる。
【符号の説明】
【0047】
1…情報記録再生装置 2…スライダ 8…アーム(回動部材) 9…ハウジング 10…軸受装置 12…第1転がり軸受 13…第2転がり軸受 14…シャフト 21…内輪 22…外輪 23…転動体 41…内輪 42…外輪 43…転動体 D…ディスク Q1…中心 Q2…中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに外挿された第1転がり軸受と、
前記第1転がり軸受よりも大径に形成され、前記第1転がり軸受に外挿された第2転がり軸受と、
前記第2転がり軸受の外輪を軸方向の一端側から支持する支持部と、を備え、
前記第1転がり軸受の内輪は前記シャフトに固定されるとともに、前記第1転がり軸受の前記外輪が前記第2転がり軸受の内輪に固定され、
前記第1転がり軸受において、前記外輪と転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の一端側で接触する一方、前記内輪と前記転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の他端側で接触し、
前記第2転がり軸受において、前記外輪と転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の一端側で接触する一方、前記内輪と前記転動体とが前記転動体の中心に対して軸方向の他端側で接触していることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記第1転がり軸受は、前記第2転がり軸受に対して軸方向に沿う他端側に突出して配置されていることを特徴とする請求項1記載の軸受装置。
【請求項3】
前記シャフトと前記支持部とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の軸受装置。
【請求項4】
請求項1に記載の軸受装置と、
前記シャフトに接続されたハウジングと、
前記第1転がり軸受の前記外輪、及び前記第2転がり軸受の前記内輪のうち少なくとも一方に固定された回動部材と、
前記回動部材に装着され、磁気記録媒体に情報の記録及び再生を行うスライダと、を備えたことを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−54810(P2013−54810A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193939(P2011−193939)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】