説明

軸受装置及びコーター

【課題】 シール部が破損しても、ベアリング部の損傷を防ぐことができる軸受装置及びコーターを提供する。
【解決手段】 ホットメルト接着剤(2)の漏洩を防止するためのシール部(12)と、軸(8)を回転可能に支持するベアリング部(14)とを備え、シール部とベアリング部との間にドレイン槽(34)を形成し、シール部から漏れたホットメルト接着剤がベアリング部へ到達しないようにした軸受装置(10)及びこの軸受装置を使用するロールコーター(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体槽に使用される軸受装置及びこの軸受装置を使用したコーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホットメルト接着剤を加熱溶融して、被着体に塗布する装置としてホイールコーター及びロールコーターとよばれるものがある。ホイールコーターは、リザーバーに蓄えられたホットメルト接着剤に下部を浸した比較的幅の狭い円柱状のホイールを回転させ、回転するホイールに被着体を接触させることにより被着体に線状に又は帯状にホットメルト接着剤を塗布するために用いられている。ロールコーターは、回転体の幅を大きくしたものであり、リザーバーに蓄えられたホットメルト接着剤に下部を浸したロールを回転させ、回転するロールに被着体を接触させることにより被着体に幅広の膜状の塗膜や文字、絵柄などのホットメルト接着剤を塗布するために用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。なお、ホイールコーターとロールコーターを総称してホイールとよぶこともある。
【0003】
図2は、従来のロールコーターの断面図である。ロールコーター100は、ホットメルト接着剤102を収容した容器104と、ホットメルト接着剤102に下部を浸したロール106と、ロール106の両端部に取り付けられた軸108を支持するための軸受装置110とを備えている。ロール106は、被着体の幅と同じかそれ以上の長さを有しているが、図2においてはロール106の長さを省略して描いている。軸108は、ロール106に固定されており、軸108を駆動源(不図示)により回転することにより、ロール106が回転する。
【0004】
軸受装置110は、容器104の側壁112に設けられた開口部112aに取り付けられている。軸受装置110は、ベアリング114と、ベアリングハウジング116と、ベアリングハウジングカバー118とを備えている。ベアリング114は、軸108とベアリングハウジング116との間に配置されて、軸108を回転可能に支持している。ベアリングハウジング116は、側壁112の開口部112aに取り付けられて、ベアリング114を支持している。ベアリングハウジングカバー118は、ベアリング114をベアリングハウジング116にしっかりと固定すると共にベアリング114に装置外部から異物が侵入しないようにベアリング114を覆っている。
【0005】
ベアリングハウジング116と軸108との間には、容器104内のホットメルト接着剤がベアリング114へ侵入しないようにホットメルト接着剤用オイルシール120が取り付けられている。また、ベアリングハウジング116と側壁112の開口部112aとの間には、Oリング122が取り付けられている。一方、ベアリングハウジング116と軸108との間のベアリング114の側には、ベアリンググリス用オイルシール124が取り付けられている。また、ベアリングハウジングカバー118と軸108との間には、ベアリンググリス用オイルシール126が取り付けられている。
【0006】
図3は、ロールコーター100を塗布システム200に使用した例を示す説明図である。ロール106は、容器104に収容されたホットメルト接着剤102に下部を浸して矢印で示す方向に回転する。ホットメルト接着剤102は、ロール106の表面に付着し、余分なホットメルト接着剤はドクターブレード202によって掻き落とされる。ロール106上のホットメルト接着剤は、中間転写ロール204へ移される。被着体としての長尺なウェブ206は、矢印で示す方向に移動して中間転写ロール204と圧ロール208との間のニップに進入して、中間転写ロール204上のホットメルト接着剤がウェブ206に塗布される。ウェブ206は、第一ニップロール210により搬送されて、第一ニップロール210と第二ニップロール212との間のニップにおいて、第二ニップロール212により搬送されてきたウェブ214と貼り合わせられる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−277455号公報
【特許文献2】特開2002−143741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロールコーター100において、ロール106からドクターブレード202により掻き落とされたホットメルト接着剤は、ロール106の下方へ押し戻されるが、一部はロール106の両端部へ押しやられる。ロール106の両端部には、ホットメルト接着剤が遠心力により装置外部へ飛び散らないようにカバー(不図示)が設けられている。このため、ロール106の両端部へ押しやられたホットメルト接着剤は、図2の矢印Aで示すように、側壁112に設けられた開口部112aへ入り込み、ホットメルト接着剤用オイルシール120に圧力をかける。この状態が長く続きホットメルト接着剤用オイルシール120が劣化などし、寿命をきたすと破損し、ホットメルト接着剤が軸受装置110に侵入する。そうするとホットメルト接着剤がさらにベアリンググリス用オイルシール124をも破損し、ベアリング114に到達すると、回転不良、転写不良を生じ、最終的にはベアリング114が故障する。ベアリング114が故障するとロール106は回転することができず、塗布システム200を停止しなければならない。
【0009】
ベアリング114を交換するためには、通常、ロールコーター100を塗布システム200から外さなければならないが、ロールコーター100は重量があるため取り外し作業は困難である。続いて、ロールコーター100からロール106を取り外し、軸受装置110をロール106の軸108から抜き取る必要があるため、労力と作業時間を要する。
また、オイルシール124は、ベアリンググリス用としても使用されており、ベアリング交換時には、ホットメルト接着剤用オイルシールと同等のメンテナンス時間がかかるという問題がある。
また、ホットメルト接着剤用オイルシール120が破損した場合に、何らかの不具合、例えば、ベアリング114が故障するまでシールの損傷に気がつかないという問題がある。
さらにまた、ホットメルト接着剤用オイルシール120が破損すると、短時間のうちにホットメルト接着剤がベアリング114へ達し、ベアリング114が故障してしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、ホットメルト接着剤用シールが破損したとしても、ベアリングの損傷を防ぐことができる軸受装置及びコーターを提供することを目的とする。
また、ホットメルト接着剤用シールが破損したことを目視で確認することができる軸受装置及びコーターを提供することを目的とする。
さらにまた、ホットメルト接着剤用シールが破損した後も、しばらくの間塗布システムを停止せずに運転することができる軸受装置及びコーターを提供することを目的とする。
さらにまた、ロールをコーターから取り外さずに、ホットメルト接着剤用シールを交換することができる軸受装置及びコーターを提供することを目的とする。
さらにまた、軸を伝わってベアリングへ向うホットメルト接着剤の流れを阻止することができる軸受装置及びコーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決する為に本発明では次のような軸受装置とした。
すなわち、軸受装置(10)において、液体(2)の漏洩を防止するためのシール部(12)と、軸(8)を回転可能に支持するベアリング部(14)とを備え、前記シール部と前記ベアリング部との間に空間(34)を形成し、前記シール部から漏れた液体が前記ベアリング部へ到達しないようにした。
前記シール部はグランドパッキン(18)を含んでおり、前記シール部は第一装着部(16)に装着され、前記ベアリング部は該第一装着部とは異なる第二装着部(22)に装着されており、前記ベアリング部を該第二装着部から取り外すことなく前記シール部を該軸に沿って移動することにより前記グランドパッキンの交換が可能であるように構成してもよい。
さらに、前記シール部と前記ベアリング部との間の該軸に設けられる環状体(40)を備えてもよい。
さらに、前記空間から液体を排出するための排出装置(38)を備えてもよい。
前記空間は、漏洩した液体を目視することができるように開放されているとよい。
【0012】
また、前述した課題を解決する為に本発明では次のようなコーターとした。
すなわち、コーター(1)において、液体(2)を収容するための容器(4)と、前記容器内の液体を被着体へ塗布するために前記容器内で回転可能な回転体(6)と、前記回転体を回転可能に支持するための前述した軸受装置とを備えた。
前記回転体は、ホイール又はロールであってもよい。
該液体は、ホットメルト接着剤であってもよい。
前記空間は、ドレイン槽を形成していてもよい。
前記軸受装置は、回転体の両側にそれぞれ設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シール部が破損したとしてもベアリング部の損傷を防ぐことができる軸受装置及びこのような軸受装置を使用するコーターとすることができ、特に有用になるものである。
また、シール部が破損したことを目視で確認することができるため、何らかの不具合を生じる前に、シール部の交換をすることができる。
さらにまた、シール部が破損した後も、漏れた液体がドレイン槽に回収されるため、ベアリング部が損傷することはなく、しばらくの間塗布システムを停止せずに運転することができる。
さらにまた、ロールをコーターから取り外さずに、シール部を交換することができるためメンテナンスが容易になる。
さらにまた、軸に環状体を設ければ、軸を伝わってベアリング部へ向う液体の流れを阻止することができる。
本発明によれば、軸受装置及びコーターの長寿命化を達成すると共に、メンテナンスを容易にすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
図1は、本発明による軸受装置及び該軸受装置を使用したロールコーターの断面図である。ロールコーター1は、ホットメルト接着剤2を収容した容器4と、ホットメルト接着剤2に下部を浸したロール6と、ロール6の両端部に取り付けられた軸8を支持するための軸受装置10とを備えている。ロール6は、被着体の幅と同じかそれ以上の長さを有しているが、図1においてはロール6の長さを省略して描いている。軸8は、ロール6に固定されており、軸8を駆動源(不図示)により回転することにより、ロール6が回転する。
【0016】
軸受装置10は、シール部12とベアリング部14とに大きく分かれている。
シール部12は、容器4の側壁16に設けられた開口部16aに取り付けられている。シール部12は、円環状のグランドパッキン18及びパッキン圧縮カラー20とからなる。グランドパッキン18は、開口部16a内で軸8と側壁16との間に配置されてホットメルト接着剤2が外部へ漏れることを防いでいる。この実施形態ではグランドパッキン18は二重に並置されて装着されている。パッキン圧縮カラー20は、側壁16にボルト(不図示)によって取り付けられて開口部16a内のグランドパッキン18を圧縮し、それによりグランドパッキン18は直径方向に拡げられて軸8の外表面及び側壁16の開口部16aの内周面に圧着されている。
ベアリング部14は、容器4の側壁16の外側に設けられた外部壁22に設けられた開口部22aに取り付けられている。ベアリング部14は、ベアリング24と、ベアリングハウジング26と、ベアリングハウジングカバー28とを備えている。ベアリング24は、軸8とベアリングハウジング26との間に配置されて、軸8を回転可能に支持している。本実施例において、ベアリング24は、ラジアル玉軸受である。ベアリングハウジング26は、外部壁22の開口部22aに取り付けられて、ベアリング24を支持している。ベアリングハウジングカバー28は、ベアリング24をベアリングハウジング26にしっかりと固定すると共にベアリング24に装置外部から異物が侵入しないようにベアリング24を覆っている。
【0017】
ベアリングハウジング26と軸8との間には、ラビリンスシール30が取り付けられている。また、ベアリングハウジングカバー28と軸8との間には、ラビリンスシール32が取り付けられている。ラビリンスシール30,32は、ベアリンググリス用シールとして機能し、非接触のシールであるため基本的に寿命がないのでベアリンググリス用シールの交換を不要にする。
【0018】
容器4の側壁16と外部壁22との間の空間には、ドレイン槽34が形成されている。ドレイン槽34は、グランドパッキン18から漏れたホットメルト接着剤2がベアリング24へ到達しないようにするための空間を形成している。また、ドレイン槽34に溜まったホットメルト接着剤を目視することができるように構成されているので、ドレイン槽34へのホットメルト接着剤のたまり具合を目視することにより、グランドパッキン18の交換時機を容易に判断することができる。
【0019】
また、ドレイン槽34に排出口36を設け、排出口36に排出装置38を接続してもよい。グランドパッキン18から漏れたホットメルト接着剤は、ドレイン槽34に溜まり、溜まったホットメルト接着剤を排出装置38により定期的に排出すれば、ベアリング24へのホットメルト接着剤の侵入を防止することができる。
【0020】
また、シール部12とベアリング部14の間の軸8にホットメルト返し40を設けてもよい。ホットメルト返し40は、軸18の周りに設けられたカラーである。ホットメルト返し40は、グランドパッキン18から漏れ軸8を伝わってベアリング部14へ向うホットメルト接着剤の流れを阻止する。ホットメルト返し40は、カラーに限らず、段部あるいは溝部であってもよい。
【0021】
グランドパッキン18を交換するときは、ボルトにより側壁16に取り付けられているパッキン圧縮カラー20を外す。パッキン圧縮カラー20は、軸8に沿って引き抜くことにより側壁16の開口部16aから外すことができる。グランドパッキン18も、軸8に沿って引き抜くことにより開口部16aから外すことができ、その後、グランドパッキン18を軸8から外すことができる。即ち、グランドパッキン18は円周方向の1箇所で分割してあり、軸8に沿って側壁16の開口部16aから引き抜いた後に該分割部を円周方向に切り離して拡げ、軸8から取り除くことができる。そしてその逆の要領で新たなグランドパッキン18を軸8に装着した後、新たなグランドパッキン18を軸8に沿って開口部16aに装着し、パッキン圧縮カラー20により固定する。
このように、グランドパッキン18を交換する際に、ベアリング部14を取り外す必要がない。また、ロールコーター1を塗布システムから取り外す必要もない。したがって、グランドパッキン18の交換を短時間で効率よく行うことができる。
【0022】
本発明は、ロールコーターの実施例に基づいて説明したが、本発明は、ロールコーターに限定されることはなく、ホイールコーターにも適用することができることはもちろんである。また、本発明による軸受装置は、液体を収容した容器内で回転する回転体を回転可能に支持するための軸受として使用することができ、特に、液体がベアリングに侵入することを防止しなければならない軸受として使用する場合に好適である。
本実施例においては、ホットメルト接着剤を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱溶融材料その他の液体材料も使用することができる。
また、本実施例において、ベアリング24は、ラジアル玉軸受であるが、ベアリング24はこれに限定されることなく、転がり軸受、滑り軸受、スラスト軸受であってもよい。
側壁16と外部壁22との間の距離は、特に制限はないが、パッキン圧縮カラー20を側壁16から取り外したときに、グランドパッキン18を交換するために必要な距離があると好ましい。
【0023】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による軸受装置及び該軸受装置を使用したロールコーターの断面図。
【図2】従来のロールコーターの断面図。
【図3】ロールコーターを塗布システムに使用した例を示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
1 ロールコーター
2 ホットメルト接着剤
4 容器
6 ロール
8 軸
10 軸受装置
12 シール部
14 ベアリング部
16 側壁
18 グランドパッキン
22 外部壁
34 ドレイン槽
38 排出装置
40 ホットメルト返し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の漏洩を防止するためのシール部と、
軸を回転可能に支持するベアリング部とを備え、
前記シール部と前記ベアリング部との間に空間を形成し、前記シール部から漏れた液体が前記ベアリング部へ到達しないようにしたことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記シール部はグランドパッキンを含んでおり、
前記シール部は第一装着部に装着され、前記ベアリング部は該第一装着部とは異なる第二装着部に装着されており、前記ベアリング部を該第二装着部から取り外すことなく前記シール部を該軸に沿って移動することにより前記グランドパッキンの交換が可能であることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
さらに、前記シール部と前記ベアリング部との間の該軸に設けられる環状体を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
さらに、前記空間から液体を排出するための排出装置を備えることを特徴とする請求項1乃至3に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記空間は、漏洩した液体を目視することができるように開放されていることを特徴とする請求項1乃至4に記載の軸受装置。
【請求項6】
液体を収容するための容器と、
前記容器内の液体を被着体へ塗布するために前記容器内で回転可能な回転体と、
前記回転体を回転可能に支持するための請求項1乃至5に記載の軸受装置とを備えたコーター。
【請求項7】
前記回転体は、ホイール又はローラであることを特徴とする請求項6に記載のコーター。
【請求項8】
該液体は、ホットメルト接着剤であることを特徴とする請求項6又は7に記載のコーター。
【請求項9】
前記空間は、ドレイン槽であることを特徴とする請求項6乃至8に記載のコーター。
【請求項10】
前記軸受装置は、回転体の両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項6乃至9に記載のコーター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−200556(P2006−200556A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9948(P2005−9948)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】