説明

軸受装置用運転状態確認装置

【課題】内部に信号処理回路6aを収納したケーシング7aの密封性を十分に確保する。
【解決手段】上記ケーシング7aとして、軸方向の両端が開口した管状のものを使用する。上記信号処理回路6aを構成する回路基板8は、上記ケーシング7aの内側に、このケーシング7aの端部開口を通じて挿入する。これと共に、それぞれの一端を上記信号処理回路6aに接続した、センサ側、制御器側各ケーブル4、5を、それぞれ上記ケーシング7aの両端開口を通じて外部に引き出す。この様に、上記ケーシング7aの一部に上記信号処理回路6a専用の挿入孔を形成するのを省略して、このケーシング7aに設けるべきシール構造の位置を上記各ケーブル4、5の引き出し部のみとする事により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る運転状態確認装置用中継器は、例えば、軸受装置等の運転状態を確認する為に使用するセンサと制御器との間に設けて、このセンサの出力信号をこの制御器に送り込むのに先立ち、この出力信号に増幅処理、フィルタ処理、A/D変換処理等の所定の処理を施す為に利用する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両等の各種車両を構成する車輪や車軸、一般産業機械を構成する回転軸等の回転体を、懸架装置やハウジング等の固定の部分に対して回転自在に支持する為に従来から、各種構造の軸受装置が使用されている。又、この様な軸受装置の振動、回転速度、負荷荷重等を検出し、この検出値に基づいてこの軸受装置の異常を検出したり、更にはこの軸受装置を組み込んだ機械装置を制御する事も、従来から行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、上述の様な軸受装置の異常検出や機械装置の制御を行なう為に使用する、運転状態確認装置の従来構造の1例を示している。この運転状態確認装置は、センサヘッド1と、中継器2と、制御器3と、これらセンサヘッド1と中継器2とを接続する、センサ側伝送手段であるセンサ側ケーブル4と、上記中継器2と上記制御器3とを接続する、制御器側伝送手段である制御器側ケーブル5とを備える。このうちのセンサヘッド1は、その内部に、上記軸受装置の振動を検出する為の振動センサ、回転速度を検出する為の回転速度センサ、負荷荷重を測定する為の荷重センサ等の各種センサのうち、少なくとも1種類のセンサを備えている。
【0004】
又、上記中継器2は、回路基板に複数の電子部品を組み付けて成る信号処理回路6と、この信号処理回路6を収納する箱形(図示の例では、短円筒状)のケーシング7とから成る。このケーシング7は、上記信号処理回路6を出し入れする為の開口部を有する本体と、この開口部を塞ぐ為の蓋体とを備える。又、上記センサ側ケーブル4と上記制御器側ケーブル5との各一端は、それぞれ上記ケーシング7の一部で上記開口部から外れた部分に形成した孔を通じてこのケーシング7の内部に挿入し、且つ、上記信号処理回路6に接続している。又、上記ケーシング7を構成する本体の開口部と蓋体との突き合わせ部、並びに、このケーシング7に対する上記各ケーブル4、5の挿入部には、それぞれOリングやケーブルグランド等によるシール構造を設けて、外部から上記ケーシング7の内部に水や油等の異物が侵入するのを防止している。
【0005】
上述の様に構成する運転状態確認装置を使用する場合には、上記センサヘッド1を、運転状態を確認すべき装置である前記軸受装置の一部若しくは近傍に配置する。この状態で、この軸受装置の運転が行なわれると、上記センサヘッド1の内部に設けたセンサから、このセンサの種類と上記軸受装置の運転状態とに応じた出力信号が発生する。この様に発生した出力信号は、上記センサ側ケーブル4を通じて上記中継器2に送り込まれる。そして、この中継器2を構成する信号処理回路6により、増幅処理、フィルタ処理、A/D変換処理、マイクロコンピュータによる出力信号生成処理等の所定の処理を施された後、上記制御器側ケーブル5を通じて上記制御器3に送り込まれる。この制御器3は、この送り込まれた信号に基づいて、上記軸受装置の振動、回転速度、負荷荷重等を計算する。そして更に、この計算値に基づいて、上記軸受装置の異常検出や、この軸受装置を組み込んだ機械装置の運転制御等を行なう。
【0006】
上述した様な従来の中継器2を構成するケーシング7には、上記各ケーブル4、5を挿入する為の孔とは別個に、上記信号処理回路6を出し入れする為の開口部を設けている。この為、上記ケーシング7を密封する為のシール構造は、上記各ケーブル4、5の挿入部の他、上記開口部とこの開口部を塞ぐ蓋体との突き合わせ部にも設ける必要がある。ところが、上記ケーシング7に設けるシール構造の数が多くなると、その分、このケーシング7の密封性を損なう要因が多くなる為、好ましくない。特に、上記中継器2は、清浄度が劣悪な環境で使用される事が多い為、上記ケーシング7の密封性を十分に確保する事が望まれる。
【0007】
そこで、上記ケーシング7の密封性を十分に確保できる様にすべく、このケーシング7に設けるべきシール構造の数を少なくできる様にする事が望まれる。この場合、特に、上記開口部に設けるシール構造に就いては従来から、上記蓋体をこの開口部に固定する為のねじが緩む等により、密封性が損なわれ易いと言った不都合がある為、この様な開口部(上記信号処理回路6の出し入れの為だけに用いられる開口部)を廃止できる様にする事が望まれる。
【0008】
【特許文献1】特開平3−221354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の運転状態確認装置用中継器は、上述の様な事情に鑑みて発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の運転状態確認装置用中継器は、運転状態確認装置を構成するセンサの出力信号を制御器に送り込むのに先立ち、この出力信号に所定の処理を施す信号処理回路と、この信号処理回路を収納するケーシングとを備える。
特に、本発明の運転状態確認装置用中継器に於いては、上記ケーシングとして、その軸方向端部開口からその内側に上記信号処理回路を挿入自在な管を使用している。
【0011】
又、請求項2に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、上記センサの出力信号を上記信号処理回路に送り込む為のセンサ側伝送手段(ケーブル、アンテナ等)の一端と、この信号処理回路から上記制御器に向けて処理後の信号を送り出す為の制御器側伝送手段(ケーブル、アンテナ等)の一端とを、それぞれ上記信号処理回路に接続している。これと共に、これらセンサ側、制御器側各伝送手段を、上記ケーシングの軸方向端部開口を密封する為にこの開口部に取り付けたケーブルグランド等の筒状の密封装置の内側を通じて、又は、上記ケーシングの軸方向端部開口を密封する状態でこの開口部に取り付けたコネクタを介して、上記ケーシングの外部に引き出している。
【0012】
尚、上記センサ側、制御器側各伝送手段は、それぞれ上記ケーシングの軸方向両端開口を通じて片方ずつ別々に、このケーシングの外部に引き出しても良いし、或は、上記ケーシングの軸方向の何れか一方の端部開口を通じて両方一緒に、このケーシングの外部に引き出しても良い。両方一緒に引き出す場合には、上記ケーシングの他方の軸方向端部開口を別体の蓋体により密封するか、或はこのケーシングとして、他方の軸方向端部が開口していない管を使用する。
【0013】
又、請求項3に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、上記信号処理回路を構成する為の回路基板を、ゴムや板ばね等の弾性体を介して上記ケーシングの内面に支持している。
【0014】
又、請求項4に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、上記ケーシングの内部に、上記信号処理回路に無害な充填材{例えば、シリコンゲルに代表される、針入度硬さ(JIS K2207)が65〜90程度のゲルや、シリコンゴムに代表される、ポッティング材等の低弾性材等}を充填し、この充填材によりこの信号処理回路の少なくとも一部(好ましくは全部)を覆っている。
特に、請求項5に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、上記ケーシングの内部に充填する充填材の体積を、常温時で、このケーシングの内部に存在する空間(このケーシングの内部に上記信号処理回路等の収容物を収容した状態で、このケーシングの内部に生じている隙間)の容積の60〜95%としている。
【0015】
更に、請求項6に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、上記ケーシングを、このケーシングの軸方向端部開口を密封する部材及びこの軸方向端部開口を通じてこのケーシングの外部に突出した上記センサ側、制御器側各伝送手段の一部と共に被覆材{例えば、弾性を有する被覆材(例えば、ゴム系のディッピング材や熱収縮チューブ等)}により覆っている。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明の運転状態確認装置用中継器の場合には、ケーシングの軸方向端部開口を通じて、このケーシングの内部に信号処理回路を挿入できる。これと共に、それぞれの一端をこの信号処理回路に接続した、センサ側、制御器側各伝送手段を、上記ケーシングの軸方向端部開口を通じて、このケーシングの外部に引き出す事ができる(請求項2に記載した発明の場合には、実際に引き出している)。従って、本発明の運転状態確認装置用中継器の場合、上記ケーシングの密封性を確保する為のシール構造を設けるべき個所は、このケーシングのうち、上記センサ側、制御器側各伝送手段の引き出し部のみとなる。即ち、本発明のケーシングには、前述した従来構造のケーシングに設けられていた様な、信号処理回路を出し入れする為にのみ用いる開口部が存在しない。この為、この開口部とこの開口部を塞ぐ蓋体との突き合わせ部に設けるシール構造を省略する事ができる。この様に本発明の場合には、ケーシングに設けるべきシール構造の数(このケーシングの密封性を損なう要因の数)を少なくできる為、このケーシングの密封性を向上させる事ができる。
【0017】
又、請求項3に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、ゴムや板ばね等の弾性体が緩衝材の役割を果たす為、回路基板を含んで構成する信号処理回路の耐衝撃性を向上させる事ができる。
【0018】
又、請求項4〜5に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、充填材が、緩衝材と防湿材との役割を果たす為、回路基板を含んで構成する信号処理回路の耐衝撃性と防湿性とを向上させる事ができる。特に、請求項5に記載した発明の場合には、上記充填材の体積を、常温時で、ケーシングの内部空間の容積の60〜95%としている為、上記耐衝撃性と防湿性との向上を十分に図れる。これと共に、上記ケーシングの内部に空気を残す事ができる。この為、この空気の圧縮性を利用して、温度変化に基づく上記充填材の熱膨張・熱収縮時に、上記ケーシングの内部圧力が過度に変化するのを防止できる。具体的には、温度上昇に基づく上記充填材の熱膨張時に、上記ケーシングの内部圧力が過度に上昇するのを防止して、信号処理回路を構成する電子部品が破損したり、或は上記充填材がシール部を通じて外部へ漏洩するのを防止できる。又、温度低下に基づく上記充填材の熱収縮時に、上記ケーシングの内部圧力が過度に低下するのを防止して、外部に存在する水や油等の異物がシール部を通じて上記ケーシングの内部に侵入するのを防止できる。
【0019】
又、請求項6に記載した運転状態確認装置用中継器の場合には、ケーシングを、このケーシングに対する上記センサ側、制御器側各伝送手段の引き出し部ごと、被覆材により覆っている。この為、中継器の密封性を更に向上させる事ができる。又、上記被覆材としてゴム等の弾性材製のものを使用すれば、上記中継器の耐衝撃性を向上させる事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の中継器2aは、信号処理回路6aと、この信号処理回路6aを収納するケーシング7aとを備える。このうちの信号処理回路6aは、長方形の回路基板8に複数の電子部品9、9(図2にのみ図示)を組み付けて成る。本例の場合、上記回路基板8の幅方向(図1の上下方向、図2の左右方向)両側縁の長さ方向(図1の左右方向)両端寄り部分に、それぞれ弾性体であるゴムブッシュ10、10を、接着、焼き付け等により固定している。
【0021】
又、上記ケーシング7aは、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属、或はガラス繊維強化プラスチック等の合成樹脂により、全体を円管状に構成している。又、この様なケーシング7aの内側には、上記信号処理回路6a(上記回路基板8及び各電子部品9、9)を、上記ケーシング7aの端部開口を通じて挿入している。そして、この様に挿入した状態で、上記回路基板8を、上記各ゴムブッシュ10、10を介して、上記ケーシング7aの内周面の直径方向両側部分に掛け渡す状態で支持している。又、この様に支持した状態で、上記回路基板8及び各電子部品9、9が、上記ケーシング7aの内周面に接触しない様にしている。本例の場合には、この様な支持構造を採用する事により、上記各ゴムブッシュ10、10を緩衝材として機能させ、上記信号処理回路6aの耐衝撃性を確保している。
【0022】
又、本例の場合、上記回路基板8が上記ケーシング7aに対してずれ動くのを防止する為、上記各ゴムブッシュ10、10を上記ケーシング7aの内周面に、接着剤により固定している。但し、本例を実施する場合、上記各ゴムブッシュ10、10を構成する材料として、経年変化の少ないシリコンゴム等を使用すれば、上記各ゴムブッシュ10、10と上記内周面との接触部に作用する摩擦力を長期に亙り十分な大きさに保持できる。従って、この様な場合には、上記接着剤を使用せずに、当該摩擦力のみによって、上記回路基板8がずれ動くのを防止する事もできる。尚、本発明を実施する場合、上記信号処理回路6aの耐衝撃性を確保する為の弾性材としては、上記各ゴムブッシュ10、10の他、板ばね等を使用する事もできる。
【0023】
又、上述の様に信号処理回路6aをケーシング7aの内側に配置した状態で、この信号処理回路6aの入力部(図1の左端部)に、センサ側伝送手段であるセンサ側ケーブル4の一端(図1の右端)を、同じく出力部(図1の右端部)に、制御器側伝送手段である制御器側ケーブル5の一端(図1の左端)を、それぞれ接続している。そして、これらセンサ側ケーブル4と制御器側ケーブル5とを、それぞれ上記ケーシング7aの両端開口部に結合固定した筒状の密封装置であるケーブルグランド11、11の内側を通じて、上記ケーシング7aの外部に引き出している。
【0024】
上記各ケーブルグランド11、11(図1では、左側のケーブルグランド11のみを断面図で示している。)は、本体12とシール材13とを備える。このうちの本体12は、それぞれが合成樹脂により環状に造られた複数の素子同士を互いに密に組み合わせる事により、全体を略円筒状に構成している。又、上記シール材13は、ゴム等の弾性材により断面矩形で全体を円環状に構成している。そして、このシール材13の外周面を、上記本体12の基端(上記ケーシング7aと反対側の端)寄り部内周面に、全周に亙り接着等により固定する事で、上記各ケーブルグランド11、11を構成している。
【0025】
この様な各ケーブルグランド11、11はそれぞれ、上記本体12の先端部(上記ケーシング7a側の端部)外周面に形成した雄ねじ部14を、このケーシング7aの両端部内周面に形成した雌ねじ部15に螺合し、更に緊締する事により、上記ケーシング7aの両端開口部に結合固定している。又、この状態で、上記本体12の先端寄り部外周面に設けた鍔部16の側面の径方向内端部と、上記ケーシング7aの両端面の径方向内端部との間で、Oリング、パッキング等の円環状のシール材17を弾性的に圧縮する事により、上記ケーシング7aと上記各ケーブルグランド11、11との結合部の密封性を確保している。
【0026】
そして、前述した様に、センサ側、制御器側各ケーブル4、5を、それぞれ上記各ケーブルグランド11、11の内側を通じて上記ケーシング7aの外部に引き出した状態で、上記各ケーブルグランド11、11を構成するシール材13の内周面を、上記センサ側、制御器側各ケーブル4、5の最外層の外周面に弾性的に密接させている。これにより、上記センサ側、制御器側各ケーブル4、5と上記各ケーブルグランド11、11との間を密封している。
【0027】
又、本例の場合、上述の様に信号処理回路6aを収納したケーシング7aの内部に、この信号処理回路6aに無害な充填材18(例えば、シリコンゲルに代表される、針入度硬さが65〜90程度のゲルや、シリコンゴムに代表される、ポッティング材等の低弾性材等。図2にのみ図示。)を充填し、この充填材18により上記信号処理回路6aの全体を覆っている。これにより、上記信号処理回路6aの耐衝撃性及び防湿性を向上させている。
【0028】
特に、本例の場合、上述の様にケーシング7aの内部に充填する充填材18の体積を、常温時で、このケーシング7aの内部に存在する空間(このケーシング7aの内部に上記信号処理回路6a等の収容物を収容した状態で、このケーシング7aの内部に生じている隙間)の容積の80%程度としている。言い換えれば、本例の場合には、この様に充填材18の充填量を100%とせず、80%程度とする事により、上記ケーシング7aの内部に若干の空気を残している。そして、この空気の大きな圧縮性を利用して、温度変化に基づく上記充填材18の熱膨張・熱収縮時に、上記ケーシング7aの内部圧力が過度に変化するのを防止している。具体的には、温度上昇に基づく上記充填材18の熱膨張時に、上記ケーシング7aの内部圧力が過度に上昇するのを防止して、上記信号処理回路6aを構成する各電子部品9、9が破損したり、或は上記充填材18がシール部を通じて外部へ漏洩するのを防止している。又、温度低下に基づく上記充填材18の熱収縮時に、上記ケーシング7aの内部圧力が過度に低下するのを防止して、外部に存在する水や油等の異物がシール部を通じて上記ケーシング7aの内部に侵入するのを防止している。
【0029】
尚、本例を実施する場合、上記充填材18として、熱硬化性或は二液混合により硬化する特性を有する低弾性材を用いれば、前記中継器2aを組み立てる際に上記充填材18のこぼれ落ちを防止できる為、この組立作業を容易に行なえる。更には、上記充填材18の硬化不良及び再液化現象を防止できる。
【0030】
上述の様に構成する本例の中継器2aの使用時には、センサ側ケーブル4の他端部に設けたセンサヘッド1を、運転状態を確認すべき軸受装置の一部若しくは近傍に配置する。これと共に、制御器側ケーブル5の他端部(図示せず)を、やはり図示しない制御器に接続する。この状態で、上記軸受装置の運転が行なわれると、上記センサヘッド1の内部に設けた振動センサ、回転速度センサ、荷重センサ等のセンサから、このセンサの種類と上記軸受装置の運転状態とに応じた出力信号が発生する。この様に発生した出力信号は、上記センサ側ケーブル4を通じて上記中継器2aに送り込まれる。そして、この中継器2aを構成する信号処理回路6aにより、増幅処理、フィルタ処理、A/D変換処理等の所定の処理を施された後、上記制御器側ケーブル5を通じて上記制御器に送り込まれる。この制御器は、この送り込まれた信号に基づいて、上記軸受装置の振動、回転速度、負荷荷重等を計算する。そして更に、この計算値に基づいて、上記軸受装置の異常検出や、この軸受装置を組み込んだ機械装置の運転制御等を行なう。
【0031】
上述の様に構成し作用する本例の中継器2aの場合、この中継器2aを構成する信号処理回路6aは、前記ケーシング7aの内側に、このケーシング7aの端部開口を通じて挿入している。これと共に、上記センサ側、制御器側各ケーブル4、5を、上記ケーシング7aの外部に、それぞれこのケーシング7aの両端開口を通じて引き出している。従って、本例の場合、上記ケーシング7aの密封性を確保する為のシール構造を設けるべき個所は、このケーシング7aのうち、上記センサ側、制御器側各ケーブル4、5の引き出し部のみとなる。即ち、本例のケーシング7aには、前述した従来構造のケーシング7に設けられていた様な、信号処理回路を出し入れする為にのみ用いる開口部が存在しない。この為、この開口部とこの開口部を塞ぐ蓋体との突き合わせ部に設けるシール構造を省略する事ができる。この様に本例の中継器2aの場合には、上記ケーシング7aに設けるべきシール構造の数(このケーシング7aの密封性を損なう要因の数)を少なくする事ができる為、密封性を向上させる事ができる。
【0032】
又、本例の場合には、上述の様に中継器2aを構成するケーシング7aの密封性と、このケーシング7aの内部に収納した信号処理回路6aの耐衝撃性とを、それぞれ十分に確保できる為、上記中継器2aを、前記センサヘッド1と共に劣悪な環境(清浄度が悪く、振動を受け易い環境)に設置する事ができる。言い換えれば、上記中継器2aを、上記センサヘッド1の近傍に配置する事ができる。この為、これら中継器2aとセンサヘッド1とを結ぶセンサ側ケーブル4の長さを短くする事ができる。この結果、上記中継器2aを構成する信号処理回路6aに入力されるセンサの出力信号のSN比を向上させる事ができ、軸受装置の異常検出や機械装置の運転制御を高精度で行なう事ができる。
【0033】
尚、上述した第1例では、上記信号処理回路6aの耐衝撃性を確保する為、この信号処理回路6aを構成する回路基板8をケーシング7aの内周面に対し、ゴムブッシュ10等の弾性体を介して支持している。但し、本発明を実施する場合、中継器を設置する場所の環境が良い(振動が殆ど生じない)場合には、上記回路基板8を上記ケーシング7aの内周面に直接若しくは他の剛体部材を介して支持する事もできる。但し、この場合でも、上記内周面に対する上記回路基板8のずれ止めを図るべく、この回路基板8をこの内周面に対し、直接又は他の剛体部材を介して、接着、ねじ止め等するのが好ましい。
【0034】
又、上述した第1例を実施する場合、前記各ケーブルグランド11、11は、保護等級としてIP68以上の規格に準拠したものを使用するのが、防塵・防水性を十分に確保する上で好ましい。但し、中継器を設置する場所の環境(清浄度等)が良い場合には、配電盤に用いられる様な凡用品を使用して、中継器の低廉化を図る事もできる。又、上述した第1例では、上記各ケーブルグランド11、11の先端部を上記ケーシング7aの両端部に螺合したが、これら両部材11、7a同士が不用意に分離するのを防止できるのであれば、単に嵌合(内嵌)する構造としても良い。又、何れの場合も、螺合部又は嵌合部に接着剤を塗布する事により、これら螺合部又は嵌合部の緩み止めと密封性の向上とを図る事ができる。
【0035】
又、上述した第1例では、上記センサ側、制御器側各ケーブル4、5を上記ケーシング7aの外部に、それぞれ上記各ケーブルグランド11、11を通じて引き出している。但し、本発明を実施する場合には、請求項2に記載した発明の様に、上記センサ側、制御器側各ケーブル4、5のうちの少なくとも一方のケーブル4(5)の他端を、上記ケーシング7aの端部開口を密封する状態でこの開口部に取り付けたコネクタ(を構成する端子)に接続する事もできる。この場合、このコネクタには、前記センサヘッド1又は制御器に接続した別のケーブルの端部に固定した別のコネクタを、必要に応じて接続・分離可能とする。この様な構成を採用すれば、運転状態を確認すべき装置のメンテナンス時等、上記センサヘッド1又は制御器に接続した別のケーブルから本発明の中継器を分離する必要がある場合に、この分離作業を行なえる。
【0036】
[実施の形態の第2例]
次に、図3は、請求項1〜6に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、中継器2bを構成するケーシング7aの外周面を、1対のケーブルグランド11、11の外周面、及び、センサ側、制御器側各ケーブル4、5のうちこれら各ケーブルグランド11、11から外部に引き出された一部分の外周面と共に、被覆材である熱収縮チューブ19により覆っている。この熱収縮チューブ19は、熱収縮性を有する合成樹脂(ポリオレフィン等)により全体を筒状に構成したもので、使用前の状態では、上記ケーシング7aの外径寸法よりも大きい内径寸法を有する。この様な熱収縮チューブ19により上記各部材7a、11、4、5の外周面を覆う場合には、上記使用前の熱収縮チューブ19を上記各部材7a、11、4、5の周囲に配置した状態で、この熱収縮チューブ19に熱を加える。この作業により、この熱収縮チューブ19を径方向に熱収縮させて、この熱収縮チューブ19の内周面を上記各部材7a、11、4、5の外周面に密着させる。これにより、本例の場合、上記センサ側、制御器側各ケーブル4、5の引き出し部の密封性を向上させると共に、中継器2b全体の耐衝撃性を向上させている。尚、本例を実施する場合、上記熱収縮チューブ19として、内周面に接着剤を塗布したものや、接着剤付きの裏張りを施してあるものを使用すれば、上記引き出し部の密封性を更に向上させる事ができる。その他の部分の構成及び作用は、上述した第1例の場合と同様である。
【0037】
尚、上述した第2例では、上記各部材7a、11、4、5の外周面を、熱収縮チューブ19により覆っている。但し、本発明を実施する場合には、これに代えて、上記各部材7a、11、4、5の外周面を、被覆材であるゴム系のディッピング材によりコーティングする事によっても、上述した第2例と同様の効果を得る事ができる。
【0038】
又、上記ケーシング7aを、金属バンド等の固定器具を用いて設置個所に固定する場合には、上記ケーシング7aの外周面のうち、上記固定器具を掛け渡す部分に上記被覆材を被せない様にすれば(或は、被せた後に切除すれば)、上記設置個所に対して上記ケーシング7aをしっかりと固定する事ができる。
【0039】
[実施の形態の第3例]
次に、図4は、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合、ケーシング7aの中間部外周面に、取付用ブラケット20、20を、溶接、接着等により固定している。この様な本例の場合には、これら各取付用ブラケット20、20を利用して、中継器2cを設置個所にしっかりと取り付ける事ができ、耐震性を十分に確保する事ができる。その他の部分の構成及び作用は、前述した第1例の場合と同様である。
【0040】
[実施の形態の第4例]
次に、図5は、やはり請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、ケーシング7aの内部に収納した信号処理回路(図示省略)に、無線による通信機能を付加し、且つ、このケーシング7aの内部に、一次電池や二次電池、或はスーパーキャパシタ等の電源(図示省略)を設けている。これと共に、上記信号処理回路から制御器に向け処理後の信号を送信する為の制御器側伝送手段として、送信アンテナ21を採用している。即ち、上記ケーシング7aの内部からこの送信アンテナ21を、ケーブルグランド11の内側を通じて外部に引き出している。これにより、この送信アンテナ21から上記制御器に向け、上記処理後の信号を無線送信できる様にしている。
【0041】
上述の様に構成し作用する本例の中継器2dの場合、この中継器2dと上記制御器とを結ぶ配線(電源供給用及び通信用の配線)を不要にできる為、配線費用の削減に基づく低廉化を図れる。又、本例の場合、上記中継器と上記制御器とを相対変位させても、断線の心配がない為、ルーパーキャリアやテンショナの様な可動する機械設備に用いられる軸受装置の異常判定を行なう場合に、有効に利用できる。又、本例を実施する場合、センサヘッド1に、回転速度に比例した周波数で交流状に変化する電圧をコイルに発生させる、パッシブ型の回転検出センサを内蔵すれば、この回転検出センサの出力信号(交流状に変化する電圧)を利用して、回転速度を検出できる他、上述した二次電池やスーパーキャパシタ等の電源を充電できる。この為、無線式でありながら、寿命が長く且つ信頼性の高い中継器2dを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
尚、本発明の中継器を組み込んで構成する、運転状態確認装置は、軸受装置に限らず、例えばボールねじやリニアガイド等の直動装置や、その他の各種装置の運転状態を確認する為にも利用する事ができる。
【0043】
本発明の運転状態確認装置用中継器は、以上に述べた様に構成され作用する為、内部に信号処理回路を収納したケーシングの密封性と、この信号処理回路の耐衝撃性とを、それぞれ十分に向上させる事ができる。この結果、本発明の中継器をセンサヘッドの近傍に配置する事で、センサ側伝送手段(例えば、ケーブル)を短くする事ができ、上記中継器に入力される出力信号のSN比を良好にできる。従って、軸受装置等の対象装置の異常検出や運転制御を精度良く行なう事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、部分切断側面図。
【図2】図1のA−A拡大断面図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す、部分切断側面図。
【図4】同第3例を示す側面図。
【図5】同第4例を示す側面図。
【図6】従来から知られている運転状態確認装置の略図。
【符号の説明】
【0045】
1 センサヘッド
2、2a、2b、2c、2d 中継器
3 制御器
4 センサ側ケーブル
5 制御器側ケーブル
6、6a 信号処理回路
7、7a ケーシング
8 回路基板
9 電子部品
10 ゴムブッシュ
11 ケーブルグランド
12 本体
13 シール材
14 雄ねじ部
15 雌ねじ部
16 鍔部
17 シール材
18 充填材
19 熱収縮チューブ
20 取付用ブラケット
21 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転状態確認装置を構成するセンサの出力信号を制御器に送り込むのに先立ち、この出力信号に所定の処理を施す信号処理回路と、この信号処理回路を収納するケーシングとを備えた運転状態確認装置用中継器に於いて、上記ケーシングとして、その軸方向端部開口からその内側に上記信号処理回路を挿入自在な管を使用している事を特徴とする運転状態確認装置用中継器。
【請求項2】
センサの出力信号を信号処理回路に送り込む為のセンサ側伝送手段の一端と、この信号処理回路から制御器に向けて処理後の信号を送り出す為の制御器側伝送手段の一端とを、それぞれ上記信号処理回路に接続すると共に、これらセンサ側、制御器側各伝送手段を、ケーシングの軸方向端部開口を密封する為にこの開口部に取り付けた筒状の密封装置の内側を通じて、又は、上記ケーシングの軸方向端部開口を密封する状態でこの開口部に取り付けたコネクタを介して、上記ケーシングの外部に引き出している、請求項1に記載した運転状態確認装置用中継器。
【請求項3】
信号処理回路を構成する為の回路基板を、弾性体を介してケーシングの内面に支持している、請求項1〜2の何れかに記載した運転状態確認装置用中継器。
【請求項4】
ケーシングの内部に、信号処理回路に無害な充填材を充填し、この充填材によりこの信号処理回路の少なくとも一部を覆っている、請求項1〜3の何れかに記載した運転状態確認装置用中継器。
【請求項5】
ケーシングの内部に充填する充填材の容量を、常温時で、このケーシングの内部に存在する空間の容積の60〜95%とした、請求項4に記載した運転状態確認用中継器。
【請求項6】
ケーシングを、このケーシングの軸方向端部開口を密封する部材及びこの軸方向端部開口を通じてこのケーシングの外部に突出したセンサ側、制御器側各伝送手段の一部と共に被覆材により覆った、請求項1〜5の何れかに記載した運転状態確認装置用中継器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−39793(P2008−39793A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242067(P2007−242067)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【分割の表示】特願2003−208007(P2003−208007)の分割
【原出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】