説明

軸受装置

【課題】定着装置の定着ローラと加圧ローラのように互いに近接される方向に押圧される一対の回転体を小型の軸受で支持する。
【解決手段】軸受装置22A,22Bは、定着ローラ11Aや加圧ローラ11Bの回転軸12aの外周面に対してその外周面が当接する少なくとも一対の軸受26A〜26Dを備える。軸受26A〜26Dは、定着ローラ11Aと加圧ローラ11Bの軸線を結ぶ線L1に対して直交し、かつこれらの軸線を通る互いに平行な線L2,L3により挟まれる領域よりも外側に配置される。それぞれ軸受26A〜26Dを先端側に備える一対のアーム37A〜37Dの基端側は、連結機構38によって回転角度位置が調節可能な状態で互い連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに近接する方向に押圧される一対の回転体のうち、少なくとも一方を回転自在に支持する軸受装置に関する。特に、本発明は、画像形成装置の定着装置が備えるローラの支持に適した軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置の定着装置として、互いに圧接されて状態で回転する一対のローラを備え、これらのローラ間に形成されたニップ部に記録媒体を通すことで、記録媒体上の現像剤像を加熱及び加圧により定着させるものが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、定着装置のローラは図17及び図18で示す機構によって回転自在に支持されている。これらの図において、1Aは定着ローラ、1Bは加圧ローラであり、それぞれ円筒状の芯金2の外周面に弾性体層3を備えると共に、芯金2の内部にハロゲンヒータ等のヒータ4を備えている。また、芯金2の両端部には回転軸2aが形成されている。定着ローラ1Aの回転軸2aは、定着装置のフレーム5の一部を構成する側板5aに取り付けられた転がり軸受6Aによって回転自在に支持されている。側板5bに対して支軸7回りに回転自在であって、かつばね8によって付勢された加圧レバー9が設けられ、この加圧レバー9に取り付けられた転がり軸受6Bによって加圧ローラ1Bが回転自在に支持されている。詳細には、各転がり軸受6A,6Bのアウターレース6aが側板5aや加圧レバー9に固定され、インナーレース6bが定着ローラ1Aや加圧ローラ1Bの回転軸2aに固定されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−123235号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定着ローラ1Aや加圧ローラ1Bの回転軸2aは軸径が20〜30mm程度の大径の軸であるので、それに対応して転がり軸受6A,6Bも内径が20〜30mmの比較的大型のものを使用する必要がある。内径が6〜8mm程度である比較的小型の転がり軸受と比較すると、内径が20〜30mm程度の転がり軸受は高価である。また、定着装置は高温となるので、転がり軸受6A,6Bに耐熱グリスを充填する必要があり、大型の転がり軸受を使用すると多量の耐熱グリスが必要となる。さらに、定着ローラ1Aや加圧ローラ1Bの回転軸2aの軸径が異なれば、それに対応する内径の転がり軸受6A,6Bを使用する必要があるので、転がり軸受の管理が煩雑である。これらの問題は、定着装置における定着ローラや加圧ローラに限らず、一対の回転体を備える種々の装置について共通している。
【0006】
前記従来の問題に鑑み、本発明は、互いに近接される方向に押圧される一対の回転体を比較的小型の軸受で支持することを課題としている。また、本発明は、回転軸の軸径が異なる回転体間で軸受を共用可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、互いに近接する方向に押圧される一対の回転体のうち、少なくとも一方を回転自在に支持する軸受装置であって、前記回転体の回転軸の外周面に対してその外周面が当接する少なくとも2個の軸受を備え、前記一対の回転体の軸線を結ぶ線に対して直交し、かつ前記一対の回転体の軸線を通る互いに平行な線により挟まれる領域よりも外側に、前記軸受が配置され、それぞれ前記軸受を先端側に備える一対のアームと、前記一対のアームの基端側を、回転角度位置を調節可能に互い連結する連結機構とを備えることを特徴とする、軸受装置を提供する。
【0008】
本発明の第2の態様は、互いに近接する方向に押圧される一対の回転体のうち、少なくとも一方を回転自在に支持する軸受装置であって、前記回転体の回転軸の外周面に対してその外周面が当接する少なくとも2個の軸受を備え、前記一対の回転体の軸線を結ぶ線に対して直交し、かつ前記一対の回転体の軸線を通る互いに平行な線により挟まれる領域よりも外側に、前記軸受が配置され、それぞれ前記軸受を先端側に備える一対のアームと、前記一対のアームの他端側を、互いに回転可能に支持する支持機構と、前記一対のアームを前記回転体の回転軸に向けて弾性的に付勢する弾性手段とを備えることを特徴とする、軸受装置を提供する。
【0009】
前記軸受は、転がり軸受であってもすべり軸受であってもよい。また、前記一対の回転体は互いに圧接されていてもよいし、これらの間に例えば無端ベルトのような他の部材が介在していてもよい。
【0010】
本発明の軸受装置は、回転体の回転軸の外周面に当接する軸受によって回転体を支持するので、回転軸の外径が大きい場合であっても、外径が比較的小さい軸受により回転体を支持することができる。
【0011】
前記回転体の例としては、記録媒体に形成された現像剤を加熱及び加圧によって定着させる定着装置が備える一対のローラがある。この一対のローラは、互いに圧接されてニップ部を形成する定着ローラと加圧ローラであってもよく、定着ベルトを介して互いに近接される方向に押圧される定着ローラと加圧ローラであってもよい。この種のローラの回転軸は20〜30mm程度の大径の軸であるので、軸自体に軸受を取り付けて支持する場合、内径の大きい高価な軸受を使用する必要がある。また、定着装置は高温となるので、軸受として転がり軸受を使用する場合に耐熱グリスを充填する必要があり、大径の転がり軸受であれば、それに応じて多量の耐熱グリスを使用する必要がある。これに対して、本発明を適用することで、安価な小径の軸受を使用することができ、軸受として転がり軸受を使用する場合には、耐熱グリスの充填量を低減することができる。
【0012】
前記回転体の回転軸の外周長は、前記軸受の外周長の非整数倍であることが好ましい。一般に回転体の回転軸や軸受の外周には微少な誤差があるので、それらの回転角度位置によって微少な変位(ふれ)がある。しかし、回転軸の外周長を軸受の外周長の非整数倍とすると、回転軸のふれ周期と軸受のふれ周期が同期しないので、回転体の回転むらを抑制することができる。特に、回転体が定着装置のローラである場合には、回転むらの抑制によって画像ノイズが低減される。
【0013】
前記回転体の回転むらを抑制するには、回転軸を支持する軸受の外周長を互いに異ならせ、かつ各軸受を外周長を他の軸受の外周長の非整数倍とすることが好ましい。
【0014】
第1の態様では、それぞれ前記軸受を先端側に備える一対のアームと、前記一対のアームの基端側を、回転角度位置を調節可能に互い連結する連結機構を備える。一対のアームのなす角度を変更して軸受の位置を調整することができるので、径が異なる種々の回転体の回転軸で軸受装置を共用することができる。
【0015】
第2の態様では、それぞれ前記軸受を先端側に備える一対のアームと、前記一対のアームの他端側を、互いに回転可能に支持する支持機構と、前記一対のアームを前記回転体の回転軸に向けて弾性的に付勢する弾性手段とを備える。先端に軸受を備えるアームが弾性手段によって回転軸に向けて付勢されるので、回転体の回転軸の外周面に対して軸受の外周面が確実に当接する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軸受装置では、互い近接する方向に押圧される回転体の少なくとも一方を、回転体の回転軸の外周面に対してその外周面が当接する少なくとも2個の軸受で支持するので、回転体の回転軸の外径が大きい場合であっても、外径が比較的小さい軸受により回転体を支持することができる。また、回転体の回転軸の外周長を軸受の外周長の非整数倍とすれば、回転軸のふれ周期と軸受のふれ周期が同期しないので、回転体の回転むらを抑制することができる。さらに、基端側が連結機構によって回転角度位置を調節可能に連結された一対のアームの先端側に軸受を設けることにより、径が異なる種々の回転体の回転軸間で軸受装置を共用することができる。さらにまた、基端側が支持機構によって回転可能に支持された一対のアームの先端に軸受を設け、これらのアームを弾性手段によって回転体に向けて弾性的に付勢することにより、回転体の回転軸の外周面に対して軸受の外周面を確実に当接させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図面に示す実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1から図3は、本発明の第1実施形態に係る軸受装置を備える定着装置を示している。定着装置は、定着ローラ11Aと加圧ローラ11Bとを備えている。定着ローラ11A及び加圧ローラ11Bは円筒状の芯金12を備え、芯金12の外周に弾性体層13が設けられている。また、芯金12内にはハロゲンヒータ等のヒータ14がそれぞれ収容されている。芯金12の両端部には回転軸12aが設けられている。この回転軸12aは芯金12の弾性体層13が設けられた部分よりも小径であり、外径が20〜30mm程度である。定着ローラ11Aの回転軸12aは定着装置のフレーム15の一部を構成する側板15aに回転自在に支持され、加圧ローラ11Bの回転軸12aは加圧レバー17に回転自在に支持されている。
【0019】
加圧レバー17の一端は側板15bから突出する支軸18に一端が回転自在に支持されている。一方、加圧レバー17の他端には係止孔17aが設けられ、この係止孔17aにばね19の一端が係止されている。ばね19の他端はフレーム15に固定されたばね受け20に係止されている。図1において矢印F1で示すように、ばね19により加圧レバー17に対して弾性的な付勢力が作用し、この付勢力により定着ローラ11Aと加圧ローラ11Bが互いに圧接されてニップ部21が形成されている。図示しない回転駆動機構によって定着ローラ11Aと加圧ローラ11Bが回転している状態で、未定着の現像剤像101が形成された記録媒体100がニップ部21を通過すると、加圧及び加熱によって現像剤像101が記録媒体100に定着する。
【0020】
定着ローラ11Aの回転軸12aを支持する軸受装置22Aについて説明すると、側板15aにかしめ等により一対の支持軸24A,24Bが固定され、これらの支軸軸24A,24Bにそれぞれ転がり軸受26A,26Bが取り付けられている。各転がり軸受26A,26Bの外周面は定着ローラ11Aの回転軸12aの外周面に当接している。詳細には、各転がり軸受26A,26Bはインナーレース26aが支持軸24A,24Bに固定され、転動体26cによりインナーレース26aに対して回転自在であるアウターレース26bが回転軸12aの外周面に対して当接している。従って、定着ローラ11Aの回転軸12aは、その外周面が転がり軸受26A,26Bにより転がり支持されている。
【0021】
加圧ローラ11Bの回転軸12aを支持する軸受装置22Bは定着ローラ11Aの回転軸12aを支持する軸受装置22Aと同様の構成であり、加圧ローラ11Bの回転軸12aはその外周面が転がり軸受26C,26Dにより転がり支持されている。詳細には、加圧レバー17にかしめ等により一対の支軸24C,24Dが固定され、これらの支軸軸24C,24Dに転がり軸受26C,26Dのインナーレース26aが固定されている。転動体26cによりインナーレース26aに対して回動自在のアウターレース26bはその外周面が回転軸12aの外周面に対して当接している。
【0022】
前述のように、定着ローラ11Aと加圧ローラ11Bはばね19の弾性的な付勢力により互いに圧接されているので、定着ローラ11Aを支持する転がり軸受26A,26Bは、加圧ローラ11Bから定着ローラ11Aに作用する付勢力を受け止めるように配置する必要がある。同様に、加圧ローラ11Bを支持する転がり軸受26C,26Dは、反作用により定着ローラ11Aから加圧ローラ11Bに作用する力を受け止めるように配置する必要がある。詳細には、定着ローラ11Aの軸線と加圧ローラ11Bの軸線を結ぶ線L1に対して直交し、かつ定着ローラ11Aや加圧ローラ11Bの軸線を通る互いに平行な2本の線L2,L3に挟まれる領域の外側に、各転がり軸受26A〜26Dを配置する必要がある。
【0023】
前述のように定着ローラ11A及び加圧ローラ11Bの回転軸12aは軸径が20〜30mm程度で比較的大径であるが、転がり軸受26A〜26Dはその外周面が回転軸12aの外周面に当接することで回転軸12aを支持するので、内径が6〜8mm程度の小径で安価な転がり軸受を使用することができる。また、各転がり軸受26A〜26Dが小型であるので、耐熱グリスの充填量も低減することができる。
【0024】
前記転がり軸受26A〜26Cに代えてすべり軸受(ころ)を使用してもよい。すなわち、図4及び図5に示すように、支持軸24A〜24Dに対しすべり軸受28A〜28Dを挿入し、抜け止め用のリング部材27を取り付けてもよい。この場合も、内径が6〜8mm程度の小型で安価なすべり軸受28A〜28Dを使用することができる。すべり軸受28A〜28Dの材質は特に限定されないが、例えば耐熱性及び耐磨耗性の良好な樹脂を使用することができる。転がり軸受に代えてすべり軸受を使用できる点は、以下の第2実施形態から第10実施形態においても同様である。
【0025】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態を示している。定着ローラ11Aの軸受装置22Aが備える転がり軸受26A,26Bの外径d1,d2は、定着ローラ11Aの回転軸12aの外周長が、転がり軸受26A,26Bの外周長の非整数倍となるように設定されている。すなわち、定着ローラ11Aの回転軸12aの外径をDとすると、π*D≠n*π*d1(nは整数)、かつπ*D≠n*π*d2なる関係を満すように、転がり軸受26A,26Bの外径d1,d2を設定している。同様に、加圧ローラ11Bの軸受装置22Bが備える転がり軸受26C,26Dの外径d3,d4は、加圧ローラ11Bの回転軸12aの外周長が転がり軸受26C,26Dの外周長の非整数倍となるように設定している。すなちわ、定着ローラ11Aと同じく加圧ローラ11Bの回転軸12aの外径がDであれば、π*D≠n*π*d3(nは整数)、かつπ*D≠n*π*d4なる関係を満たすように、転がり軸受26C,26Dの外径d3,d4を設定している。
【0026】
一般に回転軸12aや転がり軸受26A〜26Cの外周は完全な真円ではなく微少な誤差があるので、これらの回転角度位置によって外周には微少な変位(ふれ)がある。従って、例えば定着ローラ11Aの回転軸12aの外周長が転がり軸受26A〜26Dの外周長の整数倍であると、両者の接触点における回転軸12aの外周のふれ周期と転がり軸受の外周のふれ周期が同期し、その結果、回転軸12aに対して径方向の周期的な負荷が作用して回転むらを引き起こす。しかし、回転軸12aの外周長が転がり軸受26A〜26Dの外周長の非整数倍であれば、回転軸12aと転がり軸受26A〜26Dの接触点における回転軸12aのふれ周期と転がり軸受26A〜26Dのふれ周期が同期せず、その結果、回転軸12aに対して非周期的に径方向の負荷が作用する。従って、定着ローラ11Aや加圧ローラ11Bの回転むらが抑制され、回転むらに起因する画像ノイズが低減される。
【0027】
第2実施形態では、定着ローラ11Aの軸受装置22Aが備える2個の転がり軸受26A,26Bの外径d1,d2を互いに異ならせている。また、外径が大きい方の転がり軸受26Bの外周長が、外径が小さい方の転がり軸受26Aの外周長の非整数倍となるように、2個の転がり軸受26A,26Bの外径d1,d2を設定している。すなわち、π*d2≠n*π*d1(nは整数)なる関係を満たすように、転がり軸受26A,26Bの外径d1,d2を設定している。同様に、加圧ローラ11Bの軸受装置22Bが備える転がり軸受26C,26Dの外径d3,d4を異ならせ、外径d大きい方の転がり軸受26Dの外周長が、外径が小さい方の転がり軸受26Cの外周長の非整数倍となるように、転がり軸受26C,26Dの外径d3,d4を設定している。
【0028】
同一の回転軸12aを支持する転がり軸受26A,26Bや転がり軸受26C,26Dの外径を異ならせ、かつ外径が大きい方の転がり軸受26B,26Dの外周長を外径が小さい方の転がり軸受26A,26Cの外周長の非整数倍に設定することにより、転がり軸受26A〜26Dのふれ周期の同期に起因する定着ローラ11Aや加圧ローラ11Bの回転軸12aの回転むらを抑制し、この回転むらに起因する画像ノイズを低減することができる。
【0029】
第2実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
(第3実施形態)
図7は本発明の第3実施形態を示している。軸受装置22A,22Bは、前記第1実施形態と同様に配置された転がり軸受26A〜26Bに加え、3個目の転がり軸受26E,26Fをそれぞれ備えている。これらの転がり軸受26E,26Fはそれぞれ定着ローラ11Aの軸線と加圧ローラ11Bの軸線とを結ぶ線L1上に配置されている。
【0031】
定着ローラ11Aの軸受装置22Aが備える3個目の転がり軸受26Eは、側板15aに対して定着ローラ11Aと加圧ローラ11Bの圧接方向に移動可能な支持軸24Eに取り付けられている。また、この支軸軸24Eと側板15aに設けたばね受け31Aの間にばね32Aが圧縮状態で配置されている。転がり軸受26Eはばね32Aによって回転軸12aに向けて弾性的に付勢され、それによって転がり軸受26Eの外周面が回転軸12aの外周面に確実に当接する。
【0032】
同様に、加圧ローラ11Bの軸受装置22Bが備える3個目の転がり軸受26Fは、加圧レバー17に対して定着ローラ11Aと加圧ローラ11Bの圧接方向に移動可能な支持軸24Fに取り付けられ、この支軸軸24Fと加圧レバー17に設けられたばね受け31Bの間にばね32Bが圧縮状態で配置されている。転がり軸受26Fはばね32Bの付勢力によりその外周面が回転軸12aの外周面に確実に当接する。
【0033】
第3実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
(第4実施形態)
図8は本発明の第4実施形態を示している。各軸受装置22A,22Bの3番目の転がり軸受26E,26Fを支持する支持軸24E,24Fは、側板15aや加圧レバー17に対して固定して設けられている。転がり軸受26E,26Fの外周面にゴム等の弾性材料からなる弾性体層33を設け、それによって3番目の転がり軸受26E,26Fを他の転がり軸受26A〜26Dと同様に回転軸12aの外周面に確実に当接させている。第4実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
(第5実施形態)
図9は本発明の第5実施形態を示している。各軸受装置22A,22Bはそれぞれ2個の転がり軸受26A〜26Dを備え、これらの転がり軸受26A〜26Dの外周面をポリアミドイミドのような耐熱樹脂で被覆して断熱層34を設けている。定着ローラ11Aや加圧ローラ11Bが内蔵するヒータ14の発生する熱が、芯金12から回転軸12aを経て金属製の転がり軸26A〜26Dに伝わり、それによって熱が逃げる。転がり軸受26A〜26Dの外周面に断熱層34を設けることで、この熱の逃げを防止することができる。また、断熱層34は耐熱樹脂製であるので、回転軸12aの外周面と転がり軸受26A〜26Dの外周面の間の摩擦が高まり、これらの間の微細な滑りを防止することができる。
【0036】
第5実施形態における転がり軸受26A〜26Dに断熱層34を設ける構成は、前記第1から第4実施形態にも適用することができる。第5実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
(第6実施形態)
図10は本発明の第6実施形態を示している。定着ローラ11A及び加圧ローラ11Bの回転軸12aにそれぞれカラー35を取り付けている。カラー35の材質としては、例えばポリアミドイミド等の耐熱性樹脂を使用することができる。この場合、カラー35は断熱性を有するので、ヒータ14の発生した熱が回転軸12aから転がり軸受26A〜26Dに伝わるのを抑制することができる。また、カラー35は、浸炭窒化処理等の熱処理を施した金属製であってもよい。この場合、カラー35は耐磨耗性を有するので、回転軸12aの外周面の磨耗を防止することができる。
【0038】
第6実施形態における回転軸12aにカラー35を取り付ける構成は、前記第1から第5実施形態にも適用することができる。第6実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
(第7実施形態)
図11は本発明の第7実施形態を示している。第1から第6実施形態では、定着ローラ11A及び加圧ローラ11Bの芯金12の両端を縮径して回転軸12aを形成している(例えば図2に参照)。これに対して第7実施形態では、芯金12の両端を縮径せず単に弾性体層13をなくすことで回転軸12aを形成している。すなわち、回転軸12aの外周面が芯金12の外周面と同一面となっている。従って、回転軸12aの外径は芯金12と同じ20〜40mm程度となり大径の軸となる。しかし、各軸受装置22A,22Bは外周面に当接する転がり軸受26A〜26Dで回転軸12aを支持するので、前記第1から第6実施形態と同様に外径が6〜8mm程度の小型の転がり軸受によって回転軸12aを支持することができる。
【0040】
(第8実施形態)
図12及び図13は本発明の第8実施形態を示している。定着ローラ11Aの軸受装置22Aは、それぞれ転がり軸受24A,24Bを先端側に備える一対のアーム37A,37Bを備えている。各アーム37A,37Bの先端には支軸軸37a,37bが設けられ、これらの支持軸37a,37bにそれぞれ転がり軸受26A,26Bのインナーレース26aが固定されている。一方、アーム37A,37Bの基端側は連結機構38によって回転角度位置を調節調節可能に互いに連結されている。アーム37A,37Cは、例えばPPSのような耐熱性を有する樹脂からなる。図13を参照して連結機構38について説明すると、一方のアーム37Aの基端側に短円状部の軸部37cが設けられ、他方のアーム37Bの基端側にはこの軸部37cが回転自在に挿入される軸孔37dが設けられている。軸部37cに設けられたねじ孔37eには、固定用のねじ41Aが螺合している。このねじ41Aを緩めると軸部37cを支点してアーム37A,37Bの回転角度位置を調節することができ、ねじ41Aを締め付けることでアーム37A,37Bの回転角度位置を固定することができる。また、各アーム37A,37Bの先端側も、それぞれねじ41B,41Cによって側板15aに対して固定できるようなっている。
【0041】
加圧ローラ11Bの軸受装置22Bは、定着ローラ11Aの軸受装置22Aと同様の構造であり、それぞれ転がり軸受26C,26Dを先端側に備える一対のアーム37C,37Dと、アーム37C,37Dの基端側を回転角度位置を調節可能に連結する連結機構38とを備えている。
【0042】
本実施形態の軸受装置22A,22Bは、回転軸12aの軸径が異なる定着ローラ11Aや加圧ローラ11B間で共用することができる。この点について説明すると、例えば図12に示すように定着ローラ11Aや加圧ローラ11Bの回転軸12aの軸径が比較的大きい場合には、それに対応して各軸受装置22A,22Bのアーム37A,37Cやアーム37C,37Dがなす角度θを大きく設定し、図14に示すように定着ローラ11Aや加圧ローラ11Bの回転軸12aの軸径が比較的小さい場合には、それに対応してアーム37A〜37Dがなす角度θを小さく設定すればよい。
【0043】
(第9実施形態)
図15は本発明の第9実施形態を示している。定着ローラ11Aの軸受装置22Aは第8実施形態のものと同一である。加圧ローラ11Bの軸受装置22Bは、それぞれ先端に転がり軸受26C,26Dを取り付けたアーム37C,37Dを備え、これらのアーム37C,37Dの他端側は加圧レバー17に対して固定された支軸42に対して回転自在に支持されている。また、加圧レバー17には各アーム37C,37Dに対応してばね受け43A,43Bを設けており、各アーム37C,37Dとばね受け43A,43Bとの間にはばね44A,44Bが圧縮状態で配置されている。アーム37A,37Bがばね44A,44Bにより加圧ローラ11Bに向けて付勢されるので、回転軸12aの外周面に対して転がり軸受26A,26Bの外周面が確実に当接する。
【0044】
(第10実施形態)
図16に示す第10実施形態は、本発明を定着ベルト型の定着装置に適用した例である。図16において、11Cはヒータ14を内蔵した加熱ローラであり、この加熱ローラ11Cと定着ローラ11Aに定着ベルト51が掛け渡されている。定着ローラ11Aに対して加圧ローラ11Bが付勢され、両者は定着ベルト51を介して互いに押圧されている。加圧ローラ11Bは第1実施形態のものと同様の軸受装置22Bにより支持されており、加圧レバー17に取り付けられた2個の転がり軸受26C,26Dの外周面が加圧ローラ11Bの回転軸12aの外周面に当接し、それによって加圧ローラ11Bが回転自在に支持されている。
【0045】
本発明は定着装置が備えるローラに限らず、互いに近接する方向に押圧される一対の回転体のうち、少なくとも一方を回転自在に支持する軸受装置に適用することができる。例えば、感光体ドラム、転写ドラム等に本発明の軸受装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線での断面図である。
【図3】図1の部分拡大斜視図である。
【図4】軸受の他の例を示す断面図である。
【図5】軸受の他の例を示す部分分解斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図8】本発明の第4実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図9】本発明の第5実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図10】本発明の第6実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図11】本発明の第7実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図12】本発明の第8実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線での断面図である。
【図14】図12の軸受装置を他の定着装置に使用した例を示す正面図である。
【図15】本発明の第9実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図16】本発明の第10実施形態の軸受装置を備える定着装置を示す正面図である。
【図17】従来の定着装置を示す正面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線での断面図である。
【符号の説明】
【0047】
11A 定着ローラ
11B 加圧ローラ
11C 加熱ローラ
12 芯金
12a 回転軸
13 弾性体層
14 ヒータ
15 フレーム
15a,15b 側板
17 加圧レバー
17a 係止孔
18 支軸
19 ばね
20 ばね受け
21 ニップ部
22A,22B 軸受装置
24A,24B,24C,24D 支持軸
26A,26B,26C,26D 転がり軸受
26a インナーレース
26b アウターレース
26c 転動体
28A,28B,28C,28D すべり軸受
29 リング部材
31A,31B ばね受け
32A,32B ばね
33 弾性体層
34 断熱層
35 カラー
37A,37B,37C,37D アーム
38 連結機構
41A,41B,41C ねじ
42 支軸
43A,43B ばね受け
44A,44B ばね
51 定着ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接する方向に押圧される一対の回転体のうち、少なくとも一方を回転自在に支持する軸受装置であって、
前記回転体の回転軸の外周面に対してその外周面が当接する少なくとも2個の軸受を備え、
前記一対の回転体の軸線を結ぶ線に対して直交し、かつ前記一対の回転体の軸線を通る互いに平行な線により挟まれる領域よりも外側に、前記軸受が配置され、
それぞれ前記軸受を先端側に備える一対のアームと、
前記一対のアームの基端側を、回転角度位置を調節可能に互い連結する連結機構と
を備えることを特徴とする、軸受装置。
【請求項2】
互いに近接する方向に押圧される一対の回転体のうち、少なくとも一方を回転自在に支持する軸受装置であって、
前記回転体の回転軸の外周面に対してその外周面が当接する少なくとも2個の軸受を備え、
前記一対の回転体の軸線を結ぶ線に対して直交し、かつ前記一対の回転体の軸線を通る互いに平行な線により挟まれる領域よりも外側に、前記軸受が配置され、
それぞれ前記軸受を先端側に備える一対のアームと、
前記一対のアームの他端側を、互いに回転可能に支持する支持機構と、
前記一対のアームを前記回転体の回転軸に向けて弾性的に付勢する弾性手段と
を備えることを特徴とする、軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−224043(P2008−224043A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149414(P2008−149414)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【分割の表示】特願2003−31272(P2003−31272)の分割
【原出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【出願人】(503054672)ピー・アイ・ピー株式会社 (4)
【Fターム(参考)】