説明

軸受装置

【課題】連続鋳造機用ガイドロールにおいてラジアル荷重が大きい部位にもレイアウトフリーで適用できるロール軸受ユニットを提供する。
【解決手段】鋳片からローラ4に、ラジアル荷重が負荷された際に円筒ころ軸受で支持し、その際、軸方向にも作用するスラスト荷重に対して、例えば図3で左方にスラスト荷重が付与された場合には、右方の円筒ころ軸受12の内輪12bのフランジ部12eが、円筒ころ12cの外方端部に当接しスラスト荷重を支持するので、ローラ4の左方への移動を制限できる。これに対し、右方にスラスト荷重が付与された場合には、左方の円筒ころ軸受12の内輪12bのフランジ部12eが、円筒ころ12cの外方端部に当接しスラスト荷重を支持するので、ローラ4の右方への移動を制限できる。従って、スラスト荷重を一対の円筒ころ軸受12で支持することができ、固定側或いは自由側という概念がなくなり、レイアウトの自由度が広がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関し、特に鉄鋼設備の圧延ローラなどを支承するのに好適な軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所において、精練を終了した鋼は鋳造プロセスに送られる。溶鋼から直接鋼片をつくる連続鋳造機においてスラブ、ブルーム、ビレットなどが鋳造されることが多い。連続鋳造設備の概略は次のようなものである。まず、取鍋からタンディッシュに溶鋼が注がれ、最上部から鋳型に注がれる。そして鋳片表面には冷却水がスプレーされており、表層部が次第に凝固しながら鋳型の下方に向かって連続的に配置した複数のガイドロールによって後方に順次送り出されてゆく。その後、切断装置で所定の長さに切断され所定の製品サイズとなり次工程に搬送される。
【0003】
上記のような連続鋳造設備において用いられるロールは、鋳片から過大なラジアル荷重を受けて撓むので、かかるロールの端部を支持する軸受装置としては、調心性を有する自動調心ころ軸受が用いられることが多い。
【0004】
加えて、熱い鋳片からロールが加熱されることに起因して生じるロールの熱膨張への対応ならびにロールの軸方向の位置決めのため、ロールの一端を保持する軸受装置は固定状態(固定側)として用いるようにし、ロールの他端を支持する軸受装置は、ロールと外輪との軸線方向の相対変位を許容すべく、いわゆる自由状態(自由側)として用いる構造が一般的である。
【0005】
特許文献1に示すごとき自動調心ころ軸受は、重荷重を支持しつつ、高い調心性とスラスト荷重を支持する機能を併せ持つため、固定側及び自由側を問わず鉄鋼設備用ロールの支持として広く用いられている。
【特許文献1】特開2002−5156号公報
【特許文献2】特開平8−238549号公報
【特許文献3】特開昭63−40623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガイドロール用軸受には、鋳片からロールを介して過酷な荷重が負荷されるばかりでなく、周囲の環境は、赤熱した鋳片に冷却水がスプレーされるため水蒸気に覆われた高温多湿環境にある。そのため軸箱に備わるシールの劣化等も進行し、シールを通過して軸受内部へ水が侵入することもしばしば起こる。このため軸受内部が潤滑不良となりやすい。
【0007】
そのような過酷な使用条件下で広く採用されてきている自動調心ころ軸受は、差動すべりやスピンすべりと呼ばれる軸受内で幾何学的に発生する微小なすべりが生じるため、特に潤滑状態が悪い場合、異常摩耗が進行し、その後はく離が早期に生じる問題がしばしば起こる。
【0008】
特許文献1に示すごとき自動調心ころ軸受は、傾きを許容する大きな特徴を有する反面、上述した軸受損傷の問題を抱える。一方、一般的な円筒ころ軸受は、自動調心ころ軸受よりも負荷容量を大きな設計ができ、差動すべりやスピンすべりがないため摩耗による問題はないが、調心性がほとんどないため、撓み量が大きなロールを支持することができないという問題がある。
【0009】
これに対し、特許文献2内に示すように、円筒ころ軸受の外輪とハウジングとの間に調心輪を配置して、ロールの撓みに応じてハウジングに対して外輪を傾けることができる軸受装置が開発されている。
【0010】
しかしながら、本軸受装置では、内輪ところとが軸線方向に任意に相対変位できるので、ロールの固定側に用いることができないという問題がある。よって、特許文献2に示すようなころ軸受は自由側にセットし、固定側に自動調心ころ軸受をセットしたロールユニット構造が多く用いられている。また連続鋳造機のガイドロールは、1本ロールの両端に固定側、自由側用軸受として異なる軸受を配置したロールユニットが古くから用いられているが、近年では鋳片の精度向上のため、小径の短いロール2本〜3本を一列に配置した分割式のロールの構造が増えてきている。1・2・3分割ロール配置レイアウト図を図2(a)、図2(b),図2(c)に示す。
【0011】
このような分割式のロールの場合、鋳片と各ロール端部を支持する軸受の配置によって、荷重分担のばらつきが大きいことが知られており、特に異片の中央付近に配置する軸受の負荷が厳しくなることが知られている。
【0012】
2本ロールで構成した軸受の配置として、軸受荷重が厳しい中央部位の対策として特許文献2に示すごとく固定側に自動調心ころ軸受、自由側に円筒ころ軸受を用いて中央の荷重が厳しい部位をそれぞれ自由側に配置する対策などが考案され実用化されている。
【0013】
しかしながら、3分割ロールの場合では、中間に配置されるロールの荷重が両端とも厳しい荷重分担となるため、固定側に自動調心ころ軸受と自由側に円筒ころ軸受を組合せたロールユニット構造では、固定側の自動調心ころ軸受が上述
した理由により先に摩耗による損傷を引き起こす危険があり、特許文献2に示すようなロールの配置のみで対策を講じることが困難な場合がある。
【0014】
以上のように分割ロールにおけるロールユニットの場合、荷重分担が部位によって異なるため、ロール軸受ユニットの軸受形式と配置を十分に考慮した設計が必要となること及びレイアウト設計が複雑化する問題がある。
【0015】
さらに固定側と自由側で軸受形式が異なるため周囲部品の構造も異なりハウジング、軸受周りの部品を共通化が出来ず部品コスト高を招くことやメンテナンス性が悪く、さらに部品管理上の問題なども生じる。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、本来、求められる連続鋳造設備の設計におけるロール軸受ユニットの構造として、固定側、自由側に配置の制約を設けず、また前記ロールの分割数に限らず、レイアウトフリー化が図れるロール軸受ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の軸受装置は、連続鋳造設備に用いられ、ハウジングに対してロールの端部を回転自在に支持する軸受装置であって、
前記ハウジングに支持され、半径方向内方に延在する鍔部を軸線方向両端側に一体的に形成した外輪と、
前記ロールを支持し、半径方向外方に延在する鍔部を軸線方向の一方の端部側に形成した内輪と、
前記外輪と前記内輪の間に配置された複数の円筒ころと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
前記のように従来は、鋳片の幅を超える長さのロール1本で鋳片を圧延することが行われてきたが、近年は、鋳片の幅より小さなロールを複数用いた分割ロール構造が採用されるようになっている。かかる場合、例えば2分割のロール構造では、ロールの撓みが1本ロールよりはやや少なくなるが、多少の傾きも許容しつつ前記、荷重分担が部位によって異なるため、特許文献2にあるような調心機能を有しつつ負荷容量の大きい円筒ころ軸受をロールの両端に採用したいという要望がある。
【0019】
これに対し、3分割のロール構造ではロール全長の短縮化によるロールの撓みが大幅に小さくなるので、自由側と固定側とも調心輪を廃止したスペースを用いてさらに負荷容量を大きく設計された一般の円筒ころ軸受形式を用いたいという要請がある。
【0020】
ここで、特許文献2及び調心輪のない一般の円筒ころ軸受形式では、自由側用に用いられロールの熱膨張による軸方向への伸びをスムースに逃がすことが出来る反面、ロールの軸方向の移動を規制しつつ、そのスラスト力を支持することが出来ないため、固定側に用いることは出来ない。
【0021】
一方、特許文献3(特開昭63−40623号公報)に示すように、固定側用の内輪において軸方向の位置を規制しつつスラスト力を支持するため内輪端部に鍔を設けた構造なども考案されているが、固定側と自由側の軸受を共通仕様とする本発明の目的を達成することはできないという問題がある。
【0022】
本発明の軸受装置によれば、前記内輪に、半径方向外方に延在する鍔部を軸線方向の一方の端部側のみに一体的に形成しているので、前記外輪の鍔部によって保持された前記円筒ころが、前記内輪の鍔部に当接することで一方向のスラスト荷重を支持することができる。よって、かかる場合には、本発明の軸受装置は、前記ロールの固定側に配置することができる。一方、他方向にスラスト荷重を受けた場合には、前記鍔部が設けられていないことから、前記円筒ころと前記内輪との軸線方向における相対変位は許容される。よって、かかる場合には、本発明の軸受装置は、前記ロールの自由側の機能も併せ持つ。
【0023】
すなわち、本発明の軸受装置は、同じ軸受装置を、前記ロールの固定側にも自由側にも用いることが可能である。円筒ころ軸受の使用により負荷容量の増大を図りつつも、レイアウトフリ−のロール配置設計が出来ることとなり、部品点数の削減やコストの低減を図ることができる。
【0024】
前記内輪の鍔部は、前記ロールの軸線方向外側に配置されていると、例えば前記ロールが軸線方向左方にスラスト荷重を受けた場合、これを左方の軸受装置における内輪の鍔部で支持することができる。一方、前記ロールが軸線方向右方にスラスト荷重を受けた場合、これを右方の軸受装置における内輪の鍔部で支持することができる。即ち、同じ軸受装置を反転して用いることで、両方向のスラスト荷重を支持できる。又ロールの熱膨張による伸びが生じてもロール両端外側に配置した内輪鍔はお互いにころ端面から離れる方向に移動するのでスムースな軸伸びの逃がしを妨げとることはない。これによりロールの固定側又は自由側という概念が不要となり、軸受装置のレイアウトの自由度が大きく向上する。
【0025】
前記外輪の外周面は球面であり、前記外輪と前記ハウジングとの間には、前記外輪の外周面に対応した内周面を有する調心輪が配置されていると、撓みの大きなロールを支持するのに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる軸受装置を用いた連続鋳造設備の概略を示す斜視図である。図1に示す連続鋳造設備においては、図2(a)〜2(c)に示すいずれかの配置のローラユニットを用いることができる。
【0027】
図1において、溶融した鋳片FEが上部の導入部1から供給され、二列になった排出部2より鉛直方向可能に向かって板状に排出されるようになっている。板状の鋳片FEは、対向して配置されたローラユニット3の間を通過し、ローラにより徐々に板厚を調整され且つ徐々に水平になるよう方向付けされる。鋳片FEの両側に配置されたローラユニット3は、点線で概略図示されるようにチャンバ9により遮蔽されており、その内部は鋳片FEの高温と冷却用の水とに曝された劣悪な環境条件となっている。
【0028】
ローラユニット3は、鋳片FEの圧延用のローラ(ガイドロールともいう)4、4’と、ローラ4、4’の両端を支持する軸受装置10、10’とからなるセグメントを含む。ここでは、たとえば図2(a)〜図2(c)に示すように、5又は6本のローラからなるセグメントを組み合わせてなる一対のローラユニット3を鋳片FEの両側に対向して配置している。尚、図2(a)に示すローラ4’は、鋳片の幅より全長が長く1本ロールで構成したセグメントである。図2(b)に示すローラ4は、鋳片の幅より全長が短く2本で構成したセグメントユニットである。図2(c)に示すローラ4は、鋳片の幅より全長が短く3本で構成したセグメントユニットである。後述するように、本実施の形態では、ロール長さの異なる様々なロール配置に対してどの部位に組合わせて構成されても良い。
【0029】
図3は、鋳片FEを圧延する1本の短いローラ4を支持する軸受装置10、10の断面図である。本実施の形態においては、軸受装置10,10は同じものを使用するが、反転して用いており、よって片方についてのみ説明する。図3において、ローラ4は、鋳片FEを圧延する圧延部4aの軸線方向両側において、圧延部4aより小径であって同軸に配置された第1円筒部4bと、第2円筒部4cと、第3円筒部4dとを、この順序で圧延部4a側から設けている。
【0030】
図3において、下面を固定されたハウジング本体11の内部には、円筒部11aとシール保持部11bとが同軸に形成されている。円筒部11a内には、円筒ころ軸受12が配置されている。シール保持部11bには、シール13が配置されており、そのリップは第1円筒部4bに嵌合したラビリンス環14の外周に当接して密封している。ラビリンス環14は、周方向断面が略コ字状であって、対応する形状のハウジング本体11と微小隙間を持って組み合わせることで、非接触シールとしてのラビリンスシールを形成している。但しシール構造はこれに限定されるものではない。
【0031】
図4は、円筒ころ軸受12を拡大して示す図である。図4において、円筒ころ軸受12は、ハウジング本体11の内周に嵌合した外輪12aと、ローラ4の第2円筒部4cに嵌合した内輪12bと、外輪12aと内輪12bとの間に配置された複数の円筒ころ12cとからなる。外輪12aは、円筒ころ12cを間に挟むようにして、半径方向内方に延在する鍔部12d、12dを軸線方向両端に一体的に形成してなる。又、内輪12bは、半径方向外方に延在する鍔部12eを軸線方向の一方の端部(ここでは円筒ころ12cに対してローラ4の外側に近い端部)にのみ一体的に形成してなる。尚,12eと12c間には、わずかなすきまを与えることもある。尚、内輪12bの鍔部が設けられていない方の端部外周は、外方に向かうにつれて縮径するテーパ面12gとなっており、円筒ころ12cの挿入時における引っ掛かり等を抑制するようにしている。
【0032】
図3において、ハウジング本体11の第3円筒部4dの外周には、第2円筒部4cの端面に突き当てるようにして、環状部材15が嵌合配置され、ボルトBにより固定されている。固定方法はこれに限定されるものではなく、軸ナットによる固定する方法も取られる。円筒ころ軸受12の内輪12bは、第1円筒部4bの端面と、環状部材15とにより挟持されるローラ4に対して一体的に回転するように固定されている。尚、ハウジングの取り付け精度の関係でわずかに環状部材15と内輪12bの端面にすきまを与える構造をとることもある。
【0033】
ハウジング本体11に、ボルトBを用いてドーナツ板状の蓋部材16が取り付けられ外輪12aを固定している。蓋部材16の中央開口16aに配置されたシール17が、環状部材15に当接して密封している。ハウジング本体11と蓋部材16とで、ハウジングを構成する。尚、図示していないが、潤滑はグリースを給脂して使用する場合が多いがオイルエア潤滑装置から配管を介して、ハウジング内に潤滑油を含んだ適量の潤滑油が圧送され、円筒ころ12cを潤滑することが望ましい。
【0034】
図5は、鋳片FEを圧延する1本ロール4’などロールの撓みが大きいロールを支持する軸受装置10’、10’の断面図である。本実施の形態においては、軸受装置10’,10’は同じものを使用するが、反転して用いており、よって片方についてのみ説明する。軸受装置10’は、上述した軸受装置10に対して、円筒ころ軸受12’の構成のみが異なっているため、共通する構成については説明を省略する。但し、蓋部材16は、調心輪12fをハウジング本体11に固定している。
【0035】
図6は、円筒ころ軸受12’を拡大して示す図である。図6において、円筒ころ軸受12’は、ハウジング本体11の内周に嵌合した調心輪12fと、調心輪12fの内周に嵌合した外輪12aと、ローラ4の第2円筒部4cに嵌合した内輪12bと、外輪12aと内輪12bとの間に配置された複数の円筒ころ12cとからなる。調心輪12fの外周は円筒面であるが、その内周は球面となっている。一方、外輪12aの軌道面は円筒面であるが、その外周は、調心輪12fの内周面に対応した球面となっている。よって、ハウジング本体11に嵌合固定された調心輪12fに対して、外輪12aは球面に沿って摺動し傾き可能となっており、これにより調心機能を実現している。
【0036】
上述した円筒ころ軸受12と同様に、円筒ころ軸受12’において、外輪12aは、半径方向内方に延在する鍔部12d、12dを軸線方向両端に一体的に形成してなる。又、内輪12bは、半径方向外方に延在する鍔部12eを軸線方向の一方の端部(ここではローラ4に対して外側の端部)にのみ一体的に形成してなる。
【0037】
本実施の形態の動作について説明する。図1に示す連続鋳造設備において、鋳片FEの供給に応じて、ローラ4が毎分2〜3回転程度の極低速で回転する。ローラユニット3に設けられた軸受装置10、10’は、ハウジング本体11に対して円筒ころ軸受12、12’がローラ4、4’を回転自在に支持する。
【0038】
ここで、ローラ4の全長は、鋳片FEの幅よりも短いので撓み量が少なくなっており、大荷重を支持するときにも、ハウジング本体11に対する円筒ころ軸受12の内輪12bの傾きは小さいためエッジロードによる問題が発生することはない。一方、鋳片FEからローラ4に、例えば図3で左方にスラスト荷重が
付与された場合には、右方の円筒ころ軸受12の内輪12bのフランジ部12eが、円筒ころ12cの外方端部に当接し、かかるスラスト荷重を支持するので、ローラ4の左方への移動を制限できる。これに対し、鋳片FEからローラ4に、例えば図3で右方にスラスト荷重が付与された場合には、左方の円筒ころ軸受12の内輪12bのフランジ部12eが、円筒ころ12cの外方端部に当接し、かかるスラスト荷重を支持するので、ローラ4の右方への移動を制限できる。従って、ローラ4に付与される両方向のスラスト荷重を、一対の円筒ころ軸受12を用いて支持することができる。これにより、ローラ4を支持するに当たり、固定側或いは自由側という概念がなくなり、ローラ4及び軸受装置12のレイアウトの自由度が格段に広がる。更に、鋳片FEによりローラ4が加熱されて熱膨張が生じた場合には、左右の円筒ころ軸受12の内輪12bのフランジ部12eは、互いに離れる方向に変位することとなり、よってローラ4の熱膨張を逃がすことができる。
【0039】
これに対し、ローラ4’の全長は、鋳片FEの幅よりも長いので撓み量が比較的多くなるが、大荷重を支持する際に、調心輪12fに対して円筒ころ軸受12’の外輪12aが傾くので、エッジロード等の問題が発生することはない。円筒ころ軸受12’においても、鋳片FEからローラ4’に、例えば図5で左方にスラスト荷重が付与された場合には、右方の円筒ころ軸受12’の内輪12bのフランジ部12eが、円筒ころ12cの外方端部に当接し、かかるスラスト荷重を支持するので、ローラ4’の左方への移動を制限できる。これに対し、鋳片FEからローラ4’に、例えば図5で右方にスラスト荷重が付与された場合には、左方の円筒ころ軸受12’の内輪12bのフランジ部12eが、円筒ころ12cの外方端部に当接し、かかるスラスト荷重を支持するので、ローラ4’の右方への移動を制限できる。従って、ローラ4’に付与される両方向のスラスト荷重を、一対の円筒ころ軸受12’を用いて支持することができる。これにより、ローラ4’を支持するに当たり、固定側或いは自由側という概念がなくなり、ローラ4’及び軸受装置12’のレイアウトの自由度が格段に広がる。更に、鋳片FEによりローラ4’が加熱されて熱膨張が生じた場合には、左右の円筒ころ軸受12’の内輪12bのフランジ部12eは、互いに離れる方向に変位することとなり、よってローラ4’の熱膨張を逃がすことができる。
【0040】
図7は、本実施の形態の変形例にかかる軸受装置を示す図3と同様な断面図である。図8は、本実施の形態の変形例にかかる軸受装置を示す図5と同様な断面図である。本変形例においては、円筒ころ軸受12,12’共に、内輪12bの鍔部12eを、円筒ころ12cに対してローラ4、4’の中央に近い端部に配置した点が異なっている。かかる場合にも、ローラ4,4’に付与される両方向のスラスト荷重を、一対の円筒ころ軸受12,12’を用いて同様に支持することができる。但し、鋳片FEによりローラ4,4’が加熱されて熱膨張が生じた場合を考慮し、室温の状態では、円筒ころ軸受12,12’の内輪12bのフランジ部12eと、円筒ころ12cとの間には、適量の隙間を与える構造を取る。
【0041】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施例に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば円筒ころ軸受形式としては、いわゆる総ころタイプや保持器を備わる軸受でもよく、さらに円筒ころ軸受の内輪鍔部12eと12bを別体の部品として12bの端部に鍔部を設けるようにしても良い。或いは、内輪の軸線方向両端側に鍔部を設け、外輪の片側端部側にのみに鍔部を設けた構造においても同様な効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1の実施の形態にかかる軸受装置を用いた連続鋳造設備の概略を示す斜視図である。
【図2(a)】鋳片の移動方向に直交する方向に見たロールの配置例を示す図であり、1本ロールにおける配置例を示している。
【図2(b)】鋳片の移動方向に直交する方向に見たロールの配置例を示す図であり、2本ロールにおける配置例を示している。
【図2(c)】鋳片の移動方向に直交する方向に見たロールの配置例を示す図であり3本ロールにおける配置例を示している。
【図3】鋳片FEを圧延する1本の短いローラ4を支持する軸受装置10、10の断面図である。
【図4】円筒ころ軸受12を拡大して示す図である。
【図5】鋳片FEを圧延する1本の長いローラ4’を支持する軸受装置10’、10’の断面図である。
【図6】円筒ころ軸受12’を拡大して示す図である。
【図7】本実施の形態の変形例にかかる軸受装置を示す図3と同様な断面図である。
【図8】本実施の形態の変形例にかかる軸受装置を示す図5と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 導入部
2 排出部
3 ローラユニット
4、4’ ローラ
4a 圧延部
4b 第1円筒部
4c 第2円筒部
4d 第3円筒部
10、10’ 軸受装置
11 ハウジング本体
11a 円筒部
11b シール保持部
12、12’ 円筒ころ軸受
12a 外輪
12b 内輪
12c ころ
12d 鍔部
12e 鍔部
12f 調心輪
13 シール
14 ラビリンス環
15 環状部材
16 蓋部材弁
17 シール
FE 鋳片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備に用いられ、ハウジングに対してロールの端部を回転自在に支持する軸受装置であって、
前記ハウジングに支持され、半径方向内方に延在する鍔部を軸線方向両端側に一体的に形成した外輪と、
前記ロールを支持し、半径方向外方に延在する鍔部を軸線方向の一方の端部側に形成した内輪と、
前記外輪と前記内輪の間に配置された複数の円筒ころと、を有することを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記ロールの両端部にそれぞれ前記内輪の鍔部が軸線方向外側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロール軸受ユニット。
【請求項3】
前記外輪の外周面は球面であり、前記外輪と前記ハウジングとの間には、前記外輪の外周面に対応した内周面を有する調心輪が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受ユニット。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−14144(P2009−14144A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178487(P2007−178487)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】