説明

軸受装置

【課題】軸受異常検出の精度を高め、かつ迅速に検出することができる軸受装置を提供する。
【解決手段】主軸2には、軸方向に離隔した複数の軸受3を締まり嵌め状態で嵌合し、内輪3i,3i間に内輪間座4を、外輪3g,3g間に外輪間座5を介在させている。軸受3は、軸方向の予圧を付与することが可能な軸受であり、ここではアンギュラ玉軸受が用いられている。外輪間座5には、外輪間座5の温度を検出する温度センサ6と、内輪間座4の温度を検出する非接触温度センサ7とが設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の主軸スピンドルなどに使用される軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のスピンドル装置では、軸受に異常が起こる前に、その予兆を検出して軸受異常が起きることを防ぐ要求がある。この軸受の異常検出のために、温度センサ等をハウジングや間座に設置しているものがある(特許文献1)。この温度センサ等により、潤滑剤不足等に起因する内外輪の急激な温度上昇等の軸受異常を検出している。
【特許文献1】特開2004−169756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記軸受の異常検出のために軌道輪温度を測定しているが、非回転側の軌道輪の温度のみを測定していた。例えば、内輪側に主軸がある軸受装置では、内輪が回転するため、非回転側の軌道輪である外輪の温度のみを測定している。この外輪外径面は軸箱のハウジング孔に嵌合状態で接していて、さらに外筒冷却等を行っているため、軸受で発生する熱が逃げやすい。これに対して、内輪側は熱に逃げるところが主軸しかないため、内輪の方が外輪よりも温度が上昇する。したがって、非回転側の軌道輪温度を測定しているだけでは、軸受の異常を迅速に検出できない場合があった。
【0004】
この発明の目的は、軸受異常検出の精度を高め、かつ迅速に検出することができる軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させて予圧を受けるように構成した軸受装置において、前記間座は、軸方向に並ぶ外輪間に介在する外輪間座と、内輪間に介在する内輪間座とを有し、これら外輪間座および内輪間座のうちの固定側間座に、回転側間座の温度または内外輪のうちの回転輪の温度を非接触で測定する非接触温度センサを設けたことを特徴とする。
【0006】
この構成によると、前記固定側間座に設けた非接触温度センサにより、回転側間座または回転輪の温度を非接触で測定する。このように固定輪よりも温度条件の厳しい回転輪の温度を測定して、軸受の異常を迅速にかつ精度良く検出することが可能となる。また、前記非接触温度センサを固定側間座に設けるため、同非接触温度センサから引き出される配線を容易に配設することができる。
【0007】
前記非接触温度センサは、被測定物からの赤外線の放射を検出するセンサであっても良い。この場合、回転側間座等から放射される赤外線を検出して温度を測定することができる。このセンサとして、焦電型赤外センサやサーモパイル等が適用可能である。
前記非接触温度センサは、被測定物の磁気特性の変化を検出するセンサであっても良い。この場合、磁気ヨークとコイルとを有するセンサ等により、非接触温度センサが実現される。被測定物の温度が変化することにより透磁率が変化すると、磁気回路の磁気抵抗が変化する。これに伴い、前記コイルのインダクタンスが変化して、そのインダクタンスの変化により前記被測定物の温度を検出する。
【0008】
前記固定側間座に、この固定側間座の温度または内外輪のうちの固定輪の温度を測定する他の温度センサを設け、前記他の温度センサにより測定される温度および前記非接触温度センサにより測定される温度と、前記回転輪の回転速度とから、軸受の予圧を推定する予圧推定手段を設けても良い。軸受の運転により軸受温度が上昇すると回転輪等の膨張に起因して予圧が初期設定値よりも大きくなる。この関係を演算式またはテーブル等で設定しておき、予圧を推定することができる。この場合、予圧推定手段は、固定輪および回転輪両方の温度と前記回転速度とを、前記演算式またはテーブル等に照らし、軸受にかかる予圧をより正確に推定することができる。
【0009】
前記他の温度センサおよび非接触温度センサの少なくともいずれか一方または両方を、前記間座の軸受近傍に配置して設けても良い。この場合、センサ等を軸受から離隔した箇所に配置するよりも、軌道輪の温度をより正確に測定することが可能となる。これにより、軸受にかかる予圧を、さらに正確に推定することができる。
【0010】
前記他の温度センサおよび非接触温度センサにより測定される両温度から、軸受の異常検出を行う異常検出手段を設けても良い。内輪の方が外輪よりも温度が上昇する軸受装置であっても、前記両温度から軸受の異常検出を行うため、軸受の異常を迅速に検出することができる。
前記他の温度センサおよび非接触温度センサにより測定される両温度と、前記予圧推定手段により推定された軸受の予圧とに基づき軸受の異常検出を行う異常検出手段を設けても良い。この場合、軸受の異常検出の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させて予圧を受けるように構成した軸受装置において、前記間座は、軸方向に並ぶ外輪間に介在する外輪間座と、内輪間に介在する内輪間座とを有し、これら外輪間座および内輪間座のうちの固定側間座に、回転側間座の温度または内外輪のうちの回転輪の温度を非接触で測定する非接触温度センサを設けたため、軸受異常検出の精度を高め、かつ迅速に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図2と共に説明する。この第1の実施形態にかかる軸受装置は、ハウジング1に軸2を複数の軸受3で回転自在に支持したものである。この軸受装置は、例えば、工作機械のスピンドル装置に応用され、その場合、軸2はスピンドル装置の主軸2となる。
【0013】
主軸2には、軸方向に離隔した複数の軸受3を締まり嵌め状態で嵌合し、内輪3i,3i間に内輪間座4を、外輪3g,3g間に外輪間座5を介在させている。軸受3は、内輪3iと外輪3gの間に複数の転動体Tを介在させた転がり軸受であり、これら転動体Tは保持器Rtで保持されている。軸受3は、軸方向の予圧を付与することが可能な軸受であり、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等が用いられる。図示の例ではアンギュラ玉軸受が用いられ、2個の軸受3,3が背面組合わせで設置されている。
【0014】
前記外輪間座5には、外輪間座5の温度を検出する温度センサ6と、内輪間座4の温度を検出する非接触温度センサ7とが設置されている。外輪間座5の幅寸法H1は、内輪間座4の幅寸法H2と異なっており、一方の軸受3の内輪端面に筒状部材8を介して当接するナット9を締め付けることにより、これら外輪間座5、内輪間座4の幅寸法差に応じて軸受に予圧が付与される。
【0015】
前記外輪間座5の軸方向右端部が前記一方の軸受3の外輪背面3gaに当接する。この外輪間座5の軸方向右端部は、外径側に外輪背面3gaに当接する当接面5aと、この当接面5aに段部を介して内径側に連なる軸受3に当接しない非当接面5bとを有する。
外輪間座5の軸方向左端部は、外径側に他方の軸受3の外輪背面3gaに当接する当接面5aと、この当接面5aに段部を介して内径側に連なる前記軸受3に当接しない非当接面5bとを有する。
【0016】
温度センサ6および非接触温度センサ7について説明する。
外輪間座5の軸方向中間付近部に、これら温度センサ6、非接触温度センサ7が設置されている。すなわち、外輪間座5の軸方向中間付近部に、半径方向に貫通する貫通孔5hが形成され、この貫通孔5hを成す内壁における半径方向外方側に、温度センサ6が固着されている。この温度センサ6は、例えば、熱電対、側温抵抗体、サーミスタ等により実現される。前記貫通孔5hを成す内壁における半径方向内方側に、非接触温度センサ7が固着されている。この非接触温度センサ7は、測定部7aが内輪間座4に対向し、同内輪間座4から放射される赤外線を検出して同内輪間座4の温度を非接触で測定可能に構成されている。非接触温度センサ7として、例えば、焦電型赤外センサやサーモパイル等が適用可能である。ただし、非接触温度センサ7は、焦電型赤外センサ、サーモパイルだけに限定されるものではない。
【0017】
前記内壁に温度センサ6、非接触温度センサ7が固着された状態で、前記貫通孔5hに例えば、樹脂Rs等が充填されている。温度センサ6の全体、非接触温度センサ7の前記測定部7aを除く大部分が前記樹脂Rsに覆われていることにより、潤滑剤等に対する密閉性を高めている。なお、本実施形態では、前記貫通孔5hは、外輪間座5の円周方向一箇所に形成されているが、この形態に限定されるものではない。例えば、外輪間座5の円周方向複数箇所に複数の貫通孔5hを形成し、各貫通孔5hに温度センサ6、非接触温度センサ7を設けても良い。前記貫通孔5hに充填する部材は、樹脂だけに限定されるものではない。また、貫通孔5hに樹脂等を何ら充填しない構成にすることも可能である。
【0018】
前記温度センサ6、非接触温度センサ7の出力部である配線Cdは、ハウジング1に設けられた孔1aを介して、ハウジング1外に引き出され、転がり軸受の異常を検出する異常検出手段Eaに電気的に接続されている。異常検出手段Eaは予圧推定手段Yaを含み、この予圧推定手段Yaは、温度センサ6により測定される温度、および非接触温度センサ7により測定される温度と、主軸2の回転速度を検出する回転センサS1により測定される回転速度とから、軸受3にかかる予圧を推定する。予圧推定手段Yaは、温度センサ6により測定される温度、および非接触温度センサ7により測定される温度と、主軸2の回転速度を検出する回転センサS1により測定される回転速度と、予圧との関係を演算式またはテーブル等で設定した図示外の関係設定手段を有し、求められる内外輪3i,3gの温度と、主軸2の回転速度とを前記関係設定手段に照らし、軸受予圧を推定する。この予圧推定手段Yaは、独立して設けられた電子回路であっても、またスピンドル装置を制御する制御装置の一部であっても良い。
【0019】
スピンドル装置の図示外の駆動源により主軸2が回転し、軸受3の温度が上昇して内輪3iが膨張すると、予圧が初期設定値よりも大きくなる。ここで、外輪間座5の当接面5aは外輪背面3gaに当接しているため、外輪3gの熱は、外輪間座5に熱伝導により伝えられ、温度センサ6により求められる。つまり、外輪3gの温度は、外輪間座5の材質固有の線膨張係数、当接面5aから温度センサ6までの距離等に基づき補正されて求められる。
【0020】
内輪間座4の当接面4aは内輪端面に当接しているため、内輪3iの熱は、内輪間座4に熱伝導により伝えられ、非接触温度センサ7により非接触で求められる。つまり、内輪3iの温度は、内輪間座4の材質固有の線膨張係数、前記当接面4aから非接触温度センサ7までの距離等に基づき補正されて求められる。
前記予圧推定手段Yaは、このように求められる内外輪3i,3gの温度と、主軸2の回転速度とから軸受にかかる予圧を推定する。
【0021】
前記異常検出手段Eaは、前記予圧推定手段Yaにより推定された軸受3の予圧と、温度センサ6により求められる外輪温度と、非接触温度センサ7により求められる内輪温度とに基づき軸受3の異常を検出する。異常検出手段Eaは、これら内外輪温度と予圧との関係を演算式またはテーブル等で設定した図示外の関係設定手段を有し、求めた内外輪温度、予圧を前記関係設定手段に照らし、軸受異常であるか否かを判定する。また、異常検出手段Yaは、求めた内外輪温度等に比例する電気信号のピーク電圧を測定し、このピーク電圧が所定の閾値外となったとき、軸受異常であると判定するようにしても良い。この異常検出手段Eaは、独立して設けられた電子回路であっても、またスピンドル装置を制御する制御装置の一部であっても良い。
【0022】
上記構成の作用、効果を説明する。スピンドル装置の図示外の駆動源により主軸2が回転し、軸受3の温度が上昇して内輪3iが膨張し、予圧が初期設定値よりも大きくなると、外輪間座5の両端間に加わる軸方向力が増加する。異常検出手段Eaは、予圧推定手段Yaにより推定された軸受3の予圧と、温度センサ6により求められる外輪温度と、非接触温度センサ7により求められる内輪温度とに基づき軸受3の異常を検出する。
【0023】
以上説明したように、内外輪両方の温度を求めて軸受3の異常検出を行うので、固定輪である外輪3gまたは外輪間座5のみ温度測定しているときよりも、軸受3の異常予測を精度良く適切なタイミングで行うことができる。さらに、回転センサS1等により主軸2の回転速度を検出すると、主軸2の回転速度と、軸受3の内外輪温度とから、軸受3にかかる予圧をより正確に推定することができる。この推定された予圧値と内外輪温度とから、軸受3の異常を検出すれば、さらに軸受異常検出の精度を高めることができる。推定された軸受の予圧値は、軸受予圧の制御や、工作機械の加工状態の監視等に使用することもできる。また、外輪3gだけでなく内外輪温度から軸受3の異常検出を行うため、軸受3の異常を迅速に検出することができる。
【0024】
外輪間座5の貫通孔5hに温度センサ6、非接触温度センサ7を設け、前記貫通孔5hに樹脂Rs等を充填した場合、潤滑剤等に対するセンサ6,7の密閉性を高めることができる。それ故、潤滑剤等の浸入に伴うセンサ6,7の測定不良等を未然に防止することができる。なお、外輪間座5の円周方向複数箇所に温度センサ6、非接触温度センサ7を設けた場合、内外輪温度の測定精度を高めると共に、軸受3の異常をより迅速に検出することができる。
【0025】
次に、この発明の第2の実施形態を図3、図4と共に説明する。図1も参照しつつ説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0026】
本第2の実施形態では、外輪間座5の貫通孔5hに設ける非接触温度センサ7Aとして、被測定物の磁気特性の変化を検出するセンサが適用されている。内輪間座4Aにおいて、非接触温度センサ7Aの測定部7Aaに対向する外周面に、側温体10を設置している。この側温体10は、例えば、感温フェライト等のように、温度により磁気特性が大きく変化する部材である。非接触温度センサ7Aは、この側温体10の磁気特性の変化を検出して内輪間座4Aの温度を検出し、これにより軸受内輪温度を求め得る。
【0027】
前記内輪間座4Aは、例えば、第1の分割内輪間座4A1と、第2の分割内輪間座4A2とを有する。第1の分割内輪間座4A1は、リング状の側温体10を嵌合する部材であって、内輪間座全体の軸方向左端側に配置される。また、第1の分割内輪間座4A1は、第2の分割内輪間座4A2よりも所定小距離軸方向に長く形成されている。第1の分割内輪間座4A1のうち、第2の分割内輪間座4A2の左端に当接する部分4Aaから、軸方向左側に所定距離延びる部分は、側温体10を締嵌め状態で外嵌合可能に薄肉形状に形成されている。第1の分割内輪間座4A1にこの側温体10を嵌合した状態において、側温体10の右端面と第1の分割内輪間座4A1の当接面とが面一状となり、第2の分割内輪間座4A2の左端に当接する。これと共に、第1の分割内輪間座4A1の外周面と、側温体10の外周面とが面一状となる。
【0028】
この第2の実施形態に係る非接触温度センサ7Aについて説明する。
図4に示すように、非接触温度センサ7Aは、磁気ヨーク11とコイル12とを有する。前記磁気ヨーク11と側温体10とで磁気回路が構成される。側温体10の温度が変化すると透磁率が変化するため、前記磁気回路の磁気抵抗が変化する。それに伴いコイル12のインダクタンスが変化して、その変化により側温体10の温度を非接触で検出する。その他、第1の実施形態と同様に、内外輪3i,3gの温度が求められる。なお、貫通孔5hに樹脂Rsが充填され、温度センサ6の全体、非接触温度センサ7Aの全体がこの樹脂Rsに覆われている。その他第1の実施形態と同様の構成となっている。
【0029】
第2の実施形態において、軸受3の潤滑をエアオイル等の潤滑剤で行っている場合には、磁気タイプの前記非接触温度センサ7Aを適用することにより、センサが潤滑剤等で汚れて測定不良となることがなく、側温体10の温度を確実に測定することができる。
内輪間座4Aを左右分割構造とし、第1の分割内輪間座4A1にリング状の側温体10を嵌合したため、第1,第2の分割内輪間座4A1,4A2および側温体10の組立てを簡単化することができる。それ故、製造コストの低減を図ることが可能となる。その他第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0030】
図5は、第2の実施形態のセンサを部分的に変更した変更形態に係る要部の断面図である。図3も参照しつつ説明する。
本変更形態に係る非接触温度センサ7Bは、磁気ヨーク11と、磁石片13と、磁界センサ14とを有する。前記磁気ヨーク11と側温体10とで磁気回路が構成される。磁界センサ14としては、例えば、ホールセンサ、強磁性体磁気抵抗素子(Magnetoresistive:略称MRセンサ)、Magnetoimpedance sensor:略称MIセンサ等を適用可能である。前記側温体10の温度が変化すると透磁率が変化するため、その磁束変化を磁界センサ14で検出して、側温体10の温度を測定し得る。その他第2の実施形態と同様の構成となっており、第1,第2の実施形態と同様の効果を奏する。
【0031】
次に、この発明の第3の実施形態を図6と共に説明する。
本第3の実施形態では、外輪間座5Aの軸方向右端部の円周方向一箇所にスリットSLを形成し、このスリットSLに温度センサ6および非接触温度センサ7を設けている。また、外輪間座5Aの軸方向左端部の円周方向一箇所にもスリットSLを形成し、これらスリットSLに温度センサ6および非接触温度センサ7を設けている。外輪間座5Aにおいて、このスリットSLを成す壁部の半径方向外方側に、温度センサ6が固着され、同スリットSLを成す壁部の半径方向内方側に、非接触温度センサ7が固着されている。
【0032】
このように、温度センサ6および非接触温度センサ7を、外輪間座5Aの軸受近傍に配置して設けている。この場合、センサ6,7を軸受から離隔した箇所に配置するよりも、内外輪3i,3gの温度をより正確に測定することが可能となる。これにより、軸受3にかかる予圧を、さらに正確に推定することができる。その他図1に示す第1の実施形態と同様の構成となっており、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0033】
以上説明した軸受装置を、スピンドル装置以外の装置、ロボット等に適用することも可能である。本実施形態では、2個の軸受を背面組み合わせで設置したが、正面組み合わせで設置する場合もあり得る。また、軸受の個数は2個に必ずしも限定されるものではない。前記スピンドル装置以外の装置において、例えば、内輪固定、外輪回転形の軸受装置に適用しても良い。この場合、センサ等の出力用の配線を、軸内部を通して軸受装置外に引き出すことが望ましい。
【0034】
図3に示す第2の実施形態において、内輪間座を左右分割構造ではなく一体構造とし、この内輪間座の外周面の軸方向中間付近に環状の凹形状部を形成し、この凹形状部に焼嵌め等によりリング状の側温体を嵌合させてもよい。この場合、軸受装置の部品点数を第2の実施形態のものよりさらに低減し、構造を簡単化することができる。また、側温体を円周方向に分割した複数の分割構造体とし、これら分割構造体を前記環状の凹形状部に固着させても良い。
【0035】
前記各実施形態では、内輪間座の温度を測定しているが、回転輪である内輪の温度を非接触温度センサにより非接触で測定しても良い。この場合、内輪間座の線膨張係数等に基づく補正を施すことなく内輪の温度を測定できるため、CPU等の処理負荷を軽減できるうえ、軸受の異常をより迅速に検出することが可能となる。
【0036】
本発明の他の実施形態として、外輪間座に、内輪間座の温度を測定する非接触温度センサだけを設け、前記温度センサを省略する構成にする場合もある。ただし、ハウジング等に外筒冷却等を行って、外輪で発生する熱が逃げやすくなっている場合に限る。この構造によると、従来の外輪または外輪間座の温度のみを測定する構造に比べて、軸受異常検出の精度を高め、かつ迅速に検出することができる。
本実施形態では、主軸の回転速度を回転センサにより検出しているが、必ずしもこの形態に限定されるものではない。例えば、主軸にロータリエンコーダ等を設けてこのロータリエンコーダにより主軸の回転速度を検出しても良い。また、主軸を回転駆動するモータからの出力信号により主軸の回転速度を求めても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【図2】同軸受装置の要部の断面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【図4】同軸受装置の要部の断面図である。
【図5】第2の実施形態のセンサを部分的に変更した変更形態に係る要部の断面図である。
【図6】この発明の第3の実施形態に係る軸受装置の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
3…軸受
3g…外輪
3i…内輪
4…内輪間座
5,5A…外輪間座
6…温度センサ
7,7A…非接触温度センサ
10…側温体
Ea…異常検出手段
Ya…予圧推定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の軌道輪間に間座を介在させて予圧を受けるように構成した軸受装置において、
前記間座は、軸方向に並ぶ外輪間に介在する外輪間座と、内輪間に介在する内輪間座とを有し、これら外輪間座および内輪間座のうちの固定側間座に、回転側間座の温度または内外輪のうちの回転輪の温度を非接触で測定する非接触温度センサを設けたことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、前記非接触温度センサは、被測定物からの赤外線の放射を検出するセンサである軸受装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記非接触温度センサは、被測定物の磁気特性の変化を検出するセンサである軸受装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記固定側間座に、この固定側間座の温度または内外輪のうちの固定輪の温度を測定する他の温度センサを設け、
前記他の温度センサにより測定される温度および前記非接触温度センサにより測定される温度と、前記回転輪の回転速度とから、軸受の予圧を推定する予圧推定手段を設けた軸受装置。
【請求項5】
請求項4において、前記他の温度センサおよび非接触温度センサの少なくともいずれか一方または両方を、前記間座の軸受近傍に配置して設けた軸受装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記他の温度センサおよび非接触温度センサにより測定される両温度から、軸受の異常検出を行う異常検出手段を設けた軸受装置。
【請求項7】
請求項4または請求項5において、前記他の温度センサおよび非接触温度センサにより測定される両温度と、前記予圧推定手段により推定された軸受の予圧とに基づき軸受の異常検出を行う異常検出手段を設けた軸受装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−68533(P2009−68533A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235032(P2007−235032)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】