説明

軸流タイプのガスタービン

【課題】冷却空気質量流の低減と、タービン段内部での臨界的な構成部分の改善された冷却および有効な熱保護とを兼ね備えたガスタービンを提供する。
【解決手段】静翼プラットフォーム(38)と、隣接したステータ遮熱体(47)との間のジョイントを通って高温ガス路(42)内へ漏れる空気(37)が動翼(40)の動翼クラウン(32)に向けられるようにタービン段(TS)内のステータ遮熱体(47)と外側の静翼プラットフォーム(38)とが互いに適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの技術に関する。本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の軸流タイプのガスタービンに関する。
【0002】
特に、本発明は、ガスタービンユニットのための軸流タービンの段の設計に関する。一般にタービンステータは複数の溝を備えた静翼支持体を有しており、この静翼支持体には、一列の静翼と一列のステータ遮熱体とが相前後して交互に取り付けられている。段全体は溝を備えた回転軸を有する1つのロータを有しており、このロータには、一列のロータ遮熱体と一列の動翼とが相前後して交互に取り付けられている。
【背景技術】
【0003】
本発明は、軸流タイプのガスタービンに関し、その一例が図1に示されている。図1に示したガスタービン10は逐次燃焼の原理により作動する。このガスタービン10は圧縮機11と、多数のバーナ13および第1の燃料供給部12を備えた第1の燃焼器14と、高圧タービン15と、第2の燃料供給部16を備えた第2の燃焼器17と、一列の動翼20と一列の静翼21とを交互に備えた低圧タービン18とを有している。動翼20および静翼21は、機械軸線MAに沿って配置された多数のタービン段に配置されている。
【0004】
図1に示したガスタービン10はステータとロータとを有している。ステータは静翼支持体19を有しており、この静翼支持体19に静翼21が組み付けられている。これらの静翼21は、燃焼器17で発生した高温ガスが通流するプロファイルされた通路を形成するために必要となる。所望の方向で高温ガス路22を通流するガスは、ロータシャフトに設けられたシャフトスリットに取り付けられた動翼20に衝突して、タービンロータを回転させる。動翼20の上方を流れる高温ガスに対してステータハウジングを保護するためには、隣接し合った静翼列の間に取り付けられたステータ遮熱体が使用される。高温タービン段は、静翼とステータ遮熱体と動翼とに供給されるべき冷却空気を必要とする。
【0005】
長い寿命を有する高温タービン段運転を保証するためには、高温ガス路22の全ての構成部分が有効に冷却されることが望ましい。図2の(a)および(b)に図示されている公知の構成の構成部分は以下のようにして冷却される:圧縮機から供給された、圧縮された冷却空気24はプレナム23を通って、中空室31,29内に流入する。中空室31の場合には、このことは孔25によって行われる。次いで、この冷却空気は静翼21のエーロフォイル(翼型)から流出して、動翼20とは反対の側の内側リング26に装着されたステータ遮熱体27に設けられた孔30,28を通って、タービン流路22に流入する。周縁の動翼ゾーン(動翼先端)の肉薄な動翼クラウン32は高いガス温度に対して極めて敏感である。図2に示した構成においてステータ遮熱体27の前側の部分に位置決めされた孔30から逃出した冷却空気は、動翼クラウン32の温度を低下させるために働く(図示されていない動翼冷却システム自体に対して付加的に)。
【0006】
しかし、上で説明した構成には、以下に挙げるような欠点がある:
1.孔30の出口から動翼20の前縁までの長い距離に基づき、冷却空気噴流はすぐにそのエネルギを失い、高温ガス路22からの高温ガスによって洗い出される。
【0007】
2.孔30から流出した空気は、比較的高い温度を有している。なぜならば、この空気は既にステータ遮熱体27のかなりの表面範囲を冷却したものであるからである。
【0008】
3.隣接し合うステータ遮熱体27(図2のb)の間のスペースのために冷却空気を用いた有効な吹き通しが提供されておらず、このことはシールプレート33およびステータ遮熱体27の側方表面に対する過熱危険を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、公知の冷却構造の不都合を回避し、かつ冷却空気質量流の低減と、タービンのタービン段内部での臨界的な構成部分の改善された冷却および有効な熱保護とを組み合わせるタービン段冷却手段を備えたガスタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために本発明の構成では、軸流タイプのガスタービンであって、空気冷却される動翼とロータ遮熱体との交互する列を有するロータと、内側リングに組み付けられた、空気冷却される静翼とステータ遮熱体との交互する列を有するステータとが設けられており、ステータが、ロータを同軸的に取り囲んでいて、これにより互いの間に高温ガス路を規定しており、しかも動翼の列とステータ遮熱体の列とが、かつ静翼の列とロータ遮熱体の列とが、それぞれ互いに向かい合って位置しており、静翼の列と下流方向における動翼の次の列とが、1つのタービン段を規定しており、該タービン段の動翼が、それぞれ動翼先端に冠状の動翼クラウンを備えており、該タービン段の静翼が、それぞれ外側の静翼プラットフォームを備えている形式のガスタービンにおいて、静翼プラットフォームと、隣接したステータ遮熱体との間のジョイントを通って高温ガス路内へ漏れる空気が動翼の動翼クラウンに向けられるようにタービン段内のステータ遮熱体と外側の静翼プラットフォームとが互いに適合されているようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有利な構成では、外側の静翼プラットフォームと、隣接したステータ遮熱体とが、各外側の静翼プラットフォームの後側の壁に下流側に向かって突出部を設けることにより互いに適合されており、該突出部が、下流側に動翼クラウンの前縁に向かって、かつ隣接したステータ遮熱体に設けられた各切欠きに突入するように延びている。
【0012】
本発明の別の有利な構成では、前記タービン段内のステータ遮熱体が、各ステータ遮熱体の背面側に設けられた中空室内に冷却空気を導入することにより冷却され、該冷却空気が、ステータ遮熱体の下流側および上流側に設けられた孔を通じて高温ガス路内へ放出される。
【0013】
本発明のさらに別の有利な構成では、前記タービン段内の静翼が、孔を通じて各静翼の外側の静翼プラットフォームの背面側に設けられた中空室内に冷却空気を導入することにより冷却され、冷却空気の噴流が、前記突出部を貫いて下流側へ延びる孔によって、前記中空室から動翼クラウンに向けられる。
【0014】
本発明のさらに別の有利な構成では、静翼の外側の静翼プラットフォームは、前記孔を通じて前記突出部内に流入する冷却空気が、既に各静翼の冷却のために前に使用されているように配置構成されている。
【0015】
本発明のさらに別の有利な構成では、冷却空気を、周方向で隣接し合っているステータ遮熱体の間のすき間内に正確に向けるために、前記突出部を下流側に向かって貫いて延びるスリットが設けられている。
【0016】
本発明のさらに別の有利な構成では、冷却空気を、外側の静翼プラットフォームの背面側に設けられた前記中空室から、下流側に向かって、前記突出部の下方の動翼クラウンに向けるために、外側の静翼プラットフォームに付加的な孔が設けられている。
【0017】
以下に、本発明の種々の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実現するために使用され得る、逐次燃焼式のガスタービンの公知の基本構造を示す概略図である。
【図2】公知先行技術によるガスタービンのタービン段の冷却システムを詳細図(A)と、A−A線に沿った断面図(B)とで示す図である。
【図3】本発明の1実施形態によるガスタービンのタービン段の冷却システムを詳細図(A)と、「B」で示した円で囲んだ部分の拡大図(B)とで示す図である。
【図4】高められたシールプレート冷却を有する本発明における冷却システムの改良形を詳細図(a)と、C−C線に沿った断面図(b)とで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3には、本発明により提案された高温タービン段が示されている。この高温タービン段では、図2に示した構成に認められる特有の不都合が取り除かれている。
【0020】
図3に示した、提案された新規でかつ有利な構成では、ガスタービン35が、静翼支持体39に取り付けられた複数の静翼41と、高温ガス路42を通って流れる高温ガスによって運動させられる複数の動翼40とを備えたタービン段TSを有している。動翼40の動翼先端に向かい合って位置する側では、内側リング46にステータ遮熱体47が配置されている。それぞれ外側の静翼プラットフォーム38を有する静翼41は、プレナム43から孔45を通って中空室51に流入する冷却空気44によって冷却される。本発明によれば、外側の静翼プラットフォーム38と、ステータ遮熱体47とは、外側の静翼プラットフォーム38と、隣接したステータ遮熱体47との間のジョイントを通って高温ガス路42に漏れ出した漏れ空気37が、動翼40の動翼クラウン32に向けられるように設計されかつ互いに適合されている(図3のb)。このことは、冷却空気が、可能となる最小距離を通って、隣接し合ったステータ遮熱体47の間のスリットと動翼40の動翼クラウンとに供給されることを意味する。
【0021】
動翼クラウンおよびステータ遮熱体のこのような直接的な冷却は、外側の静翼プラットフォーム38の後壁に位置決めされた突出部36を提供することにより実施される。動翼40に最大限に接近した突出部36の端部を得るために、ステータ遮熱体47には特別な切欠き58が形成されている。ステータ遮熱体47は図2に示した構成の場合と同様の方法で冷却される。すなわち、冷却空気は中空室49に流入して、ステータ遮熱体47に設けられた孔52を通過し、そして孔48,50を通って導出される。
【0022】
静翼41も、図2に示した静翼21と同様に冷却されるが、しかし動翼40の動翼クラウンは一層効果的に冷却される。なぜならば、突出部36を貫いて延びる孔53からの空気噴流が、動翼40に最大限接近したところにまで冷却空気を運ぶので、この冷却空気はそのエネルギを失って高温ガス路42からの高温ガスによって洗い出されてしまう時間を有していないからである。
【0023】
提案された構成の別の利点は、孔53に供給された冷却空気が、穴あけされたシートに設けられた孔54を既に通過していて、外側の静翼プラットフォーム38の一部を冷却していることである。こうして、動翼クラウンは、既に別の構成部分を冷却するために使用された冷却空気を用いて冷却されるので、タービン効率は改善される。
【0024】
外側の静翼プラットフォーム38に設けられた突出部36により、提案された構成のさらに別の利点が得られる(図4参照)。この突出部36により、隣接し合うステータ遮熱体47の間のすき間59(図4のb)は、隣接し合うステータ遮熱体47の間の、周方向で正確に真ん中に配置されたスリット57から噴出する強力な空気噴流を用いて吹き通され得るようになる。この噴流はステータ遮熱体47の側方の表面と、これらのステータ遮熱体47の間のシールプレート55とを、不都合な高温ガス効果に対して保護する。孔53による動翼クラウンへの使用済み空気の供給およびスリット57を通じた、隣接し合うステータ遮熱体47の間のすき間59内への使用済み空気の供給に対して付加的に、孔56を通じて、使用済み空気のさらなる供給を提供することができる。
【0025】
総括すると、提案された構成には、以下に挙げる利点がある:
1.ステータ遮熱体47と、外側の静翼プラットフォーム38に形成された突出部36との提案された形状により、動翼40の動翼クラウンに極めて近傍で冷却空気噴流を付与することが可能となる。このことは、これらの構成要素の冷却の効率を著しく改善する。
【0026】
2.ステータ遮熱体47および動翼クラウンを冷却するために、既に静翼41の冷却のために使用された使用済みの空気が使用される。このような冷却空気の二用途使用は、タービン効率を改善する。
【0027】
3.隣接し合うステータ遮熱体47の間のすき間59が効果的に吹き通される。
【0028】
4.内側リング46および静翼支持体39(図3参照)とのジョイントゾーン内部の中空室49,51からの漏れ空気37が、動翼クラウンの近傍に流出することに基づき、冷却のために有効に使用される。
【0029】
こうして、ステータ遮熱体47および突出部36(図3参照)の互いに適合された好都合な形状の使用と、外側の静翼プラットフォーム38から放出された冷却空気の利用との組合せにより、良好な性能と連続的な動翼寿命とを有する最新のタービンを提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0030】
10,35 ガスタービン
11 圧縮機
12,16 燃料供給部
13 バーナ
14,17 燃焼器
15 高圧タービン
18 低圧タービン
19,39 静翼支持体(ステータ)
20,40 動翼
21,41 静翼
23,43 プレナム
24,44 冷却空気
25,45 孔
26,46 内側リング
27,47 ステータ遮熱体
28,48 孔
29,49 中空室
30,50,52 孔
31,51 中空室
32 動翼クラウン
33,55 シールプレート
34 高温ガス
36 突出部
37 漏れ空気(ステータ遮熱体と静翼との間のジョイントでの)
38 外側の静翼プラットフォーム
42 高温ガス路
53,54,56 孔
57 スリット
58 切欠き
59 すき間
MA 機械軸線
TS タービン段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸流タイプのガスタービン(35)であって、空気冷却される動翼(40)とロータ遮熱体との交互する列を有するロータと、静翼支持体(39)に組み付けられた、空気冷却される静翼(41)とステータ遮熱体(47)との交互する列を有するステータとが設けられており、ステータが、ロータを同軸的に取り囲んでいて、これにより互いの間に高温ガス路(42)を規定しており、しかも動翼(40)の列とステータ遮熱体(47)の列とが、かつ静翼(41)の列とロータ遮熱体の列とが、それぞれ互いに向かい合って位置しており、静翼(41)の列と下流方向における動翼(40)の次の列とが、1つのタービン段(TS)を規定しており、該タービン段(TS)の動翼(40)が、それぞれ動翼先端に動翼クラウン(32)を備えており、該タービン段(TS)の静翼(41)が、それぞれ外側の静翼プラットフォーム(38)を備えている形式のガスタービンにおいて、タービン段(TS)内のステータ遮熱体(47)と外側の静翼プラットフォーム(38)とは、静翼プラットフォーム(38)と、隣接したステータ遮熱体(47)との間のジョイントを通って高温ガス路(42)内へ漏れる空気(37)が動翼(40)の動翼クラウン(32)に向けられるように互いに適合されていることを特徴とする、軸流タイプのガスタービン。
【請求項2】
外側の静翼プラットフォーム(38)と、隣接したステータ遮熱体(47)とが、各外側の静翼プラットフォーム(38)の後側の壁に下流側に向かって突出部(36)を設けることにより互いに適合されており、該突出部(36)が、下流側に動翼クラウン(32)の前縁に向かって、かつ隣接したステータ遮熱体(47)に設けられた各切欠き(58)に突入するように延びている、請求項1記載のガスタービン。
【請求項3】
前記タービン段(TS)内のステータ遮熱体(47)が、各ステータ遮熱体(47)の背面側に設けられた中空室(49)内に冷却空気を導入することにより冷却され、該冷却空気が、ステータ遮熱体(47)の下流側および上流側に設けられた孔(48,50)を通じて高温ガス路(42)内へ放出される、請求項2記載のガスタービン。
【請求項4】
前記タービン段(TS)内の静翼(41)が、孔(45)を通じて各静翼(41)の外側の静翼プラットフォーム(38)の背面側に設けられた中空室(51)内に冷却空気(44)を導入することにより冷却され、冷却空気の噴流が、前記突出部(36)を貫いて下流側へ延びる孔(53)によって、前記中空室(51)から動翼クラウン(32)に向けられる、請求項3記載のガスタービン。
【請求項5】
静翼(41)の外側の静翼プラットフォーム(38)は、前記孔(53)を通じて前記突出部(36)内に流入する冷却空気が、既に各静翼(41)の冷却のために使用されているように構成されている、請求項4記載のガスタービン。
【請求項6】
冷却空気を、周方向で隣接し合っているステータ遮熱体(47)の間のすき間(59)内に正確に向けるために、前記突出部(36)を下流側に向かって貫いて延びるスリット(57)が設けられている、請求項4または5記載のガスタービン。
【請求項7】
冷却空気を、外側の静翼プラットフォーム(38)の背面側に設けられた前記中空室(51)から、下流側に向かって、前記突出部(36)の下方の動翼クラウン(32)に向けるために、外側の静翼プラットフォーム(38)に付加的な孔(56)が設けられている、請求項6記載のガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−117539(P2012−117539A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−260784(P2011−260784)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】