説明

軸流ファン

【課題】ロータヨークとインペラハブとが強固に固定された軸流ファンを提供することを目的とする。
【解決手段】アウターロータ型の軸流ファン10のロータヨーク4における円筒部4aの軸方向両端部を、インペラハブ6から回転軸2の軸心方向に向けて延出させた底面側フランジ部8、及び、開放端側フランジ部5で挟持する構造とした。これにより、金属製のロータヨーク4と合成樹脂製のインペラハブとを強固に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンに関し、特にロータヨークの外周にインペラハブ及び羽根を形成したアウターロータ型の軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンにおけるインペラは、カップ状に形成したインペラハブの外周面から、放射状に伸長する複数の羽根を備えたものであり、一般にインペラハブ及び羽根は樹脂で成形される。このインペラハブ及び羽根は、モータのロータヨークに固定されているものであるが、その取り付け方法として、ロータヨークをインペラハブの内側に圧入する方法や、ロータヨークをインサート部品とするインサート成形によって、インペラの成形時にインペラハブと羽根とを一体に作製する方法が知られている。
【0003】
ロータヨークをインサート部品とするインサート成形により、インペラを一体に作製する場合には、成形時の冷却工程においてロータヨークとインペラとの接合面にクラックが発生したり、成形時の樹脂圧によってロータヨークに変形が生じ易くなる。また、軸流ファンの駆動に伴う経年変化によっても、ロータヨークとインペラとの接合面にクラックが発生する。金属製のロータヨークと合成樹脂製のインペラとでは熱膨張率が違うので、温度が変化すると相互の部品間に寸法の差が生ずるからである。
【0004】
このようなインサート成形に伴うクラックの発生や、ロータヨークの変形の発生を抑制するために、ロータヨークにおける外周の周壁部に隙間を形成した軸流ファンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図7に、特許文献1に記載されている軸流ファンの側面断面図を示す。図8は、図7に示す軸流ファンのロータユニットの拡大断面図である。図7及び図8に示すように、樹脂製のインペラ940のインペラカップ941は、回転軸921端部を保持する円筒部943から外周へ向けて延びる略円盤状の上面944と、その上面944の外周縁から回転軸921と平行に延びる略円筒状の周壁部945とを有している。
【0006】
樹脂製の周壁部945は、ロータホルダ925の周壁部251の外周面に密着した略円筒状の内側円筒部451と、軸方向先端側で当該内側円筒部451に接続しつつ軸方向基端側へ近づくほど径方向外側へテーパ状に離間して広がる外側テーパ円筒部452とからなる二重円筒形状をしている(図8参照)。外側テーパ円筒部452の外周面からは、複数の羽根942が放射状に径方向外側へ延びている。
【0007】
二重円筒形状をしている樹脂製の内側円筒部451と外側テーパ円筒部452との間には、略三角形の断面形状を有する環状空間ASが形成されている。この環状空間ASには、内側円筒部451の外周面と外側テーパ円筒部452の内周面とを接続する複数のリブ946が、周方向に略等間隔で形成されている。これにより、インペラカップ941の変形が発生し難くなり、必要な強度を確保することができるとしている。
【0008】
また、金属製のロータホルダ925における周壁部251の軸方向基端側には、径方向外側に向けて少し突出させた鍔部253が形成されている(図8参照)。鍔部253の外周面は、インサート成形時に樹脂で覆われる。ロータホルダ925の周壁部251から鍔部253の外周面にかけて樹脂で覆うことによって、インペラカップ941とロータホルダ925とが強固に固定されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−25087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されている軸流ファンのインペラ940では、樹脂製の二重円筒形状における内側円筒部451が、金属製の周壁部251の外周面全周にわたって密着しているため、駆動に伴って繰り返し生ずる熱サイクルによって、金属製の周壁部251と合成樹脂製の内側円筒部451との接合部付近で、合成樹脂製の内側円筒部451にクラックが生じる場合がある。
【0011】
また、特許文献1に記載されている金属製のロータホルダ925の鍔部253の外周面は、内側円筒部451の樹脂で覆われているが、樹脂が覆っているのは鍔部253の外周面のみである。特許文献1に記載されているインペラ940では、周壁部251における軸方向基端側の端面が内側円筒部451の樹脂で覆われていないために、必ずしも樹脂製のインペラカップ941が金属製のロータホルダ925に強固に固定されているとはいえなかった。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ロータヨークの外周にインペラハブ及び羽根を形成したアウターロータ型の軸流ファンにおいて、インペラハブとロータヨークとが強固に固定された軸流ファンを提供することを目的とする。また、インサート成形時や駆動に伴う熱サイクル、経時変化等によってもインペラのロータヨークとの接合部におけるクラックが生じにくい軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の軸流ファンは、中心部に回転軸を有するカップ状のロータヨークと、前記ロータヨークをインサート部品として、前記ロータヨークの円筒部外周面にインペラハブ及び当該インペラハブから放射状に伸長する複数の羽根をインサート成形にて形成したインペラと、を備える軸流ファンにおいて、前記ロータヨークにおける前記円筒部の軸方向両端部を、前記インペラハブから回転軸の軸心方向に向けて延出させた底面側フランジ部、及び、開放端側フランジ部で挟持してなることを特徴とする構成である。
【0014】
前記インペラにおいて、前記ロータヨークの円筒部外周面と前記インペラハブとの境界部に、前記回転軸と平行な空隙を複数開設した構成とすることが好ましい。
【0015】
以上の構成によれば、金属製のロータヨークの円筒部の軸方向両端部を、樹脂製のインペラハブから延出する底面側フランジ部、及び、開放端側フランジ部で挟持する構成としたことにより、インペラハブとロータヨークとを強固に固定することができる。
【0016】
更に、金属製のロータヨークの円筒部外周面と樹脂製のインペラハブとの境界部に、インペラハブの軸方向と平行な空隙を複数開設したことにより、インサート成形時や駆動に伴う熱サイクルによる両素材間の変形を吸収して、インペラハブにクラックを生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の軸流ファンによれば、インペラとロータヨークとを強固に固定した軸流ファンを提供することができる。また、インサート成形時や駆動に伴う熱サイクル、経時変化等による両素材間の変形を吸収して、インペラハブにクラックを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る軸流ファンの側面断面図である。
【図2】図1に示すロータヨークの外観斜視図である。
【図3】図1に示すインペラの側面断面図である。
【図4】図3に示すインペラの底面図である。
【図5】ロータヨークにおける円筒部の開放端にスカート部を形成したインペラの側面断面図である。
【図6】図5に示すロータヨークの底面図である。
【図7】従来の軸流ファンの側面断面図である。
【図8】図7に示す従来の軸流ファンのロータユニットの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るインペラの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る軸流ファンの側面断面図である。図2は、図1に示すロータヨークの外観斜視図である。図3は、図1に示すインペラの側面断面図である。図4は、図3に示すインペラの底面図である。
【0020】
図1に示すように本発明に係る軸流ファン10は、コイル24及びコア22を保持するステータベース26と、回転軸2を中心軸として回転するロータヨーク4及び羽根7を備えるインペラ1とから構成される。ロータヨーク4の円筒部4aの内面には、ロータマグネット12を取り付けてある。
【0021】
次に、図2を用いてロータヨーク4の形状について説明する。ロータヨーク4は、一般に軟磁性金属材料を素材としている。ロータヨーク4は、図1に示した回転軸2に対して垂直な円盤形状を有する底面部4bと、底面部4bの外周部から回転軸2と平行に延びる円筒部4aとから構成される略カップ状の部品である。
【0022】
ロータヨーク4の底面部4bの中央には開口を形成してあり、開口の周縁には複数の切込4fを入れて、カップ状の内側へ折り曲げた形状の突起部4cを形成してある。当該突起部4cは、回転軸2の端部にボス部3を形成する際に、鋳込むための部分である。
【0023】
図2に示す実施形態では、ロータヨーク4の底面部4bに、ステータ側のコイル24を含むロータヨーク4の内側を冷却するための通気孔4eを複数開設してある。通気孔4eを開設することによって、ロータヨーク4の内側と外部とが連通する結果、ロータヨーク4の内側が冷却される。これによりインペラハブ6の内部に熱がこもりにくくなるので、発熱に伴うロータヨーク4及びインペラハブ6の寸法変化が減少する。従って、駆動に伴って繰り返し生ずる熱サイクルに起因するクラックの発生を抑制することができる。
【0024】
次に、図3を用いてインペラ1の構成と製造方法とについて説明する。インペラ1を製造するに際しては、先ず、インサート成形により金属素材の回転軸2をロータヨーク4に固定する。ここでは、ダイカスト用金型に回転軸2とカップ状のロータヨーク4とをセットし、金属材料(例えば、ダイカスト材であるアルミニウム材料や亜鉛材料)を金型に加圧注入して、回転軸2とロータヨーク4の突起部4cとの間にボス部3を形成して、回転軸2とロータヨーク4とを固定する。
【0025】
図3に示す実施形態では、ボス部3の中に複数の突起部4cを埋設しているので、ボス部3とロータヨーク4との結合強度を向上させることができる。また、図3に示す実施形態では、回転軸2の端部におけるボス部3との接合面にローレット2aを刻設して、回転軸2とボス部3との結合強度を向上させてある。ダイカストによって回転軸2とロータヨーク4との間にボス部3を形成することにより、回転軸2とロータヨーク4との同芯度を向上させることができ、かつ回転軸2とロータヨーク4とを強固に固着することができる。
【0026】
次に、回転軸2を固着したロータヨーク4を樹脂成形用金型内にセットした後、モールド用の合成樹脂を金型内に射出注入してインサート成形を行う。合成樹脂を用いてカップ状のロータヨーク4における円筒部4aの外周面を覆ってインペラハブ6を形成し、その外側に複数の羽根7を成形する。更にこのモールド用の合成樹脂を、円筒部4aの軸方向両端部に沿って、インペラハブ6から回転軸2が存在する軸心方向に向けて延出させることで、円筒部4aの軸方向両端部に、底面側フランジ部8、及び、開放端側フランジ部5を形成する。
【0027】
この底面側フランジ部8及び開放端側フランジ部5を用いて、円筒部4aを両側から挟持することによって、インペラハブ6とロータヨーク4とを強固に固定することができる。開放端側フランジ部5は、インペラハブ6をインサート成形する際に同時に形成してもよいし、インペラハブ6を成形した後に別部品を接着や超音波溶着等により接合してもよい。
【0028】
樹脂成形用金型からインサート成形したインペラ1を取り出し、ロータヨーク4の円筒部4aの内周面にロータマグネット12を固着し、ステータベース26の軸受けにインペラ1の回転軸2を挿入して回動自在に固定すると、図1に示す軸流ファン10が完成する。
【0029】
図3に示す実施形態では、ロータヨーク4における底面部4bの外側表面を、モールド用の合成樹脂で覆わずに、直接外部に露出させた構造としている。回転するロータヨーク4の底面部4bを外部に露出した構造とすることによって、ロータヨーク4の底面部4bからの放熱を促進することができる。従って、発熱に伴うロータヨーク4及びインペラハブ6の寸法変化が減少するので、熱サイクルに起因して生ずるクラックの発生を抑制することができる。なお、コイル24の発熱量が少ない場合には、ロータヨーク4の底面部4bを外部に露出させた構造とせずに、ロータヨーク4の底面部4bの外側全面を、モールド用の合成樹脂で覆ってもよい。
【0030】
次に、図3及び図4を用いて、ロータヨーク4の円筒部4aと、インペラハブ6との接合部に形成した空隙9の形状について説明する。ロータヨーク4の円筒部4aとインペラハブ6との接合部には、回転軸2と平行な複数の空隙9を開設してある。空隙9は、図4に示すような半円形状の断面で開設しても良いし、他にも矩形状の断面等を用いることができる。空隙9は、例えば図4に示すように、円周上における均等の位置に形成することが好ましいが、回転のバランスが取れる配置であれば、不均等であっても良い。
【0031】
図3に示すように、空隙9の高さHと、インペラハブ6の残厚Tは、インペラハブ6の素材の引張強さや、熱膨張係数の差、寸法的な制約等から勘案して、同程度の寸法(H≒T)に設定することができる。また、空隙9の幅Dと開放端側フランジ部5の幅Bの寸法は、例えば同程度の寸法(D≒B)に設定することができる。
【0032】
このように、ロータヨーク4の円筒部4aとインペラハブ6との接合部に複数の空隙9を形成したことにより、ロータヨーク4の円筒部4aとインペラハブ6とが全周にわたって接合しないように構成している。これにより、金属製のロータヨーク4と合成樹脂製のインペラハブ6との間での熱膨張率の差に起因して、相互の部材にそれぞれ異なる変形が生じた場合であっても、空隙9の存在によってインペラハブ6の変形を許容することができる。従って、インペラハブ6内部に生ずる応力を減少させることができるので、インペラハブ6に生ずるクラックを抑制することができる。
【0033】
次に、図5及び図6を用いて、ロータヨークの他の形状の実施形態について説明する。図5は、ロータヨーク104をインサート成形したインペラ101の側面断面図である。図6は、図5に示すロータヨーク104の底面図である。なお、図3及び図4に示した部位と同一の作用、効果を奏する部位については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図5及び図6に示すように、ロータヨーク104における円筒部104aの開放端には、径方向外側に向けて切除したスカート部104hを形成してある。スカート部104hを形成したロータヨーク104を用いてインサート成形を行ってインペラ101を構成することにより、ロータヨーク104とインペラハブ6との間における回転方向の剛性や結合力を向上させることができる。図6に示す実施形態では、スカート部104hの外形形状は六角形に形成しているが、これに限定されるものではなく、他の多角形の形状であっても良い。更に、スカート部104hの切除した面に凹凸を付けることによって、回転方向の剛性や結合力をより強固にすることができる。またスカート部104hの外形形状が円形で外周縁にギザギザ状の凹凸を形成しても同様の効果を有する。
【符号の説明】
【0035】
1、101 インペラ
2 回転軸
2a ローレット
3 ボス部
4、104 ロータヨーク
4a、104a 円筒部
4b 底面部
4c 突起部
4e 通気孔
4f 切込
5 開放端側フランジ部
6 インペラハブ
7 羽根
8 底面側フランジ部
9 空隙
10 軸流ファン
12 ロータマグネット
22 コア
24 コイル
26 ステータベース
104h スカート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に回転軸を有するカップ状のロータヨークと、
前記ロータヨークをインサート部品として、前記ロータヨークの円筒部外周面に、インペラハブ、及び、当該インペラハブから放射状に伸長する複数の羽根をインサート成形にて形成したインペラと、
を備える軸流ファンにおいて、
前記ロータヨークにおける前記円筒部の軸方向両端部を、前記インペラハブから回転軸の軸心方向に向けて延出させた底面側フランジ部、及び、開放端側フランジ部で挟持してなることを特徴とする軸流ファン。
【請求項2】
前記ロータヨークの円筒部外周面と前記インペラハブとの境界部には、前記回転軸と平行な空隙を複数開設したことを特徴とする請求項1に記載の軸流ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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