説明

軸箱支持構造及び軸箱支持構造の組立方法

【課題】軸箱体の軸距の変動を抑制でき、且つ作業性に優れる軸箱支持構造及び軸箱支持構造の組立方法を提供する。
【解決手段】軸箱支持構造1では、積層ゴム28が支持棒10の軸周りに分割された分割部分28a,28bを有している。また、嵌合部材30は、支持棒10の軸周りに分割された押え金30a,30bを有している。そして、各分割部分28a,28bは、押え金30a,30bがボルト38によって締結されることにより予圧縮されている。これにより、支持腕12及び支持棒10の固定と、積層ゴム28への予圧縮の付与とを同時に行うことができるので、組立時やメンテナンス時における作業性に優れたものとなる。また、予圧縮が付与された積層ゴム28を介して支持棒10と支持腕12とを固定することにより、軸箱体6の車軸回りの回転変位を抑え、軸距の変動を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の軸箱支持構造及び軸箱支持構造の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の台車に設けられる軸箱支持構造の一つとして、軸梁式の軸箱支持構造がある。一般的に、軸梁式の軸箱支持構造は、鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、軸箱体上に配設され、軸箱体に対して台車枠を弾性支持する軸ばねと、軸箱体から側梁に沿って延在すると共に、積層ゴムを介して台車枠に固定される支持腕とを備えている。
【0003】
ここで、例えば特許文献1に記載の軸箱支持装置では、台車枠の側梁に設けた支持棒の軸周りに同心円状に配置した積層ゴムが上下方向に撓むことで、見かけの回転中心を支持棒よりも遠方にすることにより、軸箱体の車軸回りの回転変位の減少を図っている。
【特許文献1】特許2670591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の軸箱支持装置のように、軸箱体の車軸回りの回転変位を抑えることは、回転変位に起因して変位する車軸と支持腕先端(支持腕及び支持棒の固定部分)との間の距離の変位量の減少に寄与するので、軸距(車軸間の距離)の変動を抑制できる点で有用である。しかしながら、従来の軸箱支持装置では、同心円状に配置した積層ゴムを支持腕の先端に形成された円筒状の孔に同心状に圧入させなければならず、組立時やメンテナンス時における作業性の低下が問題であった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、軸箱体の軸距の変動を抑制でき、且つ作業性に優れる軸箱支持構造及び軸箱支持構造の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る軸箱支持構造は、鉄道車両の台車に設けられた軸箱支持構造であって、鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、軸箱体上に配設され、軸箱体に対して台車枠を主として上下方向に弾性支持する軸ばねと、台車枠における側梁の下部に鉛直に配設された支持棒と、軸箱体から側梁に沿って延在すると共に、積層ゴムを介して支持棒に固定され、軸箱体に対して台車枠を主として水平方向に弾性支持する支持腕と、を備え、支持棒と支持腕との固定部において、支持腕の一端には、支持棒に嵌合する嵌合部材が設けられ、積層ゴム及び嵌合部材は、支持棒の軸周りに分割された分割部分をそれぞれ有し、積層ゴムの各分割部分は、嵌合部材の分割部分同士が締結部材によって締結されることにより予圧縮されていることを特徴とする。
【0007】
この軸箱支持構造では、積層ゴム及び嵌合部材が支持棒の軸周りに分割された分割部分を有している。そして、その積層ゴムの各分割部分は、支持棒を挟んで配置され、嵌合部材の各分割部分が締結部材によって締結されることにより予圧縮されている。これにより、支持腕及び支持棒の固定と、積層ゴムへの予圧縮の付与とを同時に行うことができるので、積層ゴムを圧入するといった作業を省略することができ、組立時やメンテナンス時における作業性に優れたものとすることができる。また、予圧縮が付与された積層ゴムを介して支持棒と支持腕とを固定することにより、積層ゴムが上下方向に撓むことで、見かけの回転中心が支持棒よりも遠方になる。従って、軸箱体の車軸回りの回転変位が抑えられ、回転変位に起因して変位する車軸と支持腕先端との間の距離の変位量が減少するので、軸距の変動を抑制できる。
【0008】
また、積層ゴム及び嵌合部材は、鉄道車両の前後方向に2分割されていることが好ましい。鉄道車両は、走行・停止の際に前後方向の荷重が特に大きくなる。そこで、積層ゴム及び嵌合部材を上述のように配置することで、積層ゴムに対して鉄道車両の前後方向から予圧縮力が付与されるので、積層ゴムの前後方向の耐久性を十分に高められる。
【0009】
また、嵌合部材は、支持棒を挟んで鉄道車両の左右方向に対向する一対の壁部を有し、壁部と支持棒及び積層ゴムとの間に空隙が設けられていることが好ましい。この場合、鉄道車両がカーブを走行する際など、左右方向の荷重が大きくなった場合に、積層ゴム及び支持棒が嵌合部材内で変位できる。
【0010】
本発明に係る軸箱支持構造の組立方法は、鉄道車両の台車に設けられ、鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、軸箱体上に配設され、軸箱体に対して台車枠を上下方向に弾性支持する軸ばねと、台車枠における側梁の下部に鉛直に配設された支持棒と、軸箱体から側梁に沿って延在すると共に、積層ゴムを介して支持棒に固定され、軸箱体に対して台車枠を水平方向に弾性支持する支持腕と、を備え、支持棒と支持腕との固定部において、支持腕の一端に支持棒に嵌合する嵌合部材が設けられた軸箱支持構造の組立方法であって、支持棒の軸周りに分割された分割部分を有する積層ゴム及び嵌合部材を用意する工程と、積層ゴムの分割部分を支持棒の軸周りに配置する工程と、積層ゴムの分割部分を囲うように嵌合部材の分割部分を配置する工程と、嵌合部材の分割部分同士を締結部材によって締結することにより、積層ゴムの各分割部分を予圧縮する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
この軸箱支持構造の組立方法では、支持棒の軸周りに分割された分割部分を有する積層ゴム及び嵌合部材を用意し、それを支持棒の軸周りに配置する。そして、積層ゴムの分割部分を囲うように嵌合部材の分割部分を配置し、嵌合部材の分割部分同士を締結部材によって締結することにより、積層ゴムの各分割部分を予圧縮する。これにより、支持腕及び支持棒の固定と、積層ゴムへの予圧縮の付与とを同時に行うことができる。従って、積層ゴムを圧入するといった作業を省略することができ、組立時やメンテナンス時における作業性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸箱体の軸距の変動を抑制でき、且つ組立時の作業性を十分に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る軸箱支持構造及び軸箱支持構造の組立方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る軸箱支持構造を鉄道車両の側面から見た正面図である。図1に示すように、軸箱支持構造1は、鉄道車両の台車に設けられる軸梁式軸箱支持構造であり、鉄道車両の車軸4(図2参照)を支持する軸箱体6と、軸箱体6上に配設された軸ばね8と、台車枠2における側梁2aの下部に配設された支持棒10と、軸箱体6から側梁2aに沿って延在し、支持棒10に固定される支持腕12とを備えている。なお、図1では、台車における軸箱支持構造1の一方のみを図示しているが、図示しない他方の構成も同様である。
【0015】
軸箱体6は、一対の車輪14に固定された車軸4を回転自在に支持する軸受16を有している。一対の車輪14及び車軸4によって構成される輪軸18(図2参照)は、台車枠2の前後にそれぞれ一体ずつ軸箱体6(軸受16)を介して配置され、台車枠2を支持している。軸ばね8は、台車枠2における側梁2aの先端に設けられたばね帽20内に配置され、軸箱体6に対して台車枠2を主として上下方向に弾性支持する。軸ばね8には、例えばコイルばねが用いられ、台車枠2及び車体の上下方向の荷重の大半を負担するためのばね定数が設定されている。
【0016】
支持棒10は、断面六角形状となっており、2つの頂部が鉄道車両の前後方向に一致するように、ばね帽20よりも基端側の側梁2aの下部に鉛直に配設されている。支持棒10の上端は、側梁2aの下部にボルト22によって固定され、支持棒10の下端は、軸箱体6の底部の位置と略同位置まで伸びている。また、支持棒10の下端には、支持棒10と支持腕12との固定部24の落下を防止するための板状の係止部材(ストッパ)26が溶接されている。この、係止部材26は、台車吊り上げ時の吊金具としても機能する。
【0017】
支持腕12は、軸箱体6から台車枠2の側梁2aに沿って水平方向に延在すると共に、一端が固定部24を介して支持棒10に固定されている。支持腕12の他端は、軸箱体6の側部に接合されている。支持腕12は、固定部24に積層ゴム28(後述)が介在することにより、軸箱体6に対して台車枠2を主として水平方向(前後方向及び左右方向)に弾性支持している。
【0018】
続いて、上述した支持棒10と支持腕12との固定部24について更に詳細に説明する。図2は、図1に示す軸箱支持構造の平面図であり、固定部24の構成を詳細に示す図である。
【0019】
同図に示すように、固定部24は、積層ゴム28と、嵌合部材30とを含んで構成されている。積層ゴム28は、例えば鋼板間にゴムが注入されてなるシェブロンゴムであり、支持棒10の軸周りにおいて鉄道車両の前後方向に2分割された分割部分28a,28bを有している。
【0020】
分割部分28a,28bは、支持棒10を挟んで一対対向して配置されている。分割部分28aは、鉄道車両の前後方向に一致する支持棒10の軸箱体6側の頂部を形成する2つの面に密着するように、断面V字状となっている。一方、分割部分28bは、分割部分28aが密着する2つの面と反対側の2つの面に密着するように、断面V字状となっている。
【0021】
嵌合部材30は、支持棒10の軸周りにおいて鉄道車両の前後方向に2分割された押え金(分割部分)30a,30bを有している。押え金30aは、支持腕12における支持棒10側の端部(一端)に接合されている。押え金30aは、軸箱体6側の分割部分28aに密着するように、断面V字状をなす壁部32aを有している。支持腕12の先端は、この壁部32aに沿って接合されている。また、押え金30aは、壁部32aの両側から支持棒10側に向かってそれぞれ伸びる側壁部34a,34bを有している。
【0022】
一方、押え金30aに対向する押え金30bは、押え金30aと同様に、分割部分28bに密着するように、V字状をなす壁部32bを有している。また、押え金30bは、壁部32bの両側から支持棒10側に向かってそれぞれ伸びる側壁部34a,34bを有している。各側壁部34a,34bは、壁部32a,32bよりも厚く形成されており、側壁部34a,34bの外側部分には、所定の間隔をもってボルト締結用の切欠部36が上下2箇所に形成されている(図1参照)。
【0023】
上述のような構成を有する押え金30a,30bは、支持棒10を挟んで配置された積層ゴム28の各分割部分28a,28bを囲むように対向して配置され、切欠部36にそれぞれ形成された締結孔にそれぞれボルト38を螺入することにより、鉄道車両の前後方向から締結されている。押え金30a,30b同士が締結された状態では、積層ゴム28の各分割部分28a,28bに鉄道車両の前後方向から予圧縮が付与されていると共に、嵌合部材30が積層ゴム28を介して支持棒10に嵌合されている。
【0024】
また、押え金30a,30b同士がボルト38により締結された嵌合部材30では、押え金30aの側壁部34aと押え金30bの側壁部34aとが結合し、かつ押え金30aの側壁部34bと押え金30bの側壁部34bとが結合することにより、支持棒10を挟んで鉄道車両の左右方向に対向する一対の内壁(壁部)40a,40bが形成されている。内壁40a,40bと支持棒10及び積層ゴム28との間には、一定の空隙S1,S2が設けられている。この空隙S1,S2により、支持棒10及び積層ゴム28は、嵌合部材30内で鉄道車両の左右方向への変位が許容されている。
【0025】
続いて、上述した軸箱支持構造1の組立方法を図3〜図5を参照しながら説明する。図3〜図5は、軸箱支持構造1の第1〜第3組立工程を示す図である。
【0026】
図3に示すように、まず、軸箱体6と、支持棒10と、分割部分28a,28bを有する積層ゴム28と、押え金30a,30bを有する嵌合部材30を用意する。次に、分割部分28a,28bを支持棒10の軸周りにおいて鉄道車両の前後方向に配置し、その分割部分28a,28bを鉄道車両の前後方向から囲うように押え金30a,30bを配置する。続いて、押え金30a,30b同士を締結孔にそれぞれボルト38を螺入することにより締結する。これにより、軸箱体6と支持棒10とを、嵌合部材30及び積層ゴム28が先端に設けられた支持腕12を介して固定すると共に、積層ゴム28の分割部分28a,28bに予圧縮を付与する(第1組立工程)。
【0027】
次に、図4に示すように、一対の車輪14と車軸4とから構成された輪軸18を用意し、車軸4を軸箱体6の軸受16に圧入する。そして、軸箱体6と輪軸18とを組み立てる。また、軸箱体6及び下金をボルトによって締結する(第2組立工程)。軸箱体6と輪軸18とを組み立てた後、図5に示すように、ばね帽20が側梁2aの先端に溶接された台車枠2と、軸ばね8とを用意する。そして、軸箱体6の上部に緩衝ゴムや調整板と共に軸ばね8を配設する。
【0028】
続いて、軸ばね8を囲うようにばね帽20が配設されるように、台車枠2を配置する。これにより、台車枠2が軸箱体6を介して輪軸18に支持されることになる。そして最後に、支持棒10の上端を、台車枠2の側梁2aの下部にボルト22によって固定する(第3組立工程)。以上のようにして軸箱支持構造1が組み立てられる。
【0029】
以上のような構成を有する軸箱支持構造1では、積層ゴム28が支持棒10の軸周りに分割された分割部分28a,28bを有している。また、嵌合部材30は、支持棒10の軸周りに分割された押え金30a,30bを有し、分割部分28a,28bを囲うように配置されている。そして、積層ゴム28の各分割部分28a,28bは、嵌合部材30の押え金30a,30bがボルト38によって締結されることにより予圧縮されている。これにより、支持腕12及び支持棒10の固定と、積層ゴム28への予圧縮の付与とを同時に行うことができるので、積層ゴム28を圧入するといった作業を省略することができ、組立時やメンテナンス時における作業性に優れたものとすることができる。また、予圧縮が付与された積層ゴム28を介して支持棒10と支持腕12とを固定することにより、積層ゴム28が上下方向に撓むことで、見かけの回転中心が支持棒よりも遠方になる。従って、軸箱体6の車軸回りの回転変位が抑えられ、回転変位に起因して変位する車軸4と支持腕12先端との間の距離の前後方向の変位量が減少するので、軸距(車軸間の距離)の変動を抑制できる。
【0030】
ここで、従来の軸箱体構造にあっては、支持腕の長さを短くすることにより、軸距が大きく変動するといった問題があった。これに対し、本実施形態に係る軸箱体構造1では、軸距(車軸間の距離)の変動を抑制することができるので、支持腕12の長さを短くした場合であっても、軸距の変動を小さく保つことができる。従来の軸箱体構造よりも支持腕12を短くすることにより、軸受16と支持腕12先端との距離が短くなり、軸受16回りのモーメントが小さくなるので、軸受16のこじり量(軸受16及び車軸4の接触圧の変動)を低減することができる。また、支持腕12の長さを短くすることで、軸箱体6の軽量化を図ることができ、ばね下重量を低減させることが可能となる。
【0031】
また、積層ゴム28の分割部分28a,28b及び嵌合部材30の押え金30a,30bは、鉄道車両の前後方向に2分割されている。鉄道車両は、走行・停止の際に前後方向の荷重が特に大きくなる。そこで、積層ゴム28及び嵌合部材30を支持棒10を挟んで鉄道車両の前後方向に分割して配置することで、積層ゴム28に対して鉄道車両の前後方向から予圧縮力が付与されるので、積層ゴム28の前後方向の耐久性を十分に高められる。
【0032】
また、嵌合部材30は、支持棒10を挟んで鉄道車両の左右方向に対向する一対の内壁40a,40bを有し、内壁40a,40bと支持棒10及び積層ゴム28との間に一定の空隙S1,S2が設けられている。この場合、鉄道車両がカーブを走行する際など、左右方向の荷重が大きくなった場合に、積層ゴム28及び支持棒10が嵌合部材30内で変位できる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、支持棒10の軸周りの積層ゴム28及び嵌合部材30を鉄道車両の前後方向に2分割する構成としたが、分割数は何分割であってもよい。また、分割方向は鉄道車両の前後方向に限定されない。
【0034】
また、上記実施形態では、各分割部分28a,28bの断面形状をV字状としたが、各分割部分28a,28bの形状は適宜選択することができる。これに伴い、支持棒10の形状及び押え金30a,30bの壁部32a,32bの形状も適宜変更することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、押え金30a,30bを4本のボルト38によって締結しているが、ボルト38のサイズ及び本数は、積層ゴム28に必要な予圧縮力によって適宜変更できる。これに伴い、切欠部36及び切欠部36にそれぞれ形成される締結孔も適宜変更することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、軸箱支持構造1の組立方法を上記手順としたが、他の手順で軸箱支持構造1を組み立てることもできる。例えば、図6に示すように、まず、支持腕12を介して押え金30aが連結された軸箱体6と、一対の車輪14と車軸4とから構成された輪軸18とを用意する。そして、車軸4を軸箱体6の軸受16に圧入する。車軸4の圧入後、軸箱体6と輪軸18とを組み立てる。また、軸箱体6及び下金をボルトによって締結する(第1組立工程)。
【0037】
次に、図7に示すように、ばね帽20が側梁2aの先端に溶接された台車枠2と、軸ばね8と、分割部分28a,28bを有する積層ゴム28とを用意する。台車枠2には、予め支持棒10を溶接しておく。そして、軸箱体6の上部に緩衝ゴムや調整板と共に軸ばね8を配設する。軸ばね8を配設した後、軸ばね8を囲うようにばね帽20が配設されるように、台車枠2を配置する。これにより、台車枠2が軸箱体6を介して輪軸18に支持されることになる。
【0038】
続いて、分割部材28aが押え金30aに囲われるように、分割部分28a,28bを支持棒10の軸周りにおいて鉄道車両の前後方向に配置する(第2組立工程)。そして、図8に示すように、押え金30bを分割部分28bを囲うように配置し、押え金30a,30b同士を締結孔にそれぞれボルト38を螺入することにより締結する。これにより、軸箱体6と支持棒10とを嵌合部材30及び積層ゴム28が先端に設けられた支持腕12介して固定すると共に、積層ゴム28の分割部分28a,28bに予圧縮を付与する。そして最後に、係止部材26をボルト42によって支持棒10に固定する(第3組立工程)。以上のようにして軸箱支持構造1が組み立てられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る軸箱支持構造を鉄道車両の側面から見た正面図である。
【図2】図1に示す軸箱支持構造の平面図である。
【図3】軸箱支持構造の第1組立工程を示す図である。
【図4】軸箱支持構造の第2組立工程を示す図である。
【図5】軸箱支持構造の第3組立工程を示す図である。
【図6】変形例に係る軸箱支持構造の第1組立工程を示す図である。
【図7】変形例に係る軸箱支持構造の第2組立工程を示す図である。
【図8】変形例に係る軸箱支持構造の第3組立工程を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…軸箱支持装置、2…台車枠、2a…側梁、4…車軸、6…軸箱体、8…軸ばね、10…支持棒、12…支持腕、24…固定部、28…積層ゴム、28a,28b…分割部分、30…嵌合部材、30a,30b…押え金(分割部分)、38…ボルト(締結部材)、40a,40b…内壁(壁部)、S1,S2…空隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の台車に設けられた軸箱支持構造であって、
前記鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、
前記軸箱体上に配設され、前記軸箱体に対して台車枠を主として上下方向に弾性支持する軸ばねと、
前記台車枠における側梁の下部に鉛直に配設された支持棒と、
前記軸箱体から前記側梁に沿って延在すると共に、積層ゴムを介して前記支持棒に固定され、前記軸箱体に対して前記台車枠を主として水平方向に弾性支持する支持腕と、を備え、
前記支持棒と前記支持腕との固定部において、
前記支持腕の一端には、前記支持棒に嵌合する嵌合部材が設けられ、
前記積層ゴム及び前記嵌合部材は、前記支持棒の軸周りに分割された分割部分をそれぞれ有し、
前記積層ゴムの各分割部分は、前記嵌合部材の分割部分同士が締結部材によって締結されることにより予圧縮されていることを特徴とする軸箱支持構造。
【請求項2】
前記積層ゴム及び前記嵌合部材は、前記鉄道車両の前後方向に2分割されていることを特徴とする請求項1記載の軸箱支持構造。
【請求項3】
前記嵌合部材は、前記支持棒を挟んで前記鉄道車両の左右方向に対向する一対の壁部を有し、前記壁部と前記支持棒及び前記積層ゴムとの間に空隙が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の軸箱支持構造。
【請求項4】
鉄道車両の台車に設けられ、
前記鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、
前記軸箱体上に配設され、前記軸箱体に対して台車枠を上下方向に弾性支持する軸ばねと、
前記台車枠における側梁の下部に鉛直に配設された支持棒と、
前記軸箱体から前記側梁に沿って延在すると共に、積層ゴムを介して前記支持棒に固定され、前記軸箱体に対して前記台車枠を水平方向に弾性支持する支持腕と、を備え、
前記支持棒と前記支持腕との固定部において、前記支持腕の一端に前記支持棒に嵌合する嵌合部材が設けられた軸箱支持構造の組立方法であって、
前記支持棒の軸周りに分割された分割部分を有する前記積層ゴム及び前記嵌合部材を用意する工程と、
前記積層ゴムの分割部分を前記支持棒の軸周りに配置する工程と、
前記積層ゴムの分割部分を囲うように前記嵌合部材の分割部分を配置する工程と、
前記嵌合部材の分割部分同士を締結部材によって締結することにより、前記積層ゴムの各分割部分を予圧縮する工程とを含むことを特徴とする軸箱支持構造の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−70159(P2010−70159A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242681(P2008−242681)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】