説明

軸箱支持装置

【課題】電気絶縁性を確保しつつ、耐久性を確保できる絶縁構造を実現できる軸箱支持装置を提供する。
【解決手段】軸箱支持装置1は、鉄道車両の車軸4を支持する軸箱体3と、軸箱体3と台車枠10との間に車軸4を挟んで並設され、台車枠10を弾性支持する一対の軸ばね5とを備え、軸箱体3は、防振ゴム20と軸ばね5を支持する軸ばね座(下)18bとを介してコイルばね17を支持する第1張出部12aとを有し、軸ばね座(下)18bは、鉄道車両の下方に突出する突出部24bを有し、第1張出部12aは、軸ばね座(下)18bの突出部24bが挿通される挿通穴26を有し、挿通穴26の内周面26aには、突出部24bの外周面24bAと摺動可能に面接触すると共に軸ばね座(下)18bと第1張出部12aとを絶縁するブシュ30が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用台車の軸箱支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の台車に設けられた軸箱支持装置の一つとして、軸梁式の軸箱支持装置がある。例えば、特許文献1に記載の軸箱支持装置は、鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、軸箱体上に配設され、台車枠を弾性支持する軸ばねと、軸箱体から台車枠の側梁に沿って延在する支持腕とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−160777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道車両では、パンタグラフから電流を取り込み、その電流が主電動機などの装置を経由した後に接地装置を介して車輪から帰線電流としてレールに流される。電流は、地上や鉄道車両の状態の変化により、意図しない経路に流れる迷走電流となることがある。迷走電流が軸受に流れた場合には、軸受が電食により損傷して鉄道車両の走行に不具合が生じるおそれがある。したがって、軸箱支持装置では、迷走電流が軸受に流れないように絶縁することが望ましい。
【0005】
そこで、軸受に電流が流れないようにするための構成として、軸ばねの上部に配置される軸ばね座(上)と軸ばねとの間に絶縁板を介在させているものがある。これにより、軸ばね以下の装置に電流が流れないように電気絶縁を図っている。しかしながら、この絶縁板は、負荷荷重による圧縮力や衝撃などにより破損するおそれがあり、絶縁に対する信頼性が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電気絶縁性を確保しつつ、耐久性を確保できる絶縁構造を実現できる軸箱支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る軸箱支持装置は、鉄道車両の台車に設けられた軸箱支持装置であって、鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、軸箱体と台車枠との間に車軸を挟んで並設され、台車枠を弾性支持する一対の軸ばねと、を備え、軸箱体は、防振ゴムと軸ばねを支持する軸ばね座とを介して軸ばねを支持する軸ばね支持部を有し、軸ばね座は、下方に突出する突出部を有し、軸ばね支持部は、軸ばね座の突出部が挿通される挿通穴を有し、挿通穴の内面には、突出部の外面と摺動可能に面接触すると共に軸ばね座と軸ばね支持部とを絶縁する絶縁部材が配設されていることを特徴とする。
【0008】
この軸箱支持装置では、絶縁部材と面接触する軸ばね座の突出部が絶縁部材に対して、軸ばねの負荷荷重による防振ゴムの撓みにより上下方向に摺動する。そのため、絶縁部材は、軸ばねの負荷荷重による圧縮力を直接受けない。このように、絶縁部材に対して過度の荷重が加えられないため、絶縁部材の破損を抑制することができる。また、防振ゴム及び絶縁部材により、軸ばね座と軸ばね座支持部、すなわち台車枠と軸箱体との電気絶縁性を確保することができる。したがって、電気絶縁性を確保しつつ、耐久性を確保できる絶縁構造を実現できる。
【0009】
突出部は、その下端部が絶縁部材の下端部よりも常に下方に位置するように挿通穴に挿通されていることが好ましい。これにより、絶縁部材は、その全面が突出部の外面と、負荷荷重による上下変位があっても常に面接触する。したがって、絶縁部材の内面が突出部の外面以外と接触しない、つまり突出部の下端部(先端部)と絶縁部材の内面とが接触しないため、絶縁部材が偏磨耗することを防止できる。したがって、絶縁部材の耐久性を更に向上させることができる。
【0010】
絶縁部材は、挿通穴の内面の一部又は全面に亘って配設されていることが好ましい。これにより、電気絶縁性をより確実に確保できる。
【0011】
本発明に係る軸箱支持装置は、鉄道車両の台車に設けられた軸箱支持装置であって、鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、軸箱体上に防振ゴム及び軸ばね座を介して配設され、台車枠を弾性支持する軸ばねと、軸箱体から台車枠の側梁に沿って延在する支持腕と、を備え、軸箱体は、上方に突出する突出部を有し、軸ばね座は、軸箱体の突出部が挿通される挿通穴を有し、突出部の外面には、挿通穴の内面と摺動可能に面接触すると共に軸ばね座と軸箱体とを絶縁する絶縁部材が配設されていることを特徴とする。
【0012】
この軸箱支持装置では、絶縁部材と面接触する軸ばね座が突出部に配設された絶縁部材に対して、軸ばねの負荷荷重による防振ゴムの撓みにより上下方向に摺動する。そのため、絶縁部材は、軸ばねの負荷荷重による圧縮力を直接受けない。このように、絶縁部材に対して過度の荷重が加えられないため、絶縁部材の破損を抑制することができる。また、防振ゴム及び絶縁部材により、軸ばね座と軸箱体、すなわち台車枠と軸箱体との電気絶縁性を確保することができる。したがって、電気絶縁性を確保しつつ、耐久性を確保できる絶縁構造を実現できる。
【0013】
突出部は、絶縁部材の下端部が軸ばね座の下端部よりも常に上方に位置するように挿通穴に挿通されていることが好ましい。これにより、絶縁部材は、その全面が挿通穴の内面と負荷荷重による上下変位があっても常に面接触する。したがって、絶縁部材の外面が突出部の内面以外と接触しない、つまり軸ばね座の下端部と絶縁部材の外面とが接触しないため、絶縁部材が偏磨耗することを防止できる。したがって、絶縁部材の耐久性を更に向上させることができる。
【0014】
絶縁部材は、突出部の外面の一部又は全面に亘って配設されていることが好ましい。これにより、電気絶縁性をより確実に確保できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気絶縁性を確保しつつ、耐久性を確保できる絶縁構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る軸箱支持装置を鉄道車両の側面から見た図である。
【図2】図1に示す軸箱支持装置を上から見た図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】第2実施形態に係る軸箱支持装置を鉄道車両の側面から見た図である。
【図5】図4に示す軸箱支持装置を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る軸箱支持装置を鉄道車両の側面から見た図である。図2は、図1に示す軸箱支持装置を上から見た図である。図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【0019】
図1に示すように、軸箱支持装置1は、鉄道車両の台車2に設けられる並列ばね式の軸箱支持装置であり、鉄道車両の車軸4を支持する軸箱体3と、車軸4を挟んで並設される一対の軸ばね5とを備えている。なお、図1では、台車の前後若しくは左右に設けられる軸箱支持装置1の一方のみを図示しているが、図示しない他方も同様の構成を有している。また、図1は、空車時の状態を示している。
【0020】
軸箱体3は、車軸4を回転自在に支持する軸受(図示しない)が配設された軸受部6を有している。軸箱体3は、台車枠10の側梁10aに連結されている。また、軸箱体3の下部には、車軸4(軸受部6)を挟んで鉄道車両の前後方向両側に張り出し、一対の軸ばね5を支持する座(軸ばね支持部)12が設けられている。座12は、軸ばね5の一方を支持する第1張出部12aと、軸ばね5の他方を支持する第2張出部12bとから構成されている。
【0021】
一対の軸ばね5は、それぞれコイルばね14から構成されている。一方のコイルばね14は、軸箱体3よりも側梁10aの先端側に配設されている。コイルばね14は、第1張出部12aと、側梁10aとの間に軸ばね座18a,18b及び電気絶縁性を有する防振ゴム20を介して配設されている。より具体的には、コイルばね14は、軸ばね座(上)18aと、軸ばね座(下)18bとの間に配置されている。軸ばね座(下)18bと第1張出部12aとの間には、上記の防振ゴム20及び単数又は複数枚の調整板22が介在している。コイルばね14は、軸箱体3に対して台車枠10を主として上下方向に弾性支持する。
【0022】
他方のコイルばね14は、軸箱体3よりも側梁10aの基端側に配設されている。コイルばね14は、第2張出部12bと、側梁10aとの間に軸ばね座(上)18a、軸ばね座(下)18b及び電気絶縁性を有する防振ゴム20を介して配設されている。
【0023】
続いて、軸箱支持装置1における絶縁構造について説明する。図3に示すように、軸ばね座(下)18bは、凸形状をなしており、コイルばね14と当接し、外形が円形状を呈するばね受部24aと、ばね受部24aから下方に伸び、円筒形状を呈する突出部24bとから構成されている。
【0024】
第1張出部12aには、軸ばね座(下)18bの突出部24bに対応する位置に、挿通穴26が設けられている。挿通穴26は、断面が略円形状を呈しており、軸ばね座(下)18bの突出部24bが挿通される。挿通穴26は、第1内周面(内面)26aと、第1内周面26aよりも径の小さい第2内周面26bとから構成されている。第1及び第2の内周面26a,26bの直径は、突出部24bの直径よりも大きく形成されており、これにより突出部24bは、挿通穴26において上下方向に移動可能に設けられている。
【0025】
挿通穴26の第1内周面26aと軸ばね座(下)18bの突出部24bの外周面24bAとの間には、ブシュ(絶縁部材)30が配設されている。ブシュ30は、例えばポリウレタンなどの絶縁性を有する材料から形成されており、円筒形状を呈している。ブシュ30の外周面30aは、挿通穴26の第1内周面26aに沿って配置されている。ブシュ30の内径は、突出部24bの直径と略同等、或いはそれよりもわずかに大きく形成されている。つまり、軸ばね座(下)18bの突出部24bは、ブシュ30に挿通されている。ブシュ30は、挿通穴26において第1内周面26aと第2内周面26bとの間に設けられた段差部分26cに載置されており、段差部分26cと調整板22とに挟持されて固定されている。
【0026】
ブシュ30の内周面30bは、軸ばね座(下)18bの突出部24bの外周面(外面)24bAと面接触している。ただし、この面接触というのは、両者がすきまばめの関係であるため、完全に面で接触しているわけではなく、擬似的な面接触状態である。突出部24bは、その下端部がブシュ30の下端部よりも常に下方に位置するように挿通穴26に挿通されている。つまり、突出部24bの上下方向の移動範囲(摺動範囲)は、突出部24bの外周面24bAがブシュ30の内周面30bと、負荷荷重による上下変位があっても常に面接触する範囲に設定されている。したがって、突出部24bの下端部は、ブシュ30の内周面30bと接触しない。
【0027】
このような構成により、軸箱支持装置1では、防振ゴム20及びブシュ30により第1張出部12aと軸ばね座(下)18bとが絶縁されている。そのため、電流は、防振ゴム20及びブシュ30により絶縁される。したがって、軸箱支持装置1では、軸受部6に電流が流れることが防止されている。
【0028】
以上説明したように、本実施形態では、絶縁部材であるブシュ30と擬似的面接触する軸ばね座(下)18bの突出部24bがブシュ30に対して、軸ばね5の負荷荷重による防振ゴム20の撓みにより上下方向に摺動する。そのため、ブシュ30は、コイルばね14の負荷荷重による圧縮力を直接受けない。このように、ブシュ30に対して過度の荷重が加えられないため、ブシュ30の破損を抑制することができる。また、防振ゴム20及びブシュ30により、台車枠10と軸箱体3との電気絶縁性を確保することができる。したがって、電流は、防振ゴム20及びブシュ30により絶縁されるため、軸受部6に流れることが防止される。以上のように、本実施形態では、電気絶縁性を確保しつつ、耐久性を確保できる絶縁構造を実現できる。
【0029】
また、突出部24bの下端部は、ブシュ30の内周面30bに接触しない。したがって、ブシュ30の内周面30bの偏磨耗が抑制されるため、ブシュ30の破損をより抑制できる。その結果、メンテナンス性の向上も図れる。
【0030】
また、従来のように板厚が薄く破損し易い絶縁板を用いないため、軸箱支持装置1を組み立てる際に絶縁板が割れないように慎重に作業を行う必要がない。したがって、ブシュ30を用いることにより、軸箱支持装置1の組み立て作業性の向上が図れる。さらに、軸箱支持装置1は、ブシュ30が耐久性を有しているため、絶縁部材の交換費用を低減でき、保守性に優れている。
【0031】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態に係る軸箱支持装置を鉄道車両の側面から見た図である。図5は、図4に示す軸箱支持装置を上から見た図である。
【0032】
図4及び図5に示すように、軸箱支持装置40は、鉄道車両の台車41に設けられる軸梁式軸箱支持装置であり、鉄道車両の車軸(図示しない)を支持する軸箱体42と、軸箱体42上に配設される軸ばね46と、軸箱体42から台車枠10の側梁10aに沿って延在する支持腕48とを備えている。なお、図4では、台車の前後若しくは左右に設けられる軸箱支持装置40の一方のみを図示しているが、図示しない他方も同様の構成を有している。また、図4は、空車時の状態を示している。
【0033】
軸箱体42は、車軸4を回転自在に支持する軸受部50を有している。軸ばね46は、コイルばねであり、内ばね46aと、内ばね46aの外側に配置される外ばね46bとから構成されている。内ばね46a及び外ばね46bは、台車枠10における側梁10aの先端に設けられたばね帽52内に配置され、軸箱体42に対して台車枠10を主として上下方向に弾性支持する。
【0034】
具体的には、内ばね46a及び外ばね46bは、ばね帽52内において、軸ばね座(上)54と軸ばね座(下)55との間に配置されている。軸ばね座(下)55は、防振ゴム56及び調整板58を介在させて軸箱体42に支持されている。軸ばね座(下)55は、上方に凸形状をなしており、内ばね46a及び外ばね46bと当接し、外形が円形状を呈するばね受部55aと、ばね受部55aから上方に伸び、先細の円筒形状を呈する凸部分55bとから構成されている。
【0035】
続いて、軸箱支持装置40における絶縁構造について説明する。軸ばね座(下)55には、挿通穴60が設けられている。挿通穴60は、軸ばね座(下)55の中央部分に貫通して形成されており、第1内周面(内面)60aと、第1内周面60aよりも径の小さい第2内周面60bと、第2内周面60bよりも径の小さい第3内周面60cとから構成されている。
【0036】
軸箱体42には、軸ばね座(下)55の挿通穴60に対応する部分に、上方に突出する略円柱状の突出部62が設けられている。突出部62は、防振ゴム56及び調整板58を介して軸ばね座(下)55の挿通穴60に挿通されている。突出部62は、先端部側の第1外周面(外面)62aと、基端部側で且つ第1外周面62aよりも直径の大きい第2外周面62bとを有している。第2外周面62bの直径は、軸ばね座(下)55の挿通穴60の第1内周面60aの径よりも小さい。
【0037】
突出部62の第1外周面62aには、ブシュ(絶縁部材)64が設けられている。ブシュ64は、例えばポリウレタンなどの絶縁性を有する材料から形成されており、円筒形状をなしている。ブシュ64は、第1外周面62aに沿って配置され、第1外周面62aと第2外周面62bとの間に設けられた段差部分62cに載置されている。
【0038】
ブシュ64の上端側(突出部62の上端面)には、ブシュ押工金66が設けられている。ブシュ押工金66は、略環状を呈しており、ブシュ64の上端面に当接すると共に、ボルトBにより突出部62に固定されている。これにより、ブシュ64は、段差部分62cとブシュ押工金66との間に固定されている。ブシュ押工金66の直径は、軸ばね座(下)55の挿通穴60の第1内周面60aの径よりも小さい。したがって、ブシュ押工金66は、軸ばね座(下)55とは接触しない。
【0039】
ブシュ64の外径は、軸ばね座(下)55の挿通穴60の第1内周面60aの径と略同等、或いはそれよもわずかに小さく形成されている。これにより、ブシュ64の外周面64aは、軸ばね座(下)55の挿通穴60の第1内周面60aと面接触している。ただし、この面接触というのは、両者がすきまばめの関係であるため、完全に面で接触しているわけではなく、擬似的な面接触状態である。
【0040】
ブシュ64が設けられた突出部62は、ブシュ64の下端部が軸ばね座55のばね受部55aの下端部(底面)よりも負荷荷重による上下変位があっても常に上方に位置するように挿通穴60に挿通されている。つまり、軸ばね座(下)55の上下方向の移動範囲(摺動範囲)は、ブシュ64の外周面64aが軸ばね座(下)55の挿通穴60の第1内周面60aと負荷荷重により変位があっても面接触する範囲に設定されている。したがって、ブシュ64の外周面64aは、挿通穴60の開口部と接触しない。また、軸箱体42と軸ばね座(下)55とは、ブシュ64以外の部分では接触しない。
【0041】
このような構成により、軸箱支持装置40では、防振ゴム56及びブシュ64により軸箱体42と軸ばね座(下)55とが絶縁されている。そのため、電流は、防振ゴム56及びブシュ64により絶縁される。したがって、軸箱支持装置40では、軸受部50に電流が流れることが防止されている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、ブシュ64と擬似的面接触する軸ばね座(下)55が突出部62の外周面62aに配設されたブシュ64に対して、軸ばね46の負荷荷重による防振ゴム20の撓みにより上下方向に摺動する。そのため、ブシュ64は、コイルばね46の負荷荷重による圧縮力を直接受けない。このように、ブシュ64に対して過度の荷重が加えられないため、ブシュ64の破損を抑制することができる。また、防振ゴム56及びブシュ64により、台車枠10と軸箱体42との電気絶縁性を確保することができる。
【0043】
また、ブシュ64の外周面64aは、軸ばね座(下)55の挿通穴60の第1内周面60aと負荷荷重により変位があっても常に面接触している。したがって、ブシュ64の外周面64aの偏磨耗が抑制されるため、ブシュ64の破損をより抑制できる。その結果、メンテナンス性の向上も図れる。
【0044】
また、従来のように板厚が薄く破損し易い絶縁板を用いないため、軸箱支持装置40を組み立てる際に絶縁板が割れないように慎重に作業を行う必要がない。したがって、ブシュ64を用いることにより、軸箱支持装置40の組み立て作業性の向上が図れる。さらに、軸箱支持装置40は、ブシュ64が耐久性を有しているため、絶縁材料の交換費用を低減でき、保守性に優れている。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、絶縁部材であるブシュが円筒形状をなして一体的に形成されている構成を例示しているが、ブシュは分割されて構成されていてもよい。
【0046】
また、第1実施形態では、軸ばね5が一対のコイルばね14から構成されている形態を例示したが、軸ばね5は、コイルばね、ゴムばねなどの種々のばね、及びその組み合わせにより構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,40…軸箱支持装置、2,41…台車、3,42…軸箱体、4…車軸、5,46…軸ばね、12…座、12a,12b…第1及び第2張出部、18a…軸ばね座(上)、18b…軸ばね座(下)、24b…突出部、24bA…外周面、26…挿通穴、26a…第1内周面、30,64…ブシュ(絶縁部材)、48…支持腕、54…軸ばね座(上)、55…軸ばね座(下)、60…挿通穴、60a…内周面、62…突出部、62a…外周面、64a…外周面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の台車に設けられた軸箱支持装置であって、
前記鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、
前記軸箱体と台車枠との間に前記車軸を挟んで並設され、前記台車枠を弾性支持する一対の軸ばねと、を備え、
前記軸箱体は、防振ゴムと前記軸ばねを支持する軸ばね座とを介して前記軸ばねを支持する軸ばね支持部を有し、
前記軸ばね座は、下方に突出する突出部を有し、
前記軸ばね支持部は、前記軸ばね座の前記突出部が挿通される挿通穴を有し、
前記挿通穴の内面には、前記突出部の外面と摺動可能に面接触すると共に前記軸ばね座と前記軸ばね支持部とを絶縁する絶縁部材が配設されていることを特徴とする軸箱支持装置。
【請求項2】
前記突出部は、その下端部が前記絶縁部材の下端部よりも常に下方に位置するように前記挿通穴に挿通されていることを特徴とする請求項1記載の軸箱支持装置。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記挿通穴の内面の一部又は全面に亘って配設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の軸箱支持装置。
【請求項4】
鉄道車両の台車に設けられた軸箱支持装置であって、
前記鉄道車両の車軸を支持する軸箱体と、
前記軸箱体上に防振ゴム及び軸ばね座を介して配設され、台車枠を弾性支持する軸ばねと、
前記軸箱体から前記台車枠の側梁に沿って延在する支持腕と、を備え、
前記軸箱体は、上方に突出する突出部を有し、
前記軸ばね座は、前記軸箱体の前記突出部が挿通される挿通穴を有し、
前記突出部の外面には、前記挿通穴の内面と摺動可能に面接触すると共に前記軸ばね座と前記軸箱体とを絶縁する絶縁部材が配設されていることを特徴とする軸箱支持装置。
【請求項5】
前記突出部は、前記絶縁部材の下端部が前記軸ばね座の下端部よりも常に上方に位置するように前記挿通穴に挿通されていることを特徴とする請求項4記載の軸箱支持装置。
【請求項6】
前記絶縁部材は、前記突出部の外面の一部又は全面に亘って配設されていることを特徴とする請求項4又は5記載の軸箱支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86702(P2013−86702A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230563(P2011−230563)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)
【Fターム(参考)】