軸索成長を促進するNogo受容体結合低分子
本発明は、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物を同定するための方法を提供する。本発明はまた、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物、症状、疾患、または疾病(例えば、脊髄損傷、外傷性脳損傷,脳卒中、多発性硬化症、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、癲癇、統合失調症または統合失調感情障害)の処置あるいは緩和におけるそのような化合物および組成物の使用も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNogo受容体アンタゴニストおよびアゴニストに関する。さらに具体的には、本発明は、ニューロンの軸索成長を調節する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロンの軸索および樹状突起はニューロンから伸びる長い細胞の伸張である。伸張途中の軸索または神経突起の遠位先端部には、成長円錐として知られている特殊な領域が含まれている。成長円錐は局所環境を感知し、ニューロンの標的細胞へと向かう軸索の成長を導く。成長円錐はいくつかの環境信号(例えば、表面接着、成長因子、神経伝達物質および電場)に反応する。この円錐での成長の誘導には、様々なクラスの接着分子、細胞内シグナル、さらには成長円錐を刺激し、阻害する因子が関係している。伸張途中にある神経突起の成長円錐は様々な速度で前進するが、通常は、1日あたり1ミリから2ミリメートルの速度で前進する。
【0003】
成長円錐は、手の形状であり、広がった扁平な伸張(微小突起または糸状仮足)を有しており、これは胚の中の表面に対して別々に接着する。糸状仮足は絶えず活動しており、一部の糸状仮足は成長円錐の内部へと引っ込み、一方で、他の糸状仮足は基体を通り抜けて伸張し続ける。異なる糸状仮足間での伸張により、葉状仮足が形成される。
【0004】
成長円錐は、その葉状仮足と糸状仮足を用いて、その前方と両側の領域を探索する。伸張によって成長に好ましくない表面と接触すると、これは引っ込む。伸張によって好ましい成長表面に接触すると、これは伸び続け、その方向に成長円錐を導く。成長円錐は基体の表面特性における小さなバリエーションによって導かれ得る。成長円錐が適切な標的細胞に到達すると、シナプス結合が作られる。
【0005】
神経細胞の機能は、その当面の環境におけるニューロンと他の細胞との間での接触によって大きく影響される(非特許文献1)。これらの細胞としては、特定の神経膠細胞、中枢神経系(CNS)の乏突起膠細胞、および末梢神経系(PNS)のシュワン細胞(これは、神経軸索をミエリン鞘で覆う(多層膜の絶縁構造))(非特許文献2)が挙げられる。
【0006】
CNSニューロンは損傷後に再生する能力を有しているが、この能力はミエリンの中に存在する阻害タンパク質の存在が原因であり、そしてそれらの局所環境に通常見られる他のタイプの分子もおそらく原因で、再生が阻害される(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0007】
乏突起膠細胞上に見られるいくつかのミエリン阻害タンパク質、例えば、NogoA(非特許文献6;非特許文献7)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG,非特許文献8;非特許文献9)、および乏突起膠細胞糖タンパク質(OM−gp、非特許文献10)が特性決定されている。これらのタンパク質はそれぞれ、ニューロンのNogo受容体−1のリガンドであることが別々に示されている(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献7;非特許文献6;非特許文献13)。
【0008】
Nogo受容体−1は8個のロイシンを多く含む繰り返しを含む、GPI結合膜タンパク質である(非特許文献14)。阻害タンパク質(例えば、NogoA、MAG、およびOM−gp)と相互作用すると、Nogo受容体−1複合体は、成長円錐の崩壊と神経突起伸長の阻害を導くシグナルを変換する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】U.Rutishauser,T.M.Jessell,Physiol.Rev.68,p.819(1988)
【非特許文献2】G.Lemke,An Introduction to Molecular Neurobiology,Z.Hall編[Sinauer,Sunderland,Mass.],p.281(1992)
【非特許文献3】BrittisおよびFlanagan,Neuron 30:11−14(2001)
【非特許文献4】Jonesら、J.Neurosc.22:2792−2803(2002)
【非特許文献5】Grimpeら、J.Neurosci.22:3144−3160(2002)
【非特許文献6】Chenら、Nature 403:434−439(2000)
【非特許文献7】Grandpreら、Nature 403:439−444(2000)
【非特許文献8】McKerracherら、Neuron 13:805−811(1994)
【非特許文献9】Mukhopadhyayら、Neuron 13:757−767(1994)
【非特許文献10】MikolおよびStefansson,J.Cell.Biol.106:1273−1279(1988)
【非特許文献11】Wangら、Nature 417:941−944(2002)
【非特許文献12】Liuら、Science 297:1190−93(2002)
【非特許文献13】Domeniconiら、Neuron 35:283−90(2002)
【非特許文献14】Fournierら、Nature 409:341−346(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのリガンドに対するNogo受容体−1の結合を阻害し、神経突起伸長を刺激し、そしてミエリンによって媒介される成長円錐の崩壊と、神経突起伸長の阻害を弱める分子が、緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明には、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物を同定するための方法が含まれる。この方法には:(a)Nogoポリペプチド、NgRポリペプチド、および試験化合物を混合する工程;(b)上記化合物の非存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合と比較して、上記化合物の存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合の妨害を測定する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、NogoポリペプチドはNogo−66ポリペプチドであり、そしてNgRポリペプチドはFc−NgRポリペプチドである。
【0012】
いくつかの実施形態では、妨害は、ドナービーズとレセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって測定される。NgRポリペプチドは、ドナービーズと共役した生体分子に結合する。Nogoポリペプチドは、レセプタービーズと共役した生体分子に結合する。ドナービーズには光増感剤が含まれ、レセプタービーズには化学発光物質が含まれる。
【0013】
妨害が検出されるいくつかの実施形態では、妨害は、用量応答アッセイによって化合物についての固有の妨害を検出することによってさらに確認される。アッセイには:(a)ドナービーズ、レセプタービーズ、および様々な濃度の化合物をインキュベートする工程;ならびに(b)ドナービーズとレセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって、様々な濃度でその化合物の固有の妨害を測定する工程が含まれる。ドナービーズは生体分子と共役し、ドナービーズには光増感剤が含まれる。レセプタービーズは生体分子と共役し、レセプタービーズには化学発光物質が含まれる。1つの実施形態では、アッセイは、AlphaScreen TruHits(商標)Kit(PerkinElmer)を使用して行うことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法は、複数の種類の試験化合物を含むマルチウェルプレートの中で行われる。いくつかの実施形態では、試験化合物は、様々な低分子ライブラリーの1つのメンバーである。いくつかの実施形態では、そのような低分子ライブラリーには20000種類の化合物が含まれる。この方法には、ライブラリー全体またはその任意のサブセットをスクリーニングする工程が含まれる。
【0015】
いくつかの実施形態では、試験化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を持つ、薬物様の有機化合物からなる低分子ライブラリーの1つのメンバーである。この方法には、ライブラリー全体またはその任意のサブセットをスクリーニングする工程が含まれる。
【0016】
いくつかの実施形態では、試験化合物は、NogoとNogo受容体との相互作用を調節することがこれまでに同定された化合物と構造的に類似するかまたは関係がある化合物からなる、重点的低分子ライブラリーの1つのメンバーである。
【0017】
本発明には、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を阻害する化合物(すなわち、Nogo受容体−1アンタゴニスト)を同定するための方法が含まれる。
【0018】
本発明にはまた、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を促進する化合物(すなわち、Nogo受容体−1アゴニスト)を同定するための方法も含まれる。
【0019】
本発明には、神経突起伸長を促進する化合物を同定する方法が含まれる。この方法には:(a)上記に記載されたようなNogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程、および(b)候補化合物を単離する工程が含まれる。
【0020】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物について第2の用量応答アッセイを実施する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、第2の用量応答アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(Dissociation−Enhanced Lanthanide Fluorescent Immunoassay)(DELFIA)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物の神経突起伸長活性を測定することにより機能的アッセイを実施する工程が含まれる。ここでは、候補化合物は神経突起伸長を促進する。
【0022】
本発明にはまた、神経突起伸長を阻害する化合物を同定する方法も含まれる。この方法には:(a)上記に記載されたようなNogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程、および(b)候補化合物を単離する工程が含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物についての第2の用量応答アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA))を実施する工程が含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物の神経突起伸長活性を測定することにより機能的アッセイを実施する工程が含まれる。ここでは、候補化合物は神経突起伸長を阻害する。
【0025】
本発明により、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物が提供される。そのような化合物には、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を含む、場合によって置換された、場合によって部分的に飽和したベンゾフラン、インドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、クロメンまたはキノリンが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を含む、場合によって置換された5−ヒドロキシ−ベンゾフランまたは場合によって置換された5−ヒドロキシ−3−アロイルアルキルベンゾフランであり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を含む、場合によって置換された3−アシル−インドール、または、場合によって置換された3−ヒドロキシ−3−アロイルアルキル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンであり得る。
【0028】
本発明によってはさらに、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物が提供される。化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、N1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0029】
本発明には、神経突起伸長、ニューロンの生存、およびニューロンの中での軸索の再生を促進するためのNogo受容体−1アンタゴニストの使用が含まれる。本発明は、神経突起伸長の阻害を阻害するため、ニューロンの生存を促進するため、および/またはニューロンの中での軸索の再生を促進するために有用な化合物と方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0030】
本発明にはまた、神経突起伸長を阻害するためのNogo受容体−1アゴニストの使用も含まれる。本発明は、神経突起伸長を阻害するため、ニューロンの生存を阻害するため、および/またはニューロンの中での軸索の再生を阻害するために有用な化合物と方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物は、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0031】
本発明には、ニューロンの中での神経突起伸長を促進する方法が含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長を促進する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0032】
本発明にはまた、NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法も含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長を促進する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0033】
本発明には、中枢神経系(CNS)の疾患または疾病を処置する方法が含まれる。この方法には、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、例えば、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を促進する有効量の化合物を投与する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0034】
いくつかの実施形態では、中枢神経系(CNS)の疾患および疾病は、頭蓋または脳の外傷、脊髄損傷、脳卒中または脱髄疾患の結果である。CNS疾患または疾病は、多発性硬化症、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、緑内障、聴力低下、副腎白質萎縮症、単相性脱髄(monophasic demyelination)、脳脊髄炎、多巣性白質脳症、汎脳炎、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊(pontine myelinolysis)、副腎白質ジストロフィー、ペリツェウス・メルツバッハー病、海綿状変性、アレキサンダー病、カナバン病、異染性白質ジストロフィー、癲癇、およびクラッベ病である。
【0035】
いくつかの実施形態では、化合物は、経口投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮投与、頭蓋内投与、または口腔投与によって投与される。
【0036】
本発明にはさらに、神経突起伸長またはニューロンの中での軸索の再生を促進する方法が含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を促進する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0037】
本発明にはまた、神経突起伸長またはニューロンの中での軸索の再生を阻害する方法も含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を阻害する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0038】
本発明にはさらに、統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法が含まれる。この方法には、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を阻害する有効量の化合物を投与する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0039】
本発明にはまた、上記に記載されたような神経突起伸長を促進する化合物、または上記に記載されたような神経突起伸長を阻害する化合物と、薬学的に許容される担体を含む組成物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、AlphaScreenアッセイの略図である。溶液中のストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズは、それら自体はシグナルを生じない。
【図2】図2は、AlphaScreenアッセイの略図である。ストレプトアビジン−アクセプタービーズはビオチニル化Ng66に結合し、プロテインA−ドナービーズはFc−NgR融合タンパク質に結合して、ストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズが1つとなる。
【図3】図3は、AlphaScreenアッセイの略図である。ストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズはNg66とFc−NgRとの間での相互作用によって接近して複合体を形成し、この複合体はプロテインA−ドナービーズに680nmのレーザーを照射すると、520nmから620nmの間の光を放射する。
【図4】図4は、AlphaScreenアッセイの略図である。Ng66とFc−NgRとの間での相互作用はNogoペプチド断片NEP33によってブロックされ、レーザーを照射すると光を放射する複合体を形成するようにストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズが接近することを妨げる。
【図5】図5は、AlphaScreenシグナルを示しているグラフである。このグラフは、AlphaScreenシグナルの強度に対するNg66とFc−NgRの濃度の影響を示している。ストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズを、Ng66およびFc−NgRとともに6時間インキュベートした。ビーズ濃度は6μg/mlである。
【図6】図6は、Nogoペプチド断片NEP1−33の存在下でのAlphaScreenシグナルを示しているグラフである。グラフは、AlphaScreenシグナルの強度に対するインキュベーション時間の影響を示している。ビーズ濃度は5μg/mlである。20時間のインキュベーション後に、Ng66とFc−NgRとの相互作用は、1.25μMから20μMの間の濃度のNEP33によって阻害された。
【図7】図7は、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する低分子化合物を同定するための工程を示しているフローチャートである。AlphaScreenを使用することにより、低分子化合物(10μM)を384ウェルのマイクロプレートのウェルに添加した。このマイクロプレートには、ドナービーズ、アクセプタービーズ、Fc−NgR、およびビオチニル化Ng66の混合物が含まれている。AlphaScreenシグナルを阻害する化合物はヒットと見なされ、その後、「真のヒット(true hits)」アッセイを行って、それらの固有のシグナル消光活性を検出した。「真のヒット」アッセイにおいて固有のシグナル消光活性を有していることが検出された化合物は擬陽性である。「真のヒット」アッセイを通過した化合物について、その後、用量応答アッセイと機能的アッセイを行って、それらの効力と活性を特性決定した。
【図8】図8は、Fc−NgR:Ng66相互作用のAlphaScreenの結果を示す。グラフは、Fc−NgR:Ng66相互作用のAlphaScreenにおいてシグナル阻害を示した5種類の化合物(ヒット)を示す。
【図9】図9は、化合物10および12のAlphaScreen TruHitsアッセイの結果を示す。化合物10および12は、Maybridge Ltd.から入手した20000種の低分子ライブラリーのメンバーである。いずれの化合物も、Fc−NgR:Ng66相互作用のAlphaScreenにおいてヒットを示した。観察できたヒットを確認するために、それぞれの化合物についての10uMから0.000508μMまでの範囲(最終濃度)の希釈系列をAlphaScreen TruHitsキットの成分を含む水を含むウェル(aqueous well)に添加した。用量依存性のシグナルの阻害をAlphaScreen TruHitsアッセイにおいて観察した。これは、化合物10および12がおそらく擬陽性であることを示している。
【図10−1】図10は、第2のアッセイの方法と結果を示す。図10Aは、ELISAアッセイを示す;図10Bは、DELFIAアッセイを示す;図10Cは、NEP33およびシスプラチンについてのELISAアッセイの結果を示す;そして、図10Dは、NEP33についてのDELFIAアッセイの結果を示す。特定の濃度のNEP33およびシスプラチンの存在下でのNgR:Nogoリガンド(Ng66)相互作用−依存性シグナルの用量依存性の阻害を決定した。
【図10−2】図10は、第2のアッセイの方法と結果を示す。図10Aは、ELISAアッセイを示す;図10Bは、DELFIAアッセイを示す;図10Cは、NEP33およびシスプラチンについてのELISAアッセイの結果を示す;そして、図10Dは、NEP33についてのDELFIAアッセイの結果を示す。特定の濃度のNEP33およびシスプラチンの存在下でのNgR:Nogoリガンド(Ng66)相互作用−依存性シグナルの用量依存性の阻害を決定した。
【図10−3】図10は、第2のアッセイの方法と結果を示す。図10Aは、ELISAアッセイを示す;図10Bは、DELFIAアッセイを示す;図10Cは、NEP33およびシスプラチンについてのELISAアッセイの結果を示す;そして、図10Dは、NEP33についてのDELFIAアッセイの結果を示す。特定の濃度のNEP33およびシスプラチンの存在下でのNgR:Nogoリガンド(Ng66)相互作用−依存性シグナルの用量依存性の阻害を決定した。
【図11A】図11Aは、化合物4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン(「HTS」)と、Fc−NgR:Ng66相互作用のDELFIAアッセイにおけるその用量依存性のシグナル阻害を示す。
【図11B】図11Bは、化合物2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)と、Fc−NgR:Ng66相互作用のDELFIAにおけるその用量依存性のシグナル阻害を示す。
【図11C】図11Cは、化合物4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル(「S」)と、Fc−NgR:Ng66相互作用のDELFIAにおけるその用量依存性のシグナル阻害を示す。
【図12】図12Aは、野生型マウスおよびNogo受容体ノックアウトマウスにおける生後10日目(P10)のマウスの後根神経節(DRG)ニューロン上での神経突起伸長に対するNogo受容体の影響を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【0041】
図12Bは、ヒヨコの後根神経節(DRG)ニューロン上での神経突起伸長に対するFc−NgR(7.5μM)の影響を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図13】図13は、化合物2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)の神経突起伸長促進作用を示す。上の写真は、20μMの濃度のKMの存在下での胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン上での基本的な神経突起伸長を示し、下の写真は、KMの非存在下での基本的な神経突起伸長を示す。
【図14】図14Aは、化合物2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)の神経突起伸長促進作用のブロックに対するFc−NgR(7.5μM)の作用を示す。特定の濃度のKMを胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン培養物中でFc−NgRとともに3.5時間、同時インキュベートした。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)としてY軸上に表す。
【0042】
図14Bは、化合物4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン(「HTS」)の神経突起伸長促進作用をブロックすることに対するFc−NgR(7.5μM)の作用を示す。HTSを、胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン培養物中でFc−NgRとともに3.5時間、同時インキュベートした。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図15】図15は、化合物4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル(「S」)の神経突起伸長阻害作用を示す。上の写真は、20μMの濃度の化合物Sの存在下では、E14ヒヨコのDRGニューロン上で基本的な神経突起伸長がないことを示している;そして下の写真は、化合物Sの非存在下での基本的な神経突起伸長を示している。
【図16】図16は、野生型マウスおよびNogo受容体ノックアウトマウスの中での生後15日目(P15)のマウスのDRG神経突起伸長に対する化合物Sの阻害作用を示しているグラフである。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図17A】図17Aは、化合物エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート(「555」)と、20μMの濃度での、E13ヒヨコのDRGニューロンに対するその神経突起伸長促進作用を示す。
【図17B】図17Bは、化合物555の神経突起伸長促進作用をブロックすることに対するFc−NgR(7.5μM)の作用を示す。化合物555を、胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン培養物中でFc−NgRとともに3.5時間、同時インキュベートした。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図18】図18Aは、化合物(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「5470」)と、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロンに対するその神経突起伸長促進作用を示す。
【0043】
図18Bは、化合物(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「585」)と、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロンに対するその神経突起伸長促進作用を示す。
【0044】
図18Cは、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対するジメチルスルホキシド(対照)の作用を示す。
【図19】図19Aは、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対する化合物5470の作用を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【0045】
図19Bは、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対する化合物585の作用を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図20】図20は、20μMの濃度での、胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対する29種類の化合物とジメチルスルホキシド(対照)の促進作用あるいは阻害作用を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。化合物は、化合物S、KM、HTS、555、510(Chembridge Inc.カタログ番号5106731)、516(Chembridge Inc.カタログ番号5162090)、524(Chembridge Inc.カタログ番号5249032)、535(Chembridge Inc.カタログ番号5352829)、536(Chembridge Inc.カタログ番号5363829)、5470(Chembridge Inc.カタログ番号5470065)、5472(Chembridge Inc.カタログ番号5472739)、5475(Chembridge Inc.カタログ番号5475092)、5476(Chembridge Inc.カタログ番号5476362)、560(Chembridge Inc.カタログ番号5607016)、561(Chembridge Inc.カタログ番号5611936)、585(Chembridge Inc.カタログ番号5851694)、592(Chembridge Inc.カタログ番号7110)、594(Chembridge Inc.カタログ番号5948019)、597(Chembridge Inc.カタログ番号5976525)、605(Chembridge Inc.カタログ番号6054710)、636(Chembridge Inc.カタログ番号6367674)、664(Chembridge Inc.カタログ番号6641843)、678(Chembridge Inc.カタログ番号6789717)、687(Chembridge Inc.カタログ番号6874781)、794(Chembridge Inc.カタログ番号7949736)、798(Chembridge Inc.カタログ番号7986605)、KMO1804、BTB11222、およびKMO2502である。
【図21】図21は、神経突起伸長を促進する5種類の化合物が、Nogo受容体を発現しない胚性期8日目(E8)のヒヨコのDRGニューロンに対しては影響を及ぼさないことを示す。5種類の化合物は、KM、HTS、555、585、および5470である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義および一般的技術
他の場所で定義されない限りは、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同じ意味を有する。矛盾する場合は、本出願が含む定義が支配する。また、他の方法で状況によって必要とされない限りは、単数形の用語に複数形が含まれるはずであり、複数形の用語に単数形が含まれるはずである。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許、および他の参考文献は、全ての目的についてそれらの全体が引用によって本明細書中に組み入れられる。
【0047】
本明細書中に記載されるものと同様であるかまたはそれらと同等である方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載される。材料、方法、および実施例は、例示的なものにすぎず、限定を意図するものではない。本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかであろう。
【0048】
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、用語「含まれる(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」のようなバリエーションは、記載される整数、または整数のグループの包含を暗に意味するように理解され、任意の他の整数または整数のグループを排除するようには理解されない。
【0049】
本発明をさらに定義するために、以下の用語と定義が本明細書中で提供される。
【0050】
用語「a」または「an」の存在はその存在の1つ以上をいうことに留意されたい;例えば、「低分子」は、1つ以上の低分子を表すと理解される。このように、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は本明細書中では互換的に使用することができる。
【0051】
本明細書中で使用される場合は、用語「からなる(consists of)」、または「からなる(consist of)」もしくは「からなっている(consisting of)」のようなバリエーションは、本明細書と特許請求の範囲を通じて使用されるように、任意の記載される整数または整数のグループの包含を示すが、さらなる整数または整数のグループは、特定の方法、構造、もしくは組成に対しては加えることができないことを示す。
【0052】
本明細書中で使用される場合は、用語「原則として〜からなる(consists essentially of)」、または「原則として〜からなる(consist essentially of)」もしくは「原則として〜からなっている(consinsing essentially of)」のようなバリエーションは、本明細書と特許請求の範囲を通じて使用されるように、任意の記載される整数または整数のグループの包含を示し、そして特定の方法、構造、もしくは組成について基本的または新規の特性を実質的に変化させることのない、任意の記載される整数または整数のグループの任意の包含を示す。
【0053】
本明細書中で使用される場合は、「NogoR融合タンパク質」は、異種ポリペプチドに融合させられた可溶性Nogo受容体−1部分を含むタンパク質を意味する。
【0054】
本明細書中で使用される場合は、「Nogo受容体」、「NogoR」、「NogoR−1」、「NgR」、「NgR−1」、「NgR1」、および「NGR1」はそれぞれ、Nogo受容体−1を意味する。
【0055】
「低分子ライブラリー」または「ライブラリー」は、様々な化学構造を持つ様々な化合物の集合である。低分子ライブラリーはスクリーニングすることができる、すなわち、その中の化合物のライブラリーのメンバーについてスクリーニングアッセイを行うことができる。好ましい実施形態では、ライブラリーのメンバーは、500ダルトン以下、好ましくは、約100ダルトンから約350ダルトン、または約150から約350ダルトンの分子量を有し得る。
【0056】
候補化合物のライブラリーは、AlphaScreenアッセイ(図1〜9)のような多くの様々なアッセイによってアッセイすることができる。ライブラリーには、自然の供給源から単離された分子、人工的に合成された分子、あるいは1つ以上の可変部分(例えば、別々に単離されたかもしくは無作為に合成された部分)を持たせるような方法で合成されたか、単離されたか、または別の方法によって調製された分子が含まれ得る。
【0057】
「重点的ライブラリー(focused library)」は、化合物のコレクションが、以前に特性決定された化合物の構造を使用して調製されたことを意味する。「重点的ライブラリー」の化合物は、以前に特性決定された化合物と構造的に類似し得るかまたは関係し得る。「構造的に類似するかまたは関係する」によっては、それらの化合物が共通した特性またはコア構造を持つことを意味する。
【0058】
本発明に有用な「低分子ライブラリー」は商業的に購入することができる。商業的な供給業者としては、Chembridge Inc.またはMaybridge Ltd.(Maybridge Chemical Holdings Ltd.の子会社)が挙げられる。本発明で使用した「低分子ライブラリー」は、Maybridge Ltd.から入手した。このライブラリーには、様々な構造を持つ20000種の化合物が含まれている。
【0059】
本発明に有用な「低分子ライブラリー」は、組み合わせ化学技術、発酵法、植物および細胞の抽出手法などを含むがこれらに限定されない任意の手段によって調製するか、または得ることができる(例えば、Cwirlaら、Biochemistry 87:6378−6382(1990);Houghtenら、Nature 354:84−86(1991);Lamら、Nature 354:82−84(1991);Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5381−5383(1992);Houghten R.A.,Trends Genet.9:235−239(1993);Gallopら、J.Med.Chem.1994,37:1233−1251(1994);Gordonら、J.Med.Chem.1994,37:1385−1401(1994);Carellら、Chem.Biol.3:171−183(1995);Leblら、Biopolymers 37:177−198(1995))。
【0060】
多様な分子のライブラリーは、以下を含むがこれらに限定されない様々な技術によって調製することができる1つ以上の予め選択された特性を持つメンバーが得られるように調製される:平行アレイ合成(parallel array synthesis)(Houghtor R.A.,「Parallel array and mixture−based synthetic combinatorial chemistry:tools for the next millennium」,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.40:273−82(2000));液相組み合わせ化学(Merritt,「Solution phase combinatorial chemistry」,Comb.Chem.High Throughput Screen 1998 1(2):57−72(1998)、およびSun,「Recent advances in liquid−phase combinatorial chemistry」,Comb.Chem.High Throughput Screen 1999 2(6):299−318(1999));可溶性ポリマー上での合成(Gravertら、「Synthesis on soluble polymers:new reactions and the construction of small molecules」,Curr.Opin.Chem.Biol.1997 1(1):107−13(1997))。
【0061】
重点的ライブラリーは、計算機化学(例えば、Kunduら、「Combinatorial chemistry:polymer supported synthesis of peptide and non−peptide libraries」,Prog.Drug Res.53:89−156(1999))およびデータベース検索とドッキング(docking)を使用する構造に基づくリガンドの使用、新規の薬物の設計とリガンド結合親和性の推定(Joseph−McCarthy D.,「Computational approaches to structure−based ligand design」,Pharmacol.& Ther.84(2):179−91(1999);Kirkpatrickら、「Structure−based drug design:combinatorial chemistry and molecular modeling」,Comb.Chem.High Throughput Screen.2:211−21(1999);Eliseev A.V.& Lehn J.M.,「Dynamic combinatorial chemistry:evolutionary formation and screening of molecular libraries」,Curr.Top.Microbiol.& Immunol.243:159−72(1999))を含む最新の方法を活用して設計することができる。
【0062】
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書中で使用される場合は、標的動物(例えば、ヒトのような哺乳動物)の中で生理学的に寛容化される本発明の化合物の任意の塩(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)をいう。本発明の化合物の塩は、無機酸または有機酸、あるいは有機塩基または無機塩基に由来し得る。適切な酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、ボロン酸、マロン酸、スルホン酸、ピコリン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。他の酸(例えば、シュウ酸)は、それら自体は薬学的に許容されなくても、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として、有用な塩の調製に使用される場合がある。
【0063】
適切な塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW4+の化合物(式中、WはC1−4アルキルである)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
適しているそのような塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、亜硫酸塩、ホウ酸塩、ボロン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ピコリン酸塩、ベシル酸塩、過塩素酸塩、サリチル酸塩、リン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に適している塩の他の例としては、当該分野で周知であるさらなる薬学的に許容される塩(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第19版、1995を参照のこと)と関連分野の当業者に公知の他の塩を含む、適切な陽イオン(例えば、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Mn2+、NH4+、およびNW4+(式中、WはC1−4アルキル基である)などと混合された本発明の化合物の陰イオンが挙げられる。治療に使用するためには、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものである。しかし、薬学的に許容されない酸と塩基からなる塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製や精製における用途が見出される可能性がある。
【0065】
用語「薬学的組成物」は、本明細書中で使用される場合は、疾患、疾病、もしくは症状に罹患しているか、それらについての素因があるか、またはそれらが明らかにされている被験体(例えば、ヒトのような哺乳動物)において、疾患、疾病、または症状を処置する、予防する、あるいは重篤度を軽減するために使用することができる1種類以上の本発明の化合物を含む(これらに限定されない)1種類以上の有効な薬学的成分を含む組成物をいう。薬学的組成物には、一般的には、有効量の1種類以上の有効成分(例えば、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは立体異性体混合物)と薬学的に許容される担体が含まれる。薬学的組成物にはまた、本発明の化合物と1種類以上のさらなる成分(1種類以上の治療薬(例えば、他のNogo受容体アンタゴニスト、例えば、他のNogo受容体アゴニスト、例えば、可溶性Nogo受容体ポリペプチド)を含むがこれらに限定されない)も含まれ得る。
【0066】
用語「薬学的に許容される担体」には、標準的な薬学的担体、緩衝液、および賦形剤(リン酸緩衝化生理食塩溶液、水、およびエマルジョン(例えば、油/水エマルジョンまたは水/油エマルジョン)を含む)、ならびに様々なタイプの湿潤剤および/またはアジュバントのうちの任意のものが含まれる。適切な薬学的担体とそれらの処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第19版,1995に記載されている。好ましい薬学的担体は、有効成分の意図される投与様式に依存する。典型的な投与様式は以下に記載される。
【0067】
本明細書中で使用される場合は、用語「処置する」または「処置」は、治療的処置と、予防的または防止的手段の両方をいう。ここでは、目的は、望ましくない生理学的変化または疾病(例えば、多発性硬化症の進行)を防ぐまたは速度を遅くする(弱める)ことである。有益であるか、または所望される臨床結果としては、症状の緩和、疾患の程度の縮小、安定した(悪化することのない)疾患状態、疾患の進行を遅らせるかまたは遅くすること、疾患状態の改善または緩和、ならびに寛解(部分的であるか、全体であるかは問わない)が、検出可能であるかまたは検出不可能であるかにはかかわらず、挙げられるがこれらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予想される生存と比較した、より長期間の生存も意味し得る。処置が必要なものとしては、すでに症状または疾病があるもの、ならびに、症状または疾病になりやすいもの、あるいは症状または疾病を予防しようとするものが挙げられる。
【0068】
用語「治療有効量」は、本明細書中で使用される場合は、疾病または症状の1つ以上の改善を生じるため、あるいは疾病または症状の出現または進行を防ぐため、あるいは疾病または症状の軽減または治癒をもたらすために、必要な投与量と必要な期間で、十分である所定の治療薬の量をいう。
【0069】
用語「治療薬」は、本明細書中で使用される場合は、疾患、症状、もしくは疾病、またはそれらの1つ以上の兆候の処置、管理、予防、あるいは改善に使用することができる任意の化学物質をいう。適切な治療薬としては、低分子、合成の薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、三重ヘリックス、および生物学的に活性なタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されないDNAおよびRNAポリヌクレオチド)、抗体、合成のまたは天然の無機分子、模倣薬(mimetic agent)、および合成のまたは天然の有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療薬は、症状もしくは疾病、またはそれらの1つ以上の兆候の処置、管理、予防、または改善に有用であることが公知であるか、使用されてきたか、あるいは現在使用されているものである。
【0070】
本発明の化合物には、上記のようなその薬学的に許容される塩が含まれる。本発明の化合物は、光学異性体を含む立体異性体として存在する。本発明には、純粋な個々の立体異性体調製物として、およびそれぞれの富化させられた調製物として、およびそのような立体異性体のラセミ混合物として、さらには、当業者に周知の方法にしたがって分離することができる個々の鏡像異性体およびジアステレオマーとしての、あらゆる立体異性体が含まれる。
【0071】
本発明の化合物は、不定形形態または結晶形態として存在し、本発明には、不定形の形態の化合物と、全ての多形体の化合物が含まれる。
【0072】
「被験体」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によっては、診断、予後、または治療が所望される任意の被験体(特に、哺乳動物被験体)が意味される。哺乳動物被験体としては、ヒト、家畜動物(domestic animals)、家畜(farm animals)、動物園の動物、競技用の動物、ペット動物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、ウシ);霊長類(例えば、類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジー);イヌ科(例えば、イヌおよびオオカミ);ネコ科(例えば、ネコ、ライオン、およびトラ);ウマ科(例えば、ウマ、ロバ、およびシマウマ);食用動物(例えば、ウシ、ブタ、およびヒツジ);有蹄動物(例えば、シカおよびキリン);齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、およびモルモット)などが挙げられるが、これらに限定はされない。特定の実施形態においては、哺乳動物はヒト被験体である。
【0073】
本発明は、ニューロンの生存、神経突起伸長、およびニューロン(例えば、CNSニューロン)の軸索の再生を促進する特定のNgR1アンタゴニストに関する。例えば、本発明により、軸索成長が通常阻害される条件下で軸索成長を刺激するNgR1低分子が提供される。したがって、本発明のNgR1アンタゴニストは、ニューロンの生存を促進することによって、または軸索の成長もしくは再生の刺激によって軽減することができる損傷、疾患、または疾病の処置に有用である。
【0074】
例示的なCNS疾患、疾病、または損傷としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:多発性硬化症(MS)、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ペリツェウス・メルツバッハー病(PMZ)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、およびウォーラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、放射線照射後の損傷、化学療法の神経学的合併症、脳卒中、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏症、ビタミンE欠乏性症候群(isolated vitamin E deficiency syndrome)、AR、バッセン・コーンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、異染性白質ジストロフィー、三叉神経痛、癲癇、およびベル麻痺。
【0075】
本発明は、ニューロンの生存、神経突起伸長、およびニューロン(例えば、CNSニューロン)の軸索再生を阻害する特定のNgR1アゴニスト、ならびに、ニューロンの過剰活性もしくは低活性、異常なニューロンの発芽、および/または神経突起伸長と関係がある疾患、疾病、または損傷(例えば、統合失調症)を、そのような疾患に罹患している動物において処置するための方法に関する。例えば、本発明により、軸索成長が通常は観察される条件下で軸索成長を阻害するNgR1低分子が提供される。したがって、本発明のNgR1アゴニストは、統合失調症または統合失調感情障害の処置に有用である。
【0076】
加えて、本発明の方法によって処置または改善される可能性がある疾患または疾病には、ニューロンの過剰活性もしくは低活性、異常なニューロンの発芽、および/または異常な神経突起伸長に関係がある疾患、疾病、または損傷が含まれる。そのような疾患としては、統合失調症、双極性障害、強迫神経症(OCD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、ダウン症、およびアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
Nogo受容体−1
いくつかの実施形態では、本発明は、神経突起伸長を促進するため、ニューロンの生存を促進するため、軸索の生存を促進するため、またはNgR1シグナル伝達複合体によるシグナルの伝達を阻害するための低分子の使用に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、ニューロンの生存、神経突起伸長、およびニューロンの軸索の再生を阻害するための低分子の使用に関する。
【0078】
ヒトNgR1ポリペプチドは、配列番号1として以下に示される。
【0079】
全長のヒトNgR1(配列番号1):
【0080】
【化1】
ラットNgR1ポリペプチドは、配列番号2として以下に示される。
【0081】
全長のラットNgR1(配列番号2):
【0082】
【化2】
マウスNgR1ポリペプチドは、配列番号3として以下に示される。
【0083】
全長のマウスNgR1(配列番号3):
【0084】
【化3】
全長のNogo受容体−1は、シグナル配列、N−末端領域(NT)、8回のロイシンリッチリピート(LRR)、LRRCT領域(8回のロイシンリッチリピートのC末端にある1回のロイシンリッチリピートドメイン)、C末端領域(CT)、およびGPIアンカー(図1を参照のこと)からなる。
【0085】
本明細書中で使用されるNgRドメインの表示は以下のように定義される:
【0086】
【表1】
融合タンパク質および共役ポリペプチド
本発明のいくつかの実施形態には、全長のNgR1タンパク質ではないNgR1ポリペプチド(例えば、融合タンパク質が形成されるように異種ポリペプチドに融合させられたNgR1のポリペプチド断片)の使用が含まれる。このような融合タンパク質は、様々な目的(例えば、血清半減期の延長、生体利用性の改善、特定の臓器もしくは組織のタイプへのインビボでの標的化、組み換え発現効率の改善、宿主細胞からの分泌の改善、精製の簡便性、より高い親和性)を達成するために使用することができる。達成される目的(単数または複数)に応じて、異種部分は不活性である場合も、また生物学的に活性である場合もある。またこれは、本発明のNgR1ポリペプチド部分に安定して融合させられるように、またはインビトロもしくはインビボで切断できるように選択することもできる。これらの他の目的を達成するための異種部分は当該分野で公知である。
【0087】
融合タンパク質の発現の代わりに、選択された異種部分を予め形成させて、本発明のNgRポリペプチド部分に化学的に共役させることができる。ほとんどの場合は、選択された異種部分は、NgRポリペプチド部分に融合させられているか、または共役しているかとは無関係に、同様に機能するであろう。したがって、異種アミノ酸配列についての以下の議論においては、他の場所に明記されない限りは、異種配列は、融合タンパク質の形態で、または化学的共役として、NgRポリペプチド部分に結合させることができると理解される。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態では、ヒンジ領域とFc領域(すなわち、Ig重鎖定常領域のC末端部分)に融合させられたNgRポリペプチド部分が使用される。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域のアミノ酸は異なるアミノ酸で置換され得る。これらの実施形態のヒンジ領域についての例示的なアミノ酸置換には、ヒンジ領域中の個々のシステイン残基の異なるアミノ酸での置換が含まれる。任意の異なるアミノ酸でヒンジ領域の中のシステインを置換することができる。本発明のポリペプチドのアミノ酸と参照アミノ酸配列のアミノ酸についてのアミノ酸置換には、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、電荷を持たない極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分岐側鎖を持つアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれ得る。参照アミノ酸中のシステインを置換するための典型的なアミノ酸としては、アラニン、セリン、スレオニン、特に、セリンおよびアラニンが挙げられる。ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドの操作を通じてそのような置換を作製することは、十分に、当業者が日常的に行っている専門的技術の範囲内である。
【0089】
NgR−ポリペプチド−Fc融合体の潜在的利点には、溶解度、インビボでの安定性、および多重原子価(例えば、二量化)が含まれる。使用されるFc領域は、IgA、IgD、またはIgG Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3)であり得る。あるいは、これは、IgEまたはIgM Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3−CH4)であり得る。一般的には、IgG Fc領域(例えば、IgG1 Fc領域またはIgG4 Fc領域)が使用され得る。Fc融合体をコードするDNAを構築し、発現させるための材料と方法は当該分野で公知であり、そして融合体を得るために適用することができ、これには過度の実験は伴わない。本発明のいくつかの実施形態では、Caponら、米国特許第5,428,130号および同第5,565,335号に記載されているような融合タンパク質が使用される。
【0090】
IgG1 Fc領域が最も頻繁に使用される。あるいは、免疫グロブリンγの他のサブクラス(γ−2、γ−3、およびγ−4)のFc領域を、分泌カセットの中で使用することができる。免疫グロブリンγ−1のIgG1 Fc領域が、一般的に、分泌カセットの中で使用され、これには、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部が含まれる。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンγ−1のFc領域はCH2が欠失しているFc(CH2−deleted−Fc)であり、これにはヒンジ領域の一部とCH3領域が含まれるが、CH2領域は含まれない。CH2が欠失しているFcは、Gilliesら、Hum,Antibod.Hybridomas 1:47(1990)に記載されている。いくつかの実施形態では、IgA、IgD、IgE、またはIgMのうちの1つのFc領域が使用される。
【0091】
NogoとNogo受容体との相互作用を調節する化合物の同定
本発明によってはまた、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物を同定する方法も提供される。この方法には:(a)Nogoポリペプチド、NgRポリペプチド、および試験化合物を混合する工程;(b)上記化合物の非存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合と比較して、上記化合物の存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合の妨害を測定する工程が含まれる。
【0092】
いくつかの実施形態では、そのような方法は、AlphaScreenを使用することによって行われる。AlphaScreenは、Seethala and Prabhavathi,「Homogeneous Assays:AlphaScreen,Handbook of Drug Screening」,Marcel Dekkar Pub.2001,pp.106−110に一般的に記載されている。本発明ではAlphaScreenが使用され、ここでは、低分子化合物(20μM)が384ウェルのマイクロプレートのウェルに添加される。マイクロプレートには、ドナービーズ、アクセプタービーズ、Fc−NgR、およびビオチニル化Ng66の混合物が含まれる。AlphaScreenシグナルを阻害する化合物がヒットと見なされる(図1〜8)。
【0093】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、用量応答アッセイまたは「真のヒット」アッセイにより、AlphaScreenの化合物の固有のシグナル妨害を検出することによって、上記に記載されたヒットを確認する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、用量応答アッセイは、AlphaScreenアッセイの擬陽性を同定するために、AlphaScreen TruHitsキット(PerkinElmer)を使用することによって行われる。AlphaScreen TruHitsキットは、色素消光剤(color quencher)、光散乱物質(不溶性化合物)、一重項酸素消光剤、およびAlphaScreenシグナルを妨害するビオチン模倣剤を含む複数のクラスの化合物の同定を可能にする。AlphaScreenシグナルを妨害する化合物は擬陽性と考えられるが、このシグナルに対して影響を示さない化合物が真のヒットとしての可能性があるものである(図9)。
【0094】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、「真のヒット」アッセイを通過した化合物の効力と活性を特性決定するために、第2の用量応答アッセイと機能的アッセイを実施する工程が含まれる(図7)。
【0095】
いくつかの実施形態では、第2の用量応答アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)を使用することによって実施されて、NgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害する「ヒット」としてAlphaScreensにおいて「ヒット」として同定された化合物の能力が評価される(図10A〜Dおよび11A〜C)。
【0096】
いくつかの実施形態では、これらの方法にはさらに、神経突起伸長を促進または阻害する能力について「ヒット」化合物を試験する工程が含まれる(図13〜20)。
【0097】
NogoとNogo受容体との相互作用を調節する化合物
本発明は、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物に関する。本発明の化合物には、場合によって置換された、場合によって部分的に飽和した、ベンゾフラン、インドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、クロメンまたはキノリンが含まれる。
【0098】
用語「場合によって置換された」は、本明細書中で使用される場合は、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかを意味する:ヒドロキシ(OH)、ニトロ(NO2)、シアノ(CN)、ハロ(F、Cl、Br、I)、アミノ、アルキル、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたヘテロシクロ、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。
【0099】
用語「アミノ」は、本明細書中で使用される場合は、式−NRaRbのラジカルをいう。ここでは、RaとRbは、別々に、水素、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたヘテロシクロ、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリールまたはアラルキルであるか;あるいは、RaとRbはそれらに結合した窒素原子と一緒に、3員から7員の場合によって置換されたヘテロシクロを形成する。限定ではない例示的なアミノ基としては、−NH2、−N(H)CH3、−N(CH3)2、−N(H)CH2CH3、−N(CH2CH3)2などが挙げられる。
【0100】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独でまたは別の基の一部として、通常は1個から18個の炭素または表示される炭素数を持つ、直鎖または分岐した飽和脂肪族炭化水素をいう。1つのそのような実施形態では、アルキルはC1〜C6アルキルである。限定ではない例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、4,4−ジメチルペンチルなどが挙げられる。
【0101】
用語「場合によって置換されたアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたアルキルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることをいう:ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、アミノ、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ。特定のそのような実施形態では、置換基は、ヒドロキシ(すなわち、ヒドロキシアルキル)、ハロ(すなわち、ハロアルキル)、またはアミノ(すなわち、アミノアルキル)から選択される。例示的な場合によって置換されたアルキル基としては、−CH2OCH3、−CH2CH2CN、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル、4−シアノベンジル、フェニルエチル(すなわち、PhCH2CH−)、(4−シアノフェニル)エチル、ジフェニルメチル(すなわち、Ph2CH−)などが挙げられる。他の適している場合によって置換されたアルキル基は、関連する分野の当業者が良く知っているであろう。
【0102】
用語「シクロアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、3個から12個までの炭素原子(すなわち、C3〜C12シクロアルキル)または表示された炭素数を持つ1個から3個の環を含む、飽和である環状の炭化水素基および部分不飽和(1つまたは2つの二重結合を含む)である環状の炭化水素基をいう。限定ではない例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、デカリン、アダマンチルなどが挙げられる。他の適切なシクロアルキル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0103】
用語「場合によって置換されたシクロアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなシクロアルキルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることをいう:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。用語「場合によって置換されたシクロアルキル」はまた、上記で定義されたようなシクロアルキルが場合によって置換されたアリールに融合させられ得ることも意味する。限定ではない例示的な場合によって置換されたシクロアルキル基としては以下が挙げられる:
【0104】
【化4】
用語「アルケニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む基をいう。限定ではない例示的なアルケニル基としては、−CH=CH−などが挙げられる。他の適切なアルケニル基は関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0105】
用語「場合によって置換されたアルケニル」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなアルケニルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることをいう:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。限定ではない例示的な場合によって置換されたアルケニル基としては、PhCH=CH−などが挙げられる。他の適切な場合によって置換されたアルケニル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0106】
用語「アルキニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、さらに1つの炭素−炭素三重結合を含む基をいう。限定ではない例示的なアルキニル基としては、−C≡C−などが挙げられる。他の適切なアルキニル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0107】
用語「場合によって置換されたアルキニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、上記で定義されたようなアルキニルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。限定ではない例示的な場合によって置換されたアルケニル基としては、PhC≡C−などが挙げられる。他の適切な場合によって置換されたアルキニル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0108】
用語「アリール」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、6個から14個までの炭素原子を通常有している単環および二環の芳香族環系(すなわち、C6〜C14アリール)(例えば、フェニル(Phと略される)、1−ナフチルなど)をいう。本発明のこの態様での使用に適している他のアリール基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0109】
用語「場合によって置換されたアリール」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなアリールが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。1つのそのような実施形態では、場合によって置換されたアリールは場合によって置換されたフェニルであり、これは特定の実施形態では、1つ以上の置換基を有する。限定ではない例示的な置換されたアリール基としては、4−ジメチルアミノフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−シアノフェニル,4−クロロフェニル、4−メトキシフェニルなどが挙げられる。本明細書中で使用される場合は、用語「場合によって置換されたアリール」はまた、融合させられた場合によって置換されたシクロアルキルと、融合させられた場合によって置換されたヘテロシクロ環(heterocyclo ring)を有している基も含むように意味される。限定ではない例示的な例としては以下が挙げられる:
【0110】
【化5】
用語「アラルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、1つ以上の場合によって置換されたアリール置換基を有している、上記で定義されたような場合によって置換されたアルキルをいう。1つのそのような実施形態では、場合によって置換されたアルキルは未置換である。特定のそのような実施形態では、場合によって置換されたアリールはフェニル(「Ph」と略される)である。限定ではない例示的なアラルキル基としては、ベンジル、4−シアノベンジル、フェニルエチル、(4−シアノフェニル)エチル、ジフェニルメチル、(4−フルオロフェニル)エチルなどが挙げられる。他の適切なアラルキル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0111】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、5個から14個までの炭素原子(すなわち、C5〜C14ヘテロアリール)と、酸素、窒素、および硫黄からなる群より別々に選択される1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を通常有している、単環および二環の芳香族環系をいう。1つのそのような実施形態では、ヘテロアリールは4個のヘテロ原子を有する。別のそのような実施形態では、ヘテロアリールは3個のヘテロ原子を有する。別のそのような実施形態では、ヘテロアリールは2個のヘテロ原子を有する。別のそのような実施形態では、ヘテロアリールは1個のヘテロ原子を有する。限定ではない例示的なヘテロアリール基としては、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、4−ベンズイミダゾリル、5−ベンズイミダゾリル、2−ベンズチアゾリル、4−ベンズチアゾリル、5−ベンズチアゾリル、5−インドリル、3−インダゾリル、4−インダゾリル、5−インダゾリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、2−キノリル、3−キノリル、6−キノリルなどが挙げられる。本明細書中で使用される場合は、用語「ヘテロアリール」はまた、可能なN−オキシドも含むように意味される。限定ではない例示的なN−オキシドとしては、ピリジルN−オキシドなどが挙げられる。本発明のこの態様で使用されるさらなる適切なヘテロアリール基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0112】
用語「場合によって置換されたヘテロアリール」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなヘテロアリールが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。限定ではない例示的な場合によって置換されたヘテロアリール基としては以下が挙げられる:
【0113】
【化6】
用語「ヘテロシクロ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、2個から12個までの炭素原子(すなわち、C2〜C12ヘテロシクロ)と、1個または2個の酸素、硫黄、もしくは窒素原子を持つ1個から3個の環を含む、飽和環および部分的に不飽和である(1個または2個の二重結合を含む)環基をいう。ヘテロシクロは、状況に応じて、炭素または窒素原子を介して分子の残りの部分に連結させることができる。限定ではない例示的なヘテロシクロ基としては以下が挙げられる:
【0114】
【化7】
用語「場合によって置換されたヘテロシクロ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、上記で定義されたようなヘテロシクロが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。
【0115】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、末端酸素原子に結合させられた、アルキル、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたヘテロシクロ、場合によって置換されたアルケニル、または場合によって置換されたアルキニルをいう。限定ではない例示的なアルコキシ基としては、メトキシなどが挙げられる。
【0116】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、末端酸素原子に結合させられた、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールをいう。限定ではない例示的なアリールオキシ基としては、フェノキシなどが挙げられる。
【0117】
用語「アラルキルオキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、末端酸素原子に結合させられたアラルキルをいう。限定ではない例示的なアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシなどが挙げられる。
【0118】
用語「アシル」は、本明細書中で使用される場合は、式RC(=O)−のラジカルをいい、式中、Rは、アルキル、場合によって置換されたアルキル、アラルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、または場合によって置換されたアルキニルである。限定ではない例示的なアシル基としては、アセチルなどが挙げられる。
【0119】
用語「アロイル」は、本明細書中で使用される場合は、式RC(=O)−のラジカルをいい、式中、Rは、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールである。限定ではない例示的なアロイル基としては、ベンゾイル、4−クロロベンゾイルなどが挙げられる。
【0120】
用語「アロイルアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、式RaC(=O)Rb−のラジカルをいい、式中、Raは、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールであり、Rbは、アルキルまたは場合によって置換されたアルキルである。限定ではない例示的な置換されたアロイルアルキル基としては以下が挙げられる:
【0121】
【化8】
用語「アルコキシカルボニル」は、本明細書中で使用される場合は、式ROC(=O)−のラジカルをいい、式中、Rは、アルキル、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたヘテロシクロ、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールである。限定ではない例示的なアルコキシカルボニル基としては、CH3OC(=O)−、CH3CH2OC(=O)−などが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、部分的に飽和しているインドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、またはクロメンとしては以下が挙げられる:
【0123】
【化9】
いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物には、置換されたベンゾフランおよびキノリンが含まれる。いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物には、上記に記載されたような、置換された部分的に不飽和であるインドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、またはクロメンが含まれる。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。例示的な置換基としては、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、(4−クロロベンゾイル)エチル、(4−シアノフェニル)エチル、または4−ジメチルアミノフェニルが挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物としては、場合によって置換された5−ヒドロキシ−ベンゾフラン、または場合によって置換された5−ヒドロキシ−3−アロイルアルキルベンゾフランが挙げられる。置換基としては、上記に記載されたような、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニルが挙げられる。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。そのような化合物の限定ではない例として、いくつかの実施形態では、以下が挙げられる:
【0125】
【化10】
式中、R1は、上記で定義されたような場合によって置換されたアリールであり、R2は、水素であるか、または上記で定義されたように場合によって置換される。いくつかの実施形態では、R1は4−クロロフェニルである。いくつかの実施形態では、R2は、水素またはメチルである。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物として、場合によって置換された3−アシル−インドール、または場合によって置換された3−ヒドロキシ−3−アロイルアルキル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンが挙げられる。置換基としては、上記で定義されたような、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニルが挙げられる。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。いくつかの実施形態においては、そのような化合物の限定ではない例として以下が挙げられる:
【0127】
【化11】
式中、R1は、上記で定義されたような場合によって置換されたアリールであり、R2は、水素または場合によって置換されたアルキルであり、そしてR3はハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1は4−クロロフェニルである。いくつかの実施形態では、R2は水素、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を有する。
【0128】
神経突起伸長を促進する化合物
本発明はまた、神経突起伸長を促進する化合物にも関する(図13、14A、14B、17A、17B、18A、18B、および20)。そのような化合物は表2に記載されており、Chembridge Inc.またはMaybridge Ltd.(Maybridge Chemical Holdings Ltd.の子会社)から入手することができる。
【0129】
【表2−1】
【0130】
【表2−2】
神経突起伸長を阻害する化合物
本発明はまた、神経突起伸長を阻害する化合物にも関する(図15および20)。そのような化合物は表3に記載され、Chembridge Inc.またはMaybridge Ltd.(Maybridge Chemical Holdings Ltd.の子会社)から入手することができる。
【0131】
【表3】
組成物
本発明の範囲に含まれる組成物には、その意図される目的を達成するために有効な量で1種類以上の本発明の化合物が含まれている全ての組成物が含まれる。個々の要求は様々であるが、個々の成分の有効量の最適範囲の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0132】
本発明の範囲に含まれる組成物にはまた、1種類以上の本発明の化合物が、治療有効量の1種類以上のさらなる治療薬(例えば、他のNogo受容体アンタゴニストまたはアゴニスト、例えば、可溶性Nogo受容体ポリペプチドまたは抗NgR抗体)と組み合わせられた全ての組成物も含まれる。有効成分(例えば、他のNogo受容体アンタゴニストまたはアゴニスト、例えば、可溶性Nogo受容体ポリペプチドまたは抗NgR1抗体)に加えて、そのような組成物には、関連分野で周知である1種類以上の薬学的賦形剤が状況に応じて含まれ得る。組成物中での個々の有効成分の最適量は、本明細書中で提供される指針に基づき、そして当該分野で容易に入手することができる情報を考慮して、当業者に公知の日常的に行われている方法を使用して臨床医師が容易に決定することができる。
【0133】
化合物そのものとしての化合物の投与に加えて、本発明の化合物は、1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の適切な薬学的に許容される担体(例えば、薬学的に使用できる調製物へのその化合物の処理を容易にする1種類以上の賦形剤または補助剤)を含む薬学的組成物の一部として投与することができる。好ましくは、そのような薬学的組成物には、約0.01%から99%(例えば、約0.25%から75%の活性のある化合物(単数または複数))が、賦形剤(単数または複数)とともに含まれ、特に、経口投与または局所投与でき、そして好ましい投与のタイプ(例えば、錠剤、糖衣錠、徐放型トローチ剤およびカプセル剤、ゲル、液体懸濁剤、ならびに非経口投与による(例えば、静注、筋肉内注射、頭蓋内注射もしくは皮下注射による)投与に適している溶液)に使用できるそのような組成物が好ましい。
【0134】
本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物および/または組成物により有益な効果が得られる可能性がある任意の患者に投与され得る。そのような患者中で第1となるのがヒトであるが、本発明はそれに限定されるようには意図されない。他の患者としては、獣医学的動物(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなど)が挙げられる。
【0135】
本発明の化合物および薬学的組成物は、それらの意図される目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、経皮、口腔、舌下、髄腔内、脳室内、頭蓋内、鼻腔内、眼、肺(例えば、吸入による)、局所経路、あるいは直接注入によって行われ得る。あるいは、または同時に、投与が経口経路によって行われる場合もある。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、現在行われている処置の種類、行われているならばその処置の頻度、ならびに所望される効果の性質に依存する。
【0136】
本発明の方法では、化合物は、直接神経系に、脳室内に、または髄腔内に、例えばMSの慢性患部内に投与することができる。本発明の化合物を用いる処置については、投与量は、宿主の体重に対して、例えば、約0.0001mg/kgから100mg/kg、より通常は、0.01mg/kgから5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg,2mg/kgなどの範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、すなわち、1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは、少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲の中間の用量もまた本発明の範囲に含まれると意図される。被験体には、そのような用量を毎日、1日おきに、1週間に1回、または経験的分析によって決定された任意の他のスケジュールにしたがって投与することができる。例示的な処置には、例えば、少なくとも6ヶ月間の長期にわたる複数回の投与が必然的に伴う。さらに別の例示的な処置レジュメには、2週間に1回、または1ヶ月に1回、または3ヶ月から6ヶ月に1回の投与が必然的に伴う。例示的な投与スケジュールには、毎日の1〜10mg/kgまたは15mg/kg、1日おきの30mg/kg、または1週間に1回の60mg/kgが含まれる。
【0137】
いくつかの方法では、2種類以上の治療薬が同時に投与される。この場合、投与される個々の薬剤の投与量は示された範囲内となる。補助的な活性のある化合物もまた本発明の方法において使用される組成物中に配合することができる。例えば、本明細書中に記載される化合物を、1種類以上のさらに別の治療薬と一緒に同時製剤する、および/または同時投与することができる。
【0138】
本発明には選択された標的組織への化合物についての任意の適切な送達方法が含まれ、これには水溶液のボーラス注射または徐放系の移植が含まれる。徐放系の移植の使用により、反復注射の必要性が低くなる。
【0139】
本発明の方法で使用される化合物は脳内に直接注入することができる。化合物の直接の脳への注入のための種々のインプラントが知られており、そしてこれは、神経学的障害に罹患しているヒト患者への治療用化合物の送達に有効である。これらにはポンプを使用する脳への長期注入、定位移植暫定的間質カテーテル、永久頭蓋内カテーテルインプラント、および、外科的に移植された生体分解性のインプラントが含まれる。例えば、Gillら、前出;Scharfenら、「High Activity Iodine−125 Interstitial Implant For Gliomas」,Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.24(4):583−91(1992);Gasparら、「Permanent 125I Implants for Recurrent Malignant Gliomas」,Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.43(5):977−82(1999);第66章,577−580頁,Bellezzaら、「Stereotactic Interstitial Brachytherapy」,Gildenbergら、Textbook of Stereotactic and Functional Neurosurgery,McGraw−Hill(1998);およびBremら、「The Safety of Interstitial Chemotherapy with BCNU−Loaded Polymer Followed by Radiation Therapy in the Treatment of Newly Diagnosed Malignant Gliomas:Phase I Trial」,J.Neuro−Oncology 26:111−23(1995)を参照のこと。
【0140】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、脳の適切な領域内への直接の注入により患者に投与される。例えば、Gillら、「Direct brain infusion of glial cell line−derived neurotrophic factor in Parkinson disease」,Nature Med.9:589−95(2003)を参照のこと。別の技術も利用することができ、本発明の化合物の投与に適用することができる。例えば、Riechert−Mundinger装置およびZD(Zamorano−Dujovny)多目的局在化装置を使用して、カテーテルまたはインプラントの定位設置を行うことができる。120mlのオムニパーク(omnipaque)、350mgのヨウ素/mlを注入する、2mmスライス厚を使用するコントラスト増強コンピューター断層撮影(CT)スキャンにより、3次元多平面治療計画が可能になる(STP、Fischer,Freiburg,Germany)。この装置は、明確な標的の確認のための、CTおよびMRIの標的情報を合わせながらの磁気共鳴画像化試験に基づいた計画が可能である。
【0141】
GE CTスキャナー(General Electric Company,Milwaukee,WI)とともに使用されるように改良されたLeksell定位システム(Downs Surgical,Inc.,Decature,GA)、ならびにBrown−Roberts−Wells(BRW)定位システム(Radionics,Burlington,MA)をこの目的のために使用できる。これにより、移植当日の朝、BRW定位フレームの環状ベースリングを患者の頭蓋に装着できる。ベースプレートに固定されたグラファイト・ロッド・ローカライザー・フレームを用いて(標的組織)領域全体を3mm間隔で一連のCT断面を獲得することができる。グラファイトロッド画像のCT座標を使用してVAX11/780コンピューター(Digital Equipment Corporation,Maynard,Mass.)上でコンピューターによる治療計画プログラムを実行することにより、CTスペースとBRWスペースとの間をマッピングすることができる。
【0142】
組成物にはまた、化合物のための適当な送達システムまたは支持システムとして機能する生体適合性の担体物質の中に分散させられた本発明の化合物も含まれる。除放性担体の適当な例として、坐剤またはカプセル剤のような成形された物品の形態の半透過性の重合体マトリックスが含まれる。移植可能な徐放マトリックスまたはマイクロカプセル型の除放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,319号;EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanら、Biopolymers 22:547−56(1985));ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981);Langer,Chem.Tech.12:98−105(1982))、またはポリ−D−(−)−3ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
【0143】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される化合物には、さらに標的化部分が含まれる。標的化部分には、体の特定の部分への(例えば、脳への、またはその中の区画への)局在化を指令するタンパク質またはペプチドが含まれる。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される化合物は脳標的化部分に結合されられるか、または融合させられる。脳標的化部分は共有結合されるか(例えば、直接の、翻訳による融合、または直接的、もしくは状況に応じて切断することができるスペーサー分子を介してのいずれかでの化学的結合による)、あるいは共有結合以外によって結合される(例えば、アビジン:ビオチン、プロテインA:IgGなどのような可逆的な相互作用を介する)。他の実施形態では、その本発明の方法で使用される化合物は、さらに1つの脳標的化部分に結合させられる。さらなる実施形態では、脳標的部分は本発明の方法で使用される複数の化合物に結合させられる。
【0144】
化合物と会合させられた脳標的化部分は、そのような化合物の脳送達を促進する。治療剤に融合されるとその治療剤を血液脳関門(BBB)を通じて送達する多数のポリペプチドが記載されている。限定ではない例としては、単一ドメイン抗体FC5(Abulrobら(2005)J.Neurochem.95,1201−1214);mAB 83−14、ヒトインスリン受容体に対するモノクローナル抗体(Pardridgeら(1995)Pharmacol.Res.12,807−816);ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に結合するB2、B6およびB8ペプチド(Xiaら(2000)J.Virol.74,11359−11366);トランスフェリン受容体に対するOX26モノクローナル抗体(Pardridgeら(1991)J.Pharmacol.Exp.Ther.259,66−70);ジフテリア毒素共役(例えば、Gaillardら、International Congress Series 1277:185−198(2005)を参照のこと);および米国特許第6,306,365号の配列番号1〜18が挙げられる。上記参考文献の内容は、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0145】
化合物の増強された脳送達は、当該分野で十分に確立された多数の手段によって決定される。例えば、脳標的化部分に連結させられた放射線標識された化合物が動物への投与;脳への局在の決定;および、局在の、脳標的化部分と会合していない同等な放射線標識された化合物との比較がある。増強された標的化を決定する他の手段は上記の参考文献に記載されている。
【0146】
本発明の適切な経口用の薬学的組成物は、例えば、従来の混合、顆粒化、糖衣錠の生成、溶解、または凍結乾燥プロセスによって、それ自体が当該分野で周知の様式で製造される。したがって、経口で使用される固体の薬学的調製物は、1種類以上の本発明の化合物と、状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分を、1種類以上の固体の賦形剤と混合し、状況に応じて得られた混合物を粉にし、そして所望されるかまたは必要な場合には、錠剤もしくは糖衣錠の核を得るための適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理することによって、得ることができる。
【0147】
通常、化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、約0.0025mg/kgから約50mg/kgの用量で、あるいは同等の量の薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物もしくはエステルが投与され得る。例えば、約0.01mg/kgから約25mg/kgが、そのような疾病を処置、緩和、または予防するために経口投与され得る。筋肉内注射については、用量は通常は、経口用量の約2分の1であり、例えば、適切な筋肉内用量は、約0.0025mg/kgから約25mg/kg、例えば、約0.01mg/kgから約5mg/kgである。
【0148】
単位経口用量には、約0.01mgから約1000mgまでのこの化合物、あるいは同等の量のその薬学的に供される塩、溶媒和物、またはエステルが含まれ得る。単位用量は、1つ以上の錠剤またはカプセル剤として1日に1回以上投与され得る。
【0149】
局所用処方物の中には、この化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはエステルが、担体1グラムあたり約0.01mgから100mgの濃度で存在し得る。
【0150】
適切な賦形剤は、特に、増量剤(例えば、ラクトース、スクロース、フルクトースなどのような糖類;マンニトール、ソルビトール、またはキシリトールなどのような糖アルコール;セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムもしくはリン酸水素カルシウム);ならびに、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンを使用する)デンプンベーストのような結合剤である。所望される場合は、上記のデンプンと、またカルボキシメチル−デンプン、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸、またはそれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)のような崩壊剤を添加することができる。補助剤は、上記の全て、流動調節剤(flow−regulating agent)および潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム)、および/またはポリ(エチレングリコール)である。糖衣錠の核には適切なコーティングが施され、所望される場合は、これは、胃液に対して耐性がある。この目的のためには、濃縮された糖溶液が使用され得、これには状況に応じてアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレングリコール)、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液(lacquer solution)、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物が含まれ得る。胃液に対して耐性があるコーティングを施すためには、適切なセルロース調製物(例えば、フタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチル−セルロース)の溶液を使用することができる。染料または色素を、例えば、識別のため、あるいはその有効成分または用量の組み合わせを特性化させるために、錠剤または糖衣錠のコーティングに加えることができる。
【0151】
経口用に使用することができる他の薬学的調製物としては、ゼラチン製のプッシュ−フィットカプセル(push−fit capsule)、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)からつくられた軟質のシールされたカプセルが挙げられる。特定の実施形態では、プッシュ−フィットカプセルには、増量剤(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、および/または潤滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)、および状況に応じて安定剤と混合された顆粒の形態で、1種類以上の本発明の化合物が含まれ得る。軟質カプセル中では、1種類以上の薬学的成分(例えば、1種類以上の本発明の化合物と、状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分)が、好ましくは、適切な液体(例えば、脂肪油または液体パラフィン)中に溶解または懸濁させられる。加えて、安定剤も添加され得る。
【0152】
本明細書を通じて開示される固体の投薬形態に加えて、本発明によってはまた、チュアブルタイプの(chewable)経口用処方物も提供される。そのようなチュアブルタイプの処方物は、適合性(compliance)が問題である患者の集団(例えば、小児、高齢者)および嚥下が困難であるかまたは噴霧/吸入用の処方物の使用が難しい患者に特に有用である。特定のそのような実施形態では、処方物には、有効量の1種類以上の本発明の化合物が、患者が処方物を噛めるようにするために適している賦形剤とともに含まれる(または原則としてそれらからなる)。さらなる実施形態では、処方物にはさらに、1種類以上の矯味剤または甘味剤を含めることができる。
【0153】
任意の標準的な薬学的に許容される賦形剤は、適切な圧縮がかけられたチュアブルタイプの錠剤処方物中で使用することができる。賦形剤は、例えば、希釈剤(例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、およびAustin Products Inc.(Holmdel,N.J.)から入手することができるDiPac(登録商標)(デキストリン化スクロース)のような圧縮可能な糖)、結合剤、崩壊剤、分裂剤、または膨張剤(例えば、ポリビニルポリピロリドン、クロスカルメロースナトリウム(例えば、FMC BioPolymer,Philadelphia,Pa.から入手することができるAc−Di−Sol))、デンプンおよび誘導体、セルロースおよび誘導体、微結晶セルロース(例えば、アビセル(Avicel)(商標)PH 101またはアビセル(商標)CE−15(グアーガムで修飾された微結晶セルロース(いずれもFMC BioPolymer,(Philadelphia,Pa.)から入手することができる))、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、および流動剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えば、Cabot Corporation,Kokomo,Ind.から入手することができるCab−O−Sil M5(登録商標))である。
【0154】
別の実施形態では、本発明により、例えば、米国特許第6,723,348号(すべての目的のためにその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されているもののような、経口崩壊錠剤(orally disintegrating)/口腔分散可能錠剤(orodispersible tablet)が提供される。この経口崩壊錠剤/口腔分散可能錠剤は、唾液と接触すると口腔内で適切に崩壊し、容易に嚥下できる懸濁液を形成する。このような錠剤は、コーティングされた顆粒の形態の中に本発明の化合物と状況に応じた1種類以上のさらに別の活性剤(例えば、本明細書に記載されるもの)、および賦形剤の混合物を含む(または原則としてそれらからなる)。この賦形剤の混合物には、少なくとも1種類の崩壊剤、可溶性希釈剤、潤滑剤、および状況に応じた膨張剤、帯電防止剤(antistatic agent)(流動剤)、浸透剤、矯味剤/甘味剤、香料、および着色料が含まれる。特定のそのような実施形態では、崩壊錠/口腔分散可能錠剤には、矯味剤であるスクラロースが含まれる。本発明の経口崩壊錠中の本発明の化合物(単数または複数)、他の状況に応じた活性剤、および甘味剤(例えば、スクラロース)の量は当業者は容易に決定することができ、本明細書に記載されるこれらの量および組み合わせが含まれる。
【0155】
別の実施形態では、本発明により、米国特許第6,245,353号(その開示は、その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されているような、経口投与のための固体である、発泡性の、迅速に溶解する1種類以上の本発明の化合物の投薬形態が提供される。
【0156】
本発明の別の実施形態は、ヒトを含む温血動物の口腔内で溶解するように、および口腔の粘膜に接着するように特に十分に適合されられた、1種類以上の本発明の化合物と、状況に応じた1種類以上のさらに別の活性剤(例えば、本明細書中に記載されるもの)の送達を可能にする生理学的に許容されるフィルムに関する。本発明のこの態様に従う使用に適しているこのような生理学的に許容されるフィルムは、米国特許出願番号2004/0247648に開示されており、この開示はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0157】
経口投与および/または非経口投与に適している処方物としては、水溶性形態(例えば、水可溶性の塩およびアルカリ溶液)中の、1種類以上の本発明の化合物と状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分の水溶液が挙げられる。加えて、適切な油性の注射用懸濁液としての有効成分(単数または複数)の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドまたはポリ(エチレングリコール)−400)が挙げられる。水性の注射用懸濁液には、状況に応じて、懸濁液の粘性を高める物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含む)を含めることができる。状況に応じて、懸濁液にはまた、1種類以上の安定剤、1種類以上の保存剤(例えば、エデト酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムなど)、および/または薬学的組成物の処方に一般的に使用されている他の成分も含めることができる。
【0158】
本発明の適切な局所用の薬学的組成物は、適切な担体を選択することによって、油、クリーム、ローション、軟膏などとして処方されることが好ましい。したがって、本発明のそのような組成物には、1種類以上の本発明の化合物、状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分、および局所投与用のそのような薬学的組成物の調製における使用に適している1種類以上の担体が含まれる。適切なそのような担体としては、植物性油または鉱油、白色ワセリン(白色軟パラフィン)、分岐鎖の脂肪または油、動物性脂肪および高分子量のアルコール(C12より大きい)が挙げられる。好ましい担体は、その中に薬学的有効成分(単数または複数)を溶解させることができるものである。乳化剤、安定剤、保湿剤、および抗酸化剤もまた含めることができ、さらに、所望される場合には、着色剤または香料も含めることができる。加えて、1種類以上の経皮浸透促進剤を、これらの局所用処方物の中で使用することができる。適切なそのような促進剤の限定ではない例は、米国特許第3,989,816号および同第4,444,762号(これらは、それらの関連する部分について引用により本明細書中に組み入れられる)の中で見ることができる。
【0159】
眼投与に適している液体の薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体または賦形剤が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤はスクラロースであり、組成物には保存剤が含まれないかまたは実質的に含まれず、組成物は単回投与用の容器の中に入れられる。適切な単回投与用の容器としては、高密度ポリエチレン容器(例えば、ブロー−フィル−シール(blow−fill−seal)製造技術を使用して製造された約1mLの容量を持つ高密度ポリエチレン容器)が挙げられるが、これに限定されない。
【0160】
単回投与または複数回投与の形態での鼻腔投与に適している液体の薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体または賦形剤が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤はスクラロースであり、組成物には保存剤が含まれないかまたは実質的に含まれず、組成物は単回投与用の容器または複数回投与用の容器のいずれかに入れられる。
【0161】
本発明により、1種類以上の本発明の化合物と、本明細書中に記載されるもののような状況に応じた1種類以上のさらに別の活性剤の肺送達用の処方物ならびに組成物が提供される。
【0162】
適切な吸入用の粉末状薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体または賦形剤が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、本発明の化合物(単数または複数)は微粉末化された粒子の形態であり、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤はスクラロース(例えば、スクラロースの微粉末化された粒子)である。適切なそのような吸入用の粉末状薬学的組成物には、約1μmから約5μmの平均粒径を有している1種類以上の本発明の化合物の微粉末化された粒子と、約1μmから約20μmの平均粒径を持つスクラロースの微粉末化された粒子が含まれる。本発明のそのような吸入用の粉末状薬学的組成物は、例えば、乾燥粉末吸入器を使用する肺送達用に処方することができる。
【0163】
適切な吸入可能な噴霧用の薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体、安定剤、または賦形剤を提供するための適切な濃度が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、本発明の化合物(単数または複数)は溶液の形態であり、そして少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤は、溶液の中に溶解させられたスクラロースである。そのような吸入可能な噴霧用の薬学的組成物は、適切なデバイスとともに使用されると、約1μmから約5μmの平均粒径を有している成分(有効成分と非有効成分を含む)の細かい噴出をもたらす。本発明のそのような吸入可能な噴霧用の薬学的組成物は、例えば、適切なデバイスまたは吸入器を使用する肺送達用に処方することができる。
【0164】
特定の実施形態では、本発明の化合物と1種類以上のさらに別の治療薬を含む薬学的組成物が患者に投与される。
【0165】
特定の実施形態では、本発明の化合物と1種類以上のさらに別の治療薬が、別の組成物の中で患者に投与され、そして投与は同時に行われるか、または異なる周期性で行われる。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明には、賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容される担体が含まれ得る。これらは、作用部位への送達のために薬学的に使用することができる調製物への活性のある化合物の処理を容易にする。非経口投与に適している処方物としては、水溶性形態(例えば、水溶性の塩)の活性のある化合物の水溶液が挙げられる。加えて、適切な油性の注射用懸濁液としての活性のある化合物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)が挙げられる。水性の注射用懸濁液には、懸濁液の粘性を高める物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、およびデキストランを含む)を含めることができる。状況に応じて、懸濁液にはまた、安定剤も含めることができる。リポソームもまた、細胞への送達のために本発明の分子をカプセル化するために使用することができる。例示的な「薬学的に許容される担体」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性の吸収遅延剤などであり、これらは、生理学的に適合性の水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、組成物には、等張剤(例えば、糖類、多価アルコール類(例えば、マンニトール、ソルビトール)、または塩化ナトリウムが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物には薬学的に許容される物質(例えば、湿潤剤)または少量の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤)、本発明の化合物の保存期限または有効性を高める保存剤または緩衝液が含まれる。
【0167】
本発明の組成物は様々な形態であり得、これには例えば、液体、半固体、および固体の投薬形態(例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液または注入可能な溶液)、分散液、あるいは懸濁液)が含まれる。好ましい形態は意図される投与の態様と治療用途に応じて様々である。1つの実施形態では、組成物は、注射可能な溶液または注入可能な溶液(例えば、他の抗体でヒトを受動免疫するために使用されるものと類似する組成物)の形態である。
【0168】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適している他の秩序のある構造として処方することができる。滅菌の注射可能な溶液は、必要量の化合物を、適切な溶媒の中に、必要に応じて上記の成分の1つまたは上記の成分の組み合わせと共に取り込ませ、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。通常、分散液は、活性のある化合物を、基本的な分散媒体と上記のものから必要な他の成分を含む滅菌のビヒクルに取り込ませることによって調製される。滅菌の注射可能な溶液の調製のための滅菌の粉末の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これによって、有効成分と任意のさらに別の所望される成分の粉末が、予め滅菌濾過されたそれらの溶液から得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒子の大きさの維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる物質(例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチン)を組成物に含めることによっても得ることができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、活性のある化合物は迅速な放出から化合物を防御する担体とともに調製することができ、例えば、徐放処方物(インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む)である。生体分解性の生体適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)を使用することができる。このような処方物の調製のための多くの方法は特許がとられているか、または当業者に一般的に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編,Marcel Dekker,Inc.,New York(1978)を参照のこと。
【0170】
投与レジュメは、最適な所望される反応(例えば、治療応答または予防応答)を提供するように調整することができる。例えば、1回のボーラスが投与される場合があり、数回に分けられた用量が時間をかけて投与される場合もあり、また、治療状況の緊急性によって望まれる場合には、用量が比例的に減少させられる場合も、増大させられる場合もある。投与を容易にするための単位投与量形態に非経口組成物を処方することが特に有効であり、そして、単位投与量形態が均質であることは、本明細書中で使用される場合には、処置される哺乳動物被験体について単一の投与量として適している物理的に分かれている単位をいう。個々の単位には、必要とされる薬学的担体と組み合わせて、所望される治療効果を生じるように計算された予め決定された量の活性のある化合物が含まれる。本発明の単位投与量形態についての詳細は、(a)化合物の特有の特性と、得られる特定の治療効果または予防効果、および(b)個体の過敏症の処置については、そのような化合物を混合することに関する当該分野に特有の限界に影響されるか、またはそれらに直接依存する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物についての治療有効量の範囲は、0.0025mg/Kg/日〜50mg/Kg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量の範囲は、0.01mg/Kg/日〜25mg/kg/日である。
【0171】
化合物および組成物の使用
いくつかの実施形態では、本発明により神経突起伸長を促進するための方法が提供される。この方法には、ニューロンを本発明の化合物または組成物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、上記化合物または組成物は、神経突起伸長の阻害を阻害する。いくつかの実施形態では、ニューロンは哺乳動物中のものである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明により、NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法が提供される。この方法には、ニューロンを、有効量の本発明の化合物または組成物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、ニューロンは哺乳動物中のものである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明により、哺乳動物において、中枢神経系(CNS)疾患、疾病、または損傷を処置する方法が提供される。この方法には、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の本発明の化合物または組成物を投与する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、疾患、疾病、または損傷は、多発性硬化症、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、緑内障、聴力低下、および副腎白質萎縮症である。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明により、神経突起伸長を阻害するための方法が提供される。この方法には、ニューロンを、本発明の化合物または組成物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、神経突起伸長を阻害する。いくつかの実施形態では、ニューロンは哺乳動物中のものである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0175】
いくつかの実施形態では、本発明により、哺乳動物において統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法が提供される。この方法には、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の本発明の化合物または組成物を投与する工程が含まれる。
【0176】
本発明の化合物は治療的に使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物はヒト患者に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、獣医学的目的のために、またはヒト疾患の動物モデルとして、Nogo受容体−1を発現するヒト以外の哺乳動物に投与される。そのような動物モデルは、本発明の化合物の治療効力を評価するために有用であり得る。
【0177】
本発明の化合物は、単独で、または組み合わせとして、または特定の病理学的プロセスを調節する複数の他の物質と順次組み合わせて提供することができる。本明細書中で使用される場合は、本発明の化合物は1種類以上のさらに別の治療薬と組み合わせて投与することができ、この場合は、2種類が同時に投与されるか、連続して投与されるか、または別々に投与される。
【0178】
本発明の化合物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、吸入、または口腔経路から投与することができる。例えば、薬剤は、微量注入によって損傷部位に局所投与される場合がある。典型的な部位としては、怪我によって生じた脊髄の損傷した領域が挙げられるが、これに限定されない。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、同時に行われている処置の種類、行われている場合には、処置の頻度、および所望される効果の性質に応じて様々であり得る。
【0179】
本発明の化合物は、通常は、哺乳動物(例えば、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、およびマウスにおいてインビボで、あるいはインビトロで利用することができる。
【0180】
当然ながら、本明細書に記載した方法および用途に対する他の適切な変更および適合は明白であり、本発明またはその任意の実施形態の範囲からも逸脱することなく実施され得ることは、当業者に容易に明らかであろう。本発明がより理解されるように、以下の実施例が示される。これらの実施例は説明を目的とするのみであり、いかなる方法でも本発明を限定するようには解釈されるべきではない。
【実施例】
【0181】
(実施例1)
Nogo受容体:Nogoリガンド相互作用の低分子阻害剤についてのAlpha Screen
AlphaScreenアッセイを、Nogo受容体−Nogoリガンド相互作用の低分子阻害剤をスクリーニングするために使用した。AlphaScreenアッセイには、適合しているAlphaドナー(ストレプトアビジン)とアクセプタービーズ(プロテインA)を含めた。(図1)これらのビーズをヒドロゲルの層でコーティングして、生体結合のための官能基を持たせた。溶液中のストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズは、それら自体はシグナルを生じない。しかし、生物学的反応によってAlphaドナービーズとアクセプタービーズが接近している場合には、レーザーで励起させると、化学反応のカスケードによってシグナルの大幅な増幅が生じる。(図3)レーザーで励起させると、ドナービーズの内部にある光増感剤が、雰囲気酸素をさらに励起した一重項状態に変換する。一重項状態の酸素分子は拡散してアクセプタービーズ中で化学発光反応を生じ、光の放射を導く。特異的な生物学的相互作用がなければ、ドナービーズによって生産された一重項状態の酸素分子は、アクセプタービーズに接近することはなく、検出されない。
【0182】
ストレプトアビジンに共役したビーズを、ビオチニル化Nogo 66(Ng66)(Nogoリガンドのカルボキシル領域中にある66アミノ酸の阻害性ドメイン)に結合させるために使用し、プロテインAに共役したビーズを、Fc−Nogo受容体(NgR)融合タンパク質に結合させるために使用した。(図2)Ng66とFc−NgRとの相互作用により、アクセプタービーズとドナービーズを接近させ、これによって、励起させるとシグナルが生じた。(図3および5)相互作用を妨害した分子(例えば、ビオチニル化されていないNg66およびNEP−33(アセチル−RIYKSVLQAVQKTDEGHPFKAYLELEITLSQEQ−アミド)(配列番号4))は、ビーズの接近を妨げ、それにより、妨害の指標となるシグナルを低下させた。(図4および6)。
【0183】
20000種類の化合物をシグナルの低下、したがって、Fc−NgR:Ng66相互作用阻害活性についてスクリーニングした。化合物(10uM)を、ドナービーズ、アクセプタービーズ、Fc−NgR、およびビオチニル化Ng66の混合物を含むウェルに添加した。シグナル阻害を示した5種類の化合物を示す一例となるプレートを図8に示す。試験した20000種類の化合物のうち、163種類の化合物がシグナル阻害活性を有しており、これらをその後の評価のために選択した。
【0184】
(実施例2)
Nogo受容体:Nogoリガンド相互作用の低分子阻害剤についての第2のTruHits Screen
AlphaScreen TruHitsキット(PerkinElmer)を、AlphaScreenアッセイにおいて擬陽性を同定するために使用した。AlphaScreen TruHitsキットは、色素消光剤、光散乱物質(不溶性化合物)、一重項酸素消光剤、およびAlphaScreenシグナルを妨害するビオチン模倣剤を含む複数のクラスの化合物を同定することができる。AlphaScreenシグナルを妨害するライブラリー化合物は擬陽性と考えられるが、このシグナルに対して影響を示さない化合物が真のヒットとしての可能性があるものである。
【0185】
化合物10と12を、AlphaScreenを使用してヒットとして同定した。それらの妥当性を評価するために、これらの化合物を、製造業者の説明書にしたがってAlphaScreen TruHitsキットを使用して評価した。それぞれの化合物について10uMから0.000508uM(最終濃度)までの範囲の希釈系列を、AlphaScreen TruHitsキットの成分を含む水を含むウェルに添加した。用量依存性のシグナル阻害をAlphaScreen TruHitsアッセイにおいて観察し、これは、化合物10と12がおそらく擬陽性であることを示していた(図9)。
【0186】
(実施例3)
Nogo受容体:Nogoリガンド相互作用についての可能性のある低分子阻害剤を評価するためのELISAアッセイとDELFIAアッセイ
ELISAアッセイとDELFIAアッセイを、その後、NgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害する能力について、AlphaScreensにおいて「ヒット」として同定された低分子を評価するために行った。DELFIAアッセイでは、96ウェルのストレプトアビジンをコーティングしたプレートを、PBSと10mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)(200μl)で一晩ブロックした。次いで、ウェルを、Nogo 66(B66)(0.5μlの10mM/10ml HBH)(50μl)を含む超音波処理したHBH(ハンクス平衡化塩類溶液/0.1MのHEPES/1mg/mlのBSA)で1.5時間コーティングし、その後、200μlのHBHで4回洗浄した。阻害剤化合物を含む溶液(HBH中の50μl)を、HBH(50μl)中の1%のFcNgR溶液とともに添加し、溶液を2時間インキュベートした。ウェルをHBHで5回洗浄した。アルカリホスファターゼ(AP)共役マウス抗ラット抗体(1:2500)を添加し、その後、ウェルをDELFIA洗浄緩衝液で5回洗浄した。次いで、ユーロピウム(Eu)抗マウス抗体を、Perlin Elmer Assay緩衝液(100μg/ml)(150μl)中に添加し、ウェルをDELFIA洗浄緩衝液で再び5回洗浄した。エンハンサー溶液を添加し(100μl)、プレートを15分後に、Perkin Elmer Victor 5機器で読み取った。(図10B)DELFIAアッセイによる結果は、化合物HTS08871、KM08071、およびS03749、ならびにポジティブ対照であるNEP33が、Nogo受容体:Nogoリガンド(Nogo 66)相互作用を阻害することを示している。(図10Dおよび11A〜C)。
【0187】
ELISAアッセイでは、96ウェルのストレプトアビジンをコーティングしたプレートを、PBSと10mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)(200μl)で一晩ブロックした。その後、ウェルを、Nogo 66(B66)(0.5μlの10mM/10ml HBH)(50μl)を含む超音波処理したHBH(ハンクス平衡化塩類溶液(Hanks Balanced Salt Solution)/0.1MのHEPES/1mg/mlのBSA)で1.5時間コーティングし、次いで200μlのHBHで4回洗浄した。阻害剤化合物を含む溶液(HBH中の50μl)をHBH(50μl)中の1%のFcNgR溶液とともに添加し、この溶液を2時間インキュベートした。ウェルをHBHで5回洗浄した。アルカリホスファターゼ(AP)共役マウス抗ラット抗体(1:2500)を添加し、その後、ウェルをHBHで5回洗浄した。比色分析用のアルカリホスファターゼ基質を30分かけて添加し、プレートをPerkin Elmer Victor 5機器で読み取った。(図10A)。ELISAアッセイによる結果は、NEP33とシスプラチンがNogo受容体:Nogoリガンド(Nogo 66)相互作用を阻害することを示している。(図10C)。
【0188】
(実施例4)
神経突起伸長に対するNogo受容体の作用
神経突起伸長に対するNogo受容体の作用を明らかにするために、後根神経節(DRG)を、生後10日目に、野生型マウスおよびNogo受容体1(NgR1)ノックアウトマウスの子供から切り取り、0.5%のコラゲナーゼ中での30分間のインキュベーション後に粉砕によって分離させ、10%のウシ胎児血清とB27を含むDMEM中のラミニンをコーティングした96ウェル組織培養プレート上にプレートした。24時間後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の4%のホルムアルデヒド中に固定し、PBS中で洗浄し、そして0.1%のtriton X−100と10%のヤギ血清を含むPBS中で1時間ブロックした。その後、細胞を、PBS中のウサギ抗β−3−チューブリン(1:500)中で一晩インキュベートした。3回の洗浄後、細胞を、Alexa−fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(1:500)中で6時間インキュベートし、PBSで洗浄し、そしてImagExpress自動顕微鏡(automated microscope)(Molecular Devices,Inc.)で10倍の写真を撮影した。神経突起伸長を、AcuityExpressソフトウェア(Molecular Devices,Inc.)を用いて測定した。これらの結果は、Nogo受容体が、野生型マウスの中で神経突起伸長を阻害することを示している。神経突起伸長は、Nogo受容体ノックアウトマウスの中では影響を受けない。(図12A)。
【0189】
(実施例5)
神経突起伸長アッセイ
「ヒット」化合物について神経突起伸長を促進する能力を試験するために、神経突起伸長アッセイを、これらの化合物のそれぞれを使用して行った。後根神経節(DRG)を、胚性期13日目または14日目のニワトリの胚から切り取り、0.5%のコラゲナーゼ中での30分間のインキュベーション後に粉砕によって分離させ、20μMの試験化合物を含む10%のウシ胎児血清を含むDMEM中のラミニンをコーティングした96ウェル組織培養プレート上にプレートした。2時間から4時間のインキュベーションの後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の4%のホルムアルデヒド中に固定し、PBS中で洗浄し、0.1%のtriton X−100と10%のヤギ血清を含むPBS中で1時間ブロックした。細胞を、PBS中のウサギ抗β−3−チューブリン(1:500)中で一晩インキュベートし、その後、PBSで3回洗浄した。次いで、細胞を、Alexa−fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(1:500)中で6時間インキュベートし、PBSで洗浄し、そしてImagExpress自動顕微鏡(Molecular Devices,Inc.)で10倍の写真を撮影した。神経突起伸長を、AcuityExpressソフトウェア(Molecular Devices,Inc.)を用いて測定した。
【0190】
結果は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン(「HTS」)、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート(「555」)、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「5470」)、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「585」)、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル(「535」)、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン(「536」)、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン(「5472」)、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル(「794」)およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン(「BTB11222」)が、DMSO対照と比較して神経突起伸長を促進したことを示していた。結果はまた、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル(「S」)、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(「5475」)、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(「592」)、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(「664」)、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル(「KMO2502」)が、DMSO対照と比較して神経突起伸長を阻害したことも示していた。(図13、15、17A、18A〜C、19A〜B、および20)。
【0191】
化合物が神経突起伸長を促進する機構をさらに確認するために、競合アッセイを行った。最初に、7.5μMの可溶性Nogo受容体−Fc融合タンパク質(FcNgR)の投与により、FcNgRが神経突起伸長を促進することを示した。(図12B)。次いで、化合物KM、HTS、または555を、7.5μMのFcNgRと一緒に同時投与した。これらの結果は、化合物KM、HTS、および555が、外因性のFcNgRの非存在下で神経突起伸長を促進すること、そして、これらの化合物とFcNgRが同じ溶液中で一緒に投与されると、両方の成長促進作用が阻害されることを示していた。これらの結果は、これらの化合物と外因性のFcNgRが互いに結合して、結果としてそれらの成長促進作用を相互に阻害することを示唆している。(図14A〜Bおよび17B)。したがって、これらの結果はさらに、これらの化合物が、NgRに結合し、そしてNgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害することによって働くことを示唆している。
【0192】
作用機構を確認するための別の実験では、神経突起伸長アッセイを、後根神経節(DRG)を13日目ではなく胚性期8日目のニワトリの胚から取り出したことを除いて、上記に記載したように行った。8日目では、Nogo受容体はDRG中ではまだ発現されていない。化合物KM、HTS、555、5470、585を上記に記載したように投与し、神経突起伸長を測定した。結果は、これらの化合物が8日目のDRGの神経突起伸長には影響を及ぼしていないことを示しており、このことは、これらの化合物が、NgRに結合し、NgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害することによって作用することを示唆している。(図21)。
【0193】
しかし、化合物Sによる神経突起伸長の阻害は、Nogo受容体−Nogoリガンド複合体とのその相互作用とは無関係と考えられる。後根神経節(DRG)を、生後15日目の野生型マウスの子供またはNgR1ノックアウトマウスの子供から切り取り、0.5%のコラゲナーゼ中での30分間のインキュベーション後に粉砕によって分離させ、10%のウシ胎児血清とB27を含むDMEM中のラミニンをコーティングした96ウェル組織培養プレート上にプレートした。24時間後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の4%のホルムアルデヒド中に固定し、PBS中で洗浄し、そして0.1%のtriton X−100と10%のヤギ血清を含むPBS中で1時間ブロックした。その後、細胞を、PBS中のウサギ抗β−3−チューブリン(1:500)中で一晩インキュベートした。3回の洗浄後、細胞を、Alexa−fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(1:500)中で6時間インキュベートし、PBSで洗浄し、そしてImagExpress自動顕微鏡(Molecular Devices,Inc.)で10倍の写真を撮影した。神経突起伸長を、AcuityExpressソフトウェア(Molecular Devices,Inc.)を用いて測定した。これらの結果は、化合物Sが、野生型マウスおよびNgR1ノックアウトマウスの両方において神経突起伸長を阻害したことを示しており、したがって、これらの化合物の神経突起伸長に対する作用がNogo受容体−Nogoリガンド複合体とのその相互作用とは無関係であることを示唆している。
【0194】
当業者は、多数の変更および改良を、本発明の精神から逸脱することなく本発明の好ましい実施形態に対して行うことができることを理解するであろう。全てのそのようなバリエーションが本発明の範囲に入るように意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明はNogo受容体アンタゴニストおよびアゴニストに関する。さらに具体的には、本発明は、ニューロンの軸索成長を調節する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロンの軸索および樹状突起はニューロンから伸びる長い細胞の伸張である。伸張途中の軸索または神経突起の遠位先端部には、成長円錐として知られている特殊な領域が含まれている。成長円錐は局所環境を感知し、ニューロンの標的細胞へと向かう軸索の成長を導く。成長円錐はいくつかの環境信号(例えば、表面接着、成長因子、神経伝達物質および電場)に反応する。この円錐での成長の誘導には、様々なクラスの接着分子、細胞内シグナル、さらには成長円錐を刺激し、阻害する因子が関係している。伸張途中にある神経突起の成長円錐は様々な速度で前進するが、通常は、1日あたり1ミリから2ミリメートルの速度で前進する。
【0003】
成長円錐は、手の形状であり、広がった扁平な伸張(微小突起または糸状仮足)を有しており、これは胚の中の表面に対して別々に接着する。糸状仮足は絶えず活動しており、一部の糸状仮足は成長円錐の内部へと引っ込み、一方で、他の糸状仮足は基体を通り抜けて伸張し続ける。異なる糸状仮足間での伸張により、葉状仮足が形成される。
【0004】
成長円錐は、その葉状仮足と糸状仮足を用いて、その前方と両側の領域を探索する。伸張によって成長に好ましくない表面と接触すると、これは引っ込む。伸張によって好ましい成長表面に接触すると、これは伸び続け、その方向に成長円錐を導く。成長円錐は基体の表面特性における小さなバリエーションによって導かれ得る。成長円錐が適切な標的細胞に到達すると、シナプス結合が作られる。
【0005】
神経細胞の機能は、その当面の環境におけるニューロンと他の細胞との間での接触によって大きく影響される(非特許文献1)。これらの細胞としては、特定の神経膠細胞、中枢神経系(CNS)の乏突起膠細胞、および末梢神経系(PNS)のシュワン細胞(これは、神経軸索をミエリン鞘で覆う(多層膜の絶縁構造))(非特許文献2)が挙げられる。
【0006】
CNSニューロンは損傷後に再生する能力を有しているが、この能力はミエリンの中に存在する阻害タンパク質の存在が原因であり、そしてそれらの局所環境に通常見られる他のタイプの分子もおそらく原因で、再生が阻害される(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0007】
乏突起膠細胞上に見られるいくつかのミエリン阻害タンパク質、例えば、NogoA(非特許文献6;非特許文献7)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG,非特許文献8;非特許文献9)、および乏突起膠細胞糖タンパク質(OM−gp、非特許文献10)が特性決定されている。これらのタンパク質はそれぞれ、ニューロンのNogo受容体−1のリガンドであることが別々に示されている(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献7;非特許文献6;非特許文献13)。
【0008】
Nogo受容体−1は8個のロイシンを多く含む繰り返しを含む、GPI結合膜タンパク質である(非特許文献14)。阻害タンパク質(例えば、NogoA、MAG、およびOM−gp)と相互作用すると、Nogo受容体−1複合体は、成長円錐の崩壊と神経突起伸長の阻害を導くシグナルを変換する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】U.Rutishauser,T.M.Jessell,Physiol.Rev.68,p.819(1988)
【非特許文献2】G.Lemke,An Introduction to Molecular Neurobiology,Z.Hall編[Sinauer,Sunderland,Mass.],p.281(1992)
【非特許文献3】BrittisおよびFlanagan,Neuron 30:11−14(2001)
【非特許文献4】Jonesら、J.Neurosc.22:2792−2803(2002)
【非特許文献5】Grimpeら、J.Neurosci.22:3144−3160(2002)
【非特許文献6】Chenら、Nature 403:434−439(2000)
【非特許文献7】Grandpreら、Nature 403:439−444(2000)
【非特許文献8】McKerracherら、Neuron 13:805−811(1994)
【非特許文献9】Mukhopadhyayら、Neuron 13:757−767(1994)
【非特許文献10】MikolおよびStefansson,J.Cell.Biol.106:1273−1279(1988)
【非特許文献11】Wangら、Nature 417:941−944(2002)
【非特許文献12】Liuら、Science 297:1190−93(2002)
【非特許文献13】Domeniconiら、Neuron 35:283−90(2002)
【非特許文献14】Fournierら、Nature 409:341−346(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのリガンドに対するNogo受容体−1の結合を阻害し、神経突起伸長を刺激し、そしてミエリンによって媒介される成長円錐の崩壊と、神経突起伸長の阻害を弱める分子が、緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明には、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物を同定するための方法が含まれる。この方法には:(a)Nogoポリペプチド、NgRポリペプチド、および試験化合物を混合する工程;(b)上記化合物の非存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合と比較して、上記化合物の存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合の妨害を測定する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、NogoポリペプチドはNogo−66ポリペプチドであり、そしてNgRポリペプチドはFc−NgRポリペプチドである。
【0012】
いくつかの実施形態では、妨害は、ドナービーズとレセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって測定される。NgRポリペプチドは、ドナービーズと共役した生体分子に結合する。Nogoポリペプチドは、レセプタービーズと共役した生体分子に結合する。ドナービーズには光増感剤が含まれ、レセプタービーズには化学発光物質が含まれる。
【0013】
妨害が検出されるいくつかの実施形態では、妨害は、用量応答アッセイによって化合物についての固有の妨害を検出することによってさらに確認される。アッセイには:(a)ドナービーズ、レセプタービーズ、および様々な濃度の化合物をインキュベートする工程;ならびに(b)ドナービーズとレセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって、様々な濃度でその化合物の固有の妨害を測定する工程が含まれる。ドナービーズは生体分子と共役し、ドナービーズには光増感剤が含まれる。レセプタービーズは生体分子と共役し、レセプタービーズには化学発光物質が含まれる。1つの実施形態では、アッセイは、AlphaScreen TruHits(商標)Kit(PerkinElmer)を使用して行うことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法は、複数の種類の試験化合物を含むマルチウェルプレートの中で行われる。いくつかの実施形態では、試験化合物は、様々な低分子ライブラリーの1つのメンバーである。いくつかの実施形態では、そのような低分子ライブラリーには20000種類の化合物が含まれる。この方法には、ライブラリー全体またはその任意のサブセットをスクリーニングする工程が含まれる。
【0015】
いくつかの実施形態では、試験化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を持つ、薬物様の有機化合物からなる低分子ライブラリーの1つのメンバーである。この方法には、ライブラリー全体またはその任意のサブセットをスクリーニングする工程が含まれる。
【0016】
いくつかの実施形態では、試験化合物は、NogoとNogo受容体との相互作用を調節することがこれまでに同定された化合物と構造的に類似するかまたは関係がある化合物からなる、重点的低分子ライブラリーの1つのメンバーである。
【0017】
本発明には、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を阻害する化合物(すなわち、Nogo受容体−1アンタゴニスト)を同定するための方法が含まれる。
【0018】
本発明にはまた、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を促進する化合物(すなわち、Nogo受容体−1アゴニスト)を同定するための方法も含まれる。
【0019】
本発明には、神経突起伸長を促進する化合物を同定する方法が含まれる。この方法には:(a)上記に記載されたようなNogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程、および(b)候補化合物を単離する工程が含まれる。
【0020】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物について第2の用量応答アッセイを実施する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、第2の用量応答アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(Dissociation−Enhanced Lanthanide Fluorescent Immunoassay)(DELFIA)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物の神経突起伸長活性を測定することにより機能的アッセイを実施する工程が含まれる。ここでは、候補化合物は神経突起伸長を促進する。
【0022】
本発明にはまた、神経突起伸長を阻害する化合物を同定する方法も含まれる。この方法には:(a)上記に記載されたようなNogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程、および(b)候補化合物を単離する工程が含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物についての第2の用量応答アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA))を実施する工程が含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、候補化合物の神経突起伸長活性を測定することにより機能的アッセイを実施する工程が含まれる。ここでは、候補化合物は神経突起伸長を阻害する。
【0025】
本発明により、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物が提供される。そのような化合物には、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を含む、場合によって置換された、場合によって部分的に飽和したベンゾフラン、インドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、クロメンまたはキノリンが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を含む、場合によって置換された5−ヒドロキシ−ベンゾフランまたは場合によって置換された5−ヒドロキシ−3−アロイルアルキルベンゾフランであり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を含む、場合によって置換された3−アシル−インドール、または、場合によって置換された3−ヒドロキシ−3−アロイルアルキル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンであり得る。
【0028】
本発明によってはさらに、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物が提供される。化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、N1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0029】
本発明には、神経突起伸長、ニューロンの生存、およびニューロンの中での軸索の再生を促進するためのNogo受容体−1アンタゴニストの使用が含まれる。本発明は、神経突起伸長の阻害を阻害するため、ニューロンの生存を促進するため、および/またはニューロンの中での軸索の再生を促進するために有用な化合物と方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0030】
本発明にはまた、神経突起伸長を阻害するためのNogo受容体−1アゴニストの使用も含まれる。本発明は、神経突起伸長を阻害するため、ニューロンの生存を阻害するため、および/またはニューロンの中での軸索の再生を阻害するために有用な化合物と方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、化合物は、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0031】
本発明には、ニューロンの中での神経突起伸長を促進する方法が含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長を促進する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0032】
本発明にはまた、NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法も含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長を促進する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0033】
本発明には、中枢神経系(CNS)の疾患または疾病を処置する方法が含まれる。この方法には、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、例えば、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を促進する有効量の化合物を投与する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0034】
いくつかの実施形態では、中枢神経系(CNS)の疾患および疾病は、頭蓋または脳の外傷、脊髄損傷、脳卒中または脱髄疾患の結果である。CNS疾患または疾病は、多発性硬化症、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、緑内障、聴力低下、副腎白質萎縮症、単相性脱髄(monophasic demyelination)、脳脊髄炎、多巣性白質脳症、汎脳炎、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、橋中心髄鞘崩壊(pontine myelinolysis)、副腎白質ジストロフィー、ペリツェウス・メルツバッハー病、海綿状変性、アレキサンダー病、カナバン病、異染性白質ジストロフィー、癲癇、およびクラッベ病である。
【0035】
いくつかの実施形態では、化合物は、経口投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮投与、頭蓋内投与、または口腔投与によって投与される。
【0036】
本発明にはさらに、神経突起伸長またはニューロンの中での軸索の再生を促進する方法が含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を促進する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0037】
本発明にはまた、神経突起伸長またはニューロンの中での軸索の再生を阻害する方法も含まれる。この方法には、ニューロンを、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を阻害する有効量の化合物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0038】
本発明にはさらに、統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法が含まれる。この方法には、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、上記に記載されたような神経突起伸長または軸索の再生を阻害する有効量の化合物を投与する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物は、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0039】
本発明にはまた、上記に記載されたような神経突起伸長を促進する化合物、または上記に記載されたような神経突起伸長を阻害する化合物と、薬学的に許容される担体を含む組成物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、AlphaScreenアッセイの略図である。溶液中のストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズは、それら自体はシグナルを生じない。
【図2】図2は、AlphaScreenアッセイの略図である。ストレプトアビジン−アクセプタービーズはビオチニル化Ng66に結合し、プロテインA−ドナービーズはFc−NgR融合タンパク質に結合して、ストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズが1つとなる。
【図3】図3は、AlphaScreenアッセイの略図である。ストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズはNg66とFc−NgRとの間での相互作用によって接近して複合体を形成し、この複合体はプロテインA−ドナービーズに680nmのレーザーを照射すると、520nmから620nmの間の光を放射する。
【図4】図4は、AlphaScreenアッセイの略図である。Ng66とFc−NgRとの間での相互作用はNogoペプチド断片NEP33によってブロックされ、レーザーを照射すると光を放射する複合体を形成するようにストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズが接近することを妨げる。
【図5】図5は、AlphaScreenシグナルを示しているグラフである。このグラフは、AlphaScreenシグナルの強度に対するNg66とFc−NgRの濃度の影響を示している。ストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズを、Ng66およびFc−NgRとともに6時間インキュベートした。ビーズ濃度は6μg/mlである。
【図6】図6は、Nogoペプチド断片NEP1−33の存在下でのAlphaScreenシグナルを示しているグラフである。グラフは、AlphaScreenシグナルの強度に対するインキュベーション時間の影響を示している。ビーズ濃度は5μg/mlである。20時間のインキュベーション後に、Ng66とFc−NgRとの相互作用は、1.25μMから20μMの間の濃度のNEP33によって阻害された。
【図7】図7は、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する低分子化合物を同定するための工程を示しているフローチャートである。AlphaScreenを使用することにより、低分子化合物(10μM)を384ウェルのマイクロプレートのウェルに添加した。このマイクロプレートには、ドナービーズ、アクセプタービーズ、Fc−NgR、およびビオチニル化Ng66の混合物が含まれている。AlphaScreenシグナルを阻害する化合物はヒットと見なされ、その後、「真のヒット(true hits)」アッセイを行って、それらの固有のシグナル消光活性を検出した。「真のヒット」アッセイにおいて固有のシグナル消光活性を有していることが検出された化合物は擬陽性である。「真のヒット」アッセイを通過した化合物について、その後、用量応答アッセイと機能的アッセイを行って、それらの効力と活性を特性決定した。
【図8】図8は、Fc−NgR:Ng66相互作用のAlphaScreenの結果を示す。グラフは、Fc−NgR:Ng66相互作用のAlphaScreenにおいてシグナル阻害を示した5種類の化合物(ヒット)を示す。
【図9】図9は、化合物10および12のAlphaScreen TruHitsアッセイの結果を示す。化合物10および12は、Maybridge Ltd.から入手した20000種の低分子ライブラリーのメンバーである。いずれの化合物も、Fc−NgR:Ng66相互作用のAlphaScreenにおいてヒットを示した。観察できたヒットを確認するために、それぞれの化合物についての10uMから0.000508μMまでの範囲(最終濃度)の希釈系列をAlphaScreen TruHitsキットの成分を含む水を含むウェル(aqueous well)に添加した。用量依存性のシグナルの阻害をAlphaScreen TruHitsアッセイにおいて観察した。これは、化合物10および12がおそらく擬陽性であることを示している。
【図10−1】図10は、第2のアッセイの方法と結果を示す。図10Aは、ELISAアッセイを示す;図10Bは、DELFIAアッセイを示す;図10Cは、NEP33およびシスプラチンについてのELISAアッセイの結果を示す;そして、図10Dは、NEP33についてのDELFIAアッセイの結果を示す。特定の濃度のNEP33およびシスプラチンの存在下でのNgR:Nogoリガンド(Ng66)相互作用−依存性シグナルの用量依存性の阻害を決定した。
【図10−2】図10は、第2のアッセイの方法と結果を示す。図10Aは、ELISAアッセイを示す;図10Bは、DELFIAアッセイを示す;図10Cは、NEP33およびシスプラチンについてのELISAアッセイの結果を示す;そして、図10Dは、NEP33についてのDELFIAアッセイの結果を示す。特定の濃度のNEP33およびシスプラチンの存在下でのNgR:Nogoリガンド(Ng66)相互作用−依存性シグナルの用量依存性の阻害を決定した。
【図10−3】図10は、第2のアッセイの方法と結果を示す。図10Aは、ELISAアッセイを示す;図10Bは、DELFIAアッセイを示す;図10Cは、NEP33およびシスプラチンについてのELISAアッセイの結果を示す;そして、図10Dは、NEP33についてのDELFIAアッセイの結果を示す。特定の濃度のNEP33およびシスプラチンの存在下でのNgR:Nogoリガンド(Ng66)相互作用−依存性シグナルの用量依存性の阻害を決定した。
【図11A】図11Aは、化合物4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン(「HTS」)と、Fc−NgR:Ng66相互作用のDELFIAアッセイにおけるその用量依存性のシグナル阻害を示す。
【図11B】図11Bは、化合物2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)と、Fc−NgR:Ng66相互作用のDELFIAにおけるその用量依存性のシグナル阻害を示す。
【図11C】図11Cは、化合物4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル(「S」)と、Fc−NgR:Ng66相互作用のDELFIAにおけるその用量依存性のシグナル阻害を示す。
【図12】図12Aは、野生型マウスおよびNogo受容体ノックアウトマウスにおける生後10日目(P10)のマウスの後根神経節(DRG)ニューロン上での神経突起伸長に対するNogo受容体の影響を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【0041】
図12Bは、ヒヨコの後根神経節(DRG)ニューロン上での神経突起伸長に対するFc−NgR(7.5μM)の影響を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図13】図13は、化合物2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)の神経突起伸長促進作用を示す。上の写真は、20μMの濃度のKMの存在下での胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン上での基本的な神経突起伸長を示し、下の写真は、KMの非存在下での基本的な神経突起伸長を示す。
【図14】図14Aは、化合物2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)の神経突起伸長促進作用のブロックに対するFc−NgR(7.5μM)の作用を示す。特定の濃度のKMを胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン培養物中でFc−NgRとともに3.5時間、同時インキュベートした。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)としてY軸上に表す。
【0042】
図14Bは、化合物4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン(「HTS」)の神経突起伸長促進作用をブロックすることに対するFc−NgR(7.5μM)の作用を示す。HTSを、胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン培養物中でFc−NgRとともに3.5時間、同時インキュベートした。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図15】図15は、化合物4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル(「S」)の神経突起伸長阻害作用を示す。上の写真は、20μMの濃度の化合物Sの存在下では、E14ヒヨコのDRGニューロン上で基本的な神経突起伸長がないことを示している;そして下の写真は、化合物Sの非存在下での基本的な神経突起伸長を示している。
【図16】図16は、野生型マウスおよびNogo受容体ノックアウトマウスの中での生後15日目(P15)のマウスのDRG神経突起伸長に対する化合物Sの阻害作用を示しているグラフである。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図17A】図17Aは、化合物エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート(「555」)と、20μMの濃度での、E13ヒヨコのDRGニューロンに対するその神経突起伸長促進作用を示す。
【図17B】図17Bは、化合物555の神経突起伸長促進作用をブロックすることに対するFc−NgR(7.5μM)の作用を示す。化合物555を、胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン培養物中でFc−NgRとともに3.5時間、同時インキュベートした。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図18】図18Aは、化合物(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「5470」)と、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロンに対するその神経突起伸長促進作用を示す。
【0043】
図18Bは、化合物(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「585」)と、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロンに対するその神経突起伸長促進作用を示す。
【0044】
図18Cは、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対するジメチルスルホキシド(対照)の作用を示す。
【図19】図19Aは、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対する化合物5470の作用を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【0045】
図19Bは、20μMの濃度での、胚性期14日目(E14)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対する化合物585の作用を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。
【図20】図20は、20μMの濃度での、胚性期13日目(E13)のヒヨコのDRGニューロン上での神経突起伸長に対する29種類の化合物とジメチルスルホキシド(対照)の促進作用あるいは阻害作用を示す。神経突起伸長の量は、1つのニューロンあたりの平均の神経突起の長さ(ミクロン)として表す。化合物は、化合物S、KM、HTS、555、510(Chembridge Inc.カタログ番号5106731)、516(Chembridge Inc.カタログ番号5162090)、524(Chembridge Inc.カタログ番号5249032)、535(Chembridge Inc.カタログ番号5352829)、536(Chembridge Inc.カタログ番号5363829)、5470(Chembridge Inc.カタログ番号5470065)、5472(Chembridge Inc.カタログ番号5472739)、5475(Chembridge Inc.カタログ番号5475092)、5476(Chembridge Inc.カタログ番号5476362)、560(Chembridge Inc.カタログ番号5607016)、561(Chembridge Inc.カタログ番号5611936)、585(Chembridge Inc.カタログ番号5851694)、592(Chembridge Inc.カタログ番号7110)、594(Chembridge Inc.カタログ番号5948019)、597(Chembridge Inc.カタログ番号5976525)、605(Chembridge Inc.カタログ番号6054710)、636(Chembridge Inc.カタログ番号6367674)、664(Chembridge Inc.カタログ番号6641843)、678(Chembridge Inc.カタログ番号6789717)、687(Chembridge Inc.カタログ番号6874781)、794(Chembridge Inc.カタログ番号7949736)、798(Chembridge Inc.カタログ番号7986605)、KMO1804、BTB11222、およびKMO2502である。
【図21】図21は、神経突起伸長を促進する5種類の化合物が、Nogo受容体を発現しない胚性期8日目(E8)のヒヨコのDRGニューロンに対しては影響を及ぼさないことを示す。5種類の化合物は、KM、HTS、555、585、および5470である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義および一般的技術
他の場所で定義されない限りは、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同じ意味を有する。矛盾する場合は、本出願が含む定義が支配する。また、他の方法で状況によって必要とされない限りは、単数形の用語に複数形が含まれるはずであり、複数形の用語に単数形が含まれるはずである。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許、および他の参考文献は、全ての目的についてそれらの全体が引用によって本明細書中に組み入れられる。
【0047】
本明細書中に記載されるものと同様であるかまたはそれらと同等である方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載される。材料、方法、および実施例は、例示的なものにすぎず、限定を意図するものではない。本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明から、そして特許請求の範囲から明らかであろう。
【0048】
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、用語「含まれる(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」のようなバリエーションは、記載される整数、または整数のグループの包含を暗に意味するように理解され、任意の他の整数または整数のグループを排除するようには理解されない。
【0049】
本発明をさらに定義するために、以下の用語と定義が本明細書中で提供される。
【0050】
用語「a」または「an」の存在はその存在の1つ以上をいうことに留意されたい;例えば、「低分子」は、1つ以上の低分子を表すと理解される。このように、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は本明細書中では互換的に使用することができる。
【0051】
本明細書中で使用される場合は、用語「からなる(consists of)」、または「からなる(consist of)」もしくは「からなっている(consisting of)」のようなバリエーションは、本明細書と特許請求の範囲を通じて使用されるように、任意の記載される整数または整数のグループの包含を示すが、さらなる整数または整数のグループは、特定の方法、構造、もしくは組成に対しては加えることができないことを示す。
【0052】
本明細書中で使用される場合は、用語「原則として〜からなる(consists essentially of)」、または「原則として〜からなる(consist essentially of)」もしくは「原則として〜からなっている(consinsing essentially of)」のようなバリエーションは、本明細書と特許請求の範囲を通じて使用されるように、任意の記載される整数または整数のグループの包含を示し、そして特定の方法、構造、もしくは組成について基本的または新規の特性を実質的に変化させることのない、任意の記載される整数または整数のグループの任意の包含を示す。
【0053】
本明細書中で使用される場合は、「NogoR融合タンパク質」は、異種ポリペプチドに融合させられた可溶性Nogo受容体−1部分を含むタンパク質を意味する。
【0054】
本明細書中で使用される場合は、「Nogo受容体」、「NogoR」、「NogoR−1」、「NgR」、「NgR−1」、「NgR1」、および「NGR1」はそれぞれ、Nogo受容体−1を意味する。
【0055】
「低分子ライブラリー」または「ライブラリー」は、様々な化学構造を持つ様々な化合物の集合である。低分子ライブラリーはスクリーニングすることができる、すなわち、その中の化合物のライブラリーのメンバーについてスクリーニングアッセイを行うことができる。好ましい実施形態では、ライブラリーのメンバーは、500ダルトン以下、好ましくは、約100ダルトンから約350ダルトン、または約150から約350ダルトンの分子量を有し得る。
【0056】
候補化合物のライブラリーは、AlphaScreenアッセイ(図1〜9)のような多くの様々なアッセイによってアッセイすることができる。ライブラリーには、自然の供給源から単離された分子、人工的に合成された分子、あるいは1つ以上の可変部分(例えば、別々に単離されたかもしくは無作為に合成された部分)を持たせるような方法で合成されたか、単離されたか、または別の方法によって調製された分子が含まれ得る。
【0057】
「重点的ライブラリー(focused library)」は、化合物のコレクションが、以前に特性決定された化合物の構造を使用して調製されたことを意味する。「重点的ライブラリー」の化合物は、以前に特性決定された化合物と構造的に類似し得るかまたは関係し得る。「構造的に類似するかまたは関係する」によっては、それらの化合物が共通した特性またはコア構造を持つことを意味する。
【0058】
本発明に有用な「低分子ライブラリー」は商業的に購入することができる。商業的な供給業者としては、Chembridge Inc.またはMaybridge Ltd.(Maybridge Chemical Holdings Ltd.の子会社)が挙げられる。本発明で使用した「低分子ライブラリー」は、Maybridge Ltd.から入手した。このライブラリーには、様々な構造を持つ20000種の化合物が含まれている。
【0059】
本発明に有用な「低分子ライブラリー」は、組み合わせ化学技術、発酵法、植物および細胞の抽出手法などを含むがこれらに限定されない任意の手段によって調製するか、または得ることができる(例えば、Cwirlaら、Biochemistry 87:6378−6382(1990);Houghtenら、Nature 354:84−86(1991);Lamら、Nature 354:82−84(1991);Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5381−5383(1992);Houghten R.A.,Trends Genet.9:235−239(1993);Gallopら、J.Med.Chem.1994,37:1233−1251(1994);Gordonら、J.Med.Chem.1994,37:1385−1401(1994);Carellら、Chem.Biol.3:171−183(1995);Leblら、Biopolymers 37:177−198(1995))。
【0060】
多様な分子のライブラリーは、以下を含むがこれらに限定されない様々な技術によって調製することができる1つ以上の予め選択された特性を持つメンバーが得られるように調製される:平行アレイ合成(parallel array synthesis)(Houghtor R.A.,「Parallel array and mixture−based synthetic combinatorial chemistry:tools for the next millennium」,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.40:273−82(2000));液相組み合わせ化学(Merritt,「Solution phase combinatorial chemistry」,Comb.Chem.High Throughput Screen 1998 1(2):57−72(1998)、およびSun,「Recent advances in liquid−phase combinatorial chemistry」,Comb.Chem.High Throughput Screen 1999 2(6):299−318(1999));可溶性ポリマー上での合成(Gravertら、「Synthesis on soluble polymers:new reactions and the construction of small molecules」,Curr.Opin.Chem.Biol.1997 1(1):107−13(1997))。
【0061】
重点的ライブラリーは、計算機化学(例えば、Kunduら、「Combinatorial chemistry:polymer supported synthesis of peptide and non−peptide libraries」,Prog.Drug Res.53:89−156(1999))およびデータベース検索とドッキング(docking)を使用する構造に基づくリガンドの使用、新規の薬物の設計とリガンド結合親和性の推定(Joseph−McCarthy D.,「Computational approaches to structure−based ligand design」,Pharmacol.& Ther.84(2):179−91(1999);Kirkpatrickら、「Structure−based drug design:combinatorial chemistry and molecular modeling」,Comb.Chem.High Throughput Screen.2:211−21(1999);Eliseev A.V.& Lehn J.M.,「Dynamic combinatorial chemistry:evolutionary formation and screening of molecular libraries」,Curr.Top.Microbiol.& Immunol.243:159−72(1999))を含む最新の方法を活用して設計することができる。
【0062】
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書中で使用される場合は、標的動物(例えば、ヒトのような哺乳動物)の中で生理学的に寛容化される本発明の化合物の任意の塩(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)をいう。本発明の化合物の塩は、無機酸または有機酸、あるいは有機塩基または無機塩基に由来し得る。適切な酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、ボロン酸、マロン酸、スルホン酸、ピコリン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。他の酸(例えば、シュウ酸)は、それら自体は薬学的に許容されなくても、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として、有用な塩の調製に使用される場合がある。
【0063】
適切な塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW4+の化合物(式中、WはC1−4アルキルである)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
適しているそのような塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、亜硫酸塩、ホウ酸塩、ボロン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ピコリン酸塩、ベシル酸塩、過塩素酸塩、サリチル酸塩、リン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に適している塩の他の例としては、当該分野で周知であるさらなる薬学的に許容される塩(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第19版、1995を参照のこと)と関連分野の当業者に公知の他の塩を含む、適切な陽イオン(例えば、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Mn2+、NH4+、およびNW4+(式中、WはC1−4アルキル基である)などと混合された本発明の化合物の陰イオンが挙げられる。治療に使用するためには、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものである。しかし、薬学的に許容されない酸と塩基からなる塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製や精製における用途が見出される可能性がある。
【0065】
用語「薬学的組成物」は、本明細書中で使用される場合は、疾患、疾病、もしくは症状に罹患しているか、それらについての素因があるか、またはそれらが明らかにされている被験体(例えば、ヒトのような哺乳動物)において、疾患、疾病、または症状を処置する、予防する、あるいは重篤度を軽減するために使用することができる1種類以上の本発明の化合物を含む(これらに限定されない)1種類以上の有効な薬学的成分を含む組成物をいう。薬学的組成物には、一般的には、有効量の1種類以上の有効成分(例えば、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは立体異性体混合物)と薬学的に許容される担体が含まれる。薬学的組成物にはまた、本発明の化合物と1種類以上のさらなる成分(1種類以上の治療薬(例えば、他のNogo受容体アンタゴニスト、例えば、他のNogo受容体アゴニスト、例えば、可溶性Nogo受容体ポリペプチド)を含むがこれらに限定されない)も含まれ得る。
【0066】
用語「薬学的に許容される担体」には、標準的な薬学的担体、緩衝液、および賦形剤(リン酸緩衝化生理食塩溶液、水、およびエマルジョン(例えば、油/水エマルジョンまたは水/油エマルジョン)を含む)、ならびに様々なタイプの湿潤剤および/またはアジュバントのうちの任意のものが含まれる。適切な薬学的担体とそれらの処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第19版,1995に記載されている。好ましい薬学的担体は、有効成分の意図される投与様式に依存する。典型的な投与様式は以下に記載される。
【0067】
本明細書中で使用される場合は、用語「処置する」または「処置」は、治療的処置と、予防的または防止的手段の両方をいう。ここでは、目的は、望ましくない生理学的変化または疾病(例えば、多発性硬化症の進行)を防ぐまたは速度を遅くする(弱める)ことである。有益であるか、または所望される臨床結果としては、症状の緩和、疾患の程度の縮小、安定した(悪化することのない)疾患状態、疾患の進行を遅らせるかまたは遅くすること、疾患状態の改善または緩和、ならびに寛解(部分的であるか、全体であるかは問わない)が、検出可能であるかまたは検出不可能であるかにはかかわらず、挙げられるがこれらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予想される生存と比較した、より長期間の生存も意味し得る。処置が必要なものとしては、すでに症状または疾病があるもの、ならびに、症状または疾病になりやすいもの、あるいは症状または疾病を予防しようとするものが挙げられる。
【0068】
用語「治療有効量」は、本明細書中で使用される場合は、疾病または症状の1つ以上の改善を生じるため、あるいは疾病または症状の出現または進行を防ぐため、あるいは疾病または症状の軽減または治癒をもたらすために、必要な投与量と必要な期間で、十分である所定の治療薬の量をいう。
【0069】
用語「治療薬」は、本明細書中で使用される場合は、疾患、症状、もしくは疾病、またはそれらの1つ以上の兆候の処置、管理、予防、あるいは改善に使用することができる任意の化学物質をいう。適切な治療薬としては、低分子、合成の薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、三重ヘリックス、および生物学的に活性なタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されないDNAおよびRNAポリヌクレオチド)、抗体、合成のまたは天然の無機分子、模倣薬(mimetic agent)、および合成のまたは天然の有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療薬は、症状もしくは疾病、またはそれらの1つ以上の兆候の処置、管理、予防、または改善に有用であることが公知であるか、使用されてきたか、あるいは現在使用されているものである。
【0070】
本発明の化合物には、上記のようなその薬学的に許容される塩が含まれる。本発明の化合物は、光学異性体を含む立体異性体として存在する。本発明には、純粋な個々の立体異性体調製物として、およびそれぞれの富化させられた調製物として、およびそのような立体異性体のラセミ混合物として、さらには、当業者に周知の方法にしたがって分離することができる個々の鏡像異性体およびジアステレオマーとしての、あらゆる立体異性体が含まれる。
【0071】
本発明の化合物は、不定形形態または結晶形態として存在し、本発明には、不定形の形態の化合物と、全ての多形体の化合物が含まれる。
【0072】
「被験体」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によっては、診断、予後、または治療が所望される任意の被験体(特に、哺乳動物被験体)が意味される。哺乳動物被験体としては、ヒト、家畜動物(domestic animals)、家畜(farm animals)、動物園の動物、競技用の動物、ペット動物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、ウシ);霊長類(例えば、類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジー);イヌ科(例えば、イヌおよびオオカミ);ネコ科(例えば、ネコ、ライオン、およびトラ);ウマ科(例えば、ウマ、ロバ、およびシマウマ);食用動物(例えば、ウシ、ブタ、およびヒツジ);有蹄動物(例えば、シカおよびキリン);齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、およびモルモット)などが挙げられるが、これらに限定はされない。特定の実施形態においては、哺乳動物はヒト被験体である。
【0073】
本発明は、ニューロンの生存、神経突起伸長、およびニューロン(例えば、CNSニューロン)の軸索の再生を促進する特定のNgR1アンタゴニストに関する。例えば、本発明により、軸索成長が通常阻害される条件下で軸索成長を刺激するNgR1低分子が提供される。したがって、本発明のNgR1アンタゴニストは、ニューロンの生存を促進することによって、または軸索の成長もしくは再生の刺激によって軽減することができる損傷、疾患、または疾病の処置に有用である。
【0074】
例示的なCNS疾患、疾病、または損傷としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:多発性硬化症(MS)、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ペリツェウス・メルツバッハー病(PMZ)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、およびウォーラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、放射線照射後の損傷、化学療法の神経学的合併症、脳卒中、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏症、ビタミンE欠乏性症候群(isolated vitamin E deficiency syndrome)、AR、バッセン・コーンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、異染性白質ジストロフィー、三叉神経痛、癲癇、およびベル麻痺。
【0075】
本発明は、ニューロンの生存、神経突起伸長、およびニューロン(例えば、CNSニューロン)の軸索再生を阻害する特定のNgR1アゴニスト、ならびに、ニューロンの過剰活性もしくは低活性、異常なニューロンの発芽、および/または神経突起伸長と関係がある疾患、疾病、または損傷(例えば、統合失調症)を、そのような疾患に罹患している動物において処置するための方法に関する。例えば、本発明により、軸索成長が通常は観察される条件下で軸索成長を阻害するNgR1低分子が提供される。したがって、本発明のNgR1アゴニストは、統合失調症または統合失調感情障害の処置に有用である。
【0076】
加えて、本発明の方法によって処置または改善される可能性がある疾患または疾病には、ニューロンの過剰活性もしくは低活性、異常なニューロンの発芽、および/または異常な神経突起伸長に関係がある疾患、疾病、または損傷が含まれる。そのような疾患としては、統合失調症、双極性障害、強迫神経症(OCD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、ダウン症、およびアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
Nogo受容体−1
いくつかの実施形態では、本発明は、神経突起伸長を促進するため、ニューロンの生存を促進するため、軸索の生存を促進するため、またはNgR1シグナル伝達複合体によるシグナルの伝達を阻害するための低分子の使用に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、ニューロンの生存、神経突起伸長、およびニューロンの軸索の再生を阻害するための低分子の使用に関する。
【0078】
ヒトNgR1ポリペプチドは、配列番号1として以下に示される。
【0079】
全長のヒトNgR1(配列番号1):
【0080】
【化1】
ラットNgR1ポリペプチドは、配列番号2として以下に示される。
【0081】
全長のラットNgR1(配列番号2):
【0082】
【化2】
マウスNgR1ポリペプチドは、配列番号3として以下に示される。
【0083】
全長のマウスNgR1(配列番号3):
【0084】
【化3】
全長のNogo受容体−1は、シグナル配列、N−末端領域(NT)、8回のロイシンリッチリピート(LRR)、LRRCT領域(8回のロイシンリッチリピートのC末端にある1回のロイシンリッチリピートドメイン)、C末端領域(CT)、およびGPIアンカー(図1を参照のこと)からなる。
【0085】
本明細書中で使用されるNgRドメインの表示は以下のように定義される:
【0086】
【表1】
融合タンパク質および共役ポリペプチド
本発明のいくつかの実施形態には、全長のNgR1タンパク質ではないNgR1ポリペプチド(例えば、融合タンパク質が形成されるように異種ポリペプチドに融合させられたNgR1のポリペプチド断片)の使用が含まれる。このような融合タンパク質は、様々な目的(例えば、血清半減期の延長、生体利用性の改善、特定の臓器もしくは組織のタイプへのインビボでの標的化、組み換え発現効率の改善、宿主細胞からの分泌の改善、精製の簡便性、より高い親和性)を達成するために使用することができる。達成される目的(単数または複数)に応じて、異種部分は不活性である場合も、また生物学的に活性である場合もある。またこれは、本発明のNgR1ポリペプチド部分に安定して融合させられるように、またはインビトロもしくはインビボで切断できるように選択することもできる。これらの他の目的を達成するための異種部分は当該分野で公知である。
【0087】
融合タンパク質の発現の代わりに、選択された異種部分を予め形成させて、本発明のNgRポリペプチド部分に化学的に共役させることができる。ほとんどの場合は、選択された異種部分は、NgRポリペプチド部分に融合させられているか、または共役しているかとは無関係に、同様に機能するであろう。したがって、異種アミノ酸配列についての以下の議論においては、他の場所に明記されない限りは、異種配列は、融合タンパク質の形態で、または化学的共役として、NgRポリペプチド部分に結合させることができると理解される。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態では、ヒンジ領域とFc領域(すなわち、Ig重鎖定常領域のC末端部分)に融合させられたNgRポリペプチド部分が使用される。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域のアミノ酸は異なるアミノ酸で置換され得る。これらの実施形態のヒンジ領域についての例示的なアミノ酸置換には、ヒンジ領域中の個々のシステイン残基の異なるアミノ酸での置換が含まれる。任意の異なるアミノ酸でヒンジ領域の中のシステインを置換することができる。本発明のポリペプチドのアミノ酸と参照アミノ酸配列のアミノ酸についてのアミノ酸置換には、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、電荷を持たない極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分岐側鎖を持つアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれ得る。参照アミノ酸中のシステインを置換するための典型的なアミノ酸としては、アラニン、セリン、スレオニン、特に、セリンおよびアラニンが挙げられる。ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドの操作を通じてそのような置換を作製することは、十分に、当業者が日常的に行っている専門的技術の範囲内である。
【0089】
NgR−ポリペプチド−Fc融合体の潜在的利点には、溶解度、インビボでの安定性、および多重原子価(例えば、二量化)が含まれる。使用されるFc領域は、IgA、IgD、またはIgG Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3)であり得る。あるいは、これは、IgEまたはIgM Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3−CH4)であり得る。一般的には、IgG Fc領域(例えば、IgG1 Fc領域またはIgG4 Fc領域)が使用され得る。Fc融合体をコードするDNAを構築し、発現させるための材料と方法は当該分野で公知であり、そして融合体を得るために適用することができ、これには過度の実験は伴わない。本発明のいくつかの実施形態では、Caponら、米国特許第5,428,130号および同第5,565,335号に記載されているような融合タンパク質が使用される。
【0090】
IgG1 Fc領域が最も頻繁に使用される。あるいは、免疫グロブリンγの他のサブクラス(γ−2、γ−3、およびγ−4)のFc領域を、分泌カセットの中で使用することができる。免疫グロブリンγ−1のIgG1 Fc領域が、一般的に、分泌カセットの中で使用され、これには、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部が含まれる。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンγ−1のFc領域はCH2が欠失しているFc(CH2−deleted−Fc)であり、これにはヒンジ領域の一部とCH3領域が含まれるが、CH2領域は含まれない。CH2が欠失しているFcは、Gilliesら、Hum,Antibod.Hybridomas 1:47(1990)に記載されている。いくつかの実施形態では、IgA、IgD、IgE、またはIgMのうちの1つのFc領域が使用される。
【0091】
NogoとNogo受容体との相互作用を調節する化合物の同定
本発明によってはまた、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物を同定する方法も提供される。この方法には:(a)Nogoポリペプチド、NgRポリペプチド、および試験化合物を混合する工程;(b)上記化合物の非存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合と比較して、上記化合物の存在下での上記NgRポリペプチドに対する上記Nogoポリペプチドの結合の妨害を測定する工程が含まれる。
【0092】
いくつかの実施形態では、そのような方法は、AlphaScreenを使用することによって行われる。AlphaScreenは、Seethala and Prabhavathi,「Homogeneous Assays:AlphaScreen,Handbook of Drug Screening」,Marcel Dekkar Pub.2001,pp.106−110に一般的に記載されている。本発明ではAlphaScreenが使用され、ここでは、低分子化合物(20μM)が384ウェルのマイクロプレートのウェルに添加される。マイクロプレートには、ドナービーズ、アクセプタービーズ、Fc−NgR、およびビオチニル化Ng66の混合物が含まれる。AlphaScreenシグナルを阻害する化合物がヒットと見なされる(図1〜8)。
【0093】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、用量応答アッセイまたは「真のヒット」アッセイにより、AlphaScreenの化合物の固有のシグナル妨害を検出することによって、上記に記載されたヒットを確認する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、用量応答アッセイは、AlphaScreenアッセイの擬陽性を同定するために、AlphaScreen TruHitsキット(PerkinElmer)を使用することによって行われる。AlphaScreen TruHitsキットは、色素消光剤(color quencher)、光散乱物質(不溶性化合物)、一重項酸素消光剤、およびAlphaScreenシグナルを妨害するビオチン模倣剤を含む複数のクラスの化合物の同定を可能にする。AlphaScreenシグナルを妨害する化合物は擬陽性と考えられるが、このシグナルに対して影響を示さない化合物が真のヒットとしての可能性があるものである(図9)。
【0094】
いくつかの実施形態では、この方法にはさらに、「真のヒット」アッセイを通過した化合物の効力と活性を特性決定するために、第2の用量応答アッセイと機能的アッセイを実施する工程が含まれる(図7)。
【0095】
いくつかの実施形態では、第2の用量応答アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)を使用することによって実施されて、NgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害する「ヒット」としてAlphaScreensにおいて「ヒット」として同定された化合物の能力が評価される(図10A〜Dおよび11A〜C)。
【0096】
いくつかの実施形態では、これらの方法にはさらに、神経突起伸長を促進または阻害する能力について「ヒット」化合物を試験する工程が含まれる(図13〜20)。
【0097】
NogoとNogo受容体との相互作用を調節する化合物
本発明は、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物に関する。本発明の化合物には、場合によって置換された、場合によって部分的に飽和した、ベンゾフラン、インドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、クロメンまたはキノリンが含まれる。
【0098】
用語「場合によって置換された」は、本明細書中で使用される場合は、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかを意味する:ヒドロキシ(OH)、ニトロ(NO2)、シアノ(CN)、ハロ(F、Cl、Br、I)、アミノ、アルキル、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたヘテロシクロ、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。
【0099】
用語「アミノ」は、本明細書中で使用される場合は、式−NRaRbのラジカルをいう。ここでは、RaとRbは、別々に、水素、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたヘテロシクロ、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリールまたはアラルキルであるか;あるいは、RaとRbはそれらに結合した窒素原子と一緒に、3員から7員の場合によって置換されたヘテロシクロを形成する。限定ではない例示的なアミノ基としては、−NH2、−N(H)CH3、−N(CH3)2、−N(H)CH2CH3、−N(CH2CH3)2などが挙げられる。
【0100】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独でまたは別の基の一部として、通常は1個から18個の炭素または表示される炭素数を持つ、直鎖または分岐した飽和脂肪族炭化水素をいう。1つのそのような実施形態では、アルキルはC1〜C6アルキルである。限定ではない例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、4,4−ジメチルペンチルなどが挙げられる。
【0101】
用語「場合によって置換されたアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたアルキルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることをいう:ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、アミノ、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ。特定のそのような実施形態では、置換基は、ヒドロキシ(すなわち、ヒドロキシアルキル)、ハロ(すなわち、ハロアルキル)、またはアミノ(すなわち、アミノアルキル)から選択される。例示的な場合によって置換されたアルキル基としては、−CH2OCH3、−CH2CH2CN、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル、4−シアノベンジル、フェニルエチル(すなわち、PhCH2CH−)、(4−シアノフェニル)エチル、ジフェニルメチル(すなわち、Ph2CH−)などが挙げられる。他の適している場合によって置換されたアルキル基は、関連する分野の当業者が良く知っているであろう。
【0102】
用語「シクロアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、3個から12個までの炭素原子(すなわち、C3〜C12シクロアルキル)または表示された炭素数を持つ1個から3個の環を含む、飽和である環状の炭化水素基および部分不飽和(1つまたは2つの二重結合を含む)である環状の炭化水素基をいう。限定ではない例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、デカリン、アダマンチルなどが挙げられる。他の適切なシクロアルキル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0103】
用語「場合によって置換されたシクロアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなシクロアルキルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることをいう:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。用語「場合によって置換されたシクロアルキル」はまた、上記で定義されたようなシクロアルキルが場合によって置換されたアリールに融合させられ得ることも意味する。限定ではない例示的な場合によって置換されたシクロアルキル基としては以下が挙げられる:
【0104】
【化4】
用語「アルケニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む基をいう。限定ではない例示的なアルケニル基としては、−CH=CH−などが挙げられる。他の適切なアルケニル基は関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0105】
用語「場合によって置換されたアルケニル」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなアルケニルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることをいう:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。限定ではない例示的な場合によって置換されたアルケニル基としては、PhCH=CH−などが挙げられる。他の適切な場合によって置換されたアルケニル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0106】
用語「アルキニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、さらに1つの炭素−炭素三重結合を含む基をいう。限定ではない例示的なアルキニル基としては、−C≡C−などが挙げられる。他の適切なアルキニル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0107】
用語「場合によって置換されたアルキニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、上記で定義されたようなアルキニルが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。限定ではない例示的な場合によって置換されたアルケニル基としては、PhC≡C−などが挙げられる。他の適切な場合によって置換されたアルキニル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0108】
用語「アリール」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、6個から14個までの炭素原子を通常有している単環および二環の芳香族環系(すなわち、C6〜C14アリール)(例えば、フェニル(Phと略される)、1−ナフチルなど)をいう。本発明のこの態様での使用に適している他のアリール基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0109】
用語「場合によって置換されたアリール」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなアリールが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたヘテロアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。1つのそのような実施形態では、場合によって置換されたアリールは場合によって置換されたフェニルであり、これは特定の実施形態では、1つ以上の置換基を有する。限定ではない例示的な置換されたアリール基としては、4−ジメチルアミノフェニル、4−ジエチルアミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−シアノフェニル,4−クロロフェニル、4−メトキシフェニルなどが挙げられる。本明細書中で使用される場合は、用語「場合によって置換されたアリール」はまた、融合させられた場合によって置換されたシクロアルキルと、融合させられた場合によって置換されたヘテロシクロ環(heterocyclo ring)を有している基も含むように意味される。限定ではない例示的な例としては以下が挙げられる:
【0110】
【化5】
用語「アラルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、1つ以上の場合によって置換されたアリール置換基を有している、上記で定義されたような場合によって置換されたアルキルをいう。1つのそのような実施形態では、場合によって置換されたアルキルは未置換である。特定のそのような実施形態では、場合によって置換されたアリールはフェニル(「Ph」と略される)である。限定ではない例示的なアラルキル基としては、ベンジル、4−シアノベンジル、フェニルエチル、(4−シアノフェニル)エチル、ジフェニルメチル、(4−フルオロフェニル)エチルなどが挙げられる。他の適切なアラルキル基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0111】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、5個から14個までの炭素原子(すなわち、C5〜C14ヘテロアリール)と、酸素、窒素、および硫黄からなる群より別々に選択される1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を通常有している、単環および二環の芳香族環系をいう。1つのそのような実施形態では、ヘテロアリールは4個のヘテロ原子を有する。別のそのような実施形態では、ヘテロアリールは3個のヘテロ原子を有する。別のそのような実施形態では、ヘテロアリールは2個のヘテロ原子を有する。別のそのような実施形態では、ヘテロアリールは1個のヘテロ原子を有する。限定ではない例示的なヘテロアリール基としては、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、4−ベンズイミダゾリル、5−ベンズイミダゾリル、2−ベンズチアゾリル、4−ベンズチアゾリル、5−ベンズチアゾリル、5−インドリル、3−インダゾリル、4−インダゾリル、5−インダゾリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、2−キノリル、3−キノリル、6−キノリルなどが挙げられる。本明細書中で使用される場合は、用語「ヘテロアリール」はまた、可能なN−オキシドも含むように意味される。限定ではない例示的なN−オキシドとしては、ピリジルN−オキシドなどが挙げられる。本発明のこの態様で使用されるさらなる適切なヘテロアリール基は、関連分野の当業者が良く知っているであろう。
【0112】
用語「場合によって置換されたヘテロアリール」は、本明細書中で使用される場合は、上記で定義されたようなヘテロアリールが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロシクロ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。限定ではない例示的な場合によって置換されたヘテロアリール基としては以下が挙げられる:
【0113】
【化6】
用語「ヘテロシクロ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、2個から12個までの炭素原子(すなわち、C2〜C12ヘテロシクロ)と、1個または2個の酸素、硫黄、もしくは窒素原子を持つ1個から3個の環を含む、飽和環および部分的に不飽和である(1個または2個の二重結合を含む)環基をいう。ヘテロシクロは、状況に応じて、炭素または窒素原子を介して分子の残りの部分に連結させることができる。限定ではない例示的なヘテロシクロ基としては以下が挙げられる:
【0114】
【化7】
用語「場合によって置換されたヘテロシクロ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、上記で定義されたようなヘテロシクロが、未置換であるか、あるいは、以下から別々に選択される1つ以上の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する:ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニル。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。
【0115】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、末端酸素原子に結合させられた、アルキル、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたヘテロシクロ、場合によって置換されたアルケニル、または場合によって置換されたアルキニルをいう。限定ではない例示的なアルコキシ基としては、メトキシなどが挙げられる。
【0116】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、末端酸素原子に結合させられた、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールをいう。限定ではない例示的なアリールオキシ基としては、フェノキシなどが挙げられる。
【0117】
用語「アラルキルオキシ」は、本明細書中で使用される場合は、単独で、または別の基の一部として、末端酸素原子に結合させられたアラルキルをいう。限定ではない例示的なアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシなどが挙げられる。
【0118】
用語「アシル」は、本明細書中で使用される場合は、式RC(=O)−のラジカルをいい、式中、Rは、アルキル、場合によって置換されたアルキル、アラルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、または場合によって置換されたアルキニルである。限定ではない例示的なアシル基としては、アセチルなどが挙げられる。
【0119】
用語「アロイル」は、本明細書中で使用される場合は、式RC(=O)−のラジカルをいい、式中、Rは、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールである。限定ではない例示的なアロイル基としては、ベンゾイル、4−クロロベンゾイルなどが挙げられる。
【0120】
用語「アロイルアルキル」は、本明細書中で使用される場合は、式RaC(=O)Rb−のラジカルをいい、式中、Raは、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールであり、Rbは、アルキルまたは場合によって置換されたアルキルである。限定ではない例示的な置換されたアロイルアルキル基としては以下が挙げられる:
【0121】
【化8】
用語「アルコキシカルボニル」は、本明細書中で使用される場合は、式ROC(=O)−のラジカルをいい、式中、Rは、アルキル、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたヘテロシクロ、アリール、場合によって置換されたアリール、または場合によって置換されたヘテロアリールである。限定ではない例示的なアルコキシカルボニル基としては、CH3OC(=O)−、CH3CH2OC(=O)−などが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、部分的に飽和しているインドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、またはクロメンとしては以下が挙げられる:
【0123】
【化9】
いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物には、置換されたベンゾフランおよびキノリンが含まれる。いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物には、上記に記載されたような、置換された部分的に不飽和であるインドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、またはクロメンが含まれる。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。例示的な置換基としては、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、(4−クロロベンゾイル)エチル、(4−シアノフェニル)エチル、または4−ジメチルアミノフェニルが挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物としては、場合によって置換された5−ヒドロキシ−ベンゾフラン、または場合によって置換された5−ヒドロキシ−3−アロイルアルキルベンゾフランが挙げられる。置換基としては、上記に記載されたような、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニルが挙げられる。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。そのような化合物の限定ではない例として、いくつかの実施形態では、以下が挙げられる:
【0125】
【化10】
式中、R1は、上記で定義されたような場合によって置換されたアリールであり、R2は、水素であるか、または上記で定義されたように場合によって置換される。いくつかの実施形態では、R1は4−クロロフェニルである。いくつかの実施形態では、R2は、水素またはメチルである。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物として、場合によって置換された3−アシル−インドール、または場合によって置換された3−ヒドロキシ−3−アロイルアルキル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンが挙げられる。置換基としては、上記で定義されたような、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたシクロアルキル、場合によって置換されたアルケニル、場合によって置換されたアルキニル、場合によって置換されたアリール、場合によって置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アロイル、場合によって置換されたアロイル、場合によって置換されたアロイルアルキル、またはアルコキシカルボニルが挙げられる。置換は、任意の利用することができる炭素または窒素原子について行われ得る。いくつかの実施形態においては、そのような化合物の限定ではない例として以下が挙げられる:
【0127】
【化11】
式中、R1は、上記で定義されたような場合によって置換されたアリールであり、R2は、水素または場合によって置換されたアルキルであり、そしてR3はハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1は4−クロロフェニルである。いくつかの実施形態では、R2は水素、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、そのような化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を有する。
【0128】
神経突起伸長を促進する化合物
本発明はまた、神経突起伸長を促進する化合物にも関する(図13、14A、14B、17A、17B、18A、18B、および20)。そのような化合物は表2に記載されており、Chembridge Inc.またはMaybridge Ltd.(Maybridge Chemical Holdings Ltd.の子会社)から入手することができる。
【0129】
【表2−1】
【0130】
【表2−2】
神経突起伸長を阻害する化合物
本発明はまた、神経突起伸長を阻害する化合物にも関する(図15および20)。そのような化合物は表3に記載され、Chembridge Inc.またはMaybridge Ltd.(Maybridge Chemical Holdings Ltd.の子会社)から入手することができる。
【0131】
【表3】
組成物
本発明の範囲に含まれる組成物には、その意図される目的を達成するために有効な量で1種類以上の本発明の化合物が含まれている全ての組成物が含まれる。個々の要求は様々であるが、個々の成分の有効量の最適範囲の決定は、当業者の能力の範囲内である。
【0132】
本発明の範囲に含まれる組成物にはまた、1種類以上の本発明の化合物が、治療有効量の1種類以上のさらなる治療薬(例えば、他のNogo受容体アンタゴニストまたはアゴニスト、例えば、可溶性Nogo受容体ポリペプチドまたは抗NgR抗体)と組み合わせられた全ての組成物も含まれる。有効成分(例えば、他のNogo受容体アンタゴニストまたはアゴニスト、例えば、可溶性Nogo受容体ポリペプチドまたは抗NgR1抗体)に加えて、そのような組成物には、関連分野で周知である1種類以上の薬学的賦形剤が状況に応じて含まれ得る。組成物中での個々の有効成分の最適量は、本明細書中で提供される指針に基づき、そして当該分野で容易に入手することができる情報を考慮して、当業者に公知の日常的に行われている方法を使用して臨床医師が容易に決定することができる。
【0133】
化合物そのものとしての化合物の投与に加えて、本発明の化合物は、1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の適切な薬学的に許容される担体(例えば、薬学的に使用できる調製物へのその化合物の処理を容易にする1種類以上の賦形剤または補助剤)を含む薬学的組成物の一部として投与することができる。好ましくは、そのような薬学的組成物には、約0.01%から99%(例えば、約0.25%から75%の活性のある化合物(単数または複数))が、賦形剤(単数または複数)とともに含まれ、特に、経口投与または局所投与でき、そして好ましい投与のタイプ(例えば、錠剤、糖衣錠、徐放型トローチ剤およびカプセル剤、ゲル、液体懸濁剤、ならびに非経口投与による(例えば、静注、筋肉内注射、頭蓋内注射もしくは皮下注射による)投与に適している溶液)に使用できるそのような組成物が好ましい。
【0134】
本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物および/または組成物により有益な効果が得られる可能性がある任意の患者に投与され得る。そのような患者中で第1となるのがヒトであるが、本発明はそれに限定されるようには意図されない。他の患者としては、獣医学的動物(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなど)が挙げられる。
【0135】
本発明の化合物および薬学的組成物は、それらの意図される目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、経皮、口腔、舌下、髄腔内、脳室内、頭蓋内、鼻腔内、眼、肺(例えば、吸入による)、局所経路、あるいは直接注入によって行われ得る。あるいは、または同時に、投与が経口経路によって行われる場合もある。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、現在行われている処置の種類、行われているならばその処置の頻度、ならびに所望される効果の性質に依存する。
【0136】
本発明の方法では、化合物は、直接神経系に、脳室内に、または髄腔内に、例えばMSの慢性患部内に投与することができる。本発明の化合物を用いる処置については、投与量は、宿主の体重に対して、例えば、約0.0001mg/kgから100mg/kg、より通常は、0.01mg/kgから5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg,2mg/kgなどの範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、すなわち、1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは、少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲の中間の用量もまた本発明の範囲に含まれると意図される。被験体には、そのような用量を毎日、1日おきに、1週間に1回、または経験的分析によって決定された任意の他のスケジュールにしたがって投与することができる。例示的な処置には、例えば、少なくとも6ヶ月間の長期にわたる複数回の投与が必然的に伴う。さらに別の例示的な処置レジュメには、2週間に1回、または1ヶ月に1回、または3ヶ月から6ヶ月に1回の投与が必然的に伴う。例示的な投与スケジュールには、毎日の1〜10mg/kgまたは15mg/kg、1日おきの30mg/kg、または1週間に1回の60mg/kgが含まれる。
【0137】
いくつかの方法では、2種類以上の治療薬が同時に投与される。この場合、投与される個々の薬剤の投与量は示された範囲内となる。補助的な活性のある化合物もまた本発明の方法において使用される組成物中に配合することができる。例えば、本明細書中に記載される化合物を、1種類以上のさらに別の治療薬と一緒に同時製剤する、および/または同時投与することができる。
【0138】
本発明には選択された標的組織への化合物についての任意の適切な送達方法が含まれ、これには水溶液のボーラス注射または徐放系の移植が含まれる。徐放系の移植の使用により、反復注射の必要性が低くなる。
【0139】
本発明の方法で使用される化合物は脳内に直接注入することができる。化合物の直接の脳への注入のための種々のインプラントが知られており、そしてこれは、神経学的障害に罹患しているヒト患者への治療用化合物の送達に有効である。これらにはポンプを使用する脳への長期注入、定位移植暫定的間質カテーテル、永久頭蓋内カテーテルインプラント、および、外科的に移植された生体分解性のインプラントが含まれる。例えば、Gillら、前出;Scharfenら、「High Activity Iodine−125 Interstitial Implant For Gliomas」,Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.24(4):583−91(1992);Gasparら、「Permanent 125I Implants for Recurrent Malignant Gliomas」,Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.43(5):977−82(1999);第66章,577−580頁,Bellezzaら、「Stereotactic Interstitial Brachytherapy」,Gildenbergら、Textbook of Stereotactic and Functional Neurosurgery,McGraw−Hill(1998);およびBremら、「The Safety of Interstitial Chemotherapy with BCNU−Loaded Polymer Followed by Radiation Therapy in the Treatment of Newly Diagnosed Malignant Gliomas:Phase I Trial」,J.Neuro−Oncology 26:111−23(1995)を参照のこと。
【0140】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、脳の適切な領域内への直接の注入により患者に投与される。例えば、Gillら、「Direct brain infusion of glial cell line−derived neurotrophic factor in Parkinson disease」,Nature Med.9:589−95(2003)を参照のこと。別の技術も利用することができ、本発明の化合物の投与に適用することができる。例えば、Riechert−Mundinger装置およびZD(Zamorano−Dujovny)多目的局在化装置を使用して、カテーテルまたはインプラントの定位設置を行うことができる。120mlのオムニパーク(omnipaque)、350mgのヨウ素/mlを注入する、2mmスライス厚を使用するコントラスト増強コンピューター断層撮影(CT)スキャンにより、3次元多平面治療計画が可能になる(STP、Fischer,Freiburg,Germany)。この装置は、明確な標的の確認のための、CTおよびMRIの標的情報を合わせながらの磁気共鳴画像化試験に基づいた計画が可能である。
【0141】
GE CTスキャナー(General Electric Company,Milwaukee,WI)とともに使用されるように改良されたLeksell定位システム(Downs Surgical,Inc.,Decature,GA)、ならびにBrown−Roberts−Wells(BRW)定位システム(Radionics,Burlington,MA)をこの目的のために使用できる。これにより、移植当日の朝、BRW定位フレームの環状ベースリングを患者の頭蓋に装着できる。ベースプレートに固定されたグラファイト・ロッド・ローカライザー・フレームを用いて(標的組織)領域全体を3mm間隔で一連のCT断面を獲得することができる。グラファイトロッド画像のCT座標を使用してVAX11/780コンピューター(Digital Equipment Corporation,Maynard,Mass.)上でコンピューターによる治療計画プログラムを実行することにより、CTスペースとBRWスペースとの間をマッピングすることができる。
【0142】
組成物にはまた、化合物のための適当な送達システムまたは支持システムとして機能する生体適合性の担体物質の中に分散させられた本発明の化合物も含まれる。除放性担体の適当な例として、坐剤またはカプセル剤のような成形された物品の形態の半透過性の重合体マトリックスが含まれる。移植可能な徐放マトリックスまたはマイクロカプセル型の除放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,319号;EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanら、Biopolymers 22:547−56(1985));ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981);Langer,Chem.Tech.12:98−105(1982))、またはポリ−D−(−)−3ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
【0143】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される化合物には、さらに標的化部分が含まれる。標的化部分には、体の特定の部分への(例えば、脳への、またはその中の区画への)局在化を指令するタンパク質またはペプチドが含まれる。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される化合物は脳標的化部分に結合されられるか、または融合させられる。脳標的化部分は共有結合されるか(例えば、直接の、翻訳による融合、または直接的、もしくは状況に応じて切断することができるスペーサー分子を介してのいずれかでの化学的結合による)、あるいは共有結合以外によって結合される(例えば、アビジン:ビオチン、プロテインA:IgGなどのような可逆的な相互作用を介する)。他の実施形態では、その本発明の方法で使用される化合物は、さらに1つの脳標的化部分に結合させられる。さらなる実施形態では、脳標的部分は本発明の方法で使用される複数の化合物に結合させられる。
【0144】
化合物と会合させられた脳標的化部分は、そのような化合物の脳送達を促進する。治療剤に融合されるとその治療剤を血液脳関門(BBB)を通じて送達する多数のポリペプチドが記載されている。限定ではない例としては、単一ドメイン抗体FC5(Abulrobら(2005)J.Neurochem.95,1201−1214);mAB 83−14、ヒトインスリン受容体に対するモノクローナル抗体(Pardridgeら(1995)Pharmacol.Res.12,807−816);ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に結合するB2、B6およびB8ペプチド(Xiaら(2000)J.Virol.74,11359−11366);トランスフェリン受容体に対するOX26モノクローナル抗体(Pardridgeら(1991)J.Pharmacol.Exp.Ther.259,66−70);ジフテリア毒素共役(例えば、Gaillardら、International Congress Series 1277:185−198(2005)を参照のこと);および米国特許第6,306,365号の配列番号1〜18が挙げられる。上記参考文献の内容は、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
【0145】
化合物の増強された脳送達は、当該分野で十分に確立された多数の手段によって決定される。例えば、脳標的化部分に連結させられた放射線標識された化合物が動物への投与;脳への局在の決定;および、局在の、脳標的化部分と会合していない同等な放射線標識された化合物との比較がある。増強された標的化を決定する他の手段は上記の参考文献に記載されている。
【0146】
本発明の適切な経口用の薬学的組成物は、例えば、従来の混合、顆粒化、糖衣錠の生成、溶解、または凍結乾燥プロセスによって、それ自体が当該分野で周知の様式で製造される。したがって、経口で使用される固体の薬学的調製物は、1種類以上の本発明の化合物と、状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分を、1種類以上の固体の賦形剤と混合し、状況に応じて得られた混合物を粉にし、そして所望されるかまたは必要な場合には、錠剤もしくは糖衣錠の核を得るための適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理することによって、得ることができる。
【0147】
通常、化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト)に対して、約0.0025mg/kgから約50mg/kgの用量で、あるいは同等の量の薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物もしくはエステルが投与され得る。例えば、約0.01mg/kgから約25mg/kgが、そのような疾病を処置、緩和、または予防するために経口投与され得る。筋肉内注射については、用量は通常は、経口用量の約2分の1であり、例えば、適切な筋肉内用量は、約0.0025mg/kgから約25mg/kg、例えば、約0.01mg/kgから約5mg/kgである。
【0148】
単位経口用量には、約0.01mgから約1000mgまでのこの化合物、あるいは同等の量のその薬学的に供される塩、溶媒和物、またはエステルが含まれ得る。単位用量は、1つ以上の錠剤またはカプセル剤として1日に1回以上投与され得る。
【0149】
局所用処方物の中には、この化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはエステルが、担体1グラムあたり約0.01mgから100mgの濃度で存在し得る。
【0150】
適切な賦形剤は、特に、増量剤(例えば、ラクトース、スクロース、フルクトースなどのような糖類;マンニトール、ソルビトール、またはキシリトールなどのような糖アルコール;セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムもしくはリン酸水素カルシウム);ならびに、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンを使用する)デンプンベーストのような結合剤である。所望される場合は、上記のデンプンと、またカルボキシメチル−デンプン、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸、またはそれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)のような崩壊剤を添加することができる。補助剤は、上記の全て、流動調節剤(flow−regulating agent)および潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム)、および/またはポリ(エチレングリコール)である。糖衣錠の核には適切なコーティングが施され、所望される場合は、これは、胃液に対して耐性がある。この目的のためには、濃縮された糖溶液が使用され得、これには状況に応じてアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレングリコール)、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液(lacquer solution)、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物が含まれ得る。胃液に対して耐性があるコーティングを施すためには、適切なセルロース調製物(例えば、フタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチル−セルロース)の溶液を使用することができる。染料または色素を、例えば、識別のため、あるいはその有効成分または用量の組み合わせを特性化させるために、錠剤または糖衣錠のコーティングに加えることができる。
【0151】
経口用に使用することができる他の薬学的調製物としては、ゼラチン製のプッシュ−フィットカプセル(push−fit capsule)、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)からつくられた軟質のシールされたカプセルが挙げられる。特定の実施形態では、プッシュ−フィットカプセルには、増量剤(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、および/または潤滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)、および状況に応じて安定剤と混合された顆粒の形態で、1種類以上の本発明の化合物が含まれ得る。軟質カプセル中では、1種類以上の薬学的成分(例えば、1種類以上の本発明の化合物と、状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分)が、好ましくは、適切な液体(例えば、脂肪油または液体パラフィン)中に溶解または懸濁させられる。加えて、安定剤も添加され得る。
【0152】
本明細書を通じて開示される固体の投薬形態に加えて、本発明によってはまた、チュアブルタイプの(chewable)経口用処方物も提供される。そのようなチュアブルタイプの処方物は、適合性(compliance)が問題である患者の集団(例えば、小児、高齢者)および嚥下が困難であるかまたは噴霧/吸入用の処方物の使用が難しい患者に特に有用である。特定のそのような実施形態では、処方物には、有効量の1種類以上の本発明の化合物が、患者が処方物を噛めるようにするために適している賦形剤とともに含まれる(または原則としてそれらからなる)。さらなる実施形態では、処方物にはさらに、1種類以上の矯味剤または甘味剤を含めることができる。
【0153】
任意の標準的な薬学的に許容される賦形剤は、適切な圧縮がかけられたチュアブルタイプの錠剤処方物中で使用することができる。賦形剤は、例えば、希釈剤(例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、およびAustin Products Inc.(Holmdel,N.J.)から入手することができるDiPac(登録商標)(デキストリン化スクロース)のような圧縮可能な糖)、結合剤、崩壊剤、分裂剤、または膨張剤(例えば、ポリビニルポリピロリドン、クロスカルメロースナトリウム(例えば、FMC BioPolymer,Philadelphia,Pa.から入手することができるAc−Di−Sol))、デンプンおよび誘導体、セルロースおよび誘導体、微結晶セルロース(例えば、アビセル(Avicel)(商標)PH 101またはアビセル(商標)CE−15(グアーガムで修飾された微結晶セルロース(いずれもFMC BioPolymer,(Philadelphia,Pa.)から入手することができる))、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、および流動剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えば、Cabot Corporation,Kokomo,Ind.から入手することができるCab−O−Sil M5(登録商標))である。
【0154】
別の実施形態では、本発明により、例えば、米国特許第6,723,348号(すべての目的のためにその全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されているもののような、経口崩壊錠剤(orally disintegrating)/口腔分散可能錠剤(orodispersible tablet)が提供される。この経口崩壊錠剤/口腔分散可能錠剤は、唾液と接触すると口腔内で適切に崩壊し、容易に嚥下できる懸濁液を形成する。このような錠剤は、コーティングされた顆粒の形態の中に本発明の化合物と状況に応じた1種類以上のさらに別の活性剤(例えば、本明細書に記載されるもの)、および賦形剤の混合物を含む(または原則としてそれらからなる)。この賦形剤の混合物には、少なくとも1種類の崩壊剤、可溶性希釈剤、潤滑剤、および状況に応じた膨張剤、帯電防止剤(antistatic agent)(流動剤)、浸透剤、矯味剤/甘味剤、香料、および着色料が含まれる。特定のそのような実施形態では、崩壊錠/口腔分散可能錠剤には、矯味剤であるスクラロースが含まれる。本発明の経口崩壊錠中の本発明の化合物(単数または複数)、他の状況に応じた活性剤、および甘味剤(例えば、スクラロース)の量は当業者は容易に決定することができ、本明細書に記載されるこれらの量および組み合わせが含まれる。
【0155】
別の実施形態では、本発明により、米国特許第6,245,353号(その開示は、その全体が引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されているような、経口投与のための固体である、発泡性の、迅速に溶解する1種類以上の本発明の化合物の投薬形態が提供される。
【0156】
本発明の別の実施形態は、ヒトを含む温血動物の口腔内で溶解するように、および口腔の粘膜に接着するように特に十分に適合されられた、1種類以上の本発明の化合物と、状況に応じた1種類以上のさらに別の活性剤(例えば、本明細書中に記載されるもの)の送達を可能にする生理学的に許容されるフィルムに関する。本発明のこの態様に従う使用に適しているこのような生理学的に許容されるフィルムは、米国特許出願番号2004/0247648に開示されており、この開示はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0157】
経口投与および/または非経口投与に適している処方物としては、水溶性形態(例えば、水可溶性の塩およびアルカリ溶液)中の、1種類以上の本発明の化合物と状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分の水溶液が挙げられる。加えて、適切な油性の注射用懸濁液としての有効成分(単数または複数)の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドまたはポリ(エチレングリコール)−400)が挙げられる。水性の注射用懸濁液には、状況に応じて、懸濁液の粘性を高める物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含む)を含めることができる。状況に応じて、懸濁液にはまた、1種類以上の安定剤、1種類以上の保存剤(例えば、エデト酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムなど)、および/または薬学的組成物の処方に一般的に使用されている他の成分も含めることができる。
【0158】
本発明の適切な局所用の薬学的組成物は、適切な担体を選択することによって、油、クリーム、ローション、軟膏などとして処方されることが好ましい。したがって、本発明のそのような組成物には、1種類以上の本発明の化合物、状況に応じた1種類以上のさらに別の薬学的有効成分、および局所投与用のそのような薬学的組成物の調製における使用に適している1種類以上の担体が含まれる。適切なそのような担体としては、植物性油または鉱油、白色ワセリン(白色軟パラフィン)、分岐鎖の脂肪または油、動物性脂肪および高分子量のアルコール(C12より大きい)が挙げられる。好ましい担体は、その中に薬学的有効成分(単数または複数)を溶解させることができるものである。乳化剤、安定剤、保湿剤、および抗酸化剤もまた含めることができ、さらに、所望される場合には、着色剤または香料も含めることができる。加えて、1種類以上の経皮浸透促進剤を、これらの局所用処方物の中で使用することができる。適切なそのような促進剤の限定ではない例は、米国特許第3,989,816号および同第4,444,762号(これらは、それらの関連する部分について引用により本明細書中に組み入れられる)の中で見ることができる。
【0159】
眼投与に適している液体の薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体または賦形剤が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤はスクラロースであり、組成物には保存剤が含まれないかまたは実質的に含まれず、組成物は単回投与用の容器の中に入れられる。適切な単回投与用の容器としては、高密度ポリエチレン容器(例えば、ブロー−フィル−シール(blow−fill−seal)製造技術を使用して製造された約1mLの容量を持つ高密度ポリエチレン容器)が挙げられるが、これに限定されない。
【0160】
単回投与または複数回投与の形態での鼻腔投与に適している液体の薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体または賦形剤が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤はスクラロースであり、組成物には保存剤が含まれないかまたは実質的に含まれず、組成物は単回投与用の容器または複数回投与用の容器のいずれかに入れられる。
【0161】
本発明により、1種類以上の本発明の化合物と、本明細書中に記載されるもののような状況に応じた1種類以上のさらに別の活性剤の肺送達用の処方物ならびに組成物が提供される。
【0162】
適切な吸入用の粉末状薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体または賦形剤が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、本発明の化合物(単数または複数)は微粉末化された粒子の形態であり、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤はスクラロース(例えば、スクラロースの微粉末化された粒子)である。適切なそのような吸入用の粉末状薬学的組成物には、約1μmから約5μmの平均粒径を有している1種類以上の本発明の化合物の微粉末化された粒子と、約1μmから約20μmの平均粒径を持つスクラロースの微粉末化された粒子が含まれる。本発明のそのような吸入用の粉末状薬学的組成物は、例えば、乾燥粉末吸入器を使用する肺送達用に処方することができる。
【0163】
適切な吸入可能な噴霧用の薬学的組成物には、治療有効量の1種類以上の本発明の化合物と、1種類以上の薬学的に許容される担体、安定剤、または賦形剤を提供するための適切な濃度が含まれる(または原則としてそれらからなる)。ここでは、本発明の化合物(単数または複数)は溶液の形態であり、そして少なくとも1種類の薬学的に許容される担体または賦形剤は、溶液の中に溶解させられたスクラロースである。そのような吸入可能な噴霧用の薬学的組成物は、適切なデバイスとともに使用されると、約1μmから約5μmの平均粒径を有している成分(有効成分と非有効成分を含む)の細かい噴出をもたらす。本発明のそのような吸入可能な噴霧用の薬学的組成物は、例えば、適切なデバイスまたは吸入器を使用する肺送達用に処方することができる。
【0164】
特定の実施形態では、本発明の化合物と1種類以上のさらに別の治療薬を含む薬学的組成物が患者に投与される。
【0165】
特定の実施形態では、本発明の化合物と1種類以上のさらに別の治療薬が、別の組成物の中で患者に投与され、そして投与は同時に行われるか、または異なる周期性で行われる。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明には、賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容される担体が含まれ得る。これらは、作用部位への送達のために薬学的に使用することができる調製物への活性のある化合物の処理を容易にする。非経口投与に適している処方物としては、水溶性形態(例えば、水溶性の塩)の活性のある化合物の水溶液が挙げられる。加えて、適切な油性の注射用懸濁液としての活性のある化合物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)が挙げられる。水性の注射用懸濁液には、懸濁液の粘性を高める物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、およびデキストランを含む)を含めることができる。状況に応じて、懸濁液にはまた、安定剤も含めることができる。リポソームもまた、細胞への送達のために本発明の分子をカプセル化するために使用することができる。例示的な「薬学的に許容される担体」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性の吸収遅延剤などであり、これらは、生理学的に適合性の水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、組成物には、等張剤(例えば、糖類、多価アルコール類(例えば、マンニトール、ソルビトール)、または塩化ナトリウムが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物には薬学的に許容される物質(例えば、湿潤剤)または少量の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤)、本発明の化合物の保存期限または有効性を高める保存剤または緩衝液が含まれる。
【0167】
本発明の組成物は様々な形態であり得、これには例えば、液体、半固体、および固体の投薬形態(例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液または注入可能な溶液)、分散液、あるいは懸濁液)が含まれる。好ましい形態は意図される投与の態様と治療用途に応じて様々である。1つの実施形態では、組成物は、注射可能な溶液または注入可能な溶液(例えば、他の抗体でヒトを受動免疫するために使用されるものと類似する組成物)の形態である。
【0168】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適している他の秩序のある構造として処方することができる。滅菌の注射可能な溶液は、必要量の化合物を、適切な溶媒の中に、必要に応じて上記の成分の1つまたは上記の成分の組み合わせと共に取り込ませ、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。通常、分散液は、活性のある化合物を、基本的な分散媒体と上記のものから必要な他の成分を含む滅菌のビヒクルに取り込ませることによって調製される。滅菌の注射可能な溶液の調製のための滅菌の粉末の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これによって、有効成分と任意のさらに別の所望される成分の粉末が、予め滅菌濾過されたそれらの溶液から得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒子の大きさの維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる物質(例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチン)を組成物に含めることによっても得ることができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、活性のある化合物は迅速な放出から化合物を防御する担体とともに調製することができ、例えば、徐放処方物(インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む)である。生体分解性の生体適合性ポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)を使用することができる。このような処方物の調製のための多くの方法は特許がとられているか、または当業者に一般的に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編,Marcel Dekker,Inc.,New York(1978)を参照のこと。
【0170】
投与レジュメは、最適な所望される反応(例えば、治療応答または予防応答)を提供するように調整することができる。例えば、1回のボーラスが投与される場合があり、数回に分けられた用量が時間をかけて投与される場合もあり、また、治療状況の緊急性によって望まれる場合には、用量が比例的に減少させられる場合も、増大させられる場合もある。投与を容易にするための単位投与量形態に非経口組成物を処方することが特に有効であり、そして、単位投与量形態が均質であることは、本明細書中で使用される場合には、処置される哺乳動物被験体について単一の投与量として適している物理的に分かれている単位をいう。個々の単位には、必要とされる薬学的担体と組み合わせて、所望される治療効果を生じるように計算された予め決定された量の活性のある化合物が含まれる。本発明の単位投与量形態についての詳細は、(a)化合物の特有の特性と、得られる特定の治療効果または予防効果、および(b)個体の過敏症の処置については、そのような化合物を混合することに関する当該分野に特有の限界に影響されるか、またはそれらに直接依存する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物についての治療有効量の範囲は、0.0025mg/Kg/日〜50mg/Kg/日である。いくつかの実施形態では、治療有効量の範囲は、0.01mg/Kg/日〜25mg/kg/日である。
【0171】
化合物および組成物の使用
いくつかの実施形態では、本発明により神経突起伸長を促進するための方法が提供される。この方法には、ニューロンを本発明の化合物または組成物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、上記化合物または組成物は、神経突起伸長の阻害を阻害する。いくつかの実施形態では、ニューロンは哺乳動物中のものである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明により、NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法が提供される。この方法には、ニューロンを、有効量の本発明の化合物または組成物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、ニューロンは哺乳動物中のものである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明により、哺乳動物において、中枢神経系(CNS)疾患、疾病、または損傷を処置する方法が提供される。この方法には、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の本発明の化合物または組成物を投与する工程が含まれる。いくつかの実施形態では、疾患、疾病、または損傷は、多発性硬化症、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、緑内障、聴力低下、および副腎白質萎縮症である。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明により、神経突起伸長を阻害するための方法が提供される。この方法には、ニューロンを、本発明の化合物または組成物と接触させる工程が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、神経突起伸長を阻害する。いくつかの実施形態では、ニューロンは哺乳動物中のものである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0175】
いくつかの実施形態では、本発明により、哺乳動物において統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法が提供される。この方法には、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の本発明の化合物または組成物を投与する工程が含まれる。
【0176】
本発明の化合物は治療的に使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物はヒト患者に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、獣医学的目的のために、またはヒト疾患の動物モデルとして、Nogo受容体−1を発現するヒト以外の哺乳動物に投与される。そのような動物モデルは、本発明の化合物の治療効力を評価するために有用であり得る。
【0177】
本発明の化合物は、単独で、または組み合わせとして、または特定の病理学的プロセスを調節する複数の他の物質と順次組み合わせて提供することができる。本明細書中で使用される場合は、本発明の化合物は1種類以上のさらに別の治療薬と組み合わせて投与することができ、この場合は、2種類が同時に投与されるか、連続して投与されるか、または別々に投与される。
【0178】
本発明の化合物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、吸入、または口腔経路から投与することができる。例えば、薬剤は、微量注入によって損傷部位に局所投与される場合がある。典型的な部位としては、怪我によって生じた脊髄の損傷した領域が挙げられるが、これに限定されない。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、同時に行われている処置の種類、行われている場合には、処置の頻度、および所望される効果の性質に応じて様々であり得る。
【0179】
本発明の化合物は、通常は、哺乳動物(例えば、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、およびマウスにおいてインビボで、あるいはインビトロで利用することができる。
【0180】
当然ながら、本明細書に記載した方法および用途に対する他の適切な変更および適合は明白であり、本発明またはその任意の実施形態の範囲からも逸脱することなく実施され得ることは、当業者に容易に明らかであろう。本発明がより理解されるように、以下の実施例が示される。これらの実施例は説明を目的とするのみであり、いかなる方法でも本発明を限定するようには解釈されるべきではない。
【実施例】
【0181】
(実施例1)
Nogo受容体:Nogoリガンド相互作用の低分子阻害剤についてのAlpha Screen
AlphaScreenアッセイを、Nogo受容体−Nogoリガンド相互作用の低分子阻害剤をスクリーニングするために使用した。AlphaScreenアッセイには、適合しているAlphaドナー(ストレプトアビジン)とアクセプタービーズ(プロテインA)を含めた。(図1)これらのビーズをヒドロゲルの層でコーティングして、生体結合のための官能基を持たせた。溶液中のストレプトアビジン−アクセプタービーズとプロテインA−ドナービーズは、それら自体はシグナルを生じない。しかし、生物学的反応によってAlphaドナービーズとアクセプタービーズが接近している場合には、レーザーで励起させると、化学反応のカスケードによってシグナルの大幅な増幅が生じる。(図3)レーザーで励起させると、ドナービーズの内部にある光増感剤が、雰囲気酸素をさらに励起した一重項状態に変換する。一重項状態の酸素分子は拡散してアクセプタービーズ中で化学発光反応を生じ、光の放射を導く。特異的な生物学的相互作用がなければ、ドナービーズによって生産された一重項状態の酸素分子は、アクセプタービーズに接近することはなく、検出されない。
【0182】
ストレプトアビジンに共役したビーズを、ビオチニル化Nogo 66(Ng66)(Nogoリガンドのカルボキシル領域中にある66アミノ酸の阻害性ドメイン)に結合させるために使用し、プロテインAに共役したビーズを、Fc−Nogo受容体(NgR)融合タンパク質に結合させるために使用した。(図2)Ng66とFc−NgRとの相互作用により、アクセプタービーズとドナービーズを接近させ、これによって、励起させるとシグナルが生じた。(図3および5)相互作用を妨害した分子(例えば、ビオチニル化されていないNg66およびNEP−33(アセチル−RIYKSVLQAVQKTDEGHPFKAYLELEITLSQEQ−アミド)(配列番号4))は、ビーズの接近を妨げ、それにより、妨害の指標となるシグナルを低下させた。(図4および6)。
【0183】
20000種類の化合物をシグナルの低下、したがって、Fc−NgR:Ng66相互作用阻害活性についてスクリーニングした。化合物(10uM)を、ドナービーズ、アクセプタービーズ、Fc−NgR、およびビオチニル化Ng66の混合物を含むウェルに添加した。シグナル阻害を示した5種類の化合物を示す一例となるプレートを図8に示す。試験した20000種類の化合物のうち、163種類の化合物がシグナル阻害活性を有しており、これらをその後の評価のために選択した。
【0184】
(実施例2)
Nogo受容体:Nogoリガンド相互作用の低分子阻害剤についての第2のTruHits Screen
AlphaScreen TruHitsキット(PerkinElmer)を、AlphaScreenアッセイにおいて擬陽性を同定するために使用した。AlphaScreen TruHitsキットは、色素消光剤、光散乱物質(不溶性化合物)、一重項酸素消光剤、およびAlphaScreenシグナルを妨害するビオチン模倣剤を含む複数のクラスの化合物を同定することができる。AlphaScreenシグナルを妨害するライブラリー化合物は擬陽性と考えられるが、このシグナルに対して影響を示さない化合物が真のヒットとしての可能性があるものである。
【0185】
化合物10と12を、AlphaScreenを使用してヒットとして同定した。それらの妥当性を評価するために、これらの化合物を、製造業者の説明書にしたがってAlphaScreen TruHitsキットを使用して評価した。それぞれの化合物について10uMから0.000508uM(最終濃度)までの範囲の希釈系列を、AlphaScreen TruHitsキットの成分を含む水を含むウェルに添加した。用量依存性のシグナル阻害をAlphaScreen TruHitsアッセイにおいて観察し、これは、化合物10と12がおそらく擬陽性であることを示していた(図9)。
【0186】
(実施例3)
Nogo受容体:Nogoリガンド相互作用についての可能性のある低分子阻害剤を評価するためのELISAアッセイとDELFIAアッセイ
ELISAアッセイとDELFIAアッセイを、その後、NgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害する能力について、AlphaScreensにおいて「ヒット」として同定された低分子を評価するために行った。DELFIAアッセイでは、96ウェルのストレプトアビジンをコーティングしたプレートを、PBSと10mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)(200μl)で一晩ブロックした。次いで、ウェルを、Nogo 66(B66)(0.5μlの10mM/10ml HBH)(50μl)を含む超音波処理したHBH(ハンクス平衡化塩類溶液/0.1MのHEPES/1mg/mlのBSA)で1.5時間コーティングし、その後、200μlのHBHで4回洗浄した。阻害剤化合物を含む溶液(HBH中の50μl)を、HBH(50μl)中の1%のFcNgR溶液とともに添加し、溶液を2時間インキュベートした。ウェルをHBHで5回洗浄した。アルカリホスファターゼ(AP)共役マウス抗ラット抗体(1:2500)を添加し、その後、ウェルをDELFIA洗浄緩衝液で5回洗浄した。次いで、ユーロピウム(Eu)抗マウス抗体を、Perlin Elmer Assay緩衝液(100μg/ml)(150μl)中に添加し、ウェルをDELFIA洗浄緩衝液で再び5回洗浄した。エンハンサー溶液を添加し(100μl)、プレートを15分後に、Perkin Elmer Victor 5機器で読み取った。(図10B)DELFIAアッセイによる結果は、化合物HTS08871、KM08071、およびS03749、ならびにポジティブ対照であるNEP33が、Nogo受容体:Nogoリガンド(Nogo 66)相互作用を阻害することを示している。(図10Dおよび11A〜C)。
【0187】
ELISAアッセイでは、96ウェルのストレプトアビジンをコーティングしたプレートを、PBSと10mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)(200μl)で一晩ブロックした。その後、ウェルを、Nogo 66(B66)(0.5μlの10mM/10ml HBH)(50μl)を含む超音波処理したHBH(ハンクス平衡化塩類溶液(Hanks Balanced Salt Solution)/0.1MのHEPES/1mg/mlのBSA)で1.5時間コーティングし、次いで200μlのHBHで4回洗浄した。阻害剤化合物を含む溶液(HBH中の50μl)をHBH(50μl)中の1%のFcNgR溶液とともに添加し、この溶液を2時間インキュベートした。ウェルをHBHで5回洗浄した。アルカリホスファターゼ(AP)共役マウス抗ラット抗体(1:2500)を添加し、その後、ウェルをHBHで5回洗浄した。比色分析用のアルカリホスファターゼ基質を30分かけて添加し、プレートをPerkin Elmer Victor 5機器で読み取った。(図10A)。ELISAアッセイによる結果は、NEP33とシスプラチンがNogo受容体:Nogoリガンド(Nogo 66)相互作用を阻害することを示している。(図10C)。
【0188】
(実施例4)
神経突起伸長に対するNogo受容体の作用
神経突起伸長に対するNogo受容体の作用を明らかにするために、後根神経節(DRG)を、生後10日目に、野生型マウスおよびNogo受容体1(NgR1)ノックアウトマウスの子供から切り取り、0.5%のコラゲナーゼ中での30分間のインキュベーション後に粉砕によって分離させ、10%のウシ胎児血清とB27を含むDMEM中のラミニンをコーティングした96ウェル組織培養プレート上にプレートした。24時間後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の4%のホルムアルデヒド中に固定し、PBS中で洗浄し、そして0.1%のtriton X−100と10%のヤギ血清を含むPBS中で1時間ブロックした。その後、細胞を、PBS中のウサギ抗β−3−チューブリン(1:500)中で一晩インキュベートした。3回の洗浄後、細胞を、Alexa−fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(1:500)中で6時間インキュベートし、PBSで洗浄し、そしてImagExpress自動顕微鏡(automated microscope)(Molecular Devices,Inc.)で10倍の写真を撮影した。神経突起伸長を、AcuityExpressソフトウェア(Molecular Devices,Inc.)を用いて測定した。これらの結果は、Nogo受容体が、野生型マウスの中で神経突起伸長を阻害することを示している。神経突起伸長は、Nogo受容体ノックアウトマウスの中では影響を受けない。(図12A)。
【0189】
(実施例5)
神経突起伸長アッセイ
「ヒット」化合物について神経突起伸長を促進する能力を試験するために、神経突起伸長アッセイを、これらの化合物のそれぞれを使用して行った。後根神経節(DRG)を、胚性期13日目または14日目のニワトリの胚から切り取り、0.5%のコラゲナーゼ中での30分間のインキュベーション後に粉砕によって分離させ、20μMの試験化合物を含む10%のウシ胎児血清を含むDMEM中のラミニンをコーティングした96ウェル組織培養プレート上にプレートした。2時間から4時間のインキュベーションの後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の4%のホルムアルデヒド中に固定し、PBS中で洗浄し、0.1%のtriton X−100と10%のヤギ血清を含むPBS中で1時間ブロックした。細胞を、PBS中のウサギ抗β−3−チューブリン(1:500)中で一晩インキュベートし、その後、PBSで3回洗浄した。次いで、細胞を、Alexa−fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(1:500)中で6時間インキュベートし、PBSで洗浄し、そしてImagExpress自動顕微鏡(Molecular Devices,Inc.)で10倍の写真を撮影した。神経突起伸長を、AcuityExpressソフトウェア(Molecular Devices,Inc.)を用いて測定した。
【0190】
結果は、4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン(「HTS」)、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル(「KM」)、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート(「555」)、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「5470」)、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン(「585」)、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル(「535」)、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン(「536」)、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン(「5472」)、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル(「794」)およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン(「BTB11222」)が、DMSO対照と比較して神経突起伸長を促進したことを示していた。結果はまた、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル(「S」)、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(「5475」)、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(「592」)、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(「664」)、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル(「KMO2502」)が、DMSO対照と比較して神経突起伸長を阻害したことも示していた。(図13、15、17A、18A〜C、19A〜B、および20)。
【0191】
化合物が神経突起伸長を促進する機構をさらに確認するために、競合アッセイを行った。最初に、7.5μMの可溶性Nogo受容体−Fc融合タンパク質(FcNgR)の投与により、FcNgRが神経突起伸長を促進することを示した。(図12B)。次いで、化合物KM、HTS、または555を、7.5μMのFcNgRと一緒に同時投与した。これらの結果は、化合物KM、HTS、および555が、外因性のFcNgRの非存在下で神経突起伸長を促進すること、そして、これらの化合物とFcNgRが同じ溶液中で一緒に投与されると、両方の成長促進作用が阻害されることを示していた。これらの結果は、これらの化合物と外因性のFcNgRが互いに結合して、結果としてそれらの成長促進作用を相互に阻害することを示唆している。(図14A〜Bおよび17B)。したがって、これらの結果はさらに、これらの化合物が、NgRに結合し、そしてNgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害することによって働くことを示唆している。
【0192】
作用機構を確認するための別の実験では、神経突起伸長アッセイを、後根神経節(DRG)を13日目ではなく胚性期8日目のニワトリの胚から取り出したことを除いて、上記に記載したように行った。8日目では、Nogo受容体はDRG中ではまだ発現されていない。化合物KM、HTS、555、5470、585を上記に記載したように投与し、神経突起伸長を測定した。結果は、これらの化合物が8日目のDRGの神経突起伸長には影響を及ぼしていないことを示しており、このことは、これらの化合物が、NgRに結合し、NgRとNogoリガンドとの相互作用を阻害することによって作用することを示唆している。(図21)。
【0193】
しかし、化合物Sによる神経突起伸長の阻害は、Nogo受容体−Nogoリガンド複合体とのその相互作用とは無関係と考えられる。後根神経節(DRG)を、生後15日目の野生型マウスの子供またはNgR1ノックアウトマウスの子供から切り取り、0.5%のコラゲナーゼ中での30分間のインキュベーション後に粉砕によって分離させ、10%のウシ胎児血清とB27を含むDMEM中のラミニンをコーティングした96ウェル組織培養プレート上にプレートした。24時間後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の4%のホルムアルデヒド中に固定し、PBS中で洗浄し、そして0.1%のtriton X−100と10%のヤギ血清を含むPBS中で1時間ブロックした。その後、細胞を、PBS中のウサギ抗β−3−チューブリン(1:500)中で一晩インキュベートした。3回の洗浄後、細胞を、Alexa−fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(1:500)中で6時間インキュベートし、PBSで洗浄し、そしてImagExpress自動顕微鏡(Molecular Devices,Inc.)で10倍の写真を撮影した。神経突起伸長を、AcuityExpressソフトウェア(Molecular Devices,Inc.)を用いて測定した。これらの結果は、化合物Sが、野生型マウスおよびNgR1ノックアウトマウスの両方において神経突起伸長を阻害したことを示しており、したがって、これらの化合物の神経突起伸長に対する作用がNogo受容体−Nogoリガンド複合体とのその相互作用とは無関係であることを示唆している。
【0194】
当業者は、多数の変更および改良を、本発明の精神から逸脱することなく本発明の好ましい実施形態に対して行うことができることを理解するであろう。全てのそのようなバリエーションが本発明の範囲に入るように意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物を同定するための方法であって:(a)Nogoポリペプチド、NgRポリペプチド、および試験化合物を混合する工程;(b)前記化合物の非存在下での前記NgRポリペプチドに対する前記Nogoポリペプチドの結合と比較して、前記化合物の存在下での前記NgRポリペプチドに対する前記Nogoポリペプチドの結合の妨害を測定する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記妨害が、ドナービーズとレセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって測定され;前記NgRポリペプチドは、前記ドナービーズと共役した生体分子に結合し、そして前記Nogoポリペプチドは、前記レセプタービーズと共役した生体分子に結合し、そして前記ドナービーズには光増感剤が含まれ、前記レセプタービーズには化学発光物質が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
用量応答アッセイによって前記化合物についての固有の妨害を検出することにより前記妨害を確認する工程をさらに含む、前記妨害が前記化合物について検出される請求項1に記載の方法であって、前記アッセイには:(a)ドナービーズ、レセプタービーズ、および様々な濃度の前記化合物をインキュベートする工程;ならびに(b)前記ドナービーズと前記レセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって、様々な濃度での前記化合物の前記固有の妨害を測定する工程が含まれ、ここでは、前記ドナービーズは生体分子と共役し、前記ドナービーズには光増感剤が含まれ、そして前記レセプタービーズは生体分子と共役し、前記レセプタービーズには化学発光物質が含まれる、方法。
【請求項4】
前記方法が、複数の試験化合物を含むマルチウェルプレートの中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、低分子ライブラリーの1つのメンバーであり;ここでは、前記低分子ライブラリー全体が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法にしたがってスクリーニングされ;そして前記低分子ライブラリーは、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を持つ薬物様の有機化合物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記低分子ライブラリーが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法にしたがってNogoとNogo受容体との相互作用を調節することがこれまでに同定された化合物と構造的に類似するかまたは関係がある化合物からなる重点的ライブラリーである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記NogoポリペプチドがNogo−66ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記NgRポリペプチドがFc−NgRポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記調節が前記相互作用の阻害である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記調節が前記相互作用の促進である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物。
【請求項12】
NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する方法であって、前記NogoおよびNogo受容体(NgR)を化合物と接触させる工程を含み、ここでは、前記化合物は、場合によって置換された、場合によって部分的に飽和した、ベンゾフラン、インドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、クロメンまたはキノリン、あるいはそれらの塩であり、そして前記化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を持つ、方法。
【請求項13】
前記化合物が、場合によって置換された5−ヒドロキシ−ベンゾフラン、場合によって置換された5−ヒドロキシ−3−アロイルアルキルベンゾフラン、またはそれらの塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、場合によって置換された3−アシル−インドール、場合によって置換された3−ヒドロキシ−3−アロイルアルキル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、またはそれらの塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する方法であって、前記NogoおよびNogo受容体(NgR)を以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、N1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの塩。
【請求項16】
神経突起伸長を促進する化合物を同定するための方法であって:(a)NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程;(b)候補化合物を単離する工程を含み、ここでは、前記低分子は500ダルトン以下の分子量を持つ、方法。
【請求項17】
前記候補化合物の第2の用量応答アッセイを実施する工程をさらに含み、ここでは、前記第2の用量応答アッセイが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記候補化合物の神経突起伸長活性を測定する工程をさらに含み、ここでは、前記神経突起伸長が、前記候補化合物の存在下で促進される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物。
【請求項20】
ニューロンを、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの塩と接触させる工程を含む、神経突起伸長を促進する方法。
【請求項21】
前記ニューロンが哺乳動物中のものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ニューロンを、有効量の、以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、神経突起伸長を促進する方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの塩。
【請求項24】
ニューロンを、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの塩と接触させる工程を含む、NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法。
【請求項25】
前記ニューロンが哺乳動物中のものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法であって、ニューロンを、有効量の、以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−l,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの塩。
【請求項28】
哺乳動物において中枢神経系(CNS)の疾患、疾病、または損傷を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項29】
前記化合物が、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、頭蓋内、または口腔投与によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患、疾病、または損傷が、多発性硬化症、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、緑内障、聴力低下、および副腎白質萎縮症からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物において中枢神経系(CNS)の疾患、疾病、または損傷を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、以下からなる群より選択される化合物を投与する工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項32】
哺乳動物において神経突起伸長または軸索の再生を促進する方法であって、それが必要な哺乳動物に対して、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
前記化合物が、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、頭蓋内、または口腔投与によって投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
哺乳動物において神経突起伸長または軸索の再生を促進する方法であって、それが必要な哺乳動物に対して、有効量の、以下からなる群より選択される化合物を投与する工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項35】
神経突起伸長を阻害する化合物を同定するための方法であって:(a)NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程;(b)候補化合物を単離する工程を含み、ここでは、前記低分子は500ダルトン以下の分子量を持つ、方法。
【請求項36】
前記候補化合物の第2の用量応答アッセイを実施する工程をさらに含み、ここでは、前記第2の用量応答アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記候補化合物の神経突起伸長活性を測定する工程をさらに含み、ここでは、前記神経突起伸長が、前記候補化合物の存在下で阻害される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物、またはそれらの塩。
【請求項39】
神経突起伸長または軸索の再生を阻害する方法であって、ニューロンを、有効量の、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの塩と接触させる工程を含む、方法。
【請求項40】
前記ニューロンが哺乳動物中のものである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物がヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
神経突起伸長または軸索の再生を阻害する方法であって、ニューロンを、有効量の、以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、方法:4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、またはそれらの塩。
【請求項43】
統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
前記化合物が、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、頭蓋内、または口腔投与によって投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、以下からなる群より選択される化合物を投与する工程を含む、方法:4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項46】
請求項11、19、および38のいずれかに記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、組成物。
【請求項1】
NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する化合物を同定するための方法であって:(a)Nogoポリペプチド、NgRポリペプチド、および試験化合物を混合する工程;(b)前記化合物の非存在下での前記NgRポリペプチドに対する前記Nogoポリペプチドの結合と比較して、前記化合物の存在下での前記NgRポリペプチドに対する前記Nogoポリペプチドの結合の妨害を測定する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記妨害が、ドナービーズとレセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって測定され;前記NgRポリペプチドは、前記ドナービーズと共役した生体分子に結合し、そして前記Nogoポリペプチドは、前記レセプタービーズと共役した生体分子に結合し、そして前記ドナービーズには光増感剤が含まれ、前記レセプタービーズには化学発光物質が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
用量応答アッセイによって前記化合物についての固有の妨害を検出することにより前記妨害を確認する工程をさらに含む、前記妨害が前記化合物について検出される請求項1に記載の方法であって、前記アッセイには:(a)ドナービーズ、レセプタービーズ、および様々な濃度の前記化合物をインキュベートする工程;ならびに(b)前記ドナービーズと前記レセプタービーズとの間で形成される複合体から放射される光シグナルによって、様々な濃度での前記化合物の前記固有の妨害を測定する工程が含まれ、ここでは、前記ドナービーズは生体分子と共役し、前記ドナービーズには光増感剤が含まれ、そして前記レセプタービーズは生体分子と共役し、前記レセプタービーズには化学発光物質が含まれる、方法。
【請求項4】
前記方法が、複数の試験化合物を含むマルチウェルプレートの中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、低分子ライブラリーの1つのメンバーであり;ここでは、前記低分子ライブラリー全体が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法にしたがってスクリーニングされ;そして前記低分子ライブラリーは、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を持つ薬物様の有機化合物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記低分子ライブラリーが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法にしたがってNogoとNogo受容体との相互作用を調節することがこれまでに同定された化合物と構造的に類似するかまたは関係がある化合物からなる重点的ライブラリーである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記NogoポリペプチドがNogo−66ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記NgRポリペプチドがFc−NgRポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記調節が前記相互作用の阻害である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記調節が前記相互作用の促進である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物。
【請求項12】
NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する方法であって、前記NogoおよびNogo受容体(NgR)を化合物と接触させる工程を含み、ここでは、前記化合物は、場合によって置換された、場合によって部分的に飽和した、ベンゾフラン、インドール、チアゾロピリミジン、ピロロキノキサリン、ベンゾチアゾール、クロメンまたはキノリン、あるいはそれらの塩であり、そして前記化合物は、500ダルトン以下の分子量を持ち、5個以下の窒素原子または5個以下の酸素原子を持つ、方法。
【請求項13】
前記化合物が、場合によって置換された5−ヒドロキシ−ベンゾフラン、場合によって置換された5−ヒドロキシ−3−アロイルアルキルベンゾフラン、またはそれらの塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、場合によって置換された3−アシル−インドール、場合によって置換された3−ヒドロキシ−3−アロイルアルキル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、またはそれらの塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を調節する方法であって、前記NogoおよびNogo受容体(NgR)を以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、N1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの塩。
【請求項16】
神経突起伸長を促進する化合物を同定するための方法であって:(a)NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程;(b)候補化合物を単離する工程を含み、ここでは、前記低分子は500ダルトン以下の分子量を持つ、方法。
【請求項17】
前記候補化合物の第2の用量応答アッセイを実施する工程をさらに含み、ここでは、前記第2の用量応答アッセイが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記候補化合物の神経突起伸長活性を測定する工程をさらに含み、ここでは、前記神経突起伸長が、前記候補化合物の存在下で促進される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物。
【請求項20】
ニューロンを、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの塩と接触させる工程を含む、神経突起伸長を促進する方法。
【請求項21】
前記ニューロンが哺乳動物中のものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ニューロンを、有効量の、以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、神経突起伸長を促進する方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの塩。
【請求項24】
ニューロンを、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの塩と接触させる工程を含む、NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法。
【請求項25】
前記ニューロンが哺乳動物中のものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
NgR1シグナル伝達複合体によるシグナル伝達を阻害する方法であって、ニューロンを、有効量の、以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−l,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの塩。
【請求項28】
哺乳動物において中枢神経系(CNS)の疾患、疾病、または損傷を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項29】
前記化合物が、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、頭蓋内、または口腔投与によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患、疾病、または損傷が、多発性硬化症、ALS、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、脳卒中、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、緑内障、聴力低下、および副腎白質萎縮症からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物において中枢神経系(CNS)の疾患、疾病、または損傷を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、以下からなる群より選択される化合物を投与する工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項32】
哺乳動物において神経突起伸長または軸索の再生を促進する方法であって、それが必要な哺乳動物に対して、有効量の、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
前記化合物が、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、頭蓋内、または口腔投与によって投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
哺乳動物において神経突起伸長または軸索の再生を促進する方法であって、それが必要な哺乳動物に対して、有効量の、以下からなる群より選択される化合物を投与する工程を含む、方法:4’−(7−メトキシ−4,5−ジヒドロピロロ[1,2−a]キノキサリン−4−イル)−N,N−ジメチルアニリン、2−(4−クロロベンゾイル)−3−[4−(2−フェニルエト−1−イニル)フェニル]アクリロニトリル、エチル5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−7−メチル−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−5H−[1,3]チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−6−カルボキシラート、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、(4−クロロフェニル)(5−ヒドロキシ−2−メチル−1−ベンゾフラン−3−イル)メタノン、4−(1−ベンゾイル−1,2−ジヒドロ−2−キノリニル)−N,N−ジメチルアニリン、4−[(2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)メチル]ベンゾニトリル、4−[(3−アセチル−7−エチル−1H−インドール−1−イル)メチル]ベンゾニトリル、3−(4−クロロベンゾイル)−6−メチル−4H−クロメン−4−オン、およびN1,N1−ジメチル−4−[4−(ジメチルアミノ)ベンジル]アニリン、あるいはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項35】
神経突起伸長を阻害する化合物を同定するための方法であって:(a)NogoとNogo受容体(NgR)との相互作用を妨害する化合物について低分子ライブラリーをスクリーニングする工程;(b)候補化合物を単離する工程を含み、ここでは、前記低分子は500ダルトン以下の分子量を持つ、方法。
【請求項36】
前記候補化合物の第2の用量応答アッセイを実施する工程をさらに含み、ここでは、前記第2の用量応答アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記候補化合物の神経突起伸長活性を測定する工程をさらに含み、ここでは、前記神経突起伸長が、前記候補化合物の存在下で阻害される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物、またはそれらの塩。
【請求項39】
神経突起伸長または軸索の再生を阻害する方法であって、ニューロンを、有効量の、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの塩と接触させる工程を含む、方法。
【請求項40】
前記ニューロンが哺乳動物中のものである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物がヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
神経突起伸長または軸索の再生を阻害する方法であって、ニューロンを、有効量の、以下からなる群より選択される化合物と接触させる工程を含む、方法:4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、またはそれらの塩。
【請求項43】
統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法にしたがって同定された化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
前記化合物が、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、頭蓋内、または口腔投与によって投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
統合失調症または統合失調感情障害を処置する方法であって、処置が必要な哺乳動物に対して、有効量の、以下からなる群より選択される化合物を投与する工程を含む、方法:4−[(4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾラン−3−イル)メチル]ベンゾニトリル、5−ブロモ−3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、3−[2−(4−クロロフェニル)−2−オキソエチル]−1−エチル−3−ヒドロキシ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、および3−(4−クロロフェニル)−2−{2−[3−(2−メチルピリミジン−4−イル−フェニル]ヒドラゾノ}−3−オキソプロパンニトリル、あるいはそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項46】
請求項11、19、および38のいずれかに記載の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図7】
【図17A】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図7】
【図17A】
【図18】
【公表番号】特表2011−505010(P2011−505010A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536010(P2010−536010)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/013178
【国際公開番号】WO2009/073141
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/013178
【国際公開番号】WO2009/073141
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティー (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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